特許第6822327号(P6822327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6822327
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】全方向移動車
(51)【国際特許分類】
   B60B 19/00 20060101AFI20210114BHJP
【FI】
   B60B19/00 H
   B60B19/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-123372(P2017-123372)
(22)【出願日】2017年6月23日
(65)【公開番号】特開2019-6242(P2019-6242A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2019年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中島 丘史
【審査官】 高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−155652(JP,A)
【文献】 特開2010−076630(JP,A)
【文献】 特開2003−063462(JP,A)
【文献】 特開2010−143409(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/151128(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 19/00
B62K 17/00
B62D 15/00
B62B 3/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に設けられた複数の車輪ユニットと、を備えた全方向移動車であって、
前記複数の車輪ユニットのそれぞれは、
全方向移動車輪と、
前記全方向移動車輪を回転させるモータと、
前記全方向移動車輪よりも上側において前記全方向移動車輪と一体に設けられており、上下方向に直交し、且つ、前記全方向移動車輪の回転軸線方向に直交する方向に延びる回動軸部と、
前記回動軸部を回動可能に支持する軸支持部と、
前記全方向移動車輪に回転軸線方向からの力が加わった際に収縮し、前記回転軸線方向からの力が解放されたときに復元する弾性部材と、を備え
前記全方向移動車輪は、前記全方向移動車輪に前記回転軸線方向からの力が加わった場合に前記回動軸部を中心として車体の内側に向けて回動する全方向移動車。
【請求項2】
前記複数の車輪ユニットのそれぞれは、
前記全方向移動車輪の上下動を許容する許容部と、
前記全方向移動車輪の上下動によって加わる力によって伸縮する緩衝部材を備える請求項1に記載の全方向移動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全方向移動車に関する。
【背景技術】
【0002】
全方向移動車輪によって走行する全方向移動車としては、例えば、特許文献1に記載されている。全方向移動車は、車体と、車体に設けられた複数の全方向移動車輪と、を備える。全方向移動車は、全方向移動車輪の回転方向や、全方向移動車輪の回転数(回転速度)を調整することで、車体の向きを変更することなく、直進、斜行、横行などが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−186693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、全方向移動車が使用される環境によっては、床の高低差や、障害物などによって生じた全方向移動車の進行方向に対してせり上がった段差部が床に存在する場合がある。全方向移動車輪がモータの駆動力によって回転している場合、この回転力によって段差を乗り越えることができる。しかしながら、全方向移動車の進行方向によっては、回転していない状態の全方向移動車輪を回転軸線方向に移動させて段差部を乗り越える必要がある。この場合、回転していない状態の全方向移動車輪には駆動力が無いため、全方向移動車に作用する推力によって回転していない状態の全方向移動車輪に段差部を乗り越えさせる必要があり、乗り越えが困難となる場合がある。
【0005】
本発明の目的は、段差部の乗り越えが容易な全方向移動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する全方向移動車は、車体と、前記車体に設けられた複数の車輪ユニットと、を備えた全方向移動車であって、前記複数の車輪ユニットのそれぞれは、全方向移動車輪と、前記全方向移動車輪を回転させるモータと、前記全方向移動車輪よりも上側において前記全方向移動車輪と一体に設けられており、上下方向に直交し、且つ、前記全方向移動車輪の回転軸線方向に直交する方向に延びる回動軸部と、前記回動軸部を回動可能に支持する軸支持部と、前記全方向移動車輪に回転軸線方向からの力が加わった際に収縮し、前記回転軸線方向からの力が解放されたときに復元する弾性部材と、を備える。
【0007】
これによれば、回転していない全方向移動車輪が回転軸線方向に移動し、その回転していない全方向移動車輪に段差部を乗り越えさせようとすると、回転していない全方向移動車輪は段差部に当接する。段差部には、回転している全方向移動車輪のモータによって付与された推力によって生じた力が加わり、この力と同等の反力が全方向移動車輪に加わる。この力により、全方向移動車輪は回動軸部を中心として回動する。そして、全方向移動車輪の回動により、弾性部材が収縮しながら全方向移動車輪は進行方向とは反対方向に傾く。全方向移動車輪が傾いた分だけ車体は進行することができるため、回転していない状態の全方向移動車輪は傾きながら段差部に乗り上がっていくことになる。即ち、全方向移動車の進行に伴い、回転していない状態の全方向移動車輪は浮き上がり、段差部の乗り越えが容易となる。段差部を乗り越えた後には、回転していない状態の全方向移動車輪の回動により収縮していた弾性部材が復元することで、傾いた全方向移動車輪は元の状態に戻ることになる。
【0008】
上記全方向移動車について、前記複数の車輪ユニットのそれぞれは、前記全方向移動車輪の上下動を許容する許容部と、前記全方向移動車輪の上下動によって加わる力によって伸縮する緩衝部材を備えていてもよい。
【0009】
これによれば、緩衝部材により、段差部を乗り越えた際に発生する衝撃を緩和することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、全方向移動車輪によって走行する全方向移動車において段差部の乗り越えが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】全方向移動車の平面図。
図2】全方向移動車を示す図1の2−2線断面図。
図3】回動支持部の斜視図。
図4】段差部の乗り越え条件を示す図。
図5】(a)〜(e)は全方向移動車輪の回転方向と、進行方向との関係を示す図。
図6】全方向移動車が段差部を乗り越える際の全方向移動車輪の傾きを示す図。
図7】全方向移動車が段差部を乗り越える際のフリーローラの動きを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、全方向移動車の一実施形態について説明する。全方向移動車は、例えば、荷を搬送する搬送台車に適用される。
図1に示すように、全方向移動車10は、車体(台車)20と、4つの車輪ユニット30と、車体20の外縁に設けられたバンパー21と、を備える。4つの車輪ユニット30は、車体20の外縁に沿って配置されている。各車輪ユニット30は、4つの車輪ユニット30の中心O(4つの車輪ユニット30を繋いだ円の中心)に対し90°毎に配置されている。
【0013】
図2に示すように、車体20は、収容部22を備える。収容部22は、車輪ユニット30の数に合わせて設けられ、本実施形態では4つ設けられている。収容部22は、各車輪ユニット30を収容するための空間であり、車体20の底面から凹むように設けられている。
【0014】
車体20は、収容部22の上方(鉛直方向の反対方向)に設けられた支持部23と、支持部23から下方(鉛直方向)に延び、収容部22内に配設された取付部24と、を備える。支持部23は、収容部22に面しており、収容部22を区画しているともいえる。バンパー21は、車体20の外側から収容部22を覆う。
【0015】
各収容部22には、車輪ユニット30が収容されている。各車輪ユニット30は、同一の構成である。車輪ユニット30は、全方向移動車輪(以下、車輪と称する)40と、車輪40を回転駆動させる駆動源となるモータMと、車輪40を車体20に取り付けるための車輪取付部材50と、を備える。
【0016】
本実施形態の車輪40は、複列式のオムニホイールである。車輪40は、相互に固定された2つのホイール41,42と、各ホイール41,42の外周に設けられた複数のフリーローラ43と、を備える。フリーローラ43は、フリーローラ43の回転軸線がホイール41,42の回転軸線に対して、90°傾く状態で配設されている。両ホイール41,42の中心軸には、モータMの回転軸Aが固定されている。車輪40は、ホイール41,42の中心軸を回転軸線として回転する。
【0017】
フリーローラ43は、例えば、60°間隔置きに6つ設けられている。フリーローラ43は、図示しないローラ軸に自由回転可能な状態で支持されている。2つのホイール41,42は、相互に30°ずれた状態で固定されている。これにより、一方のホイール41,42に設けられたフリーローラ43同士の間の部分に、他方のホイール41,42に設けられたフリーローラ43が隣り合う。
【0018】
モータMの駆動により車輪40が回転すると、フリーローラ43が順次、路面に接していくことで全方向移動車10は走行する。また、車輪40が回転軸線方向に移動する際には、床に接しているフリーローラ43が回転することで回転軸線方向への移動を許容する。以下の説明において、回転軸線方向とは、車輪40の回転軸線方向を示すものとする。
【0019】
図1、及び、図2に示すように、4つの車輪40は、回転軸線が中心Oを向くように配置されている。モータMは、車輪40よりも車体20の内側(中心O)に寄って設けられている。モータMと、車輪40とは回転軸線方向に向かい合って配置されている。
【0020】
車輪取付部材50は、車輪40及びモータMの両方を保持する保持部51と、保持部51と支持部23との間に設けられた緩衝部材71と、保持部51と取付部24との間に設けられた弾性部材72と、回動支持部60と、を備える。
【0021】
保持部51は、回転軸線方向に車輪40と対向して設けられた側部52と、車輪40の上方に設けられた上部53と、を備える。側部52は、車輪40よりも車体20の内側(中心O)に寄って設けられている。側部52には、モータMが取り付けられている。これにより、保持部51、モータM、及び、モータMに取り付けられた車輪40が一体化(モジュール化)されている。上部53は、車輪40と、支持部23との間に位置している。
【0022】
図2及び図3に示すように、回動支持部60は、上部53に固定された軸部材61と、支持部23に固定された軸支持部62と、を備える。軸部材61は、上部53から支持部23に向けて延びる軸部63と、軸部63と垂直に交わる回動軸部64と、を備える。回動軸部64は、上下方向に直交し、且つ、回転軸線方向に直交する方向に延びている。軸部材61が上部53に固定されることで、回動軸部64と車輪40とは一体となっている。
【0023】
軸支持部62は、回動軸部64が挿入される挿通孔65を備える。挿通孔65の貫通方向は、上下方向に直交し、且つ、回転軸線方向に直交する方向であり、回動軸部64の延びる方向と同一である。挿通孔65は、上下方向に長手が延びる長孔であり、長手方向(上下方向)の寸法は、回動軸部64の直径よりも長い。
【0024】
回動軸部64は、挿通孔65に挿入されている。これにより、軸支持部62は、回動軸部64を支持している。回動軸部64及び挿通孔65は、保持部51を介して上下方向に車輪40と重なるように配置されている。即ち、車輪40の外形を上方に投影した範囲内に回動軸部64が位置する。本実施形態では、車輪40の回転軸線方向の中心と、回動軸部64とが上下方向に重なる。
【0025】
回動軸部64は、上下方向に直交する方向に対する挿通孔65内での移動が規制される一方で、上下方向に対する挿通孔65内での移動が許容されている。また、回動軸部64は、挿通孔65内での周方向への回動が許容されている。挿通孔65内での回動軸部64の上下動を可能とすることで、保持部51を介して回動支持部60に支持された車輪40の上下動は許容されている。したがって、挿通孔65が許容部として機能することになる。
【0026】
図2に示すように、緩衝部材71はバネである。緩衝部材71は、支持部23及び保持部51に固定されている。全方向移動車10の走行に伴い車輪40が上下動すると、この上下動に合わせて保持部51も上下動する。そして、車輪40の上下動によって加わる力は、保持部51を介して緩衝部材71に加わり、緩衝部材71は車輪40の上下動に伴う力によって伸縮する。
【0027】
弾性部材72はバネである。弾性部材72は、取付部24及び保持部51に固定されている。弾性部材72は、車輪40よりも車体20の内側(中心O)に寄って設けられている。弾性部材72は、車輪40からの力が加わっていない状態で、車輪40の回転軸線と床とが平行となるように設けられている。また、弾性部材72は、全方向移動車10の走行に伴う外力が作用し、車輪40に回転軸線方向からの力が加わった場合には収縮する。したがって、弾性部材72は、車輪40に回転軸線方向からの力が加わると収縮し、この力が解放されたときには弾性力により復元する。
【0028】
上記した全方向移動車10は、車体20の向きを維持したまま直進、斜行、横行することが可能である。なお、以下の説明において、図1に示す中心Oを中心点として点対称となるように配置された2つの車輪を車輪40A,40Cとし、残りの2つの車輪を車輪40B,40Dとして説明を行う。車輪40Bと車輪40Dとは、中心Oを中心点として点対称となるように配置されている。
【0029】
図5(a)に示すように、4つの車輪40のうち、車輪40Aと車輪40Cとを同一方向に回転させ、且つ、車輪40Bと車輪40Dとを同一方向に回転させると、全方向移動車10は直進(前進及び後進)する。なお、以下、この場合に全方向移動車10が進行する方向を前後方向とする。
【0030】
図5(b)に示すように、4つの車輪40のうち、車輪40Bと40Dとを同一方向に回転させ、残り2つの車輪40A,40Cを停止させると、全方向移動車10は斜行する(前後方向に対して斜めに進行する)。
【0031】
図5(c)に示すように、4つの車輪40のうち、車輪40Aと車輪40Cとを直進時とは反対方向に回転させ、且つ、車輪40Bと車輪40Dとを直進時と同一方向に回転させると、全方向移動車10は横行する。
【0032】
また、全方向移動車10は、その場で旋回する(進行することなく車体20の向きを変更する)ことも可能であり、旋回しながら進行(車体20の向きを変更しながら進行)することも可能である。
【0033】
図5(d)に示すように、車輪40Aと車輪40Cとを異なる方向に回転させ、車輪40Bと車輪40Dとを異なる方向に回転させると、全方向移動車10はその場で旋回(=自転)する。
【0034】
図5(e)に示すように、4つの車輪40の回転方向及び回転数(回転速度)を調整することで、全方向移動車10は旋回(自転)しながら進行する。
次に、本実施形態の全方向移動車10の作用について説明する。
【0035】
図4に示すように、全方向移動車10の走行する床FLには、全方向移動車10の進行方向に対してせり上がった段差部Sが存在するとする。図4では、段差部Sは床FLの高低差によって生じているが、床FLに置かれた障害物によっても段差部Sは生じ得る。
【0036】
前述したように、全方向移動車10が斜行している場合、回転していない車輪40が進行方向における最も前方に位置することになる。すると、段差部Sを乗り越える際には、4つの車輪40のうち回転していない車輪40が最初に段差部Sに差し掛かることになる。また、全方向移動車10が斜行している場合、回転していない車輪40の回転軸線方向と進行方向とは一致しているため、フリーローラ43によって段差部Sを乗り越えることになる。
【0037】
ここで、回転していない車輪40のフリーローラ43が段差部Sを乗り越えるための条件は、段差部Sの角部にフリーローラ43が接触したときのモーメントが、F×d>P×eを満たす場合である。Fは全方向移動車10の推力[N]であり、dは段差部Sの高さと、床FLから角部に接触したフリーローラ43の中心軸までの高さとの差[m]であり、Pは輪重(車輪40の質量)[kg]であり、eはフリーローラ43の中心軸から段差部Sまでの水平方向での距離[m]である。
【0038】
図6及び図7に示すように、回転していない車輪40が段差部Sに差し掛かると、段差部Sには、車体20の推力によって生じた力がフリーローラ43から加わり、この力と同等の反力がフリーローラ43には加わることになる。なお、車体20の推力は、回転している2つの車輪40を回転駆動させるモータMによって付与されている。
【0039】
段差部Sからの反力によって車輪40は回動軸部64を中心として車体20の内側(進行方向の反対方向)に向けて回動することになる。この回動により、車輪40は進行方向とは反対方向に傾いていき、車輪40は床FLから離間していく。収容部22は、車輪40の傾きを許容するため、車輪40の回動範囲に空間を確保しているといえる。車輪40が進行方向とは反対方向に傾いた分だけ、車体20は進行することができるため、車輪40は段差部Sに乗り上がっていく。したがって、回動軸部64を中心とする車輪40の回動により、dは大きくなり、eは小さくなる。そして、F×d>P×eの条件が満たされると、車輪40が段差部Sを乗り越える。
【0040】
また、車輪40が上に動くと、この力が保持部51を介して軸部63に伝わる。回動軸部64は、挿通孔65内での上下動が許容されているため、車輪40が上に動くことは許容されている。車輪40が上に動くことで、車体20に衝撃が加わろうとするが、緩衝部材71がサスペンションとして機能することで、衝撃は緩和されることになる。詳細に説明すると、路面から加わる衝撃力は、緩衝部材71によって弾性エネルギーに変換され、これにより車体20に加わる衝撃力を緩和することができる。
【0041】
本実施形態では、弾性部材72及び緩衝部材71としてバネを用いている。バネを弾性部材72として用いた場合には、バネの弾性変形によって段差部Sの乗り越え時に車輪40の傾きを可能とするとともに、弾性変形したバネの復元力によって段差部Sの乗り越え後に車輪40を元の状態に戻すことができる。バネを緩衝部材71として用いた場合には、バネの弾性変形により衝撃を弾性エネルギーに変換して衝撃を緩和することができる。このため、バネは、弾性部材72としても緩衝部材71としても用いることができる。
【0042】
したがって、上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)車輪ユニット30は、弾性部材72と、回動軸部64と、回動軸部64を回動可能に支持した軸支持部62と、を備える。車輪40に回転軸線方向からの力が加わったときに、弾性部材72が収縮しながら車輪40が回動軸部64を中心として回動することで、車輪40を進行方向とは反対方向に向かうように傾かせることができる。車輪40が傾いた分だけ車体20は進行することができるため、車輪40は段差部Sに乗り上がることになる。即ち、全方向移動車10の進行に伴い、車輪40は浮き上がり、段差部Sの乗り越えが容易となる。段差部Sを乗り越えた後には、車輪40の回動により収縮していた弾性部材72が復元することで、傾いた車輪40は元の状態に戻り、通常の走行が可能となる。
【0043】
(2)挿通孔65は、上下方向に延びる長孔であり、回動軸部64の上下動を許容する。また、車輪ユニット30は、上下方向に伸縮する緩衝部材71を備える。これにより、車輪40の上下動を許容しつつ、車輪40が上に動いた際の衝撃を緩衝部材71で緩和することができ、段差部Sを乗り越えた際に発生する衝撃を緩和することができる。
【0044】
(3)車輪ユニット30は、車輪40よりも外側に補助ガイド等を配置することなく段差部Sを乗り越えることができるため、全方向移動車10の車幅が大きくなることを抑制できる。
【0045】
また、車輪40よりも外側に補助ガイドを設けた場合、補助ガイドにより、バンパー21の装着がしにくくなる。本実施形態のように、車輪40より外側に補助ガイド等を配置しないことで、バンパー21の装着が行いやすい。
【0046】
(4)回転しない車輪40によって段差部Sを乗り越える際に、段差部Sに接触するのはフリーローラ43である。フリーローラ43は回転するため、乗り越えによる車輪40の変形が生じにくい。
【0047】
なお、実施形態は、以下のように変更してもよい。
○緩衝部材71は、設けられていなくてもよい。この場合、回動支持部60は、車輪40の上下動を許容しなくてもよい。即ち、回動軸部64が挿通孔65の中で上下動できなくてもよい。この場合であっても、回動軸部64を中心とする車輪40の回動によって、段差部Sの乗り越えは容易となる。
【0048】
○車輪40として、オムニボール、メカナムホイール、単列式のオムニホイールなどを用いてもよい。メカナムホイールは、ホイール41,42の回転軸線に対して、フリーローラ43の回転軸線が45°程度傾いたものである。オムニボールは、半球状の2つのホイールをそれぞれ受動回転させるものである。単列式のオムニホイールは、フリーローラを備えるホイールが単数のものである。
【0049】
○軸部材61をシリンダに代えてもよい。シリンダは、車輪40の上下動に伴いシリンダチューブ内に出没するロッドを備え、このロッドは保持部51に取り付けられている。シリンダチューブの外側面からは、回動軸部64が突出し、この回動軸部64は挿通孔65に挿入される。回動軸部64は、挿通孔65内で上下動が規制されている。この場合、車輪40の上下動は、シリンダチューブに対するロッドの出没によって許容されることになる。したがって、シリンダが許容部となる。
【0050】
○モータMの駆動力を、動力伝達機構(例えば、ベルトなど)を介して車輪40に伝達させてもよい。
○モータMは、車輪40に埋め込まれていてもよい。
【0051】
○回動軸部64は、円柱状に限られず。四角柱状でもよい。この場合、回動軸部64が挿入された軸受が挿通孔65に挿入される。
○弾性部材72としては、回転軸線方向から車輪40に力が加わった際に伸縮し、この力が解放されたときに復元する部材であればよく、例えば、ゴムなどを用いてもよい。
【0052】
○緩衝部材71としては、ショックアブゾーバなど、走行に伴う衝撃を緩和できるものであれば、どのようなものを用いてもよい。
○車輪40の数は、3つ以上であれば適宜変更してもよい。
【0053】
○回動軸部64及び挿通孔65の位置は、上下方向に車輪40と重なり合えば、どのような位置に設けられていてもよい。また、車輪40の回動による段差部Sの乗り越えを阻害しない範囲であれば、上下方向に車輪40と重なり合わない位置に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
M…モータ、10…全方向移動車、20…車体、30…車輪ユニット、40…全方向移動車輪、62…軸支持部、64…回動軸部、71…緩衝部材、72…弾性部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7