特許第6822781号(P6822781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6822781
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】医用画像診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20210114BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   A61B6/00 320M
   A61B6/00 360B
   A61B6/03 360Q
【請求項の数】12
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-88254(P2016-88254)
(22)【出願日】2016年4月26日
(65)【公開番号】特開2017-23695(P2017-23695A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2019年4月19日
(31)【優先権主張番号】14/809,586
(32)【優先日】2015年7月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515243202
【氏名又は名称】ユニバーシティー・アット・バッファロー、ザ・ステイト・ユニバーシティー・オブ・ニューヨーク
【氏名又は名称原語表記】University at Buffalo, The State University of New York
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】坂口 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】渡部 勇一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹元 久人
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ベドナレク
(72)【発明者】
【氏名】ヴィジェイ ラナ
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−113478(JP,A)
【文献】 特開2015−119768(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0196267(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対するX線検査を行うためのX線診断装置である医用画像診断装置であって、
前記被検体に対してX線を発生するX線管と、
前記X線を検出するX線検出器と、
前記検出されたX線に基づいて、X線画像を発生する画像発生回路と、
前記被検体を示す被検体画像として、前記被検体を模式的に示す3次元的な被検体モデルを記憶する記憶回路と、
前記被検体画像上に、前記X線による前記被検体に対する被曝線量を表示するディスプレイと、
前記X線画像に基づいて、前記被検体画像上における前記被曝線量の表示範囲と前記被検体画像との相対的な位置関係を補正する補正回路と、
を具備し、
前記画像発生回路は、前記X線検査において、前記X線管と前記X線検出器とを互いに対向させて前記被検体周りに回転させることにより収集された複数のX線画像に基づいてボリュームデータを発生して、当該ボリュームデータに基づいて、前記被検体に対する被曝線量を重ねて表示するための前記被検体画像を更新し、
前記被検体画像の更新に応答して、現時刻より過去の曝射による前記被検体に対する被曝線量の分布を、前記更新後の被検体画像並びに前記現時刻より過去の曝射における前記X線管の位置及び前記被検体が載置される天板の位置に基づいて再計算する計算回路をさらに具備し、
前記ディスプレイは、前記計算回路による再計算に応答して、前記更新後の被検体画像上に前記再計算した被曝線量の分布を表示し、
前記補正回路は、前記被検体に対する前記X線の曝射に応じて、前記位置関係を補正し、
前記ディスプレイは、前記被検体に対する前記X線の曝射に応じて、前記補正された位置関係に従って、前記更新後の被検体画像上に、前記再計算した被曝線量と被検体画像の更新後のX線の被曝とを加味した被曝線量の分布を表示する、
医用画像診断装置。
【請求項2】
前記補正回路は、前記X線画像における解剖学的標識点に基づいて、前記被検体画像の位置と大きさとのうち少なくともひとつを補正する請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記画像発生回路は、前記X線画像に関する撮影方向とは異なる少なくとも一つの撮影方向に対応する異方向画像を発生し、
前記補正回路は、前記異方向画像における解剖学的標識点に基づいて、前記被曝線量の表示範囲の大きさと前記被検体画像の大きさとのうち少なくともひとつを補正する請求項1または請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記X線の照射範囲と前記被曝線量の表示範囲との位置ずれを検出する検出回路をさらに具備し
前記計算回路は、前記位置ずれの検出に応答して、前記X線の発生に関するX線発生条件と前記X線の照射範囲と前記補正された位置関係と天板に対する前記X線管の位置とに基づいて、前記被曝線量を計算する、
請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記被曝線量の再計算に関する所定の時間間隔を入力する入力回路を更に具備し、
前記計算回路は、前記位置ずれの検出時刻から前記時間間隔だけ遡った時刻から前記検出時刻までの前記被曝線量を再計算する請求項4に記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記被検体画像は、前記被検体を模式的に示す3次元的な被検体モデルであって、解剖学的標識点を有し、
前記補正回路は、前記X線画像における解剖学的標識点と前記被検体モデルにおける解剖学的標識点とに基づいて、前記被検体画像の位置と大きさとのうち少なくともひとつを補正する請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記X線画像における所定臓器に関する前記解剖学的標識点と、前記被検体モデルにおける前記所定臓器に関する前記解剖学的標識点との位置ずれを検出する検出回路をさらに具備し
前記計算回路は、前記位置ずれの検出に応答して、前記位置ずれに基づいて補正された前記位置関係と前記X線の照射範囲と前記X線の発生に関するX線発生条件と天板に対する前記X線管の位置とに基づいて、前記被曝線量を計算する、
請求項6に記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記補正回路は、前記位置ずれに基づいて前記被検体モデルを回転させることにより、前記被検体モデルの位置と大きさとのうち少なくともひとつを補正する請求項7に記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記記憶回路は、前記被検体画像として前記被検体を模式的に示す3次元的な複数の被検体モデルを記憶し、
前記医用画像診断装置は、前記ボリュームデータと前記被検体画像とに基づいて、前記複数の被検体モデルから前記被検体の外形に整合する被検体モデルを前記被検体画像として特定する特定回路をさらに具備し
前記画像発生回路は、前記被検体モデルの特定に応答して、前記特定された被検体モデルに基づいて前記被検体画像を更新し、
前記計算回路は、前記被検体モデルの特定に応答して、前記更新後の被検体画像と前記X線の照射範囲と前記X線の発生に関するX線発生条件と前記補正された位置関係と天板に対する前記X線管の位置とに基づいて、前記被検体に対するX線検査において、現時刻より過去の前記被曝線量を再計算する、
請求項1乃至のうちいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
前記画像発生回路は、前記ボリュームデータが前記被検体の一部分を示す画像である場合、前記一部分とは異なる他の部分を示す3次元的な被検体モデルと前記ボリュームデータとを結合した結合画像を発生し、前記結合画像に基づいて前記被検体画像を更新する請求項1乃至9のうちいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項11】
前記X線画像は、前記画像発生回路により順次発生されるリアルタイムの透視画像である請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項12】
前記被曝線量は、前記被検体における皮膚被曝線量である請求項1乃至11のうちいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置を用いた診断・治療において、患者は、X線により被曝する。患者に対するX線の被曝量および被曝の分布を可視化する技術がある。この技術により、医師は、患者に対する皮膚被曝線量をモニタリングしながら、手術およびX線撮影ができるようになる。この結果、医師は、患者に対する被曝を意識して手術するようになるため、患者に対する総被曝量の低減と、局所被曝量の低減とを実現することができる。上記技術において、装置は、X線源の位置と、X線検出器の位置と、寝台の位置とは把握しているが、寝台のどの位置に患者が載置されているか認識できない。このため、患者の形状、位置を推定、もしくは測定する必要がある。
【0003】
上記技術の実施において、まず、X線診断装置における寝台上に患者が載置される。次いで、患者に最も適合していると思われるモデルが、データベースから手動で(あるいは体重や身長情報を参照して半自動で)選択される。データベースには、規定のモデルが多数登録されている。すなわち、上記技術の実施において、上記技術で用いられるモデルが複数の規定モデルのなかから選択されることが想定されている。また、選択されたモデルの位置とX線診断装置の位置とは、手動で位置あわせされる。
【0004】
しかしながら、モデルは有限であり、選択間違いの発生の可能性もあるため、モデルと実際の患者との形状の相違が、そのまま皮膚被曝線量の測定誤差になる問題がある。加えて、患者の体型の変化、寝台上の患者の位置の正確な把握の困難性、X線検査中における患者が動き等により、患者に対する実際の照射範囲と、モデル上での被曝位置とがズレていた場合、皮膚被曝線量の誤差が発生する問題点がある。
【0005】
そこで、上記技術における皮膚被曝線量の表示および計算において、モデルではなく、実際の患者の体形に適合する形状と、X線診断装置に対する患者の位置とを用いることが期待されている。例えば、実際の患者の体形を測定するため、およびX線診断装置における患者の位置を特定するために、ビデオカメラを用いたり、各種センサなどを寝台上に設置したりする方法がある。
【0006】
しかしながら、ビデオカメラを用いた場合、被検体を覆うドレープなどのカバーにより患者がビデオに映らない場合がある。このとき、患者の正確な形状をとらえることはできない。また、ビデオカメラとして赤外線カメラを用いたとしても、1台のカメラでは1方向しか、患者の正確な形状がわからない問題がある。
【0007】
また、センサを用いた場合であっても、患者の形状の検出には限界がある。センサとして、例えば、圧力センサ、接触センサ、静電容量センサ、温度センサなどが用いられたとしても、患者の一部が寝台から浮いていたりすることなどの要因により、センチ単位でのずれが発生してしまう問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−152924号公報
【特許文献2】特開2015−100416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
実施形態の目的は、被検体モデルの形状の精度と皮膚被曝線量の表示範囲の精度とを向上させることが可能な医用画像診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態に係る医用画像診断装置は、X線管と、X線検出器と、画像発生回路と、ディスプレイと、補正回路とを具備する。X線管は、被検体に対してX線を発生する。X線検出器は、X線を検出する。画像発生回路は、検出されたX線に基づいて、X線画像を発生する。ディスプレイは、被検体を示す被検体画像上に、X線による被検体に対する被曝線量を表示する。補正回路は、X線画像に基づいて、被検体画像上における被曝線量の表示範囲と被検体画像との相対的な位置関係を補正する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係り、男性に関する複数の被検体モデルを示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る他の被検体モデルを示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る他の被検体モデルを示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る他の被検体モデルを示す図である。
図6図6は、第1の実施形態に係り、位置ずれ補正処理に係る処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第1の実施形態に係り、被検体に対するX線の曝射に伴って発生されたX線画像および線量画像と、補正された相対的な位置関係を用いて被検体モデルを移動させた線量画像とを示す図である。
図8図8は、第1の実施形態に係り、被検体に対するX線の曝射に伴って発生されたX線画像および線量画像と、補正された相対的な位置関係を用いて被検体モデルを移動させた線量画像とを示す図である。
図9図9は、第1の実施形態の第3の変形例に係る線量再計算処理の手順を示すフローチャートである。
図10図10は、第1の本実施形態の第4の変形例に係る線量再計算処理の手順を示すフローチャートである。
図11図11は、第1の本実施形態の第4の変形例に係り、ボリュームデータおよび被検体モデルと、部分実測モデルとを示す図である。
図12図12は、第2の実施形態に係るX線診断装置に係る構成の一例を示す構成図である。
図13図13は、第3の実施形態に係り、再計算動画処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態に係る医用画像診断装置は、X線管と、X線検出器と、画像発生回路と、ディスプレイと、補正回路とを有する。X線管は、被検体に対してX線を発生する。X線検出器は、X線を検出する。画像発生回路は、検出されたX線に基づくX線画像を発生する。ディスプレイは、被検体を示す被検体画像上に、X線による被検体に対する被曝線量を表示する。補正回路は、X線画像に基づいて、被検体画像上における被曝線量の表示範囲と被検体画像との相対的な位置関係を補正する。
【0013】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら第1の実施形態に係る医用画像診断装置の一例として、X線診断装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合に行う。
【0014】
図1は、本実施形態に係るX線診断装置1の構成を示す構成図である。X線診断装置1は、高電圧発生器11と、X線管13と、X線検出器15と、サポートフレーム17と、照射野限定器19と、天板21を有する図示していない寝台と、寝台と天板21とサポートフレーム17とを駆動する駆動装置(駆動部)23と、画像発生回路(画像発生部)25と、データバス26と、インターフェース(インターフェース部)27と、入力回路(入力部)29と、制御回路(制御部)31と、記憶回路(記憶部)33と、計算回路(計算部)35と、検出回路(検出部)37と、補正回路(補正部)39と、ディスプレイ(表示部)41とを有する。
【0015】
高電圧発生器11は、X線管13に供給する管電流と、X線管13に印加する管電圧とを発生する。例えば、高電圧発生器11は、管電流と管電圧とを発生する高電圧発生回路、X線管13の陰極フィラメントにフィラメント電流を供給するフィラメント電流発生器等を有する。高電圧発生器11は、制御回路31による制御のもとで、後述するX線発生条件に従って、X線撮影およびX線透視にそれぞれ適した管電流をX線管13に供給し、X線撮影およびX線透視各々にそれぞれ適した管電圧をX線管13に印加する。
【0016】
X線発生条件とは、例えば、X線照射ごとの管電流、管電圧、照射時間、管電流(mA)と照射時間(s)との積(以下、管電流時間積(mAs)と呼ぶ)などである。なお、高電圧発生器11は、時間的に連続してX線管13に管電圧を印加する方式でもよいし、高電圧のスイッチングによりパルス状の高電圧をX線管13に印加する方式であってもよい。
【0017】
X線管13は、高電圧発生器11からの出力により、被検体Pに対してX線を発生する。具体的には、X線管13は、高電圧発生器11から供給された管電流と、高電圧発生器11により印加された管電圧とに基づいて、X線の焦点(以下、管球焦点と呼ぶ)において、X線を発生する。管球焦点から発生されたX線は、X線管13の前面に設けられたX線放射窓を介して、被検体Pに照射される。X線の放射範囲は、図1において点線14で示されている。本実施形態におけるX線管13は、回転陽極型のX線管であるとして説明する。なお、固定陽極型X線管などの他の型のX線管でも本実施形態に適用可能である。
【0018】
X線管13は、陰極フィラメントと回転式の陽極ターゲットとを有する。X線管13は、円盤状の陽極ターゲットを、相互間に軸受を有する回転体および固定体で機械的に支える。X線管13は、真空容器外の回転体の位置に対応した位置に配置されたステータの電磁コイルに回転駆動力を供給することで、円盤状の陽極ターゲットを回転させる。
【0019】
高電圧発生器11のフィラメント電流発生器から供給されるフィラメント電流は、陰極フィラメントに供給される。陰極フィラメントは、所定の温度となるまでフィラメント電流により加熱される。加熱された陰極フィラメントは、電子を放出する。放出された電子は、陰極フィラメントと陽極ターゲットとの間における管電圧により、陽極ターゲットに衝突する。陽極ターゲットに衝突した電子により、X線が発生される。
【0020】
X線検出器15は、X線管13から発生され、被検体Pを透過したX線を検出する。例えば、X線検出器15は、フラットパネルディテクタ(Flat Panel Detector:以下、FPDと呼ぶ)を有する。FPDは、複数の半導体検出素子を有する。半導体検出素子には、直接変換形と間接変換形とがある。直接変換形とは、入射X線を直接的に電気信号に変換する形式である。間接変換形とは、入射X線を蛍光体で光に変換し、変換された光を電気信号に変換する形式である。なお、X線検出器15として、イメージインテンシファイア(Imageintensifier)が用いられてもよい。
【0021】
X線の入射に伴って複数の半導体検出素子で発生された電気信号は、図示していないアナログディジタル変換器(Analog to Digital converter:以下、A/D変換器と呼ぶ)に出力される。A/D変換器は、電気信号をディジタルデータに変換する。A/D変換器は、ディジタルデータを、画像発生回路25に出力する。
【0022】
サポートフレーム17は、X線管13とX線検出器15とを移動可能に支持する。具体的には、サポートフレーム17は、例えばCアームである。Cアームは、X線管13とX線検出器15とを、互いに対向させて支持する。図示していない支柱は、CアームのC形状に沿う方向(以下、C方向と呼ぶ)に、例えば、ガイドレールおよび軸受等を介して、Cアームをスライド可能に支持する。
【0023】
また、支柱は、例えば、ベアリング等を介して、Cアームを、C方向に直交する方向(以下、C直交方向と呼ぶ)に回転可能にCアームを支持する。なお、支柱は、Cアームを、天板21の短軸方向(図1のX方向)と長軸方向(図1のY方向)とに平行移動可能に、例えばベアリング等を介して、支持することも可能である。また、Cアームは、X線管13における管球焦点とX線検出器15の中心との距離(線源受像面間距離(Source Image Distance:以下、SIDと呼ぶ))を変更可能に、例えばガイドレールおよび直動軸受等を介して、X線管13とX線検出器15とを支持する。
【0024】
なお、サポートフレーム17は、X線透視時およびX線撮影時において、天板21に対するX線管13の位置を、計算回路35に出力してもよい。このとき、サポートフレーム17は、天板21に対するX線管13の位置を検出するための位置検出器を有する。
【0025】
サポートフレーム17として、Cアームの代わりにΩアームが用いられてもよい。Ωアームは、X線管13とX線検出器15とを、互いに向き合うように搭載する。Ωアームを支持するフレームは、ΩアームのΩ形状に沿う方向(以下、Ω方向と呼ぶ)に、例えば、ガイドレールおよび軸受等を介して、Ωアームをスライド可能に支持する。
【0026】
Ωアームを支持するフレームは、例えば、本X線診断装置1が設置された検査室における天井に設けられたレールに沿って、移動可能に設置される。レールは、例えば、天板21の長軸方向に平行に、天井に設けられる。フレームは、Ω方向に直交する方向(以下、Ω直交方向と呼ぶ)に回転可能に、例えば、ベアリング等を介して、Ωアームを支持する。なお、フレームは、天板21の短軸方向(図1のX方向)と長軸方向(図1のY方向)とに平行移動可能に、例えばベアリング等を介して、Ωアームを支持することも可能である。また、Ωアームは、管球焦点とX線検出器15との距離(SID)を変更可能に、例えばガイドレールおよび直動軸受等を介して、X線管13とX線検出器15とを支持する。
【0027】
なお、本実施形態に係るX線診断装置1におけるサポートフレーム17は、CアームおよびΩアームによる構造に限定されない。サポートフレーム17は、例えば、X線管13およびX線検出器15をそれぞれ独立に支持する2つのアーム(例えばロボットアームなど)により、例えばベアリング、ガイドレール、直動軸受等を介して、任意の方向に移動可能に支持されてもよい。また、サポートフレーム17は、CアームとΩアームとによるバイプレーン構造を有していてもよい。
【0028】
また、本実施形態に係るX線診断装置1におけるサポートフレーム17は、オーバーチューブ方式(over tube system)、およびアンダーチューブ方式(under tube system)などに限定されず任意の形態に適用可能である。
【0029】
照射野限定器(beam limiting device)19は、X線放射窓の前面に設けられる。具体的には、照射野限定器19は、X線放射窓を通過したX線の照射野(照射範囲)を限定する。照射野限定器19、X線絞り、またはコリメータとも称される。
【0030】
具体的には、照射野限定器19は、管球焦点で発生されたX線を、操作者が所望する撮影部位以外に不要な被爆をさせないために、最大口径の照射範囲を、被検体Pの体表面にX線を照射する照射面積に応じて限定する。例えば、照射野限定器19は、入力回路29により入力された照射野の限定指示、または制御回路31による制御指示に従って、制御回路31による制御のもとで絞り羽根を移動させることにより、照射野を限定する。
【0031】
照射野限定器19は、例えば、所定方向に移動可能な複数の第1絞り羽根と、所定方向とは異なる方向に移動可能な複数の第2絞り羽根とを有する。第1、第2絞り羽根各々は、例えば、管球焦点で発生されたX線を遮蔽する鉛により構成される。
【0032】
なお、照射野限定器19は、被検体Pへの被曝線量の低減および画質の向上を目的として、X線の照射野に挿入される複数の所定のフィルタ(以下、線質調整フィルタ呼ぶ)を有していてもよい。複数の線質調整フィルタは、それぞれ異なる厚みを有する。なお、線質調整フィルタは、それぞれ異なる材質により構成され、同じ厚みを有していてもよい。線質調整フィルタは、管球焦点で発生されたX線の線質を厚みに応じて変更する。線質調整フィルタは、例えば、アルミニウム、銅などにより構成される。
【0033】
なお、照射野限定器19は、X線透視時およびX線撮影時において、絞り羽根により限定された照射野の情報および線質調整フィルタの情報を、計算回路35に出力してもよい。限定された照射野の情報とは、例えば、絞りの開度、すなわち開口面積に相当する。絞りの開度は、例えば、絞りの位置を検出する位置検出器により特定される。また、線質調整フィルタの情報は、X線の照射範囲に配置される線質調整フィルタの種類、厚みなどである。
【0034】
図示していない寝台は、被検体Pが載置される天板21(臥位テーブルとも言う)を有する。天板21には、被検体Pが載置される。X線透視時およびX線撮影時においては、X線管13とX線検出器15との間に、天板21に載置された被検体Pが配置される。なお、寝台は、X線透視時およびX線撮影時において、天板21の位置を、計算回路35に出力してもよい。このとき、寝台は、天板21の位置を特定するための位置検出器を有する。
【0035】
駆動装置23は、例えば、サポートフレーム17と天板21と寝台とを駆動する。駆動装置23は、例えば、モータと、モータで発生した力を駆動対象の各種ユニットに伝達する伝達機構(例えば、チェーンドライブ、ベルトドライブ、ボールねじなど)とを有する。駆動装置23は、制御回路31からの制御信号に応じた駆動信号に従って、サポートフレーム17をC方向にスライド、C直交方向に回転させる。駆動装置23は、制御回路31の制御のもとで、X線管13に対してX線検出器15を回転させてもよい。
【0036】
駆動装置23は、制御回路31の制御のもとで、天板21を駆動することにより、天板21を移動させる。具体的には、駆動装置23は、制御回路31からの制御信号に基づいて、天板21の短軸方向(図1のX方向)、および天板21の長軸方向(図1のY方向)に、例えばベアリング、ガイドレール、直動軸受等を介して天板21をスライドさせる。また、駆動装置23は、鉛直方向(図1のZ方向)に関して、例えばベアリング、ガイドレール、直動軸受等を介して天板21を昇降する。
【0037】
加えて、駆動装置23は、長軸方向と短軸方向とのうち少なくとも一つの方向を回転軸(図1のX軸、Y軸)として、例えばベアリング、ガイドレール、直動軸受等を介して、天板21を傾けるために、天板21を回転してもよい。駆動装置23は、X線透視時およびX線撮影時において、天板21に対するX線管13の位置、および天板21の位置を、計算回路35に出力する。
【0038】
画像発生回路25は、X線検出器15により検出されたX線に基づいて、X線画像を発生する。具体的には、画像発生回路25は、X線検出器15から出力されたデータに前処理を施し、X線画像を発生するプロセッサである。例えば、画像発生回路25は、前処理機能に対応するプログラム(以下、前処理プログラムと呼ぶ)を記憶回路33から読み出して、読み出した前処理プログラムを実行することで、前処理機能を実現する。
【0039】
前処理機能は、X線検出器15から出力されたディジタルデータに対して、前処理を実行する機能である。前処理とは、X線検出器15におけるチャンネル間の感度不均一の補正、および金属等のX線強吸収体による極端な信号の低下またはデータの脱落に関する補正等である。
【0040】
また、画像発生回路25は、画像発生機能に対応するプログラム(以下、画像発生プログラムと呼ぶ)を記憶回路33から読み出して、読み出した画像発生プログラムを実行することで、画像発生機能を実現する。画像発生回路25は、例えば、図1におけるデータバス26に接続される。
【0041】
画像発生機能は、撮影位置においてX線撮影された後に前処理されたディジタルデータに基づいて撮影画像を発生する機能、および透視位置でX線透視された後に前処理されたディジタルデータに基づいて透視画像を発生する機能である。以下、撮影画像と透視画像とをまとめてX線画像と呼ぶ。画像発生回路25は、リアルタイムの透視画像を順次発生する。画像発生機能は、発生したX線画像を、例えば、記憶回路33、検出回路37、補正回路39、およびディスプレイ41等に出力する。
【0042】
画像発生回路25は、後述する線量表示機能の開始指示に応答して、後述する被検体画像(被検体モデル)に被曝線量を重畳した重畳画像(以下、線量画像と呼ぶ)を、被検体Pに対するX線の曝射に応じて発生する。被曝線量は、例えば、被検体体表面における皮膚被曝線量である。画像発生回路25は、発生した線量画像を、順次ディスプレイ41に出力する。なお、画像発生回路25は、被検体Pに対するX線検査において、時系列に沿って発生した線量画像を、記憶回路33に出力してもよい。
【0043】
画像発生回路25は、処理回路(Processing circuitry)を有し、例えば、記憶回路33から各種プログラムを読み出し、実行することで、読み出したプログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路は、前処理機能及び画像発生機能を有することとなる。
【0044】
なお、上記説明においては、単一の処理回路において前処理機能及び画像発生機能等の各種機能が実行されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各種機能を実現するものとしても構わない。また、前処理機能と画像発生機能とは、それぞれ異なる処理回路で実現されてもよい。
【0045】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU(graphics processing unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Comlex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0046】
なお、記憶回路33にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、プロセッサは、回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで、各種機能を実現する。
【0047】
また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その各種機能を実現するようにしてもよい。更に、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0048】
インターフェース27は、例えば、ネットワーク、図示していない外部記憶装置に関するインターフェースである。本X線診断装置1によって得られたX線画像等のデータ、解析結果などは、インターフェース27およびネットワークを介して他の装置に転送可能である。インターフェース27は、本X線診断装置1と電子的通信回線(以下、ネットワークと呼ぶ)とを接続する。ネットワークには、図示していない放射線部門情報管理システム、病院情報システム、X線コンピュータ断層撮影装置(以下、X線CT装置と呼ぶ)および磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置と呼ぶ)などの各種モダリティ等が接続される。
【0049】
入力回路29は、操作者からの各種指示・命令・情報・選択・設定を本X線診断装置1に取り込む。例えば、入力回路29は、操作者が所望するX線撮影の撮影条件およびX線透視の透視条件などのX線発生条件、透視・撮影位置に関するX線の照射範囲、X線画像における関心領域(region of interest:ROI)などを、操作者の指示により入力する。X線発生条件とは、例えば、管電圧、管電流、曝射時間、照射野の情報および線質調整フィルタの情報などである。
【0050】
入力回路29は、関心領域、線質調整フィルタ、X線発生条件の設定などの各種設定、入力を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード等により実現される。入力回路29は、操作者により入力された各種指示を、制御回路31等の各種回路に出力する。入力回路29は、ディスプレイ41上に表示されるカーソルの座標を検出し、検出した座標を制御回路31に出力する。
【0051】
なお、入力回路29は、ディスプレイ41を覆うように設けられたタッチパネルでもよい。この場合、入力回路29は、電磁誘導式、電磁歪式、感圧式等の座標読み取り原理でタッチ指示された座標を検出し、検出した座標を、制御回路31に出力する。
【0052】
入力回路29は、X線撮影およびX線透視の開始、終了、停止に関するボタン、スイッチ等を有する。また、入力回路29は、被検体Pに対するX線撮影時およびX線透視時において、被検体に対する皮膚被曝線量の分布を表示する機能(以下、線量表示機能と呼ぶ)の開始指示を入力するボタン、スイッチ等を有する。
【0053】
入力回路29は、線量表示機能の起動時において、皮膚被曝線量が重畳される被検体画像の選択指示を入力する。被検体画像とは、被検体Pを示す画像であって、例えば、被検体Pを模式的示す3次元的な画像である。被検体Pを模式的に示す3次元的な画像とは、例えば、被検体Pを3次元的に示す被検体モデルである。被検体モデルは、例えば、模式的なレンダリング(rendering)画像(サーフェスレンダリング(surface rendering)画像、ボリュームレンダリング(volume rendering)画像など)である。
【0054】
入力回路29は、寝台近傍に設けられたフットスイッチでさらに実現されてもよい。フットスイッチは、操作者の指示により、X線撮影およびX線透視の開始、終了、停止を入力する。入力回路29は、被検体モデル上における皮膚被曝線量の表示範囲とX線の照射範囲との位置ずれを入力してもよい。
【0055】
制御回路31(Controlling circuitry)は、本X線診断装置1における各部、各処理回路、駆動装置等を制御するプロセッサである。制御回路31は、図示していないCPUとメモリを備える。制御回路31は、本X線診断装置1における各部、各処理回路、駆動装置等を制御するためのプログラム(以下、システム制御プログラムと呼ぶ)を記憶回路33から読み出して、読み出したシステム制御プログラムを実行することで、各種制御機能を実現する。
【0056】
制御機能は、入力回路29から送られてくる操作者の指示、撮影条件・透視条件などのX線発生条件の情報、照射野の情報および線質調整フィルタの情報などを、図示していなメモリに一時的に記憶する。制御回路31は、メモリに記憶された上記情報などに従って、X線撮影・X線透視(パルスX線撮影)を実行するために、高電圧発生器11、X線検出器15、照射野限定器19、寝台、天板21、駆動装置23などを制御する。
【0057】
なお、上記説明においては、単一の制御回路において制御機能等の各種機能が実行されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて制御回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各種機能を実現するものとしても構わない。
【0058】
また、本実施形態の各プロセッサ(画像発生回路25および制御回路31)は、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その各種機能を実現するようにしてもよい。更に、画像発生回路25と制御回路31とを1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0059】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、或いは、ASIC、SPLD、CPLD、及びFPGA等の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路33に保存されたプログラムを読み出して実行することで、各種機能を実現する。なお、記憶回路33にシステム制御プログラムを保存する代わりに、制御回路31におけるプロセッサの回路内にシステム制御プログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、プロセッサは、回路内に組み込まれたシステム制御プログラムを読み出して実行することで、各種機能を実現する。
【0060】
記憶回路33は、各種メモリ、HDD(ハードディスクドライブ)、SSD(ソリッドステートドライブ)、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどにより構成される。
【0061】
記憶回路33は、診断プロトコル、入力回路29から送られてくる操作者の指示、X線撮影に関する撮影条件および透視条件などのX線発生条件に関する各種データ群、被検体に対するX線曝射時における照射野の情報および線質調整フィルタの情報等を記憶する。
【0062】
記憶回路33は、画像発生回路25で発生された種々のX線画像、複数の被検体画像等を記憶する。複数の被検体画像は、患者の性別、年齢、体重、身長などに応じた被検体モデルである。すなわち、複数の被検体モデルは、性別、大人または子供、標準体重超過、標準体重、標準体重未満、体重範囲、身長範囲、X線照射部位等にそれぞれ対応するモデルである。以下、被検体画像を被検体モデルと呼ぶ。
【0063】
図2は、男性に関する複数の被検体モデルの一例を示す図である。図2の最上段の行は、標準体重超過の被検体モデルであって、高身長の被検体モデルから低身長の被検体モデルまでの5つの被検体モデルを示している。図2の中段の行は、標準体重の被検体モデルであって、高身長の被検体モデルから低身長の被検体モデルまでの5つの被検体モデルを示している。図2の最下段の行は、標準体重未満の被検体モデルであって、高身長の被検体モデルから低身長の被検体モデルまでの5つの被検体モデルを示している。
【0064】
図3におけるS1およびS2は、被検体モデルの一例を示す図である。図3におけるIRは、X線の照射範囲を示している。図3のDS1は、被検体モデルS1上における皮膚被曝線量の表示範囲を示している。図3のDS2は、被検体モデルS2上における皮膚被曝線量の表示範囲および皮膚被曝線量を示している。
【0065】
なお、被検体モデルにおける皮膚被曝線量の表示範囲は、例えば、図4のCyに示すように円筒形状をしていてもよい。また、被検体モデルは、円筒に限定されず任意の立体形状(例えば、立方体、直方体、多面体等)であってもよい。図4のS3は、被検体モデルである。被検体モデルが円筒形状である場合、記憶回路33は、図4に示すように、X線検出器モデルXdと、X線管モデルXtと、照射範囲Xirとを記憶する。照射範囲の大きさは、計算回路35により決定される。図4におけるDS3は、被検体モデル上に表示された皮膚被曝線量の分布を示している。
【0066】
また、記憶回路33は、撮影部位に応じた形状モデルを、被検体モデルとして記憶してもよい。撮影部位に応じた形状モデルとは、例えば、撮影部位が頭部である場合、球形状のモデルである。また、撮影部位が胴である場合、撮影部位に応じた形状とは、円柱形状のモデルである。
【0067】
図5は、撮影部位が頭部である場合における形状モデルの一例を示す図である。図5のSpは、球形状のモデルを示している。図5におけるSD5、SD6各々は、球形状のモデル上に表示された皮膚被曝線量の分布を示している。図5のS4は、形状モデルの部位を示すための被検体モデルである。図5のPSは、被検体モデルS4における球形状モデルSpの位置を示している。
【0068】
記憶回路33は、複数の被検体モデル各々において、複数の解剖学的標識点(Anatomical Landmark)を記憶する。解剖学的標識点とは、例えば、輪郭、目、骨などである。すなわち、被検体モデル各々は、複数の解剖学的標識点を有する。
【0069】
記憶回路33は、被検体モデル各々に関して、解剖学的標識点の代わりに所定臓器に関する解剖学的構造(解剖学的特徴)を示すパターン、マーカを記憶してもよい。所定臓器とは、例えば、X線に対する感受性が高い臓器(すなわち被曝が重視される領域)であって、例えば、水晶体、甲状腺などである。以下、解剖学的構造を示すパターン、マーカを、解剖学的領域と呼ぶ。
【0070】
記憶回路33は、被検体Pに対して実行されたX線検査の期間に亘って計算された皮膚曝射線量および被検体モデルにおける皮膚被曝線量の表示範囲とを、X線の曝射時刻に対応づけて記憶する。すなわち、記憶回路33は、時系列に沿った皮膚被曝線量と、皮膚被曝線量の表示範囲とを記憶する。
【0071】
記憶回路33は、本X線診断装置1のシステム制御プログラム、前処理機能に関する前処理プログラム、画像発生機能に関する画像発生プログラム、皮膚被曝線量を計算する線量計算プログラム、被検体モデル上における皮膚被曝線量の表示範囲とX線の照射範囲との位置ずれを検出する位置ずれ検出プログラム、皮膚被曝線量の表示範囲と被検体画像との相対的な位置関係を補正する補正プログラム、被検体モデルに皮膚被曝線量を重畳した画像とX線画像との位置合わせ(Registration)を実行する位置合わせプログラム等の各種プログラムを記憶する。
【0072】
記憶回路33は、位置ずれ検出プログラムにおいて用いられる所定の閾値(位置ずれの角度範囲、位置ずれの長さ範囲)、補正回路39により補正された相対的な位置関係等を記憶する。所定の閾値とは、位置ずれ検出のトリガとなる値であって、例えば、ミリメートル(mm)の程度である。なお、所定の閾値は、X線画像において表示された所定臓器の大きさ(例えば、目の大きさ、差し渡し)に依存してもよい。
【0073】
計算回路35は、X線発生条件と、X線管13の位置と、天板21の位置と、選択された被検体モデルとに基づいて、被検体に対するX線の曝射ごとに、被検体モデル上でのX線の照射位置と、X線線量とを計算する。具体的には、計算回路35は、X線の曝射ごとおよび照射位置ごとにX線線量を積算することにより、皮膚被曝線量を計算する。また、計算回路35は、照射位置が重複する領域を除いてX線の曝射ごとに照射位置を加算することにより、被検体モデル上における皮膚被曝線量の表示範囲を計算する。
【0074】
計算回路35は、X線の曝射毎に計算した皮膚被曝線量の表示範囲と皮膚被曝線量とを、ディスプレイ41に出力する。また、計算回路35は、皮膚被曝線量の表示範囲と皮膚被曝線量とを、X線の曝射時刻に対応づけて記憶回路33に出力する。計算回路35は、X線の曝射ごとに、皮膚被曝線量の表示範囲を検出回路37に出力する。
【0075】
計算回路35は、処理回路を有し、例えば、記憶回路33から線量計算プログラムを読み出し、実行することで、読み出したプログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。なお、上記説明においては、単一の処理回路において皮膚被曝線量および被検体モデルにおける皮膚被曝線量の表示範囲を計算する機能が実行されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが線量計算プログラムを実行することにより各種機能を実現するものとしても構わない。
【0076】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、或いは、ASIC、SPLD、CPLD、及びFPGA等の回路を意味する。なお、記憶回路33にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、プロセッサは、回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで、各種機能を実現する。
【0077】
なお、本実施形態の各プロセッサ(制御回路31および計算回路35)は、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その各種機能を実現するようにしてもよい。
【0078】
検出回路37は、被検体モデル上における皮膚被曝線量の表示範囲(X線の照射範囲)とX線画像(X線画像におけるX線の照射範囲)との位置ずれ(位置ずれ、サイズのずれ)を検出する。具体的には,検出回路37は、X線画像における被検体の輪郭(エッジ)と被検体モデルの輪郭との位置合わせ(レジストレーション)を実行する。なお、検出回路37は、X線画像における被検体の骨領域と被検体モデルにおける骨領域との位置合わせを実行してもよい。
【0079】
また、検出回路37は、X線画像における被検体の目の位置(水晶体の位置)と被検体モデルにおける目の位置との位置合わせを実行してもよい。輪郭、骨領域、目の位置等(解剖学的特徴)は、例えば、エッジ検出、アトラス(解剖学的図譜)等により、予め検出回路37により検出される。検出回路37において用いられる位置合わせは、例えば、剛体位置合わせ(rigid registration)である。なお、位置合わせは、剛体位置合わせに限定されない。
【0080】
なお、被検体モデルに解剖学的標識点または解剖学的領域が設けられている場合、検出回路37は、X線画像における解剖学的標識点または解剖学的領域を検出する。次いで、検出回路37は、X線画像と被検体モデルとにおいてそれぞれ対応する解剖学的標識点または解剖学的領域(目の位置、水晶体の位置等)を用いて、X線画像と被検体モデルとの位置合わせを実行する。なお、位置合わせは、輪郭、解剖学的特徴、解剖学的標識点などを用いて、複合的に実行されてもよい。
【0081】
検出回路37は、位置合わせされたX線画像および被検体モデルと所定の閾値とを用いて、被検体モデル上における皮膚被曝線量の表示範囲とX線の照射範囲との位置ずれを検出する。例えば、位置ずれの大きさが所定の閾値を超えた場合、検出回路37は、位置ずれを検出する。なお、検出回路37は、所定臓器、すなわちX線に対する感受性が高い臓器の位置ずれを検出してもよい。また、検出回路37は、位置合わせされたX線画像および被検体モデルとに基づいて、X線の照射範囲の大きさと皮膚吸収線量の表示範囲の大きさとのずれ(すなわち、サイズの違い)を検出する。なお、検出回路37は、入力回路29を介した操作者の指示に従って、ずれを検出してもよい。
【0082】
位置ずれを検出すると、検出回路37は、位置ずれ量(位置ずれの大きさ(長さ)、ずれの方向)を補正回路39に出力する。なお、検出回路37は、位置ずれ量および位置ずれ量に関する情報をディスプレイ41に出力してもよい。また、検出回路37は、X線画像の発生毎に、位置ずれの有無を検出する。
【0083】
位置ずれ量に関する情報とは、例えば、被検体モデルまたは皮膚被曝線量の表示範囲を移動させるメッセージ、被検体モデルまたは皮膚被曝線量の表示範囲を移動させる方向を示す矢印、被検体モデルまたは皮膚被曝線量の表示範囲をどの方向にどの程度移動させたらよいかを示す支援メッセージ、位置ずれ量の大きさ(拡大縮小(リサイズ))に応じたより適切な被検体モデルの提示、位置ずれの発生を報知するための所定の警告などである。
【0084】
検出回路37は、処理回路を有し、例えば、記憶回路33から各種プログラム(位置ずれ検出プログラム、位置合わせプログラム等)を読み出し、実行することで、読み出したプログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。なお、上記説明においては、単一の処理回路において位置ずれ検出機能が実行されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各種機能を実現するものとしても構わない。
【0085】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、或いは、ASIC、SPLD、CPLD、及びFPGA等の回路を意味する。なお、記憶回路33にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、プロセッサは、回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで、各種機能を実現する。
【0086】
なお、本実施形態の各プロセッサ(計算回路35および検出回路37)は、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その各種機能を実現するようにしてもよい。更に、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0087】
補正回路39は、X線画像に基づいて、被検体モデル上における皮膚被曝線量の表示範囲と被検体画像との相対的な位置関係を補正する。例えば、補正回路39は、X線画像における解剖学的標識点と被検体モデルにおける解剖学的標識点とに基づいて、上記相対的な位置関係を補正する。
【0088】
具体的には、補正回路39は、X線画像における解剖学的標識点と被検体の体表におけるX線の照射範囲とに基づいて、被検体モデルにおける皮膚被曝線量の表示範囲をX線の照射範囲に整合させるために、被検体モデルの位置と被検体モデルの大きさとのうち少なくともひとつを補正する。なお、補正回路39は、X線画像における解剖学的標識点と被検体の体表におけるX線の照射範囲とに基づいて、被検体モデルにおける皮膚被曝線量の表示範囲をX線の照射範囲に整合させるために、被検体モデル上における皮膚被曝線量の表示範囲の位置と皮膚被曝線量の表示範囲の大きさとのうち少なくともひとつを補正してもよい。
【0089】
なお、被検体モデルにおける皮膚被曝線量の表示範囲と、X線の照射範囲とが、それぞれの範囲に対する相対的な拡大率または縮小率で整合可能な場合、補正回路39は、相対的な拡大率と縮小率とのうち少なくとも一方を用いて、被検体モデルと皮膚被曝線量の表示範囲とのうち少なくとも一方を補正する。また、補正回路39は、位置ずれ量に基づいて被検体モデルを回転させることにより、被検体モデルの位置と被検体モデルの大きさとのうち少なくともひとつを補正してもよい。なお、補正回路39は、被検体モデルと皮膚被曝線量の表示範囲とに対する補正について、上記様々な補正を組み合わせてもよい。
【0090】
すなわち、補正回路39は、検出回路37により検出された位置ずれ量に基づいて、位置ずれ量が最小になるように、被検体モデルまたは皮膚被曝線量の表示範囲を移動または変形させる。また、補正回路39は、検出回路37により検出された位置ずれ量に基づいて、位置ずれ量が最小になるように、被検体モデルの大きさまたは皮膚被曝線量の表示範囲の大きさを変更(変形、リサイズ)する。このとき、補正回路39は、位置ずれ量の大きさ(拡大縮小)に応じたより適切な被検体モデルを選択してもよい。
【0091】
補正回路39は、処理回路を有し、例えば、記憶回路33から補正プログラムを読み出し、実行することで、読み出したプログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。なお、上記説明においては、単一の処理回路において位置ずれ検出機能が実行されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各種機能を実現するものとしても構わない。
【0092】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、或いは、ASIC、SPLD、CPLD、及びFPGA等の回路を意味する。なお、記憶回路33にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、プロセッサは、回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで、各種機能を実現する。
【0093】
なお、本実施形態の各プロセッサ(計算回路35、検出回路37、補正回路39)は、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その各種機能を実現するようにしてもよい。更に、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサ(図1の処理装置43)へ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0094】
ディスプレイ41は、画像発生回路25により発生されたX線画像、入力回路29により入力される各種入力項目(X線発生条件、透視・撮影位置に関するX線の照射範囲、X線画像における関心領域等)を表示する。ディスプレイ41は、線量表示機能の開始指示に応答して、被検体を示す被検体画像(被検体モデル)上にX線に起因する皮膚被曝線量を表示する。具体的には、ディスプレイ41は、皮膚被曝線量を、線量の大きさに応じた所定の色相で被検体モデル上に表示する。
【0095】
具体的には、ディスプレイ41は、被検体Pに対するX線の曝射に応じて、皮膚被曝線量を更新して表示する。このとき、ディスプレイ41は、補正回路39による補正結果に従って、被検体モデルまたは皮膚被曝線量の表示範囲の相対的な位置関係を補正して表示する。すなわち、ディスプレイ41は、被検体モデルの位置と、被検体モデルの大きさと、被検体モデル上における皮膚被曝線量の表示範囲の位置と、被検体モデル上における皮膚被曝線量の表示範囲の大きさとのうち少なくともひとつを補正して、線量画像を表示する。
【0096】
なお、ディスプレイ41は、位置ずれ量に応じて、被検体モデルを回転させて表示してもよい。また、ディスプレイ41は、線量画像で表示中の被検体モデルを、位置ずれ量の大きさ(拡大縮小)に応じて選択された被検体モデルに置換して表示してもよい。これにより、線量画像において、被検体モデルにおける皮膚被曝線量の表示範囲と、X線の照射範囲とが整合する。
【0097】
ディスプレイ41は、検出回路37による位置ずれの検出に応答して、位置ずれ量および位置ずれ量に関する情報を表示してもよい。例えば、ディスプレイ41は、被検体モデルまたは皮膚被曝線量の表示範囲を移動させるメッセージ、被検体モデルまたは皮膚被曝線量の表示範囲を移動させる方向を示す矢印、被検体モデルまたは皮膚被曝線量の表示範囲をどの方向にどの程度移動させたらよいかを示す支援メッセージ、位置ずれ量の大きさ(拡大縮小)に応じたより適切な被検体モデルの提示、位置ずれの発生を報知するための所定の警告などを表示する。
【0098】
(位置ずれ補正機能)
位置ずれ補正機能とは、被検体モデル上における皮膚被曝線量の表示範囲とX線の照射範囲との位置ずれを検出し、検出した位置ずれを線量画像において補正する機能である。以下、位置ずれ補正機能に係る処理(以下、位置ずれ補正処理と呼ぶ)について説明する。
【0099】
図6は、位置ずれ補正処理に係る処理手順の一例を示すフローチャートである。
入力回路29を介した操作者の指示により、線量表示機能が起動される(ステップSa1)。このとき、入力回路29を介して、皮膚被曝線量が重畳される被検体モデルが選択される。なお、線量表示機能で用いられる被検体モデルは、例えば、処理装置43または制御回路31により、ネットワークを介して取得された被検体情報(性別、体重、身長等)に基づいて、複数の被検体モデルから選択されてもよい。
【0100】
X線撮影の開始前において、入力回路29を介した操作者の指示により、X線発生条件などが、制御回路31に入力される。入力回路29を介した操作者の指示により、被検体に対してX線撮影が開始される(ステップSa2)。X線発生条件に従って被検体に対してX線が曝射される(ステップSa3)。X線画像が発生され、ディスプレイ41に表示される。皮膚被曝線量と、皮膚被曝線量の表示範囲とが、計算回路35により計算される。
【0101】
皮膚被曝線量が、被検体モデルにおける皮膚被曝線量の表示範囲に線量に応じた色相で重畳され、ディスプレイ41に表示される(ステップSa4)。X線画像(X線の照射範囲)と、X線の曝射に対応する皮膚被曝線量の表示範囲(X線の曝射に対応し、被検体モデル上におけるX線の照射範囲)との位置ずれが検出される(ステップSa5)と、皮膚被曝線量の表示範囲と被検体モデルとの相対的な位置関係が補正される(ステップSa6)。また、位置ずれの検出に応じて、位置ずれ量および位置ずれ量に関する情報が、ディスプレイ41に表示されてもよい。
【0102】
相対的な位置関係の補正は、ディスプレイ41に表示された線量画像おいて、被検体モデルまたは被検体モデル上におけるX線の照射範囲(X曝曝射に対応する皮膚被曝線量の表示範囲)を移動させること、または、被検体モデルの大きさまたは被検体モデル上におけるX線の照射範囲(X曝曝射に対応する皮膚被曝線量の表示範囲)の大きさを変更(変形)すること(拡大縮小すること)に対応する。
【0103】
なお、相対的な位置関係の補正は、線量画像で表示中の被検体モデルを、位置ずれ量の大きさ(拡大縮小)に応じたより適切な被検体モデルに置換することであってもよい。また、相対的な位置関係の補正は、位置ずれ量に応じて、線量画像で表示中の被検体モデルを回転させることであってもよい。
【0104】
補正した相対的な位置関係を用いて、被検体モデル上に皮膚被曝線量が表示される(ステップSa7)。X線撮影の終了の指示が入力回路29を介して入力されるまで(ステップSa8)、ステップSa3乃至ステップSa8の処理が繰り返される。
【0105】
図7は、被検体Pに対するX線の曝射に伴って発生されたX線画像Aおよび線量画像Bと、補正された相対的な位置関係を用いて被検体モデルを移動させた線量画像Cとを示す図である。図7に示すように、X線画像Aにおいて被検体Pに対するX線の照射範囲Dは、頭頂部から鼻腔と上顎骨との間までの範囲であって、補正前の線量画像Bにおける(X線曝射に対応する)皮膚被曝線量の表示範囲Eと異なっている。
【0106】
図7に示すように、X線の照射範囲Dと、皮膚被曝線量の表示範囲Eとの位置ずれは、検出回路37により検出される。図7の線量画像Cにおける被検体モデルは、検出した位置ずれ量に応じて下方に移動(図7のF)されている。
【0107】
図8は、被検体Pに対するX線の曝射に伴って発生されたX線画像Jおよび線量画像Kと、補正された相対的な位置関係を用いて被検体モデルを移動させた線量画像Lとを示す図である。図8のX線画像JにおけるX線の照射範囲Mは、頭頂部から鼻腔と上顎骨との間までの範囲であって、線量画像Kにおける皮膚被曝線量の表示範囲Nと異なっている。
【0108】
図8に示すように、X線の照射範囲Mと皮膚被曝線量の表示範囲Nとの位置ずれは、検出回路37により検出される。照射範囲Mと表示範囲Nとの位置ずれは、被検体モデルにおける頭部の大きさに起因する。このため、図8の線量画像Cにおける被検体モデルは、検出した位置ずれ量に応じて被検体モデルの位置部分(頭部)を、被検体モデルの体軸方向に沿って縮小(図8のO)されている。例えば、被検体が子供である場合、被検体モデルは、被検体の成長(例えば年齢に応じて)に適宜拡張されてもよい。
【0109】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態に係るX線診断装置1によれば、被検体Pに対するX線曝射毎に、X線画像に基づいて、被検体モデル(被検体画像)におけるX線曝射に関する皮膚被曝線量の表示範囲と、被検体モデルとの相対的な位置関係を補正することができる。これにより、X線撮影中(例えば、長時間に亘る手術において、被検体Pに対して麻酔がかけられなかった場合)において被検体Pが動いた場合(被検体が首振りをしたり、足を動かした場合)であっても、操作者による手間をかけることなく、被検体Pに対する被検体モデルの形状の精度と皮膚被曝線量の表示範囲の精度とを向上させることができる。以上のことから、本実施形態に係るX線診断装置1によれば、皮膚被曝線量の計算に誤差が発生する問題を改善することができる。
【0110】
(第1の変形例)
第1の実施形態との相違は、撮影方向が異なる複数のX線画像を用いて、位置ずれ補正処理を実行することにある。
【0111】
入力回路29は、被検体Pに対するX線検査の実行中において、操作者の指示により撮影方向の変更の指示を入力する。すなわち、入力回路29は、上記X線画像に関する撮影方向とは異なる撮影方向(以下、異撮影方向と呼ぶ)に、サポートフレーム17を移動させる指示を入力する。入力回路29は、異撮影方向から被検体Pを撮影するための指示(以下、撮影指示と呼ぶ)を入力する。なお、入力回路29は、異撮影方向に関するX線撮影に関するX線発生条件を入力してもよい。入力回路29は、X線発生条件と異撮影方向とを制御回路31と計算回路35とに出力する。
【0112】
制御回路31は、入力回路29により入力された異撮影方向に対応する位置(以下、異撮影位置と呼ぶ)にサポートフレーム17を移動させる指示を、駆動装置23に出力する。制御回路31は、撮影指示に応答して被検体を撮影するために、X線発生条件にしたがって高電圧発生器11および照射野限定器19を制御する。なお、制御回路31は、異撮影位置に応じて、被検体モデルを回転させてもよい。
【0113】
駆動装置23は、制御回路31からの指示に従って、異撮影位置にサポートフレーム17を移動させるために、サポートフレーム17を駆動する。サポートフレーム17は、駆動装置23による駆動を受けて、異撮影位置に移動する。高電圧発生器11は、制御回路31からの撮影指示の入力に応答して、X線発生条件に従って、被検体を異方向から撮影するために、管電圧をX線管13に印可し、管電流をX線管13に供給する。
【0114】
計算回路35は、異撮影方向に関するX線撮影に応答して、X線発生条件おおび異撮影位置等に基づいて、異撮影方向に関する皮膚被曝線量を計算する。計算回路35は、異撮影方向に関する皮膚被曝線量を、画像発生回路25に出力する。
【0115】
画像発生回路25は、異撮影位置に関するX線検出器15からの出力に基づいて、異撮影方向に関するX線画像(以下、異方向画像と呼ぶ)を発生する。すなわち、画像発生回路25は、X線画像の撮影方向とは異なる少なくとも一つの撮影方向に対応する異方向画像を発生する。なお、異方向画像は、バイプレーンにおける一方のX線検出器からの出力に基づく画像であってもよい。画像発生回路25は、異方向画像を検出回路37に出力する。
【0116】
検出回路37は、異方向画像に基づいて、位置ずれを検出する。検出回路37は、例えば、異方向画像と回転された被検体モデルとを位置合わせすることにより、X線画像の撮影方向に沿った位置ずれを検出する。すなわち、検出される位置ずれはX線画像の撮影方向に関する位置ずれ量となる。検出回路37は、検出した位置ずれを補正回路39に出力する。
【0117】
例えば、X線画像に関する撮影方向が天板21における被検体Pの載置面に垂直な方向であって、異方向画像に関する撮影方向が天板21の載置面に平行な方向である場合、検出される位置ずれは、天板21の載置面に垂直な方向に沿った被検体モデルの位置ずれとなる。
【0118】
補正回路39は、撮影方向に沿った位置ずれ量に基づいて、相対的な位置関係を補正する。具体的には、補正回路39は、被検体モデルにおける皮膚被曝線量の表示範囲をX線の照射範囲に適合させるように、異方向画像における解剖学的標識点に基づいて、皮膚被曝線量の表示範囲の大きさと被検体モデルの大きさとのうち少なくともひとつを補正する。
【0119】
例えば、補正回路39による相対的な位置関係の補正は、被検体モデルの大きさまたは被検体モデル上におけるX線の照射範囲(X曝曝射に対応する皮膚被曝線量の表示範囲)の大きさを拡大縮小することに対応する。
【0120】
なお、補正回路39は、第1の実施形態と同様に、検出回路37により検出された位置ずれ量に基づいて、位置ずれ量が最小になるように、被検体モデルまたは皮膚被曝線量の表示範囲を移動させてもよい。
【0121】
ディスプレイ41は、補正回路39による補正結果に従って、被検体モデルまたは皮膚被曝線量の表示範囲の相対的な位置関係を補正して表示する。具体的には、ディスプレイ41は、被検体モデルの大きさと、被検体モデル上における皮膚被曝線量の表示範囲の大きさとのうち少なくともひとつを補正して、線量画像を表示する。
【0122】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本変形例に係るX線診断装置1によれば、被検体Pに対してサポートフレーム17を回転させる(振る)ことにより、異なる複数の撮影方向にそれぞれ対応する複数のX線画像を発生し、発生された複数のX線画像に基づいて、3次元的な位置ずれを検出することができる。これにより、本変形例に係るX線診断装置1によれば、より正確に位置ずれを検出することができ、被検体Pに対する被検体モデルの形状の精度と皮膚被曝線量の表示範囲の精度とを向上させることができる。
【0123】
(第2の変形例)
第1の実施形態との相違は、位置ずれの検出に応答して、補正された相対的な位置関係を用いて、皮膚被曝線量を計算することにある。
【0124】
計算回路35は、補正された相対的な位置関係と、X線発生条件と、X線管13の位置と、天板21の位置と、被検体モデルとに基づいて、位置ずれの検出に用いられたX線画像に関するX線の曝射に対応したX線線量と、被検体モデル上でのX線の照射位置と計算する。計算回路35は、位置ずれ検出以前の皮膚被曝線量に、位置ずれ検出後に計算したX線線量を、照射位置に応じて加算することにより、最新の皮膚被曝線量を計算する。
【0125】
本変形例に係る計算回路35における皮膚被曝線量の計算は、例えば、図6のフローチャートのステップSa6の処理とステップSa7の処理との間に実行される。このとき、補正された相対的な位置関係は、新たに位置ずれが検出されるまでX線検査中において維持される。新たな位置ずれが検出された場合、相対的な位置関係は、更に補正される。すなわち、相対的な位置関係は、位置ずれの検出に応じて、随時更新される。
【0126】
なお、相対的な位置関係の更新履歴と皮膚被曝線量の計算に用いられた相対的な位置関係とは、記憶回路33に出力されてもよい。このとき、記憶回路33は、上記更新履歴と皮膚被曝線量の計算に用いられた相対的な位置関係とを、X線検査におけるX線曝射の時系列に沿って記憶する。また、記憶回路33は、X線検査におけるX線曝射ごとに、X線発生条件と、X線管13の位置と、天板21の位置とを記憶する。
【0127】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本変形例に係るX線診断装置1によれば、位置ずれの検出に応答して、補正された相対的な位置関係を用いて、位置ずれの検出に用いられたX線画像に関するX線曝射に伴う皮膚被曝線量を計算することができる。すなわち、本変形例に係るX線診断装置1は、位置ずれの検出に応答して、位置ずれを考慮して、皮膚被曝線量と皮膚被曝線量の表示範囲とを計算することができる。
【0128】
これにより、本変形例に係るX線診断装置1によれば、X線撮影中において被検体Pが動いた場合であっても、操作者による手間をかけることなく、正確な皮膚被曝線量を、被検体モデルの正確な位置に表示することができる。以上のことから、本変形例に係るX線診断装置1によれば、被検体モデルと、実際の被検体Pとの位置ずれを最小限にすることができ、かつ表示される皮膚被曝線量の精度を向上させることができる。
【0129】
(第3の変形例)
第1の実施形態との相違は、位置ずれの検出に応答して、補正された相対的な位置関係と、入力回路29を介して入力された時間間隔とを用いて、位置ずれ検出の時刻から入力された時間間隔だけ遡った時刻から位置ずれ検出の時刻まで皮膚被曝線量を再計算することにある。
【0130】
入力回路29は、位置ずれの検出時刻(以下、位置ずれ時刻と呼ぶ)から遡って皮膚被曝線量を再計算するための時間間隔を、操作者の指示に従って入力する。なお、時間間隔が入力される時点は、位置ずれ時刻、および被検体に対するX線検査の検査中などに限定されず、任意の時刻に入力可能である。なお、皮膚被曝線量の再計算に関する時間間隔は、予め記憶回路33に記憶されていてもよい。
【0131】
計算回路35は、検出回路37による位置ずれの検出時刻から時間間隔だけ遡った時刻から検出時刻までの前記皮膚被曝線量を再計算する。具体的には、計算回路35は、位置ずれの検出に応答して、位置ずれ時刻から時間間隔だけ遡った時刻(以下、再計算開始時刻と呼ぶ)を特定する。計算回路35は、再計算開始時刻から位置ずれ時刻までの期間における補正された相対的な位置関係と、X線発生条件と、X線管13の位置と、天板21の位置と、被検体モデルと(以下、線量再計算情報と呼ぶ)を記憶回路33から読み出す。
【0132】
計算回路35は、再計算開始時刻から位置ずれ時刻までの期間に亘って、線量再計算情報を用いて、X線の曝射毎に皮膚被曝線量と、皮膚被曝線量の表示範囲とを再計算する。計算回路35は、再計算した皮膚被曝線量と、皮膚被曝線量の表示範囲と、記憶回路33とディスプレイ41とに出力する。計算回路35は、位置ずれ時刻以降のX線曝射において、再計算した皮膚被曝線量と皮膚被曝線量の表示範囲とを用いて、皮膚被曝線量および皮膚被曝線量の表示範囲を計算する。
【0133】
ディスプレイ41は、位置ずれ時刻に対応し、再計算された皮膚被曝線量を、皮膚被曝線量の表示範囲を用いて被検体モデル上に表示する。本変形例に係る計算回路35における皮膚被曝線量等の再計算は、例えば、図6のフローチャートのステップSa6の処理とステップSa7の処理との間に実行される。
【0134】
なお、相対的な位置関係の更新履歴と皮膚被曝線量の計算に用いられた相対的な位置関係とは、記憶回路33に出力されてもよい。このとき、記憶回路33は、上記更新履歴と皮膚被曝線量の計算に用いられた相対的な位置関係とを、X線検査におけるX線曝射の時系列に沿って記憶する。
【0135】
(線量再計算機能)
線量再計算機能とは、位置ずれの検出に応じて、再計算開始時刻から位置ずれ時刻までの皮膚被曝線量等を再計算する機能である。以下、線量再計算機能に係る処理を線量再計算処理と呼ぶ。
【0136】
図9は、線量再計算処理の手順の一例を示すフローチャートである。
X線画像におけるX線の照射範囲と、皮膚被曝線量の表示範囲との位置ずれが検出される(ステップSb1)。皮膚被曝線量の表示範囲と、被検体モデルとの相対的な位置関係が補正される(ステップSb2)。入力回路29を介して、時間間隔が入力される(ステップSb3)。位置ずれの検出時刻と時間間隔とに基づいて、再計算開始時刻が決定される(ステップSb4)。すなわち、位置ずれ時刻から時間間隔を差分することにより、再計算開始時刻が決定される。
【0137】
再計算開始時刻から位置ずれ時刻までの線量再計算情報が、記憶回路33から読み出される(ステップSb5)。再計算開始時刻から位置ずれ時刻までの期間に亘って、線量再計算情報を用いて、X線の曝射毎に皮膚被曝線量と、皮膚被曝線量の表示範囲とが、再計算される(ステップSb6)。このとき、再計算開始時刻から位置ずれ時刻までの期間におけるX線の曝射に応じた皮膚被曝線量と、皮膚被曝線量の表示範囲とは、記憶回路33に記憶される。記憶された皮膚被曝線量と、皮膚被曝線量の表示範囲とは、更なる線量再計算処理およびX線検査に亘る線量表示の再生に利用される。位置ずれ時刻における皮膚被曝線量が、被検体モデル上に表示される(ステップSb7)。
【0138】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本変形例に係るX線診断装置1によれば、位置ずれの検出に応答して、被検体Pに対するX線検査において過去の再検開始時刻から位置ずれの検出時刻までの皮膚被曝線量を再計算することができる。これにより、本変形例に係るX線診断装置1によれば、X線撮影中において被検体Pが動いた場合であっても、操作者が判断した位置ずれ発生の時点まで遡って、皮膚被曝線量を再計算することができる。以上のことから、本変形例に係るX線診断装置1によれば、表示される皮膚被曝線量の精度を、過去に遡って向上させることができる。
【0139】
(第4の変形例)
第1の実施形態との相違は、被検体に対するボリュームデータに基づいて、被検体モデルを作成し、作成した被検体モデルを用いて皮膚被曝線量を再計算することにある。
【0140】
記憶回路33は、被検体Pを模式的に示す3次元的な複数の被検体モデルを記憶する。なお、記憶回路33は、複数の患者各々に対する過去のボリュームデータを記憶してもよい。ボリュームデータは、X線CT装置、MRI装置等の各種モダリティにより発生されたデータであって、例えば、ネットワークとインターフェース27とを介してモダリティから記憶回路33に送信される。
【0141】
入力回路29は、被検体Pに対するX線検査の実行中において、操作者の指示により、ボリューム撮影の開始指示(以下、ボリューム撮影指示と呼ぶ)を入力する。ここで、ボリューム撮影とは、ボリュームデータを再構成するための被検体Pの投影画像を収集するための回転撮影に対応する。なお、入力回路29は、ボリューム撮影に関するX線発生条件(例えば、撮影範囲、サポートフレーム17の回転範囲等)を入力してもよい。入力回路29は、X線発生条件とボリューム撮影指示とを制御回路31に出力する。入力回路29は、被検体Pに関する過去のボリュームデータを選択する選択指示を入力する。入力回路29は、選択指示を制御回路31に出力する。
【0142】
制御回路31は、入力回路29により入力された回転範囲に亘って、サポートフレーム17を移動させる指示を、駆動装置23に出力する。制御回路31は、ボリューム撮影指示に応答して被検体をボリューム撮影するために、X線発生条件にしたがって高電圧発生器11および照射野限定器19を制御する。
【0143】
制御回路31は、入力回路29から出力された選択指示にしたがって、被検体Pに関する過去のボリュームデータを選択する。制御回路31は、選択した過去のボリュームデータを記憶回路33から読み出して、画像発生回路25に出力する。
【0144】
駆動装置23は、制御回路31からの指示に従って、回転範囲内において、サポートフレーム17を回転させるために、サポートフレーム17を駆動する。サポートフレーム17は、駆動装置23による駆動を受けて、回転範囲内において回転する。高電圧発生器11は、制御回路31からの撮影指示の入力に応答して、X線発生条件に従って、ボリューム撮影を実行するために、管電圧をX線管13に印可し、管電流をX線管13に供給する。
【0145】
画像発生回路25は、回転範囲内におけるX線の複数の曝射位置にそれぞれ対応する複数のX線画像(以下、投影画像と呼ぶ)を発生する。複数の投影画像は、被検体周りの複数の撮影方向とそれぞれ対応づけられて、記憶回路33に記憶されてもよい。画像発生回路25は、回転範囲内において発生された複数の投影画像に基づいて、ボリュームデータを再構成する。画像発生回路25は、再構成したボリュームデータを記憶回路33に出力する。
【0146】
なお、ボリュームデータの再構成は、図示していない画像再構成装置により実行されてもよい。画像再構成アルゴリズムとしては、FBP(filtered back projection)法やCBP(convolution back projection)法等の解析学的画像再構成法や、ML−EM(maximum likelihood expectation maximization)法やOS−EM(ordered subset expectation maximization)法等の統計学的画像再構成法等の既存の画像再構成アルゴリズムが用いられればよい。
【0147】
画像再構成装置は、ハードウェア資源として、CPUやMPU、GPU等の処理装置(プロセッサ)とROMやRAM等の記憶装置(メモリ)とを有する。また、画像再構成装置は、ASICやFPGA、CPLD、SPLDにより実現されても良い。当該処理装置は、当該記憶装置に保存されたプログラムを読み出して実行することで画像再構成機能を実現する。
【0148】
画像発生回路25は、被検体Pに関するボリュームデータ(選択された過去のボリュームデータまたは再構成されたボリュームデータ)に基づいて、被検体Pに関する実測データを有する被検体モデル(実測画像)を、被検体画像として発生する。ボリュームデータが被検体Pの全身に亘る場合、発生された実測画像は、被検体全身に亘って実測データを有する被検体モデル(実測モデル)である。
【0149】
具体的には、画像発生回路25は、種々のレンダリング処理を用いて、3次元的な実測データを有する実測モデルを発生する。このとき、3次元的な実測データとは、例えば、皮膚領域(輪郭、サイズ、外形)、X線に対する感受性が高い臓器(水晶体、甲状腺など)等を有する。
【0150】
なお、ボリュームデータが被検体Pの一部分である場合、画像発生回路25は、ボリュームデータに最も適合する被検体モデルを選択する。ボリュームデータに最も適合する被検体モデルとは、例えば、一部分において、輪郭および形状が最も近い被検体モデルである。
【0151】
すなわち、選択された被検体モデルの形状および輪郭とボリュームデータの形状および輪郭とは、ボリュームデータに対応する被検体Pの一部領域において、最も類似する。被検体モデルの選択は、被検体モデルのデータとボリュームデータとの位置合わせ処理の後、例えば、類似度等の統計学的距離の計算により、実行される。
【0152】
次いで、画像発生回路25は、選択した被検体モデルとボリュームデータとを用いて、3次元的な実測データを有する被検体画像(部分実測モデル)を発生する。具体的には、画像発生回路25は、選択した被検体モデルにおいて、ボリュームデータに対応する被検体Pの一部分を除く他の部分を示す部分被検体モデルを抽出する。画像発生回路25は、部分被検体モデルのデータとボリュームデータとを結合することにより、被検体モデルとボリュームデータとを結合した結合画像を、被検体画像(部分実測モデル)として発生する。
【0153】
画像発生回路25は、実測モデルまたは部分実測モデルを、記憶回路33、計算回路35、検出回路37、補正回路39、ディスプレイ41等に出力する。
【0154】
ディスプレイ41は、実測画像の発生に応答して、予め表示された被検体画像を実測モデルに置換して表示する。ディスプレイ41は、結合画像の発生に応答して、予め表示された被検体画像を部分実測モデルに置換して表示する。これにより、ボリュームデータに対応する被検体モデルの領域は、例えば、実測データによる皮膚領域として表示される。なお、ディスプレイ41は、X線検査における線量表示機能の開始時点から、予め発生された実測モデルまたは部分実測モデルを、被検体画像として表示してもよい。
【0155】
検出回路37は、ボリュームデータとX線画像とを用いて、位置ずれを検出してもよい。例えば、被検体Pに対するX線検査中においてボリューム撮影が実行された場合、検出回路37は、再構成されたボリュームデータを用いて、位置ずれの有無を検出する。位置ずれの検出は、例えば、第1の実施形態、第1の変形例等に準拠する。
【0156】
補正回路39は、ボリュームデータに基づいて、被検体モデル上における皮膚被曝線量の表示範囲と被検体画像との相対的な位置関係を補正する。例えば、補正回路39は、X線画像における解剖学的標識点と実測画像(実測モデル)における解剖学的標識点とに基づいて、実測画像における皮膚曝線量の表示範囲と、実測画像との相対的な位置関係を補正する。補正回路39は、X線画像における解剖学的標識点と結合画像(部分実測モデル)における解剖学的標識点とに基づいて、結合画像における皮膚曝線量の表示範囲と、結合画像との相対的な位置関係を補正する。
【0157】
計算回路35は、実測画像(実測モデル)の発生に応答して、X線発生条件と、X線の照射範囲と、実測画像と、補正された位置関係と、天板21に対するX線管13の位置とに基づいて、被検体Pに対するX線の曝射開始時点から現時刻までの皮膚被曝線量を再計算する。計算回路35は、結合画像(部分実測モデル)の発生に応答して、X線発生条件と、X線の照射範囲と、結合画像と、補正された位置関係と、天板21に対するX線管13の位置とに基づいて、被検体Pに対するX線の曝射開始時点から現時刻までの皮膚被曝線量を再計算する。
【0158】
すなわち、計算回路35は、実測モデル(または部分実測モデル)の発生に応答して、X線検査における現時刻より過去のX線の曝射時点(または最初のX線の曝射時点)から現時刻までの期間に亘って、実測モデル(または部分実測モデル)と線量再計算情報とに基づいて、X線の曝射ごとの皮膚被曝線量と、皮膚被曝線量の表示範囲とを再計算する。なお、計算回路35は、位置ずれの検出に応答して、補正された相対的な位置関係と、X線発生条件と、X線管13の位置と、天板21の位置と、実測モデルまたは部分実測モデルとに基づいて、位置ずれの検出に用いられたX線画像に関するX線の曝射に対応したX線線量と、実測モデルまたは部分実測モデル上でのX線の照射位置と計算する。
【0159】
計算回路35は、再計算した皮膚被曝線量と、皮膚被曝線量の表示範囲とを、記憶回路33とディスプレイ41とに出力する。計算回路35は、実測画像または結合画像の発生時以降のX線曝射において、再計算した皮膚被曝線量と、皮膚被曝線量の表示範囲と、実測モデルまたは部分実測モデルとを用いて、皮膚被曝線量および皮膚被曝線量の表示範囲を計算する。
【0160】
(線量再計算機能)
本変形例に係る線量再計算機能とは、実測モデルまたは部分実測モデルの発生に応じて、X線検査の開始時点のX線の曝射から現時刻までの期間に亘って、X線の曝射ごとの皮膚被曝線量と、皮膚被曝線量の表示範囲とを再計算する機能である。以下、被検体Pに対するX線検査中において、Cアームを被検体周りに回転させてボリュームデータを発生した場合の線量再計算機能に係る処理(線量再計算処理)について説明する。
【0161】
図10は、本変形例に係る線量再計算処理の手順の一例を示すフローチャートである。本変形例に係る線量再計算処理は、例えば、図6におけるフローチャートにおいてステップSa3の処理とステップSa8の処理の間であれば、任意に実行可能である。
【0162】
被検体Pに対するX線検査において、入力回路29を介してボリューム撮影の指示が入力される。サポートフレーム(Cアーム)17を被検体周りに回転させてX線撮影が実行され、複数の投影画像が発生される。複数の投影画像に基づいて、ボリュームデータが再構成される(ステップSc1)。ボリュームデータに基づいて、ボリュームデータに最も適合する被検体モデルが選択される。
【0163】
このとき、選択された被検体モデルにおいて、ボリュームデータと重複しない非重複領域が特定される。被検体モデルにおける非重複領域とボリュームデータとに基づいて、ボリュームデータに対応する部分を実測データとして有する部分実測モデルが発生される(ステップSc2)。
【0164】
X線検査における現時刻より過去のX線の曝射時点(または最初のX線曝射時点)から現時刻(ボリューム撮影の指示の入力時刻)までの線量再計算情報、すなわちX線検査におけるX線の曝射毎に皮膚被曝線量等の計算に用いられた情報が、記憶回路33から読み出される(ステップSc3)。部分実測モデルと線量再計算情報とに基づいて、X線曝射開始時点から現時刻までの皮膚被曝線量および皮膚被曝線量の表示範囲とが、X線の曝射毎に再計算される(ステップSc4)。
【0165】
再計算された皮膚被曝線量が、部分実測モデルに重畳されて表示される。なお、被検体Pの過去のボリュームデータの選択指示が入力された場合には、ステップSc2の処理以降の処理が実行される。このとき、ステップSc2において、実測モデルが発生される。
【0166】
図11は、ボリュームデータSと、被検体モデルTと、部分実測モデルUとを示す図である。ボリュームデータSは、被検体に対するボリューム撮影に伴って発生される。被検体モデルTには、ボリューム撮影直前まで、皮膚被曝線量が重畳される。部分実測モデルUは、ボリュームデータSによる実測データVを一部として有する。すなわち、本変形例によれば、被検体モデルにおいて、ボリューム撮影された被検体モデルの一部分に対して実測データが割り当てられる。
【0167】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本変形例に係るX線診断装置1によれば、ボリューム撮影指示の入力または過去のボリュームデータの選択指示に応じて、実測モデルまたは部分実測モデルを発生し、発生した実測モデルまたは部分実測モデルを用いて、X線曝射開始時点から現時刻までの皮膚被曝線量および皮膚被曝線量の表示範囲とが、X線の曝射毎に再計算される。
【0168】
これにより、本変形例に係るX線診断装置1によれば、線量表示機能に用いられる被検体モデルに関して、被検体Pのボリュームデータに基づいて、被検体Pの正確な外形(輪郭)に対応する実測モデルまたは部分実測モデルを発生することができる。加えて、実測モデルまたは部分実測モデルを用いて、皮膚被曝線量を再計算することができる。以上のことから、本変形例に係るX線診断装置1によれば、表示される皮膚被曝線量の精度を、過去に遡って向上させることができる。
【0169】
(第2の実施形態)
第1の実施形態との相違は、複数の被検体モデルからX線検査中における被検体Pの外形に最も適合する被検体モデルを特定し、特定した被検体モデルを用いて皮膚被曝線量を再計算することにある。以下、図面を参照しながら第2の実施形態に係るX線診断装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合に行う。
【0170】
図12は、本実施形態に係るX線診断装置2に係る構成の一例を示す構成図である。
記憶回路33は、被検体画像として被検体を模式的に示す3次元的な複数の被検体モデルを記憶する。なお、記憶回路33は、複数の患者各々に対応する過去のボリュームデータを記憶していてもよい。また、記憶回路33は、被検体Pに対するボリューム撮影により再構成されたボリュームデータを記憶してもよい。
【0171】
検出回路37は、ボリュームデータまたはX線画像において、被検体の外形(輪郭)を、例えばエッジ検出により検出する。検出回路37は、検出した外形を特定回路38に出力する。
【0172】
特定回路38は、皮膚被曝線量を重畳した被検体モデルとX線画像とに基づいて、複数の被検体モデルから被検体の外形に整合する被検体モデルを被検体画像として特定する。具体的には、特定回路38は、X線画像において検出された外形と、複数の被検体モデル各々の外形との位置合わせにより、複数の被検体モデルから被検体の外形に整合する被検体モデルを特定する。
【0173】
なお、特定回路38は、入力回路29を介した被検体モデルの変更指示に入力に基づいて、被検体モデルを特定してもよい。また、特定回路38は、再構成されたボリュームデータまたは過去のボリュームデータを用いて、被検体モデルを特定してもよい。このとき、特定回路38は、再構成されたボリュームデータにおいて検出された外形、または過去のボリュームデータにおいて検出された外形と、複数の被検体モデル各々の外形との位置合わせにより、複数の被検体モデルから被検体の外形に整合する被検体モデルを特定する。
【0174】
特定回路38は、処理回路を有し、例えば、記憶回路33から被検体モデルの特定に関するプログラムを読み出し、実行することで、読み出したプログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。なお、上記説明においては、単一の処理回路において被検体モデルの特定に機能が実行されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各種機能を実現するものとしても構わない。
【0175】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、或いは、ASIC、SPLD、CPLD、及びFPGA等の回路を意味する。なお、記憶回路33にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、プロセッサは、回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで、各種機能を実現する。
【0176】
また、上記被検体モデルの特定に関する機能は、広義には、皮膚被曝線量の表示範囲と被検体画像(被検体モデル)との相対的な位置関係の補正に相当するため、特定回路38は、補正回路39に組み込まれてもよい。また、本実施形態の各プロセッサ(計算回路35、検出回路37、特定回路38、補正回路39)は、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その各種機能を実現するようにしてもよい。更に、図2における複数の構成要素を1つのプロセッサ(図2の処理装置44)へ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0177】
計算回路35は、被検体モデルの特定に応答して、特定された被検体モデルと、X線の照射範囲と、X線発生条件と、補正された位置関係と、天板21に対するX線管13の位置とに基づいて、X線検査における被検体に対するX線の曝射開始時点から現時刻までの皮膚被曝線量と、皮膚被曝線量の表示範囲とを再計算する。
【0178】
具体的には、計算回路35は、被検体モデルの特定に応答して、X線検査における現時刻より過去のX線の曝射時点(または最初のX線の曝射時点)から現時刻までの期間に亘って、特定された被検体モデルと線量再計算情報とに基づいて、X線の曝射ごとの皮膚被曝線量と、皮膚被曝線量の表示範囲とを再計算する。計算回路35は、再計算した皮膚被曝線量と、皮膚被曝線量の表示範囲とを、記憶回路33とディスプレイ41とに出力する。
【0179】
計算回路35は、被検体モデルの特定以降のX線曝射において、再計算した皮膚被曝線量と、皮膚被曝線量の表示範囲と、特定した被検体モデルとを用いて、皮膚被曝線量および皮膚被曝線量の表示範囲を計算する。
【0180】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態に係るX線診断装置2によれば、操作者の指示、X線画像、ボリューム撮影により再構成されたボリュームデータ、または過去のボリュームデータに基づいて、複数の被検体モデルから被検体Pの外形に適合する被検体モデルを特定し、特定された被検体モデルと線量再計算情報とに基づいて、X線検査におけるX線の曝射開始時点から現時刻までの皮膚被曝線量と、皮膚被曝線量の表示範囲とを再計算することができる。以上のことから、本実施形態に係るX線診断装置2によれば、被検体の外形に最も適合する被検体モデルを特定でき、表示される皮膚被曝線量の精度を、過去に遡って向上させることができる。
【0181】
(第3の実施形態)
第1の実施形態および第2の実施形態との相違は、被検体Pに対するX線検査の後に被検体Pに対してX線CT撮影が実行された場合において、X線CT撮影により再構成されたボリュームデータを用いて相対的な位置関係を補正し、補正した位置関係と線量再計算情報とに基づいて、皮膚被曝線量等を再計算することにある。
【0182】
本実施形態は、図1の点線で囲まれた複数の構成要素3または図12の点線で囲まれた複数の構成要素4を有する医用画像処理装置である。なお、本実施形態は、図1の点線で囲まれた複数の構成要素3または図12の点線で囲まれた構成要素4を有し、ボリュームデータを発生可能なX線CT装置、MRI装置などの医用画像診断装置であってもよい。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合に行う。
【0183】
入力回路29は、皮膚被曝線量の再計算に関する指示(以下、再計算指示と呼ぶ)を入力する。入力回路29は、再計算された皮膚被曝線量を動画表示させる指示(以下、動画表示指示と呼ぶ)を入力する。
【0184】
記憶回路33は、X線検査後に被検体Pに対して実行されたX線CT撮影などに伴って再構成されたボリュームデータを記憶する。なお、本実施形態がX線CT装置である場合、ボリュームデータは、再構成装置から計算回路35と検出回路37と補正回路39とに出力されてもよい。記憶回路33は、被検体Pに対するX線検査に関して、X線発生条件と、X線の照射範囲と、天板21に対するX線管13の位置と、被検体モデル上における皮膚被曝線量の表示範囲と被検体モデルとの相対的な位置関係とを記憶する。
【0185】
制御回路31は、再計算指示の入力に応答して、皮膚被曝線量等を再計算するために、計算回路35、検出回路37、補正回路39等を制御する。制御回路31は、動画表示指示の入力に応答して、再計算された皮膚被曝線量を動画表示するために、ディスプレイ41を制御する。
【0186】
検出回路37は、X線検査における複数のX線の曝射各々において、ボリュームデータを用いて位置ずれを検出する。具体的には、検出回路37は、ボリュームデータと被検体モデルとを比較することにより、X線検査中におけるX線の複数の曝射各々において、被検体Pの動きによる位置ずれを検出する。検出回路37は、検出した位置ずれを、X線の曝射時刻とともに、補正回路39に出力する。
【0187】
補正回路39は、ボリュームデータを用いて、X線検査中におけるX線の複数の曝射各々において、相対的な位置関係を補正する。例えば、補正回路39は、ボリュームデータにおける解剖学的標識点と被検体モデルにおける解剖学的標識点とに基づいて、検出された位置ずれを低減させるために、被検体モデルにおける皮膚曝線量の表示範囲と被検体モデルとの相対的な位置関係を補正する。補正回路39は、X線検査中におけるX線の複数の曝射各々において補正した相対的な位置関係を、計算回路35に出力する。
【0188】
計算回路35は、X線発生条件と、X線の照射範囲と、被検体モデルと、補正された位置関係と、天板21に対するX線管13の位置とに基づいて、X線検査におけるX線の最初の曝射から最後の曝射までの皮膚被曝線量と、皮膚被曝線量の表示範囲とを、X線検査が実行された期間に亘るX線の曝射毎に再計算する。計算回路35は、再計算した皮膚被曝線量と、皮膚被曝線量の表示範囲とを、X線検査中におけるX線の曝射時刻とともに、記憶回路33と、ディスプレイ41とに出力する。
【0189】
ディスプレイ41は、動画表示指示の入力に応答して、補正された位置関係を用いて、X線の曝射時刻に沿って、再計算された皮膚被曝線量を被検体モデルの表示範囲に重畳して動画表示する。
【0190】
(再計算動画表示機能)
再計算動画表示機能とは、被検体Pに対するX線検査後にX線CT撮影に伴って再構成されたボリュームデータ等を用いてX線検査の期間に亘って皮膚被曝線量を再計算し、再計算した皮膚被曝線量を被検体モデル上に重畳して動画表示する機能である。以下、再計算動画表示機能に係る処理(以下、再計算動画処理と呼ぶ)について説明する。
【0191】
図13は、再計算動画処理の手順の一例を示すフローチャートである。
入力回路29を介した操作者の指示により、再計算指示が入力される。記憶回路33から、X線検査におけるX線発生条件と、X線の照射範囲と、皮膚被曝線量の表示範囲と被検体モデルとの相対的な位置関係と、天板21に対するX線管13の位置とが、読み出される(ステップSd1)。
【0192】
X線CT装置における再構成装置等を介して再構成されたボリュームデータが、記憶回路33から読み出される(ステップSd2)。なお、本医用画像処理装置がX線CT装置またはMRI装置などに搭載されている場合、ステップSd2の処理は、再構成装置によりボリュームデータが再構成される処理となる。
【0193】
X線検査における複数のX線の曝射各々において、ボリュームデータを用いて位置ずれが検出される(ステップSd3)。位置ずれを低減させるために、ボリュームデータを用いて、相対的な位置関係が補正される(ステップSd4)X線発生条件と照射範囲と、補正された位置関係と、天板21に対するX線管13の位置とに基づいて、皮膚被曝線量と皮膚被曝線量の表示範囲とがを、X線検査が実行された検査期間に亘って、X線の曝射毎に再計算される(ステップSd5)。
【0194】
入力回路29を介した操作者の指示により、動画表示指示が入力される。再計算された皮膚被曝線量を被検体モデル上に重畳させた動画が、検査期間に亘ってディスプレイ41に表示される。
【0195】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態に係る医用画像処理装置または医用画像診断装置によれば、X線検査の後に取得されたボリュームデータ(例えば、X線CT装置またはMRI装置などにより再構成されたボリュームデータ)を用いて相対的な位置関係を補正し、補正した位置関係と線量再計算情報とに基づいて、皮膚被曝線量等を再計算することができる。これにより、本実施形態に係る医用画像処理装置または医用画像診断装置によれば、X線検査の後であっても、精度をより向上させた皮膚被曝線量を再計算して動画表示することができ、総被曝量の低減と局所被曝量の低減とに寄与することができる。
【0196】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0197】
1、2…X線診断装置(医用画像診断装置)、11…高電圧発生器、13…X線管、14…X線の放射範囲、15…X線検出器、17…サポートフレーム、19…照射野限定器、21…天板、23…駆動装置(駆動部)、25…画像発生回路(画像発生部)、26…データバス、27…インターフェース(インターフェース部)、29…入力回路(入力部)、31…制御回路(制御部)、33…記憶回路(記憶部)、35…計算回路(計算部)、37…検出回路(検出部)、38…特定回路(特定部)、39…補正回路(補正部)、41…ディスプレイ(表示部)、43…処理装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13