特許第6822606号(P6822606)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6822606
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】DC−DCコンバータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20210114BHJP
【FI】
   H02M3/28 W
   H02M3/28 H
   H02M3/28 Q
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-512620(P2020-512620)
(86)(22)【出願日】2018年12月17日
(86)【国際出願番号】JP2018046338
(87)【国際公開番号】WO2020129122
(87)【国際公開日】20200625
【審査請求日】2020年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】鷁頭 政和
【審査官】 高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−167905(JP,A)
【文献】 特開平11−285249(JP,A)
【文献】 特開2018−019578(JP,A)
【文献】 特開2001−008452(JP,A)
【文献】 特開2001−078449(JP,A)
【文献】 特開2014−014232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
H02M 3/28
H02J 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体スイッチング素子の動作により直流電力を交流電力に変換する直流−交流変換部と、前記直流−交流変換部の交流出力側に共振回路及び絶縁用変圧器を介して接続された整流回路と、からなるコンバータユニットを複数台並列に接続し、
前記コンバータユニットの出力電圧及び出力電流に基づいて変調率指令を生成する制御回路と、前記変調率指令から前記半導体スイッチング素子の駆動パルスを生成するパルス発生回路と、からなる制御装置を前記コンバータユニットごとに備えたDC−DCコンバータ装置において、
各コンバータユニットのスイッチング周波数と出力電圧との関係を示す特性上、同一の出力電圧に対応するスイッチング周波数のうち最も低いものを共通スイッチング周波数として複数の前記制御回路間で共有し、前記共通スイッチング周波数を有する前記駆動パルスにより全ての前記コンバータユニットを運転することを特徴としたDC−DCコンバータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載したDC−DCコンバータ装置において、
各コンバータユニットの間で前記駆動パルスの位相をずらすことにより、前記共通スイッチング周波数における各コンバータユニットの出力電圧を等しくすることを特徴とするDC−DCコンバータ装置。
【請求項3】
請求項2に記載したDC−DCコンバータ装置において、
各コンバータユニットを、変調率指令に応じて位相変調制御することにより、前記駆動パルスの位相をずらすことを特徴とするDC−DCコンバータ装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載したDC−DCコンバータ装置において、
前記直流−交流変換部が前記半導体スイッチング素子のフルブリッジ回路またはハーフブリッジ回路からなり、前記整流回路が全波整流回路または半波整流回路からなることを特徴とするDC−DCコンバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流−直流変換を行うコンバータユニットを複数台、並列に接続して構成されるDC−DCコンバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、この種のDC−DCコンバータ装置の第1の従来技術を示している。
図5において、100,200は直流−直流変換を行う電流共振型のコンバータユニットである。これらのコンバータユニット100,200の構成は同一であり、入力端子a,bと出力端子c,dとの間に互いに並列に接続されている。
【0003】
11,21は、直流入力電圧(コンデンサC,Cの両端電圧)Vinを交流電圧に変換する直流−交流変換部であり、それぞれ半導体スイッチング素子Q〜Q,Q〜Qのフルブリッジ回路により構成されている。
直流−交流変換部11の交流出力端子は共振用リアクトルL、共振用コンデンサC、及び絶縁用の変圧器TRを介して、ダイオードD〜Dからなる整流回路12の交流入力側に接続され、直流−交流変換部21の交流出力端子は共振用リアクトルL、共振用コンデンサC、及び絶縁用の変圧器TRを介して、ダイオードD〜Dからなる整流回路22の交流入力側に接続されている。
整流回路12,22の直流出力端子間にはコンデンサC,Cがそれぞれ接続され、コンデンサC,Cの各一端と直流出力端子cとの間にはリアクトルL,Lがそれぞれ接続されている。
周知のように、電流共振型のDC−DCコンバータでは、共振用リアクトル及び共振用コンデンサによる共振現象を利用して直流−交流変換部11,21の出力電流を正弦波に制御することが可能である。
【0004】
次に、コンバータユニット100,200を制御する制御装置は、以下のように構成されている。
出力端子c,d間の電圧Vが出力電圧検出回路31により検出され、出力端子dを流れる電流が出力電流検出回路32により検出されると共に、これらの電圧,電流検出値は制御回路40に入力されている。制御回路40は、電圧,電流検出値を各指令値に一致させるための変調率指令を生成し、ゲートパルス発生回路50は、上記変調率指令とキャリアとを比較するPWM制御により直流−交流変換部11,21のスイッチング素子Q〜Q,Q〜Qに対する共通のゲートパルスを生成して出力する。具体的には、スイッチング素子Q,Qを同一のパルスにより、同Q,Q、同Q,Q、同Q,Qをそれぞれ同一のパルスによってオン・オフさせている。
しかし、直流−交流変換部11,21のスイッチング素子Q〜Q,Q〜Qに対するゲートパルスを共通にして同一のスイッチング周波数により運転したとしても、各ユニット100,200を構成する部品の特性上のバラツキにより、出力電圧Vo1,Vo2は通常、等しくならず、装置全体の出力電圧Vが変動する。
【0005】
次に、図6は第2の従来技術を示すブロック図であり、特許文献1に記載されたDC−DCコンバータと構成が共通している。
この従来技術では、直流−交流変換部11,21のそれぞれに対応させてゲートパルス発生回路51,52を設け、図7に示すように、直流−交流変換部11のスイッチング素子Q〜Qに対するゲートパルスと直流−交流変換部21のスイッチング素子Q〜Qに対するゲートパルスとの間に位相差を設けている。なお、図6図7において、vac1,vac2はそれぞれ直流−交流変換部11,21の交流電圧、Tはスイッチング周期である。
【0006】
この従来技術によれば、コンバータユニット100,200の構成部品の特性に多少のバラツキがあったとしても、ゲートパルスに位相差を設けることにより出力電流Iの脈動をある程度吸収して出力電圧Vの変動を抑制することができる。
しかし、コンバータユニット100,200のスイッチング周波数−出力電圧特性が例えば図8のようである場合、出力電圧の目標値がVo1であるとすると、コンバータユニット100の特性に従ってスイッチング周波数をfs1に設定するとコンバータユニット200の出力電圧はVo3となり、コンバータユニット100の出力電圧Vo1との間に誤差を生じる。また、コンバータユニット200の特性に従ってスイッチング周波数をfs2に設定するとコンバータユニット100の出力電圧はVo2となり、やはりコンバータユニット200の出力電圧Vo1との間に誤差を生じる。
何れにしても、コンバータユニット100,200の出力電圧の誤差に起因して出力電流Io1,Io2がアンバランスとなり、出力電圧Vの変動が大きくなるという問題があった。
【0007】
次いで、図9は第3の従来技術を示すブロック図であり、その構成は特許文献2に記載された電源装置と共通している。
この従来技術では、一方のコンバータユニット100に対応させて出力電圧検出回路31、出力電流検出回路32、制御回路41及びゲートパルス発生回路51を設けると共に、他方のコンバータユニット200に対応させて出力電圧検出回路33、出力電流検出回路34、制御回路42及びゲートパルス発生回路52を設け、各制御回路41,42が、対応するユニット100,200に対するスイッチング周波数を異ならせることで各ユニット100,200の出力電圧Vo1,Vo2が等しくなるように制御している。
【0008】
つまり、前述の図8において出力電圧の目標値がVo1である場合に、一方のコンバータユニット100のスイッチング周波数をfs1に設定し、他方のコンバータユニット200のスイッチング周波数をfs2に設定して制御するものである。
この従来技術によれば、コンバータユニット100,200の出力電圧Vo1,Vo2が一致するため、各ユニットから出力される平均電力はバランスするが、各ユニットのスイッチング周波数が異なるため、出力電圧及び出力電流がスイッチング周波数よりも低い周波数で脈動するという問題があった。
【0009】
更に、図10は第4の従来技術であり、特許文献3に記載されたDC−DCコンバータの並列運転回路を示している。
図10において、300A,300Bは並列接続された同一構成のコンバータユニット、310は電源部、311は変圧器、312はFET、313は整流回路、320は誤差電圧検出部、321はツェナダイオード、322は誤差増幅器、323はフォトカプラ、330は電圧検出部、331は誤差増幅器、341はトランジスタ、342は定電圧制御部、343は補助電源部、350は両ユニット300A,300B間の信号線、400は負荷である。
【0010】
この従来技術では、両ユニット300A,300Bの定電圧制御部342に比較誤差信号を与えるフォトカプラ323の出力側を信号線350にて相互に接続することにより、平常時には両ユニット300A,300Bの出力電圧の誤差を均等化している。そして、例えばユニット300Aの誤差電圧検出部320の抵抗等に異常が発生した場合には、誤差増幅器331の出力によりトランジスタ341をオフしてユニット300A,300B間の信号線350を電気的に切り離し、健全なユニット300Bから負荷400に所定の電圧を供給するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−41855号公報([0015]〜[0054]、図1図2等)
【特許文献2】特開2016−167905号公報([0028]〜[0069]、図1図3等)
【特許文献3】特許第2823896号公報(第2頁右欄第3行〜第45行、第2図等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここで、図11は第1の従来技術による出力電圧の波形図、図12は第2の従来技術による出力電圧及び出力電流の波形図、図13は第3の従来技術による出力電圧及び出力電流の波形図である。
第1の従来技術では、単一の制御回路40及びゲートパルス発生回路50から共通のゲートパルスをコンバータユニット100,200に与えており、各ユニット100,200の出力電流Io1,Io2が同位相になるため、図11に示す如く出力電圧Vの変動分ΔVが大きくなっている。
【0013】
第2の従来技術では、単一の制御回路40からゲートパルス発生回路51,52を用いて、各ユニット100,200を位相差のあるゲートパルスにより駆動している。図12はゲートパルスの位相差を180度にした場合の波形図であり、各ユニット100,200から180度位相のずれた電流Io1,Io2が出力されるため、構成部品に特性上のバラツキがない場合には出力電流Io1,Io2の平均値はバランスし、出力電圧Vの変動も小さくなっている(図12(a))。
これに対し、構成部品に特性上のバラツキがある場合には、各ユニット100,200の出力電流Io1,Io2の平均値は大きく異なり、結果的に出力電圧Vの変動も大きくなっている(図12(b))。
【0014】
図13に示す第3の従来技術では、制御回路41,42からそれぞれゲートパルス発生回路51,52を介して各ユニット100,200を異なるスイッチング周波数にて駆動するので、出力電流Io1,Io2の位相が例えば180度ずれ、その平均値はバランスする。しかし、構成部品に特性上のバラツキがあると、図13から明らかなように、出力電圧V及び出力電流Io1,Io2がスイッチング周波数よりも低い周波数で脈動するという問題がある。
【0015】
上記のように、第1〜第3の従来技術では、出力電圧Vの変動や各コンバータユニット100,200の出力電流Io1,Io2のアンバランス、出力電圧V及び出力電流Io1,Io2の脈動といった問題を解消することが困難である。
また、第4の従来技術は、並列運転されている2台のコンバータユニットの出力電圧誤差を均等化するための信号を、一方のユニットの故障時に遮断し、その後は他方のユニットから負荷に給電して運転を継続する発明であり、2台のユニットを並列運転したままの状態で出力電圧の変動を抑制し、各ユニットの出力電流のアンバランス等を解消するという課題を解決するものではない。
【0016】
そこで、本発明の解決課題は、複数台のコンバータユニットが並列運転される場合の出力電圧の変動や各コンバータユニットの出力電流のアンバランス、出力電圧及び出力電流の脈動を解消するようにしたDC−DCコンバータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、半導体スイッチング素子の動作により直流電力を交流電力に変換する直流−交流変換部と、前記直流−交流変換部の交流出力側に共振回路及び絶縁用変圧器を介して接続された整流回路と、からなるコンバータユニットを複数台並列に接続し、
前記コンバータユニットの出力電圧及び出力電流に基づいて変調率指令を生成する制御回路と、前記変調率指令から前記半導体スイッチング素子の駆動パルスを生成するパルス発生回路と、からなる制御装置を前記コンバータユニットごとに備えたDC−DCコンバータ装置において、
各コンバータユニットのスイッチング周波数と出力電圧との関係を示す特性上、同一の出力電圧に対応するスイッチング周波数のうち最も低いものを共通スイッチング周波数として複数の前記制御回路間で共有し、前記共通スイッチング周波数を有する前記駆動パルスにより全ての前記コンバータユニットを運転することを特徴とする。
【0018】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載したDC−DCコンバータ装置において、各コンバータユニットの間で前記駆動パルスの位相をずらすことにより、前記共通スイッチング周波数における各コンバータユニットの出力電圧を等しくすることを特徴とする。
【0019】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載したDC−DCコンバータ装置において、各コンバータユニットを、変調率指令に応じて位相変調制御することにより、前記駆動パルスの位相をずらすことを特徴とする。
【0020】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載したDC−DCコンバータ装置において、前記直流−交流変換部が前記半導体スイッチング素子のフルブリッジ回路またはハーフブリッジ回路からなり、前記整流回路が全波整流回路または半波整流回路からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、出力電圧の変動を抑制すると共に、複数台のコンバータユニットの出力電流をバランスさせ、また、出力電圧や出力電流の脈動を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態を示す回路図である。
図2】本発明の実施形態における制御回路の主要部の一例を示す回路図である。
図3】本発明の実施形態における基準化周波数と入出力電圧比との関係を示す波形図である。
図4】本発明の実施形態による出力電圧及び出力電流の波形図である。
図5】第1の従来技術を示す回路図である。
図6】第2の従来技術を示す回路図である。
図7】第2の従来技術の動作を示すタイミングチャートである。
図8】第2の従来技術における各コンバータユニットのスイッチング周波数と出力電圧との関係を示す波形図である。
図9】第3の従来技術を示す回路図である。
図10】第4の従来技術を示す回路図である。
図11】第1の従来技術による出力電圧及び出力電流の波形図である。
図12】第2の従来技術による出力電圧及び出力電流の波形図である。
図13】第3の従来技術による出力電圧及び出力電流の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、この実施形態に係るDC−DCコンバータ装置のブロック図である。コンバータユニット100,200は直流入力端子a,bと直流出力端子c,dとの間に互いに並列接続され、各ユニット100,200は、それぞれ図5図6図9の従来技術と同様に構成されている。
【0024】
コンバータユニット100の制御装置は、当該ユニット100の出力電圧検出回路31、出力電流検出回路32、制御回路41及びゲートパルス発生回路51を備え、コンバータユニット200の制御装置は、当該ユニット200の出力電圧検出回路33、出力電流検出回路34、制御回路42及びゲートパルス発生回路52を備えている。
ここで、本実施形態では、コンバータユニット100の制御回路41とコンバータユニット200の制御回路42との間で、有線または無線の通信路43を介して周波数や位相等の情報を授受可能に構成されている。
【0025】
いま、コンバータユニット100,200の構成部品の特性上のバラツキにより、両者のスイッチング周波数と出力電圧との関係が前述した図8の通りであるとする。この場合、DC−DCコンバータ装置の出力電圧の目標値がVo1であるとすると、前述したごとく、コンバータユニット100のスイッチング周波数はfs1、コンバータユニット200のスイッチング周波数はfs2となる。このように両ユニット100,200を異なるスイッチング周波数で動作させた場合には、第3の従来技術と同様に出力電圧V及び出力電流Io1,Io2が脈動することになる。
【0026】
そこで、本実施形態では、出力電圧の目標値Vo1に対応するコンバータユニット100,200のスイッチング周波数fs1,fs2のうち、低い方の周波数fs1を共通スイッチング周波数として両ユニット100,200のスイッチング素子Q〜Q,Q〜Qをスイッチングする。つまり、スイッチング周波数が低いコンバータユニット100をマスター、他方のコンバータユニット200をスレーブとして、マスター側のスイッチング周波数により両ユニット100,200を制御することとした。なお、制御回路41,42が通信路43を介して両ユニット100,200のスイッチング周波数fs1,fs2を突き合わせれば、マスター側のスイッチング周波数、すなわち共通スイッチング周波数を決定し、これを両ユニット100,200が共有することは容易である。
上記の処理によって両ユニット100,200のスイッチング周波数を一致させることができるため、図13に示されるような出力電圧V及び出力電流Io1,Io2の脈動を防止することができる。
【0027】
一方、コンバータユニット100,200のスイッチング周波数を共通スイッチング周波数fs1により統一すると、前記の図8によれば、各ユニット100,200の出力電圧はそれぞれVo1,Vo3となり、このままでは出力電流Io1,Io2のアンバランスや出力電圧Vの変動を招くことになる。
この問題を解決するため、本実施形態では、コンバータユニット200のスイッチング素子を駆動するゲートパルスの位相を、例えば本出願人による特許5928913号公報に記載された位相変調制御(位相シフト制御)等によってずらすことにより、出力電圧Vo3を減少させてVo1に一致させる。これにより、各ユニット100,200の出力電圧を目標値に一致させて出力電圧Vの変動を防ぎ、しかも電流Io1,Io2をバランスさせることが可能である。
なお、請求項2における「駆動パルスの位相をずらす」とは、上述した位相変調制御による方法のほか、図7に示したように各ユニット間で一律に駆動パルス(ゲートパルス)の位相をずらす場合も含むものである。
【0028】
図2は、上述したゲートパルスの位相を調整する一つの手段として、図1の制御回路42及びゲートパルス発生回路52において周波数変調制御と位相変調制御とを切替可能とした回路図であり、前記特許第5928913号公報に記載されているものである。ここでは、コンバータユニット200のスイッチング素子Q〜Qを駆動して当該ユニット200の出力電圧を調整する場合を想定して説明する。
【0029】
図2において、周波数変調回路421は、コンバータユニット200の出力電圧Vo2及び出力電流Io2に基づいて設定される変調率指令λ(0≦λ≦1)から周波数変調信号Vpfmを生成するものであり、リミッタLIM(下限値:1−λ、上限値:λlim)、積分器INT、コンパレータCMP、及びTフリップフロップT−FFを備えている。なお、0<λ<λlim<1であり、λ=V(コンパレータCMPの基準電圧)である。
また、位相変調回路422は、変調率指令λとキャリア信号VtrとTフリップフロップT−FFの出力信号とから位相変調信号Vpsを生成するものであり、リミッタLIM(下限値:0、上限値:λ)、コンパレータCMP、及び排他的論理和ゲートXORを備えている。
更に、ゲートパルス発生回路52は、周波数変調信号Vpfm及び位相変調信号Vpsから反転論理ゲートNOT,NOT、及びオンディレイ回路DT〜DTを介して、コンバータユニット200の直流−交流変換部21のスイッチング素子Q〜Qに対するゲートパルスを生成する。
なお、上記の回路は、コンバータユニット100の制御回路41にも内蔵されている。
【0030】
図2においては、変調率指令λの大きさに応じて周波数変調制御と位相変調制御とを切り替えており、変調率指令λがλより大きい領域では周波数変調制御を行い、λをλより小さくすることで位相変調制御に移行するように動作する。
従って、図8に示したように、コンバータユニット200の出力電圧Vo3がコンバータユニット100の出力電圧Vo1より大きい場合に、コンバータユニット200の制御回路42内で図2における変調率指令λをλより小さくなるように調整してスイッチング素子Q〜Qを駆動することにより、出力電圧Vo3を減少させてVo1に一致させる制御を行うことができる。
本実施形態では、前述したごとく、例えばスイッチング周波数が低いコンバータユニット100をマスターとし、他方のコンバータユニット200をスレーブとした場合に、マスター側のコンバータユニット100については特許第5928913号公報に記載されている周波数変調制御または位相変調制御を行い、スレーブ側のコンバータユニット200については上述したような位相変調制御を行うことにより、両ユニット100,200の出力電圧を一致させることを想定している。
【0031】
なお、図3は、負荷の軽重に応じたコンバータユニット(例えば、コンバータユニット200)の基準化周波数F(F/F)と入出力電圧比との関係を示す特性図である。ここで、Fはスイッチング周波数、Fは共振周波数である。また、縦軸の入出力電圧比において、eは本実施形態により制御可能な領域、eは第3の従来技術により制御可能な領域、eは位相変調制御により制御可能な領域、eは周波数変調制御により制御可能な領域である。
図3において、基準化周波数Fが1.0、つまり、スイッチング周波数を共振周波数に等しくして制御する場合に入出力電圧比が1.0となる点(領域eとeとの境界点)で周波数変調制御から位相変調制御に移行させれば、出力電圧Vを急激に変化させずにシームレスな切り替えが可能である。
【0032】
図4は、この実施形態により制御した出力電圧V及び出力電流Io1,Io2,Iの波形図である。
図12(b)に示した第2の従来技術と比べて、各ユニット100,200の出力電流Io1,Io2のアンバランスが改善されており、また、出力電圧Vの変動も少なくなっている。
また、図13に示した第3の従来技術と比べると、出力電流Io1,Io2や出力電圧Vの脈動が低減していることが判る。
【0033】
なお、本発明の実施形態において、コンバータユニット100,200の一次側の直流−交流変換部は、スイッチング素子のフルブリッジ回路のほかハーフブリッジ回路でも良く、コンバータユニット100,200の二次側の整流回路は、全波整流回路(ブリッジ型全波整流回路またはセンタータップ型全波整流回路)または半波整流回路でも良い。すなわち、DC−DCコンバータ装置の入力電圧、出力電圧、出力電流等の条件に合わせて最適な回路方式を選択することにより、装置全体の小型化、低損失化、低コスト化が可能となる。
【符号の説明】
【0034】
11,21:直流−交流変換部
12,22:整流回路
31,33:出力電圧検出回路
32,34:出力電流検出回路
41,42:制御回路
43:通信路
51,52:ゲートパルス発生回路
100,200:コンバータユニット
421:周波数変調回路
422:位相変調回路
a,b:直流入力端子
c,d:直流出力端子
TR,TR:変圧器
〜L:リアクトル
〜C:コンデンサ
〜Q:半導体スイッチング素子
〜D:ダイオード
LIM,LIM:リミッタ
CMP,CMP:コンパレータ
INT:積分器
T−FF:Tフリップフロップ
XOR:排他的論理和ゲート
NOT,NOT:反転論理ゲート
DT〜DT:オンディレイ回路
図1
図2
図3
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図13