特許第6822778号(P6822778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6822778
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】X線コンピュータ断層撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20210114BHJP
【FI】
   A61B6/03 330B
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-77434(P2016-77434)
(22)【出願日】2016年4月7日
(65)【公開番号】特開2016-198501(P2016-198501A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2019年3月13日
(31)【優先権主張番号】14/680,867
(32)【優先日】2015年4月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】カーステン・ブーデッカー
(72)【発明者】
【氏名】中西 知
【審査官】 右田 純生
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−533337(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/138979(WO,A1)
【文献】 特開平08−010251(JP,A)
【文献】 特開2012−090887(JP,A)
【文献】 特表2007−512072(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/033028(WO,A1)
【文献】 特開2006−116137(JP,A)
【文献】 特開2007−289699(JP,A)
【文献】 特表平11−501195(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/160766(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0140894(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0063545(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0041193(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/03
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を放射するためのX線源と、
対象物のCTスキャンの所望の画像品質を決定する、使用者によって設定される所望の検出能指標を受信し、
前記使用者によって設定された前記所望の検出能指標を結果的にもたらすことになる、X線照射にかかる条件を決定し、
前記X線源に前記決定されたX線照射にかかる条件を使用して前記対象物のスキャンを行わせる
ように構成された処理回路構成と、
を備え、
前記処理回路構成は、対応する複数の管電流に関して複数の検出能指標を計算することによって前記X線照射にかかる条件を決定するようにさらに構成される、
前記計算された各検出能指標は、変調伝達関数および対象物の関数に比例し、ノイズ電力スペクトルに反比例する、
前記処理回路構成は、前記対象物の寸法、投入される管電流、コントラスト値、ならびにスキャン用パラメータおよび再構成パラメータに基づいて、ルックアップテーブルを使用して前記変調伝達関数を計算するようにさらに構成される、X線コンピュータ断層撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線コンピュータ断層撮影(CT)システムおよび方法は、特に医用の撮像および診断のために、広く使用されている。CTシステムは一般に、対象者の身体を通る1つまたは複数の断面スライスの画像を作り出す。X線管などの放射線源は、身体にその側方から放射線を照射する。X線源に一般には隣接するコリメータが、身体に当たる放射線が身体の断面スライスを画定する平面状の領域に実質的に限局されるように、X線ビームの角度範囲を限定する。身体の反対側の少なくとも1つの検出器(および一般には2つ以上の多くの検出器)が、実質的にスライスの平面において身体を透過した放射線を受ける。身体を通過した放射線の減衰は、検出器から受信した電気信号を処理することによって測定される。
【0003】
通常は、一般に使用される第3および第4世代のCTスキャナにおいては、1つのX線源(または複数のX線源)が、身体の長軸を中心に回転するガントリ上に取り付けられる。第3世代のスキャナでは、検出器は、X線源の反対側で、同様にガントリ上に取り付けられるが、第4世代のスキャナでは、検出器は、身体の周りに固定されたリングに配置される。ガントリが長軸と平行な方向に平行移動するか、または身体がガントリに対して平行移動されるかのいずれかが行われる。ガントリを適切に回転させガントリまたは対象者を平行移動させることによって、複数のビューが取得され得、そのようなビューの各々は、X線源の様々な角度位置および/または軸方向位置で作られた減衰測定値を備える。一般に、身体に対するガントリの平行移動と回転の組合わせにより、X線源が身体に対して渦巻き状またはらせん状の軌道を通過するようになる。次いで複数のビューが、従来の方法を使用して、1つのスライスまたは複数のそのようなスライスの内部構造を示すCT画像を再構成するために、使用される。CT画像の側方の分解能、または具体的には画像を構成するスライスの厚さは、一般には、放射線ビームのまたは個々の検出器の角度範囲の、いずれか小さい方によって決定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から、ノイズを除去するために、適応型ノイズ低減技法が使用されている。しかしながら、これらの技法は、画像ノイズとX線管電流との間に、非線形の関係を生じさせる。このため、所望の画像品質に対応してX線照射にかかる条件を決定することが困難である。
【0005】
目的は、所望の画像品質に対応してX線照射にかかる条件を決定し得るX線コンピュータ断層撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、X線源及び処理回路構成を備えている。
【0007】
前記X線源は、X線を放射するための装置である。
【0008】
前記処理回路構成は、対象物のCTスキャンの所望の画像品質を決定する、使用者によって設定される所望の検出能指標を受信するように構成されている。
【0009】
また、前記処理回路構成は、前記使用者によって設定された前記所望の検出能指標を結果的にもたらすことになる、X線照射にかかる条件を決定するように構成されている。
【0010】
さらに、前記処理回路構成は、前記X線源に前記決定されたX線照射にかかる条件を使用して前記対象物のスキャンを行わせるように構成されている。
【0011】
本開示の教示およびその付随する利点の多くについてのより完全な理解は、それらが、添付の図面と関係づけて検討されて、以下の詳細な説明を参照してよりよく理解されるにつれ、容易に得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】例示のCTスキャナシステムを示す図。
図2A】画像ノイズ標準偏差対X線管電流の例示のグラフを示す図。
図2B】画像ノイズ標準偏差対ノイズグレインの例示のグラフを示す図。
図3A】130HUの標準偏差(SD)を有する画像の例示のグラフを示す図。
図3B】131.6HUの標準偏差を有する画像の例示のグラフを示す図。
図3C図3A図3Bの2つの画像のノイズ電力スペクトル(NPS)の例示のグラフを示す図。
図4】フローチャートによりX線管電流を決定する方法を示す図。
図5A】あるタスクに伴うファントムの例示のグラフを示す図。
図5B】別のタスクに伴うファントムの例示のグラフを示す図。
図6A】様々な検出能指標およびノイズの標準偏差に伴うファントムの例示のグラフを示す図。
図6B】様々な検出能指標およびノイズの標準偏差に伴うファントムの例示のグラフを示す図。
図6C】様々な検出能指標およびノイズの標準偏差に伴うファントムの例示のグラフを示す図。
図7】例示の処理システムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、X線コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)またはCTスキャナのX線撮影ガントリの実施態様を示す。図1に示されるように、X線撮影ガントリ100は、側面視して示され、X線管101と、環状フレーム102と、複数列型または2次元配列型のX線検出器103とをさらに含む。X線管101およびX線検出器103は、回転軸RAを中心に回転可能に支持される環状フレーム102上に、直径方向に対象者Sを挟むように取り付けられる。回転ユニット107は、環状フレーム102を、0.4秒/回転などの高速で回転させ、一方、対象者Sは、軸RAに沿って図示された紙面の中に入るようにまたは紙面から出るように移動されている。
【0014】
マルチスライスX線CT装置は、X線管101がX線を生成するように、スリップリング108を通してX線管101に印加される管電圧を生成する高電圧発生器109をさらに含む。X線は、対象者Sに向けて放射され、その断面領域は円によって表される。X線検出器103は、対象者Sを透過された放射されたX線を検出するために、X線管101から対象者Sを横切って反対側に配設される。X線検出器103は、個々の検出器素子またはユニットをさらに含む。
【0015】
図1を引き続き参照すると、X線CT装置は、X線検出器103からの検出された信号を処理するための他のデバイスをさらに含む。データ収集回路またはデータ収集システム(DAS)104は、各チャンネルに関してX線検出器103から出力された信号を電圧信号に変換し、この信号を増幅し、さらにその信号をデジタル信号に変換する。X線検出器103およびDAS104は、所定の、回転あたりの投影の総数(TPPR:total number of projections per rotation)を取り扱うように構成される。TPPRの例は、限定するものではないが、900TPPR、900〜1800TPPR、および900〜3600TPPRを含む。
【0016】
上記のデータは、非接触データ送信機105を通して、X線撮影ガントリ100の外側のコンソール内に収容される前処理デバイス106に送られる。前処理デバイス106は、生データに対して、感度補正などの特定の補正を行う。メモリ112は、再構成処理の直前の段階で、投影データとも呼ばれる結果のデータを記憶する。メモリ112は、再構成デバイス114、入力デバイス115、およびディスプレイ116とともに、データ/制御バス111を通して、システム制御器110に接続される。
【0017】
様々な世代のCTスキャナシステムの間で、検出器は、患者に対して回転および/または固定される。上記のCTシステムは、第3世代の幾何学的配置および第4世代の幾何学的配置が組み合わされたシステムである。第3世代のシステムでは、X線管101およびX線検出器103は、環状フレーム102上に直径方向に取り付けられ、環状フレーム102が回転軸RAを中心に回転される際、対象者Sの周りで回転される。第4世代の幾何学的配置のシステムでは、検出器は患者の周りに固定的に設置され、X線管が患者の周りで回転される。
【0018】
代替の実施形態では、X線撮影ガントリ100は、Cアームおよびスタンドによって支持される環状フレーム102上に配置された、複数の検出器を有する。
【0019】
自動露出制御(AEC)に関して、X線管電流(mA)を決定するために、画像ノイズ標準偏差を表す様々な指標が使用されてきた。患者は、数キログラムの新生児から、約50kgの小さい大人、さらには120kgの(または肥満の患者の場合にはさらに大きい)大きい大人までの範囲にわたる、幅広いサイズの配列を成す。通常は、より大きい指標値は、ノイズの多い画像とより悪い画像品質とを示し、一方、より小さい指標は、よりノイズの少ない画像とより良い画像品質とを示す。初期設定の指標は、たとえば7.5HUから20.0HUの範囲にわたる。より小さい画像ノイズ標準偏差を有するために、CTシステムは、指標が小さいときはX線管電流を大きくし、指標が大きいときはX線管電流を小さくする。さらに、X線管電流は、患者のサイズに関連付けられる。大きい患者および大きな指標に関して、CTシステムは、指定された画像ノイズを保証するために、小さい患者および小さい指標と比較して、より大きいX線電流を使用する必要がある。
【0020】
したがって、開示された実施形態は、ベースライン電流とz管電流とを変調するシステムを対象としている。
【0021】
エッジ保存画像フィルタ、ハイブリッド画像フィルタ、および真画像フィルタ(true image filter)などの適応型ノイズ低減技法は、画像ノイズとX線管電流との間に、非線形の関係を生じさせる。たとえば、図2Aでは、適応型処理に関する画像ノイズ標準偏差(SD)は、X線管電流「mA」と比例の関係で変化されない。さらに、図2Bに示されるように、同様のSD(7.7および7.5)を有する画像は、異なるノイズグレインサイズ(noise-grain sizes)を有する。
【0022】
図3Aおよび図3Bは、同じ画像ノイズSDを有するノイズのテクスチャの検出能に対する効果を示す。再構成カーネルは、最終的なスキャン画像をもたらすために生データに適用される、画像処理フィルタとして規定される。再構成カーネルは、画像品質に影響を与える重要な構成要素である。一般的に言えば、各カーネルに関して、空間分解能とノイズとの間にトレードオフが存在する。平滑カーネルは、ノイズはより低いが空間分解能の低減された画像を生成する。鮮鋭カーネルは、空間分解能のより高い画像を生成するが、画像ノイズを大きくする。
【0023】
図3Aおよび図3Bに示された例では、データセットを生成するために、15mmで100ハンスフィールド単位(HU)の杆体および100HUの環体(外半径15mm、内半径7.5mm)を有する、直径20cmの水ファントムが使用された。AqOneプロトコルを使用して、120kVにおいて、240度の有効視野(FOV)、80×0.5mmの軸方向の取得で、900個のビューを有する、2つのデータセットが収集された。第1のデータセットは、平滑再構成カーネル(FC13)を用いてシミュレートされ、一方、第2のデータセットは、鮮鋭再構成カーネルを用いてシミュレートされた。X線管電流は、両方のデータセットに関して同じSDを維持するように調整された。
【0024】
図3Cは、2つのシミュレートされた画像に関する、ノイズ電力スペクトル(NPS)の例示のグラフである。フーリエ変換は、システムが線形で決定性であるという仮定に基づいている。2つの同一の入力信号を提出されたときに2つの同一の出力信号を生成する場合、システムは決定性である。しかしながら、ほとんどのシステムにおいてランダムなノイズが発生し、このことは、出力信号において小さい変動を引き起こす。したがって、NPSは、画像における空間周波数にわたる画像強度の分散として、または所与の空間周波数の、その特定の空間周波数の反復的な測定における分散として、記述され得る。図3Cでは、130HUのSDを有する平滑再構成カーネルのデータセットに関して、NPSが、131.6HUのSDを有する鮮鋭再構成カーネルのデータセットとは著しく異なる。したがって、画像品質は、画像ノイズのSDに加えて他の指標を必要とし、診断に関する値を維持するための適切なX線管電流を見つけるためには、ノイズグレインサイズ(noise grain size)を含む別の指標が重要である。
【0025】
図4を参照すると、フローチャート400は、所望の検出能指標(detectability index)が与えられた場合に適当なX線管電流mAを決定するための方法について記述する。
【0026】
ステップ402で、使用者が指定したスキャン計画が作成される。
【0027】
ステップ403aで、処理回路構成は、ステップ402で作成された使用者に特定のスキャン計画に基づいて、スキャンパラメータおよび再構成パラメータの組を決定する。スキャン計画は、患者の長さに沿ったX線曝露の範囲を決定し、選択されたスキャンの型に基づいて、(kVp、ピッチ、コリメーション、およびFOVなどの)スキャンパラメータと(再構成カーネルおよび後処理フィルタなどの)再構成パラメータとの組が、システムによって自動的に決定される。所望される場合、これらの事前にロードされた収集パラメータおよび再構成パラメータは、使用者によって調整され得る。
【0028】
ステップ403bで、処理回路構成は、ステップ402で作成された使用者に特定のスキャン計画から、患者(またはスキャンされることになる対象物)の寸法、ならびにHUで表された患者のまたは対象物の減衰を決定する。ステップ404で、処理回路構成は、スキャノグラムを得るために、CTスキャナに、スキャノグラムスキャンを行わせる。
【0029】
ステップ405で、処理回路構成は、ステップ404で得られたスキャノグラムに基づいて、スキャンされる対象物(たとえば患者のサイズ)の前部−後部の寸法(すなわち長さ)と側方の寸法(すなわち幅)とを決定する。
【0030】
ステップ406aで、処理回路構成は、ステップ403aおよびステップ405で得られた情報に基づいて、変調伝達関数(MTF:modulation transfer function)を計算する。
【0031】
MTF(f、mA)は、決定されたスキャン用パラメータおよび再構成パラメータ、X線管電流、患者の寸法、ならびに対象物の局所的なHU変動の、非線形の関数である。fは、ミリメートルあたりの線対(lp/mm)として表され得る空間周波数であることに留意されたい。
【0032】
MTF(f、mA)を得るために、ルックアップテーブル(LUT)の手法が使用され得る。ルックアップテーブルは、X線管電流mA、患者の寸法、ならびに対象物のHU変動などの、複数のスキャン用パラメータおよび再構成パラメータを含む。例えば、処理回路構成は、対象物の寸法、投入される管電流、コントラスト値、ならびにスキャン用パラメータおよび再構成パラメータに基づいて、ルックアップテーブルを使用して変調伝達関数を計算してもよい。
【0033】
MTF(f、mA)の値を得るために、生データのシミュレーションの手法も使用され得る。例えば、処理回路構成は、再構成された画像を生成するために対象物の寸法に基づいてモデルシミュレーションデータを再構成すること、および再構成された画像から変調伝達関数を決定することによって、変調伝達関数を計算してもよい。最初に、この方法では、シミュレーションデータは、円筒形のオブジェクトを2つだけ用いて用意される。一方の円筒形のオブジェクトは、スキャノグラムから得られた患者の寸法をシミュレートするために使用される。他方の円筒形のオブジェクトは、そこからMTFが測定され得る、サイズ、コントラスト、および使用者によって事前に規定される所望の位置のシミュレートされた試験信号として規定された、タスクオブジェクトである。背景ノイズは、患者のサイズおよびX線管電流mAによって決定される。次いで、このシミュレーションデータに対して再構成が行われる。最後に、オブジェクトの位置に基づいて、再構成されたデータから、コントラストに依存するMTFが測定される。
【0034】
ステップ406bで、処理回路構成は、ステップ403bで得られた情報に基づいて、対象物の関数(OBJ:object function)を計算する。
【0035】
Obj(f)は、スキャンされた目的の対象物のサイズおよび減衰の関数であり、スキャンの種類に基づいて選択され得る。寸法およびHUのコントラストは、特定の撮像タスク、またはスキャンの目的に関連付けられる。たとえば、図5Aは、5mmの直径および50HUのオーダーのHUコントラストを有するヨウ素を用いた肝臓内の病変のスクリーン表示を示す。図5Bは、2mmの直径および300HUのHUコントラストを有する肺のスクリーン表示を示す。すなわち、処理回路構成は、対象物の画像から直径とコントラスト値とを決定することによって、対象物の関数を計算してもよい。
【0036】
ステップ406cで、処理回路構成は、ステップ403aおよびステップ405で得られた情報に基づいて、ノイズ電力スペクトル(NPS)関数を計算する。
【0037】
NPS(f)は、非線形アルゴリズムを含むスキャン用パラメータおよび再構成パラメータ、X線管電流、ならびに患者のサイズの関数である。例えば、処理回路構成は、対象物の寸法および対象物のコントラスト値に基づいて、ルックアップテーブルを使用してノイズ電力スペクトルを計算してもよい。なお、NPSの値は、MTFと同じ手法、すなわちLUTの手法を使用して得られ得るか、または、NPS値を得るために、シミュレーションの手法が使用され得る。
【0038】
ステップ406dで、処理回路構成は、知られている経験的な等式である、アイフィルタ(eye filter)E(f)を計算する。但し、アイフィルタE(f)の計算は、必須でなく、省略してもよい。本実施形態では、アイフィルタE(f)の計算を省略している。
【0039】
ステップ408で、処理回路構成は、以下の等式(1)に基づいて事前に規定された最適な検出能指標を達成するmA値を見つけることによって、X線管電流mAを決定する。なお、最適な検出能指標は、例えば、使用者によって設定される所望の検出能指標を処理回路構成が受信することにより、事前に規定される。また、事前に規定された検出能指標は、たとえば「HQ」(すなわち高品質)、「STD」(すなわち標準的)、および「LowDose」(低線量)などの用語を使用することによって、質に関して指定され得る。たとえば、d’(HQ)=6.0、d’(STD)=5.6、およびd’(LowDose)=5.2であり、ここで
【0040】
【数1】
【0041】
であり、dfxおよびdfyは積分の変数を指す、すなわち、xおよびyは周波数空間寸法(frequency space dimensions)を示す。
【0042】
ここで、処理回路構成は、複数のX線管電流と複数の対応する検出能指標とを含むルックアップテーブルを使用して、X線照射にかかる条件を決定してもよい。また、処理回路構成は、シミュレーション法を使用して、設定された検出能指標を得るためのX線照射にかかる条件を決定してもよい。あるいは、処理回路構成は、対応する複数の管電流に関して複数の検出能指標を計算することによって、X線照射にかかる条件を決定してもよく、計算された各検出能指標が、変調伝達関数および対象物の関数に比例し、ノイズ電力スペクトルに反比例してもよい。
【0043】
ステップ410で、処理回路構成は、X線源に、決定されたX線管電流を使用してCTスキャンを行わせる。処理回路構成は、データを収集し、収集されたデータを使用して画像を再構成し、次いで再構成された画像を表示するために、決定されたX線管電流を使用する。
【0044】
上述したように本実施形態によれば、処理回路構成が、対象物のCTスキャンの所望の画像品質を決定する、使用者によって設定される所望の検出能指標を受信する。また、処理回路構成は、使用者によって設定された所望の検出能指標を結果的にもたらすことになる、X線照射にかかる条件を決定する。さらに、処理回路構成は、X線源に当該決定されたX線照射にかかる条件を使用して対象物のスキャンを行わせる。
【0045】
従って、本実施形態によれば、所望の画像品質を決定する所望の検出能指標を結果的にもたらすことになるX線照射にかかる条件を決定する構成により、所望の画像品質に対応してX線照射にかかる条件を決定することができる。これに加え、所望の画像品質に対応して決定した条件を使用して対象物のスキャンを行うことができる構成により、所望の画像品質に対応して対象物のスキャンを行うことができる。
【0046】
また、開示された実施形態は、ハイブリッド画像フィルタ、または真画像フィルタなどの適応型処理とともに使用され得る。X線管電流は、タスクの所望の検出能指標によって決定され得る。画像品質および/またはX線管電流は、所望の検出能指標を変更することによって変更され得る。MTF(f)、Obj(f)、およびNPS(f)は、mAだけでなくkVpをも含むので、開示された実施形態は、最適なkVpとmAとを得るために使用され得る。ステップ410は、X線照射にかかる条件としてX線管電流mAを使用するが、これに限らず、X線照射にかかる条件としてX線管電圧kVpを使用してもよい。
【0047】
図6Aは、6.0の検出能および10HUのSDを有するファントムを示し、一方、図6Bは、5.6の検出能および12.5HUのSDを有するファントムを示す。図6Cは、5.2の検出能および15HUのSDを有するファントムを示す。したがって、図6A図6Cは、ノイズの標準偏差が大きくなると検出能指標が小さくなることを示す。
【0048】
図1のシステム制御器110の例示の実施態様である例示の処理システムが図7に示されている。システム制御器110は、ハードウェアデバイス、たとえばCPUに図4のフローチャートに示された機能を実施させる1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行するように特定的に構成されているCPUとすることができる。特に、この例示の制御器は、中央演算装置(CPU)および/または少なくとも1つの特定用途向けプロセッサASP(図示せず)などの、1つまたは複数のマイクロプロセッサまたはこれと同等のものを使用して実装され得る。マイクロプロセッサは、本開示のプロセスとシステムとを実施および/または制御するようにマイクロプロセッサを制御するように構成された、ならびに本明細書に記載されたアルゴリズムを実行するように構成された、メモリ回路(たとえばROM、EPROM、EEPROM(登録商標)、フラッシュメモリ、静的メモリ、DRAM、SDRAM、およびこれらと同等のもの)などのコンピュータ可読記憶媒体を利用する、回路または回路構成である。他の記憶媒体は、ハードディスクドライブまたは光学ディスクドライブを制御できるディスク制御器などの制御器を介して制御され得る。
【0049】
マイクロプロセッサまたはその態様は、代替の実施態様においては、本開示の態様を補強するかまたは完全に実装するための論理デバイスを含み得るかまたは排他的に含み得る。そのような論理デバイスは、限定するものではないが、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ジェネリック−アレイオブロジック(generic-array of logic)(GAL)、およびこれらと同等のものを含む。マイクロプロセッサは、別個のデバイスまたは単一の処理機構とすることができる。さらに、本開示は、改善された計算効率を達成するために、マルチコアCPUおよびグラフィック処理ユニット(GPU)の並列処理能力から利益を得ることができる。メモリ内に含まれる命令のシーケンスを実行するために、マルチプロセッシング構成における1つまたは複数のプロセッサも採用され得る。別法として、ハードワイヤード回路構成を、ソフトウェア命令の代わりに、または、ソフトウェア命令と組み合わせて使用してもよい。このように、本明細書で検討される例示の実施態様は、ハードウェア回路構成およびソフトウェアのいかなる特定の組合わせにも限定されない。
【0050】
別の態様では、本開示による処理の結果は、ディスプレイ制御器を介してモニタに表示され得る。改善された計算効率のために、ディスプレイ制御器は、複数のグラフィック処理コアにより提供され得る少なくとも1つのグラフィック処理ユニットを好ましくは含む。加えて、周辺機器としてI/O(入力/出力)インターフェースに接続され得るマイク、スピーカ、カメラ、マウス、キーボード、タッチディスプレイ、パッドインターフェース等から信号および/またはデータを入力するために、I/Oインターフェースが設けられる。たとえば、本開示の様々なプロセスのパラメータまたはアルゴリズムを制御するためのキーボードまたはポインティングデバイスは、追加の機能性および構成オプションを提供するか、またはディスプレイ特性を制御するために、I/Oインターフェースに接続され得る。さらに、モニタは、コマンド/命令インターフェースを提供するための、タッチセンサ方式インターフェースを設けられ得る。
【0051】
上記された構成要素は、制御可能なパラメータを含むデータの送信または受信のために、ネットワークインターフェースを介して、インターネットまたはローカルイントラネットなどのネットワークに結合され得る。中央バスは、上記の複数のハードウェア構成要素を1つに接続するために設けられ、それらの間のデジタル通信のための少なくとも1つのパスを提供する。
【0052】
図1のシステム制御器110は、図7に示された例示の実施態様による1つまたは複数の処理システムを利用して実装され得る。特に、図1に示されたデバイスのうちの1つまたは複数と同時に用いられる1つまたは複数の回路またはコンピュータハードウェアユニットは、システム制御器110の機能を(まとめてまたは個別に)提供し得る。本明細書に記載される機能的な処理は、記載された処理を実施するための回路を含む、特化された回路構成または1つもしくは複数の特化された回路としても実装され得る。そのような回路は、コンピュータ処理システムの一部、または他のシステムに相互接続される個別のデバイスとすることができる。本開示による処理回路構成はまた、コンピュータコード要素によって本明細書に記載された機能的な処理を実行するようにプログラムまたは構成され得る。
【0053】
さらに、処理システムは、1つの実施態様では、ネットワークまたは他のデータ通信接続によって互いに接続され得る。処理システムのうちの1つまたは複数は、ガントリ、X線源、および/または患者ベッドの移動を作動させ制御するために、対応するアクチュエータに接続され得る。
【0054】
好適なソフトウェアが、メモリおよび記憶デバイスを含む処理システムのコンピュータ可読媒体に、有形に記憶され得る。コンピュータ可読媒体の他の例は、コンパクトディスク、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、テープ、光磁気ディスク、PROM(EPROM、EEPROM(登録商標)、フラッシュEPROM)、DRAM、SRAM、SDRAM、または任意の他の磁気媒体、コンパクトディスク(たとえば、CD−ROM)、またはコンピュータが読み取ることができる任意の他の媒体である。ソフトウェアは、限定するものではないが、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、開発ツール、アプリケーションソフトウェア、および/またはグラフィカルユーザインターフェースを含み得る。
【0055】
上記された媒体上のコンピュータコード要素は、限定するものではないが、スクリプト、解釈可能なプログラム、ダイナミックリンクライブラリ(DLL)、Java(登録商標)クラス、および完全な実行可能なプログラムを含む、任意の解釈可能なまたは実行可能なコード機構とすることができる。さらに、本開示の態様の処理の複数の部分は、より良い性能、信頼性、および/またはコストを目的として、分散され得る。
【0056】
処理システムのデータ入力部分は、たとえばそれぞれの有線接続により、検出器または検出器のアレイから入力信号を受け入れる。複数のASICまたは他のデータ処理構成要素が、データ入力部分を形成するものとして、またはデータ入力部分に入力を提供するものとして、設けられ得る。ASICは、それぞれ、個別の検出器アレイまたはそれらのセグメント(個別部分)から信号を受信することができる。検出器からの出力信号がアナログ信号であるとき、データの記録および処理に使用するために、アナログ−デジタル変換器とともにフィルタ回路が設けられ得る。フィルタリングは、アナログ信号のための個別のフィルタ回路を用いずに、デジタルフィルタリングによっても提供され得る。別法として、検出器がデジタル信号を出力するとき、デジタルフィルタリングおよび/またはデータ処理は、検出器の出力から直接的に実施され得る。
【0057】
また、本実施形態に係るX線CT装置は、以下の実施形態として実施してもよい。
1つの実施形態では、(1)X線を放射するためのX線源と、(2)対象物のCTスキャンの所望の画像品質に関する決定を行う、使用者によって設定された所望の検出能指標を受信し、使用者によって設定された所望の検出能指標を結果的にもたらすことになるX線管電流を決定し、X線源に決定された管電流を使用して対象物のスキャンを行わせるように構成された処理回路構成と、を含むコンピュータ断層撮影(CT)装置が提供される。
【0058】
別の実施形態では、(1)対象物のCTスキャンの所望の画像品質に関する、使用者によって設定された所望の検出能指標を受信することと、(2)使用者によって設定された所望の検出能指標を結果的にもたらすことになるX線管電流を決定することと、(3)X線源に決定された管電流を使用して対象物のスキャンを行わせることと、を含む、X線を放射するように構成されたX線源を含むCT装置のための、コンピュータ断層撮影(CT)方法が提供される。
【0059】
別の実施形態では、X線を放射するように構成されたX線源を含むCT装置の処理回路構成によって実行されると、処理回路構成に、(1)対象物のCTスキャンの所望の画像品質に関する、使用者によって設定された所望の検出能指標を受信することと、(2)使用者によって設定された所望の検出能指標を結果的にもたらすことになるX線管電流を決定することと、(3)X線源に決定された管電流を使用して対象物のスキャンを行わせることと、を含む方法を実行させる実行可能命令を記憶する、非一時的コンピュータ可読媒体が提供される。
【0060】
いくつかの実施態様が説明されたが、これらの実施態様は、例としてのみ提示されており、本開示の範囲を限定することは意図されていない。本明細書に記載された新規なデバイス、システム、および方法は他の様々な形態で具現化され得、さらに、本開示の精神から逸脱することなく、本明細書に記載されたデバイス、システム、および方法の形態における様々な省略、置換、および変更がなされ得る。添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物は、これらを包含することが意図されている。
【符号の説明】
【0061】
100…X線撮影ガントリ、101…X線管、102…環状フレーム、103…X線検出器、104…データ収集回路(DAS)、105…非接触データ送信機、106…前処理装置、107…回転ユニット、108…スリップリング、109…高電圧発生器、110…システム制御器、111…データ/制御バス、112…メモリ、113…電流調整器、114…再構成デバイス、115…入力デバイス、116…ディスプレイ。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7