特許第6822833号(P6822833)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6822833
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】排水処理システム及び排水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20060101AFI20210114BHJP
【FI】
   C02F3/12 J
   C02F3/12 P
   C02F3/12 F
   C02F3/12 A
   C02F3/12 B
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-253010(P2016-253010)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-103113(P2018-103113A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】足利 伸行
(72)【発明者】
【氏名】本木 唯夫
(72)【発明者】
【氏名】山森 武夫
(72)【発明者】
【氏名】沖澤 正一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 昌也
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 建至
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−136987(JP,A)
【文献】 特開2008−168187(JP,A)
【文献】 特開2015−039691(JP,A)
【文献】 特開2012−066231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00−34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水槽と、
この原水槽から流出された原水を処理する少なくとも1つの一次処理槽と、
この一次処理槽から流出された一次被処理水を微生物によって好気処理する好気処理槽と、
この好気処理槽に貯留された前記一次被処理水を曝気する曝気手段と、
前記好気処理槽に貯留された前記一次被処理水中の汚濁物質量の増加に伴って減少し、この汚濁物質量の減少に伴って増加する処理指標値を測定するセンサと、
前記原水槽から流出された原水を、前記好気処理槽に送る送水手段と、
前記センサによって測定された前記一次被処理水の処理指標値に基づき目標曝気量を決定し、前記目標曝気量が前記曝気手段の最小曝気量を超える場合は前記曝気手段における曝気量を前記目標曝気量とさせ、前記目標曝気量が前記最小曝気量以下の場合は、前記曝気手段における曝気量を前記最小曝気量に維持させるとともに、前記送水手段により前記原水を前記好気処理槽に供給させるようにする制御装置と、を備えた排水処理システム。
【請求項2】
前記送水手段が、前記原水槽から前記好気処理槽に至る送水ラインと、前記送水ラインを介して前記原水を前記好気処理槽に送水するために前記制御装置によって制御されるポンプと、を備える請求項1に記載の排水処理システム。
【請求項3】
前記原水槽と前記一次処理槽との間に前記原水を流す第1送水ラインが備えられ、
前記送水手段が、前記第1送水ラインから分岐して前記原水を前記好気処理槽に至る第2送水ラインと、前記第1送水ラインと前記第2送水ラインの接続部に設置されて前記制御装置によって制御される分配装置と、を備える請求項1に記載の排水処理システム。
【請求項4】
前記処理指標値は、溶存酸素濃度または酸化還元電位である請求項1〜3のいずれか1項に記載の排水処理システム。
【請求項5】
原水槽と、
前記原水槽から流出された原水を処理する少なくとも1つの一次処理槽と、
前記一次処理槽から流出された一次被処理水を微生物によって好気処理する好気処理槽と、
前記好気処理槽に貯留された前記一次被処理水を曝気する曝気手段と、
前記好気処理槽に貯留された前記一次被処理水中の汚濁物質量の増加に伴って減少し、この汚濁物質量の減少に伴って増加する処理指標値を測定するセンサと、
前記原水槽から流出された原水を、前記好気処理槽に送る送水手段と、
を備える排水処理システムによる排水処理方法であって、
前記センサによって測定された処理指標値に基づき目標曝気量を決定し、前記目標曝気量が前記曝気手段の最小曝気量超の場合は前記曝気手段における曝気量を前記目標曝気量とし、前記目標曝気量が前記最小曝気量以下の場合は、前記曝気手段における曝気量を前記最小曝気量に維持するとともに、前記送水手段により前記原水を前記好気処理槽に供給する排水処理方法。
【請求項6】
前記送水手段には、前記原水槽から前記好気処理槽に至る送水ラインと、前記送水ラインを介して前記原水を前記好気処理槽に送水するポンプと、が備えられ、
前記ポンプを制御することにより、前記原水を前記好気処理槽に供給する請求項に記載の排水処理方法。
【請求項7】
前記原水槽と前記一次処理槽との間に前記原水を流す第1送水ラインが備えられ、
前記送水手段には、前記第1送水ラインから分岐して前記原水を前記好気処理槽に至る第2送水ラインと、前記第1送水ラインと前記第2送水ラインの接続部に設置された分配装置と、が備えられ、
前記分配装置を制御することにより、前記原水を前記一次処理槽と前記好気処理槽とに供給する請求項に記載の排水処理方法。
【請求項8】
前記処理指標値は、溶存酸素濃度または酸化還元電位である請求項5〜7のいずれか1項に記載の排水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、排水処理システム及び排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場から排出される排水には、油分や汚濁物質が家庭排水等に比べて多く含まれている。このような排水の処理には、嫌気性処理法等により一次処理を行った後、活性汚泥法による二次処理が行われている。活性汚泥法による二次処理では、好気処理槽内の好気性微生物(活性汚泥)により、一次処理で分解しきれなかった有機物質を分解する。活性汚泥法を用いた排水処理システムでは、好気処理槽内の汚濁物質量によって、好気処理槽内に供給する空気の流量(曝気量)を制御する曝気量制御が行われる。曝気量制御は、好気処理槽内の汚濁物質量が増加した際に、好気処理槽内で必要とされる酸素量が増加するため、好気処理槽内に供給する曝気量を増加させる制御を行う。一方、好気処理槽内の汚濁物質量が減少すると、好気処理槽内で必要とされる酸素量が減少するため、曝気量を減少させる制御を行う。
【0003】
ここで、食品工場から排出される排水中の汚濁物質量は、季節や日間によって大きく変動する。一方、曝気装置には、装置の大きさや曝気能力によって決まる最大曝気量と最小曝気量とがある。そのため、上述した曝気量制御では、工場から排出された排水中の汚濁物質量が著しく減少した際に、好気処理槽内の曝気量が過剰になる場合があった。好気処理槽内の曝気量が過剰になると、好気性微生物の凝集体(フロック)が解体され、好気処理槽の下流側に設置された沈殿槽においてフロックが沈降せず、水質が悪化するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5714355号公報
【特許文献2】特許第5878231号公報
【特許文献3】特開2012−228645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、処理水の水質を良好な状態に維持することができる排水処理システム及び排水処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の排水処理システムは、原水槽と、一次処理槽と、好気処理槽と、送水手段と、曝気手段と、センサと、制御装置と、を持つ。
前記制御装置は、前記センサによって測定された処理指標値に基づき目標曝気量を算出し、前記目標曝気量が前記曝気手段の最小曝気量を超える場合は前記曝気手段における曝気量を前記目標曝気量とさせ、前記目標曝気量が前記最小曝気量未満の場合は、前記曝気手段における曝気量を前記最小曝気量に維持させるとともに、前記送水手段により原水を前記好気処理槽に供給する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】基本形態における排水処理システムの構成図。
図2】第1の実施形態における排水処理システムの構成図。
図3】第2の実施形態における排水処理システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の排水処理システム及び排水処理方法を、図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、基本形態である排水処理システムを示す構成図である。
図1に示す排水処理システム100は、原水槽1と、一次処理槽2と、好気処理槽3と、沈殿槽4と、センサ5と、曝気手段21と、制御装置10と、を備える。制御装置10には、曝気量演算部8と、曝気量制御部9と、が備えられている。また、曝気手段21は、ブロア6と、送気ラインL6と、曝気部7とからなる。
【0010】
原水槽1には、工場から排出された原水が貯留されている。また、原水槽1には、原水送水ラインL1が接続されている。原水送水ラインL1の途中には、ポンプP1が設けられている。ここで、本明細書においては、工場から排出された排水を原水、一次処理槽にて処理された排水を一次被処理水、好気処理槽にて処理された排水を二次被処理水、沈殿槽にて固液分離された排水を上澄み液とそれぞれ記載する。
【0011】
一次処理槽2は、原水槽1から原水送水ラインL1によって送水された原水を処理する。一次処理槽2では、嫌気性処理法であるメタン発酵処理法、もしくは、好気性処理法である担体流動床法による処理が行われる。一次処理槽2には、一次被処理水送水ラインL2が接続されている。
【0012】
好気処理槽3は、好気処理槽3内に保持された好気性微生物により、一次処理槽2から一次被処理水ラインL2によって送水された一次被処理水を好気処理する。好気処理槽3では、いわゆる活性汚泥法による処理が行われる。好気処理槽3には、センサ5と、曝気部7とが備えられている。また、好気処理槽3には、二次被処理水送水ラインL3が接続されている。
【0013】
センサ5は、好気処理槽3内にて好気処理中の一次被処理水の処理指標値を測定する。センサ5は好気処理槽3内の一次被処理水中に浸漬されている。また、センサ5は後述する曝気量演算部8に接続されている。
【0014】
曝気手段21の曝気部7は、好気処理槽3内の一次被処理水を曝気する。曝気部7は、好気処理槽3の底部において、一次被処理水中に浸漬されている。また、曝気部7は送気ラインL6を介してブロア6に接続されている。
【0015】
沈殿槽4は、好気処理槽3から二次被処理水送水ラインL3によって送水された二次被処理水を所定時間静置し、上澄み液とフロックとに固液分離させる。沈殿槽4には、上澄み液を系外へ排出する上澄み液排出ラインL4と、沈降した一部のフロックを好気処理槽3へ返送する汚泥返送ラインL5と、残りのフロックを系外へ排出する図示しない汚泥排出ラインと、が接続されている。
【0016】
制御装置10の曝気量演算部8は、センサ5によって測定した好気処理槽3内の処理指標値に基づいて目標曝気量を算出する。また、曝気量演算部8は、曝気量制御部9と接続しており、算出した目標曝気量を曝気量制御部9に出力する。
【0017】
制御装置10の曝気量制御部9には、ブロア6が接続されている。曝気量制御部9は、曝気量演算部8から出力された目標曝気量に基づき、ブロア6の目標回転数を決定し、その目標回転数となるように、ブロア6を制御する。ブロア6の回転数が目標回転数となると、曝気部7から供給される曝気量が目標曝気量となる。
【0018】
排水処理方法は、原水槽1から送水された被処理水を一次処理槽2にて処理する段階と、一次処理槽2から送水された一次被処理水を好気処理槽3にて処理する段階と、好気処理槽3から送水された二次被処理水を沈殿槽4にて固液分離する段階と、を備える。以下、各段階について説明する。
【0019】
工場から排出された原水は、原水槽1に貯留される。原水槽1に貯留された原水は、ポンプP1が動作することにより、原水送水ラインL1を介して一次処理槽2へ送水される。
【0020】
一次処理槽2に送水された原水は、一次処理槽2内に保持された微生物により処理される。一次処理槽2にて行われる処理方法は、嫌気性処理法であるメタン発酵処理法、もしくは、好気性処理法である担体流動床法である。一次処理槽2で処理された一次被処理水は、一次被処理水送水ラインL2を介して好気処理槽3に送水される。
【0021】
好気処理槽3に送水された一次被処理水は、好気処理槽3内に保持された好気性微生物により好気処理される。好気処理槽3内の好気性微生物は、曝気部7から供給される空気中の酸素を消費して、一次被処理水中の汚濁物質を分解する。好気処理槽3にて好気処理された二次被処理水は好気性微生物と共に、二次被処理水送水ラインL3を介して沈殿槽4へ送水される。
【0022】
沈殿槽4へ送水された二次被処理水は、所定時間静置されることにより、フロックと上澄み液とに固液分離される。上澄み液は上澄み液排出ラインL4を介して系外へ排出される。また、沈殿槽4の底部に沈降した一部のフロックは、汚泥返送ラインL5を介して好気処理槽3へ返送され、残りのフロックは図示しない汚泥排出ラインを介して系外へ排出される。
【0023】
ここで、上述した好気処理槽3において、曝気部7から供給される曝気量が不足すると、好気処理槽3内の溶存酸素濃度が減少し、好気性微生物による汚濁物質の分解が行われなくなる。そのため、排水処理方法では、以下に説明する曝気量制御を行う。
【0024】
まず、好気処理槽3内の一次被処理水中に沈設されたセンサ5によって、好気処理槽3内の一次被処理水の処理指標値を測定する。センサ5により測定した一次被処理水の処理指標値は、曝気量演算部8へ出力される。なお、一次被処理水の処理指標値は、一次被処理水中の汚濁物質量が増加すると、処理指標値が減少し、一次被処理水中の汚濁物質量が減少すると、処理指標値が増加する。このような処理指標値として、例えば、溶存酸素濃度や、酸化還元電位が例示できる。
【0025】
曝気量演算部8は、センサ5から出力された一次被処理水の処理指標値に基づいて、好気処理槽3内に供給する目標曝気量を算出する。曝気量演算部8により算出された曝気量の目標値は、曝気量制御部9へ出力される。なお、目標曝気量とは、好気処理槽3の処理性能が良好に維持される曝気量である。
【0026】
曝気量制御部9は、曝気量演算部8から出力された目標曝気量に基づいて、ブロア6の回転数を決定し、その回転数となるようにブロア6を制御する。具体的に、曝気量制御部9は、目標曝気量が高い場合にはブロアの回転数を上昇させ、目標曝気量が低い場合にはブロアの回転数を減少させる制御を行う。すると、曝気部7から供給される曝気量が、曝気量演算部8より算出された目標曝気量となる。
【0027】
しかし、上述した曝気量制御では、一次被処理水中の汚濁物質量が著しく減少した際に、好気処理槽3内の曝気量が過剰になる場合がある。曝気部7から供給することができる曝気量には、ブロア6や曝気部7等の大きさや曝気能力によって決まる最小曝気量がある。汚濁物質量に対応する曝気量が最小曝気量を下回る場合、本来は最小曝気量よりも少ない曝気量で済むはずであるが、設備上、最小曝気量で曝気せざるを得ず、これにより曝気量が過剰になる。好気処理槽3内の曝気量が過剰になると、フロックの解体(微細化)による水質悪化を招くおそれがある。そこで、以下に説明する排水処理システム及び排水処理方法を採用することにする。
【0028】
(第1の実施形態)
本実施形態の排水処理システムを、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、図1に示した排水処理システム100と同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する。
【0029】
図2に示すように、実施形態の排水処理システム200は、排水処理システム100と同様に、原水槽1と、一次処理槽2と、好気処理槽3と、沈殿槽4と、センサ5と、曝気手段21と、制御装置20と、を備える。制御装置20には、曝気量演算部11と、曝気量制御部9と、バイパスポンプ制御部12と、が備えられている。また、排水処理システム200には、送水手段22として、送水ラインL7と、送水ラインL7に設けられたバイパスポンプP2と、が備えられている。
【0030】
排水処理システム200では、送水ラインL7を介して原水槽1と好気処理槽3とが接続されている。送水ラインL7の途中にはバイパスポンプP2が設けられている。バイパスポンプP2は、バイパスポンプ制御部12に接続されている。
【0031】
本実施形態の制御装置20は、センサ5によって測定された処理指標値に基づき目標曝気量を決定し、目標曝気量が曝気手段21の最小曝気量を超える場合は曝気手段21による曝気量を目標曝気量とさせ、目標曝気量が最小曝気量以下の場合は、曝気手段21による曝気量を最小曝気量に維持させるとともに、送水手段22により原水を好気処理槽3に供給させるようにする。以下、制御装置20及び送水手段22について詳細に説明する。
【0032】
制御装置20の曝気量演算部11は、センサ5によって測定された処理指標値に基づき、目標曝気量を算出する。目標曝気量が最小曝気量を超える場合には、曝気量演算部11は、曝気量制御部9に目標曝気量を出力し、バイパスポンプ制御部12にはバイパスポンプP2を停止させる信号を出力する。一方、目標曝気量が最小曝気量以下の場合には、曝気量演算部11は、曝気量制御部9に最小曝気量を出力し、バイパスポンプ制御部12にはバイパスポンプP2を動作させる信号を出力する。
【0033】
制御装置20の曝気量制御部9は、曝気量演算部11から出力された目標曝気量または最小曝気量に基づき、ブロア6の回転数を決定し、その回転数となるようにブロア6を制御する。
【0034】
制御装置20のバイパスポンプ制御部12には、曝気量演算部8と、バイパスポンプP2と、が接続されている。バイパスポンプ制御部12は、曝気量演算部8により出力されたバイパスポンプP2を停止させる信号または動作させる信号に応じて、バイパスポンプP2を制御する。バイパスポンプP2が動作すると、送水ラインL7を介して原水が好気処理槽3へ送水される。
【0035】
送水手段22のバイパスポンプP2は、バイパスポンプ制御部12の制御のもと、送水ラインL7を介して原水槽1から好気処理槽3へ原水を送水する。
【0036】
次に、本実施形態の排水処理方法ついて説明する。
本実施形態の排水処理方法は、原水槽1から送水された原水を一次処理槽2にて処理する段階と、一次処理槽2から送水された一次被処理水を好気処理槽3にて好気処理する段階と、好気処理槽3から送水された二次被処理水を沈殿槽4にて固液分離する段階と、を備える。また、本実施形態の排水処理方法は、センサ5によって測定された処理指標に基づき目標曝気量を決定し、目標曝気量が曝気手段21の最小曝気量を超える場合は、曝気手段21による曝気量を目標曝気量とさせ、目標曝気量が最小曝気量以下の場合は、曝気手段21による曝気量を最小曝気量に維持させるとともに、送水手段22により原水を好気処理槽3に供給する。
【0037】
曝気量演算部11は、センサ5によって測定された処理指標に基づき、目標曝気量を算出する。目標曝気量が最小曝気量を超える場合には、曝気量演算部11は、曝気量制御部9に目標曝気量を出力し、バイパスポンプ制御部12にはバイパスポンプP2を停止させる信号を出力する。すると、曝気量制御部9は、曝気量演算部11から出力された目標曝気量に基づき、ブロア6の回転数を決定し、その回転数となるようにブロア6を制御する。バイパスポンプ制御部12は、バイパスポンプP2を停止させる制御を行う。
【0038】
一方、目標曝気量が最小曝気量以下の場合には、曝気量演算部11は、曝気量制御部9に最小曝気量を出力し、バイパスポンプ制御部12にはポンプP2を動作させる信号を出力する。すると、曝気量制御部9は、曝気量演算部11から出力された最小曝気量に基づき、ブロア6の回転数を決定し、その回転数となるようにブロア6を制御する。バイパスポンプ制御部12は、バイパスポンプP2を動作させる制御を行う。
【0039】
バイパスポンプP2が動作すると、送水ラインL7を介して、汚濁物質量が一次被処理水よりも多い原水が、直接好気処理槽3へ送水される。すると、好気処理槽3内の汚濁物質量が増加し、センサ5によって測定される処理指標値が減少する。処理指標値が減少すると、曝気量演算部11によって算出される目標曝気量が高くなり、目標曝気量が最小曝気量を超える曝気量となる。
【0040】
以上の構成によれば、季節変動や日内変動により、好気処理槽3における汚濁物質量が大幅に減少して、曝気量演算部11によって算出された目標曝気量が最小曝気量以下となった場合に、原水槽1に貯留された原水を直接好気処理槽3に送水することができる。原水は一次被処理水に比べて汚濁物質量が多いため、原水が好気処理槽3に送水されることにより、好気処理槽3内の汚濁物質量を増加させることができる。好気処理槽3内の汚濁物質量が増加することにより、処理指標値が減少し、曝気量演算部11により算出される目標曝気量が最小曝気量を超える曝気量となる。そのため、一次被処理水中の汚濁物質量が著しく減少した場合であっても、好気処理槽3内の曝気量が過剰にならず、フロックの微細化を防止することができ、上澄み液の水質を良好な状態に維持することができる。また、好気処理槽3内の汚濁物質量を不足させることなく排水処理を行うことできるため、好気処理槽3の処理性能を良好な状態に維持することができる。更に、目標曝気量が最小曝気量を超えた時に、バイパスポンプP2の動作を停止することで、好気処理槽3内の汚濁物質量が過剰になるのを防ぐことができる。また、ブロア6の動力を削減することができる。
【0041】
(第2の実施形態)
図3に示すように、本実施形態の排水処理システム300は、排水処理システム100と同様に、原水槽1と、一次処理槽2と、好気処理槽3と、沈殿槽4と、センサ5と、曝気手段21と、制御装置30と、を備える。制御装置30には、曝気量演算部11と、曝気量制御部9と、分配装置制御部13と、を備える。また、排水処理システム300には、送水手段23として、第2送水ラインL9と、第2送水ラインL9に設けられた分配装置14と、が備えられている。
【0042】
排水処理システム300では、原水槽1と一次処理槽2とを接続する第1送水ラインL8の途中に、分配装置14が設けられている。分配装置14には第2送水ラインL9が接続されている。第2送水ラインL9は好気処理槽3に接続されている。分配装置14は、第1送水ラインL8と第2送水ラインL9とを介して、一次処理槽2と好気処理槽3とに原水を送水できるようになっている。また、分配装置14は、分配装置制御部13に接続されている。
【0043】
本実施形態の制御装置30は、センサ5によって測定された処理指標値に基づき目標曝気量を決定し、目標曝気量が曝気手段21の最小曝気量を超える場合は曝気手段21による曝気量を目標曝気量とさせ、目標曝気量が最小曝気量以下の場合は、曝気手段21による曝気量を最小曝気量に維持させるとともに、送水手段23により原水を好気処理槽3に供給させるようにする。以下に、制御装置30及び送水手段23について詳細に説明する。
【0044】
制御装置30の曝気量演算部11は、センサ5によって測定された処理指標値に基づき、目標曝気量を算出する。目標曝気量が最小曝気量を超える場合には、曝気量演算部11は、曝気量制御部9に目標曝気量を出力し、分配装置制御部13には分配装置14を停止させる信号を出力する。一方、目標曝気量が最小曝気量以下の場合には、曝気量演算部11は、曝気量制御部9に最小曝気量を出力し、分配装置制御部13には分配装置14を動作させる信号を出力する。
【0045】
制御装置30の分配装置制御部13には、曝気量演算部8と、分配装置14と、が接続されている。分配装置制御部13は、曝気量演算部8により出力された分配装置14を停止させる信号または動作させる信号に応じて、分配装置14を制御する。分配装置14が動作すると、第1送水ラインL8と第2送水ラインL9とを介して、一次処理槽2と好気処理槽3とに原水が送水される。
【0046】
送水手段23の分配装置14は、分配装置制御部13の制御のもと、第1送水ラインL8を介して、一次処理槽2に原水を送水するか、または、第1送水ラインL8と第2送水ラインL9とを介して、一次処理槽2と好気処理槽3とに原水を送水する。
【0047】
次に、本実施形態の排水処理方法ついて説明する。
本実施形態の排水処理方法は、原水槽1から送水された原水を一次処理槽2にて処理する段階と、一次処理槽2から送水された一次被処理水を好気処理槽3にて好気処理する段階と、好気処理槽3から送水された二次被処理水を沈殿槽4にて固液分離する段階と、を備える。また、本実施形態の排水処理方法は、センサ5によって測定された処理指標値に基づき目標曝気量を決定し、目標曝気量が曝気手段21の最小曝気量を超える場合は曝気手段21による曝気量を目標曝気量とし、目標曝気量が最小曝気量以下の場合は、曝気手段21による曝気量を最小曝気量に維持するとともに、送水手段23により原水を好気処理槽3に供給する。
【0048】
曝気量演算部11は、センサ5によって測定された処理指標値に基づき、目標曝気量を算出する。目標曝気量が最小曝気量を超える場合には、曝気量演算部11は、曝気量制御部9に目標曝気量を出力し、分配装置制御部13には分配装置14を停止させる信号を出力する。すると、曝気量制御部9は、曝気量演算部11から出力された目標曝気量に基づき、ブロア6の回転数を決定し、その回転数となるようにブロア6を制御する。分配装置制御部13は、分配装置14を停止させる。
【0049】
一方、目標曝気量が最小曝気量以下の場合には、曝気量演算部11は、曝気量制御部9に最小曝気量を出力し、分配装置制御部13には分配装置14を動作させる信号を出力する。すると、曝気量制御部9は、曝気量演算部11から出力された最小曝気量に基づき、ブロア6の回転数を決定し、その回転数となるようにブロア6を制御する。分配装置制御部13は、分配装置14を動作させる制御を行う。
【0050】
分配装置14が動作すると、原水槽1から第1送水ラインL8を介して一次処理槽2に送水されていた原水が、第2送水ラインL9を介して好気処理槽3に分配される。原水が原水槽1から直接好気処理槽3に送水されると、好気処理槽3内の汚濁物質量が増加し、センサ5によって測定される処理指標値が減少する。処理指標値が減少すると、曝気量演算部11によって算出される目標曝気量が多くなり、目標曝気量が最小曝気量を超える曝気量となる。
【0051】
以上の構成によれば、好気処理槽3における汚濁物質量が大幅に減少して、曝気量演算部11によって算出された目標曝気量が最小曝気量以下となった場合に、原水槽1に貯留された原水を直接好気処理槽3に送水することができる。原水が好気処理槽3に送水されると、好気処理槽3内の汚濁物質量が増加し、処理指標値が減少することで、曝気量演算部11により算出される目標曝気量が最小曝気量超となる。そのため、一次被処理水中の汚濁物質量が著しく減少した場合であっても、好気処理槽3内の曝気量が過剰にならず、フロックの微細化を防止することができ、上澄み液の水質を良好な状態に維持することができる。また、好気処理槽3内の汚濁物質量を不足させることなく排水処理を行うことできるので、好気処理槽3の処理性能を良好な状態に維持することができる。更に、原水槽1に貯留された原水を直接好気処理槽3に送水しても、原水槽1から流出する原水量を一定に維持することができる。そのため、好気処理槽3に流入する排水量が一定に維持され、好気処理槽3における一次被処理水及び原水の滞留時間を確保することができる。これにより、好気処理槽3における好気処理が十分に行われ、二次被処理水の水質悪化を防止することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、分配装置14の形状は、三方弁のような形状でもよく、排水升のような形状であっても構わない。
【0053】
また、上述した実施形態では、被処理水を一次処理槽にて処理する段階と、好気処理槽にて処理する段階との間に、別の槽にて処理する段階を含んでも構わない。
【0054】
また、上述した実施形態では、好気処理槽3内の一次被処理水の処理指標値を測定するセンサ5は、水中の溶存酸素濃度を測定する溶存酸素濃度計(DO計)や、水中の酸化還元電位を測定する酸化還元電位計(ORP計)であっても構わない。
【0055】
また、上述した実施形態では、ブロア6の回転数を増減することにより、曝気部7から供給される曝気量を制御する方法について説明したが、送気ラインL6の途中に設けられた風量調整弁を調整することにより、曝気量を制御しても構わない。
【0056】
以上に述べた少なくとも一つの実施形態によれば、好気処理槽に貯留された一次被処理水の処理指標値を測定するセンサと、原水槽から流出された原水を好気処理槽に送水する送水手段と、センサによって測定された処理指標値に基づき目標曝気量を決定し、目標曝気量が曝気手段の最小曝気量を超える場合は曝気手段による曝気量を目標曝気量とさせ、目標曝気量が最小曝気量以下の場合は、曝気手段による曝気量を最小曝気量に維持させるとともに、送水手段により原水を好気処理槽に供給させるようにさせる制御装置と、を持つことにより、処理水の水質を良好な状態に維持することができる排水処理システム及び排水処理方法を提供することができる。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0058】
100、200、300…排水処理システム、1…原水槽、2…一次処理槽、3…好気処理槽、4…沈殿槽、5…センサ、6…ブロア、7…曝気部、8、11…曝気量演算部、9…曝気量制御部、10、20、30…制御装置、12…バイパスポンプ制御部、13…分配装置制御部、14…分配装置、21…曝気手段、22、23…送水手段、L1…原水送水ライン、L6…送気ライン、L7…送水ライン、L8…第1送水ライン、L9…第2送水ライン、P1…ポンプ、P2…バイパスポンプ
図1
図2
図3