特許第6822859号(P6822859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6822859
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】検出装置及び検出方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/355 20110101AFI20210114BHJP
   H04N 5/32 20060101ALI20210114BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20210114BHJP
   H01L 31/08 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   H04N5/355 630
   H04N5/32
   G01T1/20 E
   G01T1/20 G
   G01T1/20 J
   H01L31/00 A
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-10504(P2017-10504)
(22)【出願日】2017年1月24日
(65)【公開番号】特開2018-121164(P2018-121164A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河田 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 励
【審査官】 松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−018154(JP,A)
【文献】 特開2009−078143(JP,A)
【文献】 特開2014−241543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/225−5/378
H04N 9/00−9/11
G01T 1/20
H01L 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光子を検出する第1検出器と、
前記第1検出器と電気的に接続される第1電極と、
光子を検出する複数の第2検出器と、
前記第2検出器のそれぞれと電気的に接続される第2電極と、
前記第1検出器からの第1信号と、前記複数の第2検出器からの第2信号とを入力し、出力データを生成する処理部と、
を具備し、
前記第1検出器の数は、前記第2検出器の数よりも少なく、
前記処理部は、前記第1信号に基づいて第1計数率を算出し、前記第2信号に基づいて第2計数率を算出し、前記第2計数が基準値未満の場合には、前記第2計数を用いて前記出力データを生成し、前記第2計数が前記基準値と等しいかそれを超える場合には、前記第1計数を用いて前記出力データを生成する、
検出装置。
【請求項2】
前記第1検出器の個数nは、(1)式が成り立つ個数である請求項1に記載の検出装置
【数1】
(ただし、R0は予め定めた基準値、rMicroCellは(2)式から算出される1個の検出器あたりが検出する計数率)
【数2】
(ただし、εは光子の平均エネルギー、η(photon/keV)は単位エネルギー(keV)当たりの光子検出量、NSiPMは前記第1検出器と前記第2検出器を合わせた数、hは光子の入射頻度)。
【請求項3】
前記第1検出器が1個である請求項1または2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記第1検出器上及び前記第2検出器上に、放射線の入射により光子を発するシンチレータを具備する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記第1検出器と前記第2検出器の間または、前記第2検出器同士の間に分離部を備える、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記第1検出器と前記第2検出器の受光領域の大きさが同じ請求項1乃至5のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記第1検出器と前記第2検出器の受光領域の大きさが異なる請求項1乃至6のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項8】
前記第1信号を増幅させる増幅部と、前記増幅部で増幅した前記第1信号の波の高さを分析する波高分析部と、前記波高分析部から出力された前記第1信号をデジタル信号に変換するAD変換部とを含む第1読み出し部と、
前記第2信号を増幅させる増幅部と、前記増幅部で増幅した前記第2信号の波の高さを分析する波高分析部と、前記波高分析部から出力された前記第2信号をデジタル信号に変換するAD変換部とを含む第2読み出し部と、
をさらに備える請求項1乃至7のうちいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項9】
前記処理部は、前記第1信号から所定の閾値を超えたパルスの個数を計数して前記第1計数率を算出する手段と、
前記第2信号から所定の閾値を超えたパルスの個数を計数して前記第2計数率を算出する手段と、を具備する請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項10】
第1検出器及び前記第1検出器の数よりも多い複数の第2検出器が光子を検出する工程と、
前記第1検出器及び前記第2検出器が検出した前記光子を、第1信号、第2信号として第1読み出し部及び第2読み出し部を介して処理部に出力する工程と、
前記処理部が、前記第1信号に基づいて第1計数率を算出し、前記第2信号に基づいて第2計数率を算出し、前記第2計数が基準値未満の場合には、前記第2計数を用いて出力データを生成し、前記第2計数が前記基準値と等しいかそれを超える場合には、前記第1計数を用いて出力データを生成する工程と、
を具備する検出方法。
【請求項11】
前記処理部が、所定の閾値を超えたパルスの個数を計数して前記第1計数率及び前記第2計数率を算出する工程をさらに具備する請求項10に記載の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、検出装置及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線の検出装置においては、放射線量にかかわらず放射線検出の線形性を保証する計測
手段が望まれている。放射線を光子として計測するフォトンカウンティング法を用いた検
出方法では高光子数においてパイルアップによる光子の数え落としが問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5215722号公報
【特許文献2】特開2014−241543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、放射線検出の線形性を向上させた検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る検出装置は、光子を検出する第1検出器と、前記第1検出器と電気的に接続される第1電極と、光子を検出する複数の第2検出器と、前記第2検出器のそれぞれと電気的に接続される第2電極と、前記第1検出器からの第1信号と、前記複数の第2検出器からの第2信号とを入力し、出力データを生成する処理部と、を具備する。前記第1検出器の数は、前記第2検出器の数よりも少ない。前記処理部は、前記第1信号に基づいて第1計数率を算出し、前記第2信号に基づいて第2計数率を算出し、前記第2計数が基準値未満の場合には、前記第2計数を用いて前記出力データを生成し、前記第2計数が前記基準値と等しいかそれを超える場合には、前記第1計数を用いて前記出力データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態に係る検出装置
図2】検出器で得られた信号を処理するまでの経路
図3】検出装置に入射した光子数と理想的な計数率及び従来のフォトカウンティング法を用いた実際の計数率の関係
図4】処理部での処理手順を説明するフローチャート
図5】処理部での処理手順を説明するフローチャート
図6】計数率と検出装置に入射した光子の関係
図7】第2の実施形態に係る検出装置
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。同じ符号が付されているものは同
様のものを示す。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との
関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、
同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比例係数が異なって表される場
合もある。
【0008】
第1の実施形態
図1(a)に第1の実施形態である検出装置の外観図を示す。
第1の実施形態である検出装置1は、シンチレータ4、接着層5、基板8、読み出し部9
、10及び処理部11を含んでいる。基板8は、1個の第1検出器2、複数の第2検出器
3、第1電極部6、第2電極部7を有する。
【0009】
図1(a)には読み出し部9、10及び処理部11は示しておらず、その説明は後述す
る。
【0010】
第1検出器2及び第2検出器3は例えば、基板8内に形成される。
【0011】
検出装置1に対して、放射線が矢印の方向から入射する。シンチレータ4は、放射線を
変換して可視光として放射する。その際、放射線のエネルギーに比例した数の可視光光子
が放射される。シンチレータ4から放射された光子は、基板8に設けられる第1検出器2
、第2検出器3に入射されて電気信号に変換される。ここで第1検出器2及び第2検出器
3を有する基板8とシンチレータ4との間には、光子透過性の接着層5が設けられてもよ
い。
【0012】
第1検出器2及び第2検出器3は、いずれも矩形状の平面検出器で、受光面において、
検出器の大きさとほぼ同等の大きさである。第1検出器2及び第2検出器3は、基板8に
アレイ状に敷き詰められて、複数の検出器を形成する。
【0013】
本明細書内の実施形態において、受光面とは、放射線の入射方向に対してほぼ垂直な平
面であって、複数の平面検出器が第1方向およびこれにほぼ直交する第2方向に沿って二
次元配列している。
【0014】
本実施形態に係る検出装置においては、第1検出器2は1つ、それ以外は第2検出器3
が用いられる。第1検出器2は二次元配列している多数の平面検出器の受光面においてほ
ぼ中央部に設けることが好ましい。すなわち、第1検出器2は、受光面において、本実施
形態に係る検出装置の中央に位置するともいえる。第1検出器2及び第2検出器3は、例
えば、フォトンカウンティング型の検出器である。
【0015】
シンチレータ4の材料としては、タリウム活性化ヨウ化セシウム(CsI(Tl))、
タリウム活性化ヨウ化ナトリウム(NaI(Tl))、LYSO(Lu2(1−x)Y2
x(SiO4)O)などがある。なおLYSOの組成式のxの範囲は0.001≦x≦0
.5である。接着層5はシンチレータ4からの光子を透過する。接着層5の材料としては
エポキシ材料などが用いられる。基板8は、SiO等の光子を通す絶縁体などが用いら
れる。
【0016】
図1(a)の例によらず、第1検出器2及び第2検出器3の二次元配列している多数の
平面検出器の受光面積は異なっていてもよい。受光面積とは、受光面における受光素子の
面積を示しており、受光素子とは光子を受光して電気信号に変換する素子のことである。
たとえば、第1検出器2の受光面積が第2検出器3の受光面積の2倍、4倍等でもよい。
【0017】
図1(b)は、放射線が入射する方向から見て、シンチレータ4及び接着層5を省略し
た検出装置1の平面図を示している。
【0018】
図1(b)が示すように、第1検出器2及び第2検出器3は、基板8の受光面において
アレイ状に二次元配列している。例えば、二次元配列した複数の第2検出器3の内、2つ
を電極部6、7で置換されている。第1配線900Bは、複数の第2検出器3が光子を検
出した信号を束ねて電極部7に送信するために設けられ、第2検出器3の縁を通って電極
部7と接続している。
【0019】
第1電極部6は第1検出器2からの電気信号を後述する処理部11に出力するためのも
のである。第1電極部6は、第2方向において第1検出器2の近傍(隣接ともいえる)に
設けられている。第2電極部7は2次元に敷き詰められた検出器において、放射線が入射
する方向から見て、四隅の内1つに設けられている。第2電極部7は複数の第2検出器3
からの電気信号を処理部11に出力するためのものである。
【0020】
図1(b)の例によらず、第1電極部6および第2電極部7は、検出器と基板8の受光
面において、重なってもよい。すなわち、敷き詰められた複数の検出器の内、第1電極部
6および第2電極部7で置換しなくてもよい。また、第1電極部6および第2電極部7は
、それぞれ1つでなくてもよく、それぞれ複数でもよい。さらに、第2電極部7は四隅で
なくても、複数の第2検出器3の内、いずれかと置換されればよい。
【0021】
図1(c)は、図1(b)のp−p´を第1方向に沿って切断した断面図である。
【0022】
図1(d)は、図1(b)のq−q´を第1方向に沿って切断した断面図である。
【0023】
第2検出器3は、図1(c)に示すように、光子を受光して電気信号に変換する受光素
子700B、受光素子700Bからの電気信号を第1配線900Bに出力する第2配線8
50B、第2配線850Bに出力された電気信号を第2電極部7に出力する第1配線90
0Bを備えている。第2電極部7は、第2電極14を備えている。
【0024】
受光素子700Bまわりの第2配線850Bおよび第1配線900Bは、光子を透過で
きない領域となるため、第2方向において受光素子700Bの末端に配置される。第1配
線900Bは受光素子700Bの受光領域を狭めないように第2検出器3の縁を通って第
2配線850Bと接続している。また、第1配線900Bは、隣接している第1検出器2
および第2検出器3の縁を通って、第2電極部7に接続される。複数の第2検出器3のそ
れぞれの第1配線900Bは、受光面側の表面に沿ってかつ複数の第2検出器3の縁を通
って、最終的には第2電極部7の一端(上端)を跨って第2電極14に接続している。これ
により第2電極部7にはすべて第2検出器3の電気信号が出力される。 受光素子700
Bと第1配線900Bと第2配線850Bとの間はSiO等の光子を通す絶縁体で設け
られており、周囲配線との不用意な短絡が発生しないようになされている。
【0025】
第1検出器2は、図1(d)に示すように、光子を受光して電気信号に変換する受光素
子700A、受光素子700Aからの電気信号を第1配線800Aに出力する第2配線8
50A、第2配線850Aに出力された電気信号を第1電極部6に出力する第1配線80
0Aを備えている。
【0026】
第1電極部6は、第1電極13を備えている。
【0027】
第1検出器2と第1電極部13は、第1配線800Aで接続されている。また、第1配
線800Aは、第1検出器2と第1電極部13の上端に跨って形成されている。
【0028】
受光素子700Aと第1配線800Aと第2配線850Aの間はSiO等の光子を通
す絶縁体が設けられており、周囲配線との不用意な短絡が発生しないようになされている
【0029】
第1配線800Aおよび第2配線850Aは、光子を透過できない領域となるため、で
きるだけ受光素子700Aを避けて末端に配置される。
【0030】
図1(d)の中で、第2検出器3については図1(c)と同じなので説明は省略する。
【0031】
図1(c)、(d)の例では、受光素子700A、700Bの受光面のサイズは、1m
m×1mmである。
【0032】
図2は検出器で得られた信号を処理するまでの経路を示している。
【0033】
読み出し部9は、第1検出器2から得られた電気信号(アナログ波形)を、第1電極部
6を介して入力する。読み出し部10は、複数の第2検出器3から集められた電気信号を
、第2電極部7を介して入力する。読み出し部9、10によって各電気信号はデジタル信
号に変換されて処理部11に出力される。
【0034】
読み出し部9、10には、ASIC(Application Specific I
ntegrated Circuit)などが用いられる。
【0035】
読み出し部9は電気信号を増幅させる増幅部9A、増幅された電気信号のパルス高さを
分析する波高分析部9B、電気信号が増幅部9Aから出力されたことを波高分析部9Bへ
伝えるタイミング発生部9C、電気信号をデジタル信号に変換するAD変換部9Dを備え
る。
【0036】
波高分析部9B、タイミング発生部9Cおよび処理部11は、1つの制御装置(回路)
で動作させてもよい。この制御装置が第1電極部6から出力される電気信号を検知する。
第1電極部6は、放射線光子のエネルギーに比例した波高の電気信号を出力する。電気信
号はパルス信号であり、パルス信号は増幅部9Aで増幅され、波高分析部9Bで分析され
る。タイミング発生部9Cは、波高分析部9Bにパルス信号が出力されることを伝える。
波高分析部9Bで読み出されたパルス信号は、AD変換部9Dでデジタル信号に変換され
て、処理部11に出力される。
【0037】
読み出し部10は電気信号を増幅させる増幅部10A、電気信号の波の高さを分析する
波高分析部10B、電気信号が増幅部10Aから出力されたことを波高分析部10Bへ伝
えるタイミング発生部10C、電気信号をデジタル信号に変換するAD変換部10Dを備
える。
【0038】
波高分析部10B、タイミング発生部10Cおよび処理部11は、1つの制御装置(回
路)で動作させてもよい。この制御装置が第2電極部7からの電気信号を検知する。第2
電極部7は、放射線光子のエネルギーに比例した波高の電気信号を出力する。電気信号は
パルス信号であり、パルス信号は増幅部10Aで増幅され、波高分析部10Bで分析され
る。タイミング発生部10Cは、波高分析部10Bにパルス信号が出力されることを伝え
る。波高分析部10Bで読み出されたパルス信号は、AD変換部10Dでデジタル信号に
変換されて、処理部11に出力される。
【0039】
処理部11は、波高分析部9Bと波高分析部10Bでの処理に用いる閾値の設定を行う
。また、処理部11は、AD変換部9D、10Dから、その閾値を超えたパルスの個数と
時間情報から計数率を算出する。閾値を設ける理由は、ノイズ除去のためである。計数率
とは、たとえば、検出器が検出した光子の単位時間当たりのカウント数である。
【0040】
図3に検出装置に入射した光子数と理想的な計数率及び従来のフォトカウンティング法
を用いた実際の計数率の関係を示す。
【0041】
図3の例では、点線は検出装置に入射した光子数と理想的な計数率の関係を示しており
、実線は従来のフォトカウンティング法を用いた実際の計数率の関係を示している。
【0042】
理想的な計数率とは、検出装置に入射した光子数と計数率の関係が高い線形性を示すも
のである。
【0043】
図3に示すように、低線量において従来のフォトカウンティング法を用いた実際の計数
率の関係は、検出装置に入射した光子数と理想的な計数率の関係と同様に線形性を示す。
しかし、理想的な計数率を用いた関係に比べて、従来のフォトカウンティング法を用いた
実際の計数率を用いた関係は、高線量になるにつれて計数率が光子のパイルアップによっ
て、精度よく測定できなくなる。したがって、高線量の場合、検出装置に入射した光子数
と理想的な計数率の関係は、線形性を保てなくなる。例えば、入射光子数λ0、計数率R0
の近辺から線形性を保てなくなる。そこで、以下にこの問題を解消する制御方法を示す。
【0044】
図4は処理部11の制御方法を説明するフローチャートである。
【0045】
処理部11は第1検出器2の計数率R及び第2検出器3の計数率Rを算出する(ス
テップS1)。
【0046】
処理部11は、従来のフォトカウンティング法を用いた実際の計数率の関係においてR
は線形性を保てるため、第2検出器3の計数率Rを比較し計数率Rが基準値R未満
であるかどうかを判別する(ステップS2)。入射光子数とは、検出装置に入射した光子
数を示している。
【0047】
処理部11は、計数率Rが基準値R以上である場合、計数率Rの値を用いる(ス
テップS3)。
【0048】
処理部11は、計数率Rが基準値R未満である場合、計数率Rの値を用いる(ス
テップS4)。
【0049】
尚、ステップS3では第2検出器3の計数率Rを用いて判別したが、第1検出器2の
計数率Rを基準値R´と比較するようにしてもよい。さらに、ステップS3において
、処理部11は、計数率Rが基準値Rより大きい場合、計数率Rの値を用い、ステ
ップS4において処理部11は、計数率Rが基準値R以下である場合、計数率R
値を用いてもよい。
【0050】
図5は処理部11の他の制御方法説明するフローチャートである。
【0051】
処理部11は、第1検出器2及び第2検出器3の入射光子数yと、計数率R´との関係
を求める(ステップS11)。ステップS11は検出装置に入射する光子数を推定するた
めの変換係数a、aを算出するステップである。第1検出器2の計数率R´を得た
場合、実際の入射光子数yとの間にはy=a´の関係が成り立つ。また、第2
検出器3の計数率R´においても同様に入射光子数yとの間にはy=a´の
関係が成り立つ。尚、a、aは変換係数である。変換係数a、aが求まれば、計
数率R´から入射光子数yを推定することができる。ただし、ここでは入射光子数は換算
値であるので、入射光子数換算値y´として示す。
【0052】
次に第1検出器2の計数率R´及び第2検出器3の計数率R´を計測し、処理部1
1は第1検出器2の入射光子数換算値y´及び第2検出器3の入射光子数換算値y´
を推定する(ステップS12)。
【0053】
処理部11は第2検出器3の入射光子数換算値y´は基準線量y未満かどうかを判
別する(ステップS13)。
【0054】
第2検出器3の入射光子数換算値y´は基準線量y未満の場合、処理部11は入射
光子数換算値y´を用いる(ステップS14)。ここで、基準線量yは基準値R
ら算出したものである。
【0055】
第2検出器3の入射光子数換算値y´は基準線量y以上の場合、処理部11は、検
出装置がパイルアップ状態になった可能性があるとみなして、第1検出器2の入射光子数
換算値y´を用いる(ステップS15)。
【0056】
以上のように第1検出器2と第2検出器3のどちらの電気信号を用いるかの制御が行わ
れる。
【0057】
図6に計数率と検出装置に入射した光子数の関係を示す。
【0058】
図6の例では、点線は1個の第1検出器2を用いた計数率と検出装置に入射した光子数
の関係を示しており、実線は第1の検出器2のまわりにある約4000個の第2検出器3
を用いた計数率と検出装置に入射した光子数の関係を示している。言い換えると、入射光
子数に対して用いる計数率R1、R2について示している。また、第1検出器2と第2検出
器3の受光面積が同じ場合を想定している。
【0059】
第2検出器3を用いた計数率と検出装置に入射した光子数の関係は、入射した光子数が
10Mcps程度までは、線形性高く測定できる。しかし、10Mcps以降になると、
光子のパイルアップによって、計数率が精度よく測定できなくなる。cpsは時間当たり
のカウント数を示している。
【0060】
一方、1個の第1検出器2を用いた計数率と検出装置に入射した光子数の関係では、検
出装置に入射した光子数が10Mcps以上の高計数率においても、計数率が精度よく測
定できることを示している。
【0061】
以下に高計数率において、第1検出器2の計数率が精度よく測定できる概念を説明する
【0062】
例えば、第1検出器2と第2検出器3は、平均エネルギーεの放射線がシンチレータに
入射した場合、単位放射線エネルギー(keV)当たりの可視光検出量をη(photon/keV)
とすれば、シンチレータ内部で発生する光子数はεηで記述することができる。第1検出
器2と第2検出器3を合わせた数をNSiPM、光子の入射頻度をhとすると、第1検出
器2と第2検出器3の受光面積が同じ場合、1個の検出器あたりが検出する計数率rMi
croCellは(1)式のように近似的に記述可能である。
【数1】
【0063】
例えば、検出器に到達する放射線エネルギーの平均値εは120kVの管球電圧を用い
た場合、60keVとして差し支えない。LYSOシンチレータを用いた場合、可視光の
検出量は2photon/keVであるため、検出器全体が約4000個、100Mcp
sの高線量の入射を考えたとき、(1)式から1個の検出器あたりの計数率rMicro
Cellは3Mcpsと推定できる。
【0064】
フォトンカウンティング技術において、3Mcpsは、前述した入射光子数を精度よく
測定できる10Mcps程度よりも小さいので、放射線検出の線形性を保つことができる
。すなわち、検出器全体に関してはパイルアップを起こすが、単一の検出器を見てみると
その問題が生じない。
【0065】
したがって、本実施形態の検出装置は、計数率によって第1電極部6および第2電極部
7からの電気信号を使い分けることで放射線検出の線形性を向上させた検出装置を提供で
きる。
【0066】
ここでは、第1検出器2が1個の場合を述べたが、第1検出器2が複数個あってもよい
。例えば、前述した条件の場合、1個の検出器あたりの計数率rMicroCellは3
Mcpsであるので、検出器3個の計数率rMicroCellは9Mcpsである。こ
の値は、10Mcpsよりも小さいので、第1検出器2が3個あってもよいことを示して
いる。これより、(2)式の関係が成り立つような第1検出器2の個数nであればよい。
【数2】
【0067】
すなわち、1個の検出器あたりの計数率によって、第1検出器2の個数を任意選択する
ことが可能である。第1検出器の数は、第2検出器の数よりも少ないことを意味する。
【0068】
第2の実施形態
第2の実施形態に係る検出装置を第1の実施形態に係る検出装置と異なる構成のみ説明
する。
【0069】
図7(a)は本実施形態に係る検出装置を示しており、放射線が入射する方向から見て
、シンチレータ4、接着層5及び第2配線層900Bを除いた平面図である。
【0070】
本実施形態に係る検出装置は、第1の実施形態に係る検出装置に、検出器同士間を分離
する分離部12を備えている。分離部12は検出器同士間を隔てるようにアレイ状に設け
られる。
【0071】
図7(b)は、図7(a)のr−r´を第1方向に沿って切断した断面図である。
ここでは、図1(d)との異なる点のみ説明する。
【0072】
本実施形態に係る検出装置は、検出器同士間を分離する分離部12を備えている。分離
部12は、放射線が入射する方向から見て、受光素子700A、700Bよりも奥行きが
ある。図7(b)の例では、分離部12は、放射線が入射する方向において、基板の大き
さとほぼ同等の大きさを有している。
【0073】
尚、分離部12はある検出器に入射した光子によって、隣接する検出器に電気信号が漏
れてしまうことを防ぐために設けられる。例えば、分離部12は、遮光または減光する機
能を有する分離部材や溝であってもよい。分離部材としては、たとえばタングステンやア
ルミニウム、銅などの金属材料を用いることができる。
【0074】
検出器をアレイ状に配置した場合、光子が入射した検出器から、可視光から遠赤外光の
範囲の波長帯の光が放射され、この放射光が隣接する検出器に入射してしまうクロストー
クという現象がある。クロストーク発生頻度は検出器間に分離部12を設けることで低減
できる。したがって、第2の実施形態に係る検出装置は、第1の実施形態に係る検出装置
の効果に加え、検出器をアレイ状に配置したことで起こるクロストークなどの影響を極力
低減する効果も備える。
【0075】
(適用例)
本実施形態に係る検出装置の適用例を説明する。
【0076】
第1の実施形態及び第2の実施形態に係る検出装置は受光面において、1つの電極から
電気信号が出力される検出装置と互い違いに敷き詰められ複数の検出装置を形成している
【0077】
例えば、第1方向と第2方向のいずれかの方向において、第1の実施形態及び第2の実
施形態に係る検出装置と1つの電極から電気信号が出力される検出装置とが交互に敷き詰
められていてもよい。
【0078】
第1の実施形態及び第2の実施形態に係る検出装置は第1電極部6と第2電極部7から
2種類の電気信号が出力されるので、第1の実施形態及び第2の実施形態に係る検出装置
のみで、検出装置の集団を構成すると、データ量が純増し処理系統への負荷が大きくなる
。したがって、第1の実施形態に係る検出装置及び第2の実施形態に係る検出装置に隣接
する検出装置は1つの電極から電気信号が出力される検出装置を用いることでデータ量が
純増を抑えられる。
【0079】
本実施形態に係る検出装置は、コンピュータ断層撮影装置や放射能測定器などに導入で
きる。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したも
のであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々
な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置
き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、説明の範囲や要旨に含ま
れると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである
【符号の説明】
【0081】
1・・検出装置、2・・第1検出器、3・・第2検出器、4・・シンチレータ、5・・接
着層、6・・第1電極部、7・・第2電極部、8・・基板、9・・読み出し部、10・・
読み出し部、11・・処理部、12・・分離部、13・・第1電極、14・・第2電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7