(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
シミュレーション装置において、小型化および容量の低減が好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、シミュレーション装置を提供する。シミュレーション装置は、デジタル演算部を有してよい。デジタル演算部は、電力設備を模擬してよい。シミュレーション装置は、出力回路を有してよい。出力回路は、デジタル演算部の出力に応じたアナログ電流およびアナログ電圧をアナログモデルに出力してよい。シミュレーション装置は、一つの筐体を備えてよい。一つの筐体は、デジタル演算部と出力回路とを収容してよい。
【0005】
シミュレーション装置は、デジタル演算部と出力回路との間において、デジタルアナログ変換部を備えてよい。デジタルアナログ変換部は、デジタル信号をアナログ値に変換してよい。出力回路は、電流増幅回路を含んでよい。
【0006】
シミュレーション装置は、デジタル増幅部を含んでよい。デジタル増幅部は、デジタル演算部の出力を調整してデジタルアナログ変換部に入力してよい。
【0007】
デジタル増幅部は、デジタル演算部におけるプログラム可能な集積回路によって構成されてよい。
【0008】
デジタル演算部と電流増幅回路の間には、信号のゲインを調整するための第1ゲイン調整回路が一つだけ設けられてよい。
【0009】
デジタル演算部と電流増幅回路の間には、信号のオフセットを調整するための第1オフセット調整回路が一つだけ設けられてよい。
【0010】
シミュレーション装置は、デジタルアナログ変換部と電流増幅回路との間にアナログフィルタ部を備えてよい。アナログフィルタ部と電流増幅回路とは直接配線で連結されてよい。
【0011】
シミュレーション装置は、測定部を更に備えてよい。測定部は、電流増幅回路から出力されるアナログ信号を測定してよい。シミュレーション装置は、アナログデジタル変換部を更に備えてよい。アナログデジタル変換部は、測定部による測定に基づいて得られるアナログ信号をデジタル値に変換してデジタル演算部に入力してよい。
【0012】
測定部とアナログデジタル変換部とは直接接続されてよい。
【0013】
測定部とアナログデジタル変換部との間は、20cm以下の長さの配線によって接続されてよい。
【0014】
電流増幅回路とアナログデジタル変換部との間には、信号のゲインを調整するための第2ゲイン調整回路が一つだけ設けられてよい。
【0015】
電流増幅回路とアナログデジタル変換部との間には、信号のオフセットを調整するための第2オフセット調整回路が一つだけ設けられてよい。
【0016】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
図1は、シミュレーションシステム1の一例を示す。シミュレーションシステム1は、電力系統における電気的な系統現象を再現する。電力系統は、例えば、三相交流である。シミュレーションシステム1は、リアルタイムシミュレータと呼ばれる。シミュレーションシステム1は、複数のシミュレーション装置10−1から10−7(シミュレーション装置10と総称する場合がある)を備える。シミュレーション装置10は、デジタル演算部を含んでよい。シミュレーション装置10において、内蔵するプログラムを変更することによって異なる発電機および負荷を模擬するように構成されてよい。
【0020】
本例では、シミュレーション装置10−1は、火力発電機を模擬する同期電機モデルを含む。シミュレーション装置10−2は、大規模太陽光発電システムを模擬する太陽光発電システムモデルを含む。シミュレーション装置10−3は、風力発電機を模擬する風力発電機モデルを含む。シミュレーション装置10−4は、電力系統用蓄電池を模擬する蓄電池モデルを含む。シミュレーション装置10−5および10−6は、負荷特性を模擬する負荷モデルを含む。シミュレーション装置10−7は、負荷側の太陽光発電システム設備を模擬する負荷側太陽光発電システムモデルを含む。
【0021】
シミュレーションシステム1は、複数のアナログモデル12−1から12−4(アナログモデル12と総称する場合がある)を含んでよい。アナログモデル12は、送電線および電力用変圧器等のアナログ機器を模擬する。アナログモデル12は、ミニチュア化された抵抗器、リアクトル、コンデンサ、および変圧器等のアナログ部品で構成される。アナログモデル12には、実際の電力系統より小さい電流が流れる。
【0022】
アナログモデル12−1およびアナログモデル12−3は、送電線を模擬する。アナログモデル12−1およびアナログモデル12−3は、抵抗器、リアクトル、およびコンデンサによって構成されてよい。アナログモデル12−1およびアナログモデル12−3は、π型等価回路であってよい。アナログモデル12−2およびアナログモデル12−4は、電力用変圧器を模擬する。アナログモデル12−2およびアナログモデル12−4は、変圧器によって構成されてよい。
【0023】
各シミュレーション装置10−1から10−7は、いずれかのアナログモデル12に接続される。本例では、シミュレーション装置10−1から10−4は、送電線を模擬するアナログモデル12−1に接続されている。アナログモデル12−1は、変圧器を模擬するアナログモデル12−2を介して、送電線を模擬するアナログモデル12−3に接続されている。アナログモデル12−3は、変圧器モデルであるアナログモデル12−4に接続されている。シミュレーション装置10−5から10−7は、アナログモデル12−4に接続されている。但し、シミュレーションシステム1が含むシミュレーション装置10とアナログモデル12の数、種類、および接続関係は、
図1に示される場合に限られない。
【0024】
図2は、本発明のシミュレーション装置10の一例を示す。
図3は、比較例のシミュレーション装置10aを示す。
図2に示されるシミュレーション装置10および
図3に示されるシミュレーション装置10aは、
図1に示されるシミュレーション装置10−1から10−7のいずれかの装置であってよい。
【0025】
[比較例] まず、比較例について説明する。
図3に示されるシミュレーション装置10aは、演算装置13および出力増幅装置14を備える。一例において、演算装置13は、モデル演算部112、デジタルアナログ変換部120、アナログフィルタ部130、調整回路140、アナログフィルタ部146、調整回路148、およびアナログデジタル変換部150を備える。これらの各部品は、第1筐体103に収容される。モデル演算部112は、電力設備を模擬するデジタル演算部である。
【0026】
出力増幅装置14は、電流増幅回路210、測定部220、調整回路232、および増幅器234を備える。電流増幅回路210は、デジタル演算部として構成されるモデル演算部112からの出力に応じたアナログ電流およびアナログ電圧をアナログモデル12に出力する出力回路の一例である。測定部220は、電流増幅回路210から出力されるアナログ信号を測定する。測定部220は、電流増幅回路210から出力されるアナログ電圧およびアナログ電流の少なくとも一方を測定してよい。測定部220は、アイソレーションアンプ222、アナログフィルタ部224、および調整回路230を含む。
【0027】
出力増幅装置14の各構成部品は、第2筐体104に収容される。
図3に示される比較例においては、デジタル演算部として構成されるモデル演算部112と、出力回路である電流増幅回路210とが別個の筐体に収容されている。
【0028】
第1筐体103内の調整回路140と第2筐体104内の増幅器234との間は、配線142によって電気的に接続されている。第1筐体103内のアナログフィルタ部146と第2筐体104内の測定部220との間は、配線144によって電気的に接続されている。
【0029】
このように構成されるシミュレーション装置10aにおいて、モデル演算部112は、発電機または負荷等を模擬する。モデル演算部112は、実行した模擬によって得られた電圧値および電流値をデジタル信号として出力する。モデル演算部112から出力されるデジタル信号は、デジタルアナログ変換部120によってアナログ信号に変換される。
【0030】
アナログフィルタ部130は、デジタルアナログ変換部120から出力されたアナログ信号に含まれるデジタルアナログ変換で発生する階段状成分を除去する。調整回路140は、演算装置13からの出力信号を調整する。具体的には、調整回路140は、アナログフィルタ部130を通過した信号のゲイン(利得)とオフセットとを調整する。アナログフィルタ部130を通過することによって信号波形が変化する。調整回路140は、信号のゲインとオフセットとを調整することで、アナログフィルタ部130を通過した信号波形を調整する。
【0031】
デジタルアナログ変換部120に供給される電源電圧±V1は、±15V程度であってよい。デジタルアナログ変換部120における信号の電圧レベルを高くすることによって、S/N比を高める。増幅器234(ゲイン回路)は、配線142を通じて調整回路140から信号を受信する。
【0032】
調整回路232は、増幅器234におけるゲイン(利得)およびオフセットを調整するための回路である。増幅器234は、受信した信号を、調整回路232によって調整されたゲインで増幅する。一例において、ゲインは1以下であってよい。したがって、増幅器234の出力信号が、入力信号より小さくなってよい。
【0033】
モデル演算部112から出力されるデジタル信号が、定格電流に対する割合を示す場合がある。モデル演算部112が模擬する発電機等の種類を変更した場合、発電機等の定格電流が変化する。模擬対象の発電機等の定格電流が変化した場合、調整回路232および増幅器234は、発電機等の定格電流に合わせて、増幅器234におけるゲイン(利得)を調整する。これにより、シミュレーション装置10aがアナログモデル12に出力する電流が発電機等の定格電流に対応した適切な値に調整される。この調整は、定格設定と呼ばれる。
【0034】
電流増幅回路210は、例えば、第1のトランジスタと第2のトランジスタを含む。電流増幅回路210には、デジタルアナログ変換部120に印加される電源電圧±V1より高い電源電圧±V2が印加されてよい。±V2は、例えば、±200Vである。
【0035】
電流増幅回路210において、第1のトランジスタと第2のトランジスタのベース同士の接続点が入力端であり、第1のトランジスタのコレクタと第2のトランジスタのエミッタとの接続点を出力端であってよい。但し、電流増幅回路210は、この構成に限られない。
【0036】
測定部220は、電流増幅回路210から出力されるアナログ信号を測定する。具体的には、測定部220は、電流増幅回路210から出力されるアナログ電圧およびアナログ電流を測定してよい。本例では、アイソレーションアンプ222の入力部が電流増幅回路210の出力端に接続される。アイソレーションアンプ222は、入力部と出力部間を絶縁した増幅器である。アイソレーションアンプ222が、電流増幅回路210から出力されるアナログ電圧を取得する。アイソレーションアンプ222の出力部は、アナログフィルタ部224に入力される。アナログフィルタ部
224は、アイソレーションアンプ222からの出力信号をフィルタリングしてノイズ成分等を除去する。調整回路230は、アナログフィルタ部224を通過した信号のゲイン(利得)とオフセットとを調整する。調整回路230から出力された信号は、配線144を介して、演算装置13におけるアナログフィルタ部146に入力される。
【0037】
アナログフィルタ部146は、配線144を介して出力増幅装置14から入力された信号をフィルタリングしてノイズ成分等を除去する。これによって、第1筐体103と第2筐体104の外部を通過する配線144におけるノイズの影響を低減する。調整回路148は、アナログフィルタ部146を通過した信号のゲイン(利得)とオフセットとを調整する。アナログデジタル変換部150は、調整回路148によって調整されたアナログ信号をデジタル値に変換する。アナログデジタル変換部150は、デジタル値を、デジタル演算部であるモデル演算部112に入力する。
【0038】
比較例におけるシミュレーション装置10aにおいては、演算装置13と出力増幅装置14が別個の筐体に収納された独立な装置である。したがって、演算装置13は、調整回路140および調整回路148を有する一方、出力増幅装置14は、調整回路230および調整回路232を有する。換言すれば、演算装置13および出力増幅装置14は、それぞれ独立して、信号を調整する調整回路を備える。一方で、演算装置13および出力増幅装置14において、それぞれ調整回路を設けることは、装置の精度向上を困難にし、定格容量の低減ならびに小型化を妨げる要因となる。
【0039】
比較例においては、モデル演算部112が模擬する発電機等の定格電流に合わせて信号レベルを調整するために調整回路232および増幅器234が出力増幅装置14に設けられる。しかし、調整回路232および増幅器234が出力増幅装置14に設けられると温度変化等の影響を受けやすくなるため精度低下の原因になる。また、演算装置13と出力増幅装置14が互いに別個の筐体である第1筐体103、第2筐体104に収納される。これに起因して、第1筐体103および第2筐体104間を連結する配線142および配線144が第1筐体103および第2筐体の外部を通過するので、ノイズの影響を受けやすい。
【0040】
[本発明の実施形態] 次に、本発明の実施形態のシミュレーション装置10を説明する。
図2に示されるシミュレーション装置10は、デジタル演算部110、デジタルアナログ変換部120、アナログフィルタ部130、調整回路140、およびアナログデジタル変換部150を備える。これらの構成は、第1基板100に設けられてよい。シミュレーション装置10は、電流増幅回路210および測定部220を備える。電流増幅回路210および測定部220は、第2基板200に設けられていてよい。電流増幅回路210は、出力回路の一例である。出力回路は、電圧増幅回路でもよい。シミュレーション装置10は、
図2に示される場合に限定されない。一例において、電流増幅回路210および測定部220が一つの基板に設けられていてもよい。また、3以上の基板に分かれて各構成が配置されていてもよい。
【0041】
デジタル演算部110は、電力設備を模擬する。電力設備は、火力発電所、原子力発電所、風力発電所、[0]太陽光発電システム、水力発電所、または負荷であってよい。デジタル演算部110は、模擬する設備に対応するモデル演算部112を備えてよい。モデル演算部112は、発電機または負荷等を模擬演算する。モデル演算部112は、実行した模擬によって得られた電圧値および電流値等の物理量をデジタル信号として出力する。モデル演算部112の構成は、従来の電力系統シミュレータの場合と同様であるので、詳しい説明を省略する。デジタル演算部110は、プログラム可能な集積回路によって構成されてよい。一例において、デジタル演算部110は、プログラム可能な集積回路としてFPGA(field-programmable gate array)を含んでよい。FPGAはゲートアレイ、RAM、および制御部を含んでよい。
【0042】
本例においては、シミュレーション装置10は、デジタル演算部110の出力を調整してデジタルアナログ変換部120に入力するデジタル増幅部114を含む。デジタル増幅部114は、デジタル演算部110におけるプログラム可能な集積回路によって構成されてよい。一例において、デジタル増幅部114は、FPGA(field-programmable gate array)によって構成されてよい。FPGA自体の構成は、通常のFPGAと同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0043】
モデル演算部112が出力するデジタル信号が、定格電流に対する割合を示す場合がある。モデル演算部112が模擬する発電機等の種類を変更した場合、発電機等の定格電流が変化する。比較例では、
図3における調整回路232および増幅器234が、発電機等の定格電流に合わせて、増幅器234におけるゲイン(利得)を調整する。これに対し、本実施形態におけるシミュレーション装置10は、デジタル増幅部114が発電機等の定格電流に合わせて、増幅器234におけるゲイン(利得)を調整する。したがって、本例においては、比較例における調整回路232および増幅器234を省略することができる。
【0044】
デジタルアナログ変換部120、アナログフィルタ部130、調整回路140、アナログデジタル変換部150、電流増幅回路210、および測定部220の構成は、比較例の場合と同様である。したがって、繰り返しの詳しい説明は省略する。電流増幅回路210は、デジタル演算部110の出力に応じたアナログ電流およびアナログ電圧をアナログモデル12に出力する出力回路の一例である。本例では、デジタル演算部110の出力がデジタルアナログ変換部120、アナログフィルタ部130、および調整回路140による各処理を経て、電流増幅回路210に入力される。電流増幅回路210は、入力された信号に基づいて、デジタル演算部110の出力に応じたアナログ電流およびアナログ電圧をアナログモデル12に出力する。換言すれば、出力回路が電流増幅回路210を含んでいる。
【0045】
本実施形態のシミュレーション装置10は、デジタル演算部110と出力回路(一例において、電流増幅回路210)とを共に収容する一つの筐体102を備える。換言すれば、シミュレーション装置10は、比較例における演算装置13および出力増幅装置14を一つの装置に一体化する。
【0046】
測定部220は、電流増幅回路210から出力されるアナログ信号を測定する。アナログデジタル変換部150は、測定部220による測定に基づいて得られるアナログ信号をデジタル値に変換してデジタル演算部110に入力する。本実施形態のシミュレーション装置10においては、測定部220とアナログデジタル変換部150とが直接接続されている。測定部220とアナログデジタル変換部150との間は、20cm以下の長さの配線144によって接続されてよい。
【0047】
図3の比較例においては測定部220とアナログデジタル変換部150との間に、アナログフィルタ部146および調整回路148が設けられていたが、本実施形態においては、アナログフィルタ部146および調整回路148が省略されている。本実施形態では、電流増幅回路210の出力端とアナログデジタル変換部150との間に設けられるアナログフィルタ部は、アナログフィルタ部224の一つしかない。電流増幅回路210の出力端とアナログデジタル変換部150との間にアナログフィルタが2段以上ない。
【0048】
図4は、本発明のシミュレーション装置10の一例を示すブロック図である。
図5は、比較例のシミュレーション装置10aの一例を示すブロック図である。
図4および
図5においては、
図2および
図3において説明された構成のうち、主として調整回路を示している。
【0049】
図4に示される本実施形態におけるシミュレーション装置10において、デジタル演算部110と電流増幅回路210との間には、第1調整回路として調整回路140が一つだけ設けられ、それ以外の調整回路が設けられていない。電流増幅回路210とアナログデジタル変換部150との間には、第2調整回路として調整回路230が一つだけ設けられ、それ以外の調整回路が設けられていない。
【0050】
図6は、調整回路の一例を示す。本例では、調整回路140の構成を示す。調整回路140は、増幅器252、ゲイン調整回路254、オフセット調整回路256を備える。ゲイン調整回路254は、増幅器252の入力端の一方と出力端との間に設けられる可変帰還抵抗255を含む。オフセット調整回路256は、増幅器252の入力端の他方に接続される可変入力抵抗257を備える。
【0051】
可変帰還抵抗255および可変入力抵抗257には、機械的なつまみが設けられている。一例において、工場での出荷時に、作業担当者がマイナスドライバ等を用いて可変帰還抵抗255の回転部分を回動させることで抵抗値を調整する。これによって信号のゲインが調整される。一例において、作業担当者が可変入力抵抗257の回転部分を回動させることで抵抗値を調整する。これによって信号のオフセットが調整される。
【0052】
したがって、デジタル演算部110と電流増幅回路210との間には、信号のゲインを調整するためのゲイン調整回路254(第1ゲイン調整回路)が一つだけ設けられる。デジタル演算部110と電流増幅回路210との間には、信号のオフセットを調整するためのオフセット調整回路256(第1オフセット調整回路)が一つだけ設けられる。換言すれば、デジタル演算部110と電流増幅回路210との間には、可変抵抗器の機械的な回転つまみが、2つだけ設けられてよい。
【0053】
調整回路230も、
図6と同様の構成を有してよい。したがって、電流増幅回路210とアナログデジタル変換部150との間には、信号のゲインを調整するためのゲイン調整回路254(第2ゲイン調整回路)が一つだけ設けられる。電流増幅回路210とアナログデジタル変換部150との間には、信号のオフセットを調整するためのオフセット調整回路256(第2オフセット調整回路)が一つだけ設けられる。換言すれば、デジタル演算部110とアナログデジタル変換部150との間には、可変抵抗器の機械的な回転つまみが、2つだけ設けられてよい。
【0054】
本実施形態のシミュレーション装置10によれば、装置毎に設けられて機能が重複していた調整回路の数を削減することができる。また、アナログ回路における増幅器234(ゲイン回路)で実行していた定格設定処理をデジタル演算部110におけるデジタル増幅部(ゲイン処理)に置き換えた。これらの構成によって、誤差の発生要因である温度ドリフトの影響を低減できるとともに、定格電圧および定格電流の低減と装置の小型化が可能になる。
【0055】
一つの筐体102内にデジタル演算部110と、アナログモデル12への出力回路とを一つの筐体102に収容するので、装置の小型化が可能になる。配線142および配線144を筐体の外に設ける必要がないので、ノイズの影響を受けにくくできる。測定部220とアナログデジタル変換部150との間は、20cm以下の長さの配線144によって接続されてよい。配線144の距離を短くすることができるので、省スペース化および低ノイズ化に寄与する。
【0056】
図7は、本発明のシミュレーション装置10の他の例を示す。シミュレーション装置10は、デジタルアナログ変換部120と電流増幅回路210との間にアナログフィルタ部130を備えている。本例においては、シミュレーション装置10は、アナログフィルタ部130と電流増幅回路210との間に調整回路140を有しない。アナログフィルタ部130と電流増幅回路210とは直接配線で連結されている。「直接配線で連結」とは配線以外のアナログ素子がないことを意味し、特に、アナログ電圧増幅回路が存在しないことを意味する。なお、アナログフィルタ部130は、デジタルアナログ変換部120に供給される電源電圧±V1と同じ電源電圧が供給されてよい。一方、電流増幅回路210は、デジタルアナログ変換部120に印加される電源電圧±V1より高い電源電圧±V2が印加されてよい。
【0057】
本例においては、デジタルアナログ変換部120の後段に接続されるアナログフィルタ部130の出力が測定される。測定には、測定部220と同様の構成が用いられてよい。測定結果は、アナログデジタル変換部152を介してデジタル演算部110にフィードバックされる。デジタル演算部110は、フィードバックされた測定結果を取得する。フィードバックされた測定結果に基づいて、デジタル増幅部114は信号に対するゲインおよびオフセットを調整する。具体的には、デジタルアナログ変換部120が基準となる信号を出力した場合に、アナログフィルタ部130後のアナログ信号が予め定められた値を有する信号となるにように、デジタル増幅部114は信号に対するゲインおよびオフセットを調整してよい。調整されたゲインおよびオフセットを用いてデジタル増幅部114は、モデル演算部112からの信号を処理する。
【0058】
本例によれば、アナログフィルタ部130の出力側の調整回路140を省略することができる。したがって、作業担当者が調整回路140を用いて調整する負担を軽減することできる。
【0059】
図8は、本発明のシミュレーション装置10の他の例を示す。上述した
図2および
図7に示される例では、デジタルアナログ変換部120およびアナログデジタル変換部150がデジタル演算部110と同じ第1基板に配置されていたが、本発明のシミュレーション装置10は、この場合に限られない。また、上述した
図2および
図7に示される例では、デジタル演算部110として1つのFPGAが設けられている場合が示されたが、本発明のシミュレーション装置10は、この場合に限られない。本例においては、シミュレーション装置10は、デジタル演算部110に加えて、他のデジタル演算部162、164を含む。
【0060】
図8に示される例では、デジタル演算部110、デジタル演算部162、およびデジタル演算部164が相互に通信可能に接続されている。一例において、デジタル演算部110は、FPGA等のプログラム可能な集積回路で構成されてよい。デジタル演算部162およびデジタル演算部164はデジタル信号処理装置(DSP)であってよい。
【0061】
デジタル演算部110は、
図2および
図7で説明した構成と同様である。一例において、デジタル演算部162は、LAN(ローカルエリアネットワーク)により管理システムとの通信インタフェースの処理を実行する。一例において、デジタル演算部164は、発電機制御等の数式演算を実行する。また、デジタル演算部110は、アナログ入力端子、アナログ出力端子、デジタル入力端子、およびデジタル出力端子を備えてよい。アナログ入力端子からはアナログ信号が入力される。入力されたアナログ信号は、アナログデジタル変換部175によってデジタル値に変換されてデジタル演算部110に入力される。アナログ出力端子には、デジタル演算部110からのデジタル信号がデジタルアナログ変換部176によってアナログ値に変換されて外部に出力される。例えば、アナログ計測器をアナログ入力端子およびアナログ出力端子に接続することもできる。
【0062】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【解決手段】シミュレーション装置は、電力設備を模擬するデジタル演算部と、デジタル演算部の出力に応じたアナログ電流およびアナログ電圧をアナログモデルに出力する出力回路と、デジタル演算部と出力回路とを収容する一つの筐体と、を備える。シミュレーション装置は、デジタル演算部の出力を調整してデジタルアナログ変換部に入力するデジタル増幅部を含んでいる。