(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態にて開示する故障診断装置の概要について説明する。
蓄電システムを冷却する冷却装置の故障を診断する故障診断装置であって、前記蓄電システムは、複数の冷却装置と、前記複数の冷却装置により個別に冷却される複数の蓄電ブロックと、前記蓄電ブロック内の複数箇所の温度を検出する複数の温度センサを有し、前記故障診断装置は、同一の蓄電ブロック内における複数箇所の温度差の情報と、異なる蓄電ブロック間における温度差の情報とに基づいて、前記冷却装置の故障を判断する。
【0010】
この構成では、同一の蓄電ブロック内における複数箇所の温度差の情報と、異なる蓄電ブロック間における温度差の情報とに基づいて、冷却装置の故障を判断する。従って、異なる蓄電ブロック間における温度差の情報のみに基づいて、冷却装置の故障を判断する場合に比べて、冷却装置の故障を精度よく判断することが出来る。
【0011】
前記故障診断装置は、同一の蓄電ブロック内における複数箇所の温度差の情報に基づいて、前記蓄電ブロックの異常を判断するとよい。この構成では、冷却装置の故障だけでなく、蓄電ブロックの異常を判断することが出来る。
【0012】
前記故障診断装置は、前記蓄電ブロックは正常と判断した場合、異なる蓄電ブロック間における温度差の情報とに基づいて、前記冷却装置の故障を判断するとよい。この構成では、蓄電ブロックが正常である場合についてのみ、冷却装置の故障を判断する。従って、蓄電ブロックの異常を、冷却装置の故障と誤判断することがなく、冷却装置の故障診断精度が高い。
【0013】
前記故障診断装置は、同一の蓄電ブロック内での温度差が第1所定値以上の場合、又は同一の蓄電ブロック内において冷却方向の上流側の温度が下流側の温度より高い場合、前記蓄電ブロックは異常であると判断するとよい。この構成では、蓄電ブロックの異常発熱を比較的容易に、精度よく判断できる。
【0014】
異なる蓄電ブロック間の温度差は、異なる蓄電ブロック間の同一箇所の温度差であるとよい。この構成では、異なる蓄電ブロック間の正確な温度差を検出することが出来るので、冷却装置の故障を精度よく診断できる。
【0015】
<実施形態>
1.蓄電システムUの説明
図1は蓄電システムの斜視図である。蓄電システムUは、例えば、電車の床下等に設置され、電車への電力供給及び減速時に回生の受け入れを行う。
【0016】
図1に示すように、蓄電システムUは、複数の冷却ファンFと、複数の蓄電ブロックBと、管理装置(本発明の「故障診断装置」に相当)50を備えている。具体的には、9つの冷却ファンF1〜F9と、9つの蓄電ブロックB1〜B9を備えている。9つの蓄電ブロックB1〜B9は、X方向に3列、Z方向の3段の配置となっている。9つの蓄電ブロックB1〜B9は同一構造である。
【0017】
図1の左右方向をX方向とし、上下方向をZ方向とし、奥行き方向をY方向として説明を行う。以下の説明において、冷却ファンFは9つの冷却ファンF1〜F9の総称を指し、蓄電ブロックBは9つの蓄電ブロックB1〜B9の総称を指す。
【0018】
蓄電ブロックBは、複数の蓄電素子モジュールMから構成されている。蓄電素子モジュールMは、
図2に示すように、外枠となるケース20内に、4つの電池セル25を収容している。電池セル間には、通気用の通路27が設けられている。電池セル25は蓄電素子の一例である。
【0019】
蓄電ブロックBは、
図3に示すように、Y方向に並んで組みつけられた2つの蓄電素子モジュールM1、M2と、通気ダクト30と、複数の温度センサS1、S2から構成されている。
【0020】
複数の温度センサS1、S2は、2つの蓄電素子モジュールM1、M2に対応して2つ設けられており、各蓄電素子モジュールM1、M2の温度を検出する。
【0021】
冷却ファンFは、吸引式であり、蓄電ブロックBの長手方向であるY方側の端部に配置されている。通気ダクト30は、冷却ファンFと蓄電ブロックBの間に配置されている。
【0022】
冷却ファンFを駆動すると、電池セル間の通路27に沿ってY方向に冷却風が流れるため、各電池セル25を冷却することが出来る。
図1、
図3の矢印は、冷却風の流れを示している。この例では、蓄電素子モジュールM2が吸気側(上流側)、蓄電素子モジュールM1が排気側(下流側)である。通気ダクト30は、冷却ファンFの生じる気流が、隣接する他の蓄電ブロックBに漏れないように、冷却風の通路27を仕切っている。
【0023】
冷却ファンF1〜F9は、
図1に示すように、各蓄電ブロックB1〜B9に対応して配置されており、蓄電ブロックB1〜B9を個別に冷却する。すなわち、冷却装置F1が蓄電ブロックB1を冷却し、冷却装置F2が蓄電ブロックB2を冷却し、冷却装置F3が蓄電ブロックB3を冷却する。
【0024】
管理装置50は、蓄電システムUを監視及び管理する装置であり、蓄電ブロックBに付随して配置されている。管理装置50は、電流センサや電圧センサの出力に基づいて、各電池セル25に流れる電流や電圧を監視する。
【0025】
管理装置50は、各蓄電ブロックB1〜B9の温度センサS1、S2より出力される温度のデータに基づいて、各蓄電ブロックB1〜B9の温度を監視する。
【0026】
管理装置50は、これらの温度情報から電池セル25が閾値よりも温度上昇している場合には、冷却ファンF1〜F9を駆動して、各蓄電ブロックB1〜B9の電池セル25の温度上昇を抑制する。
【0027】
2.冷却ファンFの故障診断
図4を参照して、冷却ファンFの故障診断処理について説明する。
図4に示す故障診断処理はS10〜S50のステップから構成されており、冷却ファンFの動作中に、管理装置50により実行される。
【0028】
故障診断処理がスタートすると、管理装置50は、各蓄電ブロックB1〜B9の温度センサS1、S2の出力から、各蓄電ブロックB1〜B9について蓄電素子モジュールM1、M2の温度を取得する(S10)。
【0029】
温度の取得後、管理装置50は、各蓄電ブロックB1〜B9が正常か判断する(S20)。具体的には、同一の蓄電ブロックBを対象に、2つの蓄電素子モジュールM1、M2の温度差ΔTaを検出する。温度差ΔTaが第1所定値よりも小さい場合、蓄電ブロックBは正常と判断する。
【0030】
温度差ΔTaが第1所定値以上の場合、蓄電ブロックBは異常、具体的には蓄電素子モジュールM1、M2のいずれかが、異常発熱していると判断する。温度差ΔTaは、本発明の「同一の蓄電ブロック内における複数箇所の温度差」に相当する。
【0031】
管理装置50は、各蓄電ブロックB1〜B9について上記の判断を行い、いずれか一つでも異常がある場合(S20:NO)、蓄電ブロックBの異常を外部に報知する(S40)。
【0032】
管理装置50は、9つの蓄電ブロックB1〜B9が全て正常の場合(S20:YES)、各冷却ファンFが正常か判断する(S50)。
【0033】
判断方法の詳細は、各蓄電ブロックB1〜B9間で、蓄電素子モジュールM1の温度を比較し、温度の最小値と最大値を算出する。
【0034】
次に、最小値と最大値との温度差ΔTbを算出し、温度差ΔTbが第2所定値より小さい場合、全ての冷却ファンFは正常であると判断する(S30:YES)。冷却ファンFが正常の場合、故障判断処理は終了する。
【0035】
最小値と最大値との温度差ΔTbが第2所定値以上の場合、最大値を記録した蓄電ブロックBの冷却ファンFは故障と判断する(S30:NO)。監視視装置50は、冷却ファンFが故障と判断した場合、冷却ファンFの故障を外部に報知する(S50)。温度差ΔTbは、本発明の「異なる蓄電ブロック間における温度差」に相当する。
【0036】
3.効果説明
蓄電システムUによれば、蓄電ブロックB1〜B9が正常か否かをまず判断し、蓄電ブロックB1〜B9が正常である場合、すなわち、蓄電素子モジュールMに異常発熱がない場合に限り、冷却ファンF1〜F9の故障を判断する。そのため、蓄電素子モジュールMの異常発熱により一部の蓄電ブロックBが温度上昇して、他の蓄電ブロックBとの間に温度差が発生しても、冷却ファンF1〜F9の故障と誤って判断されない。従って、冷却ファンF1〜F9の故障を精度よく判断することが出来る。
【0037】
蓄電システムUによれば、蓄電ブロックB1〜B9の温度監視用として、標準装備されている温度センサS1、S2の出力を利用して、冷却ファンF1〜F9の故障を検出する。そのため、冷却ファンFの状態を検出する専用のセンサ(パルスセンサやロックセンサ)やセンサの信号処理回路を設ける必要がないことから、部品点数を削減することが出来る。
【0038】
蓄電システムUによれば、S30にて、各蓄電ブロックB1〜B9間で同じ蓄電モジュールM1の温度を比較するため、各蓄電ブロックB間の正確な温度差ΔTbを検出出来る。従って、冷却ファンFの故障を正確に診断できる。
【0039】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0040】
(1)上記実施形態では、蓄電システムUを電車に搭載した例を示した。蓄電システムの用途は電車に限定されるものでなく、他の用途、例えば、無停電電源装置(UPS)や発電システム等に適用することが出来る。
【0041】
(2)上記実施形態では、管理装置50を蓄電ブロックBに付随して配置した例を示した。管理装置50は必ずしも蓄電ブロックBに付随する態様で設置される必要はなく、車両等の上位装置の制御装置が管理装置50の機能を有してしてもよい。また、蓄電システムを無停電電源装置(UPS)や発電システム等に適用する場合、状態確認装置が管理装置の機能を有していてもよい。更に、LANや無線で接続されたコンピュータが管理装置50の機能を有してしてもよい。
【0042】
(3)上記実施形態では、蓄電ブロックB1〜B9を冷却する冷却装置の一例として、吸引式の冷却ファンF1〜F9を例示した。冷却ファンFに吸引式に限定されるものではなく、送風式でもよい。上記実施形態では、
図1に示すように、吸引式の冷却ファンFを各蓄電ブロックBの手前側(下流側)の端部に配置したが、送風式を採用する場合、各蓄電ブロックBの奥側(上流側)の端部に冷却ファンFを配置するとよい。
【0043】
(4)上記実施形態では、蓄電ブロックB1〜B9を冷却する冷却装置の一例として、冷却ファンF1〜F9を例示した。冷却装置は冷却ファンFに限定されるものではなく、
図5に示すように、冷却水を循環させるポンプ70と熱交換器80とからなる水冷式の冷却装置100でもよい。それ以外に、ペルチェ素子を用いた冷却装置でもよい。
【0044】
(5)上記実施形態では、Y方向に配置された2つの蓄電素子モジュールM1、M2を、1つの冷却ファンFで冷却した。これ以外にも、
図6に示すように、8つの蓄電素子モジュールM1〜M8を1つの冷却ファンFにより冷却してもよい。蓄電ブロックBは、1つの冷却装置により冷却される蓄電素子モジュールMのまとまりの単位であり、
図6に示すように、8つの蓄電素子モジュールM1〜M8を1つの冷却ファンFで冷却する場合、8つの蓄電素子モジュールM1〜M8の全体が蓄電ブロックBに相当する。
【0045】
実施形態では、蓄電ブロックBを、Y方向に配置された2つの蓄電素子モジュールM1、M2から構成したが、Y方向に配置された3つ又はそれ以上の蓄電素子モジュールM1〜M3から構成してもよい。また、温度センサSは、各蓄電素子モジュールM1〜M3ごとに配置するとよい。
【0046】
(6)上記実施形態では、蓄電ブロックBの異常、具体的には、蓄電素子モジュールMが異常発熱か否かを、同一の蓄電ブロックBの2つの蓄電素子モジュールM1、M2の温度差ΔTaを第1所定値と比較することにより判断した。蓄電素子モジュールMが異常発熱していない場合、冷却方向において上流側となる蓄電素子モジュールM2の方が、下流側となる蓄電素子モジュールM1よりも温度が下がる傾向になる。従って、同一の蓄電ブロックBの2つの蓄電素子モジュールM1、M2の温度を比較し、上流側の蓄電素子モジュールM2の温度が、下流側の蓄電素子モジュールM1よりも低い場合は正常、高い場合は異常発熱と判断してもよい。
【0047】
(7)上記実施形態では、蓄電ブロックB1〜B9間において、冷却方向の下流側にあたる蓄電素子モジュールM1の温度を比較することにより、冷却ファンFの故障の有無を判断する例を示したが、上流側にあたる蓄電素子モジュールM2の温度を比較することにより、冷却ファンFの故障の有無を判断してもよい。すなわち、蓄電ブロックB間で対応する箇所の温度情報を比較するものであれば、どの部位の温度情報でもよい。
【0048】
(8)上記実施形態では、蓄電ブロックB1〜B9が正常か否かをまず判断し、全蓄電ブロックB1〜B9は正常と判断した場合に、冷却ファンF1〜F9の故障を判断した。冷却ファンF1〜F9の故障の診断は、実施形態の方法に限定されるものではなく、同一の蓄電ブロックB内における複数箇所の温度差の情報と、異なる蓄電ブロックB間における温度差の情報とに基づいて判断する方法であれば、いかなる方法であってもよい。例えば、蓄電ブロックBの異常判断は実行せず、同一の蓄電ブロックB内における複数箇所の温度差が第1所定値未満であり、かつ、異なるブロックB間における温度差が第2所定値以上である時に、冷却ファンFは故障であると判断してもよい。
【0049】
(9)複数の蓄電ブロックB1〜B9からなるユニットを複数組有する構成では、ユニット間における温度差に基づいて、各ユニットの異常を判断することが出来る。例えば、ユニット間における同一箇所の蓄電ブロックの温度差に基づいて、各ユニットに設けられたエアフィルタの目詰まりにより、冷却風が正常に流れていない異常を判断することが出来る。また、電源や配線がユニット毎に分けかれている場合、電源や配線の異常により冷却ファンが停止する異常を判断することが出来る。