(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動制御部は、逆方向へ旋回する旨の操作情報を受信した場合、前記ベッドが反対方向へ回転するように、前記駆動部を制御する、請求項4に記載されたベッド搬送装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るベッド搬送装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るベッド搬送装置の斜視図である。ベッド搬送装置100は、病院や介護施設等でベッドを搬送する際に操作者が1人でベッドを搬送するための装置である。
図1に示すように、ベッド搬送装置100は、本体部1と、車輪3と、連結部4と、を備えている。
【0018】
本体部1は、前後方向へ延びる部材である。本実施形態では、本体部1は、上部にて前後方向へ延びる上部部材1Aと、下部にて前後方向へ延びる下部部材1Bと、を備えている。上部部材1Aは、前後方向の両端側において、下部部材1Bよりも外側へ延びている。これによって、下部部材1Bの両端よりも外側には、車輪3を設けるためのスペースが確保される。なお、本体部1の内部には制御部50(
図5参照)などの制御機器や、駆動機構等が収容されていてよい。なお、特に説明の無い限り、ベッド搬送装置100に対して用いられる「前後方向」という表現は、ベッド搬送装置100が平行移動する際の前後方向を示すものとする。ただし、ベッド搬送装置100は、本体部1の前後方向の両端部のうち、どちらを「前」にしてどちらを「後」にするかを切替可能である(詳細は後述)。
【0019】
車輪3は、本体部1を移動させるためのものである。車輪3は、本体部1の前後方向における一方側及び他方側に少なくとも1つずつ設けられる。以降の説明においては、前後方向における一方側に設けられる車輪3を車輪(駆動部)3Aと称する。前後方向における他方側に設けられる車輪3を車輪(駆動部)3Bと称する。車輪3Aは、上部部材1Aの一方側の端部1aの下側に設けられる。車輪3Bは、上部部材1Aの他方側の端部1bの下側に設けられる。このような配置により、車輪3A及び車輪3Bは前後方向に対向して、互いに離間した位置に配置される。
【0020】
一方側の車輪3A、及び他方側の車輪3Bは、それぞれ駆動輪である。すなわち、車輪3Aと車輪3Bとは、いずれも駆動機構を有している。また、一方側の車輪3A、及び他方側の車輪3Bは、それぞれ独立して旋回可能である。すなわち、車輪3Aと車輪3Bとは、いずれも旋回機構(操舵機構)を有している。
【0021】
図2を参照して、車輪3の駆動機構及び旋回機構の一例について説明する。
図2(a)は、車輪3を前後方向から見たときの図である。
図2(b)は、車輪3を上方から見たときの図である。これらの駆動機構及び旋回機構は、車輪3A及び車輪3Bの両方に設けられている。なお、
図2に示す構成は、あくまでも一例に過ぎず、詳細な構成は適宜変更可能である。
図2に示すように、車輪3の回転軸17の一方の端部は支持部材11に支持されており、先端部には駆動モータ12が設けられている。なお、支持部材11は、車輪3の端面と対向して上下方向に延びる対向部11bと、車輪3の上側にて水平方向に延びる水平部11aと、を有している。回転軸17は、支持部材11の対向部11bに支持されている。支持部材11の水平部11aは、上方へ延びて固定部材13に支持された旋回軸19と接続されている。旋回軸19の上端にはプーリー14が設けられており、プーリー14は、ベルト18を介して操舵モータ16と接続されている。固定部材13は本体部1に固定されている一方、支持部材11は固定部材13からは離間している。従って、操舵モータ16の回転に従って、支持部材11、回転軸17、駆動モータ12、及び車輪3は、旋回軸19周りに360°回転する。
【0022】
以上のように、車輪3A及び車輪3Bには、駆動機構及び旋回機構が設けられているため、互いに独立して駆動及び旋回可能である。従って、二つの車輪の回転と旋回を組み合わせることで、本体部1は、任意方向への平行移動、カーブ、その場旋回といった動作が可能となる。なお、車輪3の旋回角度は360°でなくともよく、少なくとも180°旋回できればよい。
【0023】
図1に示すように、連結部4は、本体部1の下部部材1Bに設けられている。連結部4は、ベッド20の側面20aにて当該ベッド20と連結する。具体的には、下部部材1Bの側面1Baから突出するように設けられている。これにより、ベッド搬送装置100は、連結部4をベッド20の下部水平フレーム23に潜り込ませて、連結部4で下部水平フレーム23を支持することで互いに連結する(
図3参照)。
【0024】
次に、
図3を参照して、ベッド搬送装置100がベッド20を搬送しているときの様子について説明する。
図3に示すように、ベッド20は、上板22と、上板22の四隅から下方へ延びる柱部24と、柱部24の下端に設けられる車輪21と、柱部24の下端付近において当該柱部24付近を互いに連結する下部水平フレーム23と、を備えている。ベッド搬送時、ベッド搬送装置100は、ベッド20の側面20aと対向する位置にて、互いに隣り合うように配置される。このとき、ベッド搬送装置100の本体部1が延びる方向とベッド20の上板22が延びる方向とは、平行な状態となっている。したがって、ベッドの長手方向が「前後方向」となる。当該状態で、連結部4を下部水平フレーム23に連結させる。これによって、ベッド搬送装置100とベッド20とは、互いに連結した状態となる。従って、ベッド搬送装置100の移動に伴って、ベッド20も同様に移動することができる。
【0025】
図4に示すように、ベッド搬送装置100は、リモコン30で操作可能である。リモコン30は、無線通信にてベッド搬送装置100を操作することができる。ただし、リモコン30は、有線通信にてベッド搬送装置100を操作してもよい。
図4に示すように、リモコン30は、ベッド搬送装置100の移動方向の操作を行うジョイスティック31と、走行モードを切り換える走行モード切替スイッチ32と、進行方向の切替を行う進行方向切替スイッチ33と、連結部4の昇降を行う昇降スイッチ34と、を備えている。走行モード切替スイッチ32は、「平行移動モード」、「カーブモード」、「横移動モード」及び「その場旋回モード」等の走行モードを切り換えることができるスイッチである。
【0026】
進行方向切替スイッチ33は、ジョイスティック31で「前」「後」の操作をした時における、ベッド搬送装置100の進行方向を切り替えるためのスイッチである。これにより、操作者は、前後方向における一方側と他方側との間で、進行方向の前側と後側とを切り替えできる。例えば、操作者が本体部1の端部1a側に立って端部1b側に体を向けている時、操作者にとっては、本体部1の端部1b側が「前」であり、端部1a側が「後」である。従って、操作者が、進行方向切替スイッチ33にて、端部1b側を「前」に設定し、ジョイスティック31にて「前」を押せばベッド搬送装置100は、端部1b側へ走行する。一方、操作者が本体部1の端部1b側に立って端部1a側に体を向けている時、操作者にとっては、本体部1の端部1a側が「前」であり、端部1b側が「後」である。従って、操作者は進行方向切替スイッチ33を操作することで、進行方向を切り替える。これによって、ジョイスティック31にて「前」を押せばベッド搬送装置100は、端部1a側へ走行する。ただし、リモコン30を持つ向きを変えるなどにより、リモコン30自体の向きを変更して、本体部1の進行方向の変更に対応してもよい。なお、本体部1には、現在の設定ではどちらが「前」であるかを示すような、進行方向表示部などを設けてもよい。進行方向表示部は、例えば、色の点灯や点滅、液晶で矢印を表示するなどによって、進行方向の前後を示してよい。
【0027】
次に、
図5を参照して、ベッド搬送装置100のシステム構成について説明する。ベッド搬送装置100は、車輪3A,3Bを制御する制御部50を備えている。この制御部50は、CPU[CentralProcessingUnit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等を有する電子制御ユニットである。制御部50では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。制御部50は、複数の電子ユニットから構成されていてもよい。制御部50は、リモコン30からの操作情報を受信する。制御部50は、制御部50は、駆動モータ12及び操舵モータ16へ制御信号を送信する。制御部50は、記憶部とデータの送受信を行う。制御部50は、ベッド搬送装置100のモードを設定するモード設定部51と、車輪3A,3Bを制御する駆動制御部52と、リモコン30からの操作情報を受信する受信部53と、ベッド20の寸法に関する寸法情報を取得する寸法情報取得部54と、旋回時の旋回半径を演算する演算部55と、を備えている。
【0028】
モード設定部51は、受信部53で受信されたリモコン30の走行モード切替スイッチ32の操作情報に基づいて、走行モードを切り替え、「平行移動モード」、「カーブモード」、「横移動モード」及び「旋回モード」等の走行モードを設定する。モード設定部51は、進行方向切替スイッチ33の切替操作に基づいて、ベッド搬送装置100の端部1a,1bのどちらを進行方向の「前」「後」にするかの設定を行ってよい。
【0029】
寸法情報取得部54は、ベッドの寸法に関する寸法情報を取得する。寸法情報取得部54は、例えば、記憶部56に予め記憶されたベッド20の寸法データテーブルから、寸法情報を取得してよい。記憶部56に記憶されたベッド20の寸法データテーブルは、使用され得るベッド20の型式の種類と、これらの型式に対応するベッドの各部位の寸法の情報と、を含んでいる。寸法情報取得部54は、操作者が(例えばリモコン30を介して)入力したベッド20の型式の情報を取得し、記憶部56に記憶されている寸法データテーブルと照らし合わせることで、ベッド20の寸法情報を取得する。あるいは、ベッド搬送装置100にベッド20の寸法を測定するセンサ部などが設けられ、当該センサ部からの検出情報に基づいて、寸法情報取得部54がベッド20の寸法を取得してよい。あるいは、寸法情報取得部54は、操作者によるベッド20の寸法情報の直接入力に基づいて、当該寸法情報を取得してよい。このように、ベッド搬送装置100は、複数の種類のベッド20に対応可能となることで、ベッド20の種類による、幅、長さ、取付位置の違いを補正し、ベッド20の基準点SPを基準とした旋回動作を行う為の、各種パラメータの設定が可能となる。
【0030】
演算部55は、寸法情報取得部54で取得された寸法情報に基づいて、ベッド搬送装置100及びベッド20の旋回時における旋回半径を演算する。また、演算部55は、ベッド搬送装置100及びベッド20の旋回動作を制御するために必要な、各種演算・設定を行う。演算部55は、旋回時における旋回中心CPを設定する。また、演算部55は、旋回中心CPと車輪3A,3Bとの間の距離を演算することで、ベッド搬送装置100の旋回半径R1を演算する。演算部55は、ベッド20の任意の位置に、ベッド20の基準点SPを設定する。演算部55は、旋回中心CPと基準点SPとの間の距離を演算することで、ベッド20の旋回半径R2を演算する。演算部55は、左旋回及び右旋回の両方の旋回方向についての、旋回半径R1,R2を演算する。なお、具体的な演算部55の演算・設定内容については、後述する。
【0031】
駆動制御部52は、モード設定部51で設定された設定内容、及び受信部53で受信したリモコン30による操作情報を取得し、設定内容及び操作情報に基づいて、駆動モータ12及び操舵モータ16を制御する。例えば、モード設定部51にて「平行移動モード」が設定され、進行方向の前後の設定がなされた場合、駆動制御部52は、リモコンのジョイスティック31の前後方向の操作に応じて、ベッド搬送装置100が前後の平行移動をするように、駆動モータ12及び操舵モータ16を制御する。
【0032】
また、駆動制御部52は、ベッド搬送装置100の旋回動作時に、寸法情報取得部54で取得された寸法情報に基づき、両方の旋回方向においてベッド20の旋回半径が同一となるように、車輪3A,3Bを制御する。駆動制御部52は、寸法情報取得部54で取得された寸法情報から演算部55が演算した演算結果に基づいて、車輪3A,3Bを制御する。なお、「旋回半径が同一」とは、完全に同一である必要はなく、操作者がベッド搬送装置100を両方の旋回方向へ旋回させたときに、違和感を覚えない範囲内での同一性が保たれていればよく、あるいは、演算や動作上の誤差やずれなどを許容できる範囲内での同一性が保たれていればよい。駆動制御部52は、ベッド搬送装置100の旋回動作時に、寸法情報取得部54で取得された寸法情報に基づいて、ベッド20に対して設定された基準点(基準位置)SPを中心として、ベッド20が回転するように、車輪3A,3Bを制御する。なお、このような旋回動作をベッド20がその場で旋回する「その場旋回」と称する場合がある。
【0033】
ここで、
図7を参照して、車輪3A,3Bの操舵角θA,θBについて説明する。車輪3A,3Bの中心点TPを通過し、前後方向に延びる線を基準線CL1とする。直進時には車輪3A,3Bの進行方向を示す方向線DLは基準線CL1と一致する。車輪3A,3Bの操舵を行うと、車輪3A,3Bの進行方向を示し中心点TPを通過する方向線DLは、基準線CL1に対して傾斜する。このときの方向線DLの基準線CL1に対する傾斜角が操舵角θA,θBとなる。本実施形態では、車輪3Aが描く旋回軌道と車輪3Bが描く旋回軌道とは、旋回軌道TL1にて一致するものとして以降の説明を行う。この場合、車輪3Aの操舵角θAは、車輪3Bの操舵角θBに対し、正負が逆(基準線CL1に対して逆向きに傾斜する)であり、絶対値が等しくなる。なお、方向線DLは、旋回時に車輪3A,3Bが描く旋回軌道TR1に対し、中心点TPで接する接線となる。中心点TPにおいて方向線DL(旋回軌道TR1に対する接線)と垂直をなす直線を、法線LRとする。車輪3Aに対して設定される法線LRと、車輪3Bに対して設定される法線LRとの交点が旋回中心CP(
図6参照)となる。
【0034】
次に、
図6を参照してベッド搬送装置100の旋回動作について説明する。なお、
図6においては、車輪3Bを前側、車輪3Aを後側として、前側から後側を見たときの状態を基準に左右の語を用いる。
図6(a)は、ベッド搬送装置100が右旋回する場合の様子を示す模式図である。
図6(b)は、ベッド搬送装置100が左旋回する場合の様子を示す模式図である。
図6(c)は、ベッド搬送装置100がその場旋回する場合の様子を示す模式図である。本実施形態の説明では、「右旋回」とは、ベッド搬送装置100が前後方向を基準として、左側から右側へ向かうような旋回を行うことを意味する。「左旋回」とは、ベッド搬送装置100が前後方向を基準として、右側から左側へ向かうような旋回を行うことを意味する。ただし、車輪3A,3Bの前後方向が入れ替わった場合は、左右が逆になる。
【0035】
まず、
図6(a)〜(c)に示す動作を行うための、演算部55の各種演算・設定内容について説明する。なお、演算部55は、搬送対象となるベッド20の寸法情報が得られた時点で予め演算及び設定を行っておいてよい。この場合、演算部55は、各種演算・設定内容を記憶部56に記憶させておいてよい。実際にベッド搬送装置100の運転が行われる時は、制御部50は、記憶部56に記憶された各種演算・設定内容を読み出す。または、演算部55は、ベッド搬送装置100の運転中に、リモコン30の操作に従ってリアルタイムで各種演算・設定を行ってもよい。
【0036】
図6(a)に示すように、ベッド搬送装置100及びベッド20が右旋回をする場合、演算部55は、ベッド搬送装置100に対してベッド20側の位置に旋回中心CPを設定する。演算部55は、前後方向において、車輪3Aと車輪3Bとの間の中央位置に旋回中心CPを位置させる。旋回中心CPは、車輪3A及び車輪3Bの旋回軌道をTR1としたとき、当該旋回軌道TR1に対して車輪3Aの位置で設定された法線と、旋回軌道TR1に対して車輪3Bの位置で設定された法線との交点に設定される。従って、演算部55は、所望の旋回中心CPの位置を設定したら、それに対応する車輪3A,3Bの操舵角を設定することができる。演算部55は、車輪3A,3Bと旋回中心CPとの間の距離を演算することで、ベッド搬送装置100の旋回半径R1を演算する。演算部55は、ベッド20の基準点SPをベッド20の略中央位置に設定している。演算部55は、ベッド20の基準点SPと旋回中心CPとの間の距離を演算することで、ベッド20の旋回半径R2を演算する。ベッド搬送装置100及びベッド20が右旋回をする場合、旋回中心CPに対して、ベッド搬送装置100の方がベッド20よりも外周側に配置される。従って、ベッド搬送装置100の旋回半径R1の方が、ベッド20の旋回半径R2よりも大きくなる。
【0037】
演算部55は、リモコン30のジョイスティック31の操作角θ1の大きさに対応して、ベッド20の旋回半径R2の大きさが変化するように、各種演算を行ってよい。なお、ジョイスティック31に対して、前側へ真っ直ぐに延びる線を基準線とした場合、当該基準線に対してジョイスティック31を傾けた方向がなす角度を操作角θ1とする。基準線よりも右側の領域が「0°<操作角θ1<180°」の領域である。このうち「0°<操作角θ1<90°」の領域では、ベッド搬送装置100の前側へ向けての右旋回が行われる。また、「0°<操作角θ1<90°」の領域では、操作角θ1の絶対値が大きくなるに従って(すなわち、90°に近づくに従って)、旋回半径R2が小さくなる。また、「90°<操作角θ1<180°」の領域では、ベッド搬送装置100の後側へ向けての右旋回が行われる。また、「90°<操作角θ1<180°」の領域では、操作角θ1の絶対値が小さくなるに従って(すなわち、90°に近づくに従って)、旋回半径R2が小さくなる。
【0038】
図6(b)に示すように、ベッド搬送装置100及びベッド20が左旋回をする場合、演算部55は、ベッド搬送装置100に対してベッド20の反対側の位置に旋回中心CPを設定する。演算部55は、前後方向において、車輪3Aと車輪3Bとの間の中央位置に旋回中心CPを位置させる。その他の旋回軌道TR1,TR2、及び旋回半径R1,R2の関係は、右旋回と同様である。ベッド搬送装置100及びベッド20が左旋回をする場合、旋回中心CPに対して、ベッド20の方がベッド搬送装置100よりも外周側に配置される。従って、ベッド搬送装置100の旋回半径R1の方が、ベッド20の旋回半径R2よりも小さくなる。
【0039】
演算部55は、リモコン30のジョイスティック31の操作角θ1の大きさに対応して、ベッド20の旋回半径R2の大きさが変化するように、各種演算を行ってよい。基準線よりも左側の領域が「−180°<操作角θ1<0°」の領域である。このうち「−90°<操作角θ1<0°」の領域では、ベッド搬送装置100の前側へ向けての左旋回が行われる。また、「−90°<操作角θ1<0°」の領域では、操作角θ1の絶対値が大きくなるに従って(すなわち、−90°に近づくに従って)、旋回半径R2が小さくなる。また、「−180°<操作角θ1<−90°」の領域では、ベッド搬送装置100の後側へ向けての左旋回が行われる。また、「−180°<操作角θ1<−90°」の領域では、操作角θ1の絶対値が小さくなるに従って(すなわち、−90°に近づくに従って)、旋回半径R2が小さくなる。
【0040】
また、演算部55は、リモコン30のジョイスティック31の操作角θ1の絶対値が左旋回と右旋回とで等しい場合には、右旋回でのベッド20の旋回半径R2と左旋回でのベッド20の旋回半径R2が同一となるように各種設定を行う。ベッド搬送装置100の旋回半径R1は、左旋回時に比べて、右旋回時の方が大きくなる。従って、操作角θ1の絶対値が等しい場合、右旋回時の車輪3A,3Bの操舵角の絶対値は、左旋回時よりも小さく設定される。また、操作角θ1の絶対値が左旋回と右旋回とで等しい場合には、右旋回でのベッド20の基準点SPでの旋回速度と、左旋回でのベッド20の基準点SPでの旋回速度が同一となるように車輪3A,3Bの回転速度が設定されてよい。具体的には、左旋回でのベッド20の基準点SPでの所望の旋回速度を「旋回速度Vb」とした場合、右旋回での車輪3A,3Bの回転速度は「「旋回速度Vb」×(「ベッド20より外周側の車輪3A,3Bの旋回半径R1」/「ベッド20の基準点SPの旋回半径R2」)」と設定される。また、左旋回での車輪3A,3Bの回転速度は「「旋回速度Vb」×(「ベッド20より内周側の車輪3A,3Bの旋回半径R1」/「ベッド20の基準点SPの旋回半径R2」)」と設定される。「旋回速度Vb」は、操作者がジョイスティック31を押し込んで傾けた傾き量などに基づいて、設定されてよい。例えば、ジョイスティック31の傾き量が大きい程、「旋回速度Vb」が大きな値に設定されてよい。なお、車輪3A,3Bの操舵角、及び回転速度などの制御パラメータの演算・設定は、演算部55によってなされてよい。この場合、駆動制御部52は、演算部55が設定した制御パラメータを取得して、当該制御パラメータに従って、車輪3A,3Bの制御を行う。または、当該制御パラメータの設定は、演算部55が設定した各種設定情報に基づいて、駆動制御部52によって行われてもよい。
【0041】
図6(c)に示すように、ベッド搬送装置100及びベッド20がその場旋回を行う場合、ベッド搬送装置100及びベッド20が、ベッド20の基準点SPを中心として旋回を行う。すなわち、演算部55は、旋回中心CPがベッド20の基準点SPに一致するように、旋回中心CP及びベッド20の位置を設定する。演算部55は、ベッド20の基準点SP(すなわち旋回中心CP)と車輪3A,3Bとの間の距離を演算することで、その場旋回の旋回半径R3を演算する。
【0042】
なお、その場旋回は、ジョイスティック31の操作角θ1が基準線に対して「90°」または「−90°」をなすときに、実行される。また、「操作角θ1=90°」のときは、ベッド搬送装置100が前側へ向かう方向が回転方向となる。「操作角θ1=−90°」のときは、ベッド搬送装置100が後側へ向かう方向が回転方向となる。すなわち、駆動制御部52は、逆方向へ旋回する旨の操作情報をリモコン30から受信した場合、ベッド20が反対方向へ回転するように、車輪3A,3Bを制御する。「操作角θ1=90°」に対しては「操作角θ1=−90°」の操作が、「逆方向へ旋回する旨の操作情報」に該当する。なお、「操作角θ1=0°」の場合は、ベッド搬送装置100は真っ直ぐに前側へ移動し、「操作角θ1=180°」の場合は、ベッド搬送装置100は真っ直ぐに後側へ移動する。
【0043】
次に、
図8及び
図9を参照して、操作者がリモコン30のジョイスティック31の操作を行った時における、制御部50の制御内容について説明する。なお、ここでは、演算部55は、ベッド20の寸法情報を取得した後に、各種演算・設定を行って記憶部56に予め記憶させたものとする。
図8(a)に示すように、操作者が「操作角θ1=0°」の操作を行った場合、駆動制御部52は、ベッド搬送装置100及びベッド20が前方へ向かって直進移動するように、車輪3A,3Bの制御を行う。
【0044】
図8(b)に示すように、操作者が「−90°<操作角θ1<0°」の操作を行った場合、駆動制御部52は、ベッド搬送装置100及びベッド20が左旋回を行うように、車輪3A,3Bの制御を行う。このとき、駆動制御部52は、操作角θ1の絶対値が大きいほど(すなわち−90°に近付くほど)、ベッド20の基準点SPの旋回半径R2が小さくなるように、車輪3A,3Bの制御を行う。操作者が操作角θ1を限りなく−90°に近付けた場合、駆動制御部52は、
図8(c)に示すように、車輪3A,3Bの旋回半径R1を最小値に設定し、ベッド搬送装置100のみがその場旋回を行うように制御する。この場合、車輪3A,3Bとの間の中央位置に旋回中心CPが設定され、ベッド20の基準点SPは、ベッド搬送装置100のその場旋回に伴って、旋回中心CP回りを旋回する。
【0045】
図9(a)に示すように、操作者が「0°<操作角θ1<90°」の操作を行った場合、駆動制御部52は、ベッド搬送装置100及びベッド20が右旋回を行うように、車輪3A,3Bの制御を行う。このとき、駆動制御部52は、操作角θ1の絶対値が大きいほど(すなわち90°に近付くほど)、ベッド20の基準点SPの旋回半径R2が小さくなるように、車輪3A,3Bの制御を行う。また、駆動制御部52は、操作角θ1の絶対値が左旋回と右旋回とで等しい場合には、右旋回でのベッド20の旋回半径R2と左旋回でのベッド20の旋回半径R2が同一となるように、車輪3A,3Bの制御を行う。操作者が操作角θ1を限りなく90°に近付けた場合、駆動制御部52は、
図9(b)に示すように、ベッド20の旋回半径R2が
図8(c)における旋回半径R2と同一となるように、車輪3A,3Bを制御する。
【0046】
図9(c)に示すように、操作者が「操作角θ1=−90°,90°」の操作を行った場合、駆動制御部52は、ベッド搬送装置100及びベッド20が、ベッド20の基準点SPを中心としたその場旋回を行うように、車輪3A,3Bの制御を行う。なお、操作角θ1の絶対値が限りなく90°に近く
図8(c)や
図9(b)に示す制御が行われている状態から、操作者がジョイスティック31を押したままの状態で「操作角θ1=−90°,90°」としたような場合は、動作の安定性の観点から、駆動制御部52は、
図9(c)のその場旋回を行わず、
図8(c)や
図9(b)の動作を継続するように、車輪3A,3Bの制御を行ってよい。この場合、操作者が
図8(c)や
図9(b)の状態から一度ジョイスティック31を初期位置に戻し、その後に「操作角θ1=−90°,90°」の操作を行った場合に、駆動制御部52が、
図9(c)のその場旋回を行うように、車輪3A,3Bの制御を行ってよい。
【0047】
次に、本実施形態に係るベッド搬送装置100の作用・効果について説明する。
【0048】
本実施形態に係るベッド搬送装置100は、本体部1の側面1Baに設けられ、ベッド20の側面20aにて当該ベッド20と連結する連結部4を備えている。従って、ベッド搬送装置100は、ベッド20の一方の側面1Baに連結された状態にて、ベッド20を搬送する。
【0049】
ここで、
図10を参照して、比較例に係るベッド搬送装置200について説明する。例えば、ベッド搬送装置200が、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、両方の旋回方向において当該ベッド搬送装置10の旋回半径R1が同一になるように旋回した場合、ベッドの旋回半径R2が旋回方向によって異なることとなる。具体的には、ベッド20が外周側に配置される左旋回時における旋回半径R2(
図10(b)参照)が、ベッド20が内周側に配置される右旋回時における旋回半径R2よりも大きくなる。このような場合は、ベッド20を基準として移動させたい操作者の意図に沿った移動ができない場合がある。
【0050】
これに対して本実施形態に係るベッド搬送装置100では、駆動制御部52は、ベッド搬送装置100の旋回動作時に、寸法情報取得部54で取得された寸法情報に基づき、両方の旋回方向においてベッド20の旋回半径R2が同一となるように、駆動制御部52の制御を行う。このように、ベッド20を基準とした旋回動作が行われることで、操作者の意図に沿ったベッド20の移動を行うことができる。以上により、ベッド搬送装置100の操作性を向上できる。
【0051】
また、本実施形態に係るベッド搬送装置100において、駆動制御部52は、両方の旋回方向において、ベッド20の旋回速度が同一となるように、車輪3A,3Bの速度を設定してよい。これにより、両方の旋回方向において、ベッド20を同じ旋回速度で旋回させることができるため、操作者の意図に沿ったベッド20の移動を行うことができる。
【0052】
更に、
図10(c),(d)を参照して、比較例に係るベッド搬送装置200の他の問題について説明する。例えば、ベッド搬送装置200が、
図10(c)に示すように、ベッド搬送装置200自体がその場旋回を行う。この場合、
図10(d)に示すように、ベッド20自体は所定の旋回半径R2で旋回することになる。このような場合は、ベッド20を基準として移動させたい操作者の意図に沿った移動ができない場合がある。これに対して本実施形態に係るベッド搬送装置100では、駆動制御部52は、ベッド搬送装置100の旋回動作時に、寸法情報取得部54で取得された寸法情報に基づいて、ベッド20に対して設定された基準点(基準位置)SPを中心として、ベッド20が回転するように、車輪3A,3Bの制御を行う。このように、ベッド20を基準としたその場旋回が行われることで、操作者の意図に沿ったベッド20の移動を行うことができる。以上により、ベッド搬送装置100の操作性を向上できる。
【0053】
また、本実施形態に係るベッド搬送装置100において、駆動制御部52は、逆方向へ旋回する旨の操作情報を受信した場合、ベッド20が反対方向へその場回転するように、車輪3A,3Bを制御してよい(
図9(c)参照)。これにより、操作者の意図に沿ったベッド20の旋回方向の切替を行うことができる。
【0054】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0055】
例えば、リモコンの構成は上述のものに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更してもよい。また、リモコンに代えて、本体部に操作部を設けてもよい。
【0056】
また、上述の実施形態では、本体部の一方側には1つの車輪が設けられ、他方側には1つの車輪が設けられていた。これに替えて、本体部の一方側に複数(例えば2つ)の車輪が設けられ、他方側に複数(例えば2つ)の車輪が設けられてもよい。このような構成の場合、左右の車輪の回転速度に差を設けることによって本体部1が旋回等してよい。また、連結部4に車輪が設けられてもよい。すなわち、ベッド搬送装置100に設けられる車輪の数も位置も特に限定されない。また、ベッド搬送装置100には、回転機能及び操舵機能を備えた駆動部としての車輪のみならず、駆動部としての機能を有さない車輪が設けられてよい。あるいは、操舵機能のみを有する車輪が設けられてもよい。例えば、連結部4に駆動部としての車輪が設けられてもよい。
【0057】
また、上述の実施形態では、車輪としてタイヤが例示されていたが、ベッド搬送装置100の移動、及び制御が可能なものであれば、あらゆるタイプの車輪を採用してよい。例えば、車輪として、オムニホイール、球体駆動機構など、全方向の移動機構を採用してよい。なお、全方向の移動機構を採用する場合、基準線に対して車輪の進行方向がなす角度が、前述の「操舵角」に該当する。すなわち、
図2に示すような操舵機構を有さない車輪であっても、制御的に進行方向を設定可能なものは、「操舵角」を規定することができる。
【0058】
上述の実施形形態では、ベッド20の旋回半径R2は、ジョイスティック31の操作角θ1の大きさに応じて連続的に変化していたが、これに限定されない。例えば、操作角θ1の絶対値を0°から90°の間で複数領域に分けて、それぞれの領域に応じた旋回半径R2を段階的に設定してよい。あるいは、左旋回及び右旋回の旋回半径R2を、操作角θ1の大きさに関わらず、共通する一つの値のみに設定してよい。
【0059】
また、本発明に係るベッド搬送装置において、寸法情報取得部54は、ベッド20の寸法情報を直接的に取得することに代えて、寸法情報と紐付けられた情報を読み取ることにより、寸法情報を取得してよい。これにより、寸法情報取得部54は、ベッド20の寸法を直接読み取らなくとも、紐付けられた情報を介して、寸法情報を取得することができる。例えば、
図1に示すように、ベッド搬送装置にセンサ70を設け、当該センサ70にて、ベッド20側に設定された紐付け情報を検知してよい。例えば、センサ70を連結部4付近に設け、ベッド20の下部水平フレーム23に紐付け情報を設けてよい。具体的には、センサ70としてバーコードリーダを設け、ベッド20にバーコードを設けてよい。センサ70は、バーコードを読み取ることで、当該バーコードに紐付けられたベッド20の寸法情報を取得し、寸法情報取得部54へ送信してよい。あるいは、下部水平フレーム23に、ベッド20の種類に応じた特有の形状(突起物や溝部)などを設け、センサ70が当該特有の形状を読み取ってよい。この場合、寸法情報取得部54は、センサ70で読み取られた特有の形状を、データテーブルと照会することで、寸法情報を取得してよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、ベッド20の基準点SPは、ベッド20の中央位置付近に設定されていたが、基準点SPの位置は特に限定されない。例えば、ベッド20の前後の端部に設定してもよく、ベッド20の角部に設定してもよく、リモコン30が配置されている位置を基準点SPにしてもよい。更に、操作者がベッド20の搬送を行い易いように、操作者が自由に基準点SPを設定してもよい。