特許第6822443号(P6822443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社GSユアサの特許一覧

特許6822443通信デバイス、情報処理システム、情報処理方法及びコンピュータプログラム
<>
  • 特許6822443-通信デバイス、情報処理システム、情報処理方法及びコンピュータプログラム 図000002
  • 特許6822443-通信デバイス、情報処理システム、情報処理方法及びコンピュータプログラム 図000003
  • 特許6822443-通信デバイス、情報処理システム、情報処理方法及びコンピュータプログラム 図000004
  • 特許6822443-通信デバイス、情報処理システム、情報処理方法及びコンピュータプログラム 図000005
  • 特許6822443-通信デバイス、情報処理システム、情報処理方法及びコンピュータプログラム 図000006
  • 特許6822443-通信デバイス、情報処理システム、情報処理方法及びコンピュータプログラム 図000007
  • 特許6822443-通信デバイス、情報処理システム、情報処理方法及びコンピュータプログラム 図000008
  • 特許6822443-通信デバイス、情報処理システム、情報処理方法及びコンピュータプログラム 図000009
  • 特許6822443-通信デバイス、情報処理システム、情報処理方法及びコンピュータプログラム 図000010
  • 特許6822443-通信デバイス、情報処理システム、情報処理方法及びコンピュータプログラム 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6822443
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】通信デバイス、情報処理システム、情報処理方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20210114BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20210114BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20210114BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   G06Q50/06
   H01M10/48 P
   H04Q9/00 301A
   H02J13/00 301A
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-113984(P2018-113984)
(22)【出願日】2018年6月14日
(65)【公開番号】特開2019-215832(P2019-215832A)
(43)【公開日】2019年12月19日
【審査請求日】2019年12月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】中井 啓太
(72)【発明者】
【氏名】松島 均
(72)【発明者】
【氏名】内堀 富勝
(72)【発明者】
【氏名】松本 哲郎
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−070680(JP,A)
【文献】 特開2016−109565(JP,A)
【文献】 特開2015−215272(JP,A)
【文献】 特開2012−122872(JP,A)
【文献】 特開2016−031411(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/038749(WO,A1)
【文献】 特開2015−102396(JP,A)
【文献】 特開2007−309839(JP,A)
【文献】 特開2016−062561(JP,A)
【文献】 特開2005−227837(JP,A)
【文献】 特開2006−080579(JP,A)
【文献】 特開2015−038437(JP,A)
【文献】 特開2011−158444(JP,A)
【文献】 特開2018−057220(JP,A)
【文献】 特開2017−009577(JP,A)
【文献】 特開2014−102248(JP,A)
【文献】 特開2014−237351(JP,A)
【文献】 特開2013−246594(JP,A)
【文献】 特開2014−143819(JP,A)
【文献】 特開2013−076680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/06
H01M 10/48
H02J 13/00
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子又は、パワーコンディショナ、無停電電源装置、若しくは整流器である電源関連装置に接続され、該蓄電素子又は前記電源関連装置と通信する第1通信部と、
前記蓄電素子又は前記電源関連装置の状態を含む情報を設定されたタイミングに基づいて取得する取得部と、
前記タイミングの変更を受け付けて変更する変更受付部と、
変更後のタイミングで前記取得部によって取得される情報を情報処理装置と通信接続可能な第2通信部により前記情報処理装置へ送信する送信部と
を備え、
前記変更受付部は、前記タイミングの変更を受け付ける画面を表示するための画面情報を、表示部を備えるクライアント装置へ前記第2通信部により前記情報処理装置を介さずに送信し、該クライアント装置が備える表示部により表示される前記画面上で前記タイミングの変更を受け付ける、通信デバイス。
【請求項2】
前記変更受付部は、前情報処理装置から送信される前記タイミングの変更の指示を第2通信部により受信する請求項1に記載の通信デバイス。
【請求項3】
蓄電素子又は、パワーコンディショナ、無停電電源装置、若しくは整流器である電源関連装置に接続されている通信デバイスと、該通信デバイスとの間で情報を送受信する情報処理装置とを含む情報処理システムであって、
前記通信デバイスは、
前記蓄電素子又は前記電源関連装置と通信する第1通信部により該蓄電素子又は前記電源関連装置の状態を含む情報を設定されたタイミングに基づいて取得する取得部と、
前記タイミングの変更を受け付けて変更する変更受付部と、
変更後のタイミングで前記取得部によって取得される情報を前記情報処理装置と通信接続可能な第2通信部により前記情報処理装置へ送信する送信部と
を備え、
前記変更受付部は、前記タイミングの変更を受け付ける画面を表示するための画面情報を、表示部を備えるクライアント装置へ前記第2通信部により前記情報処理装置を介さずに送信し、該クライアント装置が備える表示部により表示される前記画面上で前記タイミングの変更を受け付ける、情報処理システム。
【請求項4】
前記情報処理装置は、前記タイミングの変更の要否を判断する判断部と、
該判断部により変更要と判断された場合に、前記タイミングの変更の指示を前記通信デバイスへ送信する指示部と
を備える、請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記判断部は、前記通信デバイスから送信される情報に基づく前記蓄電素子又は電源関連装置の劣化又は異常の予兆検知に対する学習処理に基づき、情報取得の頻度増大の要否を判断し、
前記指示部は、頻度増大を要と判断した場合に、変更後のタイミングを決定して変更の指示を作成する
請求項4に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記情報処理装置は、
前記蓄電素子若しくは電源関連装置を含むシステム毎、又は前記蓄電素子若しくは電源関連装置が設置されている場所毎に、前記蓄電素子又は電源関連装置の状態を含む情報を一括して表示させるための表示情報を、前記状態を含む情報の要求元へ送信する送信処理部を備え、
前記表示情報には、前記タイミングの変更を受け付ける画面を表示するための画面情報を提供する前記通信デバイスへの接続情報が含まれている
請求項3からのいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項7】
蓄電素子又は、パワーコンディショナ、無停電電源装置、若しくは整流器である電源関連装置に接続されている通信デバイスと、該通信デバイスとの間で情報を送受信する情報処理装置とで夫々情報を処理する情報処理方法であって、
前記通信デバイスは、
設定に基づくタイミングで取得される前記蓄電素子又は前記電源関連装置の状態を含む情報を前記情報処理装置へ送信し、
前記タイミングの変更を受け付ける画面を表示するための画面情報を、表示部を備えるクライアント装置へ前記情報処理装置を介さずに送信し、該クライアント装置が備える表示部により表示される前記画面上で前記タイミングの変更を受け付ける、
情報処理方法。
【請求項8】
前記情報処理装置は、
前記タイミングの変更の要否を判断し、
変更要と判断された場合に、タイミングの変更の指示を前記通信デバイスへ送信する
請求項7に記載の情報処理方法。
【請求項9】
表示部を備えるコンピュータに、蓄電素子及び/又は、パワーコンディショナ、無停電電源装置、若しくは整流器である電源関連装置の情報を受信して表示させるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記蓄電素子及び/又は前記電源関連装置の状態を表示する表示情報を、該蓄電素子及び/若しくは前記電源関連装置を含むシステム毎、又は前記蓄電素子及び/若しくは前記電源関連装置が設置されている場所毎に、情報処理装置に対して要求するステップ、
要求に応じて前記情報処理装置から送信された表示情報に基づき、前記システム毎、又は場所毎に一括して表示するステップ、
前記表示情報に含まれている前記蓄電素子又は前記電源関連装置に接続されている通信デバイスへの接続情報に基づいて該通信デバイスに、クライアント装置として前記情報処理装置を介さずに通信接続するステップ、及び
前記通信デバイスから提供される前記蓄電素子又は前記電源関連装置における前記状態を含む情報を取得するタイミングの変更を受け付ける画面を表示させるステップ
を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子及び/又は電源関連装置に搭載/接続される通信デバイス、該通信デバイスを用いた情報処理システム、情報処理方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電素子(Energy Storage Device )は、無停電電源装置、安定化電源に含まれる直流
又は交流電源装置等に広く使用されている。発電された電力を蓄電しておく大規模なシステムでの蓄電素子の利用が拡大している。本明細書では、蓄電素子とは、蓄電を行う素子全般を指す。蓄電素子の最小単位を蓄電セルと言う。
【0003】
無停電電源装置、安定化電源、又は発電システムにおいては、蓄電素子の保守活動が重要になる。これらのシステムに含まれる蓄電素子の充電状態(SOC:State Of Charge)、又は寿命予測の情報について、サーバ装置経由で、蓄電素子のユーザ又は保守担当者が遠隔から取得することを可能とする技術が提案されている。
【0004】
特許文献1には、蓄電素子の劣化率の予測値をサーバ装置及びネットワークを経由してオペレータが遠隔からその情報を視認するシステムが提案されている。蓄電セルは、充放電を繰り返すことで劣化が進行することが知られている。特許文献1では、使用条件、及び劣化率のデータを用いて、遠隔から劣化率の予測値の算出即ち寿命予測が行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−121520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
IoT(Internet of Things)の社会への浸透と平行して、蓄電素子及び電源関連装置の遠隔監視の実現とそれによる利便性の高い付加価値サービスの実現に対する期待が高まっている。遠隔監視では、精度の高い状態推定及び寿命予測が求められる。このため、蓄電素子における電圧、電流、温度等の測定値、又は電源関連装置の状態が、所定のサンプリングタイミングで取得される。サンプリングの頻度が高いほど蓄電素子又は電源関連装置の状態を精度よく把握することが可能であるが、情報量が多くなり演算負荷及び通信負荷が重くなる。蓄電素子及び電源関連装置の状態に応じた適切な頻度のサンプリングが望ましい。
【0007】
本発明は、演算負荷及び通信負荷を考慮しつつ、蓄電素子又は電源関連装置の状態判定の精度を維持することを可能とする通信デバイス、情報処理システム、情報処理方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
通信デバイスは、蓄電素子又は電源関連装置に接続され、該蓄電素子又は電源関連装置と通信する第1通信部と、前記蓄電素子又は電源関連装置の状態を含む情報を設定されたタイミングに基づいて取得する取得部と、前記タイミングの変更を受け付けて変更する変更受付部と、変更後のタイミングで前記取得部によって取得される情報を第1装置と通信接続される第2通信部により前記第1装置へ送信する送信部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】遠隔監視システムの概要を示す図である。
図2】遠隔監視システムの構成を示すブロック図である。
図3】蓄電モジュール群の階層構造及び通信デバイスの接続形態の一例を示す図である。
図4】蓄電モジュール群の階層構造及び通信デバイスの接続形態の他の一例を示す図である。
図5】通信デバイスにおける指示受付手順の一例を示すフローチャートである。
図6】サーバ装置により提示される画面例を示す図である。
図7】サーバ装置により提示される画面例を示す図である。
図8】通信デバイスにより提示される画面例を示す図である。
図9】通信デバイスにより提示される画面例を示す図である。
図10】サーバ装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
通信デバイスは、蓄電素子又は電源関連装置に接続され、該蓄電素子又は電源関連装置と通信する第1通信部と、前記蓄電素子又は電源関連装置の状態を含む情報を設定されたタイミングに基づいて取得する取得部と、前記タイミングの変更を受け付けて変更する変更受付部と、変更後のタイミングで前記取得部によって取得される情報を第1装置と通信接続される第2通信部により前記第1装置へ送信する送信部とを備える。
【0011】
上記構成により、蓄電素子又は電源関連装置に接続/搭載される通信デバイスにて、設定されている情報を取得するタイミングの変更を受け付けることが可能である。遠隔からタイミングを増減させたり、初期設定に戻したりすることができる。
【0012】
前記変更受付部は、前記タイミングの変更を受け付ける画面を表示するための画面情報を、表示部を備える第2装置へ前記第2通信部により送信し、該第2装置が備える表示部により表示される前記画面上で前記タイミングの変更を受け付けてもよい。この構成により、遠隔から画面上で変更(例えば手動入力)を受け付けることが可能である。
【0013】
前記変更受付部は、前記第1装置から送信される前記タイミングの変更の指示を第2通信部によって受信してもよい。この構成により、遠隔から送信される指示によってタイミングを変更(遠隔操作)することが可能である。
【0014】
前記変更の指示は、通信デバイスから情報を受信する情報処理装置にて、受信した情報に基づき、情報取得のタイミングの変更の要否を判断し、変更要と判断された場合に、作成された情報であってもよい。
【0015】
前記変更の指示は、前記通信デバイスから送信される情報に基づく前記蓄電素子又は電源関連装置の劣化又は異常の予兆検知に対する学習処理に基づいて情報取得の頻度増大の要否を判断することで作成されたものであってもよい。この場合前記指示部は、頻度増大を要と判断した場合に、変更後の取得タイミングを決定して変更の指示を作成する。この構成により、情報処理装置にて自律的に予兆を検知し、必要な場合には情報を頻繁に取得して異常の判定を精度よく行なうことも可能となる。学習処理は、統計的な分析、回帰分析、深層学習など、多様な処理が利用できる。
【0016】
前記情報処理装置は、前記蓄電素子若しくは電源関連装置を含むシステム毎、又は前記蓄電素子若しくは電源関連装置が設置されている場所毎に、前記蓄電素子又は電源関連装置の状態を含む情報を一括して表示させるための表示情報を、前記状態を含む情報の要求元へ送信する送信処理部を備えてもよい。前記表示情報には、前記タイミングの変更を受け付ける画面を表示させるための画面情報を提供する前記通信デバイスへの接続情報が含まれていてもよい。
【0017】
上記構成により、通信デバイスへの接続情報が情報処理装置経由で取得可能である。表示部を有するクライアント装置にて前記接続情報に基づき情報取得のタイミングの変更を受け付ける画面を表示することができる。遠隔から情報取得のタイミング変更が可能である。
【0018】
情報処理システムは、蓄電素子又は電源関連装置に接続されている通信デバイスと、該通信デバイスとの間で情報を送受信する情報処理装置とで夫々情報を処理する。情報処理システムでは、前記通信デバイスが、設定に基づくタイミングで取得される前記蓄電素子又は電源関連装置の状態を含む情報を前記情報処理装置へ送信し、前記情報処理装置が、前記タイミングの変更の要否を判断する。前記情報処理装置は、変更要と判断された場合に、タイミングの変更の指示を前記通信デバイスへ送信し、前記通信デバイスは、受信した変更の指示に基づき前記タイミングを変更する。
【0019】
コンピュータプログラムは、表示部を備えるコンピュータに、蓄電素子及び/又は電源関連装置の情報を受信して表示させる。コンピュータプログラムは、前記コンピュータに、前記蓄電素子及び/又は電源関連装置の状態を表示する表示情報を、該蓄電素子若しくは電源関連装置を含むシステム毎、又は前記蓄電素子若しくは電源関連装置が設置されている場所毎に、要求するステップ、要求に応じて送信された表示情報に基づき、前記システム毎、又は場所毎に一括して表示するステップ、前記表示情報に含まれている前記蓄電素子又は電源関連装置に接続されている通信デバイスへの接続情報に基づいて該通信デバイスに通信接続するステップ、及び前記通信デバイスから提供される前記蓄電素子又は電源関連装置における前記状態を含む情報を取得するタイミングの変更を受け付ける画面を表示させるステップを実行させる。
【0020】
本発明をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
図1は、遠隔監視システム100の概要を示す図である。遠隔監視システム100は、メガソーラー発電システムS、火力発電システムF、風力発電システムWに含まれる蓄電素子及び電源関連装置に関する情報への遠隔からのアクセスを可能とする。無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)U、鉄道用の安定化電源システム等に配設される整流器(直流電源装置、又は交流電源装置)Dも遠隔監視される。蓄電素子及び電源関連装置は産業用途に限らず、家庭用のものであってもよい。
【0022】
メガソーラー発電システムS、火力発電システムF及び風力発電システムWには、パワーコンディショナ(PCS:Power Conditioning System )P及び蓄電システム101が並設されている。蓄電システム101は、蓄電モジュール群Lを収容したコンテナCを複数並設して構成されている。蓄電モジュール群Lは、複数の蓄電素子を含む。蓄電素子は、鉛蓄電池及びリチウムイオン電池のような二次電池や、キャパシタのような、再充電可能なものであることが好ましい。蓄電素子の一部が、再充電不可能な一次電池であってもよい。
【0023】
遠隔監視システム100では、監視対象となるシステムS,F,Wにおける蓄電システム101、又は装置(P,U,D及び後述の管理装置M)夫々に、通信デバイス1が搭載/接続されている(図2参照)。遠隔監視システム100は、通信デバイス1と、通信デバイス1から情報を収集するサーバ装置2(情報処理装置)と、収集された情報を閲覧するためのクライアント装置3(通信端末装置)と、装置間の通信媒体であるネットワークNとを含む。
【0024】
通信デバイス1は、蓄電素子に備えられる電池管理装置(BMU:Battery Management Unit )と通信して蓄電素子の情報を受信する端末装置(計測モニタ)であってもよいし、ECHONET /ECHONETLite (登録商標)対応のコントローラであってもよい。通信デバイス1は、パワーコンディショナPや蓄電モジュール群Lに搭載可能なネットワークカード型のデバイスであってもよい。通信デバイス1は、蓄電システム101における蓄電モジュール群Lの情報を取得すべく、複数の蓄電モジュールからなるグループ毎に1つずつ設けられている。パワーコンディショナPは複数台でシリアル通信が可能に接続されており、通信デバイス1は、いずれか代表となるパワーコンディショナPの制御ユニットに接続されている。
【0025】
サーバ装置2はWebサーバ機能を含み、監視対象の各装置に搭載/接続された通信デバイス1から得られる情報を、クライアント装置3からのアクセスに応じて提示する。通信デバイス1もWebサーバ機能を含み、クライアント装置からのアクセスに応じて通信デバイス1の設定を行なうためのインタフェースをWebベースで有している。サーバ装置2が情報を提示するインタフェースには、通信デバイス1のインタフェースへのリンク(接続情報)が含まれ、クライアント装置3は通信デバイス1と直接的に通信接続して遠隔からの通信デバイス1の操作が可能である。
【0026】
ネットワークNは、所謂インターネットである公衆通信網N1と、所定の移動通信規格による無線通信を実現するキャリアネットワークN2とを含む。公衆通信網N1は、一般光回線を含み、ネットワークNは、サーバ装置2が接続する専用線を含む。ネットワークNは、ECHONET /ECHONETLite 対応のネットワークを含んでもよい。キャリアネットワークN2には基地局BSが含まれ、クライアント装置3は基地局BSからネットワークNを介したサーバ装置2との通信が可能である。公衆通信網N1にはアクセスポイントAPが接続されており、クライアント装置3はアクセスポイントAPからネットワークNを介してサーバ装置2との間で情報を送受信することができる。
【0027】
このように遠隔監視システム100は、監視対象の各装置に搭載又は接続した通信デバイス1を利用し、蓄電システム101における蓄電素子のSOC、SOH(State Of Health )等の状態、装置で検知された異常といった情報を、サーバ装置2が収集する。収集された情報は、サーバ装置2を介して一括で提示される。
【0028】
図2に示すように、通信デバイス1は、制御部10、記憶部11、第1通信部12及び第2通信部13を備える。制御部10はCPU(Central Processing Unit )を用いたプロセッサであり、内蔵するROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを用い、各構成部を制御して処理を実行する。
【0029】
記憶部11は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いる。記憶部11には、制御部10が読み出して実行するデバイスプログラム1Pが記憶されている。デバイスプログラム1Pには、Linux (登録商標)等を用いた組み込み系OS(Operating System)、OS上で動作するWebサーバ、SSH(Secure Shell)、SNMP(Simple Network Management Protocol)等に準じた通信用プログラムが含まれる。記憶部11に記憶してあるデバイスプログラム1Pは、記録媒体4に記憶してあるデバイスプログラム4Pを読み出して記憶部11に複製したものであってもよい。デバイスプログラム1Pにはメーラプログラムが含まれてもよく、異常が発生した場合に、予め設定されてあるメールアドレスへ向けて電子メールが自動的に送信されてもよい。これらのプログラムは、制御部10内蔵のメモリ(ROM)に記憶されていてもよい。記憶部11には、情報の収集に係るサンプリングタイミングの設定が記憶されている。サンプリングタイミングは、例えば1分、1秒等のサンプリング周期である。サンプリングタイミングは一定周期に限らず、特定のパターンであってもよいし、イベント(温度、電圧、電流等の測定値の変化)に基づくものであってもよい。記憶部11には、制御部10の処理によって収集された情報、イベントログ等の情報が記憶される。記憶部11に記憶された情報は、通信デバイス1の筐体に端子が露出するUSB等の通信インタフェースを介して読み出すことも可能である。
【0030】
第1通信部12は、通信デバイス1が接続されている監視対象装置との通信を実現する通信インタフェースである。第1通信部12は例えば、RS−232C又はRS−485等のシリアル通信インタフェースを用いる。例えばパワーコンディショナPはRS−485に準拠したシリアル通信機能を有する制御ユニットを備えており、第1通信部12はその制御ユニットと通信する。蓄電モジュール群Lに備えられている制御基板又は蓄電モジュールを制御する管理装置(図3)がCAN(Controller Area Network)バスにより接続されてCAN通信により相互に通信する場合、第1通信部12はCANプロトコルに基づく通信インタフェースであってもよい。第1通信部12は、ECHONET /ECHONETLite の規格に基づく通信を行なう通信インタフェースであってもよい。
【0031】
第2通信部13は、ネットワークNを介した通信を実現するインタフェースであり、例えばEthernet(登録商標)、又は無線通信用アンテナ等の通信インタフェースを用いる。ECHONET /ECHONETLite の規格に基づく通信を行なう通信インタフェースを用いてもよい。制御部10は、第2通信部13によりネットワークNを介してサーバ装置2又はクライアント装置3と通信接続が可能である。
【0032】
このように構成される通信デバイス1では、制御部10が第1通信部12を介して、通信デバイス1が接続されている監視対象装置の状態情報を含む各種情報を取得する。制御部10は、Webサーバ用プログラムを読み出して実行することによって、Webサーバとしてサーバ装置2又はクライアント装置3からの通信接続を受け、情報を提示することも可能である。制御部10は、SSHにより遠隔から動作指示を受けることが可能である。制御部10は例えば、状態取得のサンプリングタイミングの変更、シャットダウンの指示を受ける。制御部10は、SNMP用プログラムを読み出して実行することにより、SNMPエージェントとして機能し、サーバ装置2からの情報要求に対して応答することも可能である。
【0033】
サーバ装置2はサーバコンピュータを用い、制御部20、記憶部21、及び通信部22を備える。本実施の形態においてサーバ装置2は、1台のサーバコンピュータとして説明するが、複数のサーバコンピュータで処理を分散させてもよい。
【0034】
制御部20は、CPU又はGPU(Graphics Processing Unit)を用いたプロセッサであり、内蔵するROM及びRAM等のメモリを用い、各構成部を制御して処理を実行する。制御部20は、記憶部21に記憶されているサーバプログラム2Pに基づく情報処理を実行する。サーバプログラム2PにはWebサーバプログラムが含まれ、制御部20は、クライアント装置3へのWebページの提供、Webサービスへのログインの受け付け等を実行するWebサーバとして機能する。制御部20は、サーバプログラム2Pに基づき、SNMP用サーバとして通信デバイス1から情報を収集することも可能である。
【0035】
記憶部21は、例えばハードディスク又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いる。記憶部21には、上述したサーバプログラム2Pが記憶されているほか、制御部20の処理によって収集される監視対象となる蓄電システム101のパワーコンディショナP及び蓄電モジュール群Lの状態を含むデータを記憶する。サーバプログラム2Pは、記録媒体5に記憶してあるサーバプログラム5Pを読み出して記憶部21に複製したものであってもよい。
【0036】
通信部22は、ネットワークNを介した通信接続及びデータの送受信を実現する通信デバイスである。具体的には通信部22はネットワークNに対応したネットワークカードである。
【0037】
クライアント装置3は、発電システムS,F,Wの蓄電システム101の管理者又は保守担当者等のオペレータが使用するコンピュータである。クライアント装置3は、デスクトップ型若しくはラップトップ型のパーソナルコンピュータであってもよいし、所謂スマートフォン又はタブレット型の通信端末であってもよい。クライアント装置3は、制御部30、記憶部31、通信部32、表示部33、及び操作部34を備える。
【0038】
制御部30は、CPUを用いたプロセッサである。制御部30は、記憶部31に記憶されているWebブラウザを含むクライアントプログラム3Pに基づき、サーバ装置2又は通信デバイス1により提供されるWebページを表示部33に表示させる。
【0039】
記憶部31は、例えばハードディスク又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いる。記憶部31には、Webブラウザを含むクライアントプログラム3Pを含む各種プログラムが記憶されている。クライアントプログラム3Pは、記録媒体6に記憶してあるクライアントプログラム6Pを読み出して記憶部11に複製したものであってもよい。
【0040】
通信部32は、有線通信用のネットワークカード等の通信デバイス、基地局BS(図1参照)に接続する移動通信用の無線通信デバイス、又はアクセスポイントAPへの接続に対応する無線通信デバイスを用いる。制御部30は通信部32により、ネットワークNを介してサーバ装置2又は通信デバイス1との間で通信接続又は情報の送受信が可能である。
【0041】
表示部33は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイを用いる。表示部33は制御部30のクライアントプログラム3Pに基づく処理により、サーバ装置2で提供されるWebページのイメージを表示する。表示部33は、好ましくはタッチパネル内蔵型ディスプレイであるが、タッチパネル非内蔵型ディスプレイであってもよい。
【0042】
操作部34は、制御部30との間で入出力が可能なキーボード及びポインティングデバイス、若しくは音声入力部等のユーザインタフェースである。操作部34は、表示部33のタッチパネル、又は筐体に設けられた物理ボタンを用いてもよい。操作部34は、ユーザによる操作情報を制御部20へ通知する。
【0043】
このように構成される遠隔監視システム100は、サーバ装置2にて、パワーコンディショナP、蓄電モジュール群L(後述の管理装置M)、無停電電源装置U、及び整流器Dの状態を含む様々な情報を通信デバイス1から定期的に、又はクライアント装置3からの要求に応じて取得し、記憶部21に記憶する。記憶部21には、情報の取得先の装置(P,M,U,D)を識別する情報及び取得した時間情報が対応付けて記憶される。記憶部21に記憶してある最新のデータ及びその履歴は、クライアント装置3からWebページで取得又はデータとして取得(ダウンロード)できるようにサーバ装置2が処理する。サーバ装置2は、通信デバイス1を用いて蓄電素子若しくは各電源関連装置から取得した情報を総合的に、クライアント装置3へ提示することができる。
【0044】
蓄電モジュール群Lは階層構造を有している。図3は、蓄電モジュール群Lの階層構造及び通信デバイス1の接続形態の一例を示す図である。蓄電モジュール群Lは、例えば蓄電セル(セルとも称する)を複数直列に接続した蓄電モジュール(モジュールとも称する)と、蓄電モジュールを複数直列に接続したバンクと、バンクを複数並列に接続したドメインとの階層構造にて構成されている。図3の例では、番号(#)1−Nのバンク夫々と、バンクを並列に接続したドメインとに1つずつ、管理装置Mが設けられている。バンク毎に設けられている管理装置Mは、蓄電モジュールの内部に夫々内蔵されている通信機能付きの制御基板(CMU:Cell Monitoring Unit)とシリアル通信によって通信し、蓄電モジュール及び内部のセルの状態(電流、電圧、温度)の取得、各々の状態に応じたバンク毎のバランス調整、通信状態の異常の検知等の管理処理を実行する。複数の管理装置M間は、CAN通信、LAN、ECHONETLite 、又はシリアル通信で通信接続が可能としてある。バンクの管理装置Mは夫々、ドメイン単位で設けられている管理装置Mへ各々のバンクの蓄電モジュールの情報を送信する。ドメインの管理装置Mは、そのドメインに所属するバンクの管理装置Mから得られる情報を集約する。
【0045】
図3の例では、通信デバイス1はドメイン単位の管理装置M、及びバンク単位の管理装置M夫々に通信線又は信号線を介して接続されている。各管理装置Mに接続されている通信デバイス1は、相互に情報を送受信すべく通信接続されている。図3に示す例では、通信バスにより接続している。通信バスはCANバスでもよいし、LANケーブルであってもよい。ドメインの管理装置Mに接続されている通信デバイス1は、同一システム内の他のドメインの管理装置Mに接続されている他の通信デバイス1との通信を行なってもよい。
【0046】
図4は、蓄電モジュール群Lの階層構造及び通信デバイス1の接続形態の他の一例を示す図である。図4の例では、蓄電モジュール群Lは、蓄電モジュールを複数直列に接続したバンク1つのみで構成されている(スタンドアロン)。図4の例では通信デバイス1は、バンク単位の管理装置Mのみに接続され、他の通信デバイス1との通信は行なわない。
【0047】
図2に示すように、通信デバイス1の制御部10は、記憶部11に記憶されているデバイスプログラム1Pに基づき、接続されている蓄電素子又は電源関連装置の動作を決定する指示を受け付けることが可能である。指示の内容は、例えば、状態取得のサンプリングタイミングの決定であり、又は変更である。図5は、通信デバイス1における指示受付手順の一例を示すフローチャートである。通信デバイス1の制御部10は、第2通信部13によりサーバ装置2又はクライアント装置3からの通信イベントを検知する都度、以下の処理を開始する。
【0048】
制御部10は、通信イベントがサーバ装置2から蓄電素子又は電源関連装置の状態を含む情報の送信要求であるか否かを判断する(ステップS101)。送信要求であると判断された場合(S101:YES)、制御部10は第1通信部12により、接続されている装置から最新の情報を取得するか、予め、設定されているサンプリングタイミングにより取得して記憶してある情報を読み出して取得する(ステップS102、「取得部」に相当)。制御部10は、取得した状態を含む情報を第2通信部13からサーバ装置2宛てに送信し(ステップS103、「送信部」に相当)、処理を終了する。制御部10は、ステップS101にて送信要求を受信せずとも、予め設定されたスケジュール(10分、30分、1時間毎など)に従って、第1通信部12により取得した情報を送信してもよい。制御部10は、記憶された情報の情報量(数、又はデータサイズ)が予め設定された上限に達した場合に、情報を送信してもよい。
【0049】
ステップS101にて通信イベントが、送信要求でないと判断された場合(S101:NO)、制御部10は通信イベントが、クライアント装置3からの接続要求リクエストであるか否かを判断する(ステップS104)。接続要求は、通信デバイス1から提示されるWebページ閲覧を求める場合に送信される。接続要求リクエストであると判断された場合(S104:YES)、制御部10は、第1通信部12により、接続されている装置から状態情報を含む最新の情報を取得する(ステップS105)。制御部10は、取得した最新の情報を含むWebページを作成(Webページに含まれるデータを更新)し(ステップS106)、作成したWebページを表示するための表示情報を要求元のクライアント装置3へ第2通信部13から送信する(ステップS107)。
【0050】
制御部10は、クライアント装置3の表示部33に表示されるWebページ上での操作を受け付ける(ステップS108)。ステップS108における操作により、サンプリングタイミングの変更画面が選択された否かを判断する(ステップS109)。
【0051】
サンプリングタイミングの変更画面が選択されたと判断された場合(S109:YES)、制御部10はこの変更画面上でサンプリングタイミングの変更を受け付ける(ステップS110、「変更受付部」に相当)。制御部10は受け付けたサンプリングタイミングの変更(変更後のサンプリングタイミング)を記憶部11に記憶し(ステップS111)、処理をステップS112へ進める。制御部10は、変更後のサンプリングタイミングとして、サンプリング周期と、設定が有効な期間とを受け付けるとよい。S111の記憶処理以後、制御部10は記憶されている変更後のサンプリングタイミングに基づき、接続されている装置(P,M,U,D)から情報を取得する。記憶部11には初期設定のサンプリングタイミングを別途記憶しておき、制御部10によって参照可能にしてある。
【0052】
サンプリングタイミングの設定画面の選択以外の操作であると判断された場合(S109:NO),各操作に応じてWebページを更新し(ステップS113)、処理をステップS112へ進める。
【0053】
制御部10は、クライアント装置3における操作部34での操作でログアウト又はWebブラウザの終了操作が行なわれたか否かを判断し(ステップS112)、ログアウト又は終了操作が行なわれたと判断された場合(S112:YES)、処理を終了する。ログアウト又は終了操作が行なわれていないと判断された場合(S112:NO)、制御部10はステップS108へ処理を戻し、操作の受け付けを続行する。
【0054】
ステップS104にて接続要求リクエストでないと判断された場合(S104:NO)、通信イベントは指示情報の送信であり、制御部10はこれを受信する(ステップS114)。制御部10は受信した指示情報を記憶部11に記憶し(ステップS115)、記憶した指示情報に基づいて動作し、処理を終了する。指示情報は、サンプリングタイミングの変更の指示であってもよいし、通信デバイス1自身の動作、又は接続している装置(P,M,U,D)の動作を指示する情報であってもよい。指示情報は例えば命令(script)群であってもよい。
【0055】
図5のフローチャートに示した処理手順について、クライアント装置3の表示部33にて表示される画面例を説明する。図6及び図7は、サーバ装置2により提示される画面例を示す図であり、図8及び図9は、通信デバイス1により提示される画面例を示す図である。
【0056】
図6の画面例は、遠隔監視システム100を利用するべくユーザ(オペレータ)がクライアント装置3を用い、サーバ装置2のWebサーバから提供されるログイン画面を介してログインを行ない、ログインに成功した場合に表示される。クライアント装置3ではサーバ装置2から送信される画面情報に基づき、ログイン情報により抽出されたシステム又は装置の名称の一覧を含むWeb画面330を表示部33に表示させる。図6の例では、図1に示したメガソーラー発電システムSの「XY市メガソーラーシステム」、火力発電所システムFの「WZ発電所システム」等の名称が夫々、識別情報(識別番号)と共にリンクとして表示されている。
【0057】
サーバ装置2から提供されるWeb画面330には、「システム検索」、「寿命予測」、「ダウンロード」、「レポート」等のメニュー331が含まれる。メニュー331には「新規登録」、及び「編集」が含まれる。Web画面330には、ログアウト又は終了操作のためのボタン332が含まれている。
【0058】
図7は、システム毎に情報が一括して表示される画面例を示す図である。図7は、図6に表示されたWeb画面330で、「XY市メガソーラーシステム」がクライアント装置3の操作部34の操作により選択された場合に表示部33に表示される画面である。図7の画面例では、「XY市メガソーラーシステム」が用いている蓄電システム101のシステム構成に合わせ、複数のバンクを夫々含む複数のドメインから構成された蓄電モジュール群L夫々を識別する名称(又は識別番号)を含むアイコン333が表示されている。蓄電モジュール群Lについてはその階層構造を展開又は折り畳むための「+/−」アイコン334と、各々の詳細情報を表示するためのアイコン335と、詳細情報(リアルタイム)を表示させるためのアイコン336とが配置されている。アイコン336は、蓄電モジュール群Lに接続されている通信デバイス1の識別情報(デバイスID)と共に配置されている。
【0059】
「XY市メガソーラーシステム」の蓄電システム101は、図3に示したように、各々n個(nは自然数。本実施形態では12個)のセルを含むモジュールを複数直列させたバンクを、複数並列に持つドメインを複数有する蓄電モジュール群Lを持っている。図7に示すように、Web画面330ではドメインに対応する「+/−」アイコン334が選択されると、該ドメインに所属するバンクに対応するリストが展開される。展開されたリスト中のバンクに対応する「+/−」アイコン334が選択されると、該バンクに所属する蓄電モジュールのリストが展開される。蓄電モジュールは各々n個のセルを含んでおり、クライアント装置3の操作部34の操作により、画面330上で蓄電モジュールに対応する「+/−」アイコン334が選択されると該モジュールに含まれるセルのリスト(イメージ)が、図7に示すように展開される。図7では、詳細情報を取得するためのアイコン336は、通信デバイス1が搭載/接続されている管理装置Mに対応する各階層、即ちドメイン及びバンクの両方に配置されている。
【0060】
図8は、詳細情報の表示例を示す図である。図8は、図7の蓄電モジュール群Lのドメインに対応する階層のアイコン336が選択された場合に、該アイコン336に対応付けられているリンク情報に基づいて通信デバイス1のWebサーバにより提示される、Web画面337の一例である。図8に示す通信デバイス1から提供されるWeb画面337を表示するためには、ログインが必要である。このときのログイン情報はサーバ装置2で提供されるWebサーバへのログインと共通としてあり、これにより改めてログイン情報を入力する操作を行なうことなしに自動的にログインされて表示されることが好ましい。
【0061】
Web画面337にて通信デバイス1は、ドメインの階層に設けられている管理装置M、又は各バンクに設けられている管理装置Mを介し、各蓄電モジュールに搭載されている制御基板から得られる情報をクライアント装置3へ提供する。具体的にはWeb画面337には「ドメイン情報」として、ドメインの状態(正常/異常)、ドメインに含まれるバンクの数(総バンク数)、全バンク中で稼働しているバンクの数(稼働バンク数)、そのドメインの総電圧、電流、セル電圧、SOC、温度の分布(最高値、平均値、及び最低値)が含まれている。「データ日時」もWeb画面337に表示されている。
【0062】
通信デバイス1により提示されるWeb画面337には、メニューアイコン338が複数含まれている。複数のメニューアイコン338は例えば、通信デバイス1を介して得られる「ドメイン情報」の詳細な情報を表示するためのメニューを含む。メニューアイコン338は、通信デバイス1における時刻、メンテナンスに関する通知用のメールアドレスの設定、ネットワーク設定、SNMPに関する設定、シリアル通信を介した制御に関する設定、又は通信デバイス1の再起動(シャットダウン)のためのメニューを含む。メニューアイコン338には、図5のフローチャートに示した手動によるサンプリングタイミングの変更を行なうためのメニューを含む。
【0063】
通信デバイス1では、「ドメイン情報」の内容更新に応じて、提示するWeb画面337内の情報を更新する。通信デバイス1は、クライアント装置3の操作部34にて、これらのメニューアイコン338が選択操作されることにより、Web画面337を遷移させる。
【0064】
図9は、通信デバイス1から提示されるWeb画面337の他の一例を示す図である。図9は、図8のメニューアイコン338の内、サンプリングタイミングの変更を行なうためのアイコンが選択された場合に表示される画面例である。図9の画面例を表示させることができるクライアント装置3は、管理者権限が割り当てられたユーザ(オペレータ)のログインがされているものに限るとよい。図9に示すように、メニューアイコン338が選択されると、Web画面337に重畳するような画面339が表示されると共に、図8のWeb画面337に戻るためのアイコン340が表示される。画面339には、通信デバイス1に対応するドメインの識別番号と、その状態情報(含まれている総バンク数)とが表示されている。
【0065】
画面339には、Web画面337の提示元の通信デバイス1が接続されているドメインにおける状態情報のサンプリングタイミングを変更するための設定画面341が含まれる。図9に示す設定画面341の例では、サンプリングタイミングの周期の入力欄、並びに、変更するサンプリングタイミングの有効期間の選択欄、及び、有効期間の入力欄を含む。画面339に示す例では、図3に示したように、ドメインの下位層に複数のバンクを含むので、対応するバンク夫々についてのサンプリングタイミングの入力欄、有効期間の選択欄及び入力欄を含む設定画面342が含まれる。画面339には変更ボタン343が含まれている。ドメインの設定画面341及びバンクの設定画面342の両方又はいずれか一方にて、選択又は入力が行なわれた後に変更ボタン343が操作部34により選択された場合、変更が受け付けられ(S110)、記憶される(S111)。このように通信デバイス1が提示するWeb画面337を介して遠隔から手動で、通信デバイス1によるサンプリングタイミングの変更を受け付けることができる。
【0066】
図9に示したWeb画面337は、複数のバンクを下位層に持つドメインの階層に設けられている管理装置Mに搭載/接続されている通信デバイス1から提示される。図9に示したWeb画面337では上述したように、バンクの設定画面342を含んで下位層のバンクのサンプリングタイミングの変更も可能である。この構成により、バンクにも通信デバイス1が備えられていたとしても、より上位の階層の通信デバイス1で、下位層におけるサンプリングタイミングの変更が可能であり、操作性が向上する。複数のバンクを下位層に持っていたとしても、ドメインの階層の通信デバイス1から提示されるWeb画面337では、バンクの設定画面342は無効化されていてもよい。この場合、下位層のバンクのサンプリングタイミングの変更については、バンクの階層に設けられている管理装置Mに搭載/接続されている通信デバイス1から提示されるWeb画面で受け付ける。このWeb画面には、対応するバンク(例えば「#1」のバンクのみ)のサンプリングタイミングの設定画面342のみが表示される。
【0067】
同一の蓄電システム101における並列の複数のドメインに対し、一括してサンプリングタイミングを設定するケースも考えられる。この場合、サーバ装置2により提示される図7に示したWeb画面330内に、サンプリングタイミングの変更を受け付けるボタンが、例えばメニュー331内に設けられているとよい。
【0068】
図9に示したように、ドメインとバンクとで異なるサンプリング時間を変更することが可能であり、変更したサンプリング時間が有効な期間の設定を行なうことも可能である。
【0069】
このように通信デバイス1にて、搭載/接続されている装置における蓄電素子又は電源関連装置の状態を取得するサンプリングタイミングの変更を、遠隔から受け付けることができる。遠隔から受け付けが可能であることを利用して、遠隔監視システム100としてサンプリングタイミングの自動変更を行なうことも可能である。以下、自動変更について説明する。
【0070】
サンプリングタイミングを初期設定から変更する必要があるケースとしては、蓄電モジュール群Lの一部又は全部について、状態を詳細に取得する必要が生じた場合と、逆に詳細に状態を取得する頻度を下げてもよいと判断された場合とが考えられる。前者のケースは、各蓄電モジュールから取得してサーバ装置2にて収集している状態情報に基づき、蓄電モジュール群Lの一部又は全部についての異常の予兆を検知した場合、又は、蓄電素子の劣化率(寿命)を算出する場合である。後者のケースは、収集され蓄積された状態情報を用いた寿命予測等の処理の効率性が向上し、高頻度で状態情報を取得せずとも、精度を維持して処理を行なうことができる場合である。サンプリングの頻度が高い場合、処理負荷が重くなる上、通信デバイス1からサーバ装置2へ、サンプリング頻度とは独立したタイミングで送信される状態を含む情報の情報量が大きくなって通信負荷も重くなる。したがって処理負荷及び通信負荷を考慮すれば、精度が維持できるのであればサンプリングの頻度は低い方が好ましい。サンプリングの頻度が最適化できることが望ましい。
【0071】
図10は、サーバ装置2における処理手順の一例を示すフローチャートである。サーバ装置2の制御部20は、周期的に以下の処理手順を実行する。
【0072】
制御部20は、監視対象のシステム又は装置を1つ選択する(ステップS201)。ステップS201において制御部20は、記憶部21に記憶してある監視対象のシステム又は装置の識別情報の中から1つ選択する。選択したシステム又は装置について制御部20は、蓄電モジュール群Lの状態情報に基づき異常の予兆を検知したか否かを判断する(ステップS202、「判断部」に相当)。予兆の検知は、サーバ装置2における状態情報に基づく統計的解析、又は閾値判断によって行なわれてもよい。予兆の検知は、各取得した状態情報に基づく劣化又は異常予測に関する学習による人工知能的な判定に基づき行なわれてもよい。人工知能的な判定とは例えば、状態情報を入力層とし、状態を判定結果として出力する深層学習である。その他判定は、状態情報に対する回帰分析によるものであってもよい。
【0073】
異常の予兆を検知したと判断された場合(S202:YES)、制御部20はサンプリングの頻度を高めるように変更後のサンプリングタイミングを決定する(ステップS203)。制御部20は、決定した変更後のサンプリングタイミングを記述した変更を指示する指示情報を作成し(ステップS204)、作成した指示情報を、選択しているシステム又は装置に対応する通信デバイス1へ送信する(ステップS205、「指示部」に相当)。制御部20は、全てのシステム又は装置について選択したか否かを判断し(ステップS206)、選択していないと判断された場合(S206:NO)、処理をステップS201へ戻し、選択した判断された場合(S206:YES)、処理を終了する。
【0074】
ステップS205の処理は、図5のフローチャートに示した通信デバイス1が実行する処理手順の内のステップS114,S115に対応する。サーバ装置2から、上述のようにサンプリングタイミングの変更を指示する指示情報が送信されると、通信デバイス1の制御部10はこれを受信し(S114)、指示情報に含まれる変更を記憶する(S115)。
【0075】
異常の予兆を検知したと判断されない場合(S202:NO)、制御部20は、サンプリングタイミング変更のトリガ入力があったか否かを判断する(ステップS207、「判断部」に相当)。トリガは例えば、選択されているシステム又は装置に対応付けて記憶部21に記憶してあるスケジュールに基づき、制御部20自身が出力してもよいし、システムの周辺環境、他の装置の状況等に基づく外部装置での状況判定に基づいて出力されたものであってもよい。トリガは、クライアント装置3からの指示で図7のWeb画面330に含まれるメニューによって出力されるものであってもよい。
【0076】
ステップS207でトリガ入力があったと判断された場合(S207:YES)、制御部20はトリガ入力と対応して指定される条件に基づき変更後のサンプリングタイミングを決定する(ステップS208)。制御部20はタイミングの変更を指示する指示情報を作成して送信する(S204,S205)。
【0077】
ステップS207でトリガ入力がなかったと判断された場合(S207:NO)、制御部20は、選択したシステム又は装置について、蓄電モジュール群Lの状態情報に基づき、安定状態を検知したか否かを判断する(ステップS209、「判断部」に相当)。
【0078】
安定状態を検知したと判断された場合(S209:YES)、制御部20はサンプリングの頻度を低くするように変更後のサンプリングタイミングを決定する(ステップS210)。制御部20は、タイミングの変更を指示する指示情報を作成して送信し(S204,S205)、処理を終了する。
【0079】
安定状態を検知しないと判断された場合(S209:NO)、制御部20は処理をステップS206へ進める。
【0080】
図10のフローチャートに示した処理手順はあくまで例示である。各通信デバイス1の処理負荷と、ネットワークNにおける通信負荷とを考慮して、サンプリングの頻度が遠隔監視システム100全体として最適化されるように、多様な条件によってサンプリングタイミングを変更できることが好ましい。
【0081】
従来、蓄電モジュール群Lを管理する管理装置Mにて、蓄電素子の状態を取得するサンプリングタイミングは、初期設定に基づくものであって変更するためには、管理装置Mが設置されている現場へ保守担当者が赴いて行なうなどしてきた。蓄電モジュール群L、及びこれを含むシステム全体における状態を遠隔から監視できる遠隔監視システム100を利用することにより、クライアント装置3での操作部34による操作に応じて通信デバイス1を介してサンプリングタイミングを変更できる。したがって保守担当者の負担を軽減し、保守管理に要するコストを低減することも可能となる。
【0082】
上述のように開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0083】
1 通信デバイス
10 制御部
11 記憶部
1P デバイスプログラム
2 サーバ装置
20 制御部
21 記憶部
2P サーバプログラム
3 クライアント装置
30 制御部
31 記憶部
3P クライアントプログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10