特許第6822553号(P6822553)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6822553分析デバイス、コントローラ及び分析システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6822553
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】分析デバイス、コントローラ及び分析システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/00 20060101AFI20210114BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   G01N30/00 Z
   G01N35/00 E
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-512156(P2019-512156)
(86)(22)【出願日】2017年4月14日
(86)【国際出願番号】JP2017015345
(87)【国際公開番号】WO2018189893
(87)【国際公開日】20181018
【審査請求日】2019年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】横井 祐介
【審査官】 倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/198389(WO,A1)
【文献】 特開2015−219039(JP,A)
【文献】 特開2013−250804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00,
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分析デバイスと、前記分析デバイスを制御するコントローラとを備える分析システムにおける、前記分析デバイスであって、
当該分析デバイスは、すべての電力消費部分への電源供給のオン・オフを切り替えるための主電源スイッチ、及び、前記主電源スイッチとは別に設けられ、当該分析デバイスの電源オン状態とソフトウェア電源オフ状態とをソフトウェア的に切り替えるユーザ操作に基づくユーザ電源指示が前記コントローラを介することなく入力される電源指示入力部を独自に備えたモジュールであり、
前記コントローラとの間で通信を行なうための通信部と、
前記通信部を介して前記コントローラから送信される電源オン状態とソフトウェア電源オフ状態とを切替える指示に基づいて、当該分析デバイスの電源オン状態とソフトウェア電源オフ状態とをソフトウェア的に切り替えるように構成された電源制御部と、を備えた分析デバイス。
【請求項2】
前記コントローラと当該分析デバイスとの間で通信が確立しているか否かを判断する通信状態確認部と、
前記通信状態確認部により前記コントローラと当該分析デバイスとの間の通信が確立していると判断されているときに前記ユーザ電源指示を無効化し、前記通信状態確認部により前記コントローラと当該分析デバイスとの間の通信が確立していないと判断されたときは、前記ユーザ電源指示を有効化するように構成された有効・無効切替部をさらに備えている請求項1に記載の分析デバイス。
【請求項3】
発光部をさらに備え、
前記ユーザ電源指示が有効化されているときは前記発光部を点灯させ、前記ユーザ電源指示が無効化されているときは前記発光部を消灯させるように構成されている請求項2に記載の分析デバイス。
【請求項4】
当該分析デバイスにおけるエラーの発生を検知するエラー検知部をさらに備え、
前記有効・無効切替部は、前記エラー検知部がエラーを検知したときに、当該エラーが予め定義された重度のエラーに該当する場合を除き、前記ユーザ電源指示を有効化するように構成されている請求項2又は3に記載の分析デバイス。
【請求項5】
前記有効・無効切替部は、前記エラー検知部が検知したエラーが前記重度のエラーに該当するときは前記ユーザ電源指示を無効化するように構成されている請求項4に記載の分析デバイス。
【請求項6】
前記分析デバイスは、前記コントローラが電源オン状態になることに連動して電源オン状態になり、前記コントローラがソフトウェア電源オフ状態になることに連動してソフトウェア電源オフ状態になるように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の分析デバイス。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の分析デバイスと、前記分析デバイスを制御するコントローラとを備える分析システムであって、
前記コントローラが、
前記分析デバイスとの間で通信を行なうための通信部と、
当該コントローラが電源オン状態にされたときに、前記通信部を介して当該コントローラとの間で通信が確立している前記分析デバイスに対し当該分析デバイスを電源オン状態に切替える指示を送信し、当該コントローラがソフトウェア電源オフ状態にされたときに、前記通信部を介して当該コントローラと通信が確立している前記分析デバイスに対して、前記分析デバイスをソフトウェア電源オフ状態に切替える指示を送信する電源指示送信部と、を備えている、分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析デバイス、コントローラ及びその分析デバイスとコントローラで構成される分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液体クロマトグラフは主に、オートサンプラ、ポンプ、オーブン、検出器といったモジュールと、それらのモジュールを統合して制御するコントローラからなる。コントローラは大きな機構をもたないため、他のモジュールの内部に格納されることもある。このように、複数のモジュールとコントローラが組み合わされることによって、1つの分析システムが構成されている。
【0003】
このような分析システムを構成する各モジュールとして、電源の起動・シャットダウンをソフトウェア的に行なう機能を独自にもつもの(以下、これを分析デバイスと称する。)が用いられる場合がある(特許文献1参照。)。このような分析デバイスは、単体で使用したり他の分析システムに組み込んで使用したりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−80466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
独自に電源機能をもつ分析デバイスとコントローラによって分析システムが構築されている場合、分析システム全体を起動させたりシャットダウンさせたりするためには、コントローラとは別にその分析システムに組み込まれている分析デバイスの電源を起動させたりシャットダウンさせたりする必要があった。そのため、分析システムに組み込まれている分析デバイスの数が多ければ多いほど、分析システム全体の起動やシャットダウン時の操作が煩雑なものとなっていた。
【0006】
そこで、本発明は、1又は複数の分析デバイスとコントローラによって構成される分析システムの電源管理の利便性を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る分析デバイスは、1又は複数の分析デバイスと、前記分析デバイスを制御するコントローラとを備える分析システムにおける、前記分析デバイスである。当該分析デバイスは、前記コントローラとの間で通信を行なうための通信部と、前記通信部を介して前記コントローラから送信される電源オン状態とソフトウェア電源オフ状態とを切替える指示に基づいて、当該分析デバイスの電源オン状態とソフトウェア電源オフ状態とをソフトウェア的に切り替えるように構成された電源制御部と、を備えている。
【0008】
すなわち、本発明に係る分析デバイスは、分析デバイスとコントローラとの間の通信が確立しているとき、すなわち分析デバイスが分析システムに組み込まれているときには、そのコントローラによって分析デバイスの電源オン状態とソフトウェア電源オフ状態の切替えを行なうことができるように構成されている。
【0009】
本発明において、分析デバイスを「ソフトウェア電源オフ状態」にすることは、分析デバイスの主電源をオフにすることとは異なる概念である。「ソフトウェア電源オフ状態」とは、主電源はオンの状態であるが、その分析デバイスにおいて電力を消費する部分(以下、動作部という。)の一部又はすべてを停止させ、その分析デバイスにおける消費電力を抑制した状態をいう。本明細書中においては、分析デバイスを電源オン状態にすることを「起動する」、分析デバイスをソフトウェア電源オフ状態にすることを「シャットダウンする」ともいう。
【0010】
本発明の分析デバイスは、当該分析デバイスの電源オン状態とソフトウェア電源オフ状態とをソフトウェア的に切り替えるユーザ操作に基づくユーザ電源指示がコントローラを介することなく入力される電源指示入力部を独自に備えていてもよい。電源指示入力部とは、例えば、ユーザが押下することによって分析デバイスを電源オン状態又はソフトウェア電源オフ状態に切り替えるための電源ボタンや、そのリモコンから送信される信号を受信するための受信部など、コントローラを介さずにユーザによってなされた電源指示を入力するものである。このような電源指示入力部を分析デバイスが独自に備えていると、分析システムの動作中にユーザが誤って一部の分析デバイスのみをシャットダウンさせてしまうという事態も起こり得る。
【0011】
そこで、本発明の分析デバイスでは、前記コントローラと当該分析デバイスとの間で通信が確立しているか否かを判断する通信状態確認部と、前記通信状態確認部により前記コントローラと当該分析デバイスとの間の通信が確立していると判断されているときに前記ユーザ電源指示を無効化し、前記通信状態確認部により前記コントローラと当該分析デバイスとの間の通信が確立していないと判断されたときは前記ユーザ電源指示を有効化するように構成された有効・無効切替部をさらに備えていることが好ましい。そうすれば、分析デバイスとコントローラとの間の通信が確立しているときには、ユーザ操作による分析デバイス単体への電源指示が無効となるため、ユーザがその分析デバイスのみをシャットダウンすることができなくなる。
【0012】
上記の場合、分析デバイスは発光部をさらに備え、前記ユーザ電源指示が有効化されているときは前記発光部を点灯させ、前記ユーザ電源指示が無効化されているときは前記発光部を消灯させるように構成されていることが好ましい。そうすれば、発光部の点灯状態によって、ユーザ操作による分析デバイス単体への電源指示が有効であるか無効であるかを視覚的に認識することができる。
【0013】
また、単体で使用可能な分析デバイスは、自身におけるエラーの発生を検知するエラー検知部を備えている場合が多い。分析システムを構成する一部の分析デバイスでエラーが発生した場合、エラーの検知された分析デバイスからのエラー信号を受けてコントローラが分析システムにエラーがあることを認識し、通常は、分析システム全体の動作を停止させることになる。このような場合、エラーの発生した分析デバイス以外の分析デバイスによって分析動作を続行することができるような場合もあるが、分析システムのネットワーク上にエラーを発する分析デバイスが存在するため、分析システムとして動作を続行することができない。また、エラーの種類によってはその分析デバイスを再起動(一時的にソフトウェア電源オフ状態にしてから再度起動すること)すれば回復可能なものもあるが、本発明では、コントローラとの間の通信が確立されている分析デバイスの電源オン状態・ソフトウェア電源オフ状態の切替えはコントローラによって一元的に管理されている。そのため、エラーの発生した分析デバイスを再起動させたい場合には、コントローラによって分析システム全体を再起動させなければならなくなるという事態が生じる。
【0014】
そこで、本発明の好ましい実施形態では、前記有効・無効切替部が、前記エラー検知部がエラーを検知したときにユーザ電源指示を有効化するように構成されている。そうすれば、分析デバイスが分析システムに組み込まれていても、その分析デバイスにおいてエラーが発生したときには、ユーザ操作による分析デバイス単体への電源指示が有効となるため、エラーの発生した分析デバイスをシャットダウンさせたり再起動させたりすることができる。
【0015】
さらに、前記有効・無効切替部は、前記エラー検知部が検知したエラーが所定の重度のエラーであるときはユーザ電源指示を無効化するように構成されていてもよい。ここでの「重度のエラー」とは、その分析デバイスの再起動によっては回復しないようなエラーをいう。そのような場合に電源指示入力部に入力されるユーザ操作に基づく指示を無効化することで、ユーザにその分析デバイスの主電源を切ることを促すことができる。
【0016】
本発明に係るコントローラは、1又は複数の分析デバイスと、前記分析デバイスを制御するコントローラとを備える分析システムにおける、前記コントローラである。当該コントローラは、前記分析デバイスとの間で通信を行なうための通信部と、当該コントローラが電源オン状態にされたときに、前記通信部を介して当該コントローラとの間で通信が確立している前記分析デバイスに対し当該分析デバイスを電源オン状態に切替える指示を送信し、前記コントローラが電源オフ状態にされたときに、前記通信部を介して当該コントローラと通信が確立している前記分析デバイスに対して、前記分析デバイスをソフトウェア電源オフ状態に切替える指示を送信する電源指示送信部とを備えている。
【0017】
本発明に係る分析システムは、上述の分析デバイスとコントローラとを備えたものである。その場合、分析デバイスを複数備えていてもよい。従来では、分析システムを構成する分析デバイスの数が多いほど電源管理が煩雑なものとなっていたが、本発明ではコントローラによって一元的にシステム全体の電源管理を行なうことができるため、分析デバイスの数がいくつであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る分析デバイスは、分析デバイスとコントローラとの間の通信が確立しているときはそのコントローラからの信号によっても分析デバイスの電源オン状態とソフトウェア電源オフ状態の切替えを行なうことができるので、分析システムを構成している分析デバイスの電源管理をコントローラを介して一元的に行なうことができ、分析システム全体の電源管理の利便性が向上する。
【0019】
本発明に係るコントローラは、当該コントローラが電源オン状態にされたときに、前記通信部を介して当該コントローラとの間で通信が確立している前記分析デバイスに対し当該分析デバイスを電源オン状態に切替える指示を送信し、前記コントローラが電源オフ状態にされたときに、前記通信部を介して当該コントローラと通信が確立している前記分析デバイスに対して、前記分析デバイスをソフトウェア電源オフ状態に切替える指示を送信する電源指示送信部を備えているので、当該コントローラとの間で通信が確立している分析デバイスの電源管理を当該コントローラを介して一元的に行なうことができる。
【0020】
本発明に係る分析システムは、上記の分析デバイスの電源オン状態とソフトウェア電源オフ状態の切替えをコントローラによって一元的に制御することができるので、分析システム全体の電源管理が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】分析システムの一実施例を概略的に示すブロック図である。
図2】同実施例のコントローラ及び分析デバイスの構成を示すブロック図である。
図3】同実施例の分析デバイスのソフトウェア電源ボタン機能の制御を示すフローチャートである。
図4】同実施例の分析システム起動時の動作を示すフローチャートである。
図5】同実施例の分析システム終了時の動作を示すフローチャートである。
図6】同実施例の分析デバイスにおいてエラーが発生したときの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る分析デバイス及び分析システムの一実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
分析システムの概略的構成について、図1を用いて説明する。
【0024】
この実施例の分析システム1は、複数の分析デバイス2、コントローラ4及び演算処理装置6を備えている。各分析デバイス2はコントローラ4と電気的に接続され、コントローラ4との間で電気的な通信を行なうことができる。演算処理装置6はコントローラ4と電気的に接続されており、コントローラ4との間で電気的な通信を行なうことができる。
【0025】
コントローラ4は、各分析デバイス2の状態や動作を一元的に管理するためのものであり、例えばシステムコントローラのような専用のコンピュータ又はパーソナルコンピュータのような汎用のコンピュータによって実現される。演算処理装置6は、ユーザによって入力された分析条件等の情報に基づいてコントローラ4を介して分析システム1全体の動作管理を行なう機能のほか、分析によって得られた分析データに基づいて種々の演算処理を行なう機能を有するものである。演算処理装置6は、専用のコンピュータ又は汎用のパーソナルコンピュータによって実現される。
【0026】
なお、この実施例では、コントローラ4と演算処理装置6が別々の要素として記載されているが、演算制御装置6がコントローラ4の機能を兼ね備えるなどしてコントローラ4と演算制御装置6が単一の要素となっていてもよい。
【0027】
次に、分析デバイス2及びコントローラ4の構成の一例について、図2を用いて説明する。なお、図2では1つの分析デバイス2のみを示している。
【0028】
分析デバイス2とコントローラ4はそれぞれ互いに通信を行なうための通信部2aと4aを備えており、互いの通信部2a及び4aが通信ケーブル又は無線の通信手段によって電気的に接続されている。分析デバイス2の通信部2aには制御部14が接続され、コントローラ4の通信部4aには制御部30がされており、制御部14と制御部30との間で信号の送受信がなされるようになっている。制御部14と制御部30は、マイクロコンピュータなどの演算素子を有する電子回路によって実現される。
【0029】
コントローラ4には、制御部30のほかに、電源部26、表示部28及びソフトウェア電源ボタン32が設けられている。ソフトウェア電源ボタン32は、ユーザが押下することによってコントローラ4を電源オン状態にしたりソフトウェア電源オフ状態にしたりするためのものである。電源部26は表示部28や制御部30へ電力を供給するものである。
【0030】
以下において、分析デバイス2やコントローラ4を電源オン状態にすることを「起動する」、ソフトウェア電源オフ状態にすることを「シャットダウンする」ともいう。
【0031】
コントローラ4の起動・シャットダウンは、コントローラ4と接続された演算処理装置6(図1を参照。)によって制御できるようになっていてもよい。
【0032】
コントローラ4の制御部30は電源指示送信部31を備えている。電源指示送信部31は、コントローラ4が起動したときにコントローラ4との間で通信が確立している分析デバイス2に対して起動指示を送信し、コントローラ4がシャットダウンしたときにコントローラ4の間で通信が確立している分析デバイス2に対してシャットダウン指示を送信する。
【0033】
分析デバイス2は、制御部14のほかに、電源部8、動作部12、及びソフトウェア電源ボタン22を備えている。ソフトウェア電源ボタン22は発光部としての発光ダイオード(LED)24を備えている。電源部8は動作部12、制御部14、及びLED24に対して必要な電力を供給するものである。電源部8は主電源スイッチ10を備えており、ユーザが主電源スイッチ10を切ることで、電源部8から動作部12、制御部14、及びLED24に対するすべての電力供給が遮断される。
【0034】
動作部12は分析デバイス2において電力を消費する主な部分である。例えば、分析デバイス2が液体クロマトグラフ用のオートサンプラである場合には、ロータリー式の切替バルブを切り替えるためのモータや、サンプリング用のニードルを移動させるためのモータ、液の吸入や吐出を行なうポンプを駆動するためのモータなどが動作部12として挙げられる。また、分析デバイス2が液体クロマトグラフの分析カラムの温度調節を行なうためのカラムオーブンである場合には、ヒータやファンなどが動作部12として挙げられる。
【0035】
ソフトウェア電源ボタン22は電源部8の主電源スイッチ10とは別に設けられた電源スイッチであり、ユーザが押下することによって分析デバイス2を電源オン状態とソフトウェア電源オフ状態のいずれかの状態に切り替えるためのものである。ソフトウェア電源オフ状態とは、主電源スイッチ10はオンになっているが、動作部12の稼働を停止させて分析デバイス2における消費電力を低く抑制する状態である。
【0036】
ソフトウェア電源ボタン22は、分析デバイス2を電源オン状態又はソフトウェア電源オフ状態に切り替えるユーザ操作に基づく指示(以下、これをユーザ電源指示という。)が、コントローラ4を介することなく入力される電源指示入力部を実現するものである。この実施例では、ユーザがソフトウェア電源ボタン22を押下することがユーザ操作に相当する。
【0037】
後述するが、分析デバイス2が分析システム1内に組み込まれていないような場合には、ユーザ電源指示が有効になり、ユーザがソフトウェア電源ボタン22を押下することによって分析デバイス2を起動させたりシャットダウンさせたりすることができる。すなわち、ユーザ電源指示が有効な場合、ユーザによってソフトウェア電源ボタン22が押下されると、その旨の信号が制御部14に取り込まれ、その信号に基づいて制御部14が分析デバイス2を起動させたりシャットダウンさせたりするようになっている。
【0038】
制御部14が分析デバイス2をシャットダウンさせる方法としては、動作部12の動作を停止させて動作部12における消費電力を抑制する方法と、図において破線で示されているように、電源部8を制御して電源部8から動作部12への供給電力を抑制する方法と、が挙げられ、本発明ではいずれの方法を採用してもよい。
【0039】
制御部14は、コントローラ4からの命令信号に従って動作部12の動作を制御するように構成されている。制御部14はさらに、通信状態確認部16、電源制御部18、有効・無効切替部19、及びエラー検知部20を備えている。通信状態確認部16、電源制御部18、有効・無効切替部19及びエラー検知部20は、制御部14を構成する演算素子がプログラムを実行することによって得られる機能である。
【0040】
通信状態確認部16は、コントローラ4との間の通信が確立しているか否かを一定時間ごとに確認するように構成されている。通信状態は、例えば分析デバイス2の制御部14からコントローラ4の制御部30へ一定時間ごとに信号を送信し、制御部30から応答信号が返ってくるか否かによって確認することができる。また、コントローラ4の制御部30が一定時間ごとに信号を送信し、制御部14がその信号を受信しているか否かによっても確認することができる。
【0041】
電源制御部18は、ユーザ電源指示が有効なときはソフトウェア電源ボタン22で生成される信号に基づいて、分析デバイス2とコントローラ4との間の通信が確立しているときには、コントローラ4からの起動・シャットダウンの指示に基づいて、分析デバイス2を起動又はシャットダウンさせるように構成されている。ユーザ電源指示が有効か無効を切り替えるのは有効・無効切替部19である。
【0042】
有効・無効切替部19は、分析デバイス2においてエラーが発生した場合を除き、通信状態確認部16によってコントローラ4との間の通信が確立していることが確認されたときはユーザ電源指示を無効化し、通信状態確認部16によってコントローラ4との間の通信が確立していることが確認されないときはユーザ電源指示を有効化するように構成されている。
【0043】
有効・無効切替部19は、ユーザ電源指示が有効化されているときはLED24を点灯させ、ユーザ電源指示が無効化されているときはLED24を消灯させるように構成されている。これにより、ユーザ電源指示が有効となっているか無効となっているかを、ユーザが視覚的に容易に認識することができる。
【0044】
エラー検知部20は、分析デバイス2におけるエラーの発生を検知し、エラー信号を生成するように構成されている。エラー検知部20により生成されたエラー信号はコントローラ4の制御部30にも取り込まれるようになっており、ユーザはコントローラ4側でどの分析デバイス2においてエラーが発生しているかを認識することができる。
【0045】
有効・無効切替部19は、分析デバイス2とコントローラ4との間の通信が確立している状態でエラー検知部20がエラーを検知した場合、そのエラーが重度のエラー(フェイタルエラーともいう。)である場合を除いて、ユーザ電源指示を有効化するように構成されている。ユーザ電源指示を有効化することで、ユーザがエラーの発生した分析デバイス2のソフトウェア電源ボタン22を押下することによって、エラーの発生した分析デバイス2のみをシャットダウンさせたり再起動させたりすることができる。ユーザ電源指示を有効化させるときはLED24に電力を供給してそのソフトウェア電源ボタン22を点灯させ、ユーザにソフトウェア電源ボタン22を押下することによるユーザ電源指示が有効であることを認識させる。
【0046】
有効・無効切替部19は、分析デバイス2で発生したエラーがフェイタルエラーである場合、ユーザ電源指示を無効にするように構成されている。ユーザは、コントローラ4(若しくは演算処理装置6(図1を参照。))を介してエラーが発生している分析デバイス2を知ることができるので、エラーの発生している分析デバイス2をシャットダウンさせることを考える。しかし、フェイタルエラーの場合はユーザ電源指示が無効となるため、ソフトウェア電源ボタン22の押下によってその分析デバイス2をシャットダウンさせることが不可能となる。これにより、ユーザに対して主電源スイッチ10による分析デバイス2の強制終了を促すことができる。
【0047】
以上において説明した機能による分析システム1の動作について、図2とともに図3図4及び図5のフローチャートを用いて説明する。
【0048】
図3に示されているように、分析デバイス2では、制御部14の通信状態確認部16がコントローラ4との間の通信状態を一定時間ごとに確認し(ステップS1)、通信が確立している場合には、有効・無効切替部19がユーザ電源指示を無効化し(ステップS2、S3)、LED24を消灯させる(ステップS4)。コントローラ4との間の通信状態が確立されていない場合は、有効・無効切替部19がユーザ電源指示を有効化し(ステップS2、S5)、LED24を点灯させる(ステップS6)。
【0049】
分析デバイス2が分析システム1に組み込まれてコントローラ4との間の通信が確立されている状態では、図4に示されているように、コントローラ4を起動させると起動指示がコントローラ4から分析デバイス2へ送信される(ステップS11)。起動指示を受けた分析デバイス2の電源制御部18はその起動指示に基づいて分析デバイス2を起動させ(ステップS12)、その分析デバイス2が電源オン状態となる(ステップS12)。
【0050】
逆に、図5に示されているように、コントローラ4をシャットダウンさせると、制御部30の電源指示送信部31は分析デバイス2に対してシャットダウン指示を送信し(ステップS21)、自身はソフトウェア電源オフ状態となる(ステップS22)。シャットダウン指示を受けた分析デバイス2の電源制御部18はその分析デバイス2をシャットダウンさせ(ステップS23)、その分析デバイス2はソフトウェア電源オフ状態となる(ステップS24)。
【0051】
上記の機能によって、分析デバイス2が分析システム1に組み込まれているときには、ユーザがソフトウェア電源ボタン22を押下しても、その分析デバイス2のみを起動させたりシャットダウンさせたりすることができなくなり、コントローラ4の起動・シャットダウンに連動して分析デバイス2が起動・シャットダウンを行なうようになる。これにより、ユーザはコントローラ4を介して分析システム1全体の電源管理を一元的に行なうことができる。
【0052】
また、図6に示されているように、ある分析デバイス2のエラー検知部20がエラーを検知したときは、その分析デバイス2からコントローラ4に対してエラー信号が送信される(ステップS31)。エラー信号を受けたコントローラ4は分析システムの動作を停止させ(ステップS32)、表示部28やコントローラ4に接続されている演算処理装置6(図1を参照。)の表示部(図示は省略)にエラーの検知された分析デバイス2を表示させる(ステップS33)。
【0053】
エラーの検知された分析デバイス2ではそのエラーが所定のフェイタルエラーであるか否かが判断される(ステップS34)。フェイタルエラーであるか否かは、例えば分析デバイス2の制御部14内にフェイタルエラーリストが用意されており、検知されたエラーがそのフェイタルエラーリスト内にあるか否かによって判断することができる。
【0054】
そのエラーがフェイタルエラーである場合、有効・無効切替部19は、その分析デバイス2に対するユーザ電源指示を無効にしてLED24を消灯させ(ステップS35)、ユーザにその分析デバイス2の主電源スイッチ10による強制終了を行なうように促す。他方、エラーがフェイタルエラーでない場合、有効・無効切替部19は、その分析デバイス2に対するユーザ電源指示を有効にしてLED24を点灯させ(ステップS36、S37)、ユーザにその分析デバイス2のソフトウェア電源ボタン22を押下することによってシャットダウン又は再起動をするように促す。
【符号の説明】
【0055】
1 分析システム
2 分析デバイス
2a,4a 通信部
4 コントローラ
6 演算処理装置
8,26 電源部
10 主電源スイッチ
12 動作部
14 制御部
16 通信状態確認部
18 電源制御部
19 有効・無効切替部
20 エラー検知部
22,32 ソフトウェア電源ボタン(電源指示入力部)
24 LED
28 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6