(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記磁場発生部が配置された前記積層方向又は前記面内方向から見た際に、前記磁場発生部が前記磁気抵抗効果素子の全面と重畳している、又は、前記磁気抵抗効果素子が前記第1の方向と直交する第2の方向に渡って前記磁場発生部と重畳している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、磁気抵抗効果デバイスについて、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかる磁気抵抗効果デバイスの回路構成を示した模式図である。
図1に示す磁気抵抗効果デバイス100は、第1のポート1と、第2のポート2と、磁気抵抗効果素子10と、第1の信号線路20と、第2の信号線路30と、第3の信号線路31と、直流印加端子40と、磁場印加機構50とを備える。
【0028】
<第1のポート及び第2のポート>
第1のポート1は、磁気抵抗効果デバイス100の入力端子である。第1のポート1は、第1の信号線路20の一端に対応する。第1のポート1に交流信号源(図視略)を接続することで、磁気抵抗効果デバイス100に交流信号を印加できる。
【0029】
第2のポート2は、磁気抵抗効果デバイス100の出力端子である。第2のポート2は、第2の信号線路30の一端に対応する。第2のポート2に高周波測定器(図視略)を接続することで、磁気抵抗効果デバイス100から出力される信号を測定できる。高周波測定器には、例えば、ネットワークアナライザ等を用いることができる。
【0030】
<磁気抵抗効果素子>
磁気抵抗効果素子10は、第1強磁性層11と、第2強磁性層12と、第1強磁性層11と第2強磁性層12の間に挟持されたスペーサ層13とを有する。以下、第1強磁性層を磁化固定層とし、第2強磁性層を磁化自由層として説明するが、第1強磁性層及び第2強磁性層はいずれとして機能してもよい。磁化固定層11の磁化は、磁化自由層12の磁化より動きにくく、所定の磁場環境下では一方向に固定される。磁化固定層11の磁化の向きに対して磁化自由層12の磁化の向きが相対的に変化することで、磁気抵抗効果素子10として機能する。
【0031】
磁化固定層11は、強磁性体材料で構成されている。磁化固定層11は、Fe、Co、Ni、NiとFeの合金、FeとCoの合金、またはFeとCoとBの合金などの高スピン分極率材料から構成されることが好ましい。これらの材料を用いることで、磁気抵抗効果素子10の磁気抵抗変化率が大きくなる。また磁化固定層11は、ホイスラー合金で構成されても良い。磁化固定層11の膜厚は、1〜10nmとすることが好ましい。
【0032】
磁化固定層11の磁化固定方法は、特に問わない。例えば、磁化固定層11の磁化を固定するために磁化固定層11に接するように反強磁性層を付加してもよい。また、結晶構造、形状などに起因する磁気異方性を利用して磁化固定層11の磁化を固定してもよい。反強磁性層には、FeO、CoO、NiO、CuFeS
2、IrMn、FeMn、PtMn、CrまたはMnなどを用いることができる。
【0033】
磁化自由層12は、外部印加磁場もしくはスピン偏極電子によってその磁化の方向が変化可能な強磁性体材料で構成されている。
【0034】
磁化自由層12は、磁化自由層12を積層する積層方向と垂直な面内方向に磁化容易軸を有する場合の材料として、CoFe、CoFeB、CoFeSi、CoMnGe、CoMnSiまたはCoMnAlなどを用いることができ、磁化自由層12の積層方向に磁化容易軸を有する場合の材料として、Co、CoCr系合金、Co多層膜、CoCrPt系合金、FePt系合金、希土類を含むSmCo系合金またはTbFeCo合金などを用いることができる。また、磁化自由層12は、ホイスラー合金で構成されても良い。
【0035】
磁化自由層12の厚さは、1〜10nm程度とすることが好ましい。また磁化自由層12とスペーサ層13との間には、高スピン分極率材料を挿入しても良い。高スピン分極率材料を挿入することによって、高い磁気抵抗変化率を得ることが可能となる。
【0036】
高スピン分極率材料としては、CoFe合金またはCoFeB合金などが挙げられる。CoFe合金またはCoFeB合金いずれの膜厚も0.2〜1.0nm程度とすることが好ましい。
【0037】
スペーサ層13は、磁化固定層11と磁化自由層12の間に配置される非磁性層である。スペーサ層13は、導電体、絶縁体、半導体によって構成される層、もしくは、絶縁体中に導体によって構成される通電点を含む層で構成される。
【0038】
例えば、スペーサ層13が絶縁体からなる場合は、磁気抵抗効果素子10はトンネル磁気抵抗(TMR:Tunneling Magnetoresistance)素子となり、スペーサ層13が金属からなる場合は巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magnetoresistance)素子となる。
【0039】
スペーサ層13を非磁性導電材料で構成する場合、Cu、Ag、Au又はRu等の導電材料を用いることができる。GMR効果を効率よく利用するためには、スペーサ層13の膜厚は、0.5〜3.0nm程度が好ましい。
【0040】
スペーサ層13を非磁性半導体材料で構成する場合、ZnO、In
2O
3、SnO
2、ITO、GaO
x又はGa
2O
x等の材料を用いることができる。この場合、スペーサ層13の膜厚は1.0〜4.0nm程度が好ましい。
【0041】
スペーサ層13として非磁性絶縁体中の導体によって構成される通電点を含む層を適用する場合、Al
2O
3またはMgOによって構成される非磁性絶縁体中に、CoFe、CoFeB、CoFeSi、CoMnGe、CoMnSi、CoMnAl、Fe、Co、Au、Cu、AlまたはMgなどの導体によって構成される通電点を含む構造とすることが好ましい。この場合、スペーサ層13の膜厚は、0.5〜2.0nm程度が好ましい。
【0042】
磁気抵抗効果素子10への通電性を高めるためには、磁気抵抗効果素子10の積層方向の両面に電極を設けることが好ましい。以下、磁気抵抗効果素子10の積層方向の下部に設けられた電極を下部電極14、上部に設けられた電極を上部電極15という。下部電極14及び上部電極15を設けることで、第2の信号線路30及び第3の信号線路31と磁気抵抗効果素子10の接触が面になり、磁気抵抗効果素子10の面内方向いずれの位置においても、信号(電流)の流れが積層方向に沿う。
【0043】
下部電極14及び上部電極15は、導電性を有する材料により構成される。例えば、Ta、Cu、Au、AuCu、Ru等を下部電極14及び上部電極15に用いることができる。
【0044】
また磁気抵抗効果素子10と下部電極14又は上部電極15との間には、キャップ層、シード層またはバッファー層を配設しても良い。キャップ層、シード層またはバッファー層としては、Ru、Ta、Cu、Crまたはこれらの積層膜などが挙げられる。これらの層の膜厚は、それぞれ2〜10nm程度とすることが好ましい。
【0045】
磁気抵抗効果素子10の大きさは、磁気抵抗効果素子10の平面視形状が長方形(正方形を含む)の場合、長辺を300nm以下にすることが望ましい。磁気抵抗効果素子10の平面視形状が長方形ではない場合は、磁気抵抗効果素子10の平面視形状に最小の面積で外接する長方形の長辺を、磁気抵抗効果素子10の長辺と定義する。
【0046】
長辺が300nm程度と小さい場合、磁化自由層12の体積が小さくなり、高効率な強磁性共鳴現象の実現が可能となる。ここで、「平面視形状」とは、磁気抵抗効果素子10を構成する各層の積層方向から見た形状のことである。
【0047】
<第1の信号線路>
第1の信号線路20は、一端が第1のポート1に接続され、他端が基準電位に接続されている。
図1では、基準電位としてグラウンドGに接続している。第1のポート1に入力される高周波信号とグラウンドGとの電位差に応じて、第1の信号線路20内に高周波電流が流れる。第1の信号線路20内に高周波電流が流れると、第1の信号線路20から高周波磁場が発生する。磁気抵抗効果素子10には、この高周波磁場が印加される。
【0048】
図2は、第1実施形態にかかる磁気抵抗効果デバイス100の磁気抵抗効果素子10近傍の斜視模式図である。以下、磁気抵抗効果素子10の積層方向をz方向、z方向と直交する面内の一方向をx方向、x方向及びz方向に直交する方向をy方向と言う。
【0049】
図2に示すように、第1の信号線路20は、磁気抵抗効果素子10のz方向の位置にx方向(第1の方向)に延在する磁場発生部21を有する。ここで磁場発生部21とは、高周波電流が流れることで高周波磁場を発生する部分を意味し、第1の信号線路20全体が磁場発生部でもよい。
【0050】
図3は、第1実施形態にかかる磁気抵抗効果デバイス及び磁場発生部と磁気抵抗効果素子とがz方向からみて重畳していない磁気抵抗効果デバイスの磁気抵抗効果素子10近傍をz方向から平面視した図である。
図3に示すように、z方向から平面視した際に、磁気抵抗効果素子10と磁場発生部21とが重畳する態様としてはいくつかの場合がある。
【0051】
第1の態様は、
図3(a)に示すように、磁気抵抗効果素子10の一部と磁場発生部21の一部とが重畳する場合である。第2の態様は、
図3(b)に示すように、磁場発生部21が磁気抵抗効果素子10の全面と重畳する場合であり、平面視で磁気抵抗効果素子10は磁場発生部21の範囲内に内包されている。第3の態様は、
図3(c)に示すように、磁気抵抗効果素子10がy方向に渡って磁場発生部21と重畳している場合であり、磁気抵抗効果素子10は平面視で磁場発生部21をy方向に横断している。また
図3(d)には、磁場発生部と磁気抵抗効果素子とがz方向からみて重畳していない場合の態様を模式的に示した。
【0052】
図4は、z方向からみた際における磁場発生部と磁気抵抗効果素子との重畳状態を変えた際における磁気抵抗効果デバイスの出力信号強度を測定した結果である。
図4における実施例1−1は
図3(a)に示す第1の態様の場合の結果であり、実施例1−2は、
図3(b)に示す第2の態様の場合の結果であり、実施例1−3は、
図3(c)に示す第3の態様の場合の結果であり、比較例1−1は
図3(d)に示す他の態様の場合の結果である。
図4の検討は、以下のような条件のもと電磁界シミュレータを用いてシミュレーションにより行った。
【0053】
実施例1−1〜1−3及び比較例1−1のいずれにおいても磁気抵抗効果素子10の平面視の形状は円形とし、直径を200nmとした。また磁場発生部21のy方向の幅は200nmとした。実施例1−1では磁場発生部21のy方向の中心軸と磁気抵抗効果素子10のy方向の中心軸との距離は150nmとした。また実施例1−2及び1−3では、磁場発生部21のy方向の中心軸と磁気抵抗効果素子10のy方向の中心軸とは一致させた。さらに比較例1−1では、磁場発生部21のy方向の中心軸と磁気抵抗効果素子10のy方向の中心軸とは200nmとした。磁場発生部21に流す高周波電流の周波数は3.6GHz、入力電力は−36dBmとした。また磁場発生部21は、磁気抵抗効果素子10のz方向上方100nmの位置に設けた。
【0054】
図4に示すように、磁場発生部21と磁気抵抗効果素子10とが磁場発生部21が配置されたz方向から見た際に重畳する部分を有する実施例1−1〜1−3は、重畳する部分を有さない比較例1−1より磁気抵抗効果デバイスの出力特性に優れていた。また第2の態様(
図3(b)、実施例1−2)や第3の態様(
図3(c)、実施例1−3)のように、磁気抵抗効果素子10のy方向の中心軸と磁場発生部21のy方向の中心軸とが一致すると、磁気抵抗効果デバイス100から出力される信号強度がより強くなった。さらに第2の態様(
図3(b)、実施例1−2)に示すように、平面視で磁気抵抗効果素子10は磁場発生部21の範囲内に内包されている場合は、特に磁気抵抗効果デバイス100から出力される信号強度がより強くなった。この重畳状態と磁気抵抗効果デバイスから出力される信号強度との関係は、磁場発生部の幅、磁気抵抗効果素子の直径等を変化させても同様の傾向が確認された。
【0055】
磁場発生部21と磁気抵抗効果素子10とが重畳する部分を有すると、磁気抵抗効果デバイスから出力される信号が大きくなる理由は明確ではない。しかしながら、磁気抵抗効果デバイスから出力される信号は、磁気抵抗効果素子10の抵抗値変化量に依存する。そのため、磁気抵抗効果素子10の磁化自由層12に適切な方向から適切な強度の高周波磁場が印加され、磁気抵抗効果素子10の抵抗値変化量が大きくなったと考えられる。
【0056】
このように磁場発生部21と磁気抵抗効果素子10との関係は、磁気抵抗効果デバイスの出力特性に影響を及ぼす。第1実施形態における磁気抵抗効果デバイスにおいて、磁場発生部21の幅は、磁気抵抗効果素子10の幅の0.5倍以上10倍以下であることが好ましく、0.75倍以上4倍以下であることがより好ましく、1.0倍であることがさらに好ましい。
【0057】
ここで「幅」とは、磁気抵抗効果素子10が積層するz方向に直交するxy面内において磁場発生部21内を流れる電流(x方向)と直交する方向(y方向)の幅を意味する。例えば磁気抵抗効果素子10の幅は、磁気抵抗効果素子10のy方向の一端を通りx方向と平行な直線に向けてy方向の他端から下した垂線の長さを意味する。
【0058】
図5は、磁気抵抗効果素子10の幅と磁場発生部21の幅の相対関係を変化させた際の高周波磁場の強度の関係を示した図である。
図5の検討は、以下のような条件のもと電磁界シミュレータを用いてシミュレーションにより行った。
【0059】
磁場発生部21は、磁気抵抗効果素子10のz方向上方100nmの位置に設けた。磁気抵抗効果素子10の中心は、磁場発生部21のy方向の中心線上に設けた。磁場発生部21の長さは3μm、z方向の厚みは100nmとした。磁場発生部21に流す高周波電流の周波数は3.6GHz、入力電力は−36dBmとした。
【0060】
磁気抵抗効果素子10の平面視形状は円形とし、その直径を100nmφ、200nmφ、400nmφの3つの場合において、磁場発生部21のy方向の幅を変えた際に磁気抵抗効果素子10に加わる高周波磁場のxy面内成分が最大値をとる条件を求めた。
【0061】
図5に示すように、磁気抵抗効果素子10の幅に対して磁場発生部21の幅が1倍となる点近傍で、磁気抵抗効果素子10に印加される磁場は最大値を示した。磁気抵抗効果素子10の平面視の直径を変えた場合でも、同様の傾向が確認された。
【0062】
磁場発生部21の幅は、100nm以上800nm以下であることが好ましく、125nm以上400nm以下であることがより好ましく、150nm以上200nm以下であることがさらに好ましい。
【0063】
図6は、磁場発生部21の幅を変化させた際に、磁気抵抗効果素子に加わる高周波磁場の強度の関係を示した図である。
図6の検討は、
図5の検討と同様の条件のもと電磁界シミュレータを用いてシミュレーションにより行った。
【0064】
図6に示すように、磁気抵抗効果素子10のxy面内方向の成分は、磁場発生部21の幅が所定の値で極大値を示した。上述の磁気抵抗効果素子10の幅と磁場発生部21の幅との関係でも示したように、極大値を示す磁場発生部21の幅は磁気抵抗効果素子10の幅と略一致した。
【0065】
磁場発生部21のz方向の厚みは、50nm以上500nm以下であることが好ましく、75nm以上200nm以下であることがより好ましく、100nm以上150nm以下であることがさらに好ましい。
【0066】
図7は、磁場発生部21の厚みを変化させた際に、磁気抵抗効果素子に加わる高周波磁場の強度の関係を示した図である。
図7の検討は、磁場発生部21の幅を200nmで固定し、磁場発生部21の厚みを変更した点以外は
図5の検討と同様の条件のもと電磁界シミュレータを用いてシミュレーションにより行った。
【0067】
図7に示すように、磁気抵抗効果素子10のxy面内方向の成分は、磁場発生部21の厚みが100nm近傍で高周波磁場の強度が極大値を示した。この極大値を示す磁場発生部21の厚みは、磁気抵抗効果素子10の大きさによらず一定であった。
【0068】
また磁場発生部21と磁気抵抗効果素子10の距離は、500nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。
【0069】
図8は、磁場発生部21と磁気抵抗効果素子10の距離を変化させた際に、磁気抵抗効果素子に加わる高周波磁場の強度の関係を示した図である。
図8の検討は、磁場発生部21の幅を200nmで固定し、磁場発生部21と磁気抵抗効果素子10の距離を変更した点以外は
図5の検討と同様の条件のもと電磁界シミュレータを用いてシミュレーションにより行った。
【0070】
図8に示すように、磁場発生部21と磁気抵抗効果素子10との距離が近ければ近いほど、大きな磁場を磁気抵抗効果素子10に与えることができた。
【0071】
また磁場発生部21がx方向に延在する長さは、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。
【0072】
図9は、磁場発生部21のx方向の長さを変化させた際に、磁気抵抗効果素子に加わる高周波磁場の強度の関係を示した図である。
図9の検討は、磁場発生部21の幅を200nmで固定し、磁場発生部21のx方向の長さを変更した点以外は
図5の検討と同様の条件のもと電磁界シミュレータを用いてシミュレーションにより行った。
【0073】
図9に示すように、磁場発生部21のx方向の長さが長くなると、磁気抵抗効果素子10に印加される磁場の大きさは小さくなる。
【0074】
また磁場発生部21の配設方向は、磁気抵抗効果素子10に印加される高周波磁場の方向と磁化固定層11の磁化容易方向とを考慮して決定することが好ましい。
図10は、磁気抵抗効果素子10の磁化自由層12に印加される高周波磁場の方向と、磁化固定層11の磁化容易方向との関係を示す図である。
図10では、理解を容易にするために、磁気抵抗効果素子10の磁化固定層11及び磁化自由層12のみを抜き出して図示している。
【0075】
磁化固定層11の磁化M
11は、磁化容易方向11aに固定される。一方で、磁化自由層12には、磁場発生部21(
図2参照)から高周波磁場が印加される。磁場発生部21は、アンペールの法則から磁場発生部21が延在する方向を軸とする回転方向に磁場を生み出す。
図2では、磁場発生部21がx方向に延在するため、磁気抵抗効果素子10の磁化自由層12に印加する高周波磁場の方向はy方向となる。
図10では、この磁化自由層12に高周波磁場が印加される方向を符号21aとして図示する。
【0076】
磁場発生部21が磁気抵抗効果素子10の磁化自由層12に印加する高周波磁場の方向21aと、磁気抵抗効果素子10の磁化固定層11の磁化容易方向11aとのなす角θ1は5°以上65°以下であることが好ましく、20°以上55°以下であることがより好ましい。
【0077】
図11は、磁化自由層12に印加される高周波磁場の方向21aと、磁化固定層11の磁化容易方向11aとのなす角θ1を変更した際に、磁気抵抗効果デバイス100が出力する出力電圧の振幅の変化を示す図である。
図11に示すように、磁化自由層12に印加される高周波磁場の方向21aと、磁化固定層11の磁化容易方向11aとのなす角θ1が上記の範囲内であると、出力電圧の振幅が大きくなる。
【0078】
<第2の信号線路、第3の信号線路>
第2の信号線路30は、一端が磁気抵抗効果素子10に接続され、他端が第2のポート2に接続されている。すなわち、第2の信号線路30は、磁気抵抗効果素子10と第2のポート2とを繋ぐ。第2の信号線路30は、磁気抵抗効果素子10の強磁性共鳴を利用して選択された周波数の信号を第2のポート2から出力する。
【0079】
第3の信号線路31は、一端が磁気抵抗効果素子10に接続され、他端が基準電位に接続されている。
図1では第3の信号線路31を、第1の信号線路20の基準電位と共通のグラウンドGに接続しているが、その他の基準電位に接続してもよい。回路構成を簡便にするためには、第1の信号線路20の基準電位と第3の信号線路31の基準電位とは共通していることが好ましい。
【0080】
各信号線路及びグラウンドGの形状は、マイクロストリップライン(MSL)型やコプレーナウェーブガイド(CPW)型に規定することが好ましい。マイクロストリップライン(MSL)型やコプレーナウェーブガイド(CPW)型に設計する場合、信号線路の特性インピーダンスと、回路系のインピーダンスとが等しくなるように、信号線路幅やグラウンド間距離を設計することが好ましい。このように設計することによって信号線路の伝送損失を抑えることができる。
【0081】
<直流印加端子>
直流印加端子40は、電源41に接続され、磁気抵抗効果素子10の積層方向に直流電流又は直流電圧を印加する。電源41は、一定の直流電流を発生可能な、固定抵抗と直流電圧源との組み合わせの回路により構成されてもよい。また電源41は直流電流源でも、直流電圧源でもよい。
【0082】
直流印加端子40と第2の信号線路30との間には、インダクタ42が配設されている。インダクタ42は、電流の高周波成分をカットし、電流の直流成分のみを通す。インダクタ42により磁気抵抗効果素子10から出力された出力信号は第2のポート2に効率的に流れる。またインダクタ42により直流電流は、電源41、第2の信号線路30、磁気抵抗効果素子10、第3の信号線路31、グラウンドGという閉回路を流れる。
【0083】
インダクタ42には、チップインダクタ、パターン線路によるインダクタ、インダクタ成分を有する抵抗素子等を用いることができる。インダクタ42のインダクタンスは10nH以上であることが好ましい。
【0084】
<磁場印加機構>
磁場印加機構50は、磁気抵抗効果素子10に外部磁場を印加し、磁気抵抗効果素子10の共鳴周波数を変調する。磁気抵抗効果デバイス100が出力する信号は、磁気抵抗効果素子10の共鳴周波数により変動する。そのため、出力信号を可変にするためには、磁場印加機構をさらに有することが好ましい。
【0085】
磁場印加機構50は、磁気抵抗効果素子10の近傍に配設されることが好ましい。磁場印加機構50は、例えば、電圧又は電流のいずれかにより印加磁場強度を可変制御できる電磁石型又はストリップライン型で構成される。また、印加磁場強度を可変制御できる電磁石型又はストリップライン型と、一定磁場のみを供給する永久磁石と、の組み合わせにより構成されてもよい。
【0086】
「磁気抵抗効果デバイスの機能」
磁気抵抗効果デバイス100に第1のポート1から高周波信号が入力されると、高周波信号に対応する高周波電流が第1の信号線路20内を流れる。第1の信号線路20内を流れる高周波電流は、磁気抵抗効果素子10に高周波磁場を印加する。第1の信号線路20は、磁気抵抗効果素子10に対して所定の位置に設けられており、磁気抵抗効果素子10に対して大きな高周波磁場を印加する。
【0087】
磁気抵抗効果素子10の磁化自由層12の磁化は、第1の信号線路20により磁気抵抗効果素子10に印加された高周波磁場が、磁化自由層12の強磁性共鳴周波数の近傍の場合に大きく振動する。この現象が、強磁性共鳴現象である。
【0088】
磁化自由層12の振動が大きくなると、磁気抵抗効果素子10における抵抗値変化が大きくなる。磁気抵抗効果素子10の抵抗値変化は、下部電極14と上部電極15との間の電位差として第2のポート2から出力される。
【0089】
すなわち、第1のポート1から入力された高周波信号が磁化自由層12の共鳴周波数近傍の場合は、磁気抵抗効果素子10の抵抗値の変動量が大きく、第2のポート2から大きな信号が出力される。これに対し、高周波信号が磁化自由層12の共鳴周波数から外れている場合は、磁気抵抗効果素子10の抵抗値の変動量が小さく、第2のポート2から信号がほとんど出力されない。すなわち、磁気抵抗効果デバイス100は特定の周波数の高周波信号のみを選択的に通過できる高周波フィルタとして機能する。
【0090】
磁気抵抗効果デバイス100が選択する周波数は、磁化自由層12の強磁性共鳴周波数を変えることで変調できる。強磁性共鳴周波数は、磁化自由層12における有効磁場によって変化する。磁化自由層12における有効磁場H
effは、磁化自由層12に印加される外部磁場をH
E、磁化自由層12における異方性磁場をH
k、磁化自由層12における反磁場をH
D、磁化自由層12における交換結合磁場をH
EXとすると、以下の式で表される。
H
eff=H
E+H
k+H
D+H
EX
【0091】
上式で示すように、磁化自由層12における有効磁場は、外部磁場H
Eの影響を受ける。外部磁場H
Eの大きさは、磁場印加機構50により調整できる。
図12は、磁気抵抗効果素子10に印加される直流電流が一定の場合に磁気抵抗効果デバイス100に入力される高周波信号の周波数と出力される電圧の振幅との関係を示す図である。
【0092】
磁気抵抗効果素子10に任意の外部磁場が印加されると、磁化自由層12の強磁性強磁性共鳴周波数は外部磁場の影響を受けて変化する。この際の強磁性共鳴周波数をfb1とする。磁化自由層12の強磁性共鳴周波数がfb1であるため、磁気抵抗効果デバイス100に入力される高周波信号の周波数がfb1の際に出力電圧の振幅が大きくなる。そのため、
図12に示すプロット線100b1のグラフが得られる。
【0093】
次いで印加する外部磁場を大きくすると、外部磁場の影響を受けて強磁性共鳴周波数がfb1からfb2にシフトする。この際、出力電圧の振幅が大きくなる周波数もfb1からfb2にシフトする。その結果、
図12に示すプロット線100b2のグラフが得られる。このように、磁場印加機構50は、磁気抵抗効果素子10の磁化自由層12に印加される有効磁場H
effを調整し、強磁性共鳴周波数を変調できる。
【0094】
また電源41から磁気抵抗効果素子10に印加される直流電流の電流密度を変えることで、強磁性共鳴周波数を変調することもできる。
図13は、磁気抵抗効果素子10に印加される外部磁場が一定の場合に磁気抵抗効果デバイス100に入力される高周波信号の周波数と出力される電圧の振幅との関係を示す図である。
【0095】
磁気抵抗効果デバイス100の第2のポート2から出力される出力電圧は、磁気抵抗効果素子10において振動する抵抗値と、磁気抵抗効果素子10に流れる直流電流の積で表される。磁気抵抗効果素子に流れる直流電流が大きくなると、出力電圧の振幅(出力信号)は大きくなる。
【0096】
また磁気抵抗効果素子10に流れる直流電流量が変わると、磁化自由層12における磁化の状態が変化し、磁化自由層12における異方性磁場H
k、反磁場H
D、磁交換結合磁場H
EXの大きさが変化する。その結果、直流電流が大きくなると強磁性共鳴周波数は低くなる。つまり、
図13に示すように直流電流量が大きくなると、プロット線100a1からプロット線100a2にシフトする。このように、電源41から磁気抵抗効果素子10に印加する電流量を変えることで、強磁性共鳴周波数を変調できる。
【0097】
また上記では磁気抵抗効果デバイスを高周波フィルタとして用いる場合を例に提示したが、磁気抵抗効果デバイスはアイソレータ、フェイズシフタ、増幅器(アンプ)等の高周波デバイスとしても利用できる。
【0098】
磁気抵抗効果デバイスをアイソレータとして用いる場合は、第2のポート2から信号を入力する。第2のポート2から信号を入力しても第1のポート1から出力されることはないため、アイソレータとして機能する。
【0099】
また磁気抵抗効果デバイスをフェイズシフタとして用いる場合は、出力される周波数帯域が変化する場合において、出力される周波数帯域の任意の1点の周波数に着目する。出力される周波数帯域が変化する際に、特定の周波数における位相は変化するため、フェイズシフタとして機能する。
【0100】
また磁気抵抗効果デバイスを増幅器として用いる場合は、磁気抵抗効果素子10の抵抗値変化量を大きくする。磁気抵抗効果素子10の抵抗値変化量は、電源41から入力する直流電流を所定の大きさ以上にしたり、第1の信号線路20が磁気抵抗効果素子10に印加する高周波磁場を大きくすることで、大きくなる。磁気抵抗効果素子10の抵抗値変化量が大きくなると、第1のポート1から入力される信号より第2のポート2から出力される信号が大きくなり、増幅器として機能する。
【0101】
上述のように、第1実施形態にかかる磁気抵抗効果デバイス100は、高周波フィルタ、アイソレータ、フェイズシフタ、増幅器等の高周波デバイスとして機能できる。
【0102】
また第1実施形態にかかる磁気抵抗効果デバイス100は、第1の信号線路20が磁気抵抗効果素子10に対して所定の位置に設けられており、磁気抵抗効果素子10に対して大きな高周波磁場を印加できる。その結果、磁気抵抗効果素子10の抵抗値変化量を大きくなり、出力特性に優れる磁気抵抗効果デバイス100が得られる。
【0103】
(第2実施形態)
図14は、第2実施形態にかかる磁気抵抗効果デバイス101の磁気抵抗効果素子10近傍の斜視模式図である。第2実施形態にかかる磁気抵抗効果デバイス101は、磁場発生部21が磁気抵抗効果素子10の面内方向に配設されている点が、第1実施形態にかかる磁気抵抗効果デバイス100と異なる。その他の構成は同一であり、同一の構成については同一の符号を付す。
【0104】
図15は、第2実施形態にかかる磁気抵抗効果デバイスと磁場発生部と磁気抵抗効果素子とがy方向からみて重畳していない磁気抵抗効果素子10近傍をy方向から平面視した図である。
図15に示すように、y方向から平面視した際に、磁気抵抗効果素子10と磁場発生部21とが重畳する態様としてはいくつかの場合がある。
【0105】
第1の態様は、
図15(a)に示すように、磁気抵抗効果素子10の一部と磁場発生部21の一部とが重畳する場合である。第2の態様は、
図15(b)に示すように、磁場発生部21が磁気抵抗効果素子10の全面と重畳する場合であり、平面視で磁気抵抗効果素子10は磁場発生部21の範囲内に内包されている。第3の態様は、
図15(c)に示すように、磁気抵抗効果素子10がz方向に渡って磁場発生部21と重畳している場合であり、磁気抵抗効果素子10は平面視で磁場発生部21をz方向に横断している。また
図15(d)には、磁場発生部と磁気抵抗効果素子とがy方向からみて重畳していない場合の態様を模式的に示した。
【0106】
図16は、y方向からみた際における磁場発生部と磁気抵抗効果素子との重畳状態を変えた際における磁気抵抗効果デバイスの出力信号強度を測定した結果である。
図16における実施例2−1は
図15(a)に示す第1の態様の場合の結果であり、実施例2−2は、
図15(b)に示す第2の態様の場合の結果であり、実施例2−3は、
図15(c)に示す第3の態様の場合の結果であり、比較例2−1は
図15(d)に示す他の態様の場合の結果である。
図16の検討は、以下のような条件のもと電磁界シミュレータを用いてシミュレーションにより行った。
【0107】
実施例2−1〜2−3及び比較例2−1のいずれにおいても磁気抵抗効果素子10の平面視の形状は円形とし、直径を200nm、高さ20nmとした。また磁場発生部21のz方向の厚みは100nmとした。実施例2−1では磁場発生部21のz方向の中心軸と磁気抵抗効果素子10のz方向の中心軸との距離は55nmとした。また実施例2−2及び2−3では、磁場発生部21のz方向の中心軸と磁気抵抗効果素子10のz方向の中心軸とは一致させた。さらに比較例2−1では、磁場発生部21のz方向の中心軸と磁気抵抗効果素子10のz方向の中心軸とは200nmとした。磁場発生部21に流す高周波電流の周波数は3.6GHz、入力電力は−36dBmとした。また磁場発生部21は、磁気抵抗効果素子10のy方向側方100nmの位置に設けた。
【0108】
図16に示すように、磁場発生部21と磁気抵抗効果素子10とが磁場発生部21が配置されたy方向から見た際に重畳する部分を有する実施例2−1〜2−3は、重畳する部分を有さない比較例2−1より磁気抵抗効果デバイスの出力特性に優れていた。また第2の態様(
図15(b)、実施例2−2)や第3の態様(
図15(c)、実施例2−3)のように、磁気抵抗効果素子10のz方向の中心軸と磁場発生部21のz方向の中心軸とが一致すると、磁気抵抗効果デバイス100から出力される信号強度がより強くなった。さらに第2の態様(
図15(b)、実施例2−2)に示すように、y方向から見て磁気抵抗効果素子10が磁場発生部21の範囲内に内包されている場合は、特に磁気抵抗効果デバイス100から出力される信号強度がより強くなった。この重畳状態と磁気抵抗効果デバイスから出力される信号強度との関係は、磁場発生部の厚み、幅、磁気抵抗効果素子の直径等を変化させても同様の傾向が確認された。
【0109】
磁場発生部21と磁気抵抗効果素子10とがy方向から見て重畳する部分を有すると、磁気抵抗効果デバイスから出力される信号が大きくなる理由は明確ではない。しかしながら、磁気抵抗効果デバイスから出力される信号は、磁気抵抗効果素子10の抵抗値変化量に依存する。そのため、磁気抵抗効果素子10の磁化自由層12に適切な方向から適切な強度の高周波磁場が印加され、磁気抵抗効果素子10の抵抗値変化量が大きくなったと考えられる。
【0110】
このように磁場発生部21と磁気抵抗効果素子10との関係は、磁気抵抗効果デバイスの出力特性に影響を及ぼす。第1実施形態における磁気抵抗効果デバイスにおいて、磁場発生部21の厚みは、磁気抵抗効果素子10の厚みの3倍以上50倍以下であることが好ましく、5倍以上10倍以下であることがより好ましい。
【0111】
また磁場発生部21のz方向の厚みは、100nm以上800nm以下であることが好ましく、125nm以上400nm以下であることがより好ましく、150nm以上200nm以下であることがさらに好ましい。
【0112】
図17は、磁場発生部21の厚みを変化させた際に、磁気抵抗効果素子10に加わる高周波磁場の強度の関係を示した図である。
図17の検討は、以下のような条件のもと電磁界シミュレータを用いてシミュレーションにより行った。
【0113】
磁場発生部21は、磁気抵抗効果素子10のy方向側面100nmの位置に設けた。磁気抵抗効果素子10の厚み方向の中心位置と、磁場発生部21のz方向の中心位置とは一致させた。磁場発生部21の長さは3μm、z方向の厚みは100nmとした。磁場発生部21に流す高周波電流の周波数は3.6GHz、入力電力は−36dBmとした。
【0114】
磁気抵抗効果素子10の平面視形状は円形とし、その直径を100nmφ、200nmφ、400nmφの3つの場合において、磁場発生部21のz方向の厚みを変えた際に磁気抵抗効果素子10に加わる高周波磁場の面直成分(z方向)が最大値をとる条件を求めた。磁気抵抗効果素子10の高さは20nmとした。
【0115】
図17に示すように、磁気抵抗効果素子10に印加される高周波磁場は、磁場発生部21の厚みが200nmの際に極大値を示した。磁気抵抗効果素子10の高さが20nmであるため、この場合の磁場発生部21の厚みは磁気抵抗効果素子10の厚みの10倍に対応する。
【0116】
磁場発生部21の幅は、50nm以上500nm以下であることが好ましく、75nm以上200nm以下であることがより好ましく、100nm以上150nm以下であることがさらに好ましい。
【0117】
図18は、磁場発生部21の幅を変化させた際に、磁気抵抗効果素子に加わる高周波磁場の強度の関係を示した図である。
図18の検討は、磁場発生部21の厚みを100nmで固定し、磁場発生部21の幅を変更した点以外は
図17の検討と同様の条件のもと電磁界シミュレータを用いてシミュレーションにより行った。
図18に示すように、磁場発生部21の幅は狭くなるほど、磁気抵抗効果素子10に印加される高周波磁場の強度が強くなった。
【0118】
また
図19は、磁場発生部21と磁気抵抗効果素子10の距離を変化させた際に、磁気抵抗効果素子に加わる高周波磁場の強度の関係を示した図である。
図19の検討は、磁場発生部21の厚みを100nmで固定し、磁場発生部21と磁気抵抗効果素子10の距離を変更した点以外は
図17の検討と同様の条件のもと電磁界シミュレータを用いてシミュレーションにより行った。
【0119】
図19に示すように、磁場発生部21と磁気抵抗効果素子10との距離が近ければ近いほど、磁気抵抗効果素子10に印加される磁場が大きくなる。すなわち、磁場発生部21と磁気抵抗効果素子10の距離は、500nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。
【0120】
また
図20は、磁場発生部21のx方向の長さを変化させた際に、磁気抵抗効果素子に加わる高周波磁場の強度の関係を示した図である。
図20の検討は、磁場発生部21の厚みを100nmで固定し、磁場発生部21のx方向の長さを変更した点以外は
図17の検討と同様の条件のもと電磁界シミュレータを用いてシミュレーションにより行った。
【0121】
図20に示すように、磁場発生部21のx方向の長さが長くなると、磁気抵抗効果素子10に印加される磁場の大きさは小さくなる。
【0122】
また磁場発生部21が磁気抵抗効果素子10のy方向に存在する場合でも、磁気抵抗効果素子10に印加される高周波磁場の方向と磁化固定層11の磁化容易方向との関係は変わらない。すなわち、磁場発生部21が磁気抵抗効果素子10の磁化自由層12に印加する高周波磁場の方向と、磁気抵抗効果素子10の磁化固定層11の磁化容易方向とのなす角θ1は5°以上65°以下であることが好ましく、20°以上55°以下であることがより好ましい。
【0123】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0124】
例えば、
図21に示す磁気抵抗効果デバイス102のように、磁気抵抗効果素子10a、10bを、電源41、第2の信号線路30、第3の信号線路31、グラウンドGによる閉回路内に、複数並列に配設してもよい。すなわち、複数の磁気抵抗効果素子10a、10bは、共通の上部電極15及び下部電極14に接続される。
【0125】
それぞれの磁気抵抗効果素子10a、10bの強磁性共鳴周波数を異なるものにすると、磁気抵抗効果デバイス102で選択できる選択周波数の帯域を広くできる。それぞれの磁気抵抗効果素子10a、10bは、それぞれの強磁性共鳴周波数で大きな抵抗値変化を示し、その合算した値が第2のポート2から出力される。そのため、それぞれの強磁性共鳴周波数を重ねあわせた範囲の周波数が、磁気抵抗効果デバイス102の選択周波数となり、選択周波数の帯域が広くなる。
【0126】
磁気抵抗効果素子10a、10bの強磁性共鳴周波数は、磁気抵抗効果素子10a、10bをz方向から見た際の平面視形状を変えることで制御することができる。
【0127】
また磁場印加機構50は、
図21に示すように複数の磁気抵抗効果素子10a、10bに対して共通して1つとしてもよいし、それぞれの磁気抵抗効果素子10a、10bに対しそれぞれ設けてもよい。それぞれの磁気抵抗効果素子10a、10bに対し、それぞれ磁場印加機構50を設けると、磁気抵抗効果デバイス102の集積性は低下するが、磁気抵抗効果デバイス102の選択周波数の設定の自由度が高まる。
【0128】
また例えば、
図22に示す磁気抵抗効果デバイス103のように、磁気抵抗効果素子10a、10bを、電源41、第2の信号線路30、第3の信号線路31、グラウンドGによる閉回路内に、複数直列に配設してもよい。
【0129】
それぞれの磁気抵抗効果素子10a、10bの強磁性共鳴周波数を異なるものにすると、磁気抵抗効果デバイス102で選択できる選択周波数の帯域を広くできる。それぞれの磁気抵抗効果素子10a、10bは、それぞれの強磁性共鳴周波数で大きな抵抗値変化を示し、その合算した値が第2のポート2から出力される。そのため、それぞれの強磁性共鳴周波数を重ねあわせた範囲の周波数が、磁気抵抗効果デバイス103の選択周波数となり、選択周波数の帯域が広くなる。
【0130】
また磁場印加機構50は、
図22に示すように複数の磁気抵抗効果素子10a、10bに対して共通して1つとしてもよいし、それぞれの磁気抵抗効果素子10a、10bに対しそれぞれ設けてもよい。それぞれの磁気抵抗効果素子10a、10bに対し、それぞれ磁場印加機構50を設けると、磁気抵抗効果デバイス103の集積性は低下するが、磁気抵抗効果デバイス103の選択周波数の設定の自由度が高まる。