(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図面においては、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0018】
(実施の形態に至る検討)
発明者は、実施の形態適用前の関連する技術について検討し、関連する技術では、同時に多数の無線通信装置が電源停止を検出した時に短時間で効率的な情報収集を行うことができないという課題を見出した。
【0019】
すなわち、複数の無線装置が同時に通信する時の課題として『かくれ端末問題』や『さらし端末問題』が存在していることが知られている。『かくれ端末問題』とは、2つ以上の送信装置が同時にデータを送信することで、受信装置において、送信データの衝突が発生する問題である。『さらし端末問題』とは、ある送信装置が隣接する他の送信装置のデータ通信を傍受することで、不要な送信抑制をしてしまう問題である。これらの問題を回避する方法が広く検討されているものの、関連する技術では、電源停止時に、短時間で効率的な情報収集を行う方法が考慮されていなかった。
【0020】
例えば、容易に監視ネットワークを構築する手段として、多数に分岐する送電線路の毎に無線通信装置(「子局」という)を設置し、一定のエリア毎に設置された無線収集装置(「親局」という)が、通信圏内の子局の電源停止情報を一度に収集し、送電線経路を監視する方法が考えられる。この場合、送電線の経路と親局の無線エリアには関連が無いため、電源停止を検出したすべての送電先(=子局)を明確にすることで障害の発生経路を特定することができる。
【0021】
ここで、関連する技術では、送電線が分岐する手前で障害が発生すると、複数の子局が同時に電源停止の検知と通知を行うことになり、『かくれ端末問題』と『さらし端末問題』の影響を受け、この影響度合いは障害範囲が広くなるほどに大きくなる。また、子局は、電源供給が停止した後に電源停止の通知を行うために、自身で電源を確保する必要がある。容易に電源を確保する手段として、アルミ電解コンデンサ、スーパーキャパシタ、電池やバッテリー等を使用したバックアップ回路が考えられる。このバックアップ回路では、『かくれ端末問題』と『さらし端末問題』対策に必要な時間に合わせて、通信可能時間を長くする必要がある。さらに、この回路の構成部品には、寿命が存在しており、使用環境によって劣化度合いが加速されるため、同じ種類の部品を使用しても子局ごとにバックアップ通信可能時間が異なる。バックアップ通信可能時間とは、電源供給停止を検知してから自身が機能停止するまでの電源停止通知が可能な時間である。この有限なバックアップ通信可能時間において、多数の子局から電源情報を収集するためには、短時間で効率的な情報収集を実現する必要がある。
【0022】
(実施の形態の概要)
図1は、実施の形態に係る無線通信システムの概要を示し、
図2は、実施の形態に係る無線通信装置の概要を示し、
図3は、実施の形態に係る無線収集装置の概要を示している。
【0023】
図1に示すように、実施の形態に係る無線通信システム120は、複数の無線通信装置100(例えば100A及び100B)、無線収集装置110を備えている。無線通信装置100は、子局であり、無線収集装置110は、複数の無線通信装置100の無線通信を収集する親局である。
【0024】
図2に示すように、無線通信装置100は、算出部101、通知部102、通報部103を備えている。また、
図3に示すように、無線収集装置110は、決定部111、指示部112を備えている。
【0025】
無線通信装置100では、算出部101は、電源停止時に通信動作が可能な停電動作可能時間を算出し、通知部102は、算出された停電動作可能時間を無線収集装置110へ通知する。停電動作可能時間は、電源停止時にバックアップ電源により前記通報が可能な時間である。無線収集装置110では、決定部111は、通知された停電動作可能時間に基づいて、無線通信装置100の電源停止時における停電通報タイミングを決定し、指示部112は、決定された停電通報タイミングを無線通信装置100へ指示する。停電通報タイミングは、電源停止から停電動作可能時間が経過するまでのタイミングであり、例えば、複数の無線通信装置100の停電動作可能時間の比較結果に基づいて決定する。さらに、無線通信装置100では、通報部103は、電源停止が検出された場合、指示された停電通報タイミングで無線収集装置110へ電源停止を通報する。
【0026】
上記のように、関連する技術では、電源停止時、複数の無線通信装置が同時に通報することになるため、輻輳・衝突が発生してしまい、無線収集装置が、通報信号を受信出来ない事態が発生してしまう。衝突の発生により通信が失敗する(例えば所定期間にACKを受信しない)と、無線通信装置は、一定時間待機した後、再送信を試みる。このとき、無線通信装置は、停電によって動作電源を失っているため、バックアップ電源によって通報の再送信を行おうとする。しかし、停電発生後の通報によってバックアップ電源を全て消費している恐れがあるため、再送信できない事態が発生し得る。このため、通報信号の衝突を発生させることなく、バックアップ電源により通信可能な間に、全ての無線通信装置からの通報を効率良く親局が受信する方法が望まれる。
【0027】
そこで、実施の形態では、無線通信装置が算出した停電動作可能時間(バックアップ通信可能時間)に基づいて、無線収集装置が無線通信装置の停電通報タイミング(電源停止通知タイミング)を決定し、無線通信装置に停電通報タイミングを指示する。これにより、通報信号の衝突の発生を抑えて、全ての無線通信装置から無線収集装置へ、より短時間で効率良く、確実に停電発生を通報(通知)することができる。
【0028】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して実施の形態1について説明する。
図4は、本実施の形態に係る無線通信システムの構成を示している。
図4に示すように、実施の形態に係る無線通信システム5は、複数の子局1(例えば1A及び1B)、親局2を備えている。複数の子局1は同じ構成であり、複数の子局1には同じ電源が供給されている。無線通信システム5は、複数の子局1の電源停止情報を収集して、監視システムへ出力するシステムである。
【0029】
子局1は、自局の電源供給停止を検知してから自身が機能停止するまでの電源停止通知が可能なバックアップ通信可能時間を測定・算出し、親局2に対して、自局のバックアップ通信可能時間を通知する機能と、電源停止を検知した場合に、親局より指示されたタイミングで、電源停止通知を行う機能を持つ装置である。親局2は、複数の子局から通知されたバックアップ通信可能時間を比較し、あらかじめバックアップ通信可能時間の短い子局を優先的に送信させる指示をする機能を持つ装置である。
【0030】
子局1及び親局2の各ブロックの機能を説明する。子局1は、
図4に示すように、バックアップ電源部11、バックアップ通信可能時間判定&通知部12、電源停止検出部13、電源停止通知タイミング制御部14、無線送信部15、無線受信部16を具備する。子局1の各ブロックには、外部から電源(主電源)が供給されている。無線送信部15及び無線受信部16は、基本的な無線通信機能を具備する。無線送信部15及び無線受信部16は、無線LAN等の通信規格にしたがい、アンテナ31を介して親局2との間で無線送信及び無線受信を行う。
【0031】
バックアップ電源部11は、電源が停止した後も自局を動作可能とするための予備電源である。バックアップ電源部11は、例えば、アルミ電解コンデンサ、スーパーキャパシタ、電池やバッテリー等である。バックアップ電源部11は、電源停止時、電源停止通知に必要なブロックにのみに電源を供給する。バックアップ電源部11が電源供給するブロックを電源停止通知に必要なブロックにのみ限定することで、子局1の消費電力を抑制することができる。
【0032】
バックアップ通信可能時間判定&通知部12は、バックアップ通信可能時間(停電動作可能時間)を算出する算出部であるとともに、算出したバックアップ通信可能時間を通知する通知部でもある。具体的には、バックアップ通信可能時間判定&通知部12は、バックアップ電源部11の充電時間または放電時間を測定する機能を持つ。例えば、特許文献4に記載されたような方法で充電時間または放電時間を測定してもよい。一般的にバックアップ電源部11の容量が劣化するとともに充電時間または放電時間が長くなることは知られている。バックアップ通信可能時間判定&通知部12は、充電時間または放電時間から劣化したバックアップ電源部11の容量を推定できる変換データを子局1の記憶部に記憶してもよい。そして、バックアップ通信可能時間判定&通知部12は、その測定結果より推定したバックアップ電源部11の容量から、自局がバックアップ電源のみで通信可能なバックアップ通信可能時間を算出し、無線送信部15を使用して親局2の電源停止通知タイミング判定部24へと通知する。
【0033】
ここで、バックアップ電源部11の容量推定に使用する測定データは、例えば特許文献5に記載されたような入力電流ピーク比較などの方法を用いてもよい。また、電源容量の変化は、周囲の環境(温度・湿度・振動など)の影響を受けることが知られており、温度・湿度・振動などを測定する機能と測定結果をもとに電源容量の算出を補正する機能を具備しても良い。さらに、特許文献6に記載されたような初期放電電圧と放電電流から求めた放電率と電源部劣化後の同数値の差分から放電時間を予測し、装置の消費電力からバックアップ通信可能時間を算出する方法でも良い。また、自ら一旦電源入力を遮断し、子局1が動作可能な時間を実際に測定する機能としてもよい。
【0034】
電源停止検出部13は、外部電源から供給される電源の停止(電源停止)を検出し、検出した電源停止(検出信号)を電源停止通知タイミング制御部14へと知らせる。
【0035】
電源停止通知タイミング制御部14は、電源停止時、事前に親局2から指示されている電源停止通知タイミングで、親局2へ電源停止を通知(通報)する電源停止通知部(通報部)である。具体的には、電源停止通知タイミング制御部14は、電源停止検出部13の検出信号をトリガとして、親局2の電源停止通知抽出部23へと電源停止の通知を行う。この時、通知するタイミングが事前に親局2から指示された電源停止通知タイミングとなるように、調整するタイマー機能を具備する。
【0036】
親局2は、
図4に示すように、無線受信部21、無線送信部22、電源停止通知抽出部23、電源停止通知タイミング判定部24を具備する。なお、無線受信部21及び無線送信部22は、子局1と同様、基本的な無線通信機能を具備する。無線受信部21及び無線送信部22は、無線LAN等の無線通信規格にしたがい、アンテナ32を介して子局1の間で無線受信及び無線送信を行う。
【0037】
電源停止通知タイミング判定部24は、自局の無線受信部21で受けた各子局1のバックアップ通信可能時間の値をもとに、各子局1の通知の順番・電源停止の通知タイミングを判定(決定)する判定部(決定部)である。電源停止通知タイミング判定部24は、各子局1における電源停止通知の送信動作がそれぞれのバックアップ通信可能時間内で終わるように通知タイミングを決定する。例えば、各子局1のバックアップ通信可能時間を比較し、バックアップ通信可能時間が短い順に通知するように通知タイミングを決定してもよい。また、電源停止通知タイミング判定部24は、判定した電源停止通知タイミングを、無線送信部22を使用して子局1の電源停止通知タイミング制御部14へ指示する指示部である。
【0038】
電源停止通知抽出部23は、子局1から電源停止通知を検知(受信)し、子局1の電源停止を監視システムへと連絡する。
【0039】
次に、
図5のシーケンス図を用いて、
図4の親局2と子局1A及び1Bの動作例について説明をする。まず、子局1A及び1Bのバックアップ通信可能時間判定&通知部12のそれぞれは、バックアップ電源部11の容量に基づいてバックアップ通信可能時間を判定し(S101、S103)、判定したバックアップ通信可能時間を親局2へ通知する(S102、S104)。バックアップ通信可能時間の通知は、子局1(自局)が起動し、親局2との無線通信が確立したタイミングで通知してもよいし、また、親局2からの要求に応答することで通知してもよい。ここで通知タイミングは子局自身のタイマーにより設定された定期的な周期で自律的に知らせる機能としてもよい。
【0040】
続いて、親局2の電源停止通知タイミング判定部24は、子局1A及び1Bから受信したバックアップ通信可能時間に基づいて、子局1A及び1Bの電源停止通知タイミングを判定し(S105)、判定した電源停止通知タイミングを、子局1A及び1Bへ指示をする(S106、S107)。ここで、電源停止通知タイミング判定部24による通知タイミングの判定及び指示は、バックアップ通信可能時間が短い子局から優先的に通知するように判定及び指示をする。子局1A及び1Bに指示される通知タイミングは、子局1A及び1Bで通知タイミングが重複せずに連続して通知が実現できる最短のタイミングとなるように制御される。例えば、親局2は、子局1Aに通知タイミングT1を指示し、子局1Aに通知タイミングT2を指示する。T1は、子局1Aのバックアップ通信可能時間内のタイミングであり、T2は、子局1Bのバックアップ通信可能時間内のタイミングである。
【0041】
続いて、子局1A及び1Bに供給される電源が停止すると(S108)、子局1A及び1Bの電源停止検出部13は、電源停止を検出する(S109、S110)。そうすると、子局1A及び1Bの電源停止通知タイミング制御部14のそれぞれは、親局2により指示された電源停止通知タイミングで、親局2へ電源停止を通知する(S111、S113)。例えば、子局1Aは、電源停止を検出したT0からT1経過したタイミングで電源停止を通知し、子局1Bは、電源停止を検出したT0からT2経過したタイミングで電源停止を通知する。
【0042】
続いて、親局2の電源停止通知抽出部23は、子局1A及び1Bから電源停止通知を抽出(受信)し(S112、S114)、子局1A及び1Bの電源停止を監視システムへ連絡する。親局2は、重複せずに連続するように制御された通知タイミング(例えばT1及びT2)で、子局1A及び1Bのそれぞれから電源停止通知を受信する。
【0043】
次に、
図6のネットワーク構成例を用いて、
図4の親局2と子局1を使用した本実施の形態に係る通信方法について説明をする。
図6のネットワーク構成例は、親局2と子局1A及び1Bを備えており、親局2と子局1Aが通信圏202Aで無線通信を行い、親局2と子局1Bが通信圏202Bで無線通信を行う。また、子局1A及び1Bは、電源3から同じ電源が供給されている。
【0044】
子局1Aは、電源3から電源供給される送電線路201Aの電源監視を行い、電源停止を検出した場合に、電源停止情報を親局2へと通知する。同様に子局1Bは、電源3から電源供給される送電線路201Bの電源監視を行い、電源停止を検出した場合に、電源停止情報を親局2へと通知する。ここで、子局1Aは、子局1Bの通信圏202Bの外の位置にあり、子局1Bは、子局1Aの通信圏202Aの外の位置にある。すなわち、子局1Aと子局1Bは、互いの無線信号の到達範囲外の位置にある。
【0045】
まず、
図7に、比較例として、本実施の形態に係る通信方法を使用しない場合の通信のタイミング図を示す。
図7は、
図6のネットワーク構成において、電源停止を検知した子局1Aと子局1Bが同時に通信を行うことでデータ衝突が発生する例を示している。
【0046】
図7に示すように、電源3に障害が発生し機能停止すると、子局1Aと子局1Bは、同じタイミングで電源停止を検出し、直ちにt0で親局2へ電源停止を知らせるデータを送信する。しかし、親局2は、子局1Aと子局1Bから同時にデータ受信すると、データ衝突が発生するため、正しくデータを受信できず、子局1A及び1BへAckを返信することができない。そうすると、子局1Aと子局1Bは、親局2から所定期間にAckを受信しないため、データ送信の失敗を検出し、再送処理を行う。ここでデータ衝突の発生を回避するために、例えば、特許文献3に記載されたようなランダム遅延を持たせて、装置毎に送信タイミングをずらす方法がある。この例では、子局1Aは、ランダム遅延の後のt1にデータを再送し、さらにその後、子局1Bは、ランダム遅延の後のt2にデータを再送する。
【0047】
一方、
図8は、
図7の比較例に対する、本実施の形態に係る通信方法による通信のタイミング図である。ここで、子局1Aと子局1Bは、前記
図5の動作説明のように事前に自局のバックアップ通信可能時間を親局2へと通知し、電源停止通知データの送信タイミング(t3、t4)の指示を受けている。
図8の例では、子局1Aは、親局2の指示にしたがい、電源停止検出直後のt3にデータを送信する。さらに、子局1Bは、親局2の指示にしたがい、子局1Aと親局2の通信が終了するまでの時間、送信を待った後のt4にデータを送信する。本実施の形態に係る通信方法で通信を行うことにより、データの衝突を回避することができ、
図7の比較例よりも短い時間ですべての通信を行うことができる。
【0048】
次に、
図9の他のネットワーク構成例を用いて、本実施の形態に係る通信方法について説明をする。
図9のネットワーク構成例は、親局2A及び2Bと子局1A及び1Bを備えており、親局2Aと子局1Aが通信圏202Aで無線通信を行い、親局2Bと子局1Bが通信圏202Bで無線通信を行う。また、子局1A及び1Bは、電源3から同じ電源が供給されている。
【0049】
子局1Aは、電源3から電源供給される送電線路201Aの電源監視を行い、電源停止を検出した場合に、電源停止情報を親局2Aへと通知する。同様に子局1Bは、電源3から電源供給される送電線路201Bの電源監視を行い、電源停止を検出した場合に、電源停止情報を親局2Bへ通知する。ここで、子局1Aは、子局1Bの通信圏202Bの中の位置にあり、子局1Bは、子局1Aの通信圏202Aの中の位置にある。すなわち、子局1Aと子局1Bは、互いの無線信号の到達範囲内の位置にあり、お互いの送信信号を受信する。
【0050】
まず、
図10に、比較例として、本実施の形態に係る通信方法を使用しない場合の通信のタイミング図を示す。
図10は、
図9のネットワーク構成において、電源停止を検知した子局1Aと子局1Bのうち、キャリアセンスにより子局1Bのデータ送信タイミングが遅れる例を示している。
【0051】
図10に示すように、この例では、子局1Aと子局1Bが電源停止を検出すると、まず子局1Aは、検出直後のt5に親局2へ電源停止を知らせるデータを送信する。このとき、子局1Bが通信を行うタイミングのためのキャリアセンスを行うと、子局1Aから親局2Aへ送信されたデータを検出するため、ランダム遅延させた後のt6に親局2Bへデータを送信する。
【0052】
一方、
図11は、
図10の比較例に対する、本実施の形態に係る通信方法による通信のタイミング図である。
図8と同様、事前に子局1Aと子局1Bは、自局のバックアップ通信可能時間を親局2Aと親局2Bへそれぞれ通知し、電源停止通知データの送信タイミング(t7)の指示を受けている。ここで、親局2Aは、子局1Bの通信圏外にあり、親局2Bは、子局1Aの通信圏外にあることから、親局2Aと親局2Bは、子局1A、子局1Bともに電源停止検出直後のt7に送信を行うよう指示しており、子局1Aと子局1Bは、その指示にしたがい、同じt7のタイミングでデータを送信する。本実施の形態に係る通信方法で通信を行うことにより、子局1Bは、キャリアセンスによる遅延を回避し、
図10の比較例よりも短い時間で全ての通信を行うことができる。
【0053】
なお、
図6や
図9の例では、2台の子局で構成されたネットワークとしているが、子局の数をN台として装置台数を増加させても同様の通信方法により、より短い時間で全ての通信を行うことができる。また、親局と子局は定期的にバックアップ通信可能時間を確認し、電源停止通知の送信順番とタイミングを見直す機能を具備してもよい。さらに、親局はと子局は、事前に決めた送信時間に対して、実際の通信時間が短縮(または延長)した際に、時間のずれを検出し、補正する機能を具備してもよい。また、親局は、子局の電源停止通知データの送信タイミングをスケジューリングした結果、送信の間に合わない子局を検出し、監視システムにアラーム通知する機能を具備することもできる。さらに、電源停止通知タイミングの指示方法を、電源停止検出してから送信するまでの時間とする代わりに、自局の前に通知する他の子局のIDを通知し、該当子局に対する親局のAck信号を傍受し、自局の送信開始トリガとする機能でもよい。
【0054】
以上のように、本実施の形態では、無線通信装置が同時に電源停止した時に、短時間でより多くの無線通信装置から電源停止通知を収集することを可能とする。すなわち、親局は、子局に対して事前に電源停止通知の送信タイミングを指定しておくことで、同時に電源停止が発生した時に、『かくれ端末問題』による再送信や、『さらし端末』による送信待機を回避する。また、子局のバックアップ通信可能時間を比較し、該当時間の短い子局を優先的に通信させることで短時間でより多くの子局から電源停止通知を収集することを実現する。ここで、子局は、電源供給停止を検知してから自身が機能停止するまでの電源停止通知が可能な時間(バックアップ通信可能時間)を算出し、親局に対して、自身のバックアップ通信可能時間を通知する機能と親局の指示に従い、指定されたタイミングで電源停止の通知を行う機能を具備する。そして、親局は、複数の子局から通知されたバックアップ通信可能時間から効率的な通信順番を判定する機能と子局に対して送信タイミングを指定する機能を具備する。これにより、親局から子局の送信タイミングを制御し、効率的に電源停止の通信を行うことで、より多くの子局から電源停止通知の情報を確実に入手することができる。
【0055】
(実施の形態2)
以下、図面を参照して実施の形態2について説明する。本実施の形態では、実施の形態1の構成に加えて中継局の機能を備える例について説明する。
【0056】
図12は、本実施の形態に係る無線通信システムの構成を示している。
図12に示すように、本実施の形態に係る無線通信システム6は、親局2と子局1(この例では1B)の間に、中継局4を備えている。中継局4は、
図4の実施の形態1に係る子局1Aの機能に加えて、子局1Bと親局2の間を中継する機能を具備する。なお、本実施の形態では、親局2は、中継する子局数も考慮して各子局1の通知タイミングを決定してもよい。
【0057】
中継局4は、
図14の子局1Aのバックアップ電源部11、バックアップ通信可能時間判定&通知部12、電源停止検出部13、電源停止通知タイミング制御部14、無線送信部15、無線受信部16と同様の機能を具備し、その他に電源停止検出多重部17を具備する。
【0058】
電源停止検出多重部17は、親局2からの指示に従い、子局1Bの電源停止検出信号を受信し、子局1Bの電源停止検出信号に自局(中継局4)の電源停止検出部13の検出結果を多重した信号を生成し、電源停止通知タイミング制御部14へ知らせる機能となる。電源停止通知タイミング制御部14は、子局1Bの電源停止検出信号及び自局の電源停止検出信号が多重された検出信号を、親局2の電源停止通知抽出部23へ通知する。
【0059】
次に、
図12の中継局4の機能を使用した本実施の形態に係る通信方法について説明をする。まず、
図13に、比較例として、
図12の中継局4の機能を使用していないネットワーク構成の一例を示す。
図13のネットワーク構成例は、親局2と子局1A〜1Cを備えており、親局2と子局1A、親局2と子局1B、親局2と子局1Cの間でそれぞれ通信を行う。また、子局1A〜1Cは、電源3から同じ電源が供給されている。
【0060】
子局1Aは、電源3から電源供給される送電線路201Aの電源監視を行い、電源停止を検出した場合に、電源停止情報を親局2へと通知する。同様に、子局1Bは、電源3から電源供給される送電線路201Bの電源監視を行い、電源停止を検出した場合に、電源停止情報を親局2へ通知する。子局1Cは、電源3から電源供給される送電線路201Cの電源監視を行い、電源停止を検出した場合に、電源停止情報を親局2へと通知する。
【0061】
図14は、
図13のネットワーク構成における、実施の形態1と同様の比較例の通信のタイミング図である。実施の形態1と同様、事前に子局1Aと子局1Bと子局1Cのそれぞれは、自局のバックアップ通信可能時間を親局2へと通知し、電源停止通知データの送信タイミング(t8、t9、t10)の指示を受けている。この例では、親局2は、バックアップ通信可能時間の短い順に、子局1A、子局1B、子局1Cの順番となるように、送信タイミングを指示しており、子局1A、子局1B、子局1Cは、その指示に従い、それぞれt8、t9、t10にデータを送信する。このため、実施の形態1と同様に、子局1A〜1Cは、データの衝突を回避しつつ短時間で電源停止を通知することができる。
【0062】
一方、
図15は、
図13のネットワーク構成に対し、本実施の形態に係る中継局4を適用したネットワーク構成例を示している。
図15に示すように、この例では、子局1Cが、
図12の中継局4の機能を具備し、子局1Bの中継局として動作する。
【0063】
図16は、
図15のネットワーク構成における、本実施の形態に係る通信のタイミング図である。親局2は、事前に、子局1Bに対して、電源停止検出直後のt11に子局1Cに対して通信を行うよう指示し、子局1Cに対して、子局1Bの通信結果と自局の監視結果を多重して通信するタイミング(t12)を指示する。この時、子局1Aと親局2との間で行う通信信号と子局1Bと子局1Cとの間で行う通信信号として、互いに影響を受けない周波数帯域や直交するキャリアを使用するように、子局1A〜1Cに指示する。
【0064】
図16に示すように、この例では、子局1A及び1Bは、親局2の指示にしたがい、電源停止検出直後のt11にデータを送信し、その後、子局1Cは、t12に子局1Bと子局1Cのデータを多重したデータを送信する。子局1Cが本実施の形態に係る中継機能を具備することで、
図14の比較例よりも短い時間で通信を実現することができる。ここで、中継局に、親局と同様の電源停止通知タイミング判定機能を具備させ、該当中継局配下の子局の通知タイミングを管理させることもできる。
【0065】
以上のように、実施の形態1の構成に加えて中継局の機能を備えていてもよい。子局が中継局の機能を備えることで、他の子局の電源停止を多重化して親局に通知できるため、さらに効率よく確実に電源停止を通知することができる。
【0066】
(実施の形態3)
以下、図面を参照して実施の形態2について説明する。本実施の形態では、実施の形態1や2における親局が複数のアンテナを備える例について説明する。
【0067】
図17は、本実施の形態に係る無線通信システムの構成を示している。
図17に示すように、本実施の形態では、親局2が2つのアンテナ32A及び32Bを具備する。ここでアンテナ32Aを使用する通信信号とアンテナ32Bを使用する通信信号は、互いが干渉しない周波数帯、偏波、符号を使用した信号となる。本実施の形態では、親局2は、電源停止通知タイミングに加えて、もしくは、電源停止通知タイミングに含めて、周波数帯、偏波、符号情報を子局へ指示する。各子局1は、親局2の指示に従い、周波数帯、偏波、符号を使用し、指定タイミングで電源停止を通知する。なお、本実施の形態では、親局2は、親局2のアンテナ数も考慮して各子局1の通知タイミングを決定してもよい。
【0068】
図18は、比較例のネットワーク構成例を示しており、
図19は、本実施の形態に係るネットワーク構成例を示している。
図18及び
図19のネットワーク構成は、親局2及び子局1A〜1Dを備えており、親局2と子局1A、親局2と子局1B、親局2と子局1C、親局2と子局1Dの間でそれぞれ通信を行う。子局1A〜1Dは、電源3から同じ電源が供給されており、電源3からの電源停止を検出した場合に、親局2から事前に指示された周波数帯等及び指示タイミングで、それぞれ電源停止を親局2へ通知する。
【0069】
図20は、
図18のネットワーク構成における、比較例の通信のタイミング図である。
図20は、子局1Bが、バックアップ通信可能な限界時間(バックアップ通信可能が経過する時間)に到達し、通信タイムアウトとなる状態を示している。すなわち、子局1Aと子局1Cは、親局2の指示にしたがい、電源停止直後のt13にデータを送信する。子局1Aはアンテナ32Aを介するようデータを送信し、子局1Cはアンテナ32Bを介するようデータを送信する。その後、子局1Bと子局1Dは、タイミングt14にデータを送信する。子局1Bはアンテナ32Aを介するようデータを送信し、子局1Dはアンテナ32Bを介するようデータを送信する。このとき、子局1Bの送信中にバックアップ通信可能時間が過ぎてしまい、データ送信が中止となる。
【0070】
これに対し、本実施の形態では、親局2は、事前にバックアップ通信可能時間から子局1Bと子局1Cの送信信号とタイミングを変更する指示を行ない、
図19に示すネットワークを構築する。
図21は、
図19のネットワーク構成における、本実施の形態に係るタイミング図である。
図21に示すように、子局1Aと子局1Bは、親局2の指示にしたがい、電源停止直後のt15にデータを送信する。子局1Aはアンテナ32Aを介するようデータを送信し、子局1Bはアンテナ32Bを介するようデータを送信する。その後、子局1Cと子局1Dは、タイミングt16にデータを送信する。子局1Cはアンテナ32Aを介するようデータを送信し、子局1Dはアンテナ32Bを介するようデータを送信する。このように、子局1Bの送信タイミングを
図20よりも早くすることで、バックアップ通信可能時間が過ぎる前に、親局2へ正常な通知を行うことができる。
【0071】
以上のように、実施の形態1や2の構成において親局が複数のアンテナを有し、それぞれのアンテナで子局から電源停止の通知を受信してもよい。これにより、さらに効率よく確実に電源停止を通知することができる。
【0072】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0073】
上述の実施形態における各構成は、ハードウェア又はソフトウェア、もしくはその両方によって構成され、1つのハードウェア又はソフトウェアから構成してもよいし、複数のハードウェア又はソフトウェアから構成してもよい。各装置の機能(処理)を、CPUやメモリ等を有するコンピュータにより実現してもよい。例えば、記憶装置に実施形態における方法(無線通信装置の制御方法や無線収集装置の制御方法)を行うためのプログラムを格納し、各機能を、記憶装置に格納されたプログラムをCPUで実行することにより実現してもよい。
【0074】
これらのプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【解決手段】無線通信装置100は、電源停止時に通信動作が可能な停電動作可能時間を算出する算出部101と、算出された停電動作可能時間を無線収集装置110へ通知する通知部102と、電源停止が検出された場合、停電動作可能時間に応じて無線収集装置110から指示された停電通報タイミングで無線収集装置110へ電源停止を通報する通報部103と、を備える。