特許第6822794号(P6822794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6822794
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】ミシン
(51)【国際特許分類】
   D05B 69/10 20060101AFI20210114BHJP
【FI】
   D05B69/10 Z
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-141096(P2016-141096)
(22)【出願日】2016年7月19日
(65)【公開番号】特開2018-11627(P2018-11627A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】蛇の目ミシン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英夫
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−061351(JP,A)
【文献】 特開平01−151485(JP,A)
【文献】 特開2006−034675(JP,A)
【文献】 特開昭63−234998(JP,A)
【文献】 特開昭55−071186(JP,A)
【文献】 実開昭55−023608(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0021555(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第02930573(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 69/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上糸と下糸とを交絡させて縫い目を形成するミシンであって、
前記上糸を挿通させた針を支持して往復運動する針棒と、
外周に前記上糸の糸輪を捕捉する剣先を有し、前記下糸のボビンを内部に収容して回転する釜と、
前記針棒と前記釜を駆動させるミシンモータと、
前記ミシンモータの回転速度を変化させる制御回路と、
1次電圧源と、
を備え、
前記制御回路は、
踏込量に応じてボリューム抵抗を変化させる可変抵抗器と、前記1次電圧源から電源供給されて充電されるコンデンサとを含み、前記ボリューム抵抗を分圧抵抗として前記コンデンサの放電電圧を分圧した放電時電圧信号を出力するフットコントローラと、
前記ボリューム抵抗を分圧抵抗として含み、前記コンデンサと接続されている前記1次電圧源の電源電圧を分圧した充電時電圧信号を出力する回路と、
前記放電時電圧信号及び前記充電時電圧信号が時分割で印加され、前記放電時電圧信号に応じて前記ミシンモータの回転速度を決定するとともに、充電時電圧信号が第1の所定値以上であると、前記ミシンモータを回転させないプロセッサと、
を有すること、
を特徴とするミシン。
【請求項2】
前記第1の所定値は、前記フットコントローラの踏込みが最大のときの前記充電時電圧信号の値、またはこの値にマージンを加算した値であること、
を特徴とする請求項1記載のミシン。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記放電時電圧信号が前記第1の所定値未満であると、
前記放電時電圧信号が印加されている間、前記放電時電圧信号を複数回サンプリングし、
サンプリングされた各値の何れかが第2の所定値未満、サンプリングされた各値の平均値が第3の所定値以上、及びサンプリングされた各値の差分が第4の所定値以上であるか判定し、
前記判定により全てが満たされていると、前記ミシンモータを回転させないこと、
を特徴とする請求項1又は2記載のミシン。
【請求項4】
前記第2の所定値は、踏込量がゼロ、及び前記可変抵抗に接触抵抗が最大限加わったときの前記放電時電圧信号の値であること、
を特徴とする請求項3記載のミシン。
【請求項5】
前記第3の所定値は、前記ミシンモータを回転させる最低の前記放電時電圧信号の値であること、
を特徴とする請求項3又は4記載のミシン。
【請求項6】
前記第4の所定値は、前記サンプリングされた各値が差分を有することを検出可能な値であること、
を特徴とする請求項3乃至5の何れかに記載のミシン。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記充電電圧信号が前記第1の所定値よりも小さな第5の所定値以下であると、前記第2乃至4の所定値と前記放電電圧信号との比較を省略すること、
を特徴とする請求項3乃至6の何れかに記載のミシン。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記フットコントローラの装着直後、又は前記フットコントローラが装着されたまま電源が投入された直後、前記第1の所定値未満且つ前記第5の所定値超であると、前記ミシンモータを回転させないこと、
を特徴とする請求項7記載のミシン。
【請求項9】
前記プロセッサが前記ミシンモータを回転させないとき、異常を報知する報知器を更に備えること、
を特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載のミシン。
【請求項10】
前記報知器は、
前記充電電圧信号と前記放電電圧信号とが前記第1の所定値以上であると、断線による異常を報知すること、
を特徴とする請求項9記載のミシン。
【請求項11】
前記報知器は、
前記充電電圧信号が前記第1の所定値以上であり、前記放電電圧信号が放電時間が経過するごとに低下していると、前記可変抵抗器に生じた接触抵抗による異常を報知すること、
を特徴とする請求項9又は10記載のミシン。
【請求項12】
前記充電時電圧信号を出力する回路は、
前記1次電圧源と前記プロセッサとの間に抵抗器を有し、
前記抵抗器は、前記1次電圧源と前記プロセッサとを接続し、
前記ボリューム抵抗は、前記プロセッサとグランドとを接続し、
前記抵抗器と前記ボリューム抵抗が直列接続されていること、
を特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載のミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フットコントローラを着脱自在に備えるミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
上糸と下糸とを交絡させて縫い目を形成するミシンの針棒と釜は、ミシンモータを共通の駆動源として往復運動及び回転運動する。ミシンモータの回転速度を変化させれば、針棒と釜の運動速度も変化する。すなわち、ミシンモータの回転速度に応じて縫い速度が変化する。
【0003】
ミシンにはミシンモータの回転速度を変化させるフットコントローラが着脱自在となっている。フットコントローラには、踏込み量に応じて抵抗値を変化させる可変抵抗器が設けられ、また可変抵抗器を通じて充放電されるコンデンサが設けられている。CPU、MPU又はマイコンとも呼ばれるプロセッサは、踏込み量に応じて変化するコンデンサの放電電圧値を読み込み、放電電圧値に応じてミシンモータの回転速度を変化させる。これにより、フットコントローラの踏込み量に応じて縫い速度が変化する。
【0004】
フットコントローラとの接続を3線式から2線式にしたミシンが知られている(例えば特許文献1参照)。2線のうちの1線はグランド接続に用いられ、2線のうちの他の1線は時分割によりコンデンサに対する充電と放電の共用経路となっている。2線式のミシンは、踏込み量に対してリニアな放電電圧を検出することができるので、良好な制御性を獲得している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平8−24779公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フットコントローラには、ミシンとのコネクタや可変抵抗器に接触不良が生じる虞がある。接触不良は、コネクタや可変抵抗器の摺動子へのゴミの蓄積等の理由で生じる。この接触不良はフットコントローラのコンデンサからプロセッサとの間に接触抵抗を生じさせる。大きな接触抵抗は、フットコントローラが踏み込まれていない非踏込状態であっても、踏込状態と同等の電圧値をプロセッサに与え、踏込状態と錯覚させてミシンの誤作動を呼ぶ虞がある。すなわち、ユーザがフットコントローラを踏み込んでいないにも関わらず、ミシンが作動してしまうという安全性に関わる問題を招来させる虞がある。
【0007】
そこで、従来は、フットコントローラが未踏込状態を検知するスイッチを設けていた。スイッチはフットコントローラの踏み込みと機械的に連動してオンオフされ、フットコントローラが未踏込状態であるとスイッチがオンになって、フットコントローラの開放状態を示す信号がプロセッサに出力される。プロセッサは、該信号の受信中、踏込状態と同等の放電電圧が入力されても、ミシンモータを回転させる制御指令を出力しない。
【0008】
しかしながら、フットコントローラが未踏込状態を検知するスイッチを設けると、フットコントローラ及びミシンがコスト高となってしまう。本発明は、この従来技術の問題点を解決するために提案されたもので、フットコントローラの未踏込状態を検知するスイッチを設けなくとも、誤作動を阻止できるミシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係るミシンは、上糸と下糸とを交絡させて縫い目を形成するミシンであって、前記上糸を挿通させた針を支持して往復運動する針棒と、外周に前記上糸の糸輪を捕捉する剣先を有し、前記下糸のボビンを内部に収容して回転する釜と、前記針棒と前記釜を駆動させるミシンモータと、前記ミシンモータの回転速度を変化させる制御回路と、1次電圧源と、を備え、前記制御回路は、踏込量に応じてボリューム抵抗を変化させる可変抵抗器と、前記1次電圧源から電源供給されて充電されるコンデンサとを含み、前記ボリューム抵抗を分圧抵抗として前記コンデンサの放電電圧を分圧した放電時電圧信号を出力するフットコントローラと、前記ボリューム抵抗を分圧抵抗として含み、前記コンデンサと接続されている前記1次電圧源の電源電圧を分圧した充電時電圧信号を出力する回路と、前記放電時電圧信号及び前記充電時電圧信号が時分割で印加され、前記放電時電圧信号に応じて前記ミシンモータの回転速度を決定するとともに、充電時電圧信号が第1の所定値以上であると、前記ミシンモータを回転させないプロセッサと、を有すること、を特徴とする。
【0010】
前記第1の所定値は、前記フットコントローラの踏込みが最大のときの前記充電時電圧信号の値、またはこの値にマージンを加算した値であるようにしてもよい。
【0011】
前記プロセッサは、前記放電時電圧信号が前記第1の所定値未満であると、前記放電時電圧信号が印加されている間、前記放電時電圧信号を複数回サンプリングし、サンプリングされた各値の何れかが第2の所定値未満、サンプリングされた各値の平均値が第3の所定値以上、及びサンプリングされた各値の差分が第4の所定値以上であるか判定し、前記判定により全てが満たされていると、前記ミシンモータを回転させないようにしてもよい。
【0012】
前記第2の所定値は、踏込量がゼロ、及び前記可変抵抗に接触抵抗が最大限加わったときの前記放電時電圧信号の値であるようにしてもよい。
【0013】
前記第3の所定値は、前記ミシンモータを回転させる最低の前記放電時電圧信号の値であるようにしてもよい。
【0014】
前記第4の所定値は、前記サンプリングされた各値が差分を有することを検出可能な値であるようにしてもよい。
【0015】
前記プロセッサは、前記充電電圧信号が前記第1の所定値よりも小さな第5の所定値以下であると、前記第2乃至4の所定値と前記放電電圧信号との比較を省略するようにしてもよい。
【0016】
前記プロセッサは、前記フットコントローラの装着直後、又は前記フットコントローラが装着されたまま電源が投入された直後、前記第1の所定値未満且つ前記第5の所定値超であると、前記ミシンモータを回転させないようにしてもよい。
【0017】
前記プロセッサが前記ミシンモータを回転させないとき、異常を報知する報知器を更に備えるようにしてもよい。
【0018】
前記報知器は、前記充電電圧信号と前記放電電圧信号とが前記第1の所定値以上であると、断線による異常を報知するようにしてもよい。
【0019】
前記報知器は、前記充電電圧信号が前記第1の所定値以上であり、前記放電電圧信号が放電時間が経過するごとに低下していると、前記可変抵抗器に生じた接触抵抗による異常を報知するようにしてもよい。
【0020】
前記充電時電圧信号を出力する回路は、前記1次電圧源と前記プロセッサとの間に抵抗器を有し、前記抵抗器は、前記1次電圧源と前記プロセッサとを接続し、前記ボリューム抵抗は、前記プロセッサとグランドとを接続し、前記抵抗器と前記ボリューム抵抗が直列接続されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、フットコントローラが未踏込状態を検知するスイッチを不要としつつ、接触不良による誤作動を阻止できるので、安全性とコストの低減とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ミシン全体の構成を示す図であり、(a)は外観を示し、(b)は内部構成の概略を示す。
図2】ミシンの縫い速度制御回路を示す回路図である。
図3】第1の充放電印加電圧を示すグラフである。
図4】第2の充放電印加電圧を示すグラフである。
図5】第3の充放電印加電圧を示すグラフである。
図6】第4の充放電印加電圧を示すグラフである。
図7】第5の充放電印加電圧を示すグラフである。
図8】第6の充放電印加電圧を示すグラフである。
図9】第7の充放電印加電圧を示すグラフである。
図10】第8の充放電印加電圧を示すグラフである。
図11】縫い速度制御回路の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(ミシンの全体構成)
図1に示すミシン1は、針板21に載置された布地100に対して針3を落とし、上糸200と下糸300とを交絡させて縫い目を形成することで、該布地100を縫製する家庭用、職業用又は工業用の装置である。
【0024】
ミシン1は、上糸200が挿通された針3を支持する針棒31と、下糸300を巻いたボビンが収容された釜5を有する。針棒31は、針板21に対して垂直に延び、延び方向に往復動可能に取り付けられる。針3は、針棒31の針板21側に支持されている。釜5は、一平面が開口した内部中空のドラム形状を有し、針板21に対して水平又は垂直に取り付けられ、円周方向に回転可能となっている。
【0025】
ミシン1において、針3は、針棒31の往復動によって、上糸200を伴って布地100を貫通する。上糸200は、針3が下死点から上昇する時に、布地100との摩擦によって針3の上昇に追従しきれずに糸輪を形成する。釜5は、剣先で糸輪を捕捉しながら回転する。下糸300を繰り出したボビンは、釜5の回転に伴って糸輪をくぐり、下糸300も上糸200の糸輪をくぐる。これにより、上糸200と下糸300とが交絡し、縫い目は形成される。
【0026】
針棒31には、水平に延びた上軸61がクランク機構62を介して連結されている。上軸61の回転をクランク機構62が直線運動に変換して針棒31に伝達することで、針棒31は上下動する。釜5には、水平に延びた下軸63が歯車機構64を介して連結されている。釜5が水平に設置されている場合、歯車機構64は、例えば軸角を90度とする円筒ウォームギアである。下軸63の回転を歯車機構64が90度変換して釜5に伝えることで、釜5は水平回転する。
【0027】
上軸61には、所定の歯数を有するプーリ65が設けられている。また、下軸63には、上軸61のプーリ65と同数の歯数を有するプーリ66が設けられている。両プーリ65,66は、歯付きベルト67によって連結されている。
【0028】
上軸61には、スプロケットと歯付きベルトを介してミシンモータ6が連結する。ミシンモータ6の回転に伴って上軸61が回転すると、プーリ65と歯付きベルト67を介して下軸63が回転する。これによって、針棒31と釜5は同期して作動する。ミシンモータ6の回転速度が変化すると、針棒31の往復動速度と釜5の回転速度も変化し、すなわち縫い速度が変化することになる。
【0029】
(縫い速度制御回路)
図2に示すように、ミシン1は、ミシンモータ6の回転速度を制御する縫い速度制御回路7を備える。縫い速度制御回路7は、着脱自在のフットコントローラ71を備え、フットコントローラ71の踏込量に比例させてミシンモータ6の回転速度を変化させる。この縫い速度制御回路7は、フットコントローラ71に加えて、プロセッサ73と読み込み回路74とモータドライバ72とを更に備えている。
【0030】
フットコントローラ71は、コンデンサ711と可変抵抗器712とを備えている。コンデンサ711は、踏込量を検出するための電圧源であり、ミシン1が備える1次電圧源8の電源電圧Eを受けて充電される。1次電圧源8は商用電圧を降圧して電源電圧Eを生成する。可変抵抗器712は、第1固定端子713と摺動子715との間のボリューム抵抗716と、第2固定端子714と摺動子715との間のボリューム抵抗717を有する。ボリューム抵抗717の抵抗値Rv2は踏込量に比例させて増加する。ボリューム抵抗716の抵抗値Rv1は踏込量に比例して減少する。
【0031】
プロセッサ73は、CPU、MPU又はマイコンであり、コンデンサ711の放電時に踏込量に比例した信号を読み込む。そして、プロセッサ73は、踏込量の比例値を含む制御指令をモータドライバ72に出力する。プロセッサ73が読み込む信号は、コンデンサ711の放電電圧が分圧された電圧値である。コンデンサ711の放電電圧は、踏込量に応じて変化するボリューム抵抗716とボリューム抵抗717とを分圧抵抗として分圧される。
【0032】
分圧された電圧はプロセッサ73の入力ポート731に印加される。入力ポート731にはA/D変換器が備えられ、印加されたアナログ電圧値がデジタル電圧値に変換されて、該デジタル電圧値が読み込まれる。モータドライバ72は制御指令に従って踏込量に比例する周波数のパルス信号をミシンモータ6に出力する。
【0033】
読み込み回路74は、フットコントローラ71と共に、1次電圧源8とコンデンサ711とを繋ぎ、またコンデンサ711とプロセッサ73とを繋ぐ。この読み込み回路74は、コンデンサ711を充電するための充電回路と、ボリューム抵抗716とボリューム抵抗717でコンデンサ711の放電電圧を分圧し、プロセッサ73に印加する放電時分圧回路を備える。
【0034】
詳述すると、フットコントローラ71において、コンデンサ711の正極端子と可変抵抗器712の第1固定端子713、及びコンデンサ711の負極端子と第2固定端子714とが接続されている。また、読み込み回路74に設けられたグランド741に、コンデンサ711の負極端子及び可変抵抗器712の第2固定端子714が接続されている。
【0035】
読み込み回路74とフットコントローラ71とは2線式にて接続されている。2線のうちの1線は、グランド線であり、コンデンサ711の負極端子及び可変抵抗器712の第2固定端子714をグランド741に接続している。2線のうちの1線は、充電回路と放電時分圧回路の一区間を時分割で担う信号線718である。信号線718の一端は可変抵抗器712の摺動子715に接続されている。
【0036】
読み込み回路74には、1次電圧源8の電源電圧Eが引き込まれる。そして、読み込み回路74は、この1次電圧源8と信号線718との間に、MOSFETトランジスタ742を接続している。MOSFETトランジスタ742のソースは1次電圧源8に接続され、MOSFETトランジスタ742のドレインは信号線718と可変抵抗器712のボリューム抵抗716を介してコンデンサ711に接続される。MOSFETトランジスタ742は、スイッチング素子の一例である。
【0037】
充電過程では、MOSFETトランジスタ742がONにされ、1次電圧源8とコンデンサ711との間の経路が閉となる。このとき、1次電圧源8とグランド741との間に、信号線718と可変抵抗器712のボリューム抵抗716とコンデンサ711とが直列接続された充電回路が成立する。
【0038】
MOSFETトランジスタ742のゲートは、プロセッサ73の出力ポート732と1次電圧源8とに抵抗器743、744を介して接続されている。プロセッサ73は、出力ポート732から開信号を周期的に出力し、MOSFETトランジスタ742のソースよりもゲートの電位を閾値以上に小さくすることで、MOSFETトランジスタ742をONにする。MOSFETトランジスタ742は、コンデンサ711への充電時間が十分に確保されるようにONにされる。
【0039】
また、読み込み回路74は、プロセッサ73の入力ポート731と信号線718の摺動子715とは反対端とを接続している。このとき、コンデンサ711とプロセッサ73の入力ポート731とを接続する可変抵抗器712のボリューム抵抗716と、プロセッサ73の入力ポート731とグランド741とを接続する可変抵抗器712のボリューム抵抗を備え、ボリューム抵抗716とボリューム抵抗717が直列接続されて成る放電時分圧回路が成立する。
【0040】
放電電流は、コンデンサ711の陽極端子から、可変抵抗器712の第1固定端子713と第2固定端子714との間を通って、グランド741に流れる。放電時分圧回路において、コンデンサ711の放電電圧が、可変抵抗器712のボリューム抵抗716とボリューム抵抗717で分圧されて、プロセッサ73の入力ポート731に印加される。
【0041】
コンデンサ711の放電時にプロセッサ73の入力ポート731に印加される電圧値Vd(t)は次式(1)の通りである。
【0042】
【0043】
式(1)において、Eは1次電圧源8の電源電圧(V)である。Cはコンデンサ711の容量値(C)である。Rv1は踏込量に応じて減少するボリューム抵抗716の抵抗値(Ω)である。Rv2は踏込量に応じて増加するボリューム抵抗717の抵抗値(Ω)である。Rxは接触抵抗値(Ω)であり、可変抵抗器712にホコリが溜まる等してボリューム抵抗717と直列に表れる。式中、exp(A)は、eを表す。tは放電経過時間である。
【0044】
式(1)に示すように、放電時の印加電圧Vd(t)は、抵抗値Rv2に比例する。抵抗値Rv2は踏込量に比例して増大する。プロセッサ73は、この放電時の印加電圧Vd(t)を読み込み、印加電圧Vd(t)に比例した制御指令を生成する。プロセッサ73は、コンデンサ711の放電電圧がゼロとなる以前の放電時間帯で複数サンプリングした印加電圧値Vd(t1)、Vd(t2)、・・・Vd(tn)を平均して平均値Vdavから制御指令を生成している。
【0045】
尚、プロセッサ73の入力ポート731と摺動子715との間には、読み込み回路74側に抵抗器745が直列に挿入されている。抵抗器745は電流を制限する。またプロセッサ73の入力ポート731と摺動子715との間は、コンデンサ75を介してグランド741に接続されている。コンデンサ75は、印加電圧Vd(t)の信号からノイズを除去している。
【0046】
このような縫い速度制御回路7において、式(1)に示されるように、ホコリが溜まる等により、可変抵抗器712のボリューム抵抗717と直列の接触抵抗Rxが現れることがある。式(1)に示されるように、踏み込みが無くボリューム抵抗717の抵抗値Rv2がゼロであっても、接触抵抗Rxが大きくなると、プロセッサ73に印加される電圧値Vd(t)はゼロとはならず、非踏込状態でミシン1を作動させる虞がある。
【0047】
そこで、縫い速度制御回路7は、非踏込状態でミシン1を作動させる異常を感知し、ミシンモータ6を回転させるに値する印加電圧Vd(t)がプロセッサ73に印加されても、異常が感知されればミシンモータ6を回転させない。また、ミシン1は、ディスプレイやスピーカ等の報知器9を備え、メッセージや音声によって異常を報知する。
【0048】
異常の感知のため、プロセッサ73は、フットコントローラ71の未接続を検出し、またプロセッサ73は、放電時と充電時の印加電圧値の双方を読み込み、双方の印加電圧値を参照して異常を判断する。即ち、読み込み回路74は、フットコントローラ71と共に、フットコントローラ71の未接続検出回路を備える。また、読み込み回路74は、踏込量に応じて変化するボリューム抵抗717を分圧抵抗として含み、コンデンサ711へ充電電流を流す1次電圧源8の電源電圧Eを分圧して、プロセッサ73に印加する充電時分圧回路を備える。
【0049】
このような読み込み回路74は、1次電圧源8から別系統で電源電圧Eを引き込み、1次電圧源8とプロセッサ73の入力ポート731とを抵抗器745と抵抗器746を直列接続して備えている。抵抗器746は十分に大きい抵抗値を有し、1次電圧源8からの電流流入を制限する。この抵抗器745と抵抗器746を介した1次電圧源8とプロセッサ73の入力ポート731との間の経路が未接続検出回路である。
【0050】
フットコントローラ71が未接続であれば、充放電タイミングの何れにおいても、接続検出回路を通じた電圧値V3がプロセッサ73の入力ポート731に入力される。プロセッサ73は、この電圧値V3の検出によりフットコントローラ71の未接続を感知する。プロセッサ73によって読み取られる電圧値V3は、便宜的に電圧降下をゼロとすると、次式(2)の通りである。
【0051】
V3=E ・・・(2)
【0052】
また、読み込み回路74は、充電回路中においてMOSFETトランジスタ742と信号線718との間に抵抗器747を直列接続している。信号線718にはプロセッサ73の入力ポート731も接続されている。換言すると、読み込み回路74は、1次電圧源8とプロセッサ73の入力ポート731との間に抵抗器747を直列接続して備えている。このとき、1次電圧源8とプロセッサ73の入力ポート731とを接続する抵抗器747と、プロセッサ73の入力ポート731とグランド741とを接続する可変抵抗器712のボリューム抵抗717を備え、抵抗器747とボリューム抵抗717が直列接続されて成る充電時分圧回路が信号線718とグランド線を含み成立する。
【0053】
充電時、1次電圧源8から流れる充電電流は、抵抗器747及び可変抵抗器712のボリューム抵抗717を通ってグランド741にも流れる。充電時分圧回路において、1次電圧源8の電源電圧Eが、抵抗器747とボリューム抵抗717で分圧されて、プロセッサ73の入力ポート731に印加される。
【0054】
この充電時にプロセッサ73の入力ポート731に印加される電圧値Vcは次式(3)の通りである。
【0055】
【0056】
式(3)において、Eは1次電圧源8の電源電圧(V)である。R2は充電時分圧回路内の抵抗器747の抵抗値(Ω)である。Rv2は踏込量に応じて増加する可変抵抗器712のボリューム抵抗717の抵抗値(Ω)である。Rxは接触抵抗値(Ω)であり、ボリューム抵抗717と直列に表れる。Ryは接触抵抗値(Ω)であり、信号線718のコネクタにホコリが溜まる等により表れる。
【0057】
式(3)に示されるように、充電時のプロセッサ73への印加電圧Vcは、踏込量に比例して増大する抵抗値Rv2に比例する。プロセッサ73は、この充電時の印加電圧Vcも加味して異常を判定する。式(3)に示されるように、接触抵抗Rx又は接触抵抗Ryが表れると、踏み込みが無いためにボリューム抵抗717の抵抗値Rv2がゼロであっても、プロセッサ73に印加される電圧値はゼロで無くなる。
【0058】
プロセッサ73は、未接続検出回路を通して検出される印加電圧V3と、充電時分圧回路を通して検出される充電時の印加電圧Vcと、放電時分圧回路を通して検出される放電時の印加電圧Vd(t)を読み込んで、ミシン1の誤作動を引き起こす異常を判定する。
【0059】
(プロセッサ)
(Vc<Vc1)
信号線718及び可変抵抗器712に接触抵抗Ry及びRxが存在せず、フットコントローラ71が踏み込まれたものとする。このとき、プロセッサ73が読み込む充電時の印加電圧の最低値Vc1は、抵抗値Rv2を最低値Rv2zとし、式(3)より次式(4)に示す通りとなる。
【0060】
【0061】
一方、信号線718に最大の接触抵抗Rymaxが表れ、可変抵抗器712の接触抵抗Rxはゼロであり、またフットコントローラ71の踏み込みが無く抵抗値Rv2がゼロであるものとする。このとき、プロセッサ73によって読み込まれる放電時の印加電圧Vd(t)は式(1)よりゼロである。またプロセッサ73が読み込む充電時の印加電圧Vc2は、式(3)より次式(5)に示す通りとなる。
【0062】
【0063】
印加電圧Vc1と印加電圧Vc2との関係は次式(6)に示す通りである。
Vc1>Vc2 ・・・(6)
【0064】
このように、縫い速度制御回路7において、放電時の印加電圧Vd(t)が放電時間中に常時ゼロとなるとき、充電時の印加電圧Vcは、信号線718の接触抵抗Ryの値に関わらず、印加電圧Vc1未満となる。そして、放電時の印加電圧Vd(t)が放電時間中に常時ゼロであるとき、放電時の印加電圧Vd(t)を読み込んだプロセッサ73はミシンモータ6を回転させない。
【0065】
従って、図3に示すように、プロセッサ73は、予め印加電圧値Vc1を記憶しておき、充電時の印加電圧Vcが印加電圧値Vc1未満であると、非踏込状態でミシン1が作動する事態は起こらないために、異常判断を中止する。
【0066】
但し、踏込量がゼロであるが、信号線718及び可変抵抗器712に接触抵抗Ry及びRxが存在するものとする。このとき、プロセッサ73によって読み込まれる充電時の印加電圧Vc3は、式(3)より次式(7)に示す通りとなる。
【0067】
この印加電圧Vc3と印加電圧Vc1との関係は次式(8)に示す通りである。
Vc1≦Vc3 ・・・(8)
【0068】
即ち、非踏込状態であっても、信号線718及び可変抵抗器712に接触抵抗Ry及びRxが存在する場合には踏み込み有りと誤認する虞がある。そこで、プロセッサ73は、充電時の印加電圧Vcが印加電圧Vc1以上であると、更に放電時の印加電圧Vd(t)を参照して異常判定を行う。
【0069】
尚、フットコントローラ71が未接続のとき、プロセッサ73には接続検出回路により電源電圧Eを示す印加電圧V3が読み込まれる。ミシン1に電源が投入されている状態でフットコントローラ71が接続されると、正常であれば、プロセッサ73は、印加電圧V3を検出した後、印加電圧Vc1未満の印加電圧Vcを検出する。図4(a)に示すように、印加電圧V3が検出された後、印加電圧Vc1未満の印加電圧Vcが検出されることなく、印加電圧Vc1以上の印加電圧Vcが検出された場合には、異常と判断する。
【0070】
また、フットコントローラ71を接続したままミシン1の電源が投入されると、プロセッサ73は、印加電圧V3を検出することなく、印加電圧Vc1未満の印加電圧Vcが検出される。図4(b)に示すように、プロセッサ73は、印加電圧Vc1以上の印加電圧Vcが検出された場合には、異常と判断する。
【0071】
(Vdav<Vdmin)
ここで、プロセッサ73は、放電時間中に各経過時間の印加電圧Vd(t1)、Vd(t2)・・・Vd(tn)をサンプリングし、平均値Vdavを得る。そして、この平均値Vdavが次式(9)で示される印加電圧値Vdmin未満であれば、ミシン1を作動させない。
【0072】
【0073】
式中、Rv2minは、ミシン1を作動させる最低限の踏み込みに対するボリューム抵抗717の抵抗値である。Rv1maxは、ミシン1を作動させる最低限の踏込みに対するボリューム抵抗716の抵抗値である。即ち、縫い速度制御回路7は、フットコントローラ71が所定量以上踏み込まれたときにミシン1を作動させる。踏み込みに遊びを設けて安全性を確保するためである。
【0074】
そうすると、放電時の印加電圧Vd(t1)、Vd(t2)・・・、Vd(tn)の平均値Vdavが印加電圧値Vdmin未満であれば、そもそもミシン1は作動しない。そのため、図5に示すように、プロセッサ73は、予め印加電圧値Vdminを記憶しておき、平均値Vdavが印加電圧値Vdmin未満であれば、充電時の印加電圧Vcが印加電圧Vc1以上であっても、異常判断を中止する。
【0075】
(Vd(t)>Vd2(tn))
一方、踏み込みが無くボリューム抵抗717の抵抗値Rv2がゼロであり、可変抵抗器712に最大の接触抵抗Rxmaxが生じているものとする。このとき、所定の放電時間が経過したときの印加電圧Vd1(tn)は、式(1)より次式(10)に示す通りである。尚、式中、Rv1maxは、踏込量がゼロである場合のボリューム抵抗716の抵抗値である。
【0076】
【0077】
但し、可変抵抗器712には接触抵抗Rxが無い正常状態で、フットコントローラ71が所定以上踏み込まれると、各放電経過時間の印加電圧Vd2(t)は、次式(11)の通り、印加電圧Vd1(tn)を上回る。
【0078】
Vd2(t)>Vd1(tn) ・・・(11)
【0079】
換言すれば、放電時の印加電圧値Vd(t)が印加電圧Vd2(tn)を下回ることがなければ、フットコントローラ71は確実に踏み込まれていること示す。そこで、図6に示すように、プロセッサ73は、予め印加電圧値Vd2(tn)を記憶しておき、充電時の印加電圧Vcが印加電圧Vc1以上であっても、放電時の印加電圧Vd(t)が印加電圧値Vd2(tn)を下回ることがなければ、非踏込状態でないために異常判断を中止する。
【0080】
(Vdmin≦Vdav,Vd(t)<Vd2(tn))
放電時の印加電圧値の平均値Vdavがミシンモータ6を作動させる作動電圧Vdmin以上であり、放電時の印加電圧Vd(t)が確実に踏み込み有りと言える印加電圧Vd2(tn)を下回る場合、非踏込状態であるが接触抵抗Rxより作動電圧Vdmin以上となっている虞がある。
【0081】
図7に示すように、プロセッサ73は、放電時にサンプリングした各印加電圧値Vd(t1)、Vd(t2)、・・・Vd(tn)の各差分を算出し、差分値を参照して異常判断を行う。各差分がゼロの場合、正常と判定する。一方、図8に示すように、プロセッサ73は、所定の閾値Sを記憶しており、差分値Dが閾値S以上であると、非踏込状態であるが接触抵抗Rxより作動電圧Vdmin以上となった異常と判定する。
【0082】
(Vc≧Vc4)
フットコントローラ71が最大限に踏み込まれた場合、ボリューム抵抗717の抵抗値Rv2をRv2maxとすると、充電時の印加電圧Vc4は、式(3)より次式(12)の通りである。
【0083】
【0084】
プロセッサ73が読み込んだ充電時の印加電圧Vcが印加電圧Vc4以上であると、フットコントローラ71が未接続であるか、フットコントローラ71が断線して高い接触抵抗Ryが現れているか、可変抵抗器712にホコリが詰まって高い接触抵抗Rxが現れているかの何れかである。
【0085】
プロセッサ73は、読み込んだ充電時の印加電圧Vcが絶えず印加電圧Vc4以上であると、フットコントローラ71が未接続であると判断する。図9に示すように、プロセッサ73は、コンデンサ711の充放電が検出されている段階を経て、読み込んだ充電時の印加電圧Vcが印加電圧Vc4以上となり、放電段階においても印加電圧Vc4以上が続くと、フットコントローラ71の断線による異常と判断する。更に、図10に示すように、プロセッサ73は、コンデンサ711の充放電が検出されている段階を経て、読み込んだ充電時の印加電圧Vcが印加電圧Vc4以上となり、放電段階における印加電圧Vc4から時間経過に従った減少を検出すると、可変抵抗器712にホコリが詰まったことによる異常と判断する。
【0086】
(動作)
このようなプロセッサ73の異常判定及び縫い速度制御の具体的な動作を図11を参照して説明する。尚、プロセッサ73は、充電時の印加電圧Vc1情報として2.5Vを示す数値情報、充電時の印加電圧Vc4情報を示す値として4.7Vを示す数値情報、放電時の印加電圧Vdmin情報を示す値として0.6Vを示す数値情報、放電時の印加電圧Vd2(tn)情報を示す値として1.2Vを示す数値情報、差分値と比較する閾値として0.1Vを示す数値情報を予め記憶しているものとする。
【0087】
まず、プロセッサ73は、出力ポート732からゲート信号を出力し、コンデンサ711を充電させる(ステップS01)。充電中、規定時間T1が経過すると(ステップS02,Yes)、プロセッサ73は、入力ポート731に印加される充電時の印加電圧Vcを充電時分圧回路を通じて読み取る(ステップS03)。
【0088】
印加電圧Vcを読み取ると、プロセッサ73は、2.5Vの数値情報に対する印加電圧Vcの大小比較を行う(ステップS04)。印加電圧Vc<2.5Vであると(ステップS04,Yes)、プロセッサ73は処理を終了する。印加電圧Vc≧2.5Vであると(ステップS04,No)であると、プロセッサ73は放電時の印加電圧Vd(t)の検査に移る。
【0089】
ステップS04がNoにおいて、充電中、更に規定時間T2が経過すると(ステップS05,Yes)、プロセッサ73は、出力ポート732からのゲート信号を停止し、コンデンサ711を放電させる(ステップS06)。そして、プロセッサ73は、入力ポート731に印加される放電時の印加電圧Vd(t)を放電時分圧回路を通じて読み取る(ステップS07)。
【0090】
放電開始から各経過時間ごとに印加電圧Vd(t)を読み取る。充電時の印加電圧Vcが4.7V未満であると(ステップS08,Yes)、プロセッサ73は、各印加電圧Vd(t1)、Vd(t2)、・・・Vd(tn)の平均値Vdavと0.6Vの数値情報との大小比較を行う(ステップS09)。平均値Vdav<0.6Vであると(ステップS09,Yes)、プロセッサ73は処理を終了する。
【0091】
平均値Vdav≧0.6Vであると(ステップS09,No)、プロセッサ73は、各印加電圧Vd(t1)、Vd(t2)、・・・Vd(tn)と1.2Vの数値情報との大小比較を行う(ステップS10)。そして、各印加電圧Vd(t1)、Vd(t2)、・・・Vd(tn)の全てが1.2V以上であれば(ステップS10,Yes)、異常処理を終了する。
【0092】
平均値Vdav≧0.6Vであり、またVd(t1)、Vd(t2)、・・・Vd(tn)の何れかが1.2V未満であると(ステップS10,No)、プロセッサ73は、各印加電圧Vd(t1)、Vd(t2)、・・・Vd(tn)の各差分と0.1Vの数値情報との大小比較を行う(ステップS11)。
【0093】
各差分が0.1V以下であれば(ステップS11,Yes)、異常処理を終了する。一方、各差分が0.1V超であれば(ステップS11,No)、報知器9に異常情報を出力する(ステップS12)。報知器9は異常情報を受けて、異常発生を報知する(ステップS13)。
【0094】
一方、充電時の印加電圧Vcが4.7V以上であると(ステップS08,No)、プロセッサ73は、報知器9に異常情報を出力する(ステップS12)。報知器9は異常情報を受けて、異常発生を報知する(ステップS13)。
【0095】
ステップS10において、各印加電圧Vd(t1)、Vd(t2)、・・・Vd(tn)の全てが1.2V以上である場合、及びステップS11において、各印加電圧Vd(t1)、Vd(t2)、・・・Vd(tn)の差分が0.1V以下であれば、プロセッサ73は、ミシンモータ6の回転処理を行う(ステップS16)。すなわち、プロセッサ73は、各印加電圧Vd(t1)、Vd(t2)、・・・Vd(tn)の平均値Vdavに比例する値を有する制御指令をモータドライバ72に出力し、モータドライバ72は制御指令に従った周波数のパルス信号をミシンモータ6に出力し、ミシンモータ6はフットコントローラ71の踏込量に応じた回転速度で駆動する。
【0096】
尚、充電時の印加電圧Vcが4.7V以上であると(ステップS08,No)、プロセッサ73は異常の詳細を特定することができる。充電時の印加電圧Vcが4.7V以上であると(ステップS08,No)、各印加電圧Vd(t1)、Vd(t2)、・・・Vd(tn)と4.7Vの数値情報との大小比較を行う(ステップS14)。各印加電圧Vd(t1)、Vd(t2)、・・・Vd(tn)が4.7V以上であれば(ステップS14,No)、信号線718の断線による異常である。報知器9は、断線を内容とする報知を行うようにしてもよい。
【0097】
更に、プロセッサ73は、各印加電圧の値がVd(t1)>Vd(t2)>・・・>Vd(tn)であれば(ステップS15)、可変抵抗器712にホコリが溜まることによる異常である。報知器9は、可変抵抗器717にホコリが溜まっていることを内容とする報知を行うようにしてもよい。
【0098】
(作用効果)
以上のように、本実施形態のミシン1は、ミシンモータ6の回転速度を制御する縫い速度制御回路7は、フットコントローラ71とプロセッサ73と読み込み回路74とを備える。フットコントローラ71は、踏込量に応じてボリューム抵抗を変化させる可変抵抗器712と、1次電圧源8から電源供給されて充電されるコンデンサ711とを含む。そして、フットコントローラ71は、ボリューム抵抗717を分圧抵抗としてコンデンサ711の放電電圧を分圧した放電時電圧信号を出力する。
【0099】
このフットコントローラ71と読み込み回路74とにおいて、ボリューム抵抗717を分圧抵抗として含み、コンデンサ711と接続されている1次電圧源8の電源電圧を分圧した充電時電圧信号を出力する充電時分圧回路を備えるようにした。そして、プロセッサ73は、放電時電圧信号及び充電時電圧信号が時分割で印加され、放電時電圧信号に応じてミシンモータ6の回転速度を決定するとともに、充電時電圧信号が第1の所定値以上であると、ミシンモータ6を回転させないようにした。
【0100】
第1の所定値は、フットコントローラ71の踏込みが最大のときの充電時電圧信号の値である。または、この値にマージンを加算した値であってもよい。この第1の所定値を超えることは、即ちボリューム抵抗717の抵抗値Rv2の他に、可変抵抗器712に接触抵抗Rx又は信号線718に接触抵抗Ryが加わったからである。充電時電圧信号がこのような高い値となる場合、放電時電圧信号は、ミシンモータ6を回転させる最低値を上回り、ミシンモータ6は非踏込状態であっても回転してしまう。しかしながら、充電の段階でこの異常が検出できるため、ミシンモータ6を回転させず、誤作動を阻止することができる。
【0101】
また、プロセッサ73は、放電時電圧信号が第1の所定値未満であると、放電時電圧信号が印加されている間、放電時電圧信号を複数回サンプリングし、次の3条件を確認するようにした。第1に、サンプリングされた各値の何れかが第2の所定値未満か確認するようにした。第2に、サンプリングされた各値の平均値が第3の所定値以上か確認するようにした。第3に、サンプリングされた各値の差分が第4の所定値以上であるかを確認するようにした。そして、プロセッサ73は、全ての条件が満たされていると、ミシンモータ6を回転させないようにした。
【0102】
第2の所定値は、踏込量がゼロ、及び可変抵抗器712に接触抵抗が最大限加わったときの放電時電圧信号の値である。第3の所定値は、ミシンモータ6を回転させる最低の放電時電圧信号の値である。第4の所定値は、サンプリングされた各値が差分を有することを検出可能な値である。
【0103】
この3条件が満たされる状態は、ミシンモータ6を回転させる最低の放電電圧信号がプロセッサ73に印加されており、踏み込みが確実視される放電電圧信号ではなく、接触抵抗Rxが加わったことによる放電時の時定数の影響が見受けられるからである。これにより、充電の段階で異常が検出できなくとも、放電時において異常検出が可能となり、ミシンモータ6を回転させず、誤作動を阻止することができる。
【0104】
また、プロセッサ73は、充電電圧信号が第1の所定値よりも小さな第5の所定値以下であると、第2乃至4の所定値と放電電圧信号との比較を省略し、放電電圧信号に従ってミシンモータ6を回転させるようにした。第5の所定値は、接触抵抗Rx及びRyが生じていても充電電圧信号がゼロになる値であり、ミシンモータ6が駆動する虞がないからである。
【0105】
プロセッサ73は、フットコントローラ71の装着直後、又はフットコントローラ71が装着されたまま電源が投入された直後、第1の所定値未満且つ第5の所定値超であると、ミシンモータ6を回転させないようにした。正常であれば、踏込量はゼロのはずであり、踏込量がゼロであれば、第5の所定値未満となるためである。
【0106】
また、充電時電圧信号を出力する充電時分圧回路は、1次電圧源8とプロセッサ73との間に抵抗器747を有し、抵抗器747は、1次電圧源8とプロセッサ73とを接続し、ボリューム抵抗717は、プロセッサ73とグランド741とを接続し、抵抗器747とボリューム抵抗717が直列接続されているようにした。これにより、ミシン1とフットコントローラ71が2線式で接続されていても、充電時に踏込量に応じた印加電圧を読み取ることができる。これにより、充電時での異常判断が可能となる。
【0107】
(他の実施形態)
以上のように本発明の実施形態を説明したが、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。そして、この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0108】
図2に示すように、読み込み回路74において、ノイズ除去を目的としたコンデンサ77を介してグランド741に更に接続されていてもよい。また、MOSFETトランジスタ742の破壊防止を目的に、抵抗器747を介して、MOSFETトランジスタ742のドレインと、グランド741とアノードで接続されたツェナーダイオード76のカソードとが接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 ミシン
21 針板
3 針
31 針棒
5 釜
6 ミシンモータ
61 上軸
62 クランク機構
63 下軸
64 歯車機構
65 プーリ
66 プーリ
67 歯付きベルト
7 縫い速度制御回路
71 フットコントローラ
711 コンデンサ
712 可変抵抗器
713 第1固定端子
714 第2固定端子
715 摺動子
716 ボリューム抵抗
717 ボリューム抵抗
718 信号線
72 モータドライバ
73 プロセッサ
731 入力ポート
732 出力ポート
74 読み込み回路
741 グランド
742 MOSFETトランジスタ
743 抵抗器
744 抵抗器
745 抵抗器
746 抵抗器
747 抵抗器
75 コンデンサ
76 ツェナーダイオード
8 1次電圧源
9 報知器
100 布地
200 上糸
300 下糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11