特許第6822276号(P6822276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6822276
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】端子装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01R 9/22 20060101AFI20210114BHJP
【FI】
   H01R9/22
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-68803(P2017-68803)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-170239(P2018-170239A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 一三
(72)【発明者】
【氏名】荒澤 崇
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第9093761(US,B1)
【文献】 特開2008−140612(JP,A)
【文献】 特開平7−105999(JP,A)
【文献】 特開2005−209345(JP,A)
【文献】 特開平9−35780(JP,A)
【文献】 特開2001−338702(JP,A)
【文献】 特開平9−199191(JP,A)
【文献】 実用新案登録第2598123(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/22
H01R 4/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定端子と、
前記固定端子に対して軸方向に沿って接近および離反移動可能に配置してある移動端子と、
前記移動端子に装着してあり、前記移動端子が前記固定端子に近接した状態で、前記固定端子に着脱自在に締結する締結具と、を有する端子装置であって、
前記移動端子は、
前記締結具が取り付けられる取付部と、
前記取付部に連続して一体に成形してあり、前記固定端子の近くで前記固定端子に干渉しない位置で、前記軸方向に平行な方向に突出している保持板部と、を有し、
前記保持板部は、
コイル状のスプリングの第1端に形成してある第1端開口に挿入される挿入突片と、
前記挿入突片の両側に、当該挿入突片と同一板片状に形成され、前記スプリングの第1端の両側を挟み込む一対のガイド片と、を有し、
一対の前記ガイド片の両側端が入り込むガイド溝を持つ支持ブロックが、前記固定端子に隣接して固定してあり、
前記移動端子の前記取付部と前記保持板部とは、前記保持板部の幅よりも狭い幅を持つ連結片で連続してあり、
前記支持ブロックには、前記連結片が移動可能に挿入される連絡溝が形成してあり、
前記連絡溝により、前記ガイド溝が前記支持ブロックの外部に連通し、前記取付部が前記支持ブロックの外部に位置し、
前記スプリングの前記第1端は、その両側が一対の前記ガイド片により挟まれており、前記ガイド片は前記ガイド溝により案内されている端子装置。
【請求項2】
前記軸方向に沿った前記挿入突片の突出長さよりも、前記ガイド片の突出長さが長い請求項1に記載の端子装置。
【請求項3】
前記支持ブロックには、前記ガイド溝に連通して前記スプリングを収容するためのスプリング収容部が形成してあり、
前記スプリング収容部の底部に前記スプリングの第2端が当接している請求項1または2に記載の端子装置。
【請求項4】
前記支持ブロックには蓋体が取り付けられ、
前記蓋体には、前記スプリングの弾性力で前記ガイド溝から前記ガイド片がはみ出すことを抑制するストッパ部が具備してある請求項1〜3のいずれかに記載の端子装置。
【請求項5】
前記支持ブロックがケーシングの一部として形成してあり、前記ケーシングの内部には、電子機器用コイル部が内蔵してある請求項1〜4のいずれかに記載の端子装置。
【請求項6】
前記固定端子は、前記支持ブロックの底部に配置される金属板と一体に形成してあり、アース端子の一部を構成する請求項1〜5のいずれかに記載の端子装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の端子装置を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子装置と、その端子装置を有するノイズフィルタなどの電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノイズ対策用の小型の単相用EMCフィルタなどのノイズフィルタでは、いわゆるセルフアップねじ式の端子装置が用いられることがある。この端子装置を作用することで、配線作業性が向上する。セルフアップねじ式の端子装置としては、たとえば下記の特許文献1に示す端子装置が知られている。
【0003】
この端子装置では、ネジが装着してある移動端子を、固定端子に向けてスプリング力に反して押し込み、固定端子に設けてあるねじ穴にネジを螺合させる。その結果、固定端子と移動端子との間にリード線や穴あき端子などを容易に取り付けることができる。
【0004】
しかしながら、ネジを押し込む軸線と、スプリングを押し込む軸線とが離れており、しかも、スプリングは、軸線と垂直方向に突出する係止突起により押し込まれる。そのため、ネジを押し込むと、ネジを支持する移動端子が軸線に対して傾きやすく、ネジを押し込む動作に抵抗が生じると共に、固定端子のねじ穴に螺合させにくいという課題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−129277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、ネジなどの締結具をスムーズに押し込み易く、しかも移動端子と固定端子との結合が容易な端子装置と、その端子装置を有するノイズフィルタなどの電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る端子装置は、
固定端子と、
前記固定端子に対して軸方向に沿って接近および離反移動可能に配置してある移動端子と、
前記移動端子に装着してあり、前記移動端子が前記固定端子に近接した状態で、前記固定端子に着脱自在に締結する締結具と、を有する端子装置であって、
前記移動端子は、
前記締結具が取り付けられる取付部と、
前記取付部に連続して一体に成形してあり、前記固定端子の近くで前記固定端子に干渉しない位置で、前記軸方向に平行な方向に突出している保持板部と、を有し、
前記保持板部は、
コイル状のスプリングの第1端に形成してある第1端開口に挿入される挿入突片と、
前記挿入突片の両側に、当該挿入突片と同一板片状に形成され、前記スプリングの第1端の両側を挟み込む一対のガイド片と、を有する。
【0008】
本発明の端子装置では、締結具が取り付けられている取付部を固定端子に向けて押すことで、挿入突片が差し込まれるスプリングの第1端が保持板部により軸方向に押される。その際に、スプリングの第1端は、その両側が一対のガイド片により挟まれており、ガイド片は軸方向に案内されていることから、移動端子の取付部に装着してある締結具を固定端子に対して傾斜させることなくスムーズに押し込み易い。また、締結具を固定端子に締結する際には、締結具の軸線が傾き難いことから、締結具を固定端子に容易に結合させることができる。
【0009】
また、保持板部は、挿入突片と、その両側に当該挿入突片と同一板片状に形成される一対のガイド片とを有していることから、移動端子の取付部に作用する押圧力の軸線と、挿入突片によりスプリングに作用する押圧力の軸線とを可能な限りに近くに位置させることができる。この観点からも、取付部に装着してある締結具を固定端子に対して押し込む方向に移動させる際に、締結具の軸線が傾きにくい。
【0010】
さらに、ネジなどの締結具が、移動端子に装着してあることから、端子の接続を確保するために、装置とは別にネジなどを準備する必要がない。そのため、ネジなどを紛失するおそれが少なく、ネジなどが短絡などの故障原因となるおそれも少ない。したがって、本発明の端子装置は、電源回路のノイズフィルタ、電源用コンバータ、ブレーカ装置などのように電源回路用装置に用いて好適である。
【0011】
好ましくは、前記軸方向に沿った前記挿入突片の突出長さよりも、前記ガイド片の突出長さが長い。このように構成することで、ガイド片によるガイド動作がより安定化し、締結具を固定端子に対して傾斜させることなくスムーズに押し込み易い。また、締結具を固定端子に締結する際には、締結具の軸線が傾きにくいことから、締結具を固定端子に容易に結合させることができる。
【0012】
好ましくは、一対の前記ガイド片の両側端が入り込むガイド溝を持つ支持ブロックが、前記固定端子に隣接して固定してある。支持ブロックのガイド溝に沿ってガイド片が案内されることで、移動端子の保持板部および取付部の軸芯が傾斜し難くなる。
【0013】
好ましくは、前記支持ブロックには、前記ガイド溝に連通して前記スプリングを収容するためのスプリング収容部が形成してあり、
前記スプリング収容部の底部に前記スプリングの第2端が当接している。
【0014】
スプリング収容部の内部にスプリングを収容することで、スプリングが圧縮変形する際にも、スプリングの軸芯が傾斜し難くなり、移動端子の取付部の軸芯も傾斜し難くなる。
【0015】
好ましくは、前記移動端子の前記取付部と前記保持板部とは、前記保持板部の幅よりも狭い幅を持つ連結片で連続してあり、
前記支持ブロックには、前記連結片が移動可能に挿入される連絡溝が形成してあり、
前記連絡溝により、前記ガイド溝が前記支持ブロックの外部に連通している。
【0016】
移動端子の取付部を固定端子に向けて押し込む際には、連結片が連絡溝に沿って移動し、連結片に連結している保持板部がスプリングを圧縮変形させる。そのため、移動端子の取付部の軸芯は、締結具を固定端子に向けて押す方向に対して傾斜し難くなる。
【0017】
前記支持ブロックには蓋体が取り付けられてもよい。また、好ましくは、前記蓋体には、前記スプリングの弾性力で前記ガイド溝から前記ガイド片がはみ出すことを抑制するストッパ部が具備してある。ストッパ部が設けられることで、スプリングの弾性力が強くても、ガイド溝からガイド片が飛び出すことが抑制される。
【0018】
前記支持ブロックがケーシングの一部として形成してあってもよく、前記ケーシングの内部には、電子機器用コイル部が内蔵してあってもよい。また、前記固定端子は、前記支持ブロックの底部に配置される金属板と一体に形成してあってもよく、アース端子の一部を構成してもよい。
【0019】
本発明に係るノイズフィルタなどの電子機器は、上記のいずれかに記載の端子装置を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は本発明の一実施形態に係る端子装置が装着してある電子機器の斜視図である。
図2図2図1に示す電子機器の分解斜視図である。
図3図3図2に示すIII−III線に沿う電子機器の平面図である。
図4図4図2に示すIV−IV線に沿う電子機器の断面図である。
図5A図5A図2に示す電子機器の端子装置を示す分解斜視図である。
図5B図5B図5Aに示す端子装置の要部斜視図である。
図6A図6A図5Bに示す端子装置の移動端子を示す斜視図である。
図6B図6B図5Bに示すその他の端子装置の移動端子を示す斜視図である。
図7図7図5Aに示すVII-VII線に沿う端子装置の要部断面図である。
図8図8図2に示す電子機器のアース端子を含む金属板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る端子装置が装着してある電子機器2は、ケーシング4と、ケーシング4の上部開口を閉じる蓋体6とを有する。ケーシング4と蓋体6とは、それぞれ別々に成形される合成樹脂などの絶縁部材で構成される。蓋体6は、ケーシング4のZ軸方向の上部開口に着脱自在に取り付けられるが、固定されていても良い。
【0022】
図2に示すように、蓋体6には、X軸方向の端部に、それぞれ一対の貫通孔6a(合計4つ)が形成してある。貫通孔6aには、後述するボルト16の頭部16bが挿通可能になっている。
【0023】
ケーシング4の内部には、コイル部8とコンデンサなどの電子部品が配置してあり、たとえば単相用EMCフィルタなどのノイズフィルタを構成するように、これらの電子部品が接続してある。コイル部8に巻回してある複数ワイヤの各リード部8aは、ライン用端子装置10に向けて引き出されている。また、電子機器2のアースは、固定端子32を有するアース用端子装置30により行われる。
【0024】
図3に示すように、一対のアース用端子装置30は、機器2のX軸方向の両側で、Y軸に沿って互い違いに異なる位置に配置してある。なお、図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直であり、本実施形態では、X軸は、機器2の長手方向に一致し、Z軸は、機器2の高さ方向に一致し、Y軸は、端子装置10,10が隣接する方向に一致する。
【0025】
本発明の一実施形態に係る端子装置は、アース用端子装置30であるが、まずは、ライン用端子装置10について説明する。ライン用端子装置10は、機器2のX軸方向の両端に、それぞれ1対づつ設けられる。図5Aおよび図5Bに示すように、各端子装置10は、固定端子12と、固定端子12に対してZ軸方向に沿って接近および離反移動可能に配置してある移動端子14とを有する。
【0026】
固定端子12は、ケーシング4のX軸方向の両端に、それぞれ一体的に成形してある端子ブロック4aに接着剤などで固定してある。固定端子12には、リード接続片12aが一体的に成形してある。各リード接続片12aには、コイル部8からのリード部8aと、ケーシング4の内部に装着してあるコンデンサなどの電子部品からのリード線などが接続してある。また、固定端子12の中央部には、ねじ穴12bが形成してある。ねじ穴12bには、ボルト16のねじ部16aが螺合可能になっている。
【0027】
図5Aに示すように、各ボルト16は、それぞれの移動端子14に形成してある四角板状の取付片(取付部)14aの取付孔14bに回転自在に装着してある。ボルト16の頭部16bと取付片14aとの間には、ワッシャなどを介在させても良い。図6Bに示すように、移動端子14の取付片14aには、連結片14dを介して、保持板部14cが一体的に成形してある。保持板部14cは、板状の取付片14aに対して、略直角状に折り曲げられて成形してある。
【0028】
保持板部14cのX軸方向の幅は、連結片14dのX軸方向幅よりも広く、連結片14dに対して、X軸方向の両側にはみ出すような形状を有している。保持板部14cのX軸方向の両側に位置する部分が、それぞれガイド縁部14fとなる。本実施形態では、保持板部14cのX軸方向幅は、取付片14aのX軸方向幅よりも狭く構成してあるが、同等または大きくしても良い。ただし、機器2のサイズを小さくする観点からは、保持板部14cのX軸方向幅は、取付片14aのX軸方向幅よりも狭くすることが好ましい。
【0029】
保持板部14cのZ軸方向の下端には、押圧片14eが一体に成形してある。押圧片14eは、保持板部14cの下端から取付片14aと同じ側に折り曲げられて成形してある。すなわち、押圧片14eは、保持板部14cのZ軸方向の上端で折り曲げて成形してある取付片14aと略平行になっている。ただし、押圧片14eの大きさは、スプリング18のZ軸方向の上端である第1端18aに接触してスプリング18を圧縮変形させることができる大きさであれば良く、取付片14aに比較すれば小さい。押圧片14eのX軸方向幅は、保持板部14cのX軸方向幅よりも狭く、連結片14dのX軸方向幅と同程度である。
【0030】
各スプリング18は、図7に示すように、ケーシング4の端子ブロック4aの内部に形成してあるスプリング収容部20の内部に収容され、その第1端18aは、移動端子14の押圧片14eに当接し、その第1端18aと反対側の第2端18bは、収容部20の底部に当接している。本実施形態では、スプリング18の第2端18bは、ケーシング4の底部絶縁壁に接触している。
【0031】
スプリング18は、圧縮力が作用する状態で、収容部20の内部に収容され、スプリング18の第1端18aが、押圧片14eに当接し、押圧片14eを収容部20の内部でZ軸方向の上部に押し上げている。押圧片14eは、固定端子12に形成してある凸片12cのZ軸方向下面に係合し、それ以上に押圧片14eが収容部20の内部でZ軸方向上部に行き過ぎることを防止している。押圧片14eが凸片12cに係合している状態で、移動端子14に装着してあるボルト16の頭部16bは、蓋体6の貫通孔6aからZ軸方向の上部に飛び出している。
【0032】
図6Bに示す移動端子14のガイド縁部14fは、図3に示すように、端子ブロック4aのZ軸方向の上部に形成してあるガイド溝22に差込可能になっており、移動端子14のガイド縁部14fは、ガイド溝22に沿ってZ軸方向の上下に移動自在となっている。ガイド溝22のZ軸方向の下方には、図7に示すスプリング収容部20が形成してある。
【0033】
図1に示すように、ライン用端子装置10が配置される位置で、ケーシング4と蓋体6との間には、X軸方向の外側に開口する隙間開口7が形成してある。図2に示すように移動端子14がZ軸方向の最上方位置に位置する状態で、図1に示す隙間開口7から、リード線が接続してある外部端子50を差し込めば、外部端子50の端子孔51は、図5Aに示す固定端子12のねじ穴12bに位置合わせされる。
【0034】
その状態で、図1に示すボルト16の頭部16bに工具(たとえばドライバー)の先端を押し付けて、貫通孔6aからZ軸の下方へボルト16を押し込めば、図7に示すスプリング18の弾性力に抵抗して、移動端子14は、ボルト16と共にZ軸の下方に移動する。ボルト16のねじ部16aは、移動端子14の下方移動の途中で、固定端子12のねじ穴12bの内部に入り込み始める。その位置で、ボルト16をねじ部16bの軸芯回りに回転させれば、ねじ穴12bにねじ部16aが螺合する。
【0035】
図7では省略してあるが、図1に示す外部端子50は、図7に示す固定端子12と移動端子14の取付片14aとの間に挟まれている。ねじ穴12bにねじ部16aを螺合することで、外部端子50は、固定端子12と移動端子14の取付片14aとの間に固定されて、外部端子50は固定端子12と電気的に接続される。少なくとも固定端子12は金属などの導電性板材を加工して成形され、好ましくは移動端子14も、金属などの導電性板材を加工して成形される。ただし、移動端子14は、必ずしも金属などの導電性材料で構成する必要はない。図2に示すように、固定端子12がリード部8aなどに接続してあるからである。
【0036】
本実施形態では、図6Bに示すように、移動端子14の取付片14aと押圧片14eとが、保持片14cのZ軸方向の上下で、Y軸方向に沿って同じ側に折り曲げられている。保持片14cのガイド縁部14fは、図3に示すように、端子ブロック4aのガイド溝22に入り込むようになっている。したがって、一対のライン用端子装置10が機器2のX軸方向の端部で、それぞれY軸方向に並んで配置してあったとしても、機器2のY軸方向の幅を極力小さくすることができる。
【0037】
次に、本実施形態に係るアース用端子装置30について説明する。アース用端子装置30は、機器2のX軸方向の両端部で、それぞれ、ライン用端子装置10のY軸方向の隣位置で、端子装置10よりも、端子装置10のX軸方向幅に略対応する幅で、X軸方向に内側に引き込んで配置される。しかも、これらのアース用端子装置30は、相互に、機器2のY軸方向に沿って反対側に位置するように配置される。
【0038】
図5Aおよび図5Bに示すように、各端子装置30は、固定端子32と、固定端子32に対してZ軸方向に沿って接近および離反移動可能に配置してある移動端子34とを有する。固定端子32は、ケーシング4のZ軸方向の下端に取り付けられた金属板32cの所定位置からZ軸上方向に立ち上げられた接続片32aの上部に一体に形成してある。
【0039】
金属板32cは、図8に示すように、所定位置で、金属板32cからZ軸上方に立ち上げられた接続片32dを有する。接続片32dの先端部には、たとえば図2に示すケーシング4の内部に装着してあるコンデンサなどの電子部品からのリード線などが接続され、電子回路のアース接地を可能とする。
【0040】
図5Aに示すように、固定端子32の中央部には、ねじ穴32bが形成してある。ねじ穴32bには、ボルト36のねじ部36aが螺合可能になっている。各ボルト36は、それぞれの移動端子34に形成してある円板状の取付片(取付部)34aの取付孔34bに回転自在に装着してある。ボルト36の頭部36bと取付片34aとの間には、ワッシャなどを介在させても良い。図6Aに示すように、移動端子34の取付片34aには、連結片34dを介して、保持板部34cが一体的に成形してある。保持板部34cは、板状の取付片34aおよび連結片34dに対して、略直角状に折り曲げられて成形してある。
【0041】
保持板部34cのY軸方向の幅は、連結片34dのY軸方向幅よりも広く、連結片34dに対して、Y軸方向の両側にはみ出すような形状を有している。保持板部34cのY軸方向の両側に位置する部分が、それぞれガイド片34fとなる。本実施形態では、保持板部34cのY軸方向幅は、取付片34aのY軸方向幅と同等以上の幅に構成してあるが、それよりも小さくしても良い。ただし、移動端子34のZ軸方向の移動をスムーズにする観点からは、保持板部34cのY軸方向幅は、取付片34aのY軸方向幅と同等以上の幅が好ましい。
【0042】
保持板部14cは、図5Bに示すように、固定端子32の近くで固定端子32のX軸方向の内側で、固定端子32に干渉しない位置で、Z軸下方向に向けて連結片34dから突出している。図6Aに示すように、保持板部34cは、コイル状のスプリング38のZ軸方向の上端である第1端38aに形成してある第1端開口に挿入される挿入突片34eを有する。
【0043】
また、保持板部34cは、挿入突片34eの両側に、当該挿入突片34eと同一板片状に形成され、スプリング38の第1端38aのY軸方向両側を挟み込む一対のガイド片34fと、を有する。一対のガイド片と挿入突片34eとの間には、相互に同じ深さの挿入溝が形成してあり、これらの挿入溝の内部に、スプリング8の第1端38aが入り込むようになっている。
【0044】
本実施形態では、一対のガイド片34fの両側端が、図5Aに示すケーシング4の所定位置に一体に成形してある支持ブロック4bに形成してあるガイド溝42にZ軸方向の上部から挿通可能になっている。支持ブロック4bは、固定端子32のX軸方向の内側に隣接して固定してある。支持ブロック4bのガイド溝42に沿ってガイド片34fが案内されることで、移動端子30の取付片34aの軸芯(取付孔34bの軸芯)が傾斜し難くなる。
【0045】
図4に示すように、支持ブロック4bには、ガイド溝42に連通してスプリング38を収容するためのスプリング収容部40が形成してあり、スプリング収容部40の底部にスプリング38の第2端38bが当接している。スプリング収容部40の内部にスプリング38を収容することで、スプリング38が圧縮変形する際にも、スプリング38の軸芯が傾斜し難くなり、図5Aに示す移動端子34の取付片34aの軸芯も傾斜し難くなる。
【0046】
図5Aに示すように、支持ブロック4bには、移動端子34の連結片34dが移動可能に挿入される連絡溝44が形成してあり、連絡溝44により、ガイド溝42が支持ブロック4bのX軸方向の外部に連通している。また、ガイド溝42は、Z軸方向の上部にも開口している。
【0047】
移動端子34の取付片34aを、ボルト36と共に、固定端子32に向けて押し込む際には、連結片34dが連絡溝44に沿って移動し、連結片34dに連結している保持板部34cがスプリング38を圧縮変形させる。そのため、移動端子34の取付片34aの軸芯は、ボルト36を固定端子32に向けて押す方向に対して傾斜し難くなる。
【0048】
図2に示すように、支持ブロック4bの上には蓋体6が取り付けられる。図4に示すように、蓋体6の裏面には、スプリング38の弾性力でガイド溝42からガイド片34fがはみ出すことを抑制するストッパ片(ストッパ部)6bが具備してある。ストッパ片6bが設けられることで、スプリング38の弾性力が強くても、ガイド溝42からガイド片34fがZ軸上方に飛び出すことが抑制される。
【0049】
本実施形態では、図6Aに示すように、Z軸方向に沿った挿入突片34eの突出長さよりも、ガイド片34fの突出長さが長い。このように構成することで、ガイド片34fによるガイド動作がより安定化し、締結具としてのボルト36を固定端子32に対して傾斜させることなくスムーズに押し込み易い。また、ボルト36を固定端子32のねじ穴32bに締結する際には、ボルト36の軸線が傾きにくいことから、ボルト36を固定端子32に容易に結合させることができる。
【0050】
なお、スプリング38は、スプリング18と同じであることが、構成部品の共用化の観点から好ましいが、必ずしも同じである必要はない。また、ボルト36も、ボルト16と同じであることが、構成部品の共用化の観点から好ましいが、必ずしも同じである必要はない。
【0051】
各スプリング38は、図4に示すように、ケーシング4の支持ブロック4bの内部に形成してあるスプリング収容部40の内部に収容され、その第1端38aと反対側の第2端38bは、収容部40の底部に当接している。本実施形態では、スプリング38の第2端38bは、ケーシング4の底部絶縁壁に接触しているが、それに限らず、直接に、金属板32cの上面に直接に接触していても良い。
【0052】
スプリング38は、圧縮力が作用する状態で、収容部40の内部に収容され、スプリング38の第1端38aが、移動端子34を収容部40の内部でZ軸方向の上部に押し上げている。
【0053】
図1に示すように、移動端子14がZ軸方向の最上方位置に位置する状態で、リード線が接続してある外部端子52を、ボルト36のねじ部36aと固定端子32との間に差し込めば、外部端子52の端子孔53は、固定端子32のねじ穴32bに位置合わせされる。
【0054】
その状態で、ボルト36の頭部36bに工具(たとえばドライバー)の先端を押し付けて、Z軸の下方へボルト36を押し込めば、図4に示すスプリング38の弾性力に抵抗して、移動端子34は、ボルト36と共にZ軸の下方に移動する。ボルト36のねじ部36aは、移動端子34の下方移動の途中で、固定端子32のねじ穴32bの内部に入り込み始める。その位置で、ボルト36をねじ部36bの軸芯回りに回転させれば、ねじ穴32bにねじ部36aが螺合する。
【0055】
その結果、図1に示す外部端子52は、固定端子32と移動端子34の取付片34aとの間に挟まれる。ねじ穴32bにねじ部36aを螺合することで、外部端子52は、固定端子32と移動端子34の取付片34aとの間に固定されて、外部端子52は固定端子32と電気的に接続される。
【0056】
少なくとも固定端子32は金属などの導電性板材を加工して成形され、好ましくは移動端子34も、金属などの導電性板材を加工して成形される。ただし、移動端子34は、必ずしも金属などの導電性材料で構成する必要はない。固定端子32がアース接地される金属板32cと一体化されているからであり、固定端子32と外部端子52とが接続されれば、アース接地の目的は達成される。
【0057】
本実施形態の端子装置30では、締結具としてのボルト36が取り付けられている取付片34aを固定端子32に向けて押すことで、図4に示す挿入突片34eが差し込まれるスプリング38の第1端38aが移動端子34により軸方向に押される。その際に、スプリング38の第1端38aは、その両側が一対のガイド片34fにより挟まれており、ガイド片34fはガイド溝42によりZ軸方向に案内されていることから、移動端子34の取付片に装着してあるボルト38を固定端子32に対して傾斜させることなくスムーズに押し込み易い。また、ボルト38を固定端子32に締結する際には、ボルト38の軸線が傾き難いことから、ボルト38を固定端子32のねじ穴32bに容易に螺合させることができる。
【0058】
また、図6Aに示すように、保持板部34cは、挿入突片34eと、その両側に当該挿入突片34eと同一板片状に形成される一対のガイド片34fとを有していることから、移動端子34の取付片34aに作用するボルト38による押圧力の軸線と、挿入突片34eによりスプリング38に作用する押圧力の軸線とを可能な限りに近くに位置させることができる。この観点からも、図1に示す取付片34aに装着してあるボルト38を固定端子32に対して押し込む方向に移動させる際に、ボルト36の軸線が傾きにくい。
【0059】
さらに、ボルト36が、移動端子34に装着してあることから、端子52の接続を確保するために、装置2とは別にボルトやネジなどを準備する必要がない。そのため、ボルトやネジなどを紛失するおそれが少なく、ボルトやネジなどが短絡などの故障原因となるおそれも少ない。したがって、本実施形態の端子装置30は、電源回路のノイズフィルタ、電源用コンバータ、ブレーカ装置などのように電源回路用装置に用いて好適である。
【0060】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0061】
たとえば、締結具としては、ボルト36以外に、ビス、ネジなどを用いることができる。また、図1に示す外部端子50,52としては、穴あき端子に限らず、リード線の先端自体であっても良く、その他の端子であっても良い。
【0062】
また、本発明の端子装置は、アース用端子装置以外の用途に用いても良く、たとえばライン用端子装置、あるいはその他の用途の回路のための端子装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
2… 電子機器
4… ケーシング
4a… 端子ブロック
4b… 支持ブロック
6… 蓋体
6a… 貫通孔
6b… ストッパ片(ストッパ部)
7… 隙間開口
8… コイル部
8a… リード部
10… ライン用端子装置
12… 固定端子
12a… リード接続片
12b… ねじ穴
12c… 凸片
14… 移動端子
14a… 取付片(取付部)
14b… 取付孔
14c… 保持板部
14d… 連結片
14e… 押圧片
14f… ガイド縁部
16… ボルト
16a… ねじ部
16b… 頭部
18… スプリング
18a… 第1端
18b… 第2端
20… スプリング収容部
22… ガイド溝
30… アース用端子装置
32… 固定端子
32a… 接続片
32b… ねじ穴
32c… 金属板
32d… 接続片
34… 移動端子
34a… 取付片(取付部)
34b… 取付孔
34c… 保持板部
34d… 連結片
34e… 挿入突片
34f… ガイド片
36… ボルト(締結具)
36a… ねじ部
36b… 頭部
38… スプリング
38a… 第1端
38b… 第2端
40… スプリング収容部
42… ガイド溝
44… 連絡溝
50,52… 外部端子
51,53… 端子孔
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8