特許第6822837号(P6822837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6822837膵内分泌細胞及びその製造方法、並びに分化転換剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6822837
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】膵内分泌細胞及びその製造方法、並びに分化転換剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20210121BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20210121BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20210121BHJP
【FI】
   C12N5/10ZNA
   C12N15/12
   !C12N5/071
【請求項の数】12
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-531476(P2016-531476)
(86)(22)【出願日】2015年7月3日
(86)【国際出願番号】JP2015069296
(87)【国際公開番号】WO2016002937
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2018年5月30日
(31)【優先権主張番号】特願2014-137719(P2014-137719)
(32)【優先日】2014年7月3日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502285457
【氏名又は名称】学校法人順天堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】松本 征仁
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 康司
(72)【発明者】
【氏名】菅原 泉
【審査官】 小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−245067(JP,A)
【文献】 特表2005−506072(JP,A)
【文献】 Mol. Cell. Biol.,2009年12月,Vol.29, No.24,p.6366-6379
【文献】 Mol. Cells,2012年 8月,Vol.34, No.2,p.193-200
【文献】 Diabetologia,2011年10月,Vol.54, No.10,p.2595-2605
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12N 1/00− 7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GLISファミリー遺伝子乃至その遺伝子産物と、Neurogenin3遺伝子乃至その遺伝子産物とを体細胞(ただし、膵内分泌細胞の前駆細胞を除く)に導入する導入工程を含み、
前記GLISファミリー遺伝子乃至その遺伝子産物が、GLIS1遺伝子乃至その遺伝子産物、及びGLIS3遺伝子乃至その遺伝子産物の少なくともいずれかであることを特徴とする膵内分泌細胞の製造方法。
【請求項2】
導入工程が、更にPdx1遺伝子乃至その遺伝子産物を体細胞に導入する請求項1に記載の膵内分泌細胞の製造方法。
【請求項3】
膵内分泌細胞が、iPS細胞を経ずに製造される請求項1から2のいずれかに記載の膵内分泌細胞の製造方法。
【請求項4】
体細胞が、繊維芽細胞及び間葉系幹細胞のいずれかである請求項1から3のいずれかに記載の膵内分泌細胞の製造方法。
【請求項5】
膵内分泌細胞が、β細胞である請求項1から4のいずれかに記載の膵内分泌細胞の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の膵内分泌細胞の製造方法(ただし、GLIS1遺伝子産物及びGLIS3遺伝子産物の少なくともいずれかと、Neurogenin3遺伝子産物とを体細胞に導入することを除く)により製造され
前記膵内分泌細胞の製造方法が、GLISファミリー遺伝子と、Neurogenin3遺伝子とを、レトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクターのいずれかを用いて、体細胞(ただし、膵内分泌細胞の前駆細胞を除く)に導入する導入工程を含むことを特徴とする膵内分泌細胞。
【請求項7】
膵内分泌細胞が、β細胞である請求項6に記載の膵内分泌細胞。
【請求項8】
体細胞(ただし、膵内分泌細胞の前駆細胞を除く)を膵内分泌細胞へ分化転換する分化転換剤であって、
GLISファミリー遺伝子乃至その遺伝子産物と、Neurogenin3遺伝子乃至その遺伝子産物とを含み、
前記GLISファミリー遺伝子乃至その遺伝子産物が、GLIS1遺伝子乃至その遺伝子産物、及びGLIS3遺伝子乃至その遺伝子産物の少なくともいずれかであることを特徴とする分化転換剤。
【請求項9】
更にPdx1遺伝子乃至その遺伝子産物を含む請求項8に記載の分化転換剤。
【請求項10】
体細胞が、iPS細胞を経ずに膵内分泌細胞に分化転換される請求項8から9のいずれかに記載の分化転換剤。
【請求項11】
体細胞が、繊維芽細胞及び間葉系幹細胞のいずれかである請求項8から10のいずれかに記載の分化転換剤。
【請求項12】
膵内分泌細胞が、β細胞である請求項8から11のいずれかに記載の分化転換剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体細胞から膵内分泌細胞を製造する膵内分泌細胞の製造方法、及び前記製造方法により製造された膵内分泌細胞、並びに体細胞を膵内分泌細胞へ分化転換する分化転換剤に関する。
【背景技術】
【0002】
膵内分泌細胞は、糖尿病の再生医療の材料として、また、糖尿病治療薬のスクリーニングに用いる材料などとして用いることが期待されている。前記再生医療の観点からは、例えば、インスリンが不足しているI型糖尿病の患者に対し、膵内分泌細胞の1つであり、インスリンを産生するβ細胞を投与することが期待されている。
そのため、膵内分泌細胞を、in vitroで大量に調製する方法の開発が強く求められている。
【0003】
これまでに、胚性幹細胞(embryonic stem cell、以下、「ES細胞」と称することがある)、又は人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell、以下、「iPS細胞」と称することがある)を用いてβ細胞を製造する方法が提案されている。しかしながら、前記方法では、細胞培養用の培地に様々な発生分化に関わる阻害剤を加えるなど培養環境を整える必要があり、煩雑であるという問題があり、また、再現性が得られない場合があるという問題もある。また、前記方法では、β細胞以外の細胞も製造されることから、効率面での問題もある。更に、β細胞を得るまでに、最低でも21日〜30日を要し、短期間で製造することができないという問題もある。
【0004】
したがって、簡便で再現が容易であり、生産効率に優れ、かつ短期間で製造することができる膵内分泌細胞の製造方法の速やかな提供が強く求められているのが現状である。
【0005】
なお、GLISファミリーであるGLIS1(GLIS family zinc finger 1)は、iPS細胞の樹立改善効率を改善することが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、GLIS3(GLIS family zinc finger 3)は、ヒト多分化性または多能性細胞を、インスリンを産生する機能的膵β細胞へ分化誘導するために用いることができることが知られている(例えば、特許文献2参照)。また、Ngn3(Neurogenin3)は、膵発生において、膵内分泌細胞内に一過性に発現することが知られている。
しかしながら、GLISファミリー及びNgn3が、幹細胞を経ずに、体細胞を直接膵内分泌細胞に変換することに関与することは、全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2013−519371号公報
【特許文献2】特表2009−533047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、簡便で再現が容易であり、生産効率に優れ、かつ短期間で製造することができる膵内分泌細胞の製造方法、及び前記製造方法により製造された膵内分泌細胞、並びに体細胞を膵内分泌細胞へ分化転換する分化転換剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> GLISファミリー遺伝子乃至その遺伝子産物と、Neurogenin3遺伝子乃至その遺伝子産物とを体細胞に導入する導入工程を含むことを特徴とする膵内分泌細胞の製造方法である。
<2> 前記<1>に記載の膵内分泌細胞の製造方法により製造されたことを特徴とする膵内分泌細胞である。
<3> 体細胞を膵内分泌細胞へ分化転換する分化転換剤であって、
GLISファミリー遺伝子乃至その遺伝子産物と、Neurogenin3遺伝子乃至その遺伝子産物とを含むことを特徴とする分化転換剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、簡便で再現が容易であり、生産効率に優れ、かつ短期間で製造することができる膵内分泌細胞の製造方法、及び前記製造方法により製造された膵内分泌細胞、並びに体細胞を膵内分泌細胞へ分化転換する分化転換剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、試験例1におけるウイルス感染12日間後のDsRed2陽性インスリン産生細胞数を測定した結果を示すグラフである。
図2A図2Aは、試験例2において、インスリン及びソマトスタチンの発現を解析した結果を示す図である。
図2B図2Bは、試験例2において、インスリン及びグルカゴンの発現を解析した結果を示す図である。
図2C図2Cは、試験例2において、インスリン及びPdx1の発現を解析した結果を示す図である。
図3A図3Aは、試験例3のdMEFにおける結果を示すグラフである。
図3B図3Bは、試験例3のHuman iPS(253G13−6)由来繊維芽細胞における結果を示すグラフである。
図3C図3Cは、試験例3のヒトHepG2における結果を示すグラフである。
図3D図3Dは、試験例3のマウスNIH−3T3における結果を示すグラフである。
図3E図3Eは、試験例3のヒト胎児繊維芽細胞における結果を示すグラフである。
図3F図3Fは、試験例3のヒト新生児繊維芽細胞における結果を示すグラフである。
図3G図3Gは、試験例3のヒトHEK293における結果を示すグラフである。
図4A図4Aは、試験例4の結果を示すグラフ−1である。
図4B図4Bは、試験例4の結果を示すグラフ−2である。
図4C図4Cは、試験例4の結果を示すグラフ−3である。
図4D図4Dは、試験例4の結果を示すグラフ−4である。
図5A図5Aは、試験例5におけるヒトT98Gグリオブラストーマにおける結果を示すグラフである。
図5B図5Bは、試験例5におけるヒト間葉系幹細胞における結果を示すグラフである。
図6A図6Aは、試験例6におけるマウス膵臓より単離した膵島の様子を示す図である。
図6B図6Bは、試験例6におけるウイルス溶液としてG1NP溶液を用い、dMEFへレトロウイルスを感染させた細胞の様子を示す図である。
図7図7は、試験例7のグルコース応答性インスリン分泌試験の結果を示すグラフである。
図8図8は、試験例8のグルコース応答性インスリン分泌試験の結果を示すグラフである。
図9図9は、試験例9の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(膵内分泌細胞及びその製造方法)
本発明の膵内分泌細胞は、本発明の膵内分泌細胞の製造方法により製造することができる。
以下、本発明の膵内分泌細胞の製造方法の説明と併せて本発明の膵内分泌細胞を説明する。
【0012】
<膵内分泌細胞の製造方法>
本発明の膵内分泌細胞の製造方法は、導入工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0013】
<<導入工程>>
前記導入工程は、GLISファミリー遺伝子乃至その遺伝子産物と、Ngn3遺伝子乃至その遺伝子産物とを体細胞に導入する工程である。
前記遺伝子産物とは、遺伝子から転写されるmRNA、前記mRNAから翻訳されるタンパク質をいう。
【0014】
−遺伝子乃至その遺伝子産物−
前記導入工程で体細胞に導入する遺伝子乃至その遺伝子産物は、GLISファミリー遺伝子乃至その遺伝子産物と、Ngn3遺伝子乃至その遺伝子産物とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の遺伝子乃至その遺伝子産物を含む。
【0015】
−−GLISファミリー遺伝子−−
前記GLISファミリー遺伝子の由来としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、マウスなどが挙げられる。
前記GLISファミリーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、GLIS1、GLIS2、GLIS3などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記GLISファミリーの中でも、膵内分泌細胞の生産効率に優れる点で、GLIS1、GLIS3が好ましく、GLIS1がより好ましい。
前記GLISファミリー遺伝子の配列情報は、公知のデータベースから得ることができ、例えば、NCBIでは、アクセッション番号が、NM_147193(ヒトGLIS1)、NM_147221(マウスGLIS1)、NM_032575(ヒトGLIS2)、NM_031184(マウスGLIS2)、NM_152629(ヒトGLIS3)、NM_175459、及びNM_172636(マウスGLIS3)で入手することができる。
【0016】
−−Ngn3遺伝子−−
前記Ngn3遺伝子の由来としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、マウスなどが挙げられる。
前記Ngn3遺伝子の配列情報は、公知のデータベースから得ることができ、例えば、NCBIでは、アクセッション番号NM_009719(マウス)、NM_020999(ヒト)で入手することができる。
【0017】
−−その他の遺伝子乃至その遺伝子産物−−
前記その他の遺伝子乃至その遺伝子産物としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、Pdx1遺伝子乃至その遺伝子産物が好ましい。
【0018】
−−−Pdx1遺伝子−−−
前記Pdx1遺伝子の由来としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、マウスなどが挙げられる。
前記Pdx1遺伝子の配列情報は、公知のデータベースから得ることができ、例えば、NCBIでは、アクセッション番号NM_000209(ヒト)、NM_008814(マウス)で入手することができる。
【0019】
前記GLISファミリー遺伝子乃至その遺伝子産物、Ngn3遺伝子乃至その遺伝子産物、及びその他の遺伝子乃至その遺伝子産物の配列は、前記各遺伝子の配列のうち、タンパク質に翻訳される部分のみからなる態様であってもよいし、タンパク質に翻訳される部分以外の部分を含む態様であってもよい。また、前記各遺伝子乃至その遺伝子産物の配列は、変異が含まれていてもよい。
前記変異としては、例えば、前記各遺伝子のタンパク質のアミノ酸配列に影響を与えない変異、前記各遺伝子のタンパク質のアミノ酸配列において、1個又は数個(2個〜5個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加される変異などが挙げられる。
前記各遺伝子乃至その遺伝子産物が変異を有する場合の野生型との配列相同性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、タンパク質に翻訳される部分の塩基配列において、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が特に好ましい。
【0020】
前記導入工程で体細胞に導入される遺伝子乃至その遺伝子産物の態様としては、GLISファミリー遺伝子乃至その遺伝子産物と、Ngn3遺伝子乃至その遺伝子産物とを少なくとも含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、より簡便で再現が容易であり、生産効率に優れ、かつ短期間で膵内分泌細胞を製造することができる点で、(1)GLISファミリー遺伝子乃至その遺伝子産物、及びNgn3遺伝子乃至その遺伝子産物からなる態様、(2)GLISファミリー遺伝子乃至その遺伝子産物と、Ngn3遺伝子乃至その遺伝子産物と、Pdx1遺伝子乃至その遺伝子産物とからなる態様が好ましい。
【0021】
−体細胞−
前記体細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記体細胞は未分化な前駆細胞であってもよいし、最終分化した成熟細胞であってもよい。
前記体細胞は、ES細胞由来、又はiPS細胞由来のものであってもよい。
【0022】
前記体細胞の具体例としては、脂肪組織由来間質(幹)細胞、神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、繊維芽細胞、肝細胞、上皮細胞、腎細胞、マクロファージ、リンパ球、筋肉細胞などが挙げられる。これらの中でも、繊維芽細胞、間葉系幹細胞、肝細胞、上皮細胞、腎細胞が好ましく、繊維芽細胞、間葉系幹細胞がより好ましい。
【0023】
前記体細胞を採取する個体の種としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、マウスなどが挙げられる。
前記体細胞を採取する個体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、得られる膵内分泌細胞を再生医療用途に用いる場合には、拒絶反応の観点から、個体自身、又はMHCの型が同一若しくは実質的に同一の他個体が好ましい。ここで、前記MHCの型が実質的に同一とは、免疫抑制剤などの使用により、前記体細胞由来の膵内分泌細胞を個体に移植した場合に移植細胞が生着可能な程度にMHCの型が一致していることをいう。
前記体細胞を採取する個体の時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0024】
前記体細胞の培養条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培養温度は約37℃、CO濃度は約2%〜5%などが挙げられる。
前記体細胞の培養に用いる培地としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5質量%〜20質量%の血清を含む、最小必須培地(以下、「MEM」と称することがある)、ダルベッコ変法イーグル培地(以下、「DMEM」と称することがある)、RPMI1640培地、199培地、F12培地などが挙げられる。
【0025】
−導入方法−
前記各遺伝子乃至その遺伝子産物を体細胞に導入方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベクターを用いる方法、合成したmRNA(メッセンジャーRNA)を用いる方法、組換えタンパク質を用いる方法などが挙げられる。
【0026】
−−ベクター−−
前記ベクターとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウイルスベクター、非ウイルスベクターなどが挙げられる。
前記ウイルスベクターの具体例としては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが挙げられる。
前記非ウイルスベクターの具体例としては、プラスミドベクター、エピゾーマルベクターなどが挙げられる。
【0027】
前記ベクターを前記体細胞に導入する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法を適宜選択することができる。
例えば、前記レトロウイルスベクターを用いる場合の方法は、国際公開第2007/69666号、Cell, 126, 663−676 (2006)、Cell, 131, 861−872(2007)などに記載の方法を用いることができ、前記レンチウイルスベクターを用いる場合の方法は、Science, 318, 1917−1920(2007)などに記載の方法を用いることができる。
また、前記プラスミドベクターを用いる場合の方法は、Science, 322, 949−953(2008)などに記載の方法を用いることができ、前記エピゾーマルベクターを用いる場合の方法は、Science, 324: 797−801(2009)、Biochemical and Biophysical Research Communications, 426: 141−147 (2012)などに記載の方法を用いることができる。
【0028】
前記ウイルスベクターを用いる場合には、パッケージング細胞を用いて得られたウイルス粒子を用いてもよい。
前記パッケージング細胞は、ウイルスの構造タンパク質をコードする遺伝子を導入した細胞であり、該細胞に目的遺伝子を組み込んだ組換えウイルスベクターを導入すると、該目的遺伝子を組み込んだ組換えウイルス粒子を産生する。
前記パッケージング細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト腎臓由来のHEK293細胞やマウス繊維芽細胞由来のNIH3T3細胞をベースとしたパッケージング細胞、長期にわたって高力価のウイルスを産生できるウイルス構造タンパク質gag−pol及びenvをMoMuLV(Moloney Murine Leukemia Virus) LTR(long terminal repeats)のコントロール下で発現させているパッケージング細胞Platinum−E(以下、「Plat−E細胞」と称することがある)、Amphotropic virus由来エンベロープ糖タンパク質を発現するよう設計されているPLAT−A細胞、水疱性口内炎ウイルス由来エンベロープ糖タンパク質を発現するよう設計されているPLAT−GP細胞などが挙げられる。
前記パッケージング細胞へのウイルスベクターの導入方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法などが挙げられる。
前記得られたウイルス粒子を前記体細胞へ感染させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリブレン法が挙げられる。
【0029】
前記ベクターは、前記各遺伝子の導入を確認するためのマーカー遺伝子を含んでいてもよい。
前記マーカー遺伝子とは、該マーカー遺伝子を細胞に導入することにより、細胞の選別や選択を可能とするような遺伝子をいう。前記マーカー遺伝子の具体例としては、薬剤耐性遺伝子、蛍光タンパク質遺伝子、発光酵素遺伝子、発色酵素遺伝子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記薬剤耐性遺伝子の具体例としては、ネオマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子などが挙げられる。
前記蛍光タンパク質遺伝子の具体例としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子、黄色蛍光タンパク質(YFP)遺伝子、赤色蛍光タンパク質(RFP)遺伝子などが挙げられる。
前記発光酵素遺伝子の具体例としては、ルシフェラーゼ遺伝子などが挙げられる。
前記発色酵素遺伝子の具体例としては、βガラクトシターゼ遺伝子、βグルクロニダーゼ遺伝子、アルカリフォスファターゼ遺伝子などが挙げられる。
【0030】
前記ベクターを用いて前記各遺伝子を体細胞に導入する方法では、1つのベクターに1つの遺伝子を組み込んでもよいし、2つ以上の遺伝子を組み込んでもよい。前記1つのベクターに2つ以上の遺伝子を組み込むことにより、該2つ以上の遺伝子を同時に発現(以下、「共発現」と称することがある)させることができる。
【0031】
前記1つのベクターに2つ以上の遺伝子を組み込む方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記2つ以上の遺伝子を、連結配列を通じて組み込むことが好ましい。
前記連結配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、口蹄疫ウイルス(Picornaviridae Aphthovirus)由来2Aペプチドをコードする遺伝子配列、IRES(internal ribosome entry sites)などが挙げられる。
【0032】
前記mRNAを前記体細胞に導入する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択して用いることができる。
前記組換えタンパク質を前記体細胞に導入する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択して用いることができる。
【0033】
前記各遺伝子乃至その遺伝子産物の体細胞への導入回数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1回であってもよいし、2回以上であってもよい。
前記各遺伝子乃至その遺伝子産物の体細胞への導入時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記各遺伝子乃至その遺伝子産物の全てを同時期に導入してもよいし、異なる時期に導入してもよい。
前記各遺伝子乃至その遺伝子産物の体細胞への導入量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、全ての遺伝子乃至その遺伝子産物を等量導入してもよいし、異なる量導入してもよい。
【0034】
前記遺伝子乃至その遺伝子産物は、同一の遺伝子乃至その遺伝子産物について、遺伝子のみを用いる態様であってもよいし、遺伝子産物のみを用いる態様であってもよいし、両者を用いる態様であってもよい。
異なる遺伝子乃至その遺伝子産物との組合せとしても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、各遺伝子乃至その遺伝子産物について、同じものを使用してもよいし、異なるものを使用してもよい。
【0035】
前記遺伝子乃至その遺伝子産物導入工程では、本発明の効果を損なわない限り、前記遺伝子乃至その遺伝子産物以外の物を導入してもよい。
【0036】
<<その他の工程>>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記各遺伝子乃至その遺伝子産物が導入された体細胞を培養する遺伝子乃至その遺伝子産物導入細胞培養工程などが挙げられる。
【0037】
−遺伝子乃至その遺伝子産物導入細胞培養工程−
前記遺伝子乃至その遺伝子産物導入細胞培養工程は、前記各遺伝子乃至その遺伝子産物が導入された体細胞を培養する工程である。
前記遺伝子乃至その遺伝子産物導入細胞の培養条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培養温度は約37℃、CO濃度は約2%〜5%などが挙げられる。
前記遺伝子乃至その遺伝子産物導入細胞の培養に用いる培地としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5質量%〜20質量%の血清を含む、MEM、DMEM、RPMI1640培地、199培地、F12培地などが挙げられる。
前記遺伝子乃至その遺伝子産物導入細胞培養工程の期間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記培地の交換頻度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2日間〜3日間毎に交換するなどが挙げられる。
【0038】
<膵内分泌細胞>
前記膵内分泌細胞の製造方法により、膵内分泌細胞が製造されたか否かを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、膵内分泌細胞が発現するタンパク質の発現を確認する方法、膵内分泌細胞が発現する遺伝子の発現を確認する方法などが挙げられる。
例えば、膵内分泌細胞のα細胞が製造されたか否かは、グルカゴンの発現の有無により確認することができ、β細胞が製造されたか否かは、インスリンの発現の有無により確認することができ、δ細胞が製造されたか否かは、ソマトスタチンの発現の有無により確認することができる。
前記タンパク質の発現を確認する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、免疫染色により確認することができる。
前記遺伝子の発現を確認する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、定量PCRにより確認することができる。
【0039】
本発明の膵内分泌細胞の製造方法によれば、分化転換により、体細胞から膵内分泌細胞を製造することができるため、腫瘍形成のリスクを有するiPS細胞を経ずに膵内分泌細胞を製造することができる点で、有利である。
なお、前記分化転換とは、ある細胞型から他の細胞型へ、幹細胞を経ずに直接変換することをいう。
【0040】
また、本発明の膵内分泌細胞の製造方法は、体細胞に遺伝子乃至その遺伝子産物を導入するという簡便で、且つ再現が容易な方法でありながら、膵内分泌細胞を短期間で、効率良く生産することができる。また、本発明の膵内分泌細胞の製造方法によれば、培地中に発生阻害剤等を添加するなどの培養環境を整える処理を行うなどの特殊な培地を用いることなく、膵内分泌細胞を製造することができる点でも、有利である。
【0041】
前記膵内分泌細胞は、α細胞であってもよいし、β細胞であってもよいし、δ細胞であってもよいし、これらの混合物であってもよい。これらの中でも、糖尿病患者に対する再生医療の観点からは、β細胞が好ましい。
【0042】
本発明の膵内分泌細胞は、糖尿病治療薬のスクリーニングに用いる膵内分泌細胞などととして好適に利用可能である、
【0043】
(分化転換剤)
本発明の分化転換剤は、体細胞を膵内分泌細胞へ分化転換する分化転換剤であって、GLISファミリー遺伝子乃至その遺伝子産物と、Ngn3遺伝子乃至その遺伝子産物とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の構成を含む。
【0044】
<体細胞>
前記分化転換剤が対象とする体細胞は、前記膵内分泌細胞の製造方法の項目に記載したものと同様であり、好ましい態様も同様である。
【0045】
<膵内分泌細胞>
前記分化転換剤により得られる膵内分泌細胞は、前記膵内分泌細胞の製造方法の項目に記載したものと同様であり、好ましい態様も同様である。
【0046】
<GLISファミリー遺伝子乃至その遺伝子産物>
前記GLISファミリー遺伝子乃至その遺伝子産物は、前記膵内分泌細胞の製造方法の項目に記載したものと同様であり、好ましい態様も同様である。また、前記GLISファミリー遺伝子乃至その遺伝子産物は、前記膵内分泌細胞の製造方法の項目に記載したものと同様の変異が含まれていてもよい。
前記分化転換剤における前記GLISファミリー遺伝子乃至その遺伝子産物の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、遺伝子がベクターに組み込まれている態様、合成mRNAの態様、組換えタンパク質の態様などが挙げられる。
前記ベクターとしては、前記膵内分泌細胞の製造方法の項目に記載したものと同様のものが挙げられる。
前記合成mRNA、前記組換えタンパク質は、公知の方法により製造することができる。
【0047】
<Ngn3遺伝子乃至その遺伝子産物>
前記Ngn3遺伝子乃至その遺伝子産物は、前記膵内分泌細胞の製造方法の項目に記載したものと同様である。また、前記Ngn3遺伝子乃至その遺伝子産物は、前記膵内分泌細胞の製造方法の項目に記載したものと同様の変異が含まれていてもよい。
前記分化転換剤における前記Ngn3遺伝子乃至その遺伝子産物の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、遺伝子がベクターに組み込まれている態様、合成mRNAの態様、組換えタンパク質の態様などが挙げられる。
前記ベクターとしては、前記膵内分泌細胞の製造方法の項目に記載したものと同様のものが挙げられる。
前記合成mRNA、前記組換えタンパク質は、公知の方法により製造することができる。
【0048】
<その他の構成>
前記その他の構成としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、Pdx1遺伝子乃至その遺伝子産物を含むことが好ましい。
【0049】
前記Pdx1遺伝子乃至その遺伝子産物は、前記膵内分泌細胞の製造方法の項目に記載したものと同様である。また、前記Pdx1遺伝子乃至その遺伝子産物は、前記膵内分泌細胞の製造方法の項目に記載したものと同様の変異が含まれていてもよい。
前記分化転換剤における前記Pdx1遺伝子乃至その遺伝子産物の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、遺伝子がベクターに組み込まれている態様、合成mRNAの態様、組換えタンパク質の態様などが挙げられる。
前記ベクターとしては、前記膵内分泌細胞の製造方法の項目に記載したものと同様のものが挙げられる。
前記合成mRNA、前記組換えタンパク質は、公知の方法により製造することができる。
【0050】
前記分化転換剤は、前記各遺伝子乃至その遺伝子産物が、個別の容器に分けられている態様であってもよいし、1つの容器にまとめられている態様であってもよいし、任意の数ごとに容器にまとめられている態様であってもよい。
前記分化転換剤における前記各遺伝子乃至その遺伝子産物の量としては、特に制限はなく、全ての遺伝子乃至その遺伝子産物を等量としてもよいし、異なる量としてもよい。
【0051】
前記分化転換剤は、膵内分泌細胞製造用キットの構成として、好適に用いることができる。
前記膵内分泌細胞製造用キットは、前記分化転換剤を少なくとも含み、更に必要に応じてその他の構成を含む。
前記膵内分泌細胞製造用キットにおけるその他の構成としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パッケージング細胞、培地などが挙げられる。
前記パッケージング細胞、培地としては、前記膵内分泌細胞の製造方法の項目に記載したものと同様のものが挙げられる。
【実施例】
【0052】
以下、試験例を挙げて、本発明を説明するが、本発明は、以下の試験例に何ら限定されるものではない。
【0053】
(試験例1:マウス繊維芽細胞からの膵内分泌細胞の製造−1)
<細胞の調製>
以下のようにして、体細胞の1種である2重蛍光標識されたマウス胎児繊維芽細胞(dual−labeled−mouse embryonic fibroblast、以下、「dMEF」と称することがある)を調製した。
【0054】
−膵内分泌前駆細胞をGFPで蛍光標識した遺伝子改変マウスの作製−
膵内分泌前駆細胞をGFPで蛍光標識した遺伝子改変マウス(Ngn3遺伝子のプロモーター制御下にEGFPを発現するマウス(Ngn3−eGFP))を以下のようにして作製した。
BACクローンから単離したNgn3遺伝子のプロモーター(5kb)の下流に、GFPと核移行シグナル(以下、「nls」と称することがある)との融合タンパク質遺伝子を繋げたコンストラクトを約400個の受精卵へマイクロインジェクションし、膵内分泌前駆細胞をGFPで蛍光標識した遺伝子改変マウスを作製した。
【0055】
−膵β細胞をDsRed2で蛍光標識した遺伝子改変マウスの作製−
膵β細胞をDsRed2で蛍光標識した遺伝子改変マウス(ラットインスリンプロモーター制御下にDsRed2を発現するマウス(Ins−DsR))を以下のようにして作製した。
ラットインスリン遺伝子のプロモーター(800bp)の下流に、DsRed2遺伝子を繋げたコンストラクトを約400個の受精卵へマイクロインジェクションし、膵β細胞をDsRed2で蛍光標識した遺伝子改変マウスを作製した。
【0056】
−2重蛍光標識マウス胎児繊維芽細胞の作製−
前記膵内分泌前駆細胞をGFPで蛍光標識した遺伝子改変マウスと、前記膵β細胞をDsRed2で蛍光標識した遺伝子改変マウスとを交配させた後、産仔マウス(ヘテロ)の雌と雄とを交配し、ゲノミックサザン法によってホモ化された2重蛍光標識遺伝子改変マウス(Ngn3−eGFP/Ins−DsR)を作出した。前記ホモ化された2重蛍光標識遺伝子改変マウスの雌と雄とを交配(2ペア)し、胎生期14.5日目の胎児16匹をピンセットで子宮より摘出し、クリーンベンチ内にて10mLのリン酸緩衝食塩水(カナマイシン 10mg/mL含有)入り10cmペトリ皿で血液を洗浄後、10mLのDMEM(シグマ社製、#D5796;ペニシリン、ストレプトマイシン、10%FBS含有)入り10cm細胞培養ディッシュ(TPP社製、#93150)内にて胎児をハサミで細切した。細切した胎児組織を15mLチューブへ移し、1.4krpmで4分間、室温で遠心し、上清を捨て、ペレットに0.25%トリプシン含有EDTA溶液(和光純薬工業株式会社製、#201−16945) 1mL(0.25%DNase I含有)を加えて懸濁後、37℃のウォーターバスでインキュベートした。10分間おきに手で攪拌した。5mLのDMEM(10%FBS含有)を15mLチューブへ入れ、1匹分の胎児組織断片をよく懸濁し、5mLのDMEM入り10cm細胞培養皿へ移して、37℃、5%COインキュベータで培養し、翌日10mLのDMEM(10%FBS含有)を入れ替え、以降は2日間に一度培地を交換した。約4日間後から5日間後、10cm培養皿いっぱいに増えたdMEFを6mLのリン酸緩衝食塩水(以下、「PBS」と称することがある)で洗浄後、1mLの0.25%トリプシン含有EDTA溶液を入れ、37℃、5%COインキュベータ内で2分間後、細胞が剥がれたことを確認した後、10mLのDMEM(10%FBS含有)を入れよく懸濁し、培養皿1枚分のdMEFを新たな10cm培養皿5枚に播種し、更に培養した。5日間から6日間後、dMEFがコンフルエントに増殖したことを確認し、6mLのPBSで洗浄後、1mLの0.25%トリプシン/EDTA溶液を入れ、37℃、5%COインキュベータ内で2分間後、細胞が剥がれたことを確認した後、6mLのDMEM(10%FBS含有)を入れ、よく懸濁し、50mLチューブに入れ、1.4krpmで4分間、室温で遠心後に上清を捨て、細胞ペレットに10mLのセルバンカー(タカラバイオ株式会社製、#CB011)を加えて、懸濁後、0.5mLずつバイアルチューブへ分注し、−145℃の超低温フリーザー内にて保管した。
【0057】
<レトロウイルスの作製>
長期にわたって高力価のウイルスを産生できるウイルス構造タンパク質gag−pol及びenvをMoMuLV LTRのコントロール下で発現させているPlat−E細胞と、プラスミドDNA(pMXベクター又はpMX−puroベクター)とを用い、以下のようにしてレトロウイルスを作製した(Onishi,M.,et.al.,Exp.Hematol.24,324−329,1996)。
【0058】
−プラスミドDNAの調製−
[pMX−GFPベクター]
pMX−GFPベクターは、GFPタンパク質の全長をコードする遺伝子をpMXベクター及びpMXpuroべクター(東京大学医学研究所より入手)のマルチクローニングサイトに組み込んだものである。なお、前記GFPタンパク質の全長をコードする遺伝子の配列は、NCBIでは、アクセッション番号L29345で登録されている。
【0059】
[pMX−GLIS1ベクター]
pMX−GLIS1ベクターは、GLIS1タンパク質の全長をコードする遺伝子をpMXベクター(Addgeneより入手)のマルチクローニングサイトに組み込んだものである。なお、前記GLIS1タンパク質の全長をコードする遺伝子の配列は、NCBIでは、アクセッション番号NM_147221で登録されている。
【0060】
[pMX−Neurogenin3ベクター]
pMX−Neurogenin3ベクターは、Neurogenin3タンパク質の全長をコードする遺伝子をpMXベクター(東京大学医学研究所より入手)のマルチクローニングサイトに組み込んだものである。なお、前記Neurogenin3タンパク質の全長をコードする遺伝子の配列は、NCBIでは、アクセッション番号NM_009719で登録されている。
【0061】
[pMX−Pdx1ベクター]
pMX−Pdx1ベクターは、Pdx1タンパク質の全長をコードする遺伝子をpMXベクター(東京大学医学研究所より入手)のマルチクローニングサイトに組み込んだものである。なお、前記Pdx1タンパク質の全長をコードする遺伝子の配列は、NCBIでは、アクセッション番号NM_008814で登録されている。
【0062】
−レトロウイルスの作製−
PBSで10倍希釈したPoly−L−Lysine(シグマ社製、P8920)で、コート処理(37℃、5%COで1時間)した6ウェルプレート(TPP社製、92406)に、Plat−E細胞を1ウェルあたり8×10細胞数播種し、一晩培養した。
翌日、前記プラスミドDNA 4μgを250μLのOPTI−MEM(登録商標)(ライフテクノロジーズ社製、11058021)が入った1.5mLチューブへ入れ、タッピングで混和して室温で5分間放置した(以下、「プラスミド/OPTI−MEM溶液」と称することがある)。一方、250μLのOPTI−MEM入りの別の1.5mLチューブへ、リポフェクタミン(登録商標) 2000(LP2000)(ライフテクノロジーズ社製、11668500)を10μL入れ、混和して室温5分間放置した(以下、「LP2000/OPTI−MEM溶液」と称することがある)。前記プラスミド/OPTI−MEM溶液と、前記LP2000/OPTI−MEM溶液とをよく混和し、室温で20分間静置した(以下、「プラスミド/LP2000/OPTI−MEM混合液」と称することがある)。
リポソームDNA複合体を形成させた前記プラスミド/LP2000/OPTI−MEM混合液を前日播種したPlat−E細胞を培養する6ウェルプレートの1ウェルへ添加(トランスフェクション)した。混和後、37℃、5%COインキュベータ内で一晩培養した。24時間後、培地交換を行い、新たに1.5mLのDMEM(10%FBS含有)を添加し、さらに24時間培養した。
トランスフェクション後48時間でウイルス粒子を含む培養上清を2.5mLシリンジ(テルモ株式会社製、SS−02SZ)で回収し、0.45フィルター(ワットマン社製、プラディスクFP30(CA−S0.45μm)、10462100)でPlat−E細胞を除去し、ウイルス粒子を含む培養上清を2.0mLチューブへ移した。
以上により、pMX−GLIS1ベクター由来のウイルス溶液、pMX−Neurogenin3ベクター由来のウイルス溶液、pMX−Pdx1ベクター由来のウイルス溶液、及びpMX−GFPベクター由来のウイルス溶液を得た。
【0063】
<導入>
前記dMEFへ前記レトロウイルスを感染させることにより、遺伝子を細胞に導入した。感染は、以下のようにして行った。
前記dMEFを12ウェルプレートへ、1ウェルあたり1×10細胞数播種した。
翌日、前記レトロウイルスの作製に記載のようにして回収したウイルス粒子を含む培養上清に、8mg/mLポリブレン溶液(シグマ社製、107689)を最終濃度8μg/mLになるよう添加した。前記dMEFの培養上清を吸引して除去後、下記のウイルス溶液を12ウェルプレートの1ウェルあたり200μL加えた。各々のウェルのウイルス溶液が均一になるように、ポリブレン8μg/mLを含むDMEM(10%FBS含有)溶液で調整した。ウイルス溶液添加後、37℃、5%COインキュベータ内で培養した。培養中は、2日間又は3日間毎に培地交換を行った。
[ウイルス溶液]
(1)pMX−GLIS1ベクター由来のウイルス溶液(以下、「G1溶液」と称することがある)
(2)pMX−Neurogenin3ベクター由来のウイルス溶液(以下、「N溶液」と称することがある)
(3)pMX−Pdx1ベクター由来のウイルス溶液(以下、「P溶液」と称することがある)
(4)pMX−Neurogenin3ベクター由来のウイルス溶液及びpMX−Pdx1ベクター由来のウイルス溶液(以下、「NP溶液」と称することがある)
(5)pMX−GLIS1ベクター由来のウイルス溶液及びpMX−Neurogenin3ベクター由来のウイルス溶液(以下、「G1N溶液」と称することがある)
(6)pMX−GLIS1ベクター由来のウイルス溶液及びpMX−Pdx1ベクター由来のウイルス溶液(以下、「G1P溶液」と称することがある)
(7)pMX−GLIS1ベクター由来のウイルス溶液、pMX−Neurogenin3ベクター由来のウイルス溶液、及びpMX−Pdx1ベクター由来のウイルス溶液(以下、「G1NP溶液」と称することがある)
(8)pMX−GFPベクター由来のウイルス溶液(コントロール、以下、「GFP CTL溶液」と称することがある)
【0064】
<dMEF由来インスリン産生細胞の観察、及び細胞数の決定>
前記導入を行い、培養数日後にDsRed2陽性インスリン産生細胞を蛍光顕微鏡(カールツアイスAxiovert200M)装置で観察、撮影を行った。
統計解析は、Hoechst33342(ライフテクノロジーズ社製、H1399)を最終濃度0.1μg/mlになるようにウェルに添加後、37℃、5%COインキュベータ内で30分間以上培養した細胞培養マルチウェルプレートをハイエンド細胞イメージング装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、ArrayScan XTI)を用いて、各ウェルに対して対物レンズ10倍設定にて100視野を撮影し、100視野中の全細胞数中のDsRed2陽性インスリン産生細胞数を測定した。
【0065】
<結果−1>
前記導入の2日間後に蛍光顕微鏡(カールツアイスAxiovert200M)装置で観察を行ったところ、ウイルス溶液として、G1N溶液を用いた場合、及びG1NPを用いた場合に、DsRed2の蛍光が観察された。したがって、ウイルス溶液として、G1N溶液を用いた場合、及びG1NPを用いた場合には、2日間という短期間で、膵内分泌細胞であるβ細胞を繊維芽細胞から製造できることが示された。
【0066】
<結果−2>
前記導入の12日間後に前記統計解析を行った結果を図1に示す。図1中、横軸は、使用したウイルス溶液を示し、左から順に、G1溶液、N溶液、P溶液、NP溶液、G1N溶液、G1NP溶液の結果を示す。なお、縦軸は、1ウェルあたりのDsRed2陽性インスリン産生細胞数を示す。
図1の結果から、体細胞に、(I)GLIS1遺伝子、及びNgn3遺伝子を導入した場合、並びに(II)GLIS1遺伝子と、Ngn3遺伝子と、Pdx1遺伝子とを導入した場合に膵内分泌細胞であるβ細胞数が顕著に増加していた。したがって、体細胞に、(I)GLIS1遺伝子、及びNgn3遺伝子を導入するか、(II)GLIS1遺伝子と、Ngn3遺伝子と、Pdx1遺伝子とを導入することにより、体細胞から膵内分泌細胞を大量に製造できることが示された。
【0067】
<結果−3>
前記導入の17日間後に前記統計解析を行った結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1の結果から、体細胞に、(I)GLIS1遺伝子、及びNgn3遺伝子を導入した場合、並びに(II)GLIS1遺伝子と、Ngn3遺伝子と、Pdx1遺伝子とを導入した場合には、全細胞における膵内分泌細胞であるβ細胞数の割合が高くなっていた。したがって、体細胞に、(I)GLIS1遺伝子、及びNgn3遺伝子を導入するか、(II)GLIS1遺伝子と、Ngn3遺伝子と、Pdx1遺伝子とを導入することにより、体細胞から膵内分泌細胞を効率良く製造できることが示された。
【0070】
(試験例2:マウス繊維芽細胞からの膵内分泌細胞の製造−2)
<細胞の調製>
試験例1と同様にして、dMEFを調製した。
【0071】
<レトロウイルスの作製>
試験例1と同様にして、pMX−GLIS1ベクター由来のウイルス溶液、pMX−Neurogenin3ベクター由来のウイルス溶液、及びpMX−Pdx1ベクター由来のウイルス溶液を作製した。
【0072】
<導入>
ウイルス溶液としてG1NP溶液を用い、試験例1と同様にして、前記dMEFへ前記レトロウイルスを感染させることにより、遺伝子を細胞に導入した。
【0073】
<免疫染色解析>
前記導入の21日間後の細胞を用い、以下のようにして免疫染色を行い、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、及びPdx1の発現を調べた。
細胞を4% パラホルムアルデヒド溶液内にて10分間室温で固定した後、0.2% Triton−X/PBS溶液に浸し室温で10分間処理し、4倍希釈したブロッキングONE溶液(ナカライテスク株式会社製)にて室温で1時間処理後、抗インスリン抗体(400倍希釈、モルモット、DAKO社製)、抗グルカゴン抗体(400倍希釈、ウサギ、DAKO社製)、抗ソマトスタチン抗体(500倍希釈、ウサギ、DAKO社製)、又は抗Pdx1抗体(1,000倍希釈、ウサギ、米国バンダービルト大学より入手)を用いて1次抗体反応を4℃で一晩行った後、PBSにて室温で5分間の洗浄を3回繰り返した。2次抗体反応は、AlexaFluor−Cy3標識抗ウサギ抗体(400倍希釈、Invitrogen社製)、又はAlexaFluor−488標識抗モルモット抗体(400倍希釈、Invitrogen社製)を用いて、室温で1時間反応させ、PBSにて5分間の洗浄を3回繰り返した後、倒立型蛍光顕微鏡(カールツアイスAxiovert200M)にて観察、写真撮影を行った。
【0074】
免疫染色解析の結果を図2A図2Cに示す。図2Aは、インスリン及びソマトスタチンの発現を解析した結果を示し、図2Bは、インスリン及びグルカゴンの発現を解析した結果を示し、図2Cは、インスリン及びPdx1の発現を解析した結果を示す。図2A図2C中、実線の矢印は、インスリンの発現が確認された細胞を示す。図2A図2Cにおける点線の矢印は、図2Aではソマトスタチン、図2Bではグルカゴン、図2CではPdx1の発現が確認された細胞を示す。
図2A図2Cの結果から、膵内分泌細胞であるα細胞が発現するグルカゴン、β細胞が発現するインスリン、δ細胞が発現するソマトスタチンのタンパク質レベルでの発現が確認された。また、膵臓の発生に必須であるPdx1のタンパク質レベルでの発現も確認された。
したがって、本発明の製造方法により、インスリン産生細胞であるβ細胞のみならず、α細胞及びδ細胞も製造できることが示された。
【0075】
(試験例3:各種体細胞からの膵内分泌細胞の製造−1)
<細胞の調製>
以下の細胞を用意した。
(1)dMEF
試験例1と同様にして調製した。
(2)Human iPS(253G13−6)由来繊維芽細胞
理化学研究所BRCより入手した。
(3)ヒトHepG2(ヒト肝癌由来細胞株)
理化学研究所BRCより入手した。
(4)マウスNIH−3T3(マウスの胎児皮膚から分離した培養細胞)
理化学研究所BRCより入手した。
(5)ヒト胎児繊維芽細胞(FHDF)
東洋紡株式会社より入手した。
(6)ヒト新生児繊維芽細胞(NHDF)
宝酒造株式会社より入手した。
(7)ヒトHEK293(ヒト胎児腎細胞をアデノウイルスのE1遺伝子によりトランスフォーメーションして樹立された細胞株)
理化学研究所BRCより入手した。
【0076】
<レトロウイルスの作製>
−マウス細胞用レトロウイルスの作製−
試験例1と同様にして、マウス細胞用のpMX−GLIS1ベクター由来のウイルス溶液、pMX−Neurogenin3ベクター由来のウイルス溶液、及びpMX−GFPベクター由来のウイルス溶液を作製した。
【0077】
−ヒト細胞用レトロウイルスの作製−
長期にわたって高力価のウイルスを産生できるウイルス構造タンパク質gag−pol及びenvをMoMuLV LTRのコントロール下で発現させているPlat−GP細胞と、プラスミドDNA(pMXベクター又はpMX−puroベクター、VSVGベクター)とを用い、以下のようにしてレトロウイルスを作製した(Onishi,M.,et.al.,Exp.Hematol.24,324−329,1996)。
【0078】
−−プラスミドDNAの調製−−
[pMX−GFPベクター]
試験例1と同様にして、pMX−GFPベクターを調製した。
【0079】
[pMX−GLIS1ベクター]
試験例1において、アクセッション番号NM_147221で登録されているGLIS1タンパク質の全長をコードする遺伝子の配列を用いていた点を、アクセッション番号NM_147193で登録されているGLIS1タンパク質の全長をコードする遺伝子の配列に代えた以外は、試験例1と同様にして、pMX−GLIS1ベクターを調製した。
【0080】
[pMX−Neurogenin3ベクター]
試験例1において、アクセッション番号NM_009719で登録されているNeurogenin3タンパク質の全長をコードする遺伝子の配列を用いていた点を、アクセッション番号NM_020999で登録されているNeurogenin3タンパク質の全長をコードする遺伝子の配列に代えた以外は、試験例1と同様にして、pMX−Neurogenin3ベクターを調製した。
【0081】
[pMX−Pdx1ベクター]
試験例1において、アクセッション番号NM_008814で登録されているPdx1タンパク質の全長をコードする遺伝子の配列を用いていた点を、アクセッション番号NM_000209で登録されているPdx1タンパク質の全長をコードする遺伝子の配列に代えた以外は、試験例1と同様にして、pMX−Pdx1ベクターベクターを調製した。
【0082】
−−レトロウイルスの作製−−
PBSで10倍希釈したPoly−L−Lysine(シグマ社製、P8920)で、コート処理(37℃、5%COで1時間)した6ウェルプレート(TPP社製、92406)に、Plat−GP細胞を1ウェルあたり8×10細胞数播種し、一晩培養した。
翌日、前記プラスミドDNA 4μg(pMXベクターを2μg、VSVGベクターを2μg)を250μLのOPTI−MEM(登録商標)(ライフテクノロジーズ社製、11058021)が入った1.5mLチューブへ入れ、タッピングで混和して室温で5分間放置した(以下、「プラスミド/OPTI−MEM溶液」と称することがある)。一方、250μLのOPTI−MEM入りの別の1.5mLチューブへ、リポフェクタミン(登録商標) 2000(LP2000)(ライフテクノロジーズ社製、11668500)を10μL入れ、混和して室温5分間放置した(以下、「LP2000/OPTI−MEM溶液」と称することがある)。前記プラスミド/OPTI−MEM溶液と、前記LP2000/OPTI−MEM溶液とをよく混和し、室温で20分間静置した(以下、「プラスミド/LP2000/OPTI−MEM混合液」と称することがある)。
リポソームDNA複合体を形成させた前記プラスミド/LP2000/OPTI−MEM混合液を前日播種したPlat−GP細胞を培養する6ウェルプレートの1ウェルへ添加(トランスフェクション)した。混和後、37℃、5%COインキュベータ内で一晩培養した。24時間後、培地交換を行い、新たに1.5mLのDMEM(10%FBS含有)を添加し、さらに24時間培養した。
トランスフェクション後48時間でウイルス粒子を含む培養上清を2.5mLシリンジ(テルモ株式会社製、SS−02SZ)で回収し、0.45フィルター(ワットマン社製、プラディスクFP30(CA−S0.45μm)、10462100)でPlat−GP細胞を除去し、ウイルス粒子を含む培養上清を2.0mLチューブへ移した。
以上により、ヒト細胞用のpMX−GLIS1ベクター由来のウイルス溶液、pMX−Neurogenin3ベクター由来のウイルス溶液、pMX−Pdx1ベクター由来のウイルス溶液、及びpMX−GFPベクター由来のウイルス溶液を得た。
【0083】
<導入>
ウイルス溶液としてG1N溶液、又はGFP CTL溶液を用い、試験例1と同様にして、前記各細胞へ前記レトロウイルスを感染させることにより、遺伝子を細胞に導入した。
【0084】
<定量PCR解析>
前記導入の20日間後の細胞を用い、以下のようにして定量PCR解析を行い、GAPDH遺伝子に対するインスリン遺伝子の相対発現量を調べた。
前記細胞を細胞溶解液に懸濁し、SuperPrepTM Cell Lysis & RT Kit for qPCR(東洋紡株式会社製、#SCQ−101)、又はSV 96 Total RNA Isolation System(Promega社製、#Z3505)、ReverTraAce qPCR RT Master Mix with gDNA Remover(東洋紡株式会社製、#FSQ−301)にてRNA調製及びcDNA合成を行った後、GeneAce SYBR qPCR Mixα(日本ジーン株式会社製)を用いて定量PCRを行った。
なお、定量PCRに用いたプライマーは、以下のとおりである。
−マウスGAPDH遺伝子−
フォワード: 5’−tggagaaacctgccaagtatg−3’(配列番号1)
リバース: 5’−ggagacaacctggtcctcag−3’(配列番号2)
−マウスインスリン2遺伝子−
フォワード: 5’−tttgtcaagcagcacctttg−3’(配列番号3)
リバース: 5’−ggtctgaaggtcacctgctc−3’(配列番号4)
−ヒトGAPDH遺伝子−
フォワード: 5’−atgttcgtcatgggtgtgaa−3’(配列番号5)
リバース: 5’− tgtggtcatgagtccttcca−3’(配列番号6)
−ヒトインスリン遺伝子−
フォワード: 5’−gccatcaagcagatcactgt−3’(配列番号7)
リバース: 5’−caggtgttggttcacaaagg−3’(配列番号8)
【0085】
定量PCR解析の結果を図3A図3Gに示す。図3Aは、dMEFにおける結果を示し、図3Bは、Human iPS(253G13−6)由来繊維芽細胞における結果を示し、図3Cは、ヒトHepG2における結果を示し、図3Dは、マウスNIH−3T3における結果を示し、図3Eは、ヒト胎児繊維芽細胞における結果を示し、図3Fは、ヒト新生児繊維芽細胞における結果を示し、図3Gは、ヒトHEK293における結果を示す。図3A図3G中、CTLは、GFP CTL溶液を用いた場合の結果を示し、G1Nは、G1N溶液を用いた場合の結果を示す。なお、縦軸は、GAPDH遺伝子に対するインスリン遺伝子の相対発現量を示す。
図3A図3Gの結果から、マウス繊維芽細胞以外の細胞においても、G1N溶液を用いることにより、インスリン遺伝子の発現が確認された。
したがって、本発明の製造方法により、様々な体細胞を用いて、膵内分泌細胞を製造できることが示された。
【0086】
(試験例4:GLISファミリーの分化転換能)
<細胞の調製>
試験例1と同様にして、dMEFを調製した。
【0087】
<レトロウイルスの作製>
−プラスミドDNAの調製−
[pMX−GFPベクター]
試験例1と同様にして、pMX−GFPベクターを調製した。
【0088】
[pMX−GLIS1ベクター]
試験例1と同様にして、pMX−GLIS1ベクターを調製した。
【0089】
[pMX−GLIS3ベクター]
pMX−GLIS3ベクターは、GLIS3タンパク質の全長をコードする遺伝子をpMXベクター(東京大学医学研究所より入手)のマルチクローニングサイトに組み込んだものである。なお、前記GLIS3タンパク質の全長をコードする遺伝子の配列は、NCBIでは、アクセッション番号NM_175459で登録されている。
【0090】
[pMX−Neurogenin3ベクター]
試験例1と同様にして、pMX−Neurogenin3ベクターを調製した。
【0091】
[pMX−Pdx1ベクター]
試験例1と同様にして、pMX−Pdx1ベクターを調製した。
【0092】
−レトロウイルスの作製−
前記プラスミドDNAを用いた以外は、試験例1と同様にしてウイルス粒子を含む培養上清を調製し、ウイルス溶液とした。
【0093】
<導入>
下記ウイルス溶液を用いた以外は、試験例1と同様にして、前記dMEFへ前記レトロウイルスを感染させることにより、遺伝子を細胞に導入した。
[ウイルス溶液]
(1)pMX−GFPベクター由来のウイルス溶液(コントロール、以下、「GFP CTL溶液」と称することがある)
(2)pMX−GLIS1ベクター由来のウイルス溶液(以下、「G1溶液」と称することがある)
(3)pMX−GLIS3ベクター由来のウイルス溶液(以下、「G3溶液」と称することがある」)
(4)pMX−GLIS1ベクター由来のウイルス溶液及びpMX−Neurogenin3ベクター由来のウイルス溶液(以下、「G1N溶液」と称することがある)
(5)pMX−GLIS3ベクター由来のウイルス溶液及びpMX−Neurogenin3ベクター由来のウイルス溶液(以下、「G3N溶液」と称することがある)
(6)pMX−GLIS1ベクター由来のウイルス溶液、pMX−Neurogenin3ベクター由来のウイルス溶液、及びpMX−Pdx1ベクター由来のウイルス溶液(以下、「G1NP溶液」と称することがある)
(7)pMX−GLIS3ベクター由来のウイルス溶液、pMX−Neurogenin3ベクター由来のウイルス溶液、及びpMX−Pdx1ベクター由来のウイルス溶液(以下、「G3NP溶液」と称することがある)
【0094】
<dMEF由来インスリン産生細胞数の決定>
前記導入11日間後の細胞を用いた以外は、試験例1と同様にしてDsRed2陽性インスリン産生細胞数を数えた。
【0095】
DsRed2陽性インスリン産生細胞数を数えた結果を図4A図4Dに示す。図4Aは、左側から順に、ウイルス溶液として、GFP CTL溶液を用いた場合(GFP)、G1溶液を用いた場合(G1)、G1N溶液を用いた場合(G1N)の結果を示し、図4Bは、左側から順に、ウイルス溶液として、GFP CTL溶液を用いた場合(GFP)、G1溶液を用いた場合(G1)、G1NP溶液を用いた場合(G1NP)の結果を示し、図4Cは、左から順に、ウイルス溶液として、GFP CTL溶液を用いた場合(GFP)、G3溶液を用いた場合(G3)、G3N溶液(G3N)を用いた場合の結果を示し、図4Dは、左から順に、ウイルス溶液として、GFP CTL溶液を用いた場合(GFP)、G3溶液を用いた場合(G3)、G3NP溶液を用いた場合(G3NP)の結果を示す。なお、縦軸は、1ウェルあたりのDsRed2陽性インスリン産生細胞数を示す。
図4A図4Dの結果から、GLISファミリーであるGLIS3を用いた場合でも、Neurogenin3、又はNeurogenin3及びPdx1と共に体細胞に導入することにより膵内分泌細胞を製造することができた。そのため、GLISファミリーをNeurogenin3、又はNeurogenin3及びPdx1と共に体細胞に導入することにより膵内分泌細胞を製造することができることが示唆された。また、GLIS1とGLIS3とを比較すると、GLIS1を用いた場合のほうが、分化転換効率が10倍程度優れていることが示された。
【0096】
(試験例5:各種体細胞からの膵内分泌細胞の製造−2)
<細胞の調製>
以下の細胞を用意した。
(1)ヒトT98Gグリオブラストーマ
理化学研究所BRCより入手した。
(2)ヒト間葉系幹細胞
ロンザ株式会社より入手した。
【0097】
<レトロウイルスの作製>
試験例3におけるヒト細胞用レトロウイルスの作製と同様にして、pMX−GLIS1ベクター由来のウイルス溶液、pMX−Neurogenin3ベクター由来のウイルス溶液、pMX−Pdx1ベクター、及びpMX−GFPベクター由来のウイルス溶液を作製した。
【0098】
<導入>
ウイルス溶液として、GFP CTL溶液、G1N溶液、又はG1NP溶液を用い、試験例1と同様にして、前記各細胞へ前記レトロウイルスを感染させることにより、遺伝子を細胞に導入した。
【0099】
<定量PCR解析>
試験例3と同様にして、定量PCR解析を行い、GAPDH遺伝子に対するインスリン遺伝子の相対発現量を調べた。
【0100】
定量PCR解析の結果を図5A図5Bに示す。図5Aは、ヒトT98Gグリオブラストーマにおける結果を示し、図5Bは、ヒト間葉系幹細胞における結果を示す。図5A図5B中、CTLは、GFP CTL溶液を用いた場合の結果を示し、G1Nは、G1N溶液を用いた場合の結果を示し、G1NPは、G1NP溶液を用いた場合の結果を示す。なお、縦軸は、GAPDH遺伝子に対するインスリン遺伝子の相対発現量を示す。
図5A図5Bの結果から、ヒトT98Gグリオブラストーマ、ヒト間葉系幹細胞を用いた場合にも、G1N溶液、又はG1NP溶液を用いることにより、インスリン遺伝子の発現が観察された。
したがって、本発明の製造方法により、様々な体細胞を用いて、膵内分泌細胞を製造できることが示された。
【0101】
(試験例6:マウス膵島との比較)
<細胞の調製>
試験例1と同様にして、dMEFを調製した。
【0102】
<レトロウイルスの作製>
試験例1と同様にして、pMX−GLIS1ベクター由来のウイルス溶液、pMX−Neurogenin3ベクター由来のウイルス溶液、及びpMX−Pdx1ベクター由来のウイルス溶液を作製した。
【0103】
<導入>
ウイルス溶液としてG1NP溶液を用い、試験例1と同様にして、前記dMEFへ前記レトロウイルスを感染させることにより、遺伝子を細胞に導入した。
【0104】
<顕微鏡観察>
前記導入の16日間後の細胞の様子を顕微鏡(FLUOTM、ライカ社製、AxioCam HRc、カールツアイス社製、×4倍)で観察した。また、マウス膵臓より単離した膵島についても顕微鏡で観察した。
【0105】
顕微鏡観察の結果を図6A図6Bに示す。図6Aは、マウス膵臓より単離した膵島の様子を示し、図6Bは、ウイルス溶液としてG1NP溶液を用いた結果を示す。
図6A図6Bの結果から、本発明の製造方法で得られた膵内分泌細胞塊は、マウス膵臓より単離した膵島に似たものであることが確認された。
【0106】
(試験例7:グルコース応答性インスリン分泌試験−1)
<細胞の調製>
試験例1と同様にして、dMEFを調製した。
【0107】
<レトロウイルスの作製>
試験例1と同様にして、pMX−GLIS1ベクター由来のウイルス溶液、pMX−Neurogenin3ベクター由来のウイルス溶液、及びpMX−Pdx1ベクター由来のウイルス溶液を作製した。
【0108】
<導入>
ウイルス溶液としてG1NP溶液を用い、試験例1と同様にして、前記dMEFへ前記レトロウイルスを感染させることにより、遺伝子を細胞に導入した。
【0109】
<グルコース応答性インスリン分泌試験>
前記導入の27日間後に、実体顕微鏡下で、直径100μm〜300μmの均一な膵島様塊30個をピペットでピックアップし、24ウェルプレートへ移し、以下のようにしてグルコース応答性インスリン分泌試験を実施した。
【0110】
前記膵島様塊を2.8mM グルコース入りリンゲル溶液で3時間培養した後、培地を交換し、更に1時間培養し、この培養上清を基礎とした(以下、「基礎培養上清」と称することがある)。
次いで、前記膵島様塊を16.8mM グルコース入りリンゲル入り溶液で1時間培養し、その培養上清を1.5mLチューブへ移した(以下、「高グルコース培養上清」と称することがある)。
その後、ウェルに2.8mMグルコース入りリンゲル溶液を入れ、前記膵島様塊を1時間培養後、その培養上清を1.5mLチューブへ移した(以下、「低グルコース培養上清」と称することがある)。
【0111】
前記各培養上清におけるインスリン濃度を、ELISA試験(株式会社シバヤギ製、Tタイプ)により測定した。結果を図7に示す。
図7は、2つのウェルのそれぞれの結果を示し、(1)は基礎培養上清の結果、(2)は高グルコース培養上清の結果、(3)は低グルコース培養上清の結果を示す。
図7の結果から、グルコース濃度が高くなるとインスリンの量が上昇し、グルコース濃度が低くなるとインスリンの濃度が減少することが確認された。したがって、本発明の製造方法で得られた膵内分泌細胞は、膵内分泌細胞に求められる機能を有していることが確認された。
【0112】
(試験例8:グルコース応答性インスリン分泌試験−2)
<細胞の調製>
ヒト新生児繊維芽細胞(NHDF)(宝酒造株式会社製)を用意した。
【0113】
<レトロウイルスの作製>
試験例3におけるヒト細胞用レトロウイルスの作製と同様にして、pMX−GLIS1ベクター由来のウイルス溶液、pMX−Neurogenin3ベクター由来のウイルス溶液、及びpMX−Pdx1ベクター由来のウイルス溶液を作製した。
【0114】
<導入>
ウイルス溶液としてG1NP溶液を用い、24ウェルプレートを用いた以外は、試験例1と同様にして、前記ヒト新生児繊維芽細胞(NHDF)へ前記レトロウイルスを感染させることにより、遺伝子を細胞に導入した。
【0115】
<グルコース応答性インスリン分泌試験>
前記導入の34日間後に、膵島様塊全てをピペットでピックアップし、24ウェルプレート(低接着プレート(EZ−BindShut II、イワキ社製))へ移し、以下のようにしてグルコース応答性インスリン分泌試験を実施した。
【0116】
前記膵島様塊を2.8mM グルコース入りリンゲル溶液で3時間培養した後、培地を交換し、更に1時間培養し、この培養上清を基礎とした(以下、「基礎培養上清」と称することがある)。
次いで、前記膵島様塊を25.0mM グルコース入りリンゲル入り溶液で1時間培養し、その培養上清を1.5mLチューブへ移した(以下、「高グルコース培養上清」と称することがある)。
【0117】
前記各培養上清におけるインスリン濃度を、ELISA試験(ヒトインスリンELISAキット、Mercodia社製)により測定した。結果を図8に示す。
図8中、「低」は基礎培養上清の結果、「高」は高グルコース培養上清の結果を示す。
図8の結果から、ヒト由来細胞を用いて製造した場合でも、グルコース濃度が高くなるとインスリンの量が上昇し、グルコース濃度が低くなるとインスリンの濃度が減少し、膵内分泌細胞に求められる機能を有していることが確認された。
【0118】
(試験例9:エピゾーマルベクターを用いた膵内分泌細胞の製造)
<細胞の調製>
試験例1と同様にして、dMEFを調製した。
【0119】
<エピゾーマルベクターの調製>
[pCI−GFPベクター]
pCI−GFPベクターは、GFPタンパク質の全長をコードする遺伝子を、エピゾーマルベクターであるpCIベクター(プロメガ社製)のマルチクローニングサイトに組み込んだものである。なお、前記GFPタンパク質の全長をコードする遺伝子の配列は、NCBIでは、アクセッション番号L29345で登録されている。
【0120】
[pCI−GLIS1ベクター]
pCI−GLIS1ベクターは、GLIS1タンパク質の全長をコードする遺伝子を、エピゾーマルベクターであるpCIベクター(プロメガ社製)のマルチクローニングサイトに組み込んだものである。なお、前記GLIS1タンパク質の全長をコードする遺伝子の配列は、NCBIでは、アクセッション番号NM_147221で登録されている。
【0121】
[pCI−Neurogenin3ベクター]
pCI−Neurogenin3ベクターは、Neurogenin3タンパク質の全長をコードする遺伝子を、エピゾーマルベクターであるpCIベクター(プロメガ社製)のマルチクローニングサイトに組み込んだものである。なお、前記Neurogenin3タンパク質の全長をコードする遺伝子の配列は、NCBIでは、アクセッション番号NM_009719で登録されている。
【0122】
[pCI−Pdx1ベクター]
pCI−Pdx1ベクターは、Pdx1タンパク質の全長をコードする遺伝子を、エピゾーマルベクターであるpCIベクター(プロメガ社製)のマルチクローニングサイトに組み込んだものである。なお、前記Pdx1タンパク質の全長をコードする遺伝子の配列は、NCBIでは、アクセッション番号NM_008814で登録されている。
【0123】
<導入>
前記dMEFへ、Neon(登録商標)トランスフェクションシステム(ライフテクノロジーズ社製)を用いたエレクトロポレーション法により、下記ベクターを導入した。ベクター導入後、37℃、5%COインキュベータ内で培養した。培養中は、2日間又は3日間毎に培地(DMEM(10%FBS含有))交換を行った。
[ベクター]
(1)pCI−GFPベクター(コントロール、以下、「GFP」と称することがある)
(2)pCI−GLIS1ベクター、及びpCI−Neurogenin3ベクター(以下、「G1N」と称することがある)
(3)pCI−GLIS1ベクター、pCI−Neurogenin3ベクター、及びpCI−Pdx1ベクター(以下、「G1NP」と称することがある)
【0124】
<dMEF由来インスリン産生細胞の決定>
前記導入8日間後の細胞を用いた以外は、試験例1と同様にしてDsRed2陽性インスリン産生細胞数を数えた。
【0125】
DsRed2陽性インスリン産生細胞数を数えた結果を図9に示す。図9中、横軸は、導入したエピゾーマルベクターを示し、左から順に、GFP、G1N、G1NPの結果を示す。なお、縦軸は、1ウェルあたりのDsRed2陽性インスリン産生細胞数を示す。
図9の結果から、エピゾーマルベクターを用いた場合でも、(I)GLIS1遺伝子、及びNgn3遺伝子を導入するか、(II)GLIS1遺伝子と、Ngn3遺伝子と、Pdx1遺伝子とを導入することにより、体細胞から膵内分泌細胞を製造できることが示された。
【0126】
本発明の体細胞に遺伝子乃至その遺伝子産物を導入する工程を含む膵内分泌細胞の製造方法は、従来のES細胞又はiPS細胞を用い、培地中に発生阻害剤等を添加するなどの培養環境を整え、膵内分泌細胞を製造する方法と比較して、簡便で、且つ再現が容易な方法であり、また、製造期間を大幅に短縮することができる。また、本発明の製造方法によれば、膵内分泌細胞を効率良く生産することができる。
また、本発明の製造方法によれば、腫瘍形成のリスクを有するiPS細胞を経ずに膵内分泌細胞を製造することができる点でも有利である。
そのため、本発明の膵内分泌細胞の製造方法は、例えば、糖尿病に対する再生医療用途の膵内分泌細胞の製造などに好適に利用可能である。
【0127】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> GLISファミリー遺伝子乃至その遺伝子産物と、Neurogenin3遺伝子乃至その遺伝子産物とを体細胞に導入する導入工程を含むことを特徴とする膵内分泌細胞の製造方法である。
<2> 導入工程が、更にPdx1遺伝子乃至その遺伝子産物を体細胞に導入する前記<1>に記載の膵内分泌細胞の製造方法である。
<3> GLISファミリー遺伝子乃至その遺伝子産物が、GLIS1遺伝子乃至その遺伝子産物である前記<1>から<2>のいずれかに記載の膵内分泌細胞の製造方法である。
<4> 体細胞が、繊維芽細胞及び間葉系幹細胞のいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載の膵内分泌細胞の製造方法である。
<5> 膵内分泌細胞が、β細胞である前記<1>から<4>のいずれかに記載の膵内分泌細胞の製造方法である。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の膵内分泌細胞の製造方法により製造されたことを特徴とする膵内分泌細胞である。
<7> 膵内分泌細胞が、β細胞である前記<6>に記載の膵内分泌細胞である。
<8> 体細胞を膵内分泌細胞へ分化転換する分化転換剤であって、
GLISファミリー遺伝子乃至その遺伝子産物と、Neurogenin3遺伝子乃至その遺伝子産物とを含むことを特徴とする分化転換剤である。
<9> 更にPdx1遺伝子乃至その遺伝子産物を含む前記<8>に記載の分化転換剤である。
<10> GLISファミリー遺伝子乃至その遺伝子産物が、GLIS1遺伝子乃至その遺伝子産物である前記<8>から<9>のいずれかに記載の分化転換剤である。
<11> 体細胞が、繊維芽細胞及び間葉系幹細胞のいずれかである前記<8>から<10>のいずれかに記載の分化転換剤である。
<12> 膵内分泌細胞が、β細胞である前記<8>から<11>のいずれかに記載の分化転換剤である。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]