(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂部分のヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)への溶解分が、前記ポリアミド樹脂組成物中に含まれるポリアミド樹脂部分の50質量%以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の成形体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0015】
〔ポリアミド樹脂組成物を含む成形体〕
本実施形態の成形体は、ポリアミド樹脂組成物を含む成形体であって、
(前記成形体の表面から深さ3μmまでの領域のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属平均元素濃度)/(前記成形体の表面から深さ3μmまでの領域を除いた領域のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属平均元素濃度)>2である。
【0016】
以下、本実施形態に係るポリアミド樹脂成形体について詳細に説明する。
【0017】
((成形体の表面から深さ3μmまでの領域のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属平均元素濃度)/(成形体の表面から深さ3μmまでの領域を除いた領域のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属平均元素濃度)の算出方法))
先ず、成形体のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属平均元素濃度の測定方法について説明する。なお、成形体の表面から深さ3μmまでの領域のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属平均元素濃度と、成形体の表面から深さ3μmまでの領域を除いた領域のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属平均元素濃度の測定方法は、同じ方法を用いるものとする。
【0018】
成形体のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属平均元素濃度の測定方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、SEM(走査型電子顕微鏡)−EDX(エネルギー分散X線スペクトル)を用いることができる。
具体的には、本実施形態のポリアミド樹脂組成物を含む成形体を、表面に垂直方向に切断し、ダイアモンドナイフで平滑に切り出し、測定用の試料を得る。当該試料をSEM観察用試料台にカーボンテープで固定し、導通処理を実施し、SEM−EDX測定に供する。
EDX測定においては、測定視野領域における、試料の表面から深さ3μmまでの領域のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属元素検出強度と、試料の表面から深さ3μmまでの領域を除いた領域のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属元素検出強度を、それぞれの領域の相対平均元素濃度とする。
アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属元素検出強度は、測定領域中の一定の面積中の、一定の測定時間でのアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属元素検出量とする。
上記方法による測定値を用い、「(成形体表面から表面深さ3μmまでの領域のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属平均元素濃度)/(成形体表面から表面深さ3μmまでの領域を除いた領域のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属平均元素濃度)」を算出する。
【0019】
なお、成形体中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属濃度は、具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
以下に、測定装置及び測定条件の一例を示すが、測定装置は以下の装置に限られることはなく、また、測定条件は、当業者の一般的な知識を用いて適切に測定できる条件を適宜設定できる。
1.SEM観察
装置:日立製作所社製 商品名S−2700
2.EDX測定
装置:堀場製作所社製 商品名EMAX5770
加速電圧:20kV
試料電流:8×10
-10アンペア
【0020】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を含む成形体は、(成形体表面から表面深さ3μmまでの領域のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属平均元素濃度)/(成形体表面から表面深さ3μmまでの領域を除いた領域のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属平均元素濃度)>2である。
上記を満たすことにより、高温条件下で長時間使用した場合でも、高温下において実用上十分な機械的特性を有する、という効果が得られる。
【0021】
また、(成形体表面から表面深さ3μmまでの領域のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属平均元素濃度/成形体表面から表面深さ3μmまでの領域を除いた領域のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属平均元素濃度)の値は、高温条件下で長時間使用した場合でも、高温下においてより良好な機械的特性を有するという効果を得る観点から、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。上限としては、特に限定されないが、良好な表面外観を保つ観点から、10000以下であることが好ましい。
【0022】
また、高温条件下で長時間使用した場合でも、高温下においてより良好な機械的特性を有するという効果を得る観点から、前記アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属は、アルカリ金属であることが好ましく、ナトリウム、カリウムであることがより好ましい。
【0023】
本実施形態の成形体は、高温下での曲げ弾性率を向上させる観点から、成形体の表面から深さ1μmまでの領域にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の低級カルボン酸塩を含有することが好ましい。
【0024】
(成形体の表面から深さ1μmまでの領域に存在するアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の低級カルボン酸塩の測定方法)
成形体の表面から深さ1μmまでの領域に存在するアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の低級カルボン酸塩の測定方法について説明する。測定方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ATR法(全反射測定法)とイオンクロマトマス法を用いることができる。
ATR法は、測定用試料への光の侵入深さを入射角、プリズムの屈折率を変えることで調整することができる。ATR法を用いて、成形体表面から表面深さ1μmまでの領域にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の低級カルボン酸塩が存在するか否かを確認する。
または、成形体の表面から深さ1μmまでの領域をイオンクロマトマス法によって測定し、低級カルボン酸塩が存在するか否かを確認する。
なお、成形体中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の低級カルボン酸塩は、具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0025】
低級カルボン酸とは、炭素数が1以上10以下のカルボン酸であり、下記に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、アジピン酸などが挙げられる。
【0026】
アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の低級カルボン酸塩は、一種類の低級カルボン酸のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩が単独で存在してもよいし、複数の低級カルボン酸のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩の混合物として存在してもよい。
【0027】
また、高温条件下で長時間使用した際にも、高温下においてより良好な機械的特性を有するという効果を得る観点から、前記アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属は、アルカリ金属であることが好ましく、ナトリウム、カリウムであることがより好ましい。
【0028】
本実施形態の成形体は、高温下での引張強度、曲げ弾性率を向上させる観点から、成形体の表面から深さ10nmまでの領域にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の炭酸塩を含有することが好ましい。
【0029】
(成形体の表面から深さ10nmまでの領域に存在するアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の炭酸塩の測定方法)
本実施形態の成形体の表面から10nmまでの領域に存在するアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の炭酸塩の測定方法を説明する。
測定は、例えば、X線光電子分光(XPS)を用いて、成形体の表面から深さ10nmまでの領域にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の炭酸塩が存在するか否かを確認する。
なお、成形体中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の炭酸塩は、具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0030】
また、高温条件下で長時間使用した際にも、高温下においてより良好な機械的特性を有するという効果を得る観点から、前記アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属は、アルカリ金属であることが好ましく、ナトリウム、カリウムであることがより好ましい。
【0031】
本実施形態の成形体は、高温下での機械物性の更なる向上の観点から、アルミン酸金属塩を含有し、かつ固体27Al−NMR測定により、0〜30ppm、30〜60ppm、及び70〜100ppmの範囲に、それぞれ1本以上のピークを有することが好ましい。
【0032】
(固体27Al−NMR測定)
固体27Al−NMR測定は、以下の装置には限定されないが、例えば、核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製 商品名「ECA500」)を用いて行うことができる。
また、測定条件は、以下の条件には限定されないが、例えば、スピン数:8k/s、PD:5s、外部標準:硫酸カリウムアルミニウム:4.152ppm、BF:20.0Hz、温度:室温、を採用することができる。
なお、成形体の固体27Al−NMR評価は、具体的には、後述する実施例に記載する方法により実施することができる。
【0033】
本実施形態の成形体は、高温下での機械物性の更なる向上の観点から、重量平均分子量(Mw)が5万以上であることが好ましく、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が3以上であることが好ましい。
【0034】
(数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw))
本実施形態の成形体のMw、Mnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定することができ、これらの測定値を用いてMw/Mnを算出することができる。
なお、GPC法においては、測定用サンプルとしては本実施形態の成形体を用い、測定用の溶媒としては、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノールを用いることができ、PMMA換算の値を求める。
なお、成形体の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)は、成形体に含有されているポリアミド樹脂の測定値として得られる。
【0035】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を含む成形体は、高温下での機械物性の更なる向上の観点から、ポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂部分のヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)への溶解分が、前記ポリアミド樹脂組成物中に含まれるポリアミド樹脂部分の50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
(ポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂部分のヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)への溶解分の測定方法)
ポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂部分のヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)への溶解分の測定方法を説明する。
まず、本実施形態のポリアミド樹脂組成物を含む成形体を焼却し、残渣の質量から、無機物の含有量を求める。焼却の方法としては、以下の方法に限定されないが、例えば、るつぼ中で650℃にて3時間加熱焼却する。
次に、ポリアミド樹脂組成物を含む成形体をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解する。溶解分の測定方法としては、以下の方法に限定されないが、例えば、ポリアミド樹脂組成物を含む成形体1gをHFIP50mL中に浸漬し、室温にて24時間放置する。その後、HFIPに不溶の部分を取り出し、乾燥する。例えば、室温で24時間放置した後に、窒素中にて60℃に加熱して3時間乾燥する。その後、質量を測定する。
上述の無機物の含有量の測定結果と、HFIP溶解前後の質量から、無機物を除いたポリアミド樹脂部分のHFIPへの溶解分を求めることができる。
【0037】
また、本実施形態の成形体は、次式を満たす成形体を含む。
α/β>2
α:230℃における300時間以上の熱エージング処理の後の前記成形体の表面から深さ3μmまでの領域のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属平均元素濃度
β:230℃における300時間以上の熱エージング処理の後の前記成形体の表面から深さ3μmまでの領域を除いた領域のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属平均元素濃度
すなわち、本実施形態の成形体は、前記熱エージング処理が未だ施されていない成形体であって、上記熱エージング処理を施すことによって上記式を満たすようになる成形体を含む。
【0038】
また、高温条件下で長時間使用した場合でも、高温下においてより良好な機械的特性を有するという効果を得る観点から、前記アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属は、アルカリ金属であることが好ましく、ナトリウム、カリウムであることがより好ましい。
【0039】
本実施形態の成形体は、ポリアミド樹脂組成物を含む成形体であって、230℃における300時間以上の熱エージング処理の後、前記成形体の表面から深さ1μmまでの領域にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の低級カルボン酸塩を含有する成形体であることが好ましい。
すなわち、本実施形態の成形体は、前記熱エージング処理が未だ施されていない成形体であって、前記熱エージング処理を施すことによって、前記成形体の表面から深さ1μmまでの領域に、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の低級カルボン酸塩を含有する、という条件を満たす成形体を含む。
【0040】
また、高温条件下で長時間使用した場合でも、高温下においてより良好な機械的特性を有するという効果を得る観点から、前記アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属は、アルカリ金属であることが好ましく、ナトリウム、カリウムであることがより好ましい。
【0041】
本実施形態の成形体は、ポリアミド樹脂組成物を含む成形体であって、230℃における300時間以上の熱エージング処理の後、前記成形体の表面から深さ10nmまでの領域にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の炭酸塩を含有する成形体であることが好ましい。
すなわち、本実施形態の成形体は、前記熱エージング処理が未だ施されていない成形体であって、前記熱エージング処理を施すことによって、前記成形体の表面から深さ10nmまでの領域に、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の炭酸塩を含有する、という条件を満たす成形体を含む。
【0042】
また、高温条件下で長時間使用した際にも、高温下においてより良好な機械的特性を有するという効果を得る観点から、前記アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属は、アルカリ金属であることが好ましく、ナトリウム、カリウムであることがより好ましい。
【0043】
本実施形態の成形体は、ポリアミド樹脂組成物を含む成形体であって、230℃における300時間以上の熱エージング処理の後、当該成形体中にアルミン酸金属塩を含むものであり、固体27Al−NMR測定により、0〜30ppm、30〜60ppm、及び70〜100ppmの範囲に、それぞれ1本以上のピークを有する成形体であることが好ましい。
すなわち、本実施形態の成形体は、前記熱エージング処理が未だ施されていない成形体であって、前記熱エージング処理を施すことによって、当該成形体中にアルミン酸金属塩を含み、固体27Al−NMR測定により、0〜30ppm、30〜60ppm、及び70〜100ppmの範囲に、それぞれ1本以上のピークを有する、という条件を満たす成形体を含む。
【0044】
本実施形態の成形体は、ポリアミド樹脂組成物を含む成形体であって、230℃における300時間以上の熱エージング処理の後、Mwが5万以上であることが好ましく、Mw/Mnが3以上であることが好ましい。
すなわち、本実施形態の成形体は、前記熱エージング処理が未だ施されていない成形体であって、前記熱エージング処理を施すことによって、Mwが5万以上であり、Mw/Mnが3以上である、という条件を満たす成形体を含む。
なお、Mw、Mnは、GPC法により測定することができ、具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0045】
本実施形態の成形体は、ポリアミド樹脂組成物を含む成形体であって、230℃における300時間以上の熱エージング処理の後、前記ポリアミド樹脂組成物中に含まれるポリアミド樹脂部分のヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)への溶解分が、前記ポリアミド樹脂組成物中に含まれるポリアミド樹脂部分の50質量%以下であることが好ましい。
すなわち、本実施形態の成形体は、前記熱エージング処理が未だ施されていない成形体であって、前記熱エージング処理を施すことによって、前記ポリアミド樹脂組成物中に含まれるポリアミド樹脂部分のヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)への溶解分が、前記ポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂部分の50質量%以下である、という条件を満たすものを含む。
【0046】
以下、本実施形態に係るポリアミド樹脂組成物を含む成形体の具体的な各構成要素について詳細に説明する。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を含む成形体の製造方法に関しては、特に限定されないが、以下の方法を好ましく用いることができる。
【0047】
((A)ポリアミド樹脂)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂(以下、「(A)成分」と記載する場合もある。)を含有する。
「ポリアミド樹脂」とは、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を有する重合体である。
(A)ポリアミド樹脂は、以下に限定されるものではないが、例えば、ジアミン及びジカルボン酸の縮合重合で得られるポリアミド樹脂、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド樹脂、アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド樹脂、及びこれらのポリアミド樹脂を構成する2種類以上の単量体の共重合で得られる共重合物が挙げられる。
(A)ポリアミド樹脂としては、前記ポリアミド樹脂の1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
以下、ポリアミド樹脂の原料について説明する。
【0048】
<ジアミン>
前記ジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0049】
前記脂肪族ジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン等の炭素数2〜20の直鎖飽和脂肪族ジアミン;例えば、2−メチルペンタメチレンジアミン(2−メチル−1,5−ジアミノペンタンとも記される。)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、2,4−ジメチルオクタメチレンジアミン等の炭素数3〜20の分岐状飽和脂肪族ジアミン;等が挙げられる。当該分岐状飽和脂肪族ジアミンとしては、例えば、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンが挙げられる。
【0050】
前記脂環族ジアミン(脂環式ジアミンとも記される。)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロペンタンジアミン等が挙げられる。
【0051】
前記芳香族ジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、オルトフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0052】
<ジカルボン酸>
前記ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0053】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、ジグリコール酸等の、炭素数3〜20の直鎖又は分岐状飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0054】
前記脂環族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸の脂環構造の炭素数は、特に限定されないが、得られるポリアミド樹脂の吸水性と結晶化度のバランスの観点から、好ましくは3〜10であり、より好ましくは5〜10である。
【0055】
前記脂環族ジカルボン酸は、無置換でもよいし、置換基を有していてもよい。
置換基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基等が挙げられる。
【0056】
前記芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無置換又は置換基で置換された炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
置換基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基等のハロゲン基、炭素数3〜10のアルキルシリル基、スルホン酸基、及びナトリウム塩などのその塩である基などが挙げられる。
前記芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。
【0057】
前記ジカルボン酸中には、本発明の目的を損なわない範囲で、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸をさらに含んでもよい。
上述したジアミン及びジカルボン酸は、それぞれ1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
<ラクタム>
前記ラクタムとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ブチロラクタム、ピバロラクタム、ε−カプロラクタム、カプリロラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、及びラウロラクタム(ドデカノラクタム)等が挙げられる。
これらの中でも、靭性の観点から、ε−カプロラクタム、ラウロラクタム等が好ましく、ε−カプロラクタムがより好ましい。
【0059】
<アミノカルボン酸>
前記アミノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、上述したラクタムが開環した化合物(ω−アミノカルボン酸、α,ω−アミノカルボン酸等)等が挙げられる。
前記アミノカルボン酸としては、結晶化度を高める観点から、ω位がアミノ基で置換された、炭素数4〜14の直鎖又は分岐状の飽和脂肪族カルボン酸であることが好ましい。アミノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。前記アミノカルボン酸としては、パラアミノメチル安息香酸等も挙げられる。
【0060】
上述した(A)ポリアミド樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド4(ポリα−ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド56(ポリペンタメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、ポリアミド116(ポリウンデカメチレンアジパミド)、ポリアミドTMHT(トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド2Me−5T(ポリ2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナメチレンテレフタルアミド)、2Me−8T(ポリ2−メチルオクタメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリアミド6C(ポリヘキサメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド2Me−5C(ポリ2−メチルペンタメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド9C(ポリノナメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、2Me−8C(ポリ2−メチルオクタメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミドPACM12(ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド)、ポリアミドジメチルPACM12(ポリビス(3−メチル−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)、ポリアミド10T(ポリデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド11T(ポリウンデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド12T(ポリドデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド10C(ポリデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド11C(ポリウンデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド12C(ポリドデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)等のポリアミド樹脂が挙げられる。
なお、前記「Me」は、メチル基を示す。
【0061】
(A)ポリアミド樹脂としては、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)及びポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミドが好ましい。
【0062】
特に、耐熱エージング性を更に向上させる観点から、(A)ポリアミド樹脂がポリアミド66であることが好ましい。
【0063】
(A)ポリアミド樹脂の融点は、特に限定されないが、好ましくは200℃以上であり、より好ましくは210℃以上であり、さらに好ましくは240℃以上である。(A)ポリアミド樹脂の融点を、200℃以上とすることにより、本実施形態の成形体の耐熱性が向上する傾向にある。また、(A)ポリアミド樹脂の融点の上限値としては、特に限定されないが、好ましくは340℃以下である。(A)ポリアミド樹脂の融点を340℃以下とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の溶融加工中の熱分解や劣化をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0064】
(A)ポリアミド樹脂の融点は、JIS−K7121に準じて測定することができる。測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製、商品名Diamond DSC等を用いることができる。具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0065】
ポリアミド樹脂組成物中の(A)ポリアミド樹脂の含有量は、33質量%以上95質量%以下であることが好ましく、50質量%以上75質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、上記範囲で(A)ポリアミド樹脂を含有することにより、強度、耐熱性、耐薬品性、比重などに優れる傾向がある。
【0066】
(A)ポリアミド樹脂の硫酸相対粘度は、1.8以上3.0以下であることが好ましく、2.2以上2.8以下であることがより好ましい。上記硫酸相対粘度が1.8以上であることで、より機械物性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られる傾向にある。また、上記硫酸相対粘度が3.0以下であることで、より流動性及び外観に優れたポリアミド樹脂組成物が得られる傾向にある。
上記硫酸相対粘度は、(A)ポリアミド樹脂の重合時の圧力を調整することにより制御することができる。
なお、前記硫酸相対粘度は、JIS K 6920に準じた方法により測定することができる。具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0067】
(A)ポリアミド樹脂のモノマーを重合させる際には、分子量調節のために末端封止剤をさらに添加することができる。この末端封止剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。末端封止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、無水フタル酸などの酸無水物;モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類等が挙げられる。これらの中でも、(A)ポリアミド樹脂の熱安定性の観点から、モノカルボン酸及びモノアミンが好ましい。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環族モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環族モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン;等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
末端封止剤として使用できる酸無水物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水安息香酸、無水酢酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
末端封止剤として使用できるモノイソシアネートとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
末端封止剤として使用できるモノ酸ハロゲン化物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、安息香酸、ジフェニルメタンカルボン酸、ジフェニルスルホンカルボン酸、ジフェニルスルホキシドカルボン酸、ジフェニルスルフィドカルボン酸、ジフェニルエーテルカルボン酸、ベンゾフェノンカルボン酸、ビフェニルカルボン酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、アントラセンカルボン酸等のモノカルボン酸等のハロゲン置換モノカルボン酸が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
末端封止剤として使用できるモノエステルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノモンタネート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノベヘネート、ペンタエリスリトールモノモンタネート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンモノモンタネート、ソルビタンジモンタネート、ソルビタントリモンタネート、ソルビトールモノパルミテート、ソルビトールモノステアレート、ソルビトールモノベヘネート、ソルビトールトリベヘネート、ソルビトールモノモンタネート、ソルビトールジモンタネート等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
末端封止剤として使用できるモノアルコールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、トリアコンタノール(以上、直鎖状、分岐状)、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、フェノール、クレゾール(o−、m−、p−体)、ビフェノール(o−、m−、p−体)、1−ナフトール、2−ナフトール等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
((B)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を含む成形体においては、前記ポリアミド樹脂組成物中に、(B)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物(以下、「(B)成分」と記載する場合がある。)を含有する。
(B)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルミン酸のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属塩、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属の炭酸水素塩、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のカルボン酸塩などが挙げられる。
【0076】
アルミン酸のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルミン酸リチウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸ベリリウム、アルミン酸マグネシウム、アルミン酸カルシウム等が挙げられる。
アルミン酸のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属塩は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
耐熱エージング性を向上させる観点から、アルミン酸のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属塩としては、アルミン酸アルカリ金属塩が好ましく、アルミン酸ナトリウムがより好ましい。
【0077】
アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の炭酸塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の炭酸塩は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
アルカリ金属の炭酸水素塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられる。
アルカリ金属の炭酸水素塩は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。
アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のカルボン酸塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム、クエン酸1ナトリウム、クエン酸3ナトリウム、イソフタル酸ナトリウム、アジピン酸ナトリウムなどが挙げられる。
アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のカルボン酸塩は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
本実施形態の成形体に含まれるポリアミド樹脂組成物においては、(B)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物の含有量は、前記(A)成分と後述する(C3):(A)成分の融点よりも低い融点を有する結晶性の熱可塑性樹脂及び/又は(A)成分のビカット軟化点よりも低いビカット軟化点を有する非晶性の熱可塑性樹脂の合計100質量部に対して、0.6質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.8質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以上10質量部以下であることがさらに好ましく、1.0質量部以上5質量部以下であることがさらにより好ましい。(B)成分の含有量が(A)成分と(C3)成分の合計100質量部に対して0.6質量部以上であると、良好な強度を得ることができる傾向にあり、20質量部以下であると、生産時の安定性が高まる傾向にある。
【0082】
本実施形態の成形体に含まれるポリアミド樹脂組成物においては、(B)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物は、当該アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物(B)成分中、粒子径が1μm以上であるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物の粒子の含有量が20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることがよりさらに好ましい。
粒子径が1μm以上のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物の粒子の含有量が、(B)成分中、20質量%以下であることにより、本実施形態の成形体においてより優れた耐熱エージング性が得られる傾向にある。
ここで、(B)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物の粒子径とは、好ましくは、本実施形態の成形体に存在するアルミン酸金属塩の粒子径である。
ポリアミド樹脂組成物中での(B)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物の粒子径は、例えば、ポリアミド樹脂組成物をギ酸に溶解させ、レーザー回折式粒度分布装置を用いることにより測定することができる。
【0083】
上記のように、当該(B)成分中、粒子径が1μm以上であるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物の粒子の含有量を20質量%以下に抑制するためには、水分の少ない状態で(B)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物と(A)ポリアミド樹脂とを混合することが有効である。
例えば、押出機を用いて(B)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物を(A)ポリアミド樹脂に溶融混練する方法が挙げられる。
一方、(A)ポリアミド樹脂の縮合重合工程で(B)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物を含有させると、(B)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物が大径化するおそれがある。すなわち(A)ポリアミド樹脂の重合工程が完了し、(A)ポリアミド樹脂を取り出し、ポリアミド樹脂組成物の製造工程である溶融混練の段階で(A)成分と(B)成分とを混合することが好ましい。
【0084】
((C)下記(C1)〜(C3)からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物)
本実施形態の成形体に含まれるポリアミド樹脂組成物は、(C)成分として、下記(C1)〜(C3)からなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の化合物を含有することが好ましい。
(C1)周期律表の第3族、第4族、第11族、第13族、第14族からなる群より選ばれる一種以上の金属元素の塩
(C2)ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、及び有機リン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一の有機熱安定剤
(C3)(A)成分の融点よりも低い融点を有する結晶性の熱可塑性樹脂及び/又は(A)成分のビカット軟化点よりも低いビカット軟化点を有する非晶性の熱可塑性樹脂
【0085】
(C)成分としては、上記した中の1つのみを単独で用いてもよいが、2つ以上を併用することが、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性をさらに向上させる観点から好ましい。
【0086】
<(C1)周期律表の第3族、第4族、第11族、第13族、第14族からなる群より選ばれる一種以上の金属元素の塩>
本実施形態の成形体に含まれるポリアミド樹脂組成物は、耐熱エージング性を向上させる観点から、(C1)周期律表の第3族、第4族、第11族、第13族、第14族からなる群より選ばれる一種以上の金属元素の塩(以下、(C1)成分、(C1)と記載する場合がある。)を含有することが好ましい。
【0087】
周期律表の第3族、第4族、第11族、第13族、第14族からなる群より選ばれる一種以上の金属元素の塩としては、これらの族に属する金属元素の塩であれば、特に限定されるものではない。
【0088】
前記(C1)周期律表の第3族、第4族、第11族、第13族、第14族からなる群より選ばれる一種以上の金属元素の塩としては、耐熱エージング性を一層向上させる観点から、銅塩が好ましい。
当該銅塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン化銅(ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅など)、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、サリチル酸銅、ニコチン酸銅及びステアリン酸銅、並びにエチレンジアミン及びエチレンジアミン四酢酸などのキレート剤に銅の配位した銅錯塩が挙げられる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
上記で列挙した銅塩の中でも、好ましくはヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅及び酢酸銅よりなる群から選択される1種以上であり、より好ましくはヨウ化銅及び/又は酢酸銅である。
前記(C1)成分として銅塩を用いた場合、耐熱エージング性に優れ、かつ押出時のスクリューやシリンダー部の金属腐食(以下、単に「金属腐食」ともいう。)を効果的に抑制できるポリアミド樹脂組成物が得られる傾向にある。
【0090】
本実施形態の成形体に含まれるポリアミド樹脂組成物中における(C1)成分の含有量は、当該(C1)が含有成分として選択される場合には、熱可塑性樹脂である前記(A)成分と前記(C3)成分の合計100質量部に対して、前記(C1)のうちの金属元素換算の含有量が、0.001〜0.05質量部であることが好ましい。前記金属元素換算の含有量は、0.003〜0.05質量部であることがより好ましく、0.005〜0.03質量部であることがさらに好ましい。(C1)成分の含有量が0.001質量部以上であると、耐熱エージング性に優れる傾向にあり、0.05質量部以下であると、生産性に優れる傾向にある。
前記(C1)成分として特に銅塩を用いる場合、本実施形態のポリアミド樹脂組成物中における銅塩の金属元素としての含有量は、熱可塑性樹脂である前記(A)成分と前記(C3)成分の合計100質量部に対して、0.001〜0.05質量部であることが好ましく、より好ましくは0.003〜0.05質量部であり、さらに好ましくは0.005〜0.03質量部である。銅塩の含有量が上記範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させるとともに、銅の析出や金属腐食を効果的に抑制することができる傾向にある。
【0091】
本実施形態の成形体に含まれるポリアミド樹脂組成物においては、前記(C1)周期律表の第3族、第4族、第11族、第13族、第14族からなる群より選ばれる一種以上の金属元素の塩1質量部に対し、前記(B)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物が1質量部以上含まれること、すなわち前記(C1)成分に対する(B)成分の質量比((B)/(C1))が1以上であることが耐熱エージング性向上の観点から好ましい。
より優れた耐熱エージング性と生産性の観点から、前記(C1)1質量部に対する前記(B)の含有量は5質量部以上500質量部以下であることがより好ましく、15質量部以上500質量部以下であることがさらに好ましく、25質量部以上500質量部以下であることがさらにより好ましく、35質量部以上500質量部以下であることがよりさらに好ましく、45質量部以上500質量部以下であることが特に好ましい。
【0092】
<(C1−2)アルカリ金属のハロゲン化物及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物>
本実施形態の成形体に含まれるポリアミド樹脂組成物は、耐熱エージング性の向上の観点から、(C1−2)アルカリ金属のハロゲン化物及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物(以下、(C1−2)成分、(C1−2)と記載する場合がある。)を含有することが好ましい。
アルカリ金属のハロゲン化物及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム及び塩化ナトリウム、並びにこれらの混合物が挙げられる。
中でも、耐熱エージング性の向上及び金属腐食の抑制という観点から、好ましくはヨウ化カリウム及び/又は臭化カリウムであり、より好ましくはヨウ化カリウムである。
【0093】
本実施形態の成形体に含まれるポリアミド樹脂組成物における(C1−2)成分の含有量は、熱可塑性樹脂である前記(A)成分と前記(C3)成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部であり、より好ましくは0.2〜2質量部である。
(C1−2)成分の含有量が上記範囲内の場合、耐熱エージング性が一層向上するとともに、銅の析出や金属腐食を効果的に抑制することができる傾向にある。
【0094】
前記(C1)成分と前記(C1−2)成分は、それぞれにおいて、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、耐熱エージング性を一層向上させる観点から、前記(C1)成分として銅塩と、前記(C1−2)成分としてアルカリ金属のハロゲン化物及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物と、を組み合わせて用いることが好ましい。
【0095】
前記(C1)成分の金属元素と前記(C1−2)成分のハロゲン元素のとのモル比(ハロゲン元素/金属元素)は、2〜50であることが好ましく、2〜40であることがより好ましく、5〜30であることがさらに好ましい。モル比が上記範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させることができる傾向にある。
【0096】
<(C2)ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、及び有機リン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一の有機熱安定剤>
本実施形態の成形体に含まれるポリアミド樹脂組成物は、耐熱エージング性の向上の観点から、(C2)ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、及び有機リン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機熱安定剤(以下、(C2)成分、(C2)と記載する場合がある。)を含有することが好ましい。
【0097】
[ヒンダードフェノール化合物]
(C2)成分としてのヒンダードフェノール化合物は、以下に限定されるものではないが、例えば、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3, 5−ジ−t−ブチル−4− ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2−チオビス(4−メチル−6−1−ブチルフェノール)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロキシンナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4、6−トリス(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルスルホン酸)エチルカルシウム、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクチル化ジフェニルアミン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール、3,9− ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t −ブチル−4− ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ] エチル]2,4, 8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−T−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、d−α−トコフェロールなどが挙げられる。
これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0098】
[ヒンダードアミン化合物]
(C2)成分としてのヒンダードアミン化合物は、以下に限定されるものではないが、例えば、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。
これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0099】
[有機リン化合物]
(C2)成分としての有機リン化合物は、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスフォナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、フェニルジイソデシルフォスファイト、4,4−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニル・フェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジフォスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10− ホスファフェナントレンなどが挙げられる。
上述したヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、及び有機リン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機熱安定剤は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0100】
上記で列挙した(C2)成分:有機熱安定剤の中でも、ヒンダードフェノール化合物が好ましく、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]がより好ましい。上記ヒンダードフェノール化合物を用いた場合、より耐熱エージング性に優れる成形体が得られる傾向にある。
【0101】
本実施形態の成形体に含まれるポリアミド樹脂組成物においては、耐熱エージング性及び生産性の観点から、前記(C2)成分が含有成分として選択される場合には、熱可塑性樹脂((A)成分と(C3)成分の合計)100質量部に対し、前記(C2)ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、及び有機リン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機熱安定剤が0.8〜20質量部含まれることが好ましい。
前記(C2)の含有量は1質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、1.5質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、2.5質量部以上10質量部以下であることがさらに好ましく、4質量部以上10質量部以下であることがさらにより好ましく、6質量部以上10質量部以下であることがよりさらに好ましい。
【0102】
<(C3)前記(A)ポリアミド樹脂の融点よりも低い融点を有する結晶性の熱可塑性樹脂及び/又は前記(A)ポリアミド樹脂のビカット軟化点よりも低いビカット軟化点を有する非晶性の熱可塑性樹脂>
本実施形態の成形体に含まれるポリアミド樹脂組成物は、耐熱エージング性の向上の観点から、(C3)前記(A)ポリアミド樹脂の融点よりも低い融点を有する結晶性の熱可塑性樹脂及び/又は前記(A)ポリアミド樹脂のビカット軟化点よりも低いビカット軟化点を有する非晶性の熱可塑性樹脂(以下、「(C3)成分」と記載する場合がある。)を含有することが好ましい。
前記(C3)成分としては、後述する(A)成分の融点よりも低い融点を有する結晶性の熱可塑性樹脂、(A)成分のビカット軟化点よりも低いビカット軟化点を有する非晶性の熱可塑性樹脂並びに熱可塑性エラストマーが挙げられる。
当該(C3)成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンエーテル、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
【0103】
(C3)成分としては、初期強度の観点から(A)成分の融点よりも低い融点を有する結晶性の熱可塑性樹脂であることが好ましい。例えば、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂がより好ましい。
(C3)成分としては、上述した熱可塑性樹脂のうち1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0104】
本実施形態の成形体に含まれるポリアミド樹脂組成物における(C3)成分の含有量は、当該(C3)成分が含有成分として選択される場合には、熱可塑性樹脂である前記(A)成分と前記(C3)成分の合計100質量部に対し、1〜50質量部であることが好ましい。(C3)成分の含有量を上記範囲内とすることで、高温条件下での剛性を保持しつつ高い耐熱エージング性を発揮できる傾向にある。(C3)成分の含有量は、高温剛性と耐熱エージング性のバランスの観点から、前記(A)成分と前記(C3)成分との合計100質量部に対し、5質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上40質量部以下であることがさらに好ましい。
【0105】
耐熱エージング性向上の観点から、前記(C3)成分として、融点240℃未満のポリアミド樹脂を用いることが好ましく、融点230℃未満のポリアミド樹脂を用いることがより好ましい。
【0106】
同様に、耐熱エージング性向上の観点から、前記(C3)成分としては、ポリアミド6及び/又は含有する窒素原子数に対する炭素原子数の比(C/N)が7以上20以下であるポリアミド樹脂を用いることがより好ましい。含有する窒素原子数に対する炭素原子数の比(C/N)が7以上20以下であるポリアミド樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、PA610、PA612等が挙げられる。
【0107】
前記(C3)成分として使用する熱可塑性樹脂は、非晶性の場合は、耐熱エージング性の更なる向上の観点から、ビカット軟化点が上述した(A)ポリアミド樹脂のビカット軟化点よりも低いものとする。前記(C3)成分のビカット軟化点は、好ましくは235℃以下であり、より好ましくは230℃以下であり、さらに好ましくは220℃以下である。
【0108】
前記(C3)成分として使用し得る熱可塑性ポリエステル樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0109】
前記(C3)成分は、上述したように、耐熱エージング性向上の観点から、当該(C3)成分が含有する窒素原子数に対する炭素原子数の比(C/N)が7以上20以下のポリアミド樹脂であることが好ましい。前記窒素原子数に対する炭素原子数の比(C/N)は、7以上18以下であることが好ましく、8以上16以下であることがより好ましい。
【0110】
上記熱可塑性樹脂の融点は、JIS−K7121に準じて測定することができる。
測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製、Diamond DSC等を用いることができる。
上記熱可塑性樹脂のビカット軟化点は、JIS−K7206に準じて測定することができる。
【0111】
(C3)成分の含有量の計算方法について説明する。
例えば、ポリアミド樹脂組成物中における(A)成分の含有量が80kg、(C3)成分の含有量が20kgである場合、熱可塑性樹脂成分((A)成分と(C3)成分の合計)100kgに対して(C3)成分の含有量は20kgである。これは、本明細書中においては、熱可塑性樹脂成分((A)成分と(C3)成分の合計)100質量部に対して、(C3)成分が20質量部含まれていると表す。
【0112】
((D)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物を除く無機フィラー)
本実施形態の成形体に含まれるポリアミド樹脂組成物は、耐熱エージング性の向上の観点から、(D)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物を除く無機フィラー(以下、(D)無機フィラー、(D)成分と記載する場合がある。)を含有することが好ましい。
【0113】
(D)成分の含有量は、熱可塑性樹脂成分((A)成分と(C3)成分の合計)100質量部に対し、10質量部以上250質量部以下であることが好ましく、10質量部以上150質量部以下であることがより好ましく、15質量部以上100質量部以下であることがさらに好ましい。(D)成分の含有量を上記範囲内とすることにより、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の流動性及び外観特性が共に一層優れたものとなる傾向にある。
【0114】
(D)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物を除く無機フィラーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、フレーク状ガラス、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ワラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母及びアパタイトが挙げられる。
これらの中でも、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の強度及び剛性を増大させる観点から、円形及び非円形断面を有するガラス繊維、フレーク状ガラス、タルク(珪酸マグネシウム)、マイカ、カオリン、ワラストナイト、酸化チタン、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、フッ化カルシウムが好ましく、より好ましくは、ガラス繊維、ワラストナイト、タルク、マイカ、カオリンであり、さらに好ましくは、ガラス繊維である。
上述した(D)成分は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
前記ガラス繊維や炭素繊維のうち、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が3〜30μmであって、かつ重量平均繊維長が100〜750μmであり、重量平均繊維長と数平均繊維径とのアスペクト比(重量平均繊維長を数平均繊維径で除した値)が10〜100であるものがさらに好ましい。
【0116】
また、前記ワラストナイトとしては、優れた機械的特性を本実施形態のポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が3〜30μmであって、かつ重量平均繊維長が10〜500μmであり、前記アスペクト比が3〜100であるものが好ましい。
【0117】
さらに、前記タルク、マイカ、カオリンとしては、優れた機械的特性を本実施形態のポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が0.1〜3μmであるものが好ましい。
【0118】
ここで、数平均繊維径及び重量平均繊維長は、以下のようにして求めることができる。
すなわち、ポリアミド樹脂組成物を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、例えば100本以上の(D)無機フィラーを任意に選択し、SEMで観察して、これらの繊維径を測定し、平均値を算出することにより数平均繊維径を求めることができる。
また、倍率1000倍のSEM写真を用いて繊維長を計測し、所定の計算式(n本の繊維長を測定した場合、重量平均繊維長=Σ(I=1→n)(n番目の繊維の繊維長)2/Σ(I=1→n)(n番目の繊維の繊維長))により重量平均繊維長を求めることができる。
【0119】
前記(D)無機フィラーは、シランカップリング剤等により表面処理を行ってもよい。
前記シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。
シランカップリング剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記シランカップリング剤の中でも、樹脂との親和性の観点から、アミノシラン類がより好ましい。
【0120】
また、前記(D)無機フィラーとしてガラス繊維を用いた場合、当該ガラス繊維は、さらに集束剤を含んでいることが好ましい。集束剤とは、ガラス繊維の表面に塗布する成分である。集束剤としては、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリカルボジイミド化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他の共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩等が挙げられる。
これらの集束剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0121】
中でも、本実施形態の成形体の機械的強度の観点から、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリカルボジイミド化合物及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせが好ましく、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体がより好ましい。
【0122】
前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体のうち、前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸や無水シトラコン酸が挙げられ、中でも無水マレイン酸が好ましい。
一方、前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とは、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体とは異なる不飽和ビニル単量体をいう。
前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレートが挙げられる。中でもスチレンやブタジエンが好ましい。
これらの組み合わせの中でも、無水マレイン酸とブタジエンとの共重合体、無水マレイン酸とエチレンとの共重合体、及び無水マレイン酸とスチレンとの共重合体、並びにこれらの混合物よりなる群から選択される1種以上であることがより好ましい。
【0123】
また、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体は、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の流動性向上の観点から、重量平均分子量が2000以上であることが好ましい。重量平均分子量の上限としては、1000000以下であることが好ましい。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定することができる。
【0124】
前記エポキシ化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブテンオキサイド、ペンテンオキサイド、ヘキセンオキサイド、ヘプテンオキサイド、オクテンオキサイド、ノネンオキサイド、デセンオキサイド、ウンデセンオキサイド、ドデセンオキサイド、ペンタデセンオキサイド、エイコセンオキサイドなどの脂肪族エポキシ化合物;グリシドール、エポキシペンタノール、1−クロロ−3,4−エポキシブタン、1−クロロ−2−メチル−3,4−エポキシブタン、1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタン、シクロペンテンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、シクロヘプテンオキサイド、シクロオクテンオキサイド、メチルシクロヘキセンオキサイド、ビニルシクロヘキセンオキサイド、エポキシ化シクロヘキセンメチルアルコールなどの脂環族エポキシ化合物;ピネンオキサイドなどのテルペン系エポキシ化合物;スチレンオキサイド、p−クロロスチレンオキサイド、m−クロロスチレンオキサイドなどの芳香族エポキシ化合物;エポキシ化大豆油;及びエポキシ化亜麻仁油が挙げられる。
【0125】
前記ポリカルボジイミド化合物とは、一以上のカルボジイミド基(−N=C=N−)を含有する化合物、すなわちカルボジイミド化合物を縮合することにより得られる化合物である。
前記ポリカルボジイミド化合物は、縮合度が1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。縮合度が1〜20の範囲内にある場合、良好な水溶液または水分散液が得られる傾向にある。さらに、縮合度が1〜10の範囲内にある場合、一層良好な水溶液または水分散液が得られる傾向にある。
また、前記ポリカルボジイミド化合物は、部分的にポリオールセグメントを持つポリカルボジイミド化合物であることが好ましい。部分的にポリオールセグメントを持つことにより、ポリカルボジイミド化合物は水溶化し易くなり、ガラス繊維や炭素繊維の集束剤として一層好適に使用することができる。
【0126】
前記ポリカルボジイミド化合物、すなわち上記各種カルボジイミド基(−N=C=N−)を含有する化合物は、ジイソシアネート化合物を3−メチル−1−フェニル−3−ホスホレン−1−オキシド等の公知のカルボジイミド化触媒の存在下で脱炭酸反応させることにより得ることができる。
【0127】
前記ジイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネート、並びにそれらの混合物を用いることが可能である。
ジイソシアネート化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルジイソシアネート及び1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート等が挙げられる。
そして、これらのジイソシアネート化合物をカルボジイミド化することによって、末端に2つのイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物を得ることができる。これらのうち、反応性向上の観点から、ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドを好適に使用することができる。
【0128】
また、モノイソシアネート化合物を等モル量カルボジイミド化させる方法、またはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルと等モル量反応させてウレタン結合を生成する方法などによって、末端にイソシアネート基を1つ有するポリカルボジイミド化合物を得ることができる。
モノイソシアネート化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート等が挙げられる。
上記したポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0129】
前記ポリウレタン樹脂は、集束剤として一般的に用いられるものであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、m−キシリレンジイソシアナート(XDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(HMDI)やイソホロンジイソシアナート(IPDI)等のイソシアネートと、ポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから合成されるものが挙げられる。
【0130】
前記アクリル酸のホモポリマー(ポリアクリル酸)としては、樹脂との親和性の観点から、重量平均分子量が1000〜90000であることが好ましく、より好ましくは1000〜25000である。
【0131】
前記アクリル酸とその他の共重合性モノマーとのコポリマーを形成する、前記「その他の共重合性モノマー」としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するモノマーのうち、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸よりなる群から選択される1種以上が挙げられる(但し、アクリル酸のみの場合を除く)。
なお、上記したモノマーのうち、エステル系モノマーを1種以上有することが好ましい。
【0132】
上述したアクリル酸のポリマー(ホモポリマー及びコポリマーを共に含む)は塩の形態であってもよい。アクリル酸のポリマーの塩としては、以下に限定されるものではないが、第一級、第二級又は第三級のアミンとの塩が挙げられる。具体的には、トリエチルアミン、トリエタノールアミンやグリシンとの塩が挙げられる。
【0133】
アクリル酸のポリマーの中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤など)との混合溶液の安定性向上や、アミン臭低減の観点から、20〜90%とすることが好ましく、40〜60%とすることがより好ましい。
【0134】
塩を形成するアクリル酸のポリマーの重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、3000〜50000の範囲であることが好ましい。ガラス繊維や炭素繊維の集束性向上の観点から、3000以上であることが好ましく、本実施形態のポリアミド樹脂組成物における機械的特性の更なる向上の観点から、50000以下であることが好ましい。
【0135】
上述した各種集束剤により、ガラス繊維や炭素繊維を処理する方法としては、上述した集束剤を、公知のガラス繊維や炭素繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて、ガラス繊維や炭素繊維に付与し、製造した繊維ストランドを乾燥することによって連続的に反応させる方法が挙げられる。
前記繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。
【0136】
集束剤は、ガラス繊維又は炭素繊維100質量部に対し、固形分率として0.2〜3質量部相当を付与(添加)することが好ましく、より好ましくは0.3〜2質量部付与(添加)する。ガラス繊維や炭素繊維の集束を維持する観点から、集束剤の添加量が、ガラス繊維又は炭素繊維100質量部に対し、固形分率として0.2質量部以上であることが好ましい。一方、本実施形態の成形体に含まれるポリアミド樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、3質量部以下であることが好ましい。
また、前記ストランドの乾燥は、切断工程後に行ってもよく、またはストランドを乾燥した後に切断工程を実施してもよい。
【0137】
(ポリアミド樹脂組成物に含まれていてもよい他の成分)
本実施形態の成形体に含まれるポリアミド樹脂組成物は、上述した(A)成分〜(D)成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、さらにその他の成分を含有してもよい。当該その他の成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、紫外線吸収剤、光劣化防止剤、可塑剤、滑剤、離型剤、核剤、難燃剤、着色剤、染色剤や顔料、及び他の熱可塑性樹脂が挙げられる。
ここで、上記したその他の成分は、それぞれ性質が大きく異なるため、各成分についての、本発明の効果を損なわない好適な含有量は様々である。そして、当業者であれば、上記した他の成分ごとの好適な含有量は容易に設定可能である。
【0138】
〔ポリアミド樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態の成形体に含まれるポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂と(B)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物を必須成分とし、必要に応じて、(C)下記(C1)〜(C3)からなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の化合物;
(C1)周期律表の第3族、第4族、第11族、第13族、第14族からなる群より選ばれる一種以上の金属元素の塩
(C2)ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、及び有機リン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一の有機熱安定剤
(C3)(A)成分の融点よりも低い融点を有する結晶性の熱可塑性樹脂及び/又は(A)成分のビカット軟化点よりも低いビカット軟化点を有する非晶性の熱可塑性樹脂
と、さらに必要に応じて前記(C1−2)アルカリ金属のハロゲン化物及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物、前記(D)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物を除く無機フィラー、その他の成分を混合することにより製造できる。
【0139】
本実施形態の成形体に含まれるポリアミド樹脂組成物の製造においては、単軸又は多軸の押出機によって(A)ポリアミド樹脂を溶融させた状態で、(B)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物、及び必要に応じて(C)成分を混練する方法を好ましく用いることができる。
また、あらかじめ(B)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物の水溶液と(A)ポリアミド樹脂ペレットをよく撹拌して混合し、その後に水分を乾燥させる手法で調整したポリアミド樹脂ペレットと、(C)成分を、押出機の供給口から供給して溶融混練する方法を用いることができる。
(B)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物の分散性の観点から、(B)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物の添加は、単軸又は多軸の押出機によって、(A)ポリアミド樹脂を溶融させた状態で、(B)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物を混練する方法が好ましい。
【0140】
〔成形体の製造方法、用途〕
本実施形態の成形体は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド樹脂組成物を射出成形することにより得られる。得られた成形体を熱処理することにより、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を成形体の表面から3μmまでの領域に偏在させることができる。このときの熱処理条件としては、例えば、230℃で300時間以上であることが好ましい。高温物性の観点から、230℃で500時間以上であることがより好ましい。また、高温物性の観点から、230℃で3000時間以下であることが好ましい。熱処理条件は、上記温度により連続して処理してもよいし、上記温度に一定時間保持した後、冷却し、また昇温して上記温度に保持する処理を繰り返すことによって、上記温度における保持時間の合計が上記処理時間に達してもよい。
【0141】
本実施形態の成形体は、以下に限定されるものではないが、例えば、自動車用、機械工業用、電気・電子用、産業資材用、工業材料用、日用・家庭品用等の各種用途の材料部品として好適に用いることができる。特に、自動車アンダーフード部品、中空部品等の自動車用材料部品として好適に用いられる。
本実施形態の成形体は、高温条件下で長時間使用した場合でも、高温下において実用上十分な機械的特性を有する。
【実施例】
【0142】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例に係る試料を評価するための測定方法は以下のとおりである。
【0143】
〔測定方法〕
(98%硫酸相対粘度(ηr))
後述する実施例及び比較例(以下、単に「各例」ともいう)における、(A)ポリアミド樹脂の98%硫酸相対粘度(ηr)は、JISK6920に従って測定した。
【0144】
(融点)
後述する実施例及び比較例における、結晶性樹脂の融点を、JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて以下のとおりに測定した。
当該測定は、窒素雰囲気下で行った。
試料約10mgを昇温速度20℃/minで50℃から300℃まで昇温した。このときに現れる吸熱ピーク温度を融点とした。
【0145】
(ビカット軟化温度)
ISO 306 B50に準拠し、4mm厚の試験片を用いて測定を行い、ビカット軟化温度(℃)を求めた。
【0146】
(末端基濃度)
後述する実施例及び比較例における、(A)ポリアミド樹脂の末端基濃度(アミノ末端基濃度、カルボキシル末端基濃度)を、重硫酸溶媒を用いて、60℃での1H−NMR測定により求めた。
測定装置としては、日本電子(株)製のECA500を用い、(A)ポリアミド樹脂のアミノ末端基、カルボキシル末端基の対応ピークの積分値から末端基濃度を算出し、(アミノ末端基濃度/カルボキシル末端基濃度)を得た。
【0147】
(引張強度)
実施例及び比較例で製造したポリアミド樹脂組成物のペレットを、射出成形機(PS−40E:日精樹脂株式会社製)を用いて、ISO 3167に準拠しつつ、多目的試験片(A型)の成形片を成形した。
その際、射出及び保圧の時間25秒、冷却時間15秒に設定した。
また、金型温度とシリンダー温度は、後述する(A)ポリアミド樹脂の製造例に記載した温度に設定した。
得られた多目的試験片(A型)を、表1〜5に記載の条件にて処理した。その試験片用いて、ISO 527に準拠しつつ引張速度5mm/分で引張試験を行い、引張強度(MPa)を測定した。
【0148】
(180℃、200℃引張強度)
上記の(引張強度)における多目的試験片(A型)を、表1〜5に記載の条件にて処理した。その試験片用いて、180℃もしくは200℃にて、ISO 527に準拠しつつ引張速度5mm/分で引張試験を行い、180℃、200℃引張強度(MPa)を測定した。
【0149】
(曲げ弾性率)
上記の多目的試験片(A型)を、表1〜5に記載の条件にて処理した。その試験片を用いて、23℃において、JIS K7171に準拠し、各例に対応する成形片の、曲げ強度測定を行った。
【0150】
(180℃、200℃曲げ弾性率)
上記の多目的試験片(A型)を、表1〜5に記載の条件にて処理した。その試験片用いて、180℃もしくは200℃において、JIS K7171に準拠し、各例に対応する成形片の、曲げ強度測定を行った。
【0151】
(表面3μmのアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属元素濃度評価)
成形体のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属平均元素濃度の測定方法としては、SEM(走査型電子顕微鏡)−EDX(エネルギー分散X線スペクトル)を用いた。
ポリアミド樹脂組成物を含む成形体を、表面に垂直に切断し、ダイアモンドナイフで平滑に切り出した。
当該試料をSEM観察用試料台にカーボンテープで固定し、導通処理を実施し、SEM−EDX測定に供した。
EDX観察において、測定視野領域における試料表面から深さ3μmまでの領域のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属元素検出強度と、試料表面から深さ3μmまでの領域を除いた領域のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属元素検出強度を、それぞれの領域の相対平均元素濃度とした。
アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属元素検出強度は、測定領域中の一定の面積中の、一定の測定時間でのアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属元素検出量とした。
上記で測定した相対平均元素濃度の比を、「成形体の表面から深さ3μmまでの領域のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属平均元素濃度/成形体の表面から深さ3μmまでの領域を除いた領域のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属平均元素濃度」とし、下記表1〜5において、「表面3μmのアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属濃度評価」として、その比が2より大きい場合は○、2以下の場合は×と記した。
【0152】
(表面1μmのアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の低級カルボン酸塩評価)
成形体の表面から深さ1μmまでの領域に存在するアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の低級カルボン酸塩の測定方法を説明する。
測定はATR法(全反射測定法)とイオンクロマトマス法を用いた。
ATR法は、試料への光の侵入深さを入射角、プリズムの屈折率を変えることで調整した。
ATR法を用いて、成形体の表面から深さ1μmまでの領域にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の低級カルボン酸塩が存在するか否かを確認した。
具体的には、ピークが存在するか否かを確認した。
さらに、成形体の表面から1μmまでの領域をイオンクロマトマス法によって測定し、低級カルボン酸塩を確認した。
具体的には、ピークが存在するか否かを確認した。
以上の評価により、下記表1〜5において、「表面1μmのアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の低級カルボン酸塩評価」として、表面から1μmまでの領域にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の低級カルボン酸塩が存在する場合は〇、存在しない場合は×と記した。
【0153】
(表面10nmのアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の炭酸塩の評価)
成形体の表面から深さ10nmまでの領域に存在するアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の炭酸塩の測定方法を説明する。
測定はX線光電子分光(XPS)を用いて、成形体の表面から深さ10nmまでの領域にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の炭酸塩が存在するか否かを確認した。
具体的には、ピークが存在するか否かを確認した。
以上の評価により、下記表1〜5において、「表面10nmのアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の炭酸塩の評価」として、成形体の表面から深さ10nmまでの領域にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の炭酸塩が存在する場合は〇、存在しない場合は×と記した。
【0154】
(固体NMRピーク評価)
固体27Al−NMR測定により、ポリアミド樹脂組成物を含む成形体が、0〜30ppmと30〜60ppmと70〜100ppmの範囲に、それぞれ1本以上のピークを有するか否かを確認した。
以上の評価により、下記表1〜5において、「固体NMRピーク評価」として、固体27Al−NMR測定により、ポリアミド樹脂組成物を含む成形体が、0〜30ppmと30〜60ppmと70〜100ppmの範囲にそれぞれ1本以上のピークを有する場合は〇、有しない場合は×と記した。
【0155】
(重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn))
成形体のMw、Mnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。これらの値を用いてMw/Mnを算出した。
なお、GPC法においては、測定用サンプルとしては各例の成形体を用い、測定用の溶媒としては、ヘキサフルオロイソプロパノールを用いた。また、測定値は、PMMA換算の値とした。
なお、成形体の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)は、成形体に含有されているポリアミド樹脂の測定値として得られる。
【0156】
(ポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂部分のヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)への溶解分の測定)
まず、ポリアミド樹脂組成物を含む成形体を焼却し、残渣の質量から、無機物の含有量を求めた。
具体的には、るつぼ中で650℃にて3時間加熱焼却した。
次に、ポリアミド樹脂組成物を含む成形体をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解した。具体的には、ポリアミド樹脂組成物を含む成形体1gをHFIP50ml中に浸漬し、室温にて24時間放置した。
その後、HFIPに不溶の部分を取り出し、乾燥した。具体的には、室温で24時間放置した後に、窒素中にて60℃に加熱して3時間乾燥した。その後、質量を測定した。
前述の無機物の含有量の測定結果とHFIP溶解前後の質量から、無機物を除いたポリアミド樹脂部分のHFIPへの溶解分を求め、「HFIP溶解量」として下記表1〜表5に記した。
【0157】
〔原料〕
実施例及び比較例に用いた原料は以下の通りである。
((A)ポリアミド樹脂)
<ポリアミド樹脂A−1(PA66)>
50質量%のヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩の水溶液を30kg調製し、十分撹拌した。
当該ポリアミド66の原料の水溶液(以下、単に、原料の水溶液と記載する場合がある。)を、撹拌装置を有し、かつ、下部に抜出しノズルを有する70Lのオートクレーブ中に仕込んだ。
その後、50℃の温度下で十分攪拌した。
次いで、窒素で雰囲気置換した後、撹拌しながら温度を50℃から約270℃まで昇温した。この際、オートクレーブ内の圧力を、約1.77MPaに保持するよう、水を系外に除去しながら加熱を約1時間続けた。
その後、約1時間をかけ、圧力を大気圧まで降圧し、さらに約270℃、大気圧で約1時間保持した後、撹拌を停止した。
下部ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行い、ペレットを得た。
<ポリアミド樹脂A−1>の98%硫酸相対粘度は2.8であった。
また、アミノ末端基濃度は46μmol/gであり、カルボキシル末端基濃度は72μmol/gであった。
すなわち、アミノ末端基濃度/カルボキシル末端基濃度は0.64であった。
また、融点は264℃であり、ビカット軟化点は238℃であった。
なお、<ポリアミド樹脂A−1>を用いたポリアミド樹脂組成物の成形においては、金型温度を80℃、シリンダー温度を290℃に設定した。
【0158】
<ポリアミド樹脂A−2(PA66)>
前記原料の水溶液にアジピン酸を900g追加で添加した。
その他の条件は、前記<ポリアミド樹脂A−1>と同様の製造方法により<ポリアミド樹脂A−2>を製造した。
<ポリアミド樹脂A−2>の98%硫酸相対粘度は2.2であった。
また、アミノ末端基濃度は33μmol/gであり、カルボキシル末端基濃度は107μmol/gであった。すなわち、アミノ末端基濃度/カルボキシル末端基濃度は0.3であった。
また、融点は264℃であり、ビカット軟化点は238℃であった。
なお、<ポリアミド樹脂A−2>を用いたポリアミド樹脂組成物の成形においては、金型温度を80℃、シリンダー温度を290℃に設定した。
【0159】
<ポリアミド樹脂A−3(PA66)>
前記原料の水溶液にヘキサメチレンジアミンを900g追加で添加した。
その他の条件は、前記<ポリアミド樹脂A−1>と同様の製造方法により<ポリアミド樹脂A−3>を製造した。
<ポリアミド樹脂A−3>の98%硫酸相対粘度は2.4であった。また、アミノ末端基濃度は78μmol/gであり、カルボキシル末端基濃度は52μmol/gであった。すなわち、アミノ末端基濃度/カルボキシル末端基濃度は1.5であった。
また、融点は264℃であり、ビカット軟化点は238℃であった。
なお、<ポリアミド樹脂A−3>を用いたポリアミド樹脂組成物の成形においては、金型温度を80℃、シリンダー温度を290℃に設定した。
【0160】
<ポリアミド樹脂A−4(PA66/6T)>
特表2013−501094号公報の製造例に従い、<ポリアミド樹脂A−4(PA66/6T)>を製造した。
<ポリアミド樹脂A−4>の98%硫酸相対粘度は2.9であった。
また、アミノ末端基濃度は42μmol/gであり、カルボキシル末端基濃度は65μmol/gであった。すなわち、アミノ末端基濃度/カルボキシル末端基濃度は0.6であった。
なお、<ポリアミド樹脂A−4>を用いたポリアミド樹脂組成物の成形においては、金型温度を80℃、シリンダー温度を290℃に設定した。
【0161】
<ポリアミド樹脂A−5(PA9T)>
特開2013−40346号公報の製造例に従い、<ポリアミド樹脂A−5(PA9T)>を製造した。
<ポリアミド樹脂A−5>の98%硫酸相対粘度は2.9であり、融点は304℃であった。
また、アミノ末端基濃度は42μmol/gであり、カルボキシル末端基濃度は52μmol/gであった。すなわち、アミノ末端基濃度/カルボキシル末端基濃度は0.8であった。
なお、<ポリアミド樹脂A−5>を用いたポリアミド樹脂組成物の成形においては、金型温度を120℃、シリンダー温度を330℃に設定した。
【0162】
<ポリアミド樹脂A−6(PA46)>
ポリアミド46(以下、「PA46」と略記する)として、商品名:Stanyl(登録商標)KS200(DSM社製、融点290℃)を用いた。
なお、<ポリアミド樹脂A−6>を用いたポリアミド樹脂組成物の成形においては、金型温度を120℃、シリンダー温度を300℃に設定した。
【0163】
<ポリアミド樹脂A−7(PA6)>
宇部興産(株)社製のSF1013Aを使用した。融点は224℃であった。
【0164】
<ポリアミド樹脂A−8(PA610)>
特開2011−148997号公報の製造例に従い、<ポリアミド樹脂A−8(PA610)>を製造した。融点は215℃であった。
【0165】
((B)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物)
<B−1 アルミン酸ナトリウム>
和光純薬工業(株)社製のアルミン酸ナトリウムを使用した。
<B−2 炭酸水素ナトリウム>
東京化成工業株式会社製の炭酸水素ナトリウムを使用した。
<B−3 炭酸ナトリウム>
東京化成工業株式会社製の炭酸ナトリウムを使用した。
<B−4 炭酸カリウム>
東京化成工業株式会社製の炭酸カリウムを使用した。
<B−5 水酸化ナトリウム>
東京化成工業株式会社製の水酸化ナトリウムを使用した。
<B−6クエン酸3ナトリウム>
東京化成工業株式会社製のクエン酸3ナトリウムを使用した。
<B−7エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム>
東京化成工業株式会社製のエチレンジアミン4酢酸4ナトリウムを使用した。
【0166】
((C)成分)
<C−1 ヨウ化銅とヨウ化カリウムの混合物>
ヨウ化銅は和光純薬工業社製の試薬を使用した。ヨウ化カリウムは和光純薬工業社製の試薬を使用した。ヨウ化銅1質量部と、ヨウ化カリウム10質量部を混合して使用した。
<C−2 ヒンダードフェノール化合物>
チバ・ジャパン株式会社製のIRGANOX1098を使用した。
<C−3 ヒンダードアミン化合物>
クラリアント社製のNYLOSTAB S−EEDを使用した。
<C−4 有機リン化合物>
チバ・ジャパン株式会社製のIRGAFOS168を使用した。
【0167】
((D)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物を除く無機フィラー)
<ガラス繊維D−I>
固形分換算で、ポリウレタン樹脂を2質量%(商品名:ボンディック(登録商標)1050、(大日本インキ株式会社製))、エチレン−無水マレイン酸共重合体(和光純薬工業株式会社製)を8質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシランを0.6質量%(商品名:KBE−903、(信越化学工業株式会社製))、潤滑剤0.1質量%(商品名:カルナウバワックス(株式会社加藤洋行製))となるように水で希釈し、全質量を100質量%に調整し、ガラス繊維集束剤を得た。
上記のガラス繊維集束剤を、溶融防糸された数平均繊維径10μmのガラス繊維に対して付着させた。
すなわち、回転ドラムに巻き取られる途中のガラス繊維に対し、所定位置に設置されたアプリケーターを用いて、上記ガラス繊維集束剤を塗布した。次いで、これを乾燥し、上記ガラス繊維集束剤で表面処理されたガラス繊維束のロービング(ガラスロービング)を得た。その際、ガラス繊維は1,000本の束となるようにした。
ガラス繊維集束剤の付着量は、0.6質量%であった。これを3mmの長さに切断して、ガラスチョップドストランドを得た。このチョップドストランドを、<ガラス繊維D−I>として使用した。
【0168】
〔実施例1〕
押出機として、二軸押出機(ZSK−26MC:コペリオン社製(ドイツ))を用いた。
この二軸押出機は、上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、かつ、9番目のバレルに下流側供給口を有するものである。また、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=48(バレル数:12)である。
この二軸押出機において、上流側供給口からダイまでの温度を、上述の((A)ポリアミド樹脂)の項目に記載したシリンダー温度にそれぞれ設定した。
また、スクリュー回転数を300rpmに、吐出量を25kg/時間に、それぞれ設定した。
かかる条件下で、下記表1の上部に記載された割合となるように、上流側供給口より(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、を供給し、下流側供給口より(D)成分を供給し、溶融混練することでポリアミド樹脂組成物のペレットを製造した。
得られたポリアミド樹脂組成物を成形し、その成形体を用いて評価を実施した。
これらの評価結果等を下記表1に示す。
【0169】
〔実施例2〜
28、
参考例1〜2、比較例1〜4〕
表1〜表5に記載の組成に従い、その他の条件は実施例1と同様の方法で、ポリアミド樹脂組成物を製造し、得られたポリアミド樹脂組成物を成形し、その成形体を用いて、各種測定を実施した。
これらの測定結果等を下記表1〜5に示す。
なお、表中の単位の「質量%」はポリアミド組成物を100質量%としたときの「質量%」である。
【0170】
【表1】
【0171】
【表2】
【0172】
【表3】
【0173】
【表4】
【0174】
【表5】
【0175】
表1〜表5中、「−」は、測定を行わなかったことを意味する。
【0176】
表1〜5より、実施例1〜
28のポリアミド樹脂組成物を含む成形体は、高温下においても優れた機械的特性を示すことがわかった。
一方、比較例1〜4は、実施例と比較して高温下における機械的特性に劣る結果となった。