(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の各実施形態を詳細に説明する。
(前提)
上記課題に鑑み、本発明者は、吸収体は、繊維素材を含有する第1の領域と、吸収性ポリマーを含有し第1の領域よりも吸収性ポリマーの含有率が高い第2の領域との2つの領域を含み、2つの領域は、吸収体の同一の面の表面の一部をそれぞれの領域の境界の一部として有するものであることが好ましいとの知見を得た。より具体的には、第1の領域と第2の領域とは、吸収体を平面視した場合に重複する部分を有し、当該重複する部分の少なくとも一部において、第1の領域は吸収体の同一の面の表面に露出していることが好ましいとの知見を得た。ここで、特許文献1には、吸収体の輪郭を画定する枠体と、その底面に配された、通気性を有する金網と、を有する成形型を用い、金網の裏面側から吸引力を作用させて成形型に吸収体材料を堆積させる製造方法および装置が開示されている。このような製造方法および装置で、成形型の底面に対する面に吸収性ポリマーを多く有する吸収体を製造する際には、通常、まずは、吸収性ポリマーを多く含む混合物を成形型に投入していくこととなる。しかしながら、今般、そうした場合、長い繊維状であり、柔軟性にも富むパルプと比較して、吸収性ポリマーは、サイズにばらつきがある粒子状であり、また柔軟性も劣ることから、成形型底面の通気孔における目詰まりが生じやすいことが判明した。本発明者は、これを一つの契機として、以下の実施形態に例示されるような本発明の製造方法および製造装置にも想到したのである。
【0013】
(吸収体および吸収性物品の実施形態)
図1は、後述する本発明の実施形態に係る製造方法または装置によって製造可能な吸収体を適用した吸収性物品の一例を示す横断面図である。
【0014】
具体的には、
図1に示されているのは、本発明の吸収性物品に包含される使い捨ておむつのうち、着用時の股下にあたる部分の、本発明の吸収体の一部を含む断面である。この図に例示した使い捨ておむつ10の一部は、着用者の肌接触面とは反対側の外側に配されるカバーシート11と、液不透過性のバックシート12と、吸収部材15と、肌接触面である液透過性のトップシート14とを、を順に重ねて接合した部分を有する。バックシート12およびトップシート14は、吸収部材15を挟み込んだ状態で接着することで形成される。吸収部材15は、吸収体20と、不織布またはティシュなどからなり、親水性を有する薄いシートで形成されるコアラップ21と、で構成されている。コアラップ21は、吸収体20を包み込むことで、その型崩れを防止する機能を果たすものである。該使い捨ておむつのうち、
図1に示されていない部分については、使い捨ておむつの分野で使用可能であることが知られている機能、構造、形態、材料等の部材を適宜組み合わせて適用することができる。なお、下着等に取り付けて体液を吸収する尿漏れパッドのような吸収性物品であれば、バックシート12、吸収部材15およびトップシート14の積層構造のみの構成とすることができる。また、本発明の効果を損ねない限り、コアラップ21による吸収体20の包み込み方はいかなる態様であってもよく、さらには、コアラップ21を使用しない形態であってもよい。
【0015】
図1に部分的に示される、使い捨ておむつ10の吸収部材15は、着用者が使い捨ておむつ10を装着した際に、該着用者の腹側から股下を通って背側にわたる方向すなわち
図1の紙面に略直交する方向が長手方向となる略長方形状(長方形に加えて、着用時の脚周り開口を形成するための砂時計型などの形態も含む。)を有する。吸収部材15の両側の、バックシート12およびトップシート14が互いに直接接している部分には、少なくとも股下領域を含む、吸収性物品の長手方向の所定範囲にわたり、ギャザー伸縮材としての糸ゴム16が伸張状態で配置されている。また、トップシート14の幅方向の左右両側縁部には、立体ギャザーを形成する液不透過性の一対のサイドシート18が備えられている。一対のサイドシート18のそれぞれには、その内側端縁部を吸収部材15側に折り返して把持させる形で立体ギャザー伸縮材としての糸ゴム19が伸張状態で配置され、糸ゴム19が収縮した際に、着用者の肌当接方向に向かって立ち上がる。従って、サイドシート18は、糸ゴム19の収縮力によって長手方向に引き寄せられ、内側端縁部が立ち上がった立体ギャザーとなる。
【0016】
吸収体20は、肌接触面の側(トップシート14側)および非肌接触面の側(バックシート12側)にそれぞれ位置する繊維素材に富む第1の領域23および層25を有し、それらの間に、吸収性ポリマーを含有する第2の領域24が配されている。該繊維素材としては、例えば、広葉樹および針葉樹から得られる木材パルプや、ケナフ、亜麻などから得られる非木材パルプなどを解繊処理して綿毛状としたものなどが挙げられる。これ以外にも、吸収体の技術分野で用いられる、前記材料と類似した性質を有する繊維状の素材であれば、本発明の該繊維素材として用いることができる。
【0017】
また、吸収性ポリマーには、従来から使い捨ておむつや尿パッドのような吸収性物品の分野で吸収体の構成材料として用いられる、各種の高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer;SAP)を用いることができる。高吸収性ポリマーは、例えば、自重の5倍以上の水を吸収し保持することが可能なものを採用できる。また、高吸収性ポリマーは、デンプン系、セルロース系や、合成樹脂系などのものを使用可能であり、例えばデンプン−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、デンプン−アクリロニトリル共重合体のケン化物,ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物、またはアクリル酸(塩)重合体からなるものであってもよい。高吸収性ポリマーの形状についても、吸収性物品の分野で吸収体の構成材料として用いられる各種の形状を採用することができ、例えば、粒子状のものが挙げられる。
【0018】
ここで、第1の領域23は、体液を迅速に吸収することを目的として繊維素材に富むものであるが、吸水性ポリマーを一定程度まで含有していても良い。すなわち、第1の領域23には、吸水性ポリマーを含有させないものとしてもよいが、その場合も含め、0重量%以上、かつ、15重量%以下の範囲の吸水性ポリマーを含有することができる。これ以上の割合で吸水性ポリマーを含有すると、第1の領域23の繊維材料による体液のすばやい吸収が阻害される場合があるし、後述する成形型の通気部における目詰まりが、許容できないほどに顕著となる場合がある。第1の領域23における前記吸水性ポリマーの含有率は、0重量%以上5重量%以下がさらに好ましい。
【0019】
一方、第2の領域24は、第1の領域23よりも多い割合で吸収性ポリマーを含有する。第2の領域24における吸収性ポリマーの含有率は、吸収性や保液性を考慮して任意に決定することができるが、通常は15重量%以上であり、20重量%以上100重量%以下が好ましく、40重量%以上100重量%以下が特に好ましい。第1の領域23および第2の領域24における繊維材料の配合比は、例えば、上記吸収性ポリマーの配合比率を補完する範囲とすることができる。吸収体には、種々の目的に応じて、繊維材料および吸収性ポリマーに加えて少量の構造材料、添加剤などをさらに含有させることもできる。
【0020】
なお、以下では繊維素材をその代表例であるパルプとしても参照し、吸水性ポリマーをSAPと称し、さらにこれらを区別しないときは吸収体材料として参照する。また、第1の領域23(および場合によっては層25)をパルプ領域、パルプとSAPとを混合させた第2の領域24を混合領域としてもそれぞれ参照する。さらに、本発明において、吸収体のうちの各「領域」とは、吸収体中において、その組成が略均質である空間的に連続したそれぞれの領域を指していう。また、第1の領域と第2の領域との区別は、その領域における吸収性ポリマーの含有率を測定することにより行うことができる。
【0021】
図1から明らかなように、本実施形態に係る吸収体20においては、吸収体の同一の面の表面、すなわち肌接触面側の表面の一部を構成するものとして、パルプ領域の境界の一部と、混合領域の境界の一部とのそれぞれが露出している。つまり、混合領域は、吸収体20の厚み方向の中間に存在するだけでなく、吸収体の表面に露出する境界を含む部分24aを有している。したがって、吸収体20の表面に受容された体液は、その一部が、その面に存する、繊維素材に富むパルプ領域にすばやく吸収されるとともに、他の一部が、吸収体の同一面の表面に存在する混合領域中の、保液性の高い吸収性ポリマーによって効果的に捕捉される。よって、体液の迅速な吸収性は一定の範囲内で維持されつつも、体液の効果的な補足性もあわせて得られることにより、ウエットバックの発生も抑制された、吸収性に優れた吸収体が実現できる。また、
図1の吸収体20において、パルプ領域と混合領域とは、前記吸収体を平面視した場合に重複する部分を有し、前記重複する部分の少なくとも一部において、パルプ領域は吸収体の前記同一の面の表面に露出している。このことにより、吸収体20の表面に露出したパルプ領域で迅速に吸収された体液は、この領域の吸収体20の平面方向に隣接する混合領域のみならず、吸収体の厚み方向に隣接する混合領域にも受け渡されて捕捉されることとなり、ウエットバックの発生がさらに効率よく抑制されることとなる。
【0022】
(吸収体の製造装置および方法の実施形態)
吸収体の製造工程数を減じ、効率高く製造するためには、成形型を用い、その裏面側から吸引力を作用させつつ、吸収体材料である繊維素材およびSAPを成形型に堆積させる製造装置ないしは方法を採用することが有利である。しかし
図1に示した本発明の一形態の吸収体20のように、表面に一定以上のSAP含有率を有する混合領域が露出する、第2の領域24の一部としての部分24aを形成する場合、その部分を形成するために一定以上のSAP含有率を有する混合物がはじめに成形型に供給されると、成形型の底部を構成する通気性部材の通気孔への目詰まりが許容しがたい程度になる。そこで本実施形態は、そのような目詰まりを抑制した製造装置および方法を提供する。
【0023】
ここで、まず製造装置の基本的な構成を説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る吸収体の製造装置100の模式的な側断面図である。製造装置100は、
図2の紙面に直交する方向に中心軸Cを有し、矢印Xの方向に回転可能な円筒体であって、その外周面112に成形型114を保持している成型ドラム110を備えている。また製造装置100は、成型ドラム110に向かうように矢印で示す空気流123を導くための略矩形の断面を有するダクト104を備える。ダクト104における、成型ドラム110側とは反対の端部付近には、パルプを投入するパルプ投入装置120が配設され、パルプ投入装置120と成型ドラム110との間の位置には、SAPを投入するSAP投入装置130が配設されている。
【0024】
ここで、パルプ投入装置120は、パルプの原反をシート状にしたものを解繊してパルプを得るための解繊機106と、解繊機106からダクト104内に送り出されたパルプを気流に乗せて移送するための投入口121と、を有している。また、SAP投入装置130はSAPを供給する管状部材であり、SAP供給管132からダクト104内にSAPを供給するための供給口131を有している。従って、ダクト104は、パルプと、パルプおよびSAPの成形型への移送手段として機能し、吸収体材料の移送時において成形型に対向する排気口を有する。また、SAPの供給口131は、水平方向(
図2の左右方向)においてパルプ投入装置120よりも成型ドラム110に近く、且つ鉛直方向(
図2の上下方向)におけるダクト104の中間部分に位置している。従って、成型ドラム110のダクト排気口対向部位には、パルプのみが移送されてくる領域23Rと、パルプとSAPとが混合して移送されてくる領域24Rと、さらにパルプのみが移送されてくる領域25Rとが、回転方向Xの上流側から順に位置する。つまり、繊維素材および/または吸収性ポリマーの含有率が相異なる2以上の組成物を、時間差をつけて前記成形型に向けて移送、堆積させていくことができる。なお、吸収体20の非肌接触面の側にパルプ層25を形成する必要がないのであれば、領域25Rが配置されなくてもよい。また、SAP、パルプのそれぞれの供給速度を変更したり、SAPの供給口の位置、形状、数を変更したりするなどにより、領域23R、24R、25Rなどの有無、数、位置、形状、これら領域に移送される組成物の組成などを本発明の効果を損なわない範囲において任意に変更できる。
【0025】
成型ドラム110の周面112に複数設けられた成形型114は、成型ドラム110の方向Xへの回転に伴って移動し、ダクト104の排気口に対向する領域を通過して行く。そして、当該対向領域において、成形型114に成型ドラム110の内側から吸引力を作用させることで、ダクト104から排出される空気流が引き込まれ、成形型114には吸収体材料が効率よく堆積してゆく。このようにして成形型114上に形成された吸収体20は、ダクト104の排気口との対向領域から外れた適宜の部位で、成形型114から剥離される。成型ドラム110の内部は、成形型114を介して吸引力を作用するために負圧状態とされる空間Nと、作製された吸収体20を成形型114から離型させて無端状の搬送ベルト140に渡す動作を円滑化するために加圧状態とされる空間Pとに区画される。搬送ベルト140に渡された吸収体20は、矢印X1方向に搬送され、コアラップ21で包み込んで吸収部材15を得る工程、さらには吸収部材15をトップシート14およびバックシート12で挟み込む工程その他の工程を経て、
図1に示した使い捨ておむつ10の一部となる。
【0026】
次に、本実施形態に係る吸収体の製造装置100の特徴構成について説明する。
図3は成型ドラム110および成形型114の分解斜視図、
図4は成形型114を組み立てた状態で示す斜視図である。なお、これらの図はあくまでも説明のための模式的なものであって、各部の実際の形状や寸法、あるいは各部の配置、成形型の個数に正確に対応するものではない。
【0027】
図3に示すように、成型ドラム110の本体は中空状であり、成型ドラム110の軸方向の両端に配置された一対のリング部材213と、それらの軸方向の間隔を保った状態でリング部材213同士を連結する複数の連結プレート215と、を有している。そして、一対のリング部材213と連結プレート215とによって、ベース部材221が支持される。ベース部材221と成形型本体部225とで成形型114が構成される。一対のリング部材213は、互いに同径の正円形状の環状体である。そして、成型ドラム110の両端面にはリング部材213と相似形状の円形壁230が固定され、これにより成型ドラム110の内側には実質的に閉塞された空間が画成される。
【0028】
図3に示すように、円形壁230には、軸Cと同心に穴を有するボス231が突設されており、その穴にベアリング233を介してシャフト235が嵌入されている。従って、成型ドラム110は固定のシャフト235の周りに回転可能である。成型ドラム110の駆動は、例えばボス231の外周を、伝動機構を介して、または直接、モータや駆動ローラに接続することで行うことができる。
【0029】
シャフト235は、
図2の一点鎖線で示した位置において隔壁を支持しており、これによって成型ドラム110の内部を、空間Nと空間Pとに分割することができる。上述のように、空間Nは負圧状態とされる空間であり、空間Pは加圧状態とされる空間である。なお、空間Nの負圧状態および空間Pの加圧状態を得るためには、それぞれを真空ポンプおよびエアコンプレッサに接続すればよい。その接続経路は、例えば、シャフト235を中空のものとするとともに、その内部にそれぞれの接続経路を分割する隔壁を形成し、外部に各空間との連通孔を形成すればよい。なお、成型ドラム110の内部の全ての部分が大気圧と異なる圧力を有している必要はなく、例えば、吸収体材料の積層や、吸収体の剥離などに必要十分な部分だけを空間N、空間Pに該当するものとする態様でもよい。
【0030】
成形型114は、成型ドラム110の周長を、設けるべき成形型の個数で等分した長さの円弧状のベース部材221および成形型本体部225で構成される。成形型本体部225は、ベース部材221の上に配置される支持体としての支持部材226と、その上に配置され、非通気部NA(
図5(a)参照)を構成するための、開口閉鎖部材227と、その上に配置される堆積用の通気性部材228と、さらにその上に配置される吸収体の輪郭画定部材229と、を有する。
【0031】
ここで、ベース部材221は、成形型本体部225を支持し、成型ドラム110の内部空間に連通させる開口を有する部材である。支持用の支持部材226は通気性を有し、堆積用の通気性部材228を、間に開口閉鎖部材227を挟み込んだ状態で支持する。これらの通気性部材228と支持部材226は、例えば、その厚み方向に複数の開口部を有する例えば網目(メッシュ)状の部材であってもよく、あるいはパンチングにより厚み方向に開口部を形成した板状のものであってもよい。通気性部材228の開口部は、通気部における通気孔を構成する(開口閉鎖部材227により閉鎖される開口部を除く。)。
【0032】
開口閉鎖部材227は、上述した吸収体表面に部分的に露出する混合領域の部分24aの形成に関与する部材である。すなわち、開口閉鎖部材227は、吸収体材料の堆積用の通気性部材228の厚み方向に貫通した複数の開口部のうちの一部の開口部を閉鎖することで、その部分からは成形型114の底面に空間Nからの吸引力を直接に作用させない非通気部NA(通気孔が存在しない連続した領域)を形成する。本実施形態では、成形型本体部225の曲率に沿って湾曲し、周方向に延在する3本の棒状の開口閉鎖部材を例示している。
【0033】
なお、非通気部NAは、堆積用の通気性部材228自体に厚み方向の開口をそもそも設けない領域を設定するなど、開口閉鎖部材を用いることなく形成してもよく、この場合は、開口閉鎖部材227を設ける必要はない。開口閉鎖部材227を用いる利点としては、元来非通気部を有していなかった通気性部材228を本発明に利用することができるようになることや、非通気部の形状や大きさなどを、通気性部材228を取り替えることなく変更することができることなどが挙げられる。また、支持部材226については、開口閉鎖部材227がドラム内部に向かう吸引力に基づく気流の影響で脱落しないように支える効果、開口閉鎖部材227の支持を介して、吸引気流による通気性部材228の変形を間接的に抑制する効果を有するものであるが、必須のものではない。
【0034】
堆積用の通気性部材228の表面は、パルプ領域23の表面と混合領域の部分24aの表面とが混在する面に対応する。この通気性部材228に形成される通気孔の開孔面積、密度および疎密の分布などは、作製する吸収体の仕様に応じて適宜定め得る。また、吸収体の輪郭画定部材229は、吸収体20の外周形状に対応した形状の開口を画定するものであって、その形状は作製する吸収体の輪郭に合わせて適宜調製できる。
【0035】
図2および
図5(a)〜(c)を参照し、堆積用の通気性部材228上に吸収体材料を堆積させる工程、すなわち吸収体20の製造工程を説明する。吸収体20の製造時には、
図2に示したように、成型ドラム110を方向Xに連続的に回転させながら、パルプ投入装置120およびSAP投入装置130から、それぞれ、パルプおよびSAPが供給される。すると、回転方向Xにおける成型ドラム110の上流側の領域23Rおよび下流側の領域25Rにはパルプが移送される一方、中流側の領域24RにはパルプおよびSAPが移送されて行く。したがって、成形型114のなかの一部の領域に着目すると、まず領域23Rにおいてその領域に対してパルプが移送され、通気部にパルプが堆積した後に、領域24Rにおいて、前記パルプの移送がなされた領域に対してパルプおよびSAPが移送され、前記堆積されたパルプの周囲に堆積していくこととなる。
【0036】
成型ドラム110の回転に伴い、成形型114は領域23R,24R,25Rを順次通過して行く。まず領域23Rを通過する過程では、開口閉鎖部材227が存在している非通気部NAにおいては、成形型114の底面からの直接の吸引が行われないので、
図5(a)に示すように、開口閉鎖部材227が存在していない堆積用の通気性部材228の部分(通気部)にパルプが選択的に堆積し、パルプ領域23が形成される。なお、非通気部NAに当初降下したパルプも、その大部分は通気部からの吸引による気流により、
図5(a)に示すパルプ領域23の位置に移動して堆積するが、それ以外の一部痕跡量は通気性部材228との相互作用などによりその場にとどまる場合もありうる。ただし、この痕跡量は本発明の効果の発揮には特段の影響をしない。
【0037】
次に、
図5(a)の状態となった成形型の部分が領域24Rを通過する過程では、パルプ領域を介した吸引により、パルプ領域23上にパルプおよびSAPの混合物がドーム状に堆積して行き、さらに堆積が進むと混合物の堆積部分同士が連結して混合領域24が形成される。すなわち、この混合領域24は、
図5(b)に示すように、吸収体20の長手方向(図面に直交する方向)に延在する混合領域の部分24aが肌接触面側の面に露出したものとなる。なお、パルプ領域23は、必ずしも
図5(a)に示すように非通気部を完全に避けるように存在する必要性はなく、非通気部NAの一部にも、上記ドーム状にパルプの堆積を延長させた結果として存在していてもよい。ただし、非通気部の全部にまでパルプが堆積してしまうと、混合層が成形型の底面に堆積できなくなるため、これが生じないように、パルプの移送速度、ドラムの回転速度、領域23Rの長さなどを、当業者の知見に基づいて適切に設定する。また、上記とは逆に、パルプ領域23は、必ずしも
図5(a)に示すように通気部を完全に覆っていなくてもよく、その大部分が覆われていれば本発明の効果は十分に発揮される。
【0038】
さらに、
図5(b)の状態となった成形型の部分が領域25Rを通過する過程で、
図5(c)に示すように、パルプが堆積し、パルプ層25が形成される。以上のようにして吸収体材料が堆積して作製された吸収体20は、成形型114が加圧空間Pと対向する部位に至ると離型し、無端状の搬送ベルト140に渡される。
【0039】
(その他)
なお、本発明は、上述した諸実施形態および随所に述べた変形例に限られない。
例えば、
図1では、本発明に基づいて製造される吸収体を使い捨ておむつに適用した場合について例示した。しかし吸収体の適用対象はそれに限定されるものではなく、展開型吸収パッド、テープ型おむつやパンツ型おむつ、あるいは生理用品用など、他の各種吸収性物品全般にも適用可能なものである。
【0040】
また、
図1の実施形態では、吸収体の肌接触面側の面に露出する混合層の部分が、吸収体の長手方向(
図1の紙面に直交する方向)に複数本(同図の例では3本)延在する形状を例示した。しかし吸収体の表面に露出する部分も含めて、混合層の部分の数、形状、大きさは適宜定め得るものであり、例えば吸収体の肌接触面側の表面に格子状に形成されるものであってもよいし、点在するように形成されるものであってもよい。すなわち、混合層の部分の形成部位や寸法などは、吸収体の液吸収性能およびユーザの使用感などを考慮して適宜定めることができ、また混合層に合わせて非通気部あるいは開口閉鎖部材の構成を定めることができるのは勿論である。
【0041】
ただし、実際の製造上の問題として、個々の非通気部の面積や短辺の長さなどが極端に小さいと、そもそも機能的に通気部と区別できる(すなわち、堆積工程の初期に吸収体材料が堆積しない)「非通気」といえる部位を形成することができなくなる可能性がある。したがって、後述のように、成形型底面における通気孔が存在しない連続した範囲であって、直径2mm超の仮想的な円を内包できる範囲であることが、本発明の個々の非通気部としての必要条件であるといえる。これに加え、個々の非通気部は、前記の内包させた仮想的な円をその場所から成形型底面に沿って通気孔と重複しないようにしながら連続的に移動させた際に、その仮想的な円の少なくとも一部が到達しうる領域で規定される範囲である。実際に非通気部を設計する場合には、ウエットバックの抑制効果その他の本発明の効果をより確固たるものとするために、上記仮想的な円の直径を、例えば3mm、4mm、5mm、6mmまたは7mmなどとした場合の範囲としてすることもできる。いずれにせよ、当該直径としては、2mm超であれば任意の値を、設計値として採用することができる。なお、主観的な設計値にかかわらず、直径2mm超の仮想的な円を内包できる上記範囲が存在していれば、その範囲は必然的に非通気部として機能することに留意する必要がある。ここで、本発明の通気部と非通気部とは排他的な関係にあることから、通気部は、成形型底面における上記で規定される非通気部の範囲以外の範囲を指すものとしても定義できる。他方で、本発明の吸収体に目を移すと、本発明の吸収体の第2の領域のうち、吸収体における前記同一の面の表面上に位置する境界が構成する領域は、存在していればその大きさはなんら問われないものではあるが、ウエットバックの抑制の効果その他の本発明の効果をふまえると、直径0.5mm以上の仮想的な円を内接できる大きさを有する一連の領域であることが好ましく、直径1mm以上の仮想的な円を内接できる大きさを有する一連の領域であることがさらに好ましく、直径3mm以上の仮想的な円を内接できる大きさを有する一連の領域であることが特に好ましい。上記第2の領域の境界が構成する領域の大きさを特定する方法の一例としては、吸収体あるいは型崩れが危惧される場合は吸収部材について、当分野における既知の方法を用いて吸収性ポリマーを特異的に染色したうえで当該吸収体または吸収部材の平面図に該当する写真を撮影し、コンピュータ上で当該写真の上記一連の領域(吸収性ポリマーが存在しない領域、あるいは吸収性ポリマーの密度が相対的に低い、密度が略均一と認識される連続した領域)に内接できる最大の円を描画したうえで、その円の現実の吸収体上における直径を算出する方法が挙げられる。
【0042】
上述のように、「成形型底面における通気孔が存在しない連続した範囲であって、直径2mm超の仮想的な円を内包できる範囲であることが、本発明の個々の非通気部としての必要条件である」とした理由は次のとおりである。本発明の一例として、本発明者が、短辺の長さが5mmの長方形状の非通気部を有する本発明の装置を用いて吸収体を作成したところ、該吸収体の前記同一の表面上における第2の領域が構成する長方形(前記非通気部に対応するものである。)の短辺の長さは3mmであることを確認した。これは、この場合においては、非通気部の境界から1mm内側までは、気流の関係上、実質的には通気部として機能したものと理解される。したがって、少なくとも、通気孔が存在しない範囲であって、直径2mm超の仮想的な円を内包できるという条件を満たす非通気部を設けておけば、本発明の製造方法にて、本発明の吸収体を製造できることが理解される。
【0043】
加えて、
図3に示した成形型は、ベース部材、支持用の通気性部材、開口閉鎖部材、堆積用の通気性部材および吸収体の輪郭画定部材を成型ドラム上にこの順で積み重ねた構成とした。しかし、開口閉鎖部材が適切に支持され、且つ成型ドラム内方への吸引が適切に行われるのであれば、支持用の通気性部材の構造や配設の有無は任意に定め得る。また、開口閉鎖部材は、堆積用の通気性部材の、成形型の底面の一部を構成する面側に配設されていても良い。この配設の場合、開口閉鎖部材の厚みは、ウエットバック低減などの効果を考慮して、適宜設定できるが、第2の領域を十分に形成させるために、輪郭画定部材229の高さよりも低くなるように厚みを調整することが強く望ましい。また、
図3の例では開口閉鎖部材と堆積用の通気性部材とを別体の構成としたが、これらは予め一体に形成された部材であってもよい。さらには、上述したとおり、堆積用の通気性部材228自体に厚み方向の開口を当初から設けない領域を設定するなど、開口閉鎖部材をそもそも用いることなく非通気部を形成してもよい。
【0044】
加えて、
図2および
図3では、成型ドラムの周方向に複数の成形型を1列に配列する構成を例示した。しかし、成形型の個数および回転軸に平行な方向の配列数はそれらの図に例示したものに限られず、適宜定め得るものである。また、上述の実施形態では、複数の成形型を用いることで個々に分離した吸収体を製造するものとした。しかし成型ドラムの周方向に沿って連続したリング形状の成形型を設けて長尺の吸収体ウエブを形成し、その後所定長さに切断して個々の吸収体を形成するものでもよい。また、各成形型は、それぞれが別部材から構成されていても良いが、ドラムの円周上に亘る一の部材の中を区画に区切ることによって構成されていてもよい。さらに、上述の実施形態では、成形型を成型ドラムに担持させて吸収体材料の堆積を行うものとしたが、成型を行うための担持体はドラムの形態でなくてもよく、また成形型の全体的な形状は、使用する担持体の形状に倣うものであればよい。加えて、
図2に示した吸収体の製造装置および方法の実施形態では、1つのダクトを用い、そのダクトによってパルプを気流に乗せて移送する一方、気流の一部に乗るようにSAPを導入することで混合物も移送される構成とした。しかしパルプ用のダクトと、混合物用のダクトとを各別に設けてもよい。