特許第6822438号(P6822438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6822438現像剤セット、画像形成装置、及び画像形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6822438
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】現像剤セット、画像形成装置、及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20210114BHJP
   G03G 9/113 20060101ALI20210114BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   G03G9/097 372
   G03G9/113 352
   G03G9/113 354
   G03G15/08 310
   G03G15/08 340
   G03G9/097 351
【請求項の数】8
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-81407(P2018-81407)
(22)【出願日】2018年4月20日
(65)【公開番号】特開2019-191292(P2019-191292A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2020年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】杉本 博子
【審査官】 川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−151298(JP,A)
【文献】 特開2017−181652(JP,A)
【文献】 特開2009−205149(JP,A)
【文献】 特開平11−202630(JP,A)
【文献】 特開2015−219323(JP,A)
【文献】 特開2005−316057(JP,A)
【文献】 特開2003−140402(JP,A)
【文献】 特開2008−015151(JP,A)
【文献】 特開2016−176985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08−9/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1現像剤と、第2現像剤とを備え、
前記第1現像剤は、第1トナー粒子を含む第1正帯電性トナーと、第1キャリア粒子を含む第1キャリアとを含み、
前記第2現像剤は、第2トナー粒子を含む第2正帯電性トナーと、第2キャリア粒子を含む第2キャリアとを含み、
前記第1トナー粒子は樹脂外添剤を有し、前記第2トナー粒子は前記樹脂外添剤を有さず、
前記第1キャリア粒子はフッ素樹脂を含有する第1コート層を有し、前記第2キャリア粒子はシリコーン樹脂を含有する第2コート層を有する、現像剤セット。
【請求項2】
前記第1現像剤は、現像装置内に収容されている初期現像剤であり、
前記第2現像剤は、前記初期現像剤の使用開始後に前記現像装置内へ補給される補給用現像剤である、請求項1に記載の現像剤セット。
【請求項3】
前記フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、又はテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体である、請求項1又は2に記載の現像剤セット。
【請求項4】
前記シリコーン樹脂は、メチル基を有するシリコーン樹脂である、請求項1〜3の何れか一項に記載の現像剤セット。
【請求項5】
前記樹脂外添剤は、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルと、スチレン又はその誘導体と、少なくとも2個のビニル基を有する化合物との共重合体を含有する、請求項1〜4の何れか一項に記載の現像剤セット。
【請求項6】
前記第1コート層は、1種の前記フッ素樹脂のみを含有し、
前記第2コート層は、1種の前記シリコーン樹脂のみを含有する、請求項1〜5の何れか一項に記載の現像剤セット。
【請求項7】
現像剤により静電潜像を現像する現像装置と、
前記現像装置内の前記現像剤を排出する現像剤排出部と、
第2現像剤を前記現像装置内へ補給する第2現像剤補給部と
を備え、
前記現像装置内への前記第2現像剤の補給前において、前記現像剤は、第1現像剤であり、
前記現像装置内への前記第2現像剤の補給後において、前記現像剤は、前記第1現像剤及び前記第2現像剤であり、
前記第1現像剤は、第1トナー粒子を含む第1正帯電性トナーと、第1キャリア粒子を含む第1キャリアとを含み、
前記第2現像剤は、第2トナー粒子を含む第2正帯電性トナーと、第2キャリア粒子を含む第2キャリアとを含み、
前記第1トナー粒子は樹脂外添剤を有し、前記第2トナー粒子は前記樹脂外添剤を有さず、
前記第1キャリア粒子はフッ素樹脂を含有する第1コート層を有し、前記第2キャリア粒子はシリコーン樹脂を含有する第2コート層を有する、画像形成装置。
【請求項8】
現像装置内の第1現像剤による静電潜像の現像を開始した後、前記現像装置内の現像剤の排出と前記現像装置内への第2現像剤の補給とを行いつつ、前記現像装置内の前記現像剤により静電潜像を現像する現像工程を含み、
前記現像装置内への前記第2現像剤の補給前において、前記現像剤は、前記第1現像剤であり、
前記現像装置内への前記第2現像剤の補給後において、前記現像剤は、前記第1現像剤及び前記第2現像剤であり、
前記第1現像剤は、第1トナー粒子を含む第1正帯電性トナーと、第1キャリア粒子を含む第1キャリアとを含み、
前記第2現像剤は、第2トナー粒子を含む第2正帯電性トナーと、第2キャリア粒子を含む第2キャリアとを含み、
前記第1トナー粒子は樹脂外添剤を有し、前記第2トナー粒子は前記樹脂外添剤を有さず、
前記第1キャリア粒子はフッ素樹脂を含有する第1コート層を有し、前記第2キャリア粒子はシリコーン樹脂を含有する第2コート層を有する、画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤セット、画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置を用いて画像を形成する方法としては、以下に示す第1及び第2の画像形成方法が知られている。第1の画像形成方法では、画像形成装置の現像装置内に2成分現像剤(トナー及びキャリア)を投入して、現像装置内で帯電させたトナーにより、感光体ドラムの表面に形成された静電潜像を現像する。現像装置内で2成分現像剤を攪拌することで、摩擦帯電したトナーを得る。静電潜像を現像するたびにトナーは消費され、消費された分を補うだけの新しいトナー(補給用トナー)が現像装置内へ補給される。一方、キャリアは、消費されずに現像装置内に残る。現像装置内のキャリアは、例えば、画像形成装置の定期メンテナンスの際に新品のキャリアに交換される。このような第1の画像形成方法では、現像装置内での攪拌によるストレスで、又は現像装置内でトナー成分がキャリア粒子の表面に付着することで、経時的にキャリアの性能低下(劣化)が生じる。しかし、劣化したキャリアを早期に交換することは難しい。現像装置内のキャリアが劣化した状態で画像の形成が行われると、画像の品質が低下し易くなる。
【0003】
第2の画像形成方法は、いわゆるトリクル現像方式の画像形成方法である。トリクル現像方式の画像形成装置は、現像装置内の初期現像剤(初期トナー及び初期キャリア)による静電潜像の現像を開始した後、現像装置内の現像剤の排出と現像装置内への現像剤(補給用トナー及び補給用キャリア)の補給とを行いつつ、現像装置内の現像剤で静電潜像を現像する。画像形成中において、現像装置内へトナーと一緒にキャリアも補給し、補給により過剰になった分だけ現像装置内のキャリアを排出することで、現像装置内のキャリアが劣化することを抑制できる。また、キャリアの劣化が抑制されることで、現像装置内のキャリアの交換回数を低減することができる。
【0004】
特許文献1には、補給用キャリアの帯電量を、初期キャリアの帯電量に対して1.2倍以上に設定し、かつ、補給用キャリアの電気抵抗値を、初期キャリアの電気抵抗値と同等かあるいはそれよりも低く設定する現像方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−202630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の現像方法では、多数枚印刷した場合に、形成した画像にかぶりが発生することを抑制して高画質な画像を形成し続けることは困難である。また、特許文献1に記載の現像方法では、多数枚印刷した場合に、トナーの流動性を維持することは困難である。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、多数枚印刷した場合であっても高画質な画像を形成でき、トナーの流動性を維持でき、キャリア粒子にトナー成分が付着する現象(スペント)を抑制できる現像剤セット、画像形成装置、及び画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る現像剤セットは、第1現像剤と、第2現像剤とを備える。前記第1現像剤は、第1トナー粒子を含む第1正帯電性トナーと、第1キャリア粒子を含む第1キャリアとを含む。前記第2現像剤は、第2トナー粒子を含む第2正帯電性トナーと、第2キャリア粒子を含む第2キャリアとを含む。前記第1トナー粒子は樹脂外添剤を有し、前記第2トナー粒子は前記樹脂外添剤を有しない。前記第1キャリア粒子はフッ素樹脂を含有する第1コート層を有し、前記第2キャリア粒子はシリコーン樹脂を含有する第2コート層を有する。
【0009】
本発明に係る画像形成装置は、現像装置と、現像剤排出部と、第2現像剤補給部とを備える。前記現像装置は、現像剤により静電潜像を現像する。前記現像剤排出部は、前記現像装置内の前記現像剤を排出する。前記第2現像剤補給部は、第2現像剤を前記現像装置内へ補給する。前記現像装置内への前記第2現像剤の補給前において、前記現像剤は、第1現像剤である。前記現像装置内への前記第2現像剤の補給後において、前記現像剤は、前記第1現像剤及び前記第2現像剤である。前記第1現像剤は、第1トナー粒子を含む第1正帯電性トナーと、第1キャリア粒子を含む第1キャリアとを含む。前記第2現像剤は、第2トナー粒子を含む第2正帯電性トナーと、第2キャリア粒子を含む第2キャリアとを含む。前記第1トナー粒子は樹脂外添剤を有し、前記第2トナー粒子は前記樹脂外添剤を有しない。前記第1キャリア粒子はフッ素樹脂を含有する第1コート層を有し、前記第2キャリア粒子はシリコーン樹脂を含有する第2コート層を有する。
【0010】
本発明に係る画像形成方法は、現像装置内の第1現像剤による静電潜像の現像を開始した後、前記現像装置内の現像剤の排出と前記現像装置内への第2現像剤の補給とを行いつつ、前記現像装置内の前記現像剤により静電潜像を現像する現像工程を含む。前記現像装置内への前記第2現像剤の補給前において、前記現像剤は、前記第1現像剤である。前記現像装置内への前記第2現像剤の補給後において、前記現像剤は、前記第1現像剤及び前記第2現像剤である。前記第1現像剤は、第1トナー粒子を含む第1正帯電性トナーと、第1キャリア粒子を含む第1キャリアとを含む。前記第2現像剤は、第2トナー粒子を含む第2正帯電性トナーと、第2キャリア粒子を含む第2キャリアとを含む。前記第1トナー粒子は樹脂外添剤を有し、前記第2トナー粒子は前記樹脂外添剤を有しない。前記第1キャリア粒子はフッ素樹脂を含有する第1コート層を有し、前記第2キャリア粒子はシリコーン樹脂を含有する第2コート層を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、多数枚印刷した場合であっても高画質な画像を形成でき、トナーの流動性を維持でき、スペントを抑制できる現像剤セット、画像形成装置、及び画像形成方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る現像剤セットに備えられる第1現像剤を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る現像剤セットに備えられる第2現像剤を示す図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。
図4図3に示す画像形成装置の現像装置及びその周辺部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本明細書で用いる用語の意味、及び測定方法を説明する。粉体(より具体的には、トナー母粒子、樹脂外添剤、その他の外添剤、トナー粒子、キャリアコア、キャリア粒子等)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、その粉体に含まれる相当数の粒子について測定した値の数平均である。
【0014】
粉体の粒子径、及び数平均粒子径の各々は、何ら規定していなければ、顕微鏡を用いて測定された1次粒子の円相当径(ヘイウッド径:粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の数平均値である。
【0015】
粉体の体積中位径(D50)は、何ら規定していなければ、ベックマン・コールター株式会社製の「コールターカウンターマルチサイザー3」を用いてコールター原理(細孔電気抵抗法)に基づき測定した値である。以下、「体積中位径」を「D50」と記載することがある。
【0016】
ガラス転移点(Tg)、及び融点(Mp)は、何ら規定していなければ、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて「JIS(日本工業規格)K7121−2012」に従って測定した値である。示差走査熱量計で測定された試料の吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)において、ガラス転移に起因する変曲点の温度が、ガラス転移点(Tg)に相当する。ガラス転移に起因する変曲点の温度は、詳しくは、ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点の温度である。吸熱曲線中の最大吸熱ピークの温度が、融点(Mp)に相当する。以下、「ガラス転移点」を「Tg」と、「融点」を「Mp」と記載することがある。
【0017】
酸価及び水酸基価の各々は、何ら規定していなければ、「JIS(日本工業規格)K0070−1992」に従い測定した値である。
【0018】
帯電性の強さは、何ら規定していなければ、日本画像学会から提供される標準キャリアに対する摩擦帯電のし易さである。例えば、日本画像学会から提供される標準キャリア(アニオン性:N−01、カチオン性:P−01)と測定対象とを攪拌することで、測定対象を摩擦帯電させる。例えばQ/mメーター(トレック社製「MODEL 212HS」)を用いて、摩擦帯電させる前と後との測定対象の表面電位をそれぞれ測定し、摩擦帯電の前後での電位の変化が大きい測定対象ほど帯電性が強いことを示す。
【0019】
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。以上、本明細書で用いる用語の意味、及び測定方法を説明した。次に、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
[第1実施形態:現像剤セット]
以下、図1及び図2を参照して、本発明の第1実施形態に係る現像剤セットについて説明する。図1は、第1実施形態に係る現像剤セットに備えられる第1現像剤100(以下「初期現像剤」と記載することがある)を示す。図2は、第1実施形態に係る現像剤セットに備えられる第2現像剤200(以下「補給用現像剤」と記載することがある)を示す。
【0021】
第1実施形態に係る現像剤セットは、初期現像剤100と、補給用現像剤200とを備える。初期現像剤100は、第1正帯電性トナー(以下「初期トナー」と記載することがある)と、第1キャリア(以下「初期キャリア」と記載することがある)とを含む。初期トナーは、第1トナー粒子101を含む。初期キャリアは、第1キャリア粒子103を含む。補給用現像剤200は、第2正帯電性トナー(以下「補給用トナー」と記載することがある)と、第2キャリア(以下「補給用キャリア」と記載することがある)とを含む。補給用トナーは、第2トナー粒子201を含む。補給用キャリアは、第2キャリア粒子203を含む。第1トナー粒子101は、樹脂外添剤102を有し、第2トナー粒子201は樹脂外添剤102を有していない。第1キャリア粒子103はフッ素樹脂を含有する第1コート層104を有し、第2キャリア粒子203はシリコーン樹脂を含有する第2コート層204を有する。
【0022】
第1実施形態に係る現像剤セットは、トリクル現像方式の画像形成装置20(図3参照)で用いられる。詳しくは、第1実施形態に係る現像剤セットは、現像装置11(図4参照)内の初期現像剤100による静電潜像の現像を開始した後、現像装置11内の現像剤D(図4参照)の排出と現像装置11内への補給用現像剤200の補給とを行う画像形成装置20で用いられる。初期現像剤100は、未使用の現像装置11内に収容されている初期現像剤100である。未使用の現像装置11とは、例えば、製品販売時の現像装置11である。補給用現像剤200は、初期現像剤100の使用開始後に現像装置11内へ補給される補給用現像剤200である。初期現像剤100と、補給用現像剤200とは、互いに異なる容器に収容されている。
【0023】
第1実施形態に係る現像剤セットは、多数枚印刷した場合であっても高画質な画像を形成でき、トナーの流動性を維持でき、スペントを抑制できる。その理由は、以下のように推測される。なお、本明細書において高画質な画像とは、画像濃度が所望値以上であり、かぶり濃度が所望値以下であるような画像をいう。
【0024】
第1実施形態に係る現像剤セットにおいて、第1トナー粒子101は、樹脂外添剤102を有している。初期現像剤100は、補給用現像剤200と比較して、長期にわたって現像装置11内で攪拌される。初期現像剤100に含まれる第1トナー粒子101が樹脂外添剤102を有することで、樹脂外添剤102がスペーサーとして機能する。このため、長期にわたって現像装置11内で初期現像剤100が攪拌された場合であっても、トナー(詳しくは、初期トナー、又は初期トナーと補給用トナーとの混合物)の流動性を維持できる。また、初期現像剤100に含まれる第1トナー粒子101が樹脂外添剤102を有することで、樹脂外添剤102がスペーサーとして機能し、第1トナー粒子101の成分が第1キャリア粒子103の表面に付着することを抑制できる。その結果、第1キャリア粒子103を含む初期キャリアのスペントを抑制できる。初期キャリアのスペントが抑制されると、初期キャリアにより摩擦帯電されたトナー(詳しくは、初期トナー、又は初期トナーと補給用トナーとの混合物)の帯電量を所望値以上に維持でき、形成した画像にかぶりが発生することを抑制できる。
【0025】
第1実施形態に係る現像剤セットにおいて、第2トナー粒子201は樹脂外添剤102を有していない。補給用現像剤200には、初期現像剤100と比較して、良好な帯電立ち上がり特性が要求される。良好な帯電立ち上がり特性とは、より短い時間で所望値以上の帯電量にトナーを帯電できる特性である。第2トナー粒子201が樹脂外添剤102を有していないことで、第2トナー粒子201を含む補給用トナーに良好な帯電立ち上がり特性を付与できる。このため、補給用トナーを所望値以上の帯電量に迅速に摩擦帯電でき、形成した画像にかぶりが発生することを抑制できる。また、第2トナー粒子201が樹脂外添剤102を有していないことで、多数枚印刷した場合であっても、トナー(詳しくは、初期トナーと補給用トナーとの混合物)の流動性を維持できる。
【0026】
第1実施形態に係る現像剤セットにおいて、第1キャリア粒子103はフッ素樹脂を含有する第1コート層104を有している。初期キャリアには、補給用キャリアと比較して、トナー(詳しくは、初期トナー、又は初期トナーと補給用トナーとの混合物)を正に摩擦帯電し過ぎないことが要求される。フッ素樹脂によって摩擦されたときのトナーの正帯電し易さは、シリコーン樹脂によって摩擦されたときのトナーの正帯電し易さと比較して、低い傾向にある。第1キャリア粒子103がフッ素樹脂を含有する第1コート層104を有していることで、第1キャリア粒子103を含む初期キャリアによって摩擦されたトナー(詳しくは、初期トナー、又は初期トナーと補給用トナーとの混合物)が、正に帯電され過ぎない。このため、所望値以上の画像濃度を有する画像を形成できる。また、トナー成分はフッ素樹脂に付着し難い傾向がある。第1キャリア粒子103がフッ素樹脂を含有する第1コート層104を有していることで、第1キャリア粒子103を含む初期キャリアのスペントを抑制できる。
【0027】
第1実施形態に係る現像剤セットにおいて、第2キャリア粒子203はシリコーン樹脂を含有する第2コート層204を有している。既に述べたように、補給用現像剤200には、初期現像剤100と比較して、特に良好な帯電立ち上がり特性が要求される。シリコーン樹脂によって摩擦されたときのトナーの正帯電し易さは、フッ素樹脂によって摩擦されたときのトナーの正帯電し易さと比較して、高い傾向にある。第2キャリア粒子203がシリコーン樹脂を含有する第2コート層204を有していることで、第2キャリア粒子203を含む補給用キャリアによって摩擦されたトナーが、正に帯電され易い。このため、補給用キャリアによって所望値以上の帯電量までトナー(詳しくは、初期トナー、又は初期トナーと補給用トナーとの混合物)を迅速に帯電でき、形成した画像にかぶりが発生することを抑制できる。また、第2キャリア粒子203がシリコーン樹脂を含有する第2コート層204を有していることで、多数枚印刷した場合であっても、トナー(詳しくは、初期トナーと補給用トナーとの混合物)の流動性を維持できる。
【0028】
現像剤セットを用いて高画質な画像を形成するためには、初期現像剤100における初期トナーの量が、100質量部の初期キャリアに対して、5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。同じ理由から、補給用現像剤200における補給用トナーの量が、100質量部の補給用キャリアに対して、500質量部以上1500質量部以下であることが好ましい。
【0029】
<第1及び第2キャリア粒子>
以下、初期トナーに含まれる第1キャリア粒子103、及び補給用トナーに含まれる第2キャリア粒子203について説明する。
【0030】
第1キャリア粒子103は、キャリアコア40と、第1コート層104とを有する。第1コート層104は、キャリアコア40の表面上に備えられている。第1コート層104は、キャリアコア40の表面を被覆する。第1コート層104は、キャリアコア40の表面全域を被覆していてもよいし、キャリアコア40の表面を部分的に被覆していてもよい。第1コート層104は、フッ素樹脂を含有する。第1コート層104は、実質的にフッ素樹脂から構成されることが好ましい。なお、第1コート層104は、必要に応じて、添加剤を含有していてもよい。
【0031】
第1コート層104に含有されるフッ素含有樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下「FEP」と記載することがある)、及びテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下「PFA」と記載することがある)が挙げられる。所望値以上の画像濃度を有する画像を形成し、スペントを抑制するためには、フッ素樹脂は、PFA、又はFEPであることが好ましい。スペントを特に抑制するためには、フッ素樹脂は、PFAであることがより好ましい。
【0032】
第1コート層104は、1種のフッ素樹脂のみを含有してもよく、2種以上のフッ素樹脂を含有してもよい。第1コート層104は、フッ素樹脂のみを含有してもよく、フッ素樹脂以外の樹脂を更に含有してもよい。第1コート層104は、1種のフッ素樹脂のみを含有し得る。つまり、第1コート層104は、1種のフッ素樹脂のみを含有し、フッ素樹脂以外の樹脂を含有しなくてもよい。第1キャリア粒子103のD50は、25μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0033】
第2キャリア粒子203は、キャリアコア40と、第2コート層204とを有する。第2コート層204は、キャリアコア40の表面上に備えられている。第2コート層204は、キャリアコア40の表面を被覆する。第2コート層204は、キャリアコア40の表面全域を被覆していてもよいし、キャリアコア40の表面を部分的に被覆していてもよい。第2コート層204は、シリコーン樹脂を含有する。第2コート層204は、実質的にシリコーン樹脂から構成されることが好ましい。なお、第2コート層204は、必要に応じて、添加剤を含有していてもよい。
【0034】
形成した画像にかぶりが発生することを抑制し、トナーの流動性を維持するためには、第2コート層204に含有されるシリコーン樹脂は、メチル基を有するシリコーン樹脂であることが好ましい。メチル基を有するシリコーン樹脂の一例は、メチル基を有しフェニル基を有しないシリコーン樹脂(以下「メチルシリコーン樹脂」と記載することがある)である。メチル基を有するシリコーン樹脂の別の例は、メチル基及びフェニル基を有するシリコーン樹脂(以下「メチルフェニルシリコーン樹脂」と記載することがある)である。シリコーン樹脂がメチルシリコーン樹脂である場合、トナーの流動性を特に好適に維持できる。
【0035】
第2コート層204は、1種のシリコーン樹脂のみを含有してもよく、2種以上のシリコーン樹脂を含有してもよい。第2コート層204は、シリコーン樹脂のみを含有してもよく、シリコーン樹脂以外の樹脂を更に含有してもよい。第2コート層204は、1種のシリコーン樹脂のみを含有し得る。つまり、第2コート層204は、1種のシリコーン樹脂のみを含有し、シリコーン樹脂以外の樹脂を含有しなくてもよい。第2キャリア粒子203のD50は、25μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0036】
(キャリアコア)
第1キャリア粒子103及び第2キャリア粒子203の各々が有するキャリアコア40について説明する。キャリアコア40は、磁性材料を含有することが好ましい。キャリアコア40に含有される磁性材料としては、例えば、金属酸化物が挙げられ、より具体的には、マグネタイト、マグヘマイト、及びフェライトが挙げられる。キャリアコア40は、フェライトを含有することが好ましい。フェライトとしては、例えば、バリウムフェライト、Mn−Znフェライト、Ni−Znフェライト、Mn−Mgフェライト、Ca−Mgフェライト、Liフェライト、及びCu−Znフェライトが挙げられる。キャリアコア40は、1種類の磁性材料のみを含有してもよいし、2種以上の磁性材料を含有してもよい。キャリアコア40としては、市販品を使用してもよい。また、磁性材料を粉砕及び焼成してキャリアコア40を自作してもよい。第1キャリア粒子103が有するキャリアコア40は、第2キャリア粒子203が有するキャリアコア40と、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0037】
<第1及び第2トナー粒子>
次に、初期トナーに含まれる第1トナー粒子101、及び補給用トナーに含まれる第2トナー粒子201について説明する。
【0038】
第1トナー粒子101は、正帯電性を有する。つまり、第1トナー粒子101はキャリア(詳しくは、初期キャリア、又は初期キャリアと補給用キャリアとの混合物)との摩擦により正に帯電する。第1トナー粒子101は、トナー母粒子30と、樹脂外添剤102とを有する。樹脂外添剤102は、トナー母粒子30の表面に備えられる。第1トナー粒子101は、樹脂外添剤102に加えて、樹脂外添剤102以外の外添剤(不図示、以下「その他の外添剤」と記載する)を更に有していてもよい。第1トナー粒子101がその他の外添剤を有する場合、その他の外添剤は、トナー母粒子30の表面に備えられる。第1トナー粒子101のD50は、4μm以上12μm以下であることが好ましい。
【0039】
第2トナー粒子201は、正帯電性を有する。つまり、第2トナー粒子201はキャリア(詳しくは、初期キャリアと補給用キャリアとの混合物)との摩擦により正に帯電する。第2トナー粒子201は、トナー母粒子30を有し、樹脂外添剤102を有していない。第2トナー粒子201は、樹脂外添剤102を有していないが、その他の外添剤(不図示)を有していてもよい。第2トナー粒子201がその他の外添剤を有する場合、その他の外添剤はトナー母粒子30の表面に備えられる。なお、第2トナー粒子201のトナー母粒子30は、第1トナー粒子101のトナー母粒子30と同一であってもよく異なっていてもよい。第2トナー粒子201のD50は、4μm以上12μm以下であることが好ましい。
【0040】
以下、第1トナー粒子101が有する樹脂外添剤102、第1トナー粒子101と第2トナー粒子201とが有するトナー母粒子30、及び第1トナー粒子101と第2トナー粒子201とが任意に有するその他の外添剤について説明する。
【0041】
(第1トナー粒子の樹脂外添剤)
樹脂外添剤102は、樹脂を含有する。樹脂外添剤102は、実質的に樹脂により構成されることが好ましい。樹脂外添剤102が含有する樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、及びスチレン−アクリル樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂は、1種以上の多価アルコールモノマーと、1種以上の多価カルボン酸モノマーとの共重合体である。アクリル樹脂は、1種以上のアクリル酸系モノマーの重合体である。スチレン−アクリル樹脂は、1種以上のスチレン系モノマーと、1種以上のアクリル酸系モノマーとの共重合体である。樹脂外添剤102を構成する樹脂としては、スチレン−アクリル樹脂が好ましい。スチレン−アクリル樹脂を合成するためには、例えば以下に示すようなスチレン系モノマー及びアクリル酸系モノマーを好適に使用できる。
【0042】
スチレン系モノマーの好適な例としては、スチレン、アルキルスチレン(より具体的には、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、又は4−tert−ブチルスチレン等)、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、及びp−クロロスチレンが挙げられる。
【0043】
アクリル酸系モノマーの好適な例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、及び(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。
【0044】
樹脂外添剤102が含有するスチレン−アクリル樹脂は、1種以上のスチレン系モノマーと、1種以上のアクリル酸系モノマーと、少なくとも2個のビニル基を有する化合物との共重合体であることが好ましい。少なくとも2個のビニル基を有する化合物は、架橋剤として機能するモノマーである。少なくとも2個のビニル基を有する化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、及びエチレングリコールジアクリレートが挙げられる。少なくとも2個のビニル基を有する化合物としては、ジビニルベンゼンが好ましい。
【0045】
樹脂外添剤102は、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルと、スチレン又はその誘導体と、少なくとも2個のビニル基を有する化合物との共重合体を含有することが好ましい。樹脂外添剤102は、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルと、スチレンと、ジビニルベンゼンとの共重合体を含有することがより好ましい。樹脂外添剤102は、メタクリル酸ブチルとスチレンとジビニルベンゼンとの共重合体を含有することが更に好ましい。樹脂外添剤102は、質量比(メタクリル酸ブチル:スチレン:ジビニルベンゼン)が100:20:80であるメタクリル酸ブチルとスチレンとジビニルベンゼンとの共重合体を含有することが特に好ましい。樹脂外添剤102の量は、100質量部のトナー母粒子30に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上1.0質量部以下であることが更に好ましい。樹脂外添剤102のD50は、50nm以上200nm以下であることが好ましく、50nm以上100nm以下であることがより好ましい。
【0046】
(第1及び第2トナー粒子のトナー母粒子)
第1トナー粒子101及び第2トナー粒子201の各々が有するトナー母粒子30は、結着樹脂を含有する。トナー母粒子30は、必要に応じて、離型剤、着色剤、電荷制御剤のうちの少なくとも1つを更に含有していてもよい。
【0047】
(結着樹脂)
トナー母粒子30は、結着樹脂を含有する。低温定着性に優れた初期トナー及び補給用トナーを得るために、トナー母粒子30は、結着樹脂として熱可塑性樹脂を含有することが好ましく、結着樹脂全体の85質量%以上の割合で熱可塑性樹脂を含有することがより好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂(より具体的には、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体等)、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、ビニル樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、N−ビニル樹脂等)、ポリアミド樹脂、及びウレタン樹脂が挙げられる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂等)も、結着樹脂として使用できる。トナー母粒子30は、1種の結着樹脂のみを含有してもよく、2種以上の結着樹脂を含有してもよい。
【0048】
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂は、1種以上の多価アルコールモノマーと、1種以上の多価カルボン酸モノマーとの重合体である。なお、多価カルボン酸モノマーの代わりに、多価カルボン酸誘導体(より具体的には、多価カルボン酸の無水物、多価カルボン酸ハライド等)を使用してもよい。
【0049】
多価アルコールモノマーの例としては、ジオールモノマー、ビスフェノールモノマー、及び3価以上のアルコールモノマーが挙げられる。
【0050】
ジオールモノマーの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ベンゼンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
【0051】
ビスフェノールモノマーの例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0052】
3価以上のアルコールモノマーの例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0053】
多価カルボン酸モノマーの例としては、2価カルボン酸モノマー、及び3価以上のカルボン酸モノマーが挙げられる。
【0054】
2価カルボン酸モノマーの例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸、及びアルケニルコハク酸が挙げられる。アルキルコハク酸の例としては、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、及びイソドデシルコハク酸が挙げられる。アルケニルコハク酸の例としては、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、及びイソドデセニルコハク酸が挙げられる。
【0055】
3価以上のカルボン酸モノマーの例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、及びエンポール三量体酸が挙げられる。
【0056】
ポリエステル樹脂の酸価は、1.0mgKOH/g以上30.0mgKOH/g以下であることが好ましく、1.0mgKOH/g以上10.0mgKOH/g以下であることがより好ましく、5.0mgKOH/g以上6.0mgKOH/g以下であることが更に好ましい。
【0057】
ポリエステル樹脂のMpは、50℃以上150℃以下であることが好ましく、75℃以上125℃以下であることがより好ましく、95℃以上105℃以下であることが更に好ましい。
【0058】
(離型剤)
トナー母粒子30は、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、耐ホットオフセット性に優れた初期トナー及び補給用トナーを得る目的で使用される。離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0059】
離型剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系ワックス、脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、植物由来ワックス、動物由来ワックス、鉱物由来ワックス、脂肪酸エステルを主成分とするエステルワックス、及び脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスが挙げられる。脂肪族炭化水素系ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス(例えば、低分子量ポリエチレン)、ポリプロピレンワックス(例えば、低分子量ポリプロピレン)、ポリオレフィン共重合体、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスが挙げられる。脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物としては、例えば酸化ポリエチレンワックス、及び酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体が挙げられる。植物由来ワックスとしては、例えばキャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、及びライスワックスが挙げられる。動物由来ワックスとしては、例えばみつろう、ラノリン、及び鯨ろうが挙げられる。鉱物由来ワックスとしては、例えばオゾケライト、セレシン、及びペトロラタムが挙げられる。脂肪酸エステルを主成分とするエステルワックスとしては、例えばモンタン酸エステルワックス、及びカスターワックスが挙げられる。脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスとしては、例えば脱酸カルナバワックスが挙げられる。トナー母粒子30は、1種の離型剤のみを含有してもよいし、2種以上の離型剤を含有してもよい。
【0060】
(着色剤)
トナー母粒子30は、着色剤を含有していてもよい。着色剤としては、初期トナー及び補給用トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。着色剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。トナー母粒子30は、1種の着色剤のみを含有してもよく、2種以上の着色剤を含有してもよい。
【0061】
トナー母粒子30は、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
【0062】
トナー母粒子30は、カラー着色剤を含有していてもよい。カラー着色剤としては、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤が挙げられる。
【0063】
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、及び194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、及びC.I.バットイエローが挙げられる。
【0064】
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、及び254)が挙げられる。
【0065】
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、及び66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、及びC.I.アシッドブルーが挙げられる。
【0066】
(電荷制御剤)
トナー母粒子30は、電荷制御剤を含有してもよい。電荷制御剤は、例えば、帯電安定性及び帯電立ち上がり特性に優れた初期トナー及び補給用トナーを得る目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。電荷制御剤として好ましくは、正電荷制御剤が挙げられる。正電荷制御剤は、正帯電性の電荷制御剤である。トナー母粒子30に正電荷制御剤(より具体的には、ピリジン、ニグロシン、又は4級アンモニウム塩等)を含有させることで、トナーのカチオン性(正帯電性)を強めることができる。トナー母粒子30は、1種の電荷制御剤のみを含有してもよいし、2種以上の電荷制御剤を含有してもよい。ただし、初期トナー及び補給用トナーにおいて十分な正帯電性が確保される場合には、トナー母粒子30に電荷制御剤を含有させる必要はない。
【0067】
なお、トナー母粒子30のD50は、4μm以上12μm以下であることが好ましく、5μm以上9μm以下であることがより好ましい。なお、説明を容易にするために、図1及び図2では非カプセルのトナー母粒子30を示している。しかし、図1及び図2で示すトナー母粒子30をトナーコアとし、そのトナーコアを被覆するシェル層を備えるカプセルトナー母粒子であってもよい。
【0068】
(その他の外添剤)
トナー母粒子30の表面には、その他の外添剤が備えられていてもよい。その他の外添剤の量は、100質量部のトナー母粒子30に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。その他の外添剤としては、無機外添剤が好ましい。無機外添剤としては、例えば、シリカ、及び金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等)が挙げられる。トナー母粒子30の表面には、1種のその他の外添剤のみが備えられていてもよいし、2種以上のその他の外添剤が備えられていてもよい。
【0069】
その他の外添剤は、表面処理されていてもよい。例えば、その他の外添剤としてシリカを使用する場合、表面処理剤によりシリカの表面に疎水性及び/又は正帯電性が付与されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、カップリング剤(より具体的には、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等)、シラザン化合物(より具体的には、鎖状シラザン化合物、環状シラザン化合物等)、及びシリコーンオイル(より具体的には、ジメチルシリコーンオイル等)が挙げられる。表面処理剤としては、シランカップリング剤(より具体的には、トリメチルメトキシシラン、アミノシラン等)及びシラザン化合物が好ましい。
【0070】
(材料の組合せ)
多数枚印刷した場合であっても高画質な画像を形成し、トナーの流動性を維持し、スペントを抑制するためには、樹脂外添剤102と、第1コート層104と、第2コート層204との各々に含有される材料が、以下の表1に示す組合せ例S−1〜S−4の何れかであることが好ましい。
【0071】
【表1】
【0072】
表1中「PFA」はテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体を示す。「FEP」はテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体を示す。「MS」はメチルシリコーン樹脂を示す。「MPS」はメチルフェニルシリコーン樹脂を示す。「SA−1」は、スチレンアクリル樹脂を示す。表1の「SA−1」で示されるスチレンアクリル樹脂は、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルと、スチレン又はその誘導体と、少なくとも2個のビニル基を有する化合物との共重合体であることが好ましく、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルと、スチレンと、ジビニルベンゼンとの共重合体であることがより好ましく、メタクリル酸ブチルとスチレンとジビニルベンゼンとの共重合体であることが更に好ましく、質量比(メタクリル酸ブチル:スチレン:ジビニルベンゼン)が100:20:80であるメタクリル酸ブチルとスチレンとジビニルベンゼンとの共重合体であることが特に好ましい。
【0073】
[現像剤セットの製造方法]
次に、第1実施形態に係る現像剤セットの製造方法の一例について説明する。第1実施形態に係る現像剤セットの製造方法は、例えば、初期現像剤100の製造工程と、補給用現像剤200の製造工程とを含む。
【0074】
まず、初期現像剤100の製造工程について説明する。初期現像剤100の製造工程は、例えば、初期トナーの製造工程と、初期キャリアの製造工程と、初期トナーと初期キャリアとの混合工程とを含む。
【0075】
<初期トナーの製造工程>
初期トナーの製造方法は、粉砕法及び凝集法に大別される。初期トナーの製造方法は、粉砕法であることが好ましい。即ち、初期トナーは、粉砕トナーであることが好ましい。粉砕法を用いた場合には、凝集法を用いた場合よりも容易に初期トナーを製造できる。以下、粉砕法を用いた初期トナーの製造工程の一例を説明する。初期トナーの製造工程は、例えば、樹脂外添剤102の製造工程と、トナー母粒子30の製造工程と、外添工程とを含む。
【0076】
(樹脂外添剤の製造工程)
樹脂外添剤102の製造工程において、樹脂外添剤102を形成する。樹脂外添剤102を形成するための方法の一例は、ホモジナイザーを用いて樹脂を有機溶媒中又は水中で細粒化する乳化分散法である。
【0077】
樹脂外添剤102を形成するための方法の別の例は、有機溶媒中又は水中で樹脂原料を重合させることにより、樹脂外添剤102の分散液を得る方法である。樹脂原料は、例えば、樹脂を合成するためのモノマー又はプレポリマーである。樹脂原料を重合させる方法としては、例えば、乳化重合法及びソープフリー重合法が挙げられる。樹脂原料を重合させる際に、乳化剤(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を使用してもよい。樹脂原料の重合は、不活性ガス(例えば、窒素ガス)雰囲気下で行われてもよい。上記樹脂外添剤102の分散液を乾燥させることにより、樹脂外添剤102が得られる。樹脂外添剤102の分散液を乾燥させる方法としては、例えば、熱風受熱式乾燥、伝導伝熱式乾燥、遠赤外線乾燥、及びマイクロ波乾燥が挙げられる。なお、市販の樹脂外添剤102を使用する場合には、樹脂外添剤102の製造工程を省略することができる。
【0078】
(トナー母粒子の製造工程)
トナー母粒子30の製造工程において、結着樹脂及び任意成分(例えば、着色剤、電荷制御剤及び離型剤)を混合して混合物を得る。混合物を溶融しながら混練して、混練物を得る。混練に使用される溶融混練機の例としては、一軸押出機、二軸押出機、ロールミル、及びオープンロール型混練機が挙げられる。得られた混練物を粉砕して、粉砕物を得る。粉砕物を分級して、トナー母粒子30を得る。
【0079】
(外添工程)
外添工程において、混合機を用いて、トナー母粒子30と、樹脂外添剤102と、任意のその他の外添剤とを混合する。混合条件は、樹脂外添剤102がトナー母粒子30に完全に埋没しない条件に設定されることが好ましい。混合により、トナー母粒子30の表面に樹脂外添剤102及び任意のその他の外添剤が付着して、第1トナー粒子101を含む初期トナーが得られる。なお、樹脂外添剤102及びその他の外添剤は、化学的結合ではなく物理的結合(物理的な力)で、トナー母粒子30の表面に付着している。
【0080】
<初期キャリアの製造工程>
初期キャリアの製造工程は、例えば、第1コート工程を含む。
【0081】
(第1コート工程)
第1コート工程において、キャリアコア40の表面に第1コート層104を形成する。これにより、第1キャリア粒子103を含む初期キャリアを得る。第1コート層104を形成する方法の一例は、フッ素樹脂(又は、フッ素樹脂を形成するためのモノマー若しくはプレポリマー)を含む液を、流動層中のキャリアコア40に噴霧する方法である。第1コート層104を形成する方法の別の例は、フッ素樹脂(又は、フッ素樹脂を形成するためのモノマー若しくはプレポリマー)を含む液にキャリアコア40を浸漬する方法である。
【0082】
<初期トナーと初期キャリアとの混合工程>
初期トナーと初期キャリアとの混合工程において、混合機(例えば、ボールミル)を用いて、初期トナーと初期キャリアとを混合することで、初期現像剤100を得る。
【0083】
次に、補給用現像剤200の製造工程について説明する。補給用現像剤200の製造工程は、例えば、補給用トナーの製造工程と、補給用キャリアの製造工程と、補給用トナーと補給用キャリアとの混合工程とを含む。
【0084】
<補給用トナーの製造工程>
補給用トナーの製造方法は、粉砕法及び凝集法に大別される。補給用トナーは、粉砕トナーであることが好ましい。以下、粉砕法を用いた補給用トナーの製造工程の一例を説明する。補給用トナーの製造工程は、例えば、トナー母粒子30の製造工程を含む。
【0085】
(トナー母粒子の製造工程)
補給用トナーのトナー母粒子30の製造工程は、初期トナーのトナー母粒子30の製造工程と同じ方法で行うことができる。必要に応じて、得られた補給用トナーのトナー母粒子30の表面に、任意のその他の外添剤を外添してもよい。例えば、混合機を用いて、トナー母粒子30と、任意のその他の外添剤とを混合する。混合により、トナー母粒子30の表面に任意のその他の外添剤が付着して、第2トナー粒子201が得られる。なお、外添処理を行わない場合には、トナー母粒子30が第2トナー粒子201に相当する。このようにして、第2トナー粒子201を含む補給用トナーが得られる。
【0086】
<補給用キャリアの製造工程>
補給用キャリアの製造工程は、例えば、第2コート工程を含む。
【0087】
(第2コート工程)
第2コート工程において、キャリアコア40の表面に第2コート層204を形成する。これにより、第2キャリア粒子203を含む補給用キャリアを得る。第2コート層204を形成する方法の一例は、シリコーン樹脂(又は、シリコーン樹脂を形成するためのモノマー若しくはプレポリマー)を含む液を、流動層中のキャリアコア40に噴霧する方法である。第2コート層204を形成する方法の別の例は、シリコーン樹脂(又は、シリコーン樹脂を形成するためのモノマー若しくはプレポリマー)を含む液にキャリアコア40を浸漬する方法である。
【0088】
<補給用トナーと補給用キャリアとの混合工程>
補給用トナーと補給用キャリアとの混合工程において、混合装置(例えば、ボールミル)を用いて、補給用トナーと補給用キャリアとを混合することで、補給用現像剤200を得る。以上、第1実施形態に係る現像剤セットの製造方法を説明した。
【0089】
[第2実施形態:画像形成装置]
次に、図3及び図4を参照して、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置20について説明する。図3は、第2実施形態に係る画像形成装置20の構成を示す。図4は、図3に示す画像形成装置20の現像装置11a〜11d及びその周辺部を示す。以下、区別する必要がない場合には、現像装置11a〜11dの各々を現像装置11と記載する。画像形成装置20は、トリクル現像方式の画像形成装置の一例である。
【0090】
図4に示すように、画像形成装置20は、現像装置11と、現像剤排出部116と、第2現像剤補給部115とを備える。現像装置11は、現像剤Dにより静電潜像を現像する。現像剤排出部116は、現像装置11内の現像剤Dを排出する。第2現像剤補給部115は、補給用現像剤200を現像装置11内へ補給する。現像装置11内への補給用現像剤200の補給前において、現像剤Dは、初期現像剤100である。現像装置11内への補給用現像剤200の補給後において、現像剤Dは、初期現像剤100及び補給用現像剤200(例えば、初期現像剤100及び補給用現像剤200の混合物)である。初期現像剤100及び補給用現像剤200は、各々、第1実施形態に係る現像剤セットに含まれる。画像形成装置20は、第1実施形態に係る現像剤セットが備える初期現像剤100と補給用現像剤200とを収容する。このため、第1実施形態で述べた理由と同じ理由により、第2実施形態に係る画像形成装置20は、多数枚印刷した場合であっても高画質な画像を形成でき、トナーの流動性を維持でき、初期キャリアに対して初期トナーの成分が付着する現象である、所謂スペントの発生を抑制できる。以上、画像形成装置20の概要を説明した。以下、画像形成装置20について、詳細に説明する。
【0091】
画像形成装置20は、タンデム方式の電子写真装置である。図3に示すように、画像形成装置20は、帯電装置8a〜8dと、露光装置9と、現像装置11a〜11dと、感光体ドラム12a〜12dと、転写装置10と、定着装置17と、クリーニング装置18と、制御部19とを備える。転写装置10は、転写ベルト13と、駆動ローラー14aと、従動ローラー14bと、テンションローラー14cと、1次転写ローラー15a〜15dと、2次転写ローラー16とを備える。転写ベルト13は、駆動ローラー14a、従動ローラー14b、及びテンションローラー14cに張架されている。以下、区別する必要がない場合には、帯電装置8a〜8dの各々を帯電装置8と記載し、感光体ドラム12a〜12dの各々を感光体ドラム12と記載し、1次転写ローラー15a〜15dの各々を1次転写ローラー15と記載する。画像形成装置20は、第2現像剤補給部115及び現像剤排出部116を更に備える。画像形成装置20を用いて画像を形成する場合には、初期トナー及び初期キャリアを含む初期現像剤100を、現像装置11にセットする。また、補給用トナー及び補給用キャリアを含む補給用現像剤200を、第2現像剤補給部115にセットする。
【0092】
制御部19は、各種センサーの出力に基づいて、画像形成装置20の動作を電子制御する。制御部19は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、プログラムとを記憶し、かつ、所定のデータを書換え可能に記憶する記憶装置とを備える。ユーザーは、入力部(不図示)を通じて、制御部19に指示(例えば、電気信号)を与える。入力部は、例えば、キーボード、マウス、又はタッチパネルである。
【0093】
感光体ドラム12は、円柱状の外形を有する。感光体ドラム12は、芯材として金属製の筒体(例えば、筒状の導電性基体)を備える。その芯材の外側に、感光層を備える。感光体ドラム12は回転可能に支持されている。感光体ドラム12は、例えばモーター(不図示)によって駆動されて、図4中の矢印の方向に回転する。
【0094】
帯電装置8は感光体ドラム12の周面を帯電する。露光装置9は、帯電された感光体ドラム12の周面を露光して、感光体ドラム12の周面に静電潜像を形成する。例えば、画像データに基づいて感光体ドラム12の表層部(感光層)に静電潜像が形成される。現像装置11が、感光体ドラム12に形成された静電潜像を、現像装置11内の現像剤Dにより現像する。これにより、感光体ドラム12の周面にトナー像が形成される。現像装置11の詳細は、後述する。
【0095】
転写ベルト13は、駆動ローラー14aにより駆動されて、図3中の矢印で示される方向に回転する。感光体ドラム12にトナー像が形成された後、1次転写ローラー15にバイアス(電圧)をかけて、感光体ドラム12に付着したトナー(トナー像)を転写ベルト13に1次転写する。複数個の感光体ドラム12に形成されたトナー像を順次、転写ベルト13に1次転写することにより、転写ベルト13上に、複数種のトナー像(例えば、異なる色のトナー像)を重ねることができる。1次転写後、2次転写ローラー16にバイアス(電圧)をかけることにより、転写ベルト13上のトナー像を、搬送される記録媒体Pに2次転写する。転写ベルト13上に重ねた複数種のトナー像(例えば、異なる色のトナー像)が記録媒体Pに一括して2次転写される。これにより、記録媒体Pに画像が形成される。記録媒体Pは、例えば印刷用紙である。
【0096】
2次転写後、定着装置17が、記録媒体P上のトナーを加熱及び加圧して、記録媒体Pにトナーを定着させる。定着装置17は、例えば、加熱ローラー及び加圧ローラーを備える。このような定着装置17は、ニップ定着方式の定着装置17と呼ばれる。なお、定着方式は任意であり、例えばベルト定着方式であってもよい。クリーニング装置18は、2次転写後に転写ベルト13上に残留するトナーを除去する。
【0097】
<現像装置、第2現像剤補給部、及び現像剤排出部>
次に、図4を参照しながら、現像装置11、第2現像剤補給部115、及び現像剤排出部116について説明する。現像装置11は、現像ローラー111と、規制ブレード112と、第1攪拌シャフト113と、第2攪拌シャフト114とを備える。また、現像装置11は、収容部Rを有する。収容部Rは、第1攪拌シャフト113及び第2攪拌シャフト114を収容する。現像ローラー111は、感光体ドラム12の近傍に配置される。
【0098】
現像装置11は、現像剤Dにより静電潜像を現像する。未使用(例えば、製品販売時)の画像形成装置20において、収容部Rは、初期トナー及び初期キャリアを含む初期現像剤100を収容している。画像形成装置20の制御部19は、現像装置11内の初期現像剤100による静電潜像の現像を開始した後、現像装置11内の現像剤Dの排出と現像装置11内への補給用現像剤200の補給とを行う。このため、画像形成装置20による印刷を続けると、収容部R内の初期現像剤100は少しずつ補給用現像剤200に入れ替わる。現像装置11内への補給用現像剤200の補給前において、現像剤Dは、初期現像剤100である。現像装置11内への補給用現像剤200の補給前において、収容部Rは、初期現像剤100を収容している。現像装置11内への補給用現像剤200の補給後において、現像剤Dは、初期現像剤100及び補給用現像剤200(例えば、初期現像剤100及び補給用現像剤200の混合物)である。現像装置11内への補給用現像剤200の補給後において、収容部Rは、初期現像剤100及び補給用現像剤200を収容している。なお、現像装置11内への補給用現像剤200の補給後とは、現像装置11内へ第1回目の補給用現像剤200の補給が行われた後である。
【0099】
第1攪拌シャフト113及び第2攪拌シャフト114はそれぞれ、螺旋状の攪拌羽根を有する。第1攪拌シャフト113及び第2攪拌シャフト114は、収容部R内の現像剤Dを攪拌しながら、互いに逆方向に現像剤Dを搬送する。トナーとキャリアとを含む現像剤Dが攪拌されることで、キャリアとの摩擦によってトナーが帯電し、帯電したトナーがキャリアに担持される。
【0100】
現像ローラー111は、マグネットロールと、現像スリーブとを備える。マグネットロールは、少なくともその表層部に磁極を有する。磁極は、例えば、永久磁石に基づくN極及びS極である。現像スリーブは、非磁性の筒体(例えば、アルミニウムパイプ)である。マグネットロールは現像スリーブ内(筒内)に位置し、現像スリーブは現像ローラー111の表層部に位置する。非回転のマグネットロールの周りを現像スリーブが回転できるように、マグネットロールのシャフトと現像スリーブとがフランジを介して接続されている。
【0101】
現像ローラー111(具体的には、現像スリーブ)は、図4中の矢印の方向に回転しながら、収容部Rにあるキャリアを磁力により引き付けて、表面に現像剤D(トナーを担持したキャリア)を担持する。キャリア粒子は、磁気ブラシを形成する。磁気ブラシは、現像ローラー111(具体的には、現像スリーブ)の表面に穂立ちしたキャリア粒子クラスターである。穂状に連なったキャリア粒子の表面にはトナー粒子が付着している。磁気ブラシの厚さ(穂の高さ)は、規制ブレード112によって所定の厚さに規制される。
【0102】
現像ローラー111(具体的には、現像スリーブ)が、図4中に示される矢印の方向に回転することで、収容部Rにある現像剤Dのうちのトナーが感光体ドラム12に搬送される。現像ローラー111にバイアス(電圧)が印加されることで、現像ローラー111及び感光体ドラム12の表面電位の間に電位差が生じる。この電位差によって、現像ローラー111に担持された現像剤Dに含まれる帯電したトナーが、感光体ドラム12の表面に移動する。詳しくは、現像ローラー111に担持された現像剤Dのうちの帯電したトナーが、感光体ドラム12に形成された静電潜像(例えば、露光によって非露光部位よりも電位の低下した露光部位)に電気的な力で引き付けられて、感光体ドラム12上の静電潜像に移動する。その結果、感光体ドラム12の表面にトナー像が形成される。静電潜像の現像時に、現像ローラー111上の磁気ブラシが感光体ドラム12に接触してもよい。ただし、磁気ブラシを感光体ドラム12に接触させずに、電気的な力で現像ローラー111から感光体ドラム12に向けてトナーを飛翔させてもよい。
【0103】
次に、現像装置11へ補給用現像剤200を補給するための補給機構について説明する。補給機構である第2現像剤補給部115は、補給用現像剤200を現像装置11内に補給する。第2現像剤補給部115は、現像装置11の上部に設けられる。第2現像剤補給部115は、補給用現像剤コンテナ115bと、補給量調整部材115aとを備える。補給用現像剤コンテナ115bは、補給用トナー及び補給用キャリアを含む補給用現像剤200を現像装置11内へ補給する。補給用現像剤コンテナ115bは補給用現像剤200を収容している。補給用現像剤コンテナ115b内の補給用現像剤200は、現像装置11の収容部Rに供給される。補給量調整部材115aは、現像剤Dの補給量を制御する。詳しくは、補給用現像剤コンテナ115bから現像装置11へ供給される現像剤Dの補給量が、補給量調整部材115aによって制御される。補給量調整部材115aは、例えば、制御部19により回転動作を制御されるスクリューシャフトから構成される。例えば、スクリューシャフトの回転量に応じて現像剤Dの補給量を変更できる。なお、補給用現像剤コンテナ115bは、補給用現像剤コンテナ115b内の補給用現像剤200を攪拌するための攪拌装置(不図示)を備えてもよい。
【0104】
次に、現像装置11から現像剤Dを排出するための排出機構について説明する。排出機構である現像剤排出部116は、現像装置11内の現像剤Dを排出する。現像剤排出部116は、排出路116aと、回収容器116bとを備える。現像装置11の収容部Rは、排出路116aを介して、回収容器116bに連結されている。収容部Rにある現像剤Dの量が所定の量を超えると、過剰な現像剤Dは、排出路116aの上端側の開口から排出路116a内に入る。所定の量は、例えば、排出路116aの上端位置によって決まる量である。過剰な現像剤Dは、例えば、排出路116aの上端位置によって決まる量を超えた分の現像剤Dである。過剰な現像剤Dが排出路116a内に入ると、過剰な現像剤Dは、重力によって排出路116aの内側を下方に進み、回収容器116bに流れ込む。
【0105】
現像装置11から現像剤Dを排出するための排出機構の一例について説明した。なお、排出機構は、上記に限られず任意である。例えば、排出機構は、次に示す第1〜第4の変形例のように変形して実施することもできる。第1の変形例において、現像剤排出部116は、収容部Rから排出路116aへ流れ出る流量を調整するための部材(例えば、スクリューシャフト)を更に備える。第2の変形例において、現像剤排出部116は、排出口(例えば、排出路116aの上端側の開口)の開口面積を可変とする開閉装置を更に備える。第3の変形例において、収容部Rにある現像剤Dの量を検出するためのセンサーを、収容部Rに設ける。第4の変形例において、収容部Rからの現像剤Dの排出量を検出するためのセンサーを、回収容器116bに設ける。
【0106】
以上、第2実施形態に係る画像形成装置20について説明した。なお、第1実施形態に係る現像剤セットを用いる画像形成装置は、上記に限られず任意である。例えば、画像形成装置は、次に示す第5の変形例のように変形して実施することもできる。第5の変形例において、現像ローラー111と感光体ドラム12との間に、他の現像ローラーが更に設けられる。第5の変形例は、タッチダウン方式の画像形成装置に相当する。タッチダウン方式の画像形成装置では、例えば現像ローラー111と他の現像ローラーとの間に電位差を生じさせることで、現像ローラー111の表面に担持された現像剤D(キャリア及びトナー)のうちトナーのみを他の現像ローラーに移動させて、他の現像ローラーの表面にトナー層を形成する。そして、他の現像ローラー上のトナー層を感光体ドラム12に移動させて、感光体ドラム12上の静電潜像をトナー像に現像する。
【0107】
[第3実施形態:画像形成方法]
以下、図3及び図4を引き続き参照して、本発明の第3実施形態に係る画像形成方法について説明する。第3実施形態に係る画像形成方法は、現像装置11内の初期現像剤100による静電潜像の現像を開始した後、現像装置11内の現像剤Dの排出と現像装置11内への補給用現像剤200の補給とを行いつつ、現像装置11内の現像剤Dにより静電潜像を現像する現像工程を含む。現像装置11内への補給用現像剤200の補給前において、現像剤Dは、初期現像剤100である。現像装置11内への補給用現像剤200の補給後において、現像剤Dは、初期現像剤100及び補給用現像剤200(例えば、初期現像剤100及び補給用現像剤200の混合物)である。初期現像剤100及び補給用現像剤200は、各々、第1実施形態に係る現像剤セットに含まれる。
【0108】
第3実施形態に係る画像形成方法は、例えば、第2実施形態に係る画像形成装置20を用いて行われる。第3実施形態に係る画像形成方法は、第1実施形態に係る現像剤セットを用いて行われる。このため、第1実施形態で述べた理由と同じ理由により、第3実施形態に係る画像形成方法は、多数枚印刷した場合であっても高画質な画像を形成でき、トナーの流動性を維持でき、スペントを抑制できる。
【実施例】
【0109】
本発明の実施例について説明する。表2に、実施例又は比較例に係る現像剤セットA−1〜A−4及びB−1〜B−8を示す。
【0110】
【表2】
【0111】
表2中「SA」はスチレンとメタクリル酸ブチルとジビニルベンゼンとの共重合体を示す。樹脂外添剤の欄の「−」は、樹脂外添剤を使用しなかったことを示す。「PFA」はテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体を示す。「FEP」はテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体を示す。「MS」はメチルシリコーン樹脂を示す。「MPS」はメチルフェニルシリコーン樹脂を示す。
【0112】
以下、現像剤セットA−1〜A−4及びB−1〜B−8の製造方法、評価方法、及び評価結果について、説明する。なお、誤差が生じる評価においては、誤差が十分小さくなる相当数の測定値を得て、得られた測定値の数平均を評価値とした。
【0113】
[現像剤セットの製造方法]
<トナー母粒子の作製>
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて、ポリエステル樹脂(酸価:5.6mgKOH/g、Mp:100℃)100質量部と、着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3、成分:銅フタロシアニン顔料)4質量部と、カルナバワックス(株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」)5質量部と、電荷制御剤(4級アンモニウム塩、オリヱント化学工業株式会社製「BONTRON(登録商標)P−51」)1質量部とを混合した。得られた混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて溶融しながら混練した。得られた混練物を冷却した後、粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル」)を用いて粉砕した。得られた粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)6.8μmのトナー母粒子M−1が得られた。
【0114】
<樹脂粒子の作製>
攪拌機、冷却管、温度計、及び窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水600g、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム6g、メタクリル酸ブチル100g、スチレン20g、ジビニルベンゼン(シグマアルドリッチ社製、CAS番号:105−06−6)80g、及び重合開始剤としてのベンゾイルパーオキサイド15gを入れた。窒素ガスを吹き込みながら、攪拌下で、フラスコ内容物を90℃まで昇温させた。窒素ガスを吹き込みながら、フラスコ内容物を90℃で3時間攪拌して、反応生成物を得た。反応生成物を冷却した後、洗浄及び脱水を行うことにより、樹脂粒子P−1を得た。樹脂粒子P−1は、メタクリル酸ブチルとスチレンとジビニルベンゼンとの共重合体の粒子であった。樹脂粒子P−1の数平均粒子径は、80nmであった。
【0115】
<トナーの作製>
(トナーT−1の作製)
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて、100.0質量部のトナー母粒子M−1と、0.5質量部の樹脂粒子P−1と、1.0質量部のシリカ粒子(トリメチルシリル基とアミノ基とで表面修飾した疎水性シリカ粒子:日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)RA−200」、BET比表面積:約150m2/g、数平均1次粒子径:約12nm、密度:約2.2g/cm3)と、0.2質量部の導電性酸化チタン粒子(チタン工業株式会社製「EC−100」、基材:TiO2、被覆層:SbドープSnO2膜、数平均1次粒子径:約0.35μm、密度:約3.9g/cm3)とを混合した。これにより、トナー母粒子M−1の表面に外添剤(樹脂粒子P−1、シリカ粒子、及び導電性酸化チタン粒子)を付着させて、粉体を得た。得られた粉体を、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。その結果、トナーT−1が得られた。
【0116】
(トナーT−2の作製)
0.5質量部の樹脂粒子P−1を添加しなかったこと以外は、トナーT−1の作製と同じ方法で、トナーT−2を作製した。
【0117】
<キャリアの作製>
(キャリアC−1の作製)
2質量部のPFAを98質量部のトルエンに溶解させて、コート液を得た。流動層コーティング装置(フロイント産業株式会社製「スパイラフロー(登録商標)SFC−5」)を用いて、100質量部のノンコートフェライトコア(パウダーテック株式会社製「EF−35B」、粒子径:35μm)に対して、コート液の全量(100質量部)を噴霧により塗布した後、200℃で60分間熱処理を行った。これにより、キャリアC−1を得た。キャリアC−1は、キャリアコアと、キャリアコアを被覆し且つPFAを含有するコート層とを有していた。
【0118】
(キャリアC−2の作製)
2質量部のPFAを2質量部のFEPに変更したこと以外は、キャリアC−1の作製と同じ方法で、キャリアC−2を得た。キャリアC−2は、キャリアコアと、キャリアコアを被覆し且つFEPを含有するコート層とを有していた。
【0119】
(キャリアC−3の作製)
4質量部の加熱硬化型シリコーン樹脂溶液(東レダウコーニング株式会社製「SR2400」、樹脂:メチルシリコーン樹脂、溶剤:トルエン、不揮発分:50質量%)を96質量部のトルエンに溶解させて、コート液を得た。流動層コーティング装置(フロイント産業株式会社製「スパイラフロー(登録商標)SFC−5」)を用いて、100質量部のノンコートフェライトコア(パウダーテック株式会社製「EF−35B」、粒子径:35μm)に対して、コート液の全量(100質量部)を噴霧により塗布した後、200℃で60分間熱処理を行った。これにより、キャリアC−3を得た。キャリアC−3は、キャリアコアと、キャリアコアを被覆し且つメチルシリコーン樹脂を含有するコート層とを有していた。
【0120】
(キャリアC−4の作製)
2.9質量部の加熱硬化型シリコーン樹脂溶液(東レダウコーニング株式会社製「KR−212」、樹脂:メチルフェニルシリコーン樹脂、溶剤:キシレン、不揮発分:70質量%)を97.1質量部のトルエンに溶解させて、コート液を得た。流動層コーティング装置(フロイント産業株式会社製「スパイラフロー(登録商標)SFC−5」)を用いて、100質量部のノンコートフェライトコア(パウダーテック株式会社製「EF−35B」、粒子径:35μm)に対して、コート液の全量(100質量部)を噴霧により塗布した後、200℃で60分間熱処理を行った。これにより、キャリアC−4を得た。キャリアC−4は、キャリアコアと、キャリアコアを被覆し且つメチルフェニルシリコーン樹脂を含有するコート層とを有していた。
【0121】
<現像剤の作製>
(初期現像剤の作製)
現像剤セットA−1〜A−4及びB−1〜B−8に用いるための初期現像剤の各々を調製した。詳しくは、表2の「初期トナー」欄に示す種類の初期トナー8質量部と、表2の「初期キャリア」欄に示す種類の初期キャリア100質量部とを、粉体混合機(愛知電機株式会社製「ロッキングミキサー(登録商標)」、混合方式:容器回転揺動方式)を用いて30分間混合して、各初期現像剤を得た。例えば、現像剤セットA−1に用いるための初期現像剤の作製では、トナーT−1とキャリアC−1とを混合した。
【0122】
(補給用現像剤の作製)
現像剤セットA−1〜A−4及びB−1〜B−8に用いるための補給用現像剤の各々を調製した。詳しくは、表2の「補給用トナー」欄に示す種類の補給用トナー100質量部と、表2の「補給用キャリア」欄に示す種類の補給用キャリア10質量部とを、粉体混合機(愛知電機株式会社製「ロッキングミキサー」、混合方式:容器回転揺動方式)を用いて1分間混合して、各補給用現像剤を得た。例えば、現像剤セットA−1に用いるための補給用現像剤の作製では、トナーT−2とキャリアC−3とを混合した。
【0123】
[評価方法及び評価結果]
現像剤セットA−1〜A−4及びB−1〜B−8について、画像濃度、かぶり濃度、トナーの流動性、及びスペント抑制を以下の方法で評価した。各現像剤セットの評価において、表2の各「現像剤セット」の行に記載の初期現像剤と補給用現像剤とを組み合わせて用いた。例えば、現像剤セットA−1の評価においては、表2の現像剤セット「A−1」の行に記載の初期現像剤(トナーT−1とキャリアC−1とを含む初期現像剤)と、補給用現像剤(トナーT−2とキャリアC−3とを含む補給用現像剤)とを組み合わせて用いた。
【0124】
<画像濃度、かぶり濃度、及びトナーの流動性の評価>
評価機として、カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa5551ci」、現像方式:非磁性2成分乾式タッチダウントリクル現像方式、感光体ドラム:アモルファスシリコンドラム)を用いた。この評価機は、感光体に形成された静電潜像を現像剤(詳しくは、現像剤に含まれるトナー)により現像するように構成される現像装置と、現像装置内の現像剤を排出するように構成される現像剤排出部と、補給用現像剤を現像装置内へ補給するように構成される第2現像剤供給部とを備えていた。現像剤セットの初期現像剤を評価機のシアン用現像装置に投入した。現像剤セットの補給用現像剤を評価機のシアン用第2現像剤供給部の補給用現像剤コンテナに投入した。
【0125】
温度20℃かつ湿度65%RHの環境下で、上記評価機を用いて、画像(印字率4%の文字パターン画像)を20万枚の用紙に連続して印刷した。連続印刷の指示を評価機が受け付けると、評価機は、現像装置内の初期現像剤により感光体の静電潜像を現像して、用紙に対する印刷を行った。その後、評価機は、現像装置内の現像剤の排出と現像装置内への補給用現像剤の補給とを行いつつ現像装置内の現像剤により感光体の静電潜像を現像することにより、用紙に対する印刷を引き続き行った。
【0126】
1枚目(初期)の印刷後と、5万枚目の印刷後と、20万枚目の印刷後とにおいて、画像A(ソリッド画像部と空白部を含む画像)を別途用紙に印刷した。画像Aが印刷された用紙の各々に対して、画像濃度(ID)及びかぶり濃度(FD)を測定した。更に、20万枚目の印刷後に、上記評価機を用いて、画像B(印字率100%の全面ソリッド画像)を1枚の用紙に印刷した。そして、画像Bが印刷された用紙に対して、IDばらつきを測定した。
【0127】
画像濃度の測定では、反射濃度計(X−Rite社製「SpectroEye(登録商標)」)を用いて、画像Aが印刷された用紙のソリッド画像部の反射濃度(画像濃度)を測定した。画像濃度の測定結果を、表3に示す。また、画像濃度の測定結果から、以下の基準に従って、画像品質を評価した。
良好:画像濃度が、1.300以上である。
不良:画像濃度が、1.300未満である。
【0128】
かぶり濃度の測定では、反射濃度計(X−Rite社製「SpectroEye」)を用いて、画像Aが印刷された用紙の空白部の反射濃度を測定した。そして、式「かぶり濃度=空白部の反射濃度−未印刷紙の反射濃度」に基づいて、かぶり濃度を算出した。かぶり濃度の測定結果を、表3に示す。また、かぶり濃度の測定結果から、以下の基準に従って、画像品質を評価した。
良好:かぶり濃度が、0.005以下である。
不良:かぶり濃度が、0.005超である。
【0129】
IDばらつきの測定では、画像Bが印刷された用紙の先端から2cmの位置の反射濃度(外側ID)と、画像Bが印刷された用紙の先端から20cmの位置の反射濃度(内側ID)とを、それぞれ測定した。なお、用紙の先端は、用紙の搬送方向における用紙の先端であった。そして、式「IDばらつき=100×|外側ID−内側ID|/外側ID」に基づいて、IDばらつき(単位:%)を算出した。外側IDと内側IDとの差(絶対値)が大きいほど、IDばらつきは大きくなる。IDばらつきが大きいほど、トナーの流動性が不良であることを示す。IDばらつきの測定結果を、表3に示す。また、IDばらつきの測定結果から、以下の基準に従って、トナーの流動性を評価した。
良好:IDばらつきが、10%以下である。
不良:IDばらつきが、10%超である。
【0130】
<スペント抑制の評価>
3gの初期現像剤を500メッシュの篩いに載せた。篩の下から吸引することにより初期現像剤に含まれる初期トナーを除去して、初期キャリアを取り出した。固体炭素分析装置(株式会社堀場製作所製「EMIA−110」)を用いて、初期現像剤から取り出した初期キャリア2gに含まれるカーボン量(C1量)を測定した。次いで、固体炭素分析装置(株式会社堀場製作所製「EMIA−110」)を用いて、上記<初期現像剤の作製>で初期トナーと混合される前の初期キャリア2gに含まれるカーボン量(C0量)を測定した。そして、式「スペント率=100×(C1−C0)/C0」に基づいて、スペント率(単位:%)を算出した。スペント率が高いほど、初期キャリアの表面に初期トナーの成分が付着して、初期キャリアのスペントが発生していることを示す。スペント率の測定結果を、表3に示す。また、スペント率の測定結果から、以下の基準に従って、スペントが抑制されているか否かを評価した。
良好(スペントが抑制されている):スペント率が、0.05%以下である。
不良(スペントが抑制されていない):スペント率が、0.05%超である。
【0131】
表3中の「NG」は評価が不良であったことを示す。表3中の「−」は、1枚目に印刷された用紙の画像濃度の評価が不良であったため、その後の連続印刷を伴う評価、すなわち、5万枚目の印刷後及び20万枚目の印刷後に画像Aが印刷された用紙の画像濃度及びかぶり濃度の評価、並びにトナーの流動性の評価を行わなかったことを示す。
【0132】
【表3】
【0133】
表2に示すように、現像剤セットA−1〜A−4の各々は、初期現像剤と、補給用現像剤とを備えていた。初期現像剤は、第1トナー粒子を含む初期トナー(トナーT−1)と、第1キャリア粒子を含む初期キャリア(キャリアC−1又はC−2)とを含んでいた。補給用現像剤は、第2トナー粒子を含む補給用トナー(トナーT−2)と、第2キャリア粒子を含む補給用キャリア(キャリアC−3又はC−4)とを含んでいた。初期トナー(トナーT−1)に含まれる第1トナー粒子101は、樹脂外添剤(樹脂粒子P−1、詳しくはメタクリル酸ブチルとスチレンとジビニルベンゼンとの共重合体の粒子)を有していた。補給用トナー(トナーT−2)に含まれる第2トナー粒子は樹脂外添剤を有していなかった。初期キャリア(キャリアC−1又はC−2)に含まれる第1キャリア粒子は、フッ素樹脂(PFA又はFEP)を含有する第1コート層を有していた。補給用キャリア(キャリアC−3又はC−4)に含まれる第2キャリア粒子は、シリコーン樹脂(メチルシリコーン樹脂又はメチルフェニルシリコーン樹脂)を含有する第2コート層を有していた。
【0134】
表3に示すように、現像剤セットA−1〜A−4の各々の画像濃度の評価、かぶり濃度の評価、及びトナーの流動性の評価は、何れも良好であった。また、現像剤セットA−1〜A−4の各々においては、スペント率が所望値以下であり、スペントが抑制されていた。以上のことから、本発明に係る現像剤セットは、多数枚印刷した場合であっても高画質な画像を形成でき、トナーの流動性を維持でき、スペントを抑制できることが示された。また、本発明に係る画像形成装置、及び画像形成方法によれば、多数枚印刷した場合であっても高画質な画像を形成でき、トナーの流動性を維持でき、スペントを抑制できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明に係る現像剤セット、画像形成装置、及び画像形成方法は、例えば複写機、プリンター、又は複合機において画像を形成するために用いることができる。
【符号の説明】
【0136】
8a〜8d :帯電装置
9 :露光装置
10 :転写装置
11a〜11d :現像装置
12a〜12d :感光体ドラム
13 :転写ベルト
14a :駆動ローラー
14b :従動ローラー
14c :テンションローラー
15a〜15d :1次転写ローラー
16 :2次転写ローラー
17 :定着装置
18 :クリーニング装置
19 :制御部
20 :画像形成装置
30 :トナー母粒子
40 :キャリアコア
100 :第1現像剤(初期現像剤)
101 :第1トナー粒子
102 :樹脂外添剤
103 :第1キャリア粒子
104 :第1コート層
111 :現像ローラー
112 :規制ブレード
113 :第1攪拌シャフト
114 :第2攪拌シャフト
115 :第2現像剤供給部
115a :補給量調整部材
115b :補給用現像剤コンテナ
116 :現像剤排出部
116a :排出路
116b :回収容器
200 :第2現像剤(補給用現像剤)
201 :第2トナー粒子
203 :第2キャリア粒子
204 :第2コート層
P :記録媒体
R :収容部
D :現像剤
図1
図2
図3
図4