【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は請求項1に記載される特徴を備えたエネルギ蓄積素子により達成される。また、当該蓄積素子は、請求項7に記載された方法及び請求項11に係る装置を用いて製造することができる。なお、実施例の有利な点は従属項により表される特徴を利用することで実現可能である。
【0006】
本発明に係る電気エネルギ蓄積素子にあっては、それぞれ、電極としてのカソード及びアノードと電解質とで形成された複数の電気化学セルが1つずつ積層されて配置される。積層された電気化学セルは、一方が導電性材料(特にアルミニウム、銅、又は鋼)からなるトッププレートで覆われる。他方が導電性材料(特にアルミニウム、銅、又は鋼)からなるベースプレートで覆われる。該ベースプレートはカソード又はアノードでコーティングされる一方、トッププレートはアノード又はカソードで補完的にコーティングされる。
【0007】
アノード及びカソードは導電性キャリアフィルムの両面にそれぞれ配置される。なお、導電性キャリアフィルムは、好ましくはアルミニウム、銅、鋼、又は導電性プラスチックからなる。該キャリアフィルムは、電極材料が設けられていない外周マージン部を有する。該キャリアフィルムは、シーリング接着剤を用いて付近の電気化学セルと気密状態で接続される。シーリング接着剤としては、UV架橋性・加熱架橋性の単一/二成分接着剤を用いることができる。なお、電極、電解質、及び(任意で)環境との間でバリア効果を奏する部位にあっては、シール剤に加えて、セパレータ素子又は追加のシール素子を更に用いても良い。
【0008】
アノードは、スピネル構造を有するチタン酸リチウムLTOを備える。また、高電圧カソードは、スピネル構造を有するリチウムニッケルマンガンLNMO又はオリビン構造のリン酸リチウム(LP)から形成される。ゲル電解質を用いる場合には、当該電解質と電気化学セルの電極との間にセパレータ層が設けられる。これに対し、固体電解質を用いる場合には、セパレータ層を設ける必要はない。
【0009】
アノードは、好ましくは、LTOとしてのLi
4Ti
5O
12から形成される。また、カソードは、好ましくは、LNMOとしてのLiNi
0.5Mn
1.5O
4、又はLiCoPO
4若しくはLiNiPO
4としてのリン酸リチウムからなる。
【0010】
なお、電気化学セルの成分を空間的に分散させて印刷するか、定められた形状に沿って異なるプロセスを適用することによって、電気化学セル(大面積電極)に電解質やセパレータ層を導入する際の問題点を回避することができる。セパレータ層/電解質組成物は、一方では十分なイオン伝導性を有する効果を奏し、他方では直接接触、即ちアノードとカソード間のショートを防ぐことができる。電解質は、例えば、自立板状素子として、又は2つの電極のうちの少なくとも1つに印刷されたフィルムとして設けられた部分多孔質セパレータ内に調量することで、セパレータ層と一体に設けても良い。セパレータ層は、例えば、多孔質化不活性材料(Al
2O
3等)又はイオン伝導性材料(リチウムイオン伝導性ガラス材等)から、高分子マトリクス(ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、又はカルボキシメチルセルロース(CMC)と共に形成される。
【0011】
電解質には、有機カーボネート(具体的には、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、アクリル酸塩、若しくはイミジンによって形成される高分子マトリクスのエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、又はプロピレンカーボネート)から形成されるリチウムイオン伝導性の塩(特に、LiPF
6、LiTFSI, or LiClO
4)が設けられる。ただし、該電解質は、高分子電解質、イオン化アニオン若しくは/及びカチオン群のポリマー、イオン溶液(具体的には、N‐アルキルN‐メチルピロロジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PYR
14TFSI))及びリチウムイオン伝導性の塩としてのLiTFSI又は結晶性イオン伝導体としてのLi
7P
3S
11若しくはLi
1.5Al
0.5Ge
1.5(PO
4)3によって形成されても良い。
【0012】
セパレータ層が必要な場合には、Al
2O
3のようなセラミック材料、又は、いわゆるLATP材料のようなリチウムイオン伝導性のガラスであって、好ましくは粒状で
、有機バインダを用い
て形成される。なお、500nmから30μmの粒径が好ましい。また、セパレータ層には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、又はカルボキシメチルセルロース(CMC)が含まれ得る。
【0013】
キャリアフィルムは、本発明に係る電気エネルギ蓄積素子の製造時において、電極材料の設けられていない外周マージン部を形成するように、あるいは、化学的、機械的、若しくは加熱除去処理を施すことで当該マージン部から電極材料を除去するように、2つの電極のうちの少なくとも1つは、セパレータ層、溶液、又はゲル電解質でコーティング又は湿潤され、その後電解質材料によってさらにコーティング又は湿潤される。一方、固体電解質の場合はセパレータ層が不要なため、対応する電極は電解質材料によって直接コーティングされる。
【0014】
セパレータ層及び/又は電解質は、ドクターブレード、印刷、スプレー、除去、粉末コーティング、又は静電処理を施すことで形成することができる。
【0015】
電気化学セルを形成する個々の素子は、分離処理によって連続的に得られ、これを1つずつ積層することにより、常にカソード又はアノードのいずれかが上向きとなるように配置されると共に、最下段の電気化学セルは、対応する補完電極と共にカソード又はアノードでコーティングされたベースプレート上に設けられる。なお、補完電極はベースプレート上に形成され、当該電極の方向を向いて並べられる。所望数の電気化学セルを積層した後、最上段の電気化学セルの上にトッププレートが置かれる。この際、最上段の電気化学セルの最上段電極を補完する電極が併せて置かれる。その後、シーリング接着剤を用いて外気に対する当該電気化学セルの密封処理が行われるが、このとき、セパレータ層を電極材料の無い外周マージン部位置に追加しても良い。
【0016】
したがって、電気エネルギ蓄積素子は複数の電極からなり、該複数の電極は、両面に活物質複合体が塗布された導電性キャリアフィルムの複合体を形成する。ここで、一方はカソード材料、例えば、5V高電圧カソード材料(LNMO、LiCoPO
4、LiNiPO
4等)でコーティングされ、一方はLTOアノード材料で覆われる。電極は、両面共に電気化学活物質によって覆われていないマージン部を備える。シーリング接着剤、及び任意で追加されるセパレータ層は、上記したコーティングされていないマージン部に適用される。なお、セパレータ層は電極の片側(例えばアノード側)又は対応する電気化学セルの両側においてコーティングされた箇所に適用されても良い。
【0017】
また、電解質は、リチウムイオン伝導性の電極と、湿潤された又は電気化学活物質と接触している電極との間に設けられる。なお、該電解質は伝導性塩、イオン化溶液、高分子電解質、又はゲル電解質を含む有機溶剤の混合物から形成することができる。
【0018】
本発明の実施例として、セパレータ、例えば、粒状のAl
2O
3とバインダ(例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF))及び電解質(例えば、ゲル電解質又は固体電解質)は、2つの電極のうちの一方に適宜設けられる。但し、固体電解質を用いる場合は、電解質と対応する電極との間のセパレータ層は不要である。また、固体電解質は(粒状のチオリン酸リチウムの混合物等としての)電極コーティングの成分にもなり、さらにゲル/液体電解質を加えても良い。かかる場合、有機カーボネート(具体的にはエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、又はプロピレンカーボネート)と高分子マトリクス(具体的には、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、アクリル酸塩)に設けられたリチウムイオン伝導性塩(具体的には、LiPF
6、LiTFSI又はLiClO
4)を利用しても良い。
【0019】
ただし、電解質は、高分子電解質、イオン化アニオン若しくは/及びカチオン群ポリマー、イオン溶液(具体的には、N‐アルキル‐N‐メチルピロロジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PYR
14TFSI))、及びリチウムイオン伝導性の塩としてのLiTFSI又は結晶性イオン伝導体としてのLi
7P
3S
11若しくはLi
1.5Al
0.5Ge
1.5(PO4)
3によって形成されても良い。
【0020】
この二元構造にあっては、電気化学セルのアノード側とカソード側が互いに対向して配置されるように電極を積み重ねており、複数の直列の電気化学/ガルバニ電池が形成される。最下層及び最上層にはそれぞれ、アルミニウム製シートからなるベースプレートとトッププレートが形成され、該電気エネルギ蓄積素子の電流コレクタを形成する。かかる目的のため、ベースプレートとトッププレートは、いずれも対応する電極材料でコーティングされる。また、ベースプレートにはセパレート層、電解質、及びシーリング接着剤が設けられても良い。接着は、電極のマージン部、ベースプレートのマージン部、又はトッププレートのマージン部のいずれかにおいて行われ、これにより内部構造を密封し、電極付近のフィルムマージン部の接触を防ぐと共に、電極に固定されたキャリアフィルムにおけるコーティングされていない縁部を閉じる。
【0021】
積み重ねられた複数の電気化学セルにより形成される各サブスタックは、動作の安全性を向上させ、及び/又は確認するために、それぞれ構造内の温度と電圧が監視される。なお、監視される電気化学セル(双極セル)の数は異なっていても良い。電圧の監視に加え、電荷補償又は電荷適合を個々の層内で実行しても良い。なお、同時に監視される電気化学セルの数は1つから最大で5セルまでとされる。
【0022】
実施例において、電子伝導性の当該キャリアフィルムは、それぞれ薄い絶縁性のワイヤに接続される。当該ワイヤを利用することで、該電気エネルギ蓄積素子の外部から各電気化学セルの電圧を測定して各電気化学セルの過負荷を検出できる。また、必要に応じ、いわゆるバランス装置を用いて当該過負荷を吸収しても良い。かかる場合、ワイヤはシール材料の周りを固く取り囲むように設けられる。また、温度測定は、セル内部及び接触タブで行うことができ、外部から付与された刺激とそれに対する応答を分析することによっても測定することができる。以下の処理は、上記した外部から付与された刺激の分析に利用することができる。即ち、mHzからkHzまでの所定周波数範囲で約4Aの正弦電流を、対応する電極対の外部電気接触子に印加して、その電圧応答が測定される。このシステム応答は特定の周波数範囲又は位相範囲で回析されて電極対の温度が定まる。なお、特定の周波数範囲又は位相範囲はSOC及びエージングの影響を受けない範囲に設定される。
【0023】
さらに、電気エネルギ蓄積素子には、監視モジュール、インターフェースモジュール、ジャケットモジュール、及び/又は温度制御用若しくは冷却用モジュールを設けても良い。
【0024】
電気化学セル又はセル群(サブスタック)における測定パラメータは、監視モジュールにより検出される。これにより、安全に関する限界値の確認が可能となる。
【0025】
インターフェースモジュールは、エネルギ変換、車両通信、ガス抜き、及び(必要に応じて)冷却媒体のために必要な要素を備える。
【0026】
ジャケットモジュールは、電気エネルギ蓄積要素が直接外気の影響を受けるような場合に、任意の追加的なハウジングとすることができる。また、保護機能のみならず、より広範囲に亘るインターフェースとしての機能を果たすことができる。さらに、インターフェースモジュールのための開口や点検用の開口とすることもできる。なお、その形状は電気エネルギ蓄積素子全体(蓄積素子の各モジュール、車両全体)の形状に依って決まる。
【0027】
温度制御用又は冷却用モジュールは、蒸発冷却、液体冷却、又は対流冷却によって電気エネルギ蓄積素子の効果的な温度制御を可能とする。なお、内部抵抗が僅かに存在するため、大型かつ熱交換面に基づく特定の状況下では、複雑かつ/又は高価な冷却手法を用いても良い。また、電力ロスは、バッテリや、熱伝導及び空気又はジャケットモジュールへの熱変換に起因して発生し得る。
【0028】
インターフェースモジュール、監視モジュール、及びジャケットモジュールは、敷設空間の最適な利用を可能とするように設計され、電気エネルギ蓄積素子と共に共通のハウジングに配置されても良い。理想的には、高度のシステム統合を達成するために当該敷設空間が利用され、システムのボリューム利用効率は80%を超え得る。
【0029】
電気エネルギ蓄積素子は、例えば、車両のアンダボディや太陽光モジュールに設置されるように構成することができる(実施例3)。
【0030】
電気エネルギ蓄積素子の冷却/温度制御は、別の手段により達成されても良い。即ち、冷却は空気や液体といった冷媒や蒸発を利用して達成することができる。使用済みの廃熱、好ましくは電気機器からの廃熱は、低温環境における温度制御に利用することができ、これにより、好ましくない条件下であっても蓄電容量を十分に高く維持することができる。
【0031】
あらゆる大きさの電気エネルギ蓄積素子、好ましくは大面積電極のものも、本発明によりコンパクトな構成とすることができる。
【0032】
電極の製造、電極やベースプレート及びトッププレートの組み立て、及び、予め機能層で覆われたベースプレートとトッププレートとの間での電極の積層は、いずれも電気エネルギ蓄積素子の製造過程において重要な工程である。
【0033】
電極形成は、キャリアフィルムを用い、LTOアノード材料で一方の片面をコーティングすることにより行われ、カソード材料(LNMO、LiCoPO
4、LiNiPO
4)を他方の片面に塗布する。これにより、電極コーティングがされると共に、1つずつ積み重ねられた表面(いわゆる、パターン)が形成される。周辺の、コーティング材料で覆われていないマージン部領域は、当該パターンの周りに設けられ、当該パターンの周りに対する密閉用コーティング(電気化学的非活性表面)としての面に利用される。
【0034】
パターンの形成は、キャリアフィルムの両面に対し、従来のドクターブレードを用いた処理により該キャリアフィルムの帯に電極コーティングを連続的に与えることで達成できる。続けて、例えば、熱的、化学的、又は機械的処理によりキャリアフィルムからコーティング材料を除去することによってマージン部領域が形成される。なお、かかる処理は、(機械的又は熱的処理により)キャリアフィルムの帯を電極の長さに切断/分離する前又は後に行うことができる。また、印刷処理やスリットダイ処理により、直接パターン状にキャリアフィルムをコーティングすることにより、外周のマージン部領域に電極材料が存在せず、かつ、当該領域が電気化学的に非活性な状態を維持することができる。また、(この場合、キャリアフィルムは連続した帯として存在し得るが、)当該コーティング処理の前又は後にキャリアフィルムを(機械的又は熱的処理により)適当なサイズに切断することができる。
【0035】
また、電極形成時にカレンダ加工を施すことでキャリアフィルムに付加される電極材料のさらなる小型化を実現できる。カレンダ加工は単一のステップで行うことができ、電極に用いられる電気化学的に活性な物質LTO及びLNMOを適宜選択することで電極材料の小型化が図られる。また、キャリアフィルムに形成されるアノード材料及びカソード材料の一般的な同時カレンダ加工は、単一のステップのみによって実現することが可能である。
【0036】
電極形成時には、既に述べたコーティング処理のいずれか又はセパレータ層を設ける方法を利用して、キャリアフィルムの片面又は両面のパターンに対し追加的なセパレータ層を設けても良い。
【0037】
続くステップでは、キャリアフィルムの片面にシーリング接着剤を塗布すると共に/又はシールマージン部又はシールマージン部が設けられた空間が挿入される。なお、当該キャリアフィルムには、ドクターブレード処理又はスプレー処理によって電極材料の存在しない、外周マージン部領域上に電極が設けられる。また、この前処理として、補助的に、さらなる機械的処理(例えば、彫刻印刷ロール構成又はレーザ構成による処理)を施して電極の片面又は両面にマージン部領域を設けておいても良い。あるいは、接着促進剤により前処理を行っても良い。
【0038】
さらなるステップにおいて、同様に、片面又は両面のパターンに対して電解質が付加される。なお、固体電解質を用いる場合はセパレータ層を設けるための上記処理を省略することができる。
【0039】
ベースプレートは、アノード材料又はカソード材料のパターンが上側に設けられるように作成される。また、トッププレートは、カソード材料又はアノード材料のパターンが下側に設けられるように作成される。さらに、シール剤(上記した前処理を施したものであっても良い)をベースプレート又はトッププレートに設け、上述したように電解質が付加される。
【0040】
また、ゲル電解質又は液体電解質は、減圧環境下で付加されるのが好ましい。一方、固体電解質のみを用いる場合は、以下の製造ステップを減圧環境下又は不活性ガス環境下で実行しても良い。
【0041】
電気化学セルの積層も、減圧環境下、不活性ガス環境下(特に、固体電解質と)、又は、少なくともドライルームで行われるべきである。この際、電気化学セルは、所望の数だけ1つずつベースプレートの上に配置されていく。また、その上に重ねられるようにトッププレートが配置される。なお、当該手順は逆に行っても良い。即ち、トッププレートの上に電気化学セルを重ねていき、最後にベースプレートを配置しても良い。全ての若しくは複数の電気化学セルを配置した後、又は全ての層を順に積み重ねた後は、機械的手法により当該構造を積層方向に押圧し、シーリング接着剤と外周の接着マージン部を接着させて密封しても良い。
【0042】
なお、シーリング接着剤の種類によっては、追加ステップとして、加熱又は放射線(例えばUV)処理によりその活性化/重合反応が必要となる。
【0043】
上記電気エネルギ蓄積素子を製造する装置にあっては、コーティングユニットにおいてキャリアフィルムをパターンコーティングしても良い。これにより、キャリアフィルムにカレンダ処理を施して電気化学セルの形状に切り出すことができる。
【0044】
また、上記したように、電極、ベースプレート、及びトッププレートは組立ユニットにおいて設けられた電気化学セルを備える。
【0045】
また、電気化学セル又はベースプレート及びトッププレートを導入するための門を設けても良く、これによりチャンバを早期に減圧することや不活性ガスで満たすことができる。なお、チャンバは非常に小さいものであって、導入システム(例えば、導入ベルト)を備えていることが好ましい。
【0046】
門には、保護ガス雰囲気(真空/不活性ガス/減湿)を観察するチャンバを隣接させても良い。なお、電気化学セルの積層処理のための把持機構や電気化学セルの押圧機構を当該チャンバに設けても良い。かかる把持機構は、ベースプレートやトッププレートを重ねるのにも適している。また、当該チャンバは、電気化学セルを供給すると共に、完成した電気エネルギ蓄積素子を取り出すための導入システムをさらに備えていても良い。
【0047】
また、当該チャンバに、一方では電気化学セル、ベースプレート及びトッププレートを供給し、他方では、別の方向から完成した電気エネルギ蓄積素子を取り出すための門を複数設けても良い。
【0048】
本発明に係る電気エネルギ蓄積素子の構造の組み合わせ、製造方法及び製造装置により、従来のバッテリシステムに比して電気エネルギ蓄積素子の体積当たりの利用効率を大きく高めることができ、これにより生産・製造コストを大幅に削減することが可能となる。即ち、活物質によりコバルトを排出し、(選択的に)セパレータ層を省略することができる。また、銅フィルムに代えてアルミニウム、鋼、又は導電性プラスチックフィルムをキャリアフィルムとして利用できる。機能層(電極、電解質)は、より実施が容易な印刷処理によって製造することもできる。なお、電解質の充填、減圧、形成ステップは省いても良い。また、電極材料(LNMO/LTO)の選択により、1回のカレンダ処理が可能となり、これによって製造コストを大幅に削減することができる。
【0049】
本発明に係る電気エネルギ蓄積素子の構造により、システムの高い統一性や当該素子の内部層構造に関して優位な効果が得られる。また、最も重要な効果として、双極構造の電気エネルギ蓄積素子、特に大面積型により、体積当たりの利用効率が高まり、よってエネルギ密度を高くできる。即ち、システム電圧を数百ボルトとしつつ、不活性な部分の割合(具体的には、シーリング接着剤が塗布される領域)を非常に小さく維持することができる。
【0050】
上記構造の別の効果として、当該電気エネルギ蓄積素子は、必ずしもハウジングを要しないことが挙げられる。即ち、ベースプレートとトッププレート、及び外周に設けられたシーリング接着剤(さらには、任意で設けられるセパレータ層)により、当該電気エネルギ蓄積素子の安定性を実現できる。また、セルの積層構造にあっては、セル間の電気的な接触がキャリアフィルムを介して達成でき、従来のバッテリのように別体で接触用要素を設ける必要がないため、電気化学セル間の導電性抵抗を非常に小さくすることができる。よって非常に高い性能を達成できる。なお、導電性キャリアフィルムの層厚さは、十分な機械的安定性とベアリング能力を確保するために、5μmから30μmとされる。
【0051】
本発明における、熱的安定性電極LNMO、LiCoPO
4又はLiNiPO
4及びLTOの選択や、ゲル電解質や固体電解質の利用により、従来の電極材料や電解質材料に比して分解温度が高くなるため、電気エネルギ蓄積素子の動作に対する高い安全性を実現できる。また、特定の状況下において消滅し得る液体又は可燃性の電解質は用いない。電気化学的活物質により、3V以上の高いセル電圧を実現でき、その電気化学的電位により高いエネルギ密度を達成できる。また、従来のような、カソード用のAlフィルムやカーボンアノード用の重銅フィルムを必要とする活物質対ではなく、電極に対して均一な材料(例えば、アルミニウムフィルムやプラスチックフィルム)が利用可能な領域では、当該電極電位はさらに高い値となる。加えて、従来の材料に比して、リチウムのインターカレーション及びデインターカレーション中における高電圧カソード材料やLTOの構造的膨張が小さくなるため、電気エネルギ蓄積素子の充放電時における体積変化が小さくなる。したがって、電極の機械的歪みを小さくすることができ、より長期間における安定性を確保することが可能となる。また、高い表面被覆率とこれに伴うエネルギ密度の増加が達成できる。
【0052】
カーボンに代えてLTOを使用する場合には、いわゆる「リチウムプレーティング」と呼ばれるリチウムのデンドライト化が生じないため、従来の材料によるシステムに対し、電気エネルギ蓄積素子の動作中におけるリスクが排除される。また、材料において回避されるリチウムプレーティングは、アノード層及びカソード層を同一の負荷割当で製造可能にする。なぜならば、カーボンベースのバッテリでは、アノードが常にカソードよりも高い負荷割当となるように設計されるのに対し、アノード面をカソード面よりも大きくする必要がないためである。なお、電気エネルギ蓄積素子の電気化学セルにおける電極の表面や大きさは概ね同じ値に保たれる。
【0053】
従来と異なり、電気エネルギ蓄積素子の電気化学セルには、化学量論的に必要な量よりも5〜15%を超えてアノード材料を含ませる必要がないため、リチウムのデンドライト化のリスクを低下させることができる。また、アノード材料のLTOはSEI(固体電解質界面)を形成しない。また、典型的な形成処理を実行する必要もないため、本化学システムの耐久性が向上する。
【0054】
本電気エネルギ蓄積素子の製造方法にあっては、場合によっては必要となる電気接触要素の電気的接続を除き、上記接着以外の接合処理が不要という有利な効果を奏する。したがって、上記接着処理は積層処理と一体に行っても良い。また、電解質を二次元的に付加する処理により、時間のかかる充填処理を省略することができる。さらに、真空下で電気化学セルを積層することで、追加的な低圧処理と置き換えることができる。また、数日間にわたる典型的な形成処理も省略することができる。以上の点は、非常に有益な効果を有する本目的にとって必要な、価値創造処理及び技術の節約法を表す。
【0055】
本製造方法に係る上記装置は、大面積電極処理(ロール・ツー・ロール方式及びコンベヤシステム)に良く適しており、そのため大型のエネルギ蓄積モジュールの製造に有利である。少なくとも電気エネルギ蓄積素子のマージン部の外縁形状は、各適用例の要求に適合させることができる。具体的には、ベースプレート及びトッププレートに応じて電気化学セルのマージン部の外縁形状の切り取り又は選択をし、設置スペースに適合させることができる。
【0056】
電気エネルギ蓄積素子内において1つずつ積層された各電気化学セルは、サイズ及び外縁形状が交々変化しても良い。したがって、電気エネルギ蓄積素子の形状は、例えば、長方形や正方形、その他の規則的な形状に限られない。
【0057】
以下、実施例を挙げながら本発明をより詳細に説明する。