特許第6822384号(P6822384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラドキュメントソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6822384-トナー、画像形成装置及び画像形成方法 図000003
  • 特許6822384-トナー、画像形成装置及び画像形成方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6822384
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】トナー、画像形成装置及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20210114BHJP
   G03G 5/08 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   G03G9/097 372
   G03G5/08 105
【請求項の数】5
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-228656(P2017-228656)
(22)【出願日】2017年11月29日
(65)【公開番号】特開2019-101078(P2019-101078A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2019年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】竹森 資記
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−268551(JP,A)
【文献】 特開2007−041049(JP,A)
【文献】 特開2017−082148(JP,A)
【文献】 特開2015−055857(JP,A)
【文献】 特開2013−064109(JP,A)
【文献】 特開2011−033716(JP,A)
【文献】 特開2011−039104(JP,A)
【文献】 特開2007−240716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08−9/097
G03G 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のトナー粒子と複数個の潤滑剤粒子とを含有するトナーであって、
前記潤滑剤粒子は、コアと、前記コアの表面を覆うコート層とを含み、
前記コアは、ステアリン酸、パルミチン酸又はこれらの組み合わせを含み、
前記コート層の厚みは、10nm以上50nm以下であり、
前記コート層は、前記コアの前記表面を覆う第1コート層と、前記第1コート層の表面を覆う第2コート層とを含み、
前記第1コート層は、ポリアミド樹脂を含み、
前記第2コート層は、ビニル化合物の重合体、又はポリウレア樹脂を含む、トナー。
【請求項2】
前記潤滑剤粒子の個数平均粒子径は、0.1μm以上5.0μm以下である、請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
像担持体と、
前記像担持体の表面に形成された静電潜像を現像剤によりトナー像として現像する現像装置と、
前記トナー像を被転写体に転写する転写装置と、
前記トナー像が転写された後の前記像担持体の前記表面に圧接され、前記像担持体の前記表面に残留した物質を除去するクリーニング部材と
を備える画像形成装置であって、
前記現像剤は、請求項1又は2に記載のトナーを含む、画像形成装置。
【請求項4】
前記像担持体は、アモルファスシリコンを含有する感光層を備える、請求項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
像担持体の表面に形成された静電潜像を現像剤によりトナー像として現像することと、
前記トナー像を被転写体に転写することと、
前記トナー像が転写された後の前記像担持体の前記表面に圧接されるクリーニング部材により、前記像担持体の前記表面に残留した物質を除去することと
を含む画像形成方法であって、
前記現像剤は、請求項1又は2に記載のトナーを含む、画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法では、像担持体としての電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある。)の表面を帯電させた後、露光することにより感光体上に静電潜像を形成する。次いで、現像剤により静電潜像をトナー像として現像し、トナー像を被転写体(より具体的には、中間転写ベルト、記録媒体等)に転写する。トナー像が転写された後の感光体の表面には、トナー成分等の物質が残留する。そのため、例えばクリーニングブレード等のクリーニング部材が感光体表面に圧接され、感光体表面とクリーニング部材との摩擦により、残留した物質(以下、残留物と記載することがある。)が除去される。
【0003】
クリーニング部材は、ゴム等の弾性材料で形成されているため、残留物を除去する際の感光体表面(感光層表面)との摩擦力が強い場合、クリーニング部材のエッジ部分に巻き上がりが生じることがある。特に、アモルファスシリコンを含有する感光層を備えた感光体(以下、アモルファスシリコン感光体と記載することがある。)を用いる場合、クリーニング部材の巻き上がりが生じ易くなる。これは、アモルファスシリコン感光体の感光層が硬いため、クリーニング部材と感光層表面との摩擦力が強すぎることに起因するものと考えられる。
【0004】
クリーニング部材の巻き上がりが生じると、感光体表面の残留物の除去性能(クリーニング性能)が低下する場合がある。クリーニング部材のクリーニング性能が低下すると、画像を形成する際に、除去されなかった残留物に起因する画像不良(例えば画像抜け)が生じるおそれがある。
【0005】
クリーニング部材の巻き上がりを抑制するために、トナーに潤滑剤を添加する技術が検討されている。例えば、特許文献1に記載のトナーには、潤滑剤として脂肪酸金属塩粒子が含有されている。このトナーによれば、脂肪酸金属塩粒子の潤滑作用により、感光体表面とクリーニング部材との摩擦力を低減できるため、クリーニング部材の巻き上がりを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−8129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、脂肪酸金属塩粒子のように、潤滑剤として帯電し易い物質を用いると、現像装置内においてトナーが攪拌されることにより、トナー粒子の帯電性が経時的に変化し、画像を形成する際に、所望の画像濃度が得られなくなる場合がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、帯電安定性を維持しつつ、クリーニング部材のクリーニング性能の低下を抑制できるトナーを提供することである。また、本発明の別の目的は、画像不良の発生を抑制できる画像形成装置及び画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るトナーは、複数個のトナー粒子と複数個の潤滑剤粒子とを含有する。前記潤滑剤粒子は、コアと、前記コアの表面を覆うコート層とを含む。前記コアは、ステアリン酸、パルミチン酸又はこれらの組み合わせを含む。前記コート層の厚みは、10nm以上50nm以下である。
【0010】
本発明に係る画像形成装置は、像担持体と、現像装置と、転写装置と、クリーニング部材とを備える。前記現像装置は、前記像担持体の表面に形成された静電潜像を現像剤によりトナー像として現像する。前記転写装置は、前記トナー像を被転写体に転写する。前記クリーニング部材は、前記トナー像が転写された後の前記像担持体の前記表面に圧接され、前記像担持体の前記表面に残留した物質を除去する。前記現像剤は、本発明のトナーを含む。
【0011】
本発明に係る画像形成方法は、現像剤による現像と、トナー像の転写と、残留した物質の除去とを含む。前記現像剤による現像では、本発明のトナーを含む現像剤により、像担持体の表面に形成された静電潜像をトナー像として現像する。前記トナー像の転写では、前記トナー像を被転写体に転写する。前記残留した物質の除去では、前記トナー像が転写された後の前記像担持体の前記表面に圧接されるクリーニング部材により、前記像担持体の前記表面に残留した物質を除去する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のトナーによれば、帯電安定性を維持しつつ、クリーニング部材のクリーニング性能の低下を抑制できる。また、本発明の画像形成装置及び画像形成方法によれば、画像不良の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係るトナーに含まれる潤滑剤粒子の断面構造の一例を示す図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、粉体(より具体的には、トナー粒子、潤滑剤粒子等)に関する評価結果(形状、物性等を示す値)は、何ら規定していなければ、粉体から平均的な粒子を相当数選び取って、それら平均的な粒子の各々について測定した値の個数平均である。粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−950V2」)を用いて測定されたメディアン径である。粉体の個数平均粒子径の測定値は、何ら規定していなければ、走査型電子顕微鏡を用いて測定した一次粒子の円相当径(一次粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。粉体の個数平均粒子径は、例えば100個の一次粒子の円相当径の個数平均値である。
【0015】
ガラス転移点(Tg)は、何ら規定していなければ、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて「JIS(日本工業規格)K7121−2012」に従って測定した値である。示差走査熱量計で測定された吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)において、ガラス転移に起因する変曲点の温度(詳しくは、ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点の温度)が、Tg(ガラス転移点)に相当する。また、軟化点(Tm)は、何ら規定していなければ、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)を用いて測定した値である。高化式フローテスターで測定されたS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)において、「(ベースラインストローク値+最大ストローク値)/2」となる温度が、Tm(軟化点)に相当する。酸価及び水酸基価の各々の測定値は、何ら規定していなければ、「JIS(日本工業規格)K0070−1992」に従って測定した値である。数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)の各々の測定値は、何ら規定していなければ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。
【0016】
材料の「主成分」は、何ら規定していなければ、質量基準で、その材料に最も多く含まれる成分を意味する。また、帯電性は、何ら規定していなければ、摩擦帯電における帯電性を意味する。摩擦帯電における正帯電性の強さ(又は負帯電性の強さ)は、周知の帯電列などで確認できる。
【0017】
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを包括的に「(メタ)アクリロニトリル」と総称する場合がある。
【0018】
<第1実施形態:トナー>
第1実施形態に係るトナーは、例えば正帯電性トナーとして、静電潜像の現像に好適に用いることができる。第1実施形態に係るトナーは、複数個のトナー粒子と複数個の潤滑剤粒子とを含有する。第1実施形態に係るトナーは、1成分現像剤として使用してもよい。また、混合装置(例えば、ボールミル)を用いてトナーとキャリアとを混合して2成分現像剤として使用してもよい。
【0019】
潤滑剤粒子は、コアと、コアの表面を覆うコート層とを含む。潤滑剤粒子のコアは、ステアリン酸、パルミチン酸又はこれらの組み合わせを含む。潤滑剤粒子のコート層の厚みは、10nm以上50nm以下である。潤滑剤粒子は、トナー粒子の表面に付着していてもよい。また、潤滑剤粒子は、トナー粒子の表面に付着せず、トナー粒子とは別に感光体表面に搬送されるように構成してもよい。後者の場合、例えばコート層の材料として、トナー粒子と同じ帯電極性を有する材料を選択することで、潤滑剤粒子を感光体表面に搬送することができる。あるいは、潤滑剤粒子の表面に、トナー粒子と同じ帯電極性を有する外添剤粒子を付着させた構成を採用しても、潤滑剤粒子を感光体表面に搬送することができる。コート層の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定することができる。TEMを用いた測定方法の一例は、後述する実施例において説明する。なお、コアとコート層との境界は、例えば、コア及びコート層のうち、コート層のみを選択的に染色することで確認できる。TEM撮影像においてコアとコート層との境界が不明瞭である場合には、TEMと電子エネルギー損失分光法(EELS)とを組み合わせて、TEM撮影像中で、コート層に含まれる特徴的な元素のマッピングを行うことで、コアとコート層との境界を明確にすることができる。
【0020】
第1実施形態に係るトナーは、上述の構成を備えることにより、帯電安定性を維持しつつ、クリーニング部材のクリーニング性能の低下を抑制できる。その理由は、以下のように推測される。
【0021】
第1実施形態に係るトナーに含まれる潤滑剤粒子は、潤滑剤として機能するステアリン酸、パルミチン酸又はこれらの組み合わせ(以下、これらをまとめて特定潤滑剤と記載することがある。)を含むコアが、厚み10nm以上のコート層で覆われている。よって、例えば現像装置内においてトナーが攪拌されても、特定潤滑剤が現像装置内の部材又はキャリアに付着することを抑制できるため、特定潤滑剤に起因するトナー粒子の帯電性の変化を抑制できる。従って、第1実施形態に係るトナーによれば、帯電安定性を維持できると考えられる。
【0022】
また、第1実施形態に係るトナーに含まれる潤滑剤粒子は、特定潤滑剤を含むコアが厚み50nm以下のコート層で覆われている。よって、コート層の強度が過剰に高くならないため、潤滑剤粒子が感光体表面に搬送された後、感光体表面とクリーニング部材との摩擦力によりコート層が破壊され易くなる。コート層が破壊されると、内包されていた特定潤滑剤が感光体表面に塗布されるため、感光体表面とクリーニング部材との摩擦力が低減する。その結果、クリーニング部材の巻き上がりが生じ難くなるため、クリーニング部材のクリーニング性能の低下を抑制できると考えられる。
【0023】
トナー粒子100質量部に対する潤滑剤粒子の含有量は、クリーニング部材のクリーニング性能の低下をより抑制するためには、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましい。また、帯電安定性を容易に維持するためには、トナー粒子100質量部に対する潤滑剤粒子の含有量は、1質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましい。
【0024】
以下、第1実施形態に係るトナーの詳細について、適宜図面を参照しながら説明する。詳しくは、トナー粒子及び潤滑剤粒子について、順に説明する。
【0025】
[トナー粒子]
第1実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、外添剤を備えていてもよい。トナー粒子が外添剤を備える場合には、トナー粒子はトナー母粒子と外添剤とを備える。外添剤はトナー母粒子の表面に付着する。トナー母粒子は、例えば主成分として結着樹脂を含有する。結着樹脂を含有するトナー母粒子は、必要に応じて、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つ)を含有してもよい。なお、必要がなければ外添剤を割愛してもよい。外添剤を割愛する場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。
【0026】
画像形成に適したトナーを得るためには、トナー母粒子の体積中位径(D50)が4μm以上9μm以下であることが好ましい。
【0027】
トナー粒子は、シェル層を備えないトナー粒子であってもよいし、シェル層を備えるトナー粒子(以下、カプセルトナー粒子と記載する。)であってもよい。カプセルトナー粒子では、トナー母粒子が、トナーコアと、トナーコアの表面に形成されたシェル層とを備える。シェル層は、実質的に樹脂から構成される。例えば、低温で溶融するトナーコアを、耐熱性に優れるシェル層で覆うことで、トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図ることが可能になる。シェル層を構成する樹脂中に添加剤が分散していてもよい。シェル層は、トナーコアの表面全体を覆っていてもよいし、トナーコアの表面を部分的に覆っていてもよい。シェル層は、実質的に熱硬化性樹脂から構成されてもよいし、実質的に熱可塑性樹脂から構成されてもよいし、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との両方を含有してもよい。
【0028】
以下、トナー粒子に含有され得る成分について説明する。
【0029】
(結着樹脂)
トナーの低温定着性を向上させるためには、トナー母粒子は、結着樹脂として熱可塑性樹脂を含有することが好ましく、結着樹脂全体の85質量%以上の割合で熱可塑性樹脂を含有することがより好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、ビニル樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、N−ビニル樹脂等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、及びウレタン樹脂が挙げられる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂等)も、結着樹脂として使用できる。
【0030】
熱可塑性樹脂は、1種以上の熱可塑性モノマーを、付加重合、共重合、又は縮重合させることで得られる。なお、熱可塑性モノマーは、単独重合により熱可塑性樹脂になるモノマー(より具体的には、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、スチレン系モノマー等)、又は縮重合により熱可塑性樹脂になるモノマー(例えば、縮重合によりポリエステル樹脂になる多価アルコール及び多価カルボン酸の組合せ)である。
【0031】
熱可塑性樹脂のガラス転移点(Tg)は、低温定着性を向上させ、トナー粒子同士の凝集を抑制するために、30℃以上55℃以下であることが好ましい。熱可塑性樹脂の軟化点(Tm)は、110℃以下であることが好ましく、105℃以下であることがより好ましい。軟化点(Tm)が110℃以下である場合、高速定着時においても十分な低温定着性を達成できる。これらの熱可塑性樹脂の物性を調整するために、複数種の熱可塑性樹脂を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
トナーの低温定着性を向上させるためには、トナー母粒子が、結着樹脂としてポリエステル樹脂を含有することが好ましい。ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、トナー粒子の強度及び低温定着性を向上させるためには、1000以上2000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、上記と同様の理由から、9以上21以下であることが好ましい。
【0033】
ポリエステル樹脂は、1種以上の多価アルコールと1種以上の多価カルボン酸とを縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂を合成するためのアルコールとしては、例えば以下に示すような、2価アルコール(より具体的には、ジオール類、ビスフェノール類等)、及び3価以上のアルコールが挙げられる。ポリエステル樹脂を合成するためのカルボン酸としては、例えば以下に示すような、2価カルボン酸、及び3価以上のカルボン酸が挙げられる。なお、多価カルボン酸の代わりに、多価カルボン酸の無水物、多価カルボン酸ハライド等の縮重合によりエステル結合を形成できる多価カルボン酸誘導体を使用してもよい。
【0034】
ジオール類の好適な例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ペンテン−1,5−ジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、1,4−ベンゼンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
【0035】
ビスフェノール類の好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0036】
3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0037】
2価カルボン酸の好適な例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸等)、及びアルケニルコハク酸(より具体的には、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等)が挙げられる。
【0038】
3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、及びエンポール三量体酸が挙げられる。
【0039】
(着色剤)
トナー母粒子は、着色剤を含有していてもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。トナーを用いて高画質の画像を形成するためには、着色剤の量が、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0040】
トナー母粒子は、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
【0041】
トナー母粒子は、カラー着色剤を含有していてもよい。カラー着色剤としては、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤が挙げられる。
【0042】
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、及び194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、並びにC.I.バットイエローが挙げられる。
【0043】
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、及び254)が挙げられる。
【0044】
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、及び66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、並びにC.I.アシッドブルーが挙げられる。
【0045】
(離型剤)
トナー母粒子は、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、トナーの耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーの耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0046】
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、ライスワックス等の植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラタム等の鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするエステルワックス;脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックス(例えば、脱酸カルナバワックス)を好適に使用できる。本実施形態では、1種の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
【0047】
結着樹脂がポリエステル樹脂である場合、離型剤としては、カルナバワックス、エステルワックス、及びポリエチレンワックスが好ましい。結着樹脂がスチレン系樹脂又はその共重合体である場合、離型剤としては、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスが好ましい。結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナー母粒子に添加してもよい。
【0048】
(電荷制御剤)
トナー母粒子は、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電させることができるか否かの指標になる。
【0049】
トナー母粒子に負帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナー母粒子のアニオン性を強めることができる。また、トナー母粒子に正帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナー母粒子のカチオン性を強めることができる。ただし、トナーにおいて十分な帯電性が確保される場合には、トナー母粒子に電荷制御剤を含有させる必要はない。
【0050】
正帯電性の電荷制御剤としては、例えば、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2−オキサジン、1,3−オキサジン、1,4−オキサジン、1,2−チアジン、1,3−チアジン、1,4−チアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディープブラックEW、アジンディープブラック3RL等の直接染料;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等の酸性染料;ナフテン酸の金属塩類;高級有機カルボン酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルデシルヘキシルメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩等の4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0051】
(磁性粉)
トナー母粒子は、磁性粉を含有していてもよい。磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、ニッケル等)及びその合金、強磁性金属酸化物(より具体的には、フェライト、マグネタイト、二酸化クロム等)、並びに強磁性化処理(より具体的には、熱処理等)が施された材料が挙げられる。本実施形態では、1種の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
【0052】
(外添剤)
外添剤(外添剤粒子の粉体)は、例えばトナーの流動性又は取扱性を向上させるために使用される。トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の使用量は、トナー母粒子100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。
【0053】
外添剤粒子としては、無機粒子が好ましく、シリカ粒子、及び金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等)の粒子がより好ましい。本実施形態では、1種の外添剤粒子を単独で使用してもよいし、複数種の外添剤粒子を併用してもよい。
【0054】
外添剤粒子は、表面処理されていてもよい。例えば、外添剤粒子としてシリカ粒子を使用する場合、表面処理剤によりシリカ粒子の表面に疎水性及び/又は正帯電性が付与されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、カップリング剤(より具体的には、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等)、シラザン化合物(より具体的には、鎖状シラザン化合物、環状シラザン化合物等)、及びシリコーンオイル(より具体的には、ジメチルシリコーンオイル等)が挙げられる。表面処理剤としては、シランカップリング剤及びシラザン化合物が特に好ましい。シランカップリング剤の好適な例としては、シラン化合物(より具体的には、メチルトリメトキシシラン、アミノシラン等)が挙げられる。シラザン化合物の好適な例としては、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)が挙げられる。シリカ基体(未処理のシリカ粒子)の表面が表面処理剤で処理されると、シリカ基体の表面に存在する多数の水酸基(−OH)が部分的に又は全体的に、表面処理剤に由来する官能基に置換される。その結果、表面処理剤に由来する官能基(詳しくは、水酸基よりも疎水性及び/又は正帯電性の強い官能基)を表面に有するシリカ粒子が得られる。
【0055】
(トナー粒子の製造方法)
トナー粒子(外添剤を用いる場合はトナー母粒子)の製造方法の好適な例としては、粉砕法及び凝集法が挙げられる。これらの方法は、結着樹脂中に内添剤を良好に分散させ易い。
【0056】
粉砕法の一例では、まず、結着樹脂及び必要に応じて添加される内添剤を混合する。続けて、得られた混合物を、溶融混練装置(例えば、1軸又は2軸の押出機)を用いて溶融混練する。続けて、得られた溶融混練物を粉砕及び分級する。これにより、トナー粒子(又はトナー母粒子)が得られる。
【0057】
凝集法の一例では、まず、結着樹脂及び必要に応じて添加される内添剤の各々の微粒子を含む水性媒体中で、これらの微粒子を所望の粒子径になるまで凝集させる。これにより、結着樹脂等を含有する凝集粒子が形成される。続けて、得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含有される成分を合一化させる。これにより、所望の粒子径を有するトナー粒子(又はトナー母粒子)が得られる。
【0058】
トナー粒子が外添剤を含む場合は、例えば混合装置を用いて、上述の方法で製造した複数個のトナー母粒子と、複数個の外添剤粒子とを攪拌しながら混合することにより、トナー母粒子の表面に外添剤粒子を付着させて、複数個のトナー粒子を得ることができる。
【0059】
[潤滑剤粒子]
次に、第1実施形態に係るトナーに含まれる潤滑剤粒子について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係るトナーに含まれる潤滑剤粒子の断面構造の一例を示す図である。
【0060】
図1に示すように、潤滑剤粒子1は、コア2と、コア2の表面を覆うコート層3とを含む。帯電安定性を容易に維持するためには、コート層3は、コア2の表面の全面を覆っていることが好ましい。
【0061】
(コア)
コア2は、潤滑剤として機能するステアリン酸、パルミチン酸又はこれらの組み合わせ(特定潤滑剤)を含む。クリーニング部材のクリーニング性能の低下をより抑制するためには、コア2は、特定潤滑剤を主成分として含むことが好ましく、コア2に含まれる全成分の80質量%以上の割合で特定潤滑剤を含むことがより好ましく、コア2に含まれる全成分の90質量%以上の割合で特定潤滑剤を含むことが更に好ましく、100質量%の割合で特定潤滑剤を含むことが特に好ましい。同様の理由から、コア2は、ステアリン酸を含むことが好ましい。なお、コア2に含まれてもよい特定潤滑剤以外の成分としては、例えば特定潤滑剤以外の潤滑剤、及び後述する潤滑剤粒子1の製造方法において使用される有機相の残存溶媒が挙げられる。
【0062】
(コート層)
コート層3は、コア2の表面を覆う第1コート層4と、第1コート層4の表面を覆う第2コート層5とを含む。コート層3の厚み(詳しくは、第1コート層4及び第2コート層5の合計厚み)は、10nm以上50nm以下である。帯電安定性を容易に維持するためには、コート層3の厚みは、15nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。また、クリーニング部材のクリーニング性能の低下をより抑制するためには、コート層3の厚みは、40nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましい。
【0063】
第1コート層4は、ポリアミド樹脂を含むことが好ましく、ポリアミド樹脂を主成分として含むことがより好ましく、第1コート層4に含まれる全成分の90質量%以上の割合でポリアミド樹脂を含むことが更に好ましく、100質量%の割合でポリアミド樹脂を含むことが特に好ましい。第1コート層4の材料としてポリアミド樹脂を採用する場合は、コア2の表面に界面重合法でポリアミド樹脂膜を形成できる。よって、コア2の表面を覆う第1コート層4(ポリアミド樹脂膜)を容易に形成できる。
【0064】
第2コート層5の構成材料としては、帯電安定性を容易に維持しつつ、クリーニング部材のクリーニング性能の低下をより抑制するためには、ビニル化合物の重合体及びポリウレア樹脂が好ましく、ビニル化合物の重合体がより好ましい。同様の理由により、第2コート層5は、ビニル化合物の重合体又はポリウレア樹脂を主成分として含むことが好ましく、第2コート層5の全構成材料の90質量%以上の割合でビニル化合物の重合体又はポリウレア樹脂を含むことがより好ましく、100質量%の割合でビニル化合物の重合体又はポリウレア樹脂を含むことが特に好ましい。なお、ビニル化合物は、ビニル基(CH2=CH−)、又はビニル基中の水素が置換された基を有する化合物(より具体的には、エチレン、プロピレン、ブタジエン、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン等)である。ビニル化合物は、上記ビニル基等に含まれる炭素−炭素二重結合(C=C)により付加重合して、高分子(樹脂)になり得る。
【0065】
ビニル化合物としては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等のスチレン系化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸エステル系化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系化合物;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系化合物;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン系化合物;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリロニトリル;イソプレン、1,3−ブタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン等の脂肪族ジエン系化合物;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン等の脂環式ジエン系化合物;ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル系化合物;ジ(メタ)アクリル酸エチレン、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキシレン等のジ(メタ)アクリル酸系化合物が挙げられる。これらのビニル化合物は、1種を単独で重合させてもよく、2種以上を共重合させてもよい。
【0066】
第2コート層5の強度を高めることによって帯電安定性を容易に維持するためには、複数の炭素−炭素二重結合(C=C)を有するビニル化合物を含むモノマー成分の重合体により第2コート層5を形成することが好ましい。同様の理由から、複数の炭素−炭素二重結合(C=C)を有するビニル化合物としては、上記列挙した脂肪族ジエン系化合物、脂環式ジエン系化合物、芳香族ジビニル系化合物及びジ(メタ)アクリル酸系化合物が好ましく、芳香族ジビニル系化合物及びジ(メタ)アクリル酸系化合物がより好ましく、ジビニルベンゼン及びジ(メタ)アクリル酸エチレングリコールが更に好ましく、ジビニルベンゼンが特に好ましい。
【0067】
第1コート層4の構成材料としてポリアミド樹脂を用い、かつ第2コート層5の構成材料としてビニル化合物の重合体又はポリウレア樹脂を用いる場合、第1コート層4の厚みに対する第2コート層5の厚みの比(第2コート層5/第1コート層4)は、1以上100以下であることが好ましく、5以上50以下であることがより好ましい。厚みの比(第2コート層5/第1コート層4)が上記範囲内の場合、帯電安定性を容易に維持しつつクリーニング部材のクリーニング性能の低下をより抑制できる。なお、厚みの比(第2コート層5/第1コート層4)は、例えば第2コート層5を形成する際の重合時間を変更することで調整できる。ビニル化合物の重合体、及びポリウレア樹脂は、ポリアミド樹脂よりもコート層の厚みの調整を容易に行うことができる。
【0068】
潤滑剤粒子1の個数平均粒子径は、帯電安定性を容易に維持するためには、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、1.0μm以上であることが更に好ましい。また、クリーニング部材のクリーニング性能の低下をより抑制するためには、潤滑剤粒子1の個数平均粒子径は、5.0μm以下であることが好ましい。なお、潤滑剤粒子1の個数平均粒子径は、例えばコア2を形成するための特定潤滑剤の分散液(エマルション)を調製する際に、分散液中の特定潤滑剤の濃度、及び分散液の攪拌速度を変更することで調整できる。
【0069】
(潤滑剤粒子の製造方法)
潤滑剤粒子1の製造方法の一例について説明する。以下、第1コート層4の構成材料がポリアミド樹脂膜である潤滑剤粒子1の製造方法を例に説明する。
【0070】
まず、アラビアゴム等の分散安定剤を溶解させた水相と、特定潤滑剤及び多価カルボン酸塩化物を溶解させた有機相とを準備する。次いで、水相と有機相とを混合し、攪拌することにより、油滴が水溶液中に分散したエマルション(以下、O/Wエマルションと記載する。)を調製する。次いで、O/Wエマルションに、エチレンジアミン等のアミン系重合性化合物を含むアルカリ性水溶液を加えた後、特定潤滑剤を含む油滴の周囲において界面重合反応を行うことで、特定潤滑剤を含むコア2の表面がポリアミド樹脂膜(第1コート層4)で覆われる。次いで、界面重合反応後の反応液に、重合性化合物(より具体的には、ビニル化合物、イソシアネート系重合性化合物等)を含むO/Wエマルションを添加し、ポリアミド樹脂膜(第1コート層4)の表面において重合性化合物を重合させる。これにより、第1コート層4の表面が重合性化合物の重合体で構成される膜(第2コート層5)で覆われた、複数個の潤滑剤粒子1が得られる。なお、界面重合反応後の反応液に添加する重合性化合物として、2,4−トリレンジイソシアネート等のイソシアネート系重合性化合物を用いる場合は、上記アミン系重合性化合物とイソシアネート系重合性化合物とが重付加反応することにより、ポリウレア樹脂膜が形成される。
【0071】
[トナーの製造方法]
次に、第1実施形態に係るトナーの製造方法の一例について説明する。まず、上述した方法で得られた複数個のトナー粒子(又はトナー母粒子)と、上述した方法で得られた複数個の潤滑剤粒子とを準備する。次いで、混合装置を用いて、複数個のトナー粒子(又はトナー母粒子)と、複数個の潤滑剤粒子とを攪拌しながら混合することによりトナーが得られる。なお、外添剤を用いる場合は、混合装置を用いて混合する際、外添剤を更に加えて混合することにより、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてトナー粒子を得ることができる。
【0072】
以上、第1実施形態に係るトナーについて説明したが、本発明のトナーは上記実施形態には限定されない。例えば、上記実施形態では、潤滑剤粒子のコート層が第1コート層及び第2コート層を含む場合を例に説明したが、本発明のトナーは、潤滑剤粒子のコート層が単一層であってもよい。
【0073】
<第2実施形態:画像形成装置>
次に、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置について説明する。図2は、第2実施形態に係る画像形成装置の一例である画像形成装置100の構成を示す図である。画像形成装置100は、記録媒体としてのシートPに画像を形成するプリンターである。画像形成装置100は、給送部10、搬送部20、画像形成部30、及び排出部80を備える。
【0074】
給送部10は、複数のシートPを収容するカセット11を含む。シートPは、例えば、紙製又は合成樹脂製のシートである。給送部10は、搬送部20にシートPを給送する。搬送部20は、画像形成部30にシートPを搬送する。画像形成部30は、シートPに画像を形成する。搬送部20は、画像が形成されたシートPを排出部80に搬送する。排出部80は、画像形成装置100の外部にシートPを排出する。
【0075】
画像形成部30は、露光ユニット32、第1トナー像生成ユニット34A、第2トナー像生成ユニット34B、第3トナー像生成ユニット34C、第4トナー像生成ユニット34D、第1トナーカートリッジ36A、第2トナーカートリッジ36B、第3トナーカートリッジ36C、第4トナーカートリッジ36D、中間転写ベルト62、二次転写ローラー64、及び定着装置70を有する。ここでは、画像形成装置100はタンデム方式であり、第1トナー像生成ユニット34A、第2トナー像生成ユニット34B、第3トナー像生成ユニット34C及び第4トナー像生成ユニット34Dが直線状に配列されている。
【0076】
なお、本明細書の以下の説明において冗長を避けるために、第1〜4トナー像生成ユニット34A〜34Dを単にトナー像生成ユニット34A〜34Dと記載することがある。同様に、第1〜4トナーカートリッジ36A〜36Dを単にトナーカートリッジ36A〜36Dと記載することがある。
【0077】
露光ユニット32は、画像データに基づく光をトナー像生成ユニット34A〜34Dの各々に照射し、トナー像生成ユニット34A〜34Dの各々に静電潜像を形成する。
【0078】
トナー像生成ユニット34Aは、静電潜像に基づきイエロー色のトナー像を形成する。トナー像生成ユニット34Bは、静電潜像に基づきシアン色のトナー像を形成する。トナー像生成ユニット34Cは、静電潜像に基づきマゼンタ色のトナー像を形成する。トナー像生成ユニット34Dは、静電潜像に基づきブラック色のトナー像を形成する。
【0079】
トナーカートリッジ36Aは、イエロー色のトナー像を形成するためのトナーを有する。トナーカートリッジ36Bは、シアン色のトナー像を形成するためのトナーを有する。トナーカートリッジ36Cは、マゼンタ色のトナー像を形成するためのトナーを有する。トナーカートリッジ36Dは、ブラック色のトナー像を形成するためのトナーを有する。トナーカートリッジ36A〜36Dが有するトナーは、何れも上述した第1実施形態に係るトナーである。
【0080】
中間転写ベルト62は矢印R1方向に回転する。中間転写ベルト62の外表面には、トナー像生成ユニット34A〜34Dから4色のトナー像が順次転写される(一次転写工程)。二次転写ローラー64は、中間転写ベルト62の外表面に形成されたトナー像をシートPに転写する(二次転写工程)。定着装置70は、シートPを加熱及び加圧して、トナー像をシートPに定着させる。
【0081】
トナー像生成ユニット34A〜34Dの各々は、感光体ドラム40(像担持体)、帯電装置42、現像装置50、一次転写ローラー44、除電装置46、及びクリーニングブレード48を含む。トナー像生成ユニット34A〜34Dの各々において、帯電装置42、現像装置50、一次転写ローラー44、除電装置46、及びクリーニングブレード48は、感光体ドラム40の周面に沿って順に配置される。
【0082】
トナー像生成ユニット34A〜34Dの各々の感光体ドラム40は、中間転写ベルト62の外表面に当接するように、中間転写ベルト62の回転方向である矢印R1方向に沿って配置される。複数個の一次転写ローラー44は、複数個の感光体ドラム40のそれぞれに対応して設けられ、中間転写ベルト62を介して、複数個の感光体ドラム40のそれぞれに対向する。
【0083】
感光体ドラム40は矢印R2方向に回転する。帯電装置42は感光体ドラム40の周面を帯電する。感光体ドラム40の周面には、露光ユニット32によって光が照射され、静電潜像が形成される。
【0084】
感光体ドラム40は、特に限定されず、例えばアモルファスシリコン感光体、又は有機光導電体を含有する感光層を備えた感光体が使用できる。
【0085】
現像装置50は、例えばトナー及びキャリアを含む2成分現像剤を有している。トナー像生成ユニット34A〜34Dにおける現像装置50は、それぞれ対応するトナーカートリッジ36A〜36Dと連結している。それぞれの現像装置50内のトナーは、対応するトナーカートリッジ36A〜36Dから供給される。なお、キャリアは、現像装置50内だけに収容されていてもよく、トナーカートリッジ36A〜36D内及び現像装置50内の双方に収容されていてもよい。後者の場合、トナーカートリッジ36A〜36Dは、対応する現像装置50にトナー及びキャリアの双方を供給してもよい。
【0086】
現像装置50は現像ローラー52を含む。現像ローラー52は、例えばトナー及びキャリアを含む2成分現像剤を担持する。このため、現像ローラー52は、現像剤担持体として機能する。現像ローラー52は担持した現像剤のうちのトナーを感光体ドラム40に供給する。現像装置50は、感光体ドラム40の静電潜像にトナーを付着させて静電潜像を現像して感光体ドラム40の周面にトナー像を形成する。
【0087】
一次転写ローラー44(転写装置)は、感光体ドラム40に担持されたトナー像を中間転写ベルト62(被転写体)の外表面に転写する。除電装置46は、トナー像が中間転写ベルト62に転写された後の感光体ドラム40の周面を除電する。
【0088】
クリーニングブレード48は、例えばゴム製のブレードである。クリーニングブレード48は、トナー像が中間転写ベルト62に転写された後の感光体ドラム40の表面に圧接される。この際、感光体ドラム40が矢印R2方向に回転しているため、クリーニングブレード48は、感光体ドラム40の表面の残留物(トナーの一部)を除去できる。クリーニングブレード48が感光体ドラム40の表面の残留物を除去する際に、感光体ドラム40の表面とクリーニングブレード48との摩擦力により、残留物中に含まれる潤滑剤粒子の少なくとも一部のコート層が破壊される。これにより、潤滑剤粒子に内包されていた特定潤滑剤が感光体ドラム40の表面に塗布されるため、感光体ドラム40の表面とクリーニングブレード48との摩擦力が低減する。その結果、クリーニングブレード48の巻き上がりが生じ難くなるため、クリーニングブレード48のクリーニング性能の低下を抑制できる。従って、画像形成装置100によれば、残留物に起因する画像不良の発生を抑制できる。
【0089】
アモルファスシリコン感光体を使用する場合、アモルファスシリコン感光体の感光層が硬いため、通常、クリーニング部材の巻き上がりが生じ易くなる。しかし、画像形成装置100では、上述した第1実施形態に係るトナーを含む現像剤によりトナー像を形成するため、アモルファスシリコン感光体を使用しても、クリーニングブレード48の巻き上がりを抑制できる。
【0090】
中間転写ベルト62の外表面に転写されたトナー像は、二次転写ローラー64によりシートPに転写される。トナー像が転写されたシートPは、搬送部20によって定着装置70に搬送される。定着装置70は、シートPに転写されたトナー像を加圧する加圧ローラー72と、定着ベルト74とを備える。加圧ローラー72としては、例えばフッ素樹脂製の表面層を備えた定着装置用ローラーが使用できる。定着装置70に搬送されたシートPは、加圧ローラー72と定着ベルト74との間で加熱及び加圧される。これにより、トナー像(画像)がシートPに定着する。その後、シートPは、排出部80から画像形成装置100の外部に排出される。以上のようにして画像形成装置100はシートPに画像を形成する。
【0091】
以上、第2実施形態に係る画像形成装置の一例について説明したが、第2実施形態に係る画像形成装置は、上述した画像形成装置100に限定されない。例えば、第2実施形態に係る画像形成装置は、モノクロ画像形成装置であってもよい。この場合、画像形成装置は、例えばトナー像生成ユニット及びトナーカートリッジを各々1つずつ備えていればよい。また、第2実施形態に係る画像形成装置は、直接転写方式を採用してもよい。第2実施形態に係る画像形成装置が直接転写方式を採用する場合、転写装置は、感光体ドラム(像担持体)上のトナー像を記録媒体へ直接転写する。
【0092】
<第3実施形態:画像形成方法>
第3実施形態に係る画像形成方法は、例えば上述した第2実施形態に係る画像形成装置を用いて画像を形成する方法である。以下、第3実施形態に係る画像形成方法の好適な一例を説明する。
【0093】
画像形成方法の好適な一例は、現像剤による現像と、トナー像の転写と、残留した物質(残留物)の除去とを含む。現像剤による現像では、上述した第1実施形態に係るトナーを含む現像剤により、像担持体(例えば、図2に示される感光体ドラム40)の表面に形成された静電潜像をトナー像として現像する。トナー像の転写では、トナー像を被転写体(例えば、図2に示される中間転写ベルト62)に転写する。残留物の除去では、トナー像が転写された後の像担持体の表面に圧接されるクリーニング部材(例えば、図2に示されるクリーニングブレード48)により、像担持体の表面の残留物を除去する。
【0094】
第3実施形態に係る画像形成方法の好適な一例は、上述した第1実施形態に係るトナーを含む現像剤を用いるため、第2実施形態に係る画像形成装置と同様の理由により、クリーニング部材のクリーニング性能の低下を抑制できる。従って、上述した画像形成方法によれば、残留物に起因する画像不良の発生を抑制できる。
【実施例】
【0095】
以下、本発明の実施例について説明する。まず、潤滑剤粒子のコート層の厚みの測定方法について説明する。
【0096】
<潤滑剤粒子のコート層の厚みの測定方法>
後述する方法で得られた各潤滑剤粒子を常温硬化性のエポキシ樹脂中に分散させ、温度40℃の雰囲気で2日間硬化させて硬化物を得た。得られた硬化物を、四酸化オスミウムを用いて染色した後、ダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社製「EM UC6」)を用いて切り出し、薄片試料を得た。続けて、得られた薄片試料の断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製「JSM−6700F」)を用いて、倍率10000倍で撮影した。
【0097】
撮影されたTEM像について、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて解析することで、コート層の厚みを計測した。具体的には、潤滑剤粒子の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、それら2本の直線のうち、コート層と交差する4箇所の長さを測定した。続けて、測定された4箇所の長さの算術平均値を、測定対象である1個の潤滑剤粒子のコート層の厚みとした。測定対象に含まれる20個の潤滑剤粒子についてそれぞれコート層の厚みを測定し、20個の個数平均値を測定対象(潤滑剤粒子)の評価値(コート層の厚み)とした。
【0098】
<結着樹脂の合成>
テレフタル酸1500gと、イソフタル酸1500gと、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイドの平均付加モル数:2モル)1200gと、エチレングリコール800gとを、4つ口フラスコ(容量:5L)に入れた。次に、フラスコ内部を窒素雰囲気とし、フラスコの内容物を攪拌しながらフラスコ内部の温度を250℃まで上昇させた。その後、常圧かつ250℃の条件で4時間反応を行った。次いで、三酸化アンチモン0.8gと、トリフェニルホスフェート0.5gと、テトラブチルチタネート0.1gとを、フラスコに更に加えた。フラスコ内部の圧力を0.04kPaに減圧し、フラスコ内部の温度を280℃まで上昇させた後、6時間反応を行った。次いで、トリメリット酸(架橋剤)30.0gをフラスコに更に加えた。フラスコ内部の圧力を常圧に戻し、フラスコ内部の温度を230℃まで降下させた後、1時間反応を行った。反応が終了した後、反応生成物をフラスコから取り出して冷却し、結着樹脂としてのポリエステル樹脂P1を得た。得られたポリエステル樹脂P1は、ガラス転移点(Tg)が53.8℃であり、軟化点(Tm)が100.5℃であり、数平均分子量(Mn)が1460であり、分子量分布(Mw/Mn)が12.7であり、酸価が16.8mgKOH/gであり、水酸基価が22.8mgKOH/gであった。
【0099】
<潤滑剤粒子の調製>
[潤滑剤粒子Aの調製]
水相(連続相)として、蒸留水100質量部に分散安定剤としてのアラビアゴム2質量部を溶解させたものを準備した。また、有機相(分散相)として、トルエン100質量部にステアリン酸94質量部、セバコイルクロリド2質量部及びトリメソイルクロリド4質量部を溶解させたものを準備した。調製した水相と有機相とをホモジナイザー(日本精機株式会社製「Ultrasonic Homogenizer 600W」)に投入し、70℃の雰囲気下、回転速度5000rpmで2分間攪拌して、O/Wエマルションを調製した。得られたO/Wエマルションに、エチレンジアミン8質量%を含む8M水酸化ナトリウム水溶液(0.5質量部)を30分間かけて滴下した後、40℃の雰囲気下、回転速度1000rpmで10分間攪拌することで、ステアリン酸を含む油滴の周囲において界面重合反応を行い、ステアリン酸を含むコアの表面を覆うポリアミド樹脂膜(第1コート層)を形成した。
【0100】
次いで、反応液を丸底型の重合反応装置(4つ口フラスコ)に移し、10℃の雰囲気下、回転速度300rpmで攪拌しながら、下記調製方法により調製したO/WエマルションE1を全体量の40質量%分添加し、ポリアミド樹脂膜(第1コート層)の表面に付着させた。その後、反応系内を40℃に昇温し、回転速度300rpmで5分間攪拌して、ポリアミド樹脂膜(第1コート層)の表面においてラジカル重合反応を行った。反応後、得られた懸濁液を冷却し、洗浄工程及び脱水工程を行った。これにより、ステアリン酸を含むコアがコート層で覆われた、多数個の潤滑剤粒子Aを得た。潤滑剤粒子Aのコート層は、コアの表面を覆う第1コート層(ポリアミド樹脂膜)と、第1コート層の表面を覆う第2コート層(ビニル化合物の重合体で構成される膜)とを含んでいた。潤滑剤粒子Aのコート層の厚み(第1コート層及び第2コート層の合計厚み)は10nmであった。また、潤滑剤粒子Aの個数平均粒子径は、1.0μmであった。なお、潤滑剤粒子Aの個数平均粒子径は、100個の潤滑剤粒子A(一次粒子)の円相当径の個数平均値とした。以下で調製方法を説明する潤滑剤粒子についても同様である。
【0101】
(O/WエマルションE1の調製)
油相として、トルエン100質量部にジビニルベンゼン30質量部、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)60質量部、及びヘキサグリセリンリシノレイン酸エステル10質量部を添加したものを準備した。また、水相として、蒸留水100質量部に塩化ナトリウム0.4質量部を添加したものを準備した。調製した水相と有機相とをホモジナイザー(日本精機株式会社製「Ultrasonic Homogenizer 600W」)に投入し、10℃の雰囲気下、回転速度3000rpmで1分間攪拌して、O/WエマルションE1を調製した。
【0102】
[潤滑剤粒子Bの調製]
O/WエマルションE1を添加し、反応系内を40℃に昇温した後の回転速度300rpmでの攪拌時間を10分間にしたこと以外は、潤滑剤粒子Aの調製と同様の手順により、ステアリン酸を含むコアがコート層で覆われた、多数個の潤滑剤粒子Bを得た。潤滑剤粒子Bのコート層は、コアの表面を覆う第1コート層(ポリアミド樹脂膜)と、第1コート層の表面を覆う第2コート層(ビニル化合物の重合体で構成される膜)とを含んでいた。潤滑剤粒子Bのコート層の厚み(第1コート層及び第2コート層の合計厚み)は20nmであった。また、潤滑剤粒子Bの個数平均粒子径は、1.1μmであった。
【0103】
[潤滑剤粒子Cの調製]
O/WエマルションE1を添加し、反応系内を40℃に昇温した後の回転速度300rpmでの攪拌時間を30分間にしたこと以外は、潤滑剤粒子Aの調製と同様の手順により、ステアリン酸を含むコアがコート層で覆われた、多数個の潤滑剤粒子Cを得た。潤滑剤粒子Cのコート層は、コアの表面を覆う第1コート層(ポリアミド樹脂膜)と、第1コート層の表面を覆う第2コート層(ビニル化合物の重合体で構成される膜)とを含んでいた。潤滑剤粒子Cのコート層の厚み(第1コート層及び第2コート層の合計厚み)は50nmであった。また、潤滑剤粒子Cの個数平均粒子径は、1.2μmであった。
【0104】
[潤滑剤粒子Dの調製]
ホモジナイザーに投入する有機相として、トルエン60質量部にステアリン酸94質量部、セバコイルクロリド2質量部及びトリメソイルクロリド4質量部を溶解させたものを用いたことと、O/Wエマルション調製時のホモジナイザーの回転速度を10000rpmに変更したこと以外は、潤滑剤粒子Aの調製と同様の手順により、ステアリン酸を含むコアがコート層で覆われた、多数個の潤滑剤粒子Dを得た。潤滑剤粒子Dのコート層は、コアの表面を覆う第1コート層(ポリアミド樹脂膜)と、第1コート層の表面を覆う第2コート層(ビニル化合物の重合体で構成される膜)とを含んでいた。潤滑剤粒子Dのコート層の厚み(第1コート層及び第2コート層の合計厚み)は10nmであった。また、潤滑剤粒子Dの個数平均粒子径は、0.1μmであった。
【0105】
[潤滑剤粒子Eの調製]
O/Wエマルション調製時のホモジナイザーの回転速度を500rpmに変更したこと以外は、潤滑剤粒子Aの調製と同様の手順により、ステアリン酸を含むコアがコート層で覆われた、多数個の潤滑剤粒子Eを得た。潤滑剤粒子Eのコート層は、コアの表面を覆う第1コート層(ポリアミド樹脂膜)と、第1コート層の表面を覆う第2コート層(ビニル化合物の重合体で構成される膜)とを含んでいた。潤滑剤粒子Eのコート層の厚み(第1コート層及び第2コート層の合計厚み)は10nmであった。また、潤滑剤粒子Eの個数平均粒子径は、5.0μmであった。
【0106】
[潤滑剤粒子Fの調製]
ホモジナイザーに投入する有機相の潤滑剤成分として、ステアリン酸の代わりにパルミチン酸を用いたこと以外は、潤滑剤粒子Aの調製と同様の手順により、パルミチン酸を含むコアがコート層で覆われた、多数個の潤滑剤粒子Fを得た。潤滑剤粒子Fのコート層は、コアの表面を覆う第1コート層(ポリアミド樹脂膜)と、第1コート層の表面を覆う第2コート層(ビニル化合物の重合体で構成される膜)とを含んでいた。潤滑剤粒子Fのコート層の厚み(第1コート層及び第2コート層の合計厚み)は10nmであった。また、潤滑剤粒子Fの個数平均粒子径は、1.0μmであった。
【0107】
[潤滑剤粒子Gの調製]
以下の点を変更したこと以外は、潤滑剤粒子Aの調製と同様の手順により、ステアリン酸を含むコアがコート層で覆われた、多数個の潤滑剤粒子Gを得た。潤滑剤粒子Gのコート層は、コアの表面を覆う第1コート層(ポリアミド樹脂膜)と、第1コート層の表面を覆う第2コート層(ビニル化合物の重合体で構成される膜)とを含んでいた。潤滑剤粒子Gのコート層の厚み(第1コート層及び第2コート層の合計厚み)は50nmであった。また、潤滑剤粒子Gの個数平均粒子径は、0.1μmであった。
【0108】
(変更点)
ホモジナイザーに投入する有機相として、トルエン60質量部にステアリン酸94質量部、セバコイルクロリド2質量部及びトリメソイルクロリド4質量部を溶解させたものを用いた。O/Wエマルション調製時のホモジナイザーの回転速度を10000rpmに変更した。O/WエマルションE1を添加し、反応系内を40℃に昇温した後の回転速度300rpmでの攪拌時間を30分間にした。
【0109】
[潤滑剤粒子Hの調製]
O/WエマルションE1の代わりに、下記調製方法により調製したO/WエマルションE2を用いたこと以外は、潤滑剤粒子Aの調製と同様の手順により、ステアリン酸を含むコアがコート層で覆われた、多数個の潤滑剤粒子Hを得た。潤滑剤粒子Hのコート層は、コアの表面を覆う第1コート層(ポリアミド樹脂膜)と、第1コート層の表面を覆う第2コート層(ビニル化合物の重合体で構成される膜)とを含んでいた。潤滑剤粒子Hのコート層の厚み(第1コート層及び第2コート層の合計厚み)は10nmであった。また、潤滑剤粒子Hの個数平均粒子径は、1.0μmであった。
【0110】
(O/WエマルションE2の調製)
油相として、トルエン100質量部にジビニルベンゼン30質量部、ジメタクリル酸エチレングリコール10質量部、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)60質量部、及びヘキサグリセリンリシノレイン酸エステル10質量部を添加したものを準備した。また、水相として、蒸留水100質量部に塩化ナトリウム0.4質量部を添加したものを準備した。調製した水相と有機相とをホモジナイザー(日本精機株式会社製「Ultrasonic Homogenizer 600W」)に投入し、10℃の雰囲気下、回転速度3000rpmで1分間攪拌して、O/WエマルションE2を調製した。
【0111】
[潤滑剤粒子Iの調製]
O/WエマルションE1の代わりに、下記調製方法により調製したO/WエマルションE3を用いたことと、O/WエマルションE3を添加し、反応系内を40℃に昇温した後の回転速度300rpmでの攪拌時間を10分間にしたこと以外は、潤滑剤粒子Aの調製と同様の手順により、ステアリン酸を含むコアがコート層で覆われた、多数個の潤滑剤粒子Iを得た。潤滑剤粒子Iのコート層は、コアの表面を覆う第1コート層(ポリアミド樹脂膜)と、第1コート層の表面を覆う第2コート層(ポリウレア樹脂膜)とを含んでいた。潤滑剤粒子Iのコート層の厚み(第1コート層及び第2コート層の合計厚み)は10nmであった。また、潤滑剤粒子Iの個数平均粒子径は、1.0μmであった。
【0112】
(O/WエマルションE3の調製)
油相として、トルエン100質量部に2,4−トリレンジイソシアネート60質量部、ソルビタンモノオレエート20質量部、及びフェニルイソシアネート20質量部を添加したものを準備した。また、水相として、蒸留水100質量部にアラビアゴム2質量部を添加したものを準備した。調製した水相と有機相とをホモジナイザー(日本精機株式会社製「Ultrasonic Homogenizer 600W」)に投入し、10℃の雰囲気下、回転速度3000rpmで1分間攪拌して、O/WエマルションE3を調製した。
【0113】
[潤滑剤粒子Jの調製]
O/WエマルションE1を添加し、反応系内を40℃に昇温した後の回転速度300rpmでの攪拌時間を60分間にしたこと以外は、潤滑剤粒子Aの調製と同様の手順により、ステアリン酸を含むコアがコート層で覆われた、多数個の潤滑剤粒子Jを得た。潤滑剤粒子Jのコート層は、コアの表面を覆う第1コート層(ポリアミド樹脂膜)と、第1コート層の表面を覆う第2コート層(ビニル化合物の重合体で構成される膜)とを含んでいた。潤滑剤粒子Jのコート層の厚み(第1コート層及び第2コート層の合計厚み)は100nmであった。また、潤滑剤粒子Jの個数平均粒子径は、1.4μmであった。
【0114】
[潤滑剤粒子Kの調製]
O/WエマルションE1を添加し、反応系内を40℃に昇温した後の回転速度300rpmでの攪拌時間を1分間にしたこと以外は、潤滑剤粒子Aの調製と同様の手順により、ステアリン酸を含むコアがコート層で覆われた、多数個の潤滑剤粒子Kを得た。潤滑剤粒子Kのコート層は、コアの表面を覆う第1コート層(ポリアミド樹脂膜)と、第1コート層の表面を覆う第2コート層(ビニル化合物の重合体で構成される膜)とを含んでいた。潤滑剤粒子Kのコート層の厚み(第1コート層及び第2コート層の合計厚み)は5nmであった。また、潤滑剤粒子Kの個数平均粒子径は、1.0μmであった。
【0115】
[潤滑剤粒子Lの調製]
以下の点を変更したこと以外は、潤滑剤粒子Aの調製と同様の手順により、ステアリン酸を含むコアがコート層で覆われた、多数個の潤滑剤粒子Lを得た。潤滑剤粒子Lのコート層は、コアの表面を覆う第1コート層(ポリアミド樹脂膜)と、第1コート層の表面を覆う第2コート層(ビニル化合物の重合体で構成される膜)とを含んでいた。潤滑剤粒子Lのコート層の厚み(第1コート層及び第2コート層の合計厚み)は60nmであった。また、潤滑剤粒子Lの個数平均粒子径は、0.1μmであった。
【0116】
(変更点)
ホモジナイザーに投入する有機相として、トルエン60質量部にステアリン酸94質量部、セバコイルクロリド2質量部及びトリメソイルクロリド4質量部を溶解させたものを用いた。O/Wエマルション調製時のホモジナイザーの回転速度を10000rpmに変更した。O/WエマルションE1を添加し、反応系内を40℃に昇温した後の回転速度300rpmでの攪拌時間を40分間にした。
【0117】
[潤滑剤粒子Mの調製]
水相(連続相)として、蒸留水100質量部に分散安定剤としてのアラビアゴム2質量部を溶解させたものを準備した。また、有機相(分散相)として、トルエン60質量部にステアリン酸94質量部を溶解させたものを準備した。調製した水相と有機相とをホモジナイザー(日本精機株式会社製「Ultrasonic Homogenizer 600W」)に投入し、70℃の雰囲気下、回転速度10000rpmで2分間攪拌して、O/Wエマルションを調製した。得られたO/Wエマルションを冷却し、洗浄工程及び脱水工程を行った。これにより、個数平均粒子径1.0μmの潤滑剤粒子M(ステアリン酸粒子)を得た。
【0118】
<トナー母粒子の調製>
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)に、90質量部のポリエステル樹脂P1と、5質量部のカーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA−100」)と、5質量部のカルナバワックス(株式会社加藤洋行製「特製カルナウバワックス1号」)とを投入し、回転速度2400rpmで3分間混合した。続けて、得られた混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて、材料供給速度5kg/時、軸回転速度150rpm、シリンダー温度150℃の条件で溶融混練した。その後、得られた溶融混練物を冷却した。続けて、冷却された溶融混練物を、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)」)を用いて粗粉砕した。続けて、得られた粗粉砕物を、ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製「超音波ジェットミルI型」)を用いて微粉砕した。続けて、得られた微粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)8.0μmのトナー母粒子T1が得られた。
【0119】
<トナーの作製>
[トナーTA−1の作製]
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)を用いて、回転速度3500rpmかつジャケット温度20℃の条件で、100質量部のトナー母粒子T1と、0.5質量部のシリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」、表面処理により正帯電性が付与された乾式シリカ粒子)と、0.1質量部の潤滑剤粒子Aとを5分間混合した。続けて、得られた粉体を、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。その結果、トナー母粒子T1にシリカ粒子が付着したトナー粒子と、潤滑剤粒子Aとをそれぞれ多数個含むトナーTA−1が得られた。なお、トナーTA−1に含まれる潤滑剤粒子Aは、それぞれトナー母粒子T1に付着していた。
【0120】
[トナーTA−2〜TA−9及びトナーTB−1〜TB−4の作製]
潤滑剤粒子Aを表1に示す潤滑剤粒子に変更したこと以外は、トナーTA−1と同様の方法で、トナーTA−2〜TA−9及びトナーTB−1〜TB−4をそれぞれ作製した。なお、表1の「厚み(nm)」欄の各数値は、各潤滑剤粒子のコート層の厚みを示す。また、表1の「厚み(nm)」欄の「−」は、コート層を形成しなかったことを意味する。
【0121】
<評価方法>
トナーTA−1〜TA−9及びトナーTB−1〜TB−4の評価は、以下に示す方法で評価用現像剤を調製し、評価機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製複合機「TASKalfa(登録商標)500ci」)を用いて、以下に示す方法で行った。なお、上記評価機は、感光体ドラムとしてアモルファスシリコン感光体を備えていた。また、上記評価機は、ゴム製のクリーニングブレードを備えていた。
【0122】
[評価用現像剤の調製]
現像剤用キャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製カラープリンター「FS−C5250DN」用キャリア)100質量部と、上記の方法で作製された各トナー5質量部とを混合し、得られた混合物をボールミルにより30分攪拌した。その結果、トナーTA−1〜TA−9及びトナーTB−1〜TB−4をそれぞれ含む現像剤(2成分現像剤)が得られた。
【0123】
[帯電安定性に関する評価]
評価用現像剤を上記評価機のブラック用現像装置に、評価用トナー(前述の手順で作製した各トナー)を上記評価機のブラック用トナーカートリッジに、それぞれ投入し、現像スリーブとマグネットロールとの間の電圧を250Vに調整し、マグネットロールに印加する交流電圧(Vpp)を2.0kVに設定した。次いで、温度10℃かつ湿度10%RHの環境下、上記評価機を用いて、紙(A4サイズの普通紙)に印字率100%のソリッド画像を含む評価用画像を出力した。印字率100%のソリッド画像は、評価用画像の印字面積の20%を占めていた。次いで、得られたソリッド画像の画像濃度を測定し、その測定値を初期の画像濃度とした。画像濃度の測定には、反射濃度計(X−Rite社製「SpectroEye(登録商標)」)を用いた。次いで、温度10℃かつ湿度10%RHの環境下、上記評価機を用いて、印字率4%の画像を5000枚の紙(A4サイズの普通紙)に連続印刷した。連続印刷後、紙(A4サイズの普通紙)に印字率100%のソリッド画像を含む評価用画像を出力した。印字率100%のソリッド画像は、評価用画像の印字面積の20%を占めていた。次いで、得られたソリッド画像の画像濃度を上記と同様に測定し、その測定値を連続印刷後の画像濃度とした。そして、初期の画像濃度と連続印刷後の画像濃度との差の絶対値(以下、絶対値Δと記載する。)を算出し、下記判定基準に基づいて判定した。結果を表1に示す。判定がAの場合を帯電安定性が極めて良いと評価した。判定がBの場合を帯電安定性が良いと評価した。判定がCの場合を帯電安定性が悪いと評価した。
【0124】
(判定基準)
A:絶対値Δが0.1以下
B:絶対値Δが0.1を超えて0.2以下
C:絶対値Δが0.2より大きい
【0125】
[クリーニング性能に関する評価]
評価用現像剤を上記評価機のブラック用現像装置に、評価用トナー(前述の手順で作製した各トナー)を上記評価機のブラック用トナーカートリッジに、それぞれ投入し、現像スリーブとマグネットロールとの間の電圧を250Vに調整し、マグネットロールに印加する交流電圧(Vpp)を2.0kVに設定した。次いで、温度25℃かつ湿度50%RHの環境下、上記評価機を用いて、印字率4%の画像を5000枚の紙(A4サイズの普通紙)に連続印刷した。連続印刷後、紙(A4サイズの普通紙)の全面に印字率100%のソリッド画像を出力し、更に続けて、紙(A4サイズの普通紙)の全面に印字率50%のハーフトーン画像を出力した。得られたソリッド画像及びハーフトーン画像中に、色点及び画像抜けがないか、目視で確認した。また、ソリッド画像及びハーフトーン画像形成後に、感光体ドラムの表面にトナー成分の付着物(残留物)がないか目視で確認した。目視での観察結果から、下記判定基準に基づいて判定した。結果を表1に示す。判定がAの場合をクリーニングブレードのクリーニング性能の低下が極めて抑制されていると評価した。判定がBの場合をクリーニングブレードのクリーニング性能の低下が抑制されていると評価した。判定がCの場合をクリーニングブレードのクリーニング性能の低下が抑制されていないと評価した。
【0126】
(判定基準)
A:ソリッド画像及びハーフトーン画像の何れにも色点及び画像抜けがなく、感光体ドラムの表面にトナー成分の付着物が存在していなかった。
B:ソリッド画像及びハーフトーン画像の何れにも色点及び画像抜けがないが、感光体ドラムの表面にトナー成分の付着物が存在していた。
C:ソリッド画像及びハーフトーン画像の少なくとも一方に色点又は画像抜けがあり、かつ、感光体ドラムの表面にトナー成分の付着物が存在していた。
【0127】
【表1】
【0128】
トナーTA−1〜TA−9は、多数個のトナー粒子と多数個の潤滑剤粒子とを含有するトナーであった。また、トナーTA−1〜TA−9に含まれる潤滑剤粒子は、それぞれ、ステアリン酸又はパルミチン酸を含むコアと、コアの表面を覆うコート層とを備えていた。表1に示すように、トナーTA−1〜TA−9に含まれる潤滑剤粒子のコート層の厚みは、10nm以上50nm以下であった。
【0129】
表1に示すように、トナーTA−1〜TA−9は、帯電安定性の判定が、A(帯電安定性が極めて良い)、又はB(帯電安定性が良い)であった。トナーTA−1〜TA−9は、クリーニング性能の判定が、A(クリーニングブレードのクリーニング性能の低下が極めて抑制されている)、又はB(クリーニングブレードのクリーニング性能の低下が抑制されている)であった。
【0130】
表1に示すように、トナーTB−1及びTB−3に含まれる潤滑剤粒子は、コート層の厚みが50nmを超えていた。トナーTB−2に含まれる潤滑剤粒子は、コート層の厚みが10nm未満であった。トナーTB−4に含まれる潤滑剤粒子は、コート層が形成されていなかった。
【0131】
表1に示すように、トナーTB−2及びTB−4は、帯電安定性の判定がC(帯電安定性が悪い)であった。トナーTB−1及びTB−3は、クリーニング性能の判定がC(クリーニングブレードのクリーニング性能の低下が抑制されていない)であった。
【0132】
以上の結果から、本発明に係るトナーによれば、帯電安定性を維持しつつ、クリーニング部材のクリーニング性能の低下を抑制できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明に係るトナーは、例えば複合機又はプリンターにおいて画像を形成するために利用することができる。
【符号の説明】
【0134】
1 潤滑剤粒子
2 コア
3 コート層
4 第1コート層
5 第2コート層
図1
図2