特許第6822831号(P6822831)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6822831
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】熱成形用の繊維強化熱可塑性シート
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/02 20060101AFI20210114BHJP
   B29C 51/08 20060101ALI20210114BHJP
   B29C 43/02 20060101ALI20210114BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20210114BHJP
   B29C 70/28 20060101ALI20210114BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20210114BHJP
   B29B 11/14 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   B29C51/02
   B29C51/08
   B29C43/02
   B29C70/16
   B29C70/28
   B29C70/54
   B29B11/14
【請求項の数】10
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-236264(P2016-236264)
(22)【出願日】2016年12月5日
(65)【公開番号】特開2017-114116(P2017-114116A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2019年12月5日
(31)【優先権主張番号】14/976,169
(32)【優先日】2015年12月21日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクター・アルフレッド・ベック
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/049267(WO,A1)
【文献】 特開平01−289837(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101489767(CN,A)
【文献】 特開2010−046956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00−70/88
B29C 43/02
B29C 51/02;51/08
B29B 11/16;15/08−15/14
C08J 5/04−5/10;5/24
B29B 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化熱可塑性部品の製造方法であって、
長い繊維を2次元のパターンのシートに配置するステップであって、前記2次元のパターンは最終的な3次元のパターンに基づくステップと、
結合剤を適用することにより前記長い繊維を前記シート中に動かぬように固定して、固定された繊維を作製するステップと、
前記固定された繊維に刻み目を設けて、固定され、刻み目が設けられた繊維を形成するステップであって、刻み目は、前記固定され、刻み目が設けられた繊維を曲げることができるように、前記固定された繊維に配置され、また前記刻み目は、前記最終的な3次元のパターンに従って配置されるステップと、
前記固定され、刻み目が設けられた繊維に熱可塑性ポリマーを含浸させて、熱可塑性物質を含浸させた繊維を形成するステップと、
前記熱可塑性物質を含浸させた繊維の複数のシートを積み重ねるステップと、
圧力を用いて前記複数のシートを前記最終的な3次元のパターンに一体に成型するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記固定された繊維に刻み目を設けるステップは、前記固定された繊維を切断するために少なくとも1つのレーザを使用することを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記固定され、刻み目が設けられた繊維の含浸は、スロットコーティングまたは含浸成型の一方を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記複数のシートを積み重ねるステップは、前記刻み目のあらかじめ決められた配置に従って前記シートを積み重ねることを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
さらに、
前記繊維の前記2次元のパターンを決定するステップと、
自動化された繊維配置装置を用いて、前記繊維を配置するステップと、
を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
部品の製造方法であって、
長い繊維を金型に基づいて2次元のパターンに配置するステップと、
結合剤を適用することにより前記長い繊維を動かぬように固定して、前記2次元のパターンに従って固定された、固定された繊維を作製するステップと、
前記固定された繊維に刻み目を設けて、固定された繊維に刻み目を形成するステップであって、前記刻み目は前記金型に基づいて配置されるステップと、
前記固定され、刻み目が設けられた繊維に熱可塑性ポリマーを含浸させて、熱可塑性物質を含浸させた繊維を形成するステップと、
前記熱可塑性物質を含浸させた繊維の複数のシートを積み重ねるステップと、
圧力を用いて前記複数のシートを一体に成型し、成型可能シートを形成するステップと、
前記成型可能シートへと前記金型を適用するステップと
を含む方法。
【請求項7】
前記長い繊維を固定するステップは、前記長い繊維に結合剤を噴霧することを含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記固定された繊維に刻み目を設けるステップは、前記固定された繊維を切断するために少なくとも1つのレーザを使用することを含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記固定された繊維の含浸は、スロットコーティングまたは含浸成型の一方を含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
前記複数のシートを積み重ねるステップは、前記刻み目のあらかじめ決められた配置に従って前記シートを積み重ねることを含む、請求項6に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱成形に関し、より詳しくは、強化された熱可塑性シートによる熱成形に関する。
【背景技術】
【0002】
熱成形は、熱可塑性物質から複雑な部品を製作するための迅速、効率的、かつ安価な方法を提供する。しかしながら、熱可塑性ポリマーの機械的特性が、それらの部品を、自動車および航空宇宙産業などにおけるより厳しい用途に適さないものにしている。これらの産業は、プレスおよび成形のプロセスに、鋼およびアルミニウムなどのより重く、より高価な材料を使用する。熱可塑性物質は、より軽量で、より効率的であり、機械的な性能が良好であるならば、これらの材料の良好な置き換えとなると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
強化材を加えることで、熱可塑性物質の機械的な性能が改善されると考えられる。現在のところ、補強材を向きおよび整列を制御するやり方で、後に熱形成の対象とすることができる熱可塑性シートへと導入する容認可能な方法は、存在していない。機械的な性能の要件に加えて、熱可塑性物質の熱成形を、速度および効率の維持が保証されるように既存の製造プロセスへと適合させる必要もある。これらのプロセスへと導入されるあらゆる材料は、同様の柔軟性、加工性、および製造性、ならびに他の材料および熱形成された部品との良好な結合性を有さなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態は、繊維を配置するステップと、前記繊維を動かぬように固定するステップと、前記繊維を切断するステップと、前記繊維に熱可塑性ポリマーを含浸させるステップと、前記繊維の複数のシートを積み重ねるステップと、前記複数のシートを一体に成型するステップとを含む繊維強化熱可塑性部品の製造方法である。
【0005】
一実施形態は、最初の繊維を配置するステップと、前記繊維を動かぬように固定するステップと、前記繊維を切断するステップと、前記繊維に熱可塑性ポリマーを含浸させるステップと、前記繊維の複数のシートを積み重ねるステップと、前記複数のシートを一体に成型し、成型可能シートを形成するステップと、前記成型可能シートへと金型を適用するステップとを含む部品の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、繊維強化熱可塑性シートを製造するための方法の一実施形態のフロー図を示している。
図2図2は、長い固定された繊維を有している2次元予備成形物の実施形態を示している。
図3図3は、切断された繊維束の実施形態を示している。
図4図4は、成型可能シートを形成する実施形態を示している。
図5図5は、シートにポリマーを含浸させる実施形態を示している。
図6図6は、熱可塑性シートを成型する実施形態を示している。
図7図7は、熱可塑性シートから部品を成型する実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1が、繊維強化熱可塑性シートを製造する方法のフロー図を示している。ここに示される方法が、繊維強化熱可塑性物質の製造に関するプロセスの1つの順序を提示していることに、注意すべきである。さらに詳しく後述されるとおり、プロセスのいくつかの順序は、変更可能である。最初に、プロセスは、典型的には自動化された繊維配置装置を使用して、10において長い繊維を配置するが、繊維は任意のやり方で配置することが可能である。繊維の配置を、あらかじめ決められた2次元のパターンに従って行うことができ、ここで2次元のパターンは、最終的な3次元の所望の形状から決定される。図2が、そのようなパターン30の例を示している。
【0008】
次いで、図1の実施形態において、配置された繊維は、スプレー式の結合剤または繊維を動かぬように固めるための他の手段などによって、12においてその場に固定される。長い繊維は、その場に固定された後、典型的には1方向に延びており、とりわけ高密度の繊維によって囲まれる場合に、他の方向に大きく曲げることが不可能である。それらは、きわめて強いという利点を有するが、生得的に柔軟性を欠くため、多くの用途において上手く機能しない可能性がある。とりわけ、繊維を破損させたり、あるいは指定の位置からの破局的な引き抜きを生じさせたりすることなく、繊維を3次元の形状へと成型することが不可能であると考えられる。これを克服するために、プロセスは、短い繊維を形成するために14において長い繊維に刻み目を設ける。一実施形態においては、レーザアブレーションが、長い繊維を切断するための刻み目を形成する。刻み目は、所望の形状への成型の前に必要な従順さを保証するように配置される。図3が、戦略的に配置された切れ目34を有している刻み目が設けられた繊維32の例を示している。
【0009】
上述のように、これらの工程の多くの順序は、用途に応じて変更が可能である。一実施形態においては、繊維を切断し、その後に固定し、あるいは束ねることができる。別の実施形態においては、繊維を固定し、その後に切断することができる。図1の実施形態において、繊維は、切断後に16においてポリマーで含浸させられる。図4が、堆積または含浸ヘッド36によってポリマーで含浸させられている32などのシートの例を示している。やはり、この順序も、用途次第である。プロセスは、繊維が切断に先立って一時的に動かぬように保持される場合には、切断された繊維を押し合わせ、次いで含浸させることもできる。繊維は、ポリマーの含浸前に固定され、あるいは一時的に動かぬように保持されなければならない。動かぬような一時的な保持は、図5に示されるとおりの典型的な含浸の際に行われるように、2枚の平坦なプレートを使用して圧力を加えることによって達成することができる。
【0010】
含浸後に、この実施形態においては、含浸させられたシートが、図1の18において互いに積み重ねられ、次いで一体に融合させられる。図5が、図1の20において押し合わされて一体に成型され、新たな成型可能シートを形成するシートの例を示している。このシートは、今や複数の方向の柔軟性および金属部品の置き換えを可能にするための充分な強度を有する繊維強化熱可塑性シートで構成されている。シートの積み重ねを、所望の形状に従って繊維および切れ目を配置するための特定の順序に従って行うことができる。成型を、圧力の下で行うことができる。図5は、繊維を押し合わせることができる刻み目が設けられた繊維32、装備36の例を示している。
【0011】
この時点で、今や繊維強化ポリマーシートは、通常であれば金属のプレスから形成されると考えられる部品の形成など、多数の異なる用途に好適である。図1において、ポリマーを流動させるために熱可塑性シートへと熱が加えられ、次いで22において成型可能シートへと部品金型が適用され、シートの冷却が許され、部品24が形成される。図6および7が、これをさらに詳しく示している。
【0012】
図6において、金型60がシート62へと適用される。ヒータ66が、シートを粘性状態にて落下させて金型へと流し込み、金型がシートを部品64の所望の形状へと形成する。真空ポンプが、加熱プロセスによって放出される流体(あれば)を引き出し、加熱および硬化時にシートに捕捉されうる空気を取り除く。また、溶融したポリマーを金型へと下方に引き寄せる真空も生成する。得られた部品64は、所望の部品の形状によって決定される特定のパターンに従って向けられた繊維を有する繊維強化熱可塑性ポリマーで構成されている。これは、部品における応力に最適に対応するように繊維が優先的に向けられた高度な繊維の整列および密度を有する部品を生み出す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7