(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0020】
図1は、実施形態の漏電検知回路の一例を示す図である。
【0021】
直流電源Pは、直列接続される複数の電池(例えば、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池)により構成される高圧バッテリであって、ハイブリッド車や電気自動車などの車両に搭載され、走行用モータを駆動するインバータ回路や直流電源Pの状態を監視する監視回路などの負荷Loに電力を供給する。
【0022】
漏電検知回路1は、直流電源Pと車両のボディアースとの間にある絶縁抵抗Riの抵抗値の低下を検知する。
図1に示す例では、漏電検知回路1は、直流電源Pのマイナス端子に接続されるグランドラインGLと車両のボディアースBEとの間に仮想的に設けられる絶縁抵抗Riの抵抗値の低下を検知する。
【0023】
また、漏電検知回路1は、発振回路2と、カップリングコンデンサCcと、検出抵抗Rdと、記憶部3と、検知部4とを備える。
【0024】
発振回路2は、ボディアースBEに接続され、矩形波などの発振信号SをグランドラインGLとボディアースBEとの間に出力する。
【0025】
カップリングコンデンサCcは、グランドラインGLに接続される。
【0026】
検出抵抗Rdは、発振回路2とカップリングコンデンサCcとの間に接続される。
【0027】
記憶部3は、例えば、RAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)などにより構成される。
【0028】
検知部4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、またはプログラマブルなデバイス(FPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device))などにより構成され、カップリングコンデンサCcと検出抵抗Rdとの間に接続される。なお、カップリングコンデンサCcと検出抵抗Rdとの接続点と、検知部4との間にローパスフィルタまたはバンドパスフィルタなどのフィルタを接続してもよい。
【0029】
また、検知部4は、検出抵抗Rdにかかる電圧Vdが入力される。すなわち、発振回路2から出力される発振信号Sが、絶縁抵抗Ri、絶縁抵抗Riに並列接続される浮遊容量Cf、カップリングコンデンサCc、及び検出抵抗Rdにより構成されるローパスフィルタLPFに入力され、そのローパスフィルタLPFから出力される信号が電圧Vdとして検知部4に入力される。
【0030】
図2(a)は、ローパスフィルタLPFの周波数特性を示す図である。
図2(a)に示す2次元座標系の横軸は発振信号Sの周波数[Hz]を示し、縦軸は発振信号Sの波高値に対する電圧Vdの波高値の比率(電圧Vdの波高値/発振信号Sの波高値)、すなわち、ローパスフィルタLPFのゲイン[dB]を示している。
【0031】
図2(a)に示す通過域とは、ローパスフィルタLPFのゲインが「ゼロ」になるときの発振信号Sの周波数の最小値から最大値までの範囲である。言い換えると、ローパスフィルタLPFの通過域は、電圧Vdの波高値が発振信号Sの波高値と同じになるときの発振信号Sの周波数の最小値から最大値までの範囲である。
【0032】
発振信号Sの周波数がローパスフィルタLPFの通過域内の第1の周波数f1になるように発振回路2の動作が制御される場合、電圧Vdに含まれるノイズ(ローパスフィルタLPFのカットオフ周波数よりも高い周波数成分)が小さくなる。
【0033】
図2(a)に示す減衰域とは、ローパスフィルタLPFのゲインが「ゼロ」よりも低くなるときの発振信号Sの周波数の最小値から最大値までの範囲である。言い換えると、ローパスフィルタLPFの減衰域は、電圧Vdの波高値が発振信号Sの波高値よりも小さくなるときの発振信号Sの周波数の最小値から最大値までの範囲である。
【0034】
発振信号Sの周波数がローパスフィルタLPFの減衰域内の第2の周波数f2になるように発振回路2の動作が制御される場合、ローパスフィルタLPFを構成する絶縁抵抗Ri、浮遊容量Cf、検出抵抗Rd、及びカップリングコンデンサCcの影響を受けてローパスフィルタLPFのゲインが「ゼロ」よりも小さい「G」に下るため、発振信号Sの周波数がローパスフィルタLPFの通過域内の第1の周波数f1になるように発振回路2の動作が制御される場合に比べて、電圧Vdの波高値が低くなる。なお、第2の周波数f2>第1の周波数f1とする。
【0035】
また、発振信号Sの周波数が第2の周波数f2になるように発振回路2の動作が制御される場合において、少なくとも浮遊容量Cfの容量値が増加することで、ローパスフィルタLPFの周波数特性が実線で示される周波数特性から破線で示される周波数特性に変化する場合、ローパスフィルタLPFのゲインが「G」から「G´」にさらに下るため、浮遊容量Cfの容量値の増加に伴って電圧Vdの波高値がさらに低下する。なお、「G」>「G´」とする。
【0036】
すなわち、絶縁抵抗Riの抵抗値、検出抵抗Rdの抵抗値、及びカップリングコンデンサCcの容量値がそれぞれ変動しない場合において、発振信号Sの周波数が第2の周波数f2になるように発振回路2の動作を制御することにより、浮遊容量Cfの増加後の容量値と、浮遊容量Cfの容量値の増加に伴う電圧Vdの低下後の波高値とを一対一で対応付けることができる。
【0037】
実施形態では、絶縁抵抗Riの抵抗値、検出抵抗Rdの抵抗値、及びカップリングコンデンサCcの容量値がそれぞれ変動しない場合で、かつ、発振信号Sの周波数が第2の周波数f2になるように発振回路2の動作を制御している場合において、電圧Vdの波高値と浮遊容量Cfの容量値との対応関係を示す情報D1を、実験またはシミュレーションなどにより求めて記憶部3に記憶させておく。
【0038】
また、絶縁抵抗Riの抵抗値、検出抵抗Rdの抵抗値、及びカップリングコンデンサCcの容量値がそれぞれ変動しない場合において、発振信号Sの周波数が第2の周波数f2になるように発振回路2の動作を制御することにより、工場出荷時など浮遊容量Cfの容量値が初期値C0であるときの電圧Vdの波高値と、浮遊容量Cfの容量値が初期値C0よりも大きい値に増加したときの電圧Vdの波高値との差である補正値と、その増加後の容量値とを一対一で対応付けることができる。
【0039】
実施形態では、絶縁抵抗Riの抵抗値、検出抵抗Rdの抵抗値、及びカップリングコンデンサCcの容量値がそれぞれ変動しない場合で、かつ、発振信号Sの周波数が第2の周波数f2になるように発振回路2の動作を制御している場合において、浮遊容量Cfの容量値と補正値との対応関係を示す情報D2を、実験またはシミュレーションなどにより求めて記憶部3に記憶させておく。
【0040】
ここで、
図2(b)に示すように、浮遊容量Cfの容量値が初期値C0であるときの電圧Vd(実線の波形)の波高値[V]を「V0」とし、浮遊容量Cfの容量値が初期値C0よりも大きい「C1」であるときの電圧Vd(破線の波形)の波高値を「V1」とし、浮遊容量Cfの容量値が「C1」よりも大きい「C2」であるときの電圧Vd(一点鎖線の波形)の波高値を「V2」とする場合を想定する(V0>V1>V2)。なお、発振信号Sの周波数は第2の周波数f2に切り替えられているものとする。また、特許請求の範囲に記載される波高値は、電圧Vdの波高値であるだけでなく、ゲイン[dB]=電圧Vdの波高値[V]/発振信号Sの波高値[V]を計算することにより求められるゲイン[dB]であってもよい。
【0041】
このように想定される場合、
図2(c)に示すように、電圧Vdの波高値としての「V1」と、浮遊容量Cfの容量値としての「C1」とが互いに対応付けられ、電圧Vdの波高値としての「V2」と、浮遊容量Cfの容量値としての「C2」とが互いに対応付けられた情報D1が記憶部3に記憶される。
【0042】
また、
図2(d)に示すように、浮遊容量Cfの容量値としての「C1」と、補正値としての「Vc1」とが互いに対応付けられ、浮遊容量Cfの容量値としてのC2と、補正値としての「Vc2」とが互いに対応付けられた情報D2が記憶部3に記憶される。なお、「Vc1」=「V0」−「V1」とし、「Vc2」=「V0」−「V2」とする(Vc2>Vc1)。
【0043】
これにより、閾値設定処理時、電圧Vdが「V2」であった場合、情報D1を参照して、「V2」に対応する「C2」を、浮遊容量Cfの容量値として求めることができる。また、情報D2を参照して、求めた「C2」に対応する「Vc2」を、補正値として求めることができる。
【0044】
図3は、検知部4の動作を示すフローチャートである。なお、検知部4は、漏電検知タイミングになると、閾値設定処理時において、ステップS1〜ステップS4の処理を行い、次に、漏電検知時において、ステップS5〜ステップS9の処理を行うものとする。
【0045】
まず、ステップS1において、検知部4は、発振信号Sの周波数が第2の周波数f2になるように発振回路2の動作を制御する。
【0046】
次に、ステップS2において、検知部4は、検出抵抗Rdにかかる電圧Vdを取得する。
【0047】
次に、ステップS3において、検知部4は、記憶部3に記憶されている情報D1を参照して、ステップS2で取得した電圧Vdの波高値に対応する浮遊容量Cfの容量値を求める。
【0048】
次に、ステップS4において、検知部4は、記憶部3に記憶されている情報D2を参照して、ステップS3で求めた浮遊容量Cfの容量値に対応する補正値を求めるとともに、その求めた補正値を閾値Vthから減算して新たな閾値Vthを求めることで、閾値Vthを補正する。なお、閾値Vthは、漏電になる直前の電圧Vdの波高値とする。
【0049】
次に、ステップS5において、検知部4は、発振信号Sの周波数が第1の周波数f1になるように発振回路2の動作を制御する。
【0050】
次に、ステップS6において、検知部4は、検出抵抗Rdにかかる電圧Vdを取得する。
【0051】
次に、検知部4は、ステップS6で取得した電圧Vdの波高値が閾値Vthよりも大きい場合(ステップS7:No)、ステップ8において、絶縁抵抗Riの抵抗値が低下していないと、すなわち、漏電が発生していないと判断する。
【0052】
一方、検知部4は、ステップS6で取得した電圧Vdの波高値が閾値Vth以下である場合(ステップS7:Yes)、ステップS9において、絶縁抵抗Riの抵抗値が低下していると、すなわち、漏電が発生していると判断する。
【0053】
このように、検知部4は、漏電検知時、発振信号Sの周波数が第1の周波数f1になるように発振回路2の動作を制御しているとき、電圧Vdの波高値が閾値Vth以下になると、絶縁抵抗Riの抵抗値の低下を検知する。
【0054】
また、検知部4は、閾値設定処理時、発振信号Sの周波数が第2の周波数f2になるように発振回路2の動作を制御しているとき、情報D1を参照して、電圧Vdの波高値に対応する浮遊容量Cfの容量値を求め、情報D2を参照して、浮遊容量Cfの容量値に対応する補正値を求め、閾値Vthから補正値を減算することにより閾値Vthを補正する。
【0055】
一例として、
図2(b)に示すように、浮遊容量Cfの容量値の増加の影響を受けて電圧Vdの波高値が「V0」から「V2」に低下する場合、
図2(c)に示す情報D1を参照して、「V2」に対応する「C2」を求め、
図2(d)に示す情報D2を参照して、「C2」に対応する「Vc2」を求め、閾値Vthから「Vc2」を減算する。なお、V0>V1>V2、C2>C1>C0、Vc2>Vc1の関係からわかるように、検知部4は、閾値設定処理時、検出抵抗Rdにかかる電圧Vdの波高値が低下するほど、閾値Vthを低下させる。言い換えると、浮遊容量Cfの容量値が増加するほど、閾値Vthを低下させる。さらに言い換えると、電圧Vdの第1の波高値に対応する第1の閾値は、第1の波高値より高い第2の波高値に対応する第2の閾値より小さい。さらに言い換えると、浮遊容量Cfの第1の容量値に対応する第1の閾値は、第1の容量値より小さい第2の容量値に対応する第2の閾値より小さい。
【0056】
これにより、浮遊容量Cfの容量値の増加に伴う電圧Vdの波高値の低下に合わせて、閾値Vthも低下させることができる。そして、この補正後の閾値Vthを用いて漏電しているか否かを判断することにより、浮遊容量Cfの容量値の変動に影響されずに、漏電検知処理を行うことができる。
【0057】
すなわち、実施形態の漏電検知回路1によれば、浮遊容量Cfの容量値の増加に伴って電圧Vdの波高値が低下する分、閾値Vthを下げることができるため、絶縁抵抗Riの抵抗値の低下よりも浮遊容量Cfの容量値の増加の影響を受けて検出抵抗Rdにかかる電圧Vdの波高値が低くなっているにもかかわらず、絶縁抵抗Riの抵抗値が小さいと誤検知してしまうことを抑えることができる。
【0058】
また、実施形態の漏電検知回路1は、情報D1を用いて浮遊容量Cfの容量値を求める構成であるため、発振信号Sの周波数、発振信号Sの波高値、検出抵抗Rdにかかる電圧の波高値、カップリングコンデンサCcの容量値、及び検出抵抗Rdの抵抗値を用いて計算により浮遊容量Cfの容量値を求める構成に比べて、漏電検知時の検知部4の負荷を抑えることができる。
【0059】
また、実施形態の漏電検知回路1は、閾値設定処理時、発振信号Sの周波数がローパスフィルタLPFの減衰域内の第2の周波数f2になるように発振回路2の動作を制御し、漏電検知時、発振信号Sの周波数が第2の周波数f2からローパスフィルタLPFの通過域内の第1の周波数f1に切り替わるように発振回路2の動作を制御している。このように、発振信号Sの周波数を第2の周波数f2から第1の周波数f1に切り替えることで、閾値設定処理時、浮遊容量Cfの増加後の容量値と、浮遊容量Cfの容量値の増加に伴う電圧Vdの低下後の波高値とを一対一で対応付けることができるとともに、漏電検知時、電圧Vdに含まれるノイズを小さくすることができる。
【0060】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0061】
例えば、補正値の求め方は、係数αを掛けてVc1=α(V0−V1)、Vc2=α(V0−V2)としても良い。発振信号Sの周波数が第2の周波数f2であるときの電圧Vdの波高値の差(Vc1=V0−V1)が、発振信号Sの周波数が第1の周波数f1であるときの電圧Vdの波高値の差に相当するのか換算することで係数αを求めることができる。
<変形例1>
図4は、実施形態の漏電検知回路の変形例1を示す図である。
【0062】
図4に示す漏電検知回路1において、
図1に示す漏電検知回路1と異なる点は、検出抵抗Rdよりも抵抗値が小さい検出抵抗Rd´と、検知部4により動作が制御される切替スイッチSWとをさらに備えている点である。すなわち、検出抵抗Rd´の一方の端子は検出抵抗Rdの一方の端子及びカップリングコンデンサCcと検知部4との接続点に接続され、検出抵抗Rd´の他方の端子は切替スイッチSWの第1の端子T1に接続されている。切替スイッチSWの第2の端子T2は検出抵抗Rdの他方の端子に接続され、切替スイッチSWの第3の端子T3は発振回路2に接続されている。
【0063】
図5は、変形例1における検知部4の動作を示すフローチャートである。なお、検知部4は、漏電検知タイミングになると、閾値設定処理時において、ステップS1´〜ステップS4の処理を行い、次に、漏電検知時において、ステップS5´〜ステップS9の処理を行うものとする。
【0064】
まず、ステップS1´において、検知部4は、切替スイッチSWの第1の端子T1と第3の端子T3とを互いに電気的に接続させることにより、発振回路2とカップリングコンデンサCcとの間に接続される検出抵抗として、検出抵抗Rdから検出抵抗Rd´に切り替える。
【0065】
次のステップS1〜ステップS4の各処理は、
図3に示すステップS1〜ステップS4の各処理と同じため、説明を省略する。
【0066】
次に、ステップS5´において、検知部4は、切替スイッチSWの第2の端子T2と第3の端子T3とを互いに電気的に接続して、発振回路2とカップリングコンデンサCcとの間に接続される検出抵抗として、検出抵抗Rd´から検出抵抗Rdに切り替える。
【0067】
次のステップS5〜ステップS9の各処理は、
図3に示すステップS5〜ステップS9の各処理と同じため、説明を省略する。
【0068】
このように、
図4に示す漏電検知回路1では、閾値設定処理時、ローパスフィルタLPFを構成する検出抵抗として、検出抵抗Rdから検出抵抗Rd´に切り替えているため、ローパスフィルタLPFを構成する検出抵抗の抵抗値を、漏電検出時の検出抵抗の抵抗値より下げることができる。
【0069】
ここで、絶縁抵抗Riの抵抗値の低下によるローパスフィルタLPFのカットオフ周波数の増大幅が、検出抵抗Rdの抵抗値が大きいほど大きくなる場合を想定する。
【0070】
このような場合において、閾値設定処理時に検出抵抗を切り替えないとき、絶縁抵抗Riの抵抗値が小さくなることで、ローパスフィルタLPFのカットオフ周波数が大きくなると、発振信号Sの周波数がローパスフィルタLPFのカットオフ周波数よりも小さくなり、発振信号Sの周波数がローパスフィルタLPFの減衰域から通過域に移動してしまい、閾値Vthを精度良く補正できなくなるおそれがある。
【0071】
一方、
図4に示す漏電検知回路1では、閾値設定処理時に検出抵抗を切り替えることで、ローパスフィルタLPFを構成する検出抵抗の抵抗値を下げることができる。そのため、絶縁抵抗Riの抵抗値の低下によるローパスフィルタLPFのカットオフ周波数の増大幅を小さくすることができるので、閾値設定処理時、発振信号Sの周波数がローパスフィルタLPFの減衰域から通過域に移動してしまうことを抑えることができる。これにより、閾値Vthの補正精度を高めることができ、漏電検知精度をより向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態の通過域と減衰域の定義について、実際には、電圧Vdの波高値は発振信号Sの周波数によって揺らぐため、通過域内においてローパスフィルタLPFのゲインが「ゼロ」にならない周波数もあるが、
図2(a)のローパスフィルタLPFの周波数特性を見たときに、明確にゲインが下がり始めるまでの領域を通過域、明確にゲインが下がり始めてからの領域を減衰域としても良い。また、工場出荷時のローパスフィルタLPFのカットオフ周波数より小さい周波数の領域を通過域、カットオフ周波数以上の周波数の領域を減衰域としても良い。
【0073】
また、本実施形態において、検知部4は、補正後の閾値Vthを求めるために、情報D1とD2を参照したが、それに限らず、
図6(a)に示すように、浮遊容量Cfの容量値と閾値Vthとが互いに対応付けられた情報D3を参照して、浮遊容量Cfに対応する閾値Vthを求めても良い。この場合、情報D3は記憶部3に記憶される。すなわち、検知部4は、情報D1を参照して、発振信号Sの周波数が第2の周波数f2になるように発振回路2の動作を制御しているときの電圧Vdの波高値に対応する浮遊容量Cfの容量値を求めた後、情報D3を参照して、その求めた容量値に対応する閾値Vthを求める。これにより、情報D1と情報D2を参照して補正値を求めた後、その補正値を用いて閾値Vthを補正する場合に比べて、浮遊容量Cfの容量値から閾値Vthを直接求めることができる分、閾値設定処理時の検知部4の計算量を低減することができる。
【0074】
また、検知部4は、
図6(b)に示すように、電圧Vdの波高値と補正値とが対応付けられた情報D4を参照して、電圧Vdの波高値に対応する補正値を求めても良い。この場合、情報D4は記憶部3に記憶される。なお、補正値を求めてから閾値Vthを補正するまでは本実施形態と同じである。すなわち、検知部4は、情報D4を参照して、発振信号Sの周波数が第2の周波数f2になるように発振回路2の動作を制御しているときの電池Vdの波高値に対応する補正値を求めた後、その求めた補正値を用いて補正後の閾値Vthを求める。これにより、情報D1と情報D2を参照して補正値を求めた後、その補正値を用いて閾値Vthを補正する場合に比べて、電圧Vdの波高値から補正値を直接求めることができる分、閾値設定処理時の検知部4の計算量を低減することができる。
【0075】
また、検知部4は、
図6(c)に示すように、電圧Vdの波高値と閾値Vthとが互いに対応付けられた情報D5を参照して、電圧Vdの波高値に対応する閾値Vthを求め、その求めた閾値Vthを新たな閾値としてもよい。すなわち、電圧Vdの波高値から閾値Vthを直接求めても良い。この場合、情報D5は記憶部3に記憶される。すなわち、検知部4は、情報D5を参照して、発振信号Sの周波数が第2の周波数f2になるように発振回路2の動作を制御しているときの電圧Vdの波高値に対応する閾値Vthを求める。これにより、情報D1と情報D2を参照して補正値を求めた後、その補正値を用いて閾値Vthを補正する場合に比べて、電圧Vdの波高値から閾値Vthを直接求めることができる分、閾値設定処理時の検知部4の計算量を低減することができる。
<変形例2>
図7は、実施形態の漏電検知回路の変形例2を示す図である。なお、
図1に示す構成と同じ構成には同じ符号を付し説明を省略する。
【0076】
図7に示す電流検出部5は、電流計などにより構成され、直流電源Pに直列接続され、直流電源Pに流れる電流を検出し、その検出結果を、車両の走行を制御する走行制御部6に送る。
【0077】
図7に示すスイッチSWは、電磁式リレーまたは半導体スイッチなどにより構成され、直流電源Pと負荷Loとの間に直列接続されている。なお、スイッチSWは、直流電源PとグランドラインGLとの間に接続されてもよい。
【0078】
また、スイッチSWは、走行制御部6によりオン、オフが制御される。スイッチSWがオンしているとき、直流電源Pと負荷Loとが導通し、直流電源Pに電流が流れる状態になる。スイッチSWがオフしているとき、直流電源Pと負荷Loとが切断され、直流電源Pに電流が流れない状態になる。なお、スイッチSWがオンしているときで、かつ、走行用モータ及び監視回路が駆動している場合、直流電源Pから走行用モータ及び監視回路へ放電電流が流れたり、走行用モータから直流電源Pへ充電電流が流れたりする。また、スイッチSWがオンしているときで、かつ、監視回路のみが駆動している場合、直流電源Pから監視回路へ放電電流が流れる。
【0079】
走行制御部6は、走行していた車両が停車した後に運転者や整備士などにより車両に搭載されるストップボタンが押されると、または、走行していた車両が停車した後に運転者や整備士などにより車両に搭載されるイグニンションキーがオフにされると、または、アイドリングストップが開始すると、走行用モータが停止するようにインバータ回路の動作を制御することで走行用モータを停止状態(レディOFF状態)にする。なお、走行用モータが停止した後も、監視回路が常時駆動するものとする。また、スイッチSWがオンしているときで、かつ、監視回路のみが駆動しているときに直流電源Pに流れる電流は、スイッチSWがオンしているときで、かつ、走行用モータ及び監視回路が駆動しているときに直流電源Pに流れる電流よりも小さいものとする。
【0080】
また、走行制御部6は、走行用モータを停止状態にした後、電流検出部5により検出される電流が電流閾値以下になると、直流電源Pに流れる電流が電流閾値以下になった旨を検知部4に送る。なお、電流閾値は、直流電源Pに流れる電流の増加に伴う電圧Vdの波高値の変動量の増加が抑えられているときに直流電源Pに流れる電流の最大値とする。
【0081】
または、走行制御部6は、走行用モータを停止状態にすると、走行用モータを停止状態にした旨を検知部4に送るように構成してもよい。このように構成する場合、走行制御部6は、走行用モータを停止状態にすると、直流電源Pに流れる電流が電流閾値以下になるように監視回路のみを駆動させる。
【0082】
また、走行制御部6は、直流電源Pに流れる電流が電流閾値以下になった旨または走行用モータを停止状態にした旨を検知部4に送った後、スイッチSWをオンからオフに切り替える。なお、走行制御部6は、直流電源Pに流れる電流が電流閾値以下になった旨または走行用モータを停止状態にした旨を検知部4に送った後、スイッチSWが溶着していないと判断してからスイッチSWをオンからオフに切り替えるように構成してもよい。
【0083】
また、直流電源Pに流れる電流が電流閾値以下になった旨を検知部4が受け取ってからスイッチSWがオンからオフになることで直流電源Pと負荷Loとが切断されるまでの間を、または、走行用モータを停止状態にした旨を検知部4が受け取ってからスイッチSWがオンからオフになることで直流電源Pと負荷Loとが切断されるまでの間を、一定時間T1とする。
【0084】
また、走行制御部6は、車両の駐車中に運転者や整備士などによりスタートボタンが押されると、または、車両の駐車中に運転者や整備士などによりイグニッションキーがオンにされると、または、アイドリングストップが終了すると、スイッチSWをオフからオンに切り替える。
【0085】
また、走行制御部6は、スイッチSWをオフからオンに切り替えると、スイッチSWがオフからオンになった旨を検知部4に送る。
【0086】
また、走行制御部6は、スイッチSWがオフからオンになった旨を検知部4に送った後、走行用モータが駆動するようにインバータ回路の動作を制御することで走行用モータを駆動状態(レディON状態)にする。なお、走行用モータが駆動状態になると、直流電源Pに流れる電流が電流閾値より大きくなるものとする。
【0087】
また、スイッチSWがオフからオンになった旨を検知部4が受け取ってから直流電源Pに流れる電流が電流閾値より大きくなるまでの間を一定時間T2とする。
【0088】
図8は、変形例2における検知部4の動作を示すフローチャートである。なお、変形例2では、漏電検知タイミングの一例として、ステップS0´及びステップS0´´の処理を行うものとする。また、
図8に示すステップS1〜ステップS9は、
図3に示すステップS1〜ステップS9と同様であるため、説明を省略する。
【0089】
検知部4は、直流電源Pに流れる電流が電流閾値以下になった旨または走行用モータを停止状態にした旨を受け取っていない場合で、かつ、スイッチSWがオフからオンになった旨を受け取っていない場合(ステップS0´:No、ステップS0´´:No)、直流電源Pに流れる電流が電流閾値以下になった旨または走行用モータを停止状態にした旨を受け取ったか否か、及び、スイッチSWがオフからオンになった旨を受け取ったか否かを繰り返し判断する。
【0090】
また、検知部4は、直流電源Pに流れる電流が電流閾値以下になった旨または走行用モータを停止状態にした旨を受け取ると(ステップS0´:Yes)、直流電源Pに流れる電流が電流閾値以下になった旨または走行用モータを停止状態にした旨を受け取ってから一定時間T1が経過するまでの間において閾値設定処理(ステップS1〜ステップS4)を行う。すなわち、検知部4は、直流電源Pに流れる電流が電流閾値以下になってからスイッチSWがオンからオフになることで直流電源Pと負荷Loとが切断されるまでの間において閾値を補正する。
【0091】
また、検知部4は、スイッチSWがオフからオンになった旨を受け取ると(ステップS0´´:Yes)、スイッチSWがオフからオンになった旨を受け取ってから一定時間T2が経過するまでの間において閾値設定処理(ステップS1〜ステップS4)を行う。すなわち、検知部4は、スイッチSWがオフからオンになることで直流電源Pと負荷Loとが導通されてから直流電源Pに流れる電流が電流閾値より大きくなるまでの間において閾値を補正する。
【0092】
そして、検知部4は、閾値を補正した後(ステップS4)、漏電検知を行う(ステップS5〜ステップS9)。
【0093】
なお、検知部4は、閾値を補正した後、スイッチSWがオフである場合、スイッチSWをオフからオンに切り替えてから漏電検知を行うものとする。
【0094】
また、検知部4は、直流電源Pに流れる電流が電流閾値以下になってからスイッチSWがオンからオフになることで直流電源Pと負荷Loとが切断されるまでの間のみにおいて、閾値を補正するように構成してもよい。すなわち、ステップS0´´を省略するとともに、ステップS0´がNoである場合、検知部4がステップS0´を繰り返し実行し、ステップS0´がYesの場合、検知部4がステップS1以降を実行する。
【0095】
また、検知部4は、スイッチSWがオフからオンになることで直流電源Pと負荷Loとが導通されてから直流電源Pに流れる電流が電流閾値より大きくなるまでの間のみにおいて、閾値を補正するように構成してもよい。すなわち、ステップS0´を省略するとともに、ステップS0´´がNoである場合、検知部4がステップS0´´を繰り返し実行し、ステップS0´´がYesの場合、検知部4がステップS1以降を実行する。
【0096】
また、ステップS0´及び/またはステップS0´´を、
図5に示す検知部4の動作に適用してもよい。すなわち、ステップS0´及びステップS0´´がそれぞれNoである場合、検知部4がステップS0´及びステップS0´´を繰り返し実行し、ステップS0´またはステップS0´´がYesの場合、検知部4がステップS1´以降を実行する。または、ステップS0´´を省略するとともに、ステップS0´がNoである場合、検知部4がステップS0´を繰り返し実行し、ステップS0´がYesの場合、検知部4がステップS1´以降を実行する。または、ステップS0´を省略するとともに、ステップS0´´がNoである場合、検知部4がステップS0´´を繰り返し実行し、ステップS0´´がYesの場合、検知部4がステップS1´以降を実行する。なお、ステップS0´及び/またはステップS0´´を、
図5に示す検知部4の動作に適用する場合、
図4に示す直流電源Pと負荷Loとの間、または、直流電源PとグランドラインGLとの間に
図7に示すスイッチSWを接続する。
【0097】
このように、変形例2における検知部4の動作によれば、直流電源Pと負荷Loとが導通している状態において、すなわち、漏電検知時と同じスイッチSWがオンしている状態において、浮遊容量Cfの容量値を求めることができるため、スイッチSWのオン、オフの切り替えによる浮遊容量Cfの容量値の変動を防止することができる。
【0098】
また、変形例2における検知部4の動作によれば、直流電源Pに流れる電流が電流閾値以下であるときに電圧Vdを取得することができるため、直流電源Pに流れる電流の増加に伴う電圧Vdの波高値の変動量の増加を抑えることができる。
【0099】
すなわち、変形例2における検知部4の動作によれば、閾値設定処理時の電圧Vdの波高値と浮遊容量Cfの容量値との対応関係が、情報D1の波高値と容量値との対応関係と乖離することを抑えることができるため、閾値を精度よく補正することができ、漏電検出精度を上げることができる。
<変形例3>
図9は、実施形態の漏電検知回路の変形例3における検知部4の動作を示すフローチャートである。なお、変形例3における漏電検知回路の構成は、
図1に示す漏電検知回路の構成と同様である。また、検知部4は、初回に、ステップS11〜S13の処理を行うものとする。初回とは、漏電検知回路を車両及び直流電源Pに接続する前の状態(浮遊容量Cfの容量値がゼロである状態)、漏電検知回路を車両及び直流電源Pに接続した後の工場出荷時、または、工場出荷後の車両の最初の起動時とする。漏電検知回路を車両及び直流電源Pに接続する前の状態を、初回とする場合は、車両の理想的な絶縁抵抗Riを模擬した、抵抗値が既知である抵抗を発振回路2とカップリングコンデンサCcとの間(
図1の絶縁抵抗Riの配置場所に相当する箇所)に接続する必要がある。また、検知部4は、漏電検知タイミングになると(ステップS14:Yes)、閾値設定処理補正時において、ステップS1〜ステップS4の処理を行い、次に、漏電検知時において、ステップS5〜ステップS9の処理を行うものとする。
図9に示すステップS1〜S9は、
図3に示すステップS1〜S9と同様である。
【0100】
まず、ステップS11において、検知部4は、発振信号Sの周波数が第2の周波数f2になるように発振回路2の動作を制御する。
【0101】
次に、ステップS12において、検知部4は、検出抵抗Rdにかかる電圧Vdの波高値を基準波高値として取得する。このとき取得される基準波高値は、漏電検知回路のカップリングコンデンサCcや検出抵抗Rdなどの製造誤差により情報D1を求める際に用いられる波高値V0と異なる場合がある。
【0102】
次に、ステップS13において、検知部4は、ステップS12で取得した基準波高値を波高値V0で除算した値を定数として求め、情報D1の各波高値に定数を乗算することにより、情報D1の各波高値を補正する。すなわち、ステップS13において、検知部4は、初回に、発振信号Sの周波数が第2の周波数f2になるように発振回路2の動作を制御しているときに検出抵抗Rdにかかる電圧Vdの波高値を基準波高値として取得し、情報D1の波高値を求めるときに想定される浮遊容量Cfの容量値の初期値に対応する波高値V0で基準波高値を除算した値を定数として求め、情報D1の波高値に定数を乗算することにより、情報D1の波高値を補正する。これにより、基準波高値と波高値V0との比で情報D1の波高値を補正することができる。
【0103】
次に、検知部4は、漏電検知タイミングになると(ステップS14:Yes)、ステップS1以降を実行する。
【0104】
なお、検知部4は、
図2(c)に示す情報D1の波高値ではなく、
図6(b)に示す情報D4の波高値または
図6(c)に示す情報D5の波高値を補正してもよい。
【0105】
また、
図9に示すステップS11〜S14を、
図5に示す検知部4の動作に適用してもよい。すなわち、検知部4は、
図9に示すステップS11〜S14を実行した後、
図5に示すステップS1´以降を実行する。この場合、変形例3における漏電検知回路の構成は、
図4に示す漏電検知回路の構成と同様である。
【0106】
また、
図9に示すステップS11〜S13を、
図8に示す検知部4の動作に適用してもよい。すなわち、検知部4は、
図9に示すステップS11〜S13を実行した後、
図8に示すステップS0´以降を実行する。この場合、変形例3における漏電検知回路の構成は、
図7に示す漏電検知回路の構成と同様である。
【0107】
このように、変形例3における検知部4の動作によれば、基準波高値と波高値V0との比で情報D1の波高値を補正することができるため、漏電検知回路のカップリングコンデンサCcや検出抵抗Rdなどの製造誤差により基準波高値が波高値V0と比べて変化していても、情報D1の補正後の波高値により閾値を精度よく補正することができ、漏電検出精度を上げることができる。
<変形例4>
図10は、実施形態の漏電検知回路の変形例4における検知部4の動作を示すフローチャートである。
【0108】
なお、変形例4における漏電検知回路の構成は、
図1に示す漏電検知回路の構成と同様である。また、検知部4は、初回に、ステップS21〜S23の処理を行うものとする。初回とは、漏電検知回路を車両及び直流電源Pに接続する前の状態(浮遊容量Cfの容量値がゼロである状態)、漏電検知回路を車両及び直流電源Pに接続した後の工場出荷時、または、工場出荷後の車両の最初の起動時とする。漏電検知回路を車両及び直流電源Pに接続する前の状態を、初回とする場合は、車両の理想的な絶縁抵抗Riを模擬した、抵抗値が既知である抵抗を発振回路2とカップリングコンデンサCcとの間(
図1の絶縁抵抗Riの配置場所に相当する箇所)に接続する必要がある。また、検知部4は、漏電検知タイミングになると(ステップS24:Yes)、閾値設定処理補正時において、ステップS25〜ステップS29の処理を行い、次に、漏電検知時において、ステップS5〜ステップS9の処理を行うものとする。
図10に示すステップS5〜S9は、
図3に示すステップS5〜S9と同様である。
【0109】
まず、ステップS21において、検知部4は、発振信号Sの周波数が第2の周波数f2になるように発振回路2の動作を制御する。
【0110】
次に、ステップS22において、検知部4は、検出抵抗Rdにかかる電圧Vdの波高値を基準波高値として取得する。このとき取得される基準波高値は、漏電検知回路のカップリングコンデンサCcや検出抵抗Rdなどの製造誤差により情報D1を求める際に用いられる波高値V0と異なる場合がある。
【0111】
次に、ステップS23において、検知部4は、ステップS22で取得した基準波高値を波高値V0で除算した値を定数として求める。すなわち、ステップS23において、検知部4は、初回に、発振信号Sの周波数が第2の周波数f2になるように発振回路2の動作を制御しているときに検出抵抗Rdにかかる電圧Vdの波高値を基準波高値として取得し、情報D1の波高値を求めるときに想定される浮遊容量Cfの容量値の初期値に対応する波高値V0で基準波高値を除算した値を定数として求める。
【0112】
次に、検知部4は、漏電検知タイミングになると(ステップS24:Yes)、発振信号Sの周波数が第2の周波数f2になるように発振回路2の動作を制御する(ステップS25)。
【0113】
次に、ステップS26において、検知部4は、検出抵抗Rdにかかる電圧Vdを取得する。
【0114】
次に、ステップS27において、検知部4は、ステップS26で取得した電圧Vdの波高値をステップS23で求めた定数で除算することにより、ステップS26で取得した波高値を補正する。すなわち、ステップS27において、検知部4は、閾値設定処理補正時、発振信号Sの周波数が第2の周波数f2になるように発振回路2の動作を制御しているとき、検出抵抗Rdにかかる電圧Vdの波高値を定数で除算することにより、検出抵抗Rdにかかる電圧Vdの波高値を補正する。これにより、基準波高値と波高値V0との比の逆数で、ステップS26で取得した電圧Vdの波高値を補正することができる。
【0115】
次に、ステップS28において、検知部4は、記憶部3に記憶されている情報D1を参照して、ステップS27で補正した波高値に対応する浮遊容量Cfの容量値を求める。
【0116】
次に、ステップS29において、検知部4は、記憶部3に記憶されている情報D2を参照して、ステップS28で求めた浮遊容量Cfの容量値に対応する補正値を求めるとともに、その求めた補正値を閾値Vthから減算して新たな閾値Vthを求めることで、閾値Vthを補正する。
【0117】
次に、検知部4は、ステップS5以降を実行する。
【0118】
なお、
図10に示すステップS21〜S29を、
図5に示す検知部4の動作に適用してもよい。すなわち、検知部4は、
図10に示すステップS21〜S24を実行した後、
図5に示すステップS1´を実行し、その後、
図10に示すステップS25〜S29を実行した後、
図5に示すステップS5´以降を実行する。この場合、変形例4における漏電検知回路の構成は、
図4に示す漏電検知回路の構成と同様である。
【0119】
また、
図10に示すステップS21〜S23及びステップS25〜S29を、
図8に示す検知部4の動作に適用してもよい。すなわち、検知部4は、
図10に示すステップS21〜S23を実行した後、
図8に示すステップS0´、S0´´を実行し、その後、
図10に示すステップS25〜S29を実行した後、
図8に示すステップS5以降を実行する。この場合、変形例4における漏電検知回路の構成は、
図7に示す漏電検知回路の構成と同様である。
【0120】
このように、変形例4における検知部4の動作によれば、基準波高値と波高値V0との比の逆数で、ステップS26で取得した電圧Vdの波高値を補正することができるため、漏電検知回路のカップリングコンデンサCcや検出抵抗Rdなどの製造誤差により基準波高値が波高値V0と比べて変化していたとしても、ステップS26で取得した電圧Vdの補正後の波高値により閾値を精度よく補正することができ、漏電検出精度を上げることができる。
【0121】
このように、変形例3と変形例4では、実験またはシミュレーションなどで情報D1〜D5を求めるときに使用したカップリングコンデンサCcや検出抵抗Rdに対し、量産品のカップリングコンデンサCcの容量値や検出抵抗Rdの抵抗値に製造誤差によって生じる差があったとしても、情報D1〜D5の波高値を求めるときに取得された波高値V0に対する波高値のずれを基準波高値を用いて補正することで、閾値設定処理時での製造誤差によって生じる波高値のずれを減らし、閾値を精度よく補正することができる。
【0122】
なお、変形例3と変形例4では、基準波高値を波高値V0で除算した値を定数として求めたが、それに限定されない。例えば、基準波高値と波高値V0との差を基準差として求め、情報D1の波高値から基準差を減算することにより情報D1の波高値を補正してもよく、ステップS26で取得した波高値から基準差を減算することによりステップS26で取得した波高値を補正してもよい。
【0123】
即ち、初期状態において、発振信号Sの周波数が第2の周波数f2になるように発振回路2の動作を制御しているときに検出抵抗Rdにかかる電圧Vdの波高値を基準波高値とし、情報D1〜D5を求めるときであって浮遊容量Cfの容量値が初期値C0に対応する波高値V0を理想波高値としたとき、基準波高値と理想波高値とから製造誤差補正値を求め、製造誤差補正値を用いて閾値を補正する。
【0124】
製造誤差補正値を用いて閾値を補正する方法は、変形例3や変形例4に限定されず、情報D2の補正値を補正してもよく、情報D4の波高値を補正してもよく、情報D5の波高値を補正してもよい。
<変形例5>
図11は、実施形態の漏電検知回路1の変形例5を示す図である。なお、
図11に示す構成のうち、
図1に示す構成と同じ構成には、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0125】
図11に示す漏電検知回路1において、
図1に示す漏電検知回路1と異なる点は、検出抵抗Rdと検知部4との間に増幅回路7を接続している点である。増幅回路7は、閾値設定処理時、検出抵抗Rdにかかる電圧Vdを第1の増幅率で増幅して検知部4に出力し、漏電検知時、検出抵抗Rdにかかる電圧Vdを第2の増幅率で増幅して検知部4に出力する。なお、第1の増幅率>第2の増幅率≧1とする。また、第1の増幅率は、増幅回路7から検知部4に出力される電圧Vdの波高値が検知部4の入力電圧上限値より大きくならないような値に設定されているものとする。また、第1及び第2の増幅率は、検出抵抗Rdと増幅回路7との間にフィルタが接続されている場合、そのフィルタによる電圧Vdの波高値の低下量も考慮して設定されてもよい。
【0126】
上述したように、閾値設定処理時、発振信号Sの周波数をローパスフィルタLPFの減衰域内の第2の周波数f2にすると、発振信号Sの周波数をローパスフィルタLPFの通過域内の第1の周波数f1にする場合に比べて、検出抵抗Rdにかかる電圧Vdの波高値が低くなる。そのため、検出部4による浮遊容量Cfの容量値の推定精度が低下するおそれがある。
【0127】
そこで、変形例5では、閾値設定処理時の増幅回路7の第1の増幅率を、漏電検知時の増幅回路7の第2の増幅率より大きくしている。これにより、閾値設定処理時、検出部4による浮遊容量Cfの容量値の推定精度が低下することを抑制することができる。
【0128】
図12は、実施形態の漏電検知回路の変形例5における検知部4の動作を示すフローチャートである。
【0129】
まず、ステップS1において、検知部4は、発振信号Sの周波数が第2の周波数f2になるように発振回路2の動作を制御する。
【0130】
次に、ステップS31において、検知部4は、増幅回路7の増幅率を第1の増幅率に設定する。なお、ステップS1とステップS31は順番を入れ替えてもよい。
【0131】
以降のステップS2〜S4は、
図3に示すフローチャートのステップS2〜S4と同様であるため、その説明を省略する。
【0132】
次に、ステップS5において、検知部4は、発振信号Sの周波数が第1の周波数f1になるように発振回路2の動作を制御する。
【0133】
次に、ステップS32において、検知部4は、増幅回路7の増幅率を第2の増幅率に設定する。なお、ステップS5とステップS32は順番を入れ替えてもよい。
【0134】
以降のステップS6〜S9は、
図3に示すフローチャートのステップS6〜S9と同様であるため、その説明を省略する。
【0135】
このように、変形例5の漏電検知回路1では、閾値設定処理時、漏電検知時に比べて、発振信号Sの周波数を高くすることで、検出抵抗Rdにかかる電圧Vdの波高値が低くなってしまっても、増幅回路7の増幅率を大きくすることで、検知部4に入力される電圧Vdの波高値を高くすることができるため、浮遊容量Cfの容量値の推定精度の低下を抑制することができる。
【0136】
なお、変形例5の構成(閾値設定処理時、漏電検知時に比べて、増幅回路7の増幅率を大きくすること)を、変形例1〜変形例4に適用してもよい。
<変形例6>
図13は、実施形態の漏電検知回路の変形例6における検知部4の動作を示すフローチャートである。なお、変形例6における漏電検知回路の構成は、
図11に示す漏電検知回路1の構成と同様である。
【0137】
図13に示すフローチャートにおいて、
図12に示すフローチャートと異なる点は、閾値設定処理時において、増幅回路7が正常であるか異常であるかを判断する点である。
【0138】
まず、ステップS1において、検知部4は、発振信号Sの周波数が第2の周波数f2になるように発振回路2の動作を制御する。
【0139】
次に、ステップS41において、検知部4は、増幅回路7の増幅率が第1の増幅率に設定される前に増幅回路7から出力される電圧Vdの第1の波高値を記憶部3に記憶する。なお、変形例6における第1及び第2の増幅率は、変形例5における第1及び第2の増幅率と同様とする。また、第1の増幅率に設定される前の増幅回路7の増幅率は、第2の増幅率としてもよいし、第2の増幅率と異なる1以上の増幅率としてもよい。
【0140】
次に、ステップS31において、検知部4は、増幅回路7の増幅率を第1の増幅率に設定する。
【0141】
次に、ステップS42において、増幅回路7の増幅率が第1の増幅率に設定された後に増幅回路7から出力される電圧Vdの第2の波高値を記憶部3に記憶する。
【0142】
次に、ステップS43において、記憶部3に記憶される第1の波高値と第2の波高値との比を算出する。
【0143】
例えば、検出部4は、第2の波高値を第1の波高値で除算した結果を上記比とする。
【0144】
次に、検知部4は、上記比が第1の増幅率と一致しない場合、すなわち、電圧Vdが第1の充電率で増幅されなかった場合(ステップS44:No)、増幅回路7が異常であると判断する(ステップS45)。
【0145】
一方、検知部4は、上記比が第1の増幅率と一致する場合、すなわち、電圧Vdが第1の充電率で増幅された場合(ステップS44:Yes)、増幅回路7が正常であると判断する(ステップS46)。
【0146】
以降のステップS2〜S9は、
図12に示すフローチャートのステップS2〜S9と同様であるため、その説明を省略する。
【0147】
閾値設定処理時において、増幅回路7が異常である場合、すなわち、電圧Vdが第1の増幅率により増幅されていない場合、電圧Vdに含まれるノイズの影響により、閾値Vthの補正精度が低くなる可能性があり、その後の漏電検知時において、漏電を誤検知してしまうおそれがある。
【0148】
そこで、変形例6の漏電検知回路1では、閾値設定処理時において、増幅回路7が正常であるか異常であるかを判断している。これにより、増幅回路7が異常であると判断した場合、漏電検知時に漏電を検知した場合であっても、その漏電検知が誤っている可能性があるため、漏電検知結果を無効とすることで、漏電検知の精度を上げることができる。
【0149】
なお、変形例6の構成(閾値設定処理時において、増幅回路7が正常であるか異常であるかを判断すること)を、変形例1〜変形例4に適用してもよい。
【0150】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものではなく、各実施形態を組み合わせても良い。