(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、室内で飼われている猫などのペットの排泄物を処理するため、所謂猫砂と称される、排泄物処理材が知られている。
排泄物処理材としては、例えば、ゼオライトやベントナイトなどの鉱物系材料を用いたものが知られている。特にベントナイトは、水分に接触すると粒子同士が結合して固まるため、液状の排泄物により汚れた部分を塊として取り除くことできることから、広く普及している。
しかしながら、鉱物系材料を用いた排泄物処理材は、重量が重く持ち運びにくい、また、廃棄時の分類が不燃物となるなど、不便な点があった。
【0003】
そこで、鉱物系材料に比べて軽量で可燃性の排泄物処理材として、高吸収性樹脂と木粉の混合物を粒状にしたもの(例えば、特許文献1参照)や、有機物と高吸水樹脂の混合主材に重炭酸カルシウムやパーライトを添加したもの(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態である排泄物処理材について詳細に説明する。但し、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る排泄物処理材1の使用形態の一例を示す図である。
図1に示すように、排泄物処理材1は、吸水性を有する粒状物であって、例えば、室内で飼われる動物が使用する動物用トイレ10に敷き詰めて使用されるものである。動物とは、例えば、猫、犬、ウサギ、ハムスター等の小動物や、幼児期のトラ、ライオン等も含む。
【0014】
図2は、排泄物処理材1の外観図である。
図2に示すように、排泄物処理材1は、例えば、直径(D)が2〜15mm、長さ(L)が2〜30mm程度に形成された、略円柱形状の粒状物である。
なお、排泄物処理材1は粒状物であれば良く、その形状、サイズはこれに限定されるものではない。
【0015】
図3は、排泄物処理材1の断面図である。
図3に示すように、排泄物処理材1は、コア部2と、コア部2の表面を被覆する被覆部3と、を備えて構成されている。
【0016】
コア部2は、有機系繊維を主成分とする吸水材が用いられる。当該吸水材は、資源節約の観点から、有機系繊維を主成分とする廃品の粉砕物が用いられることが望ましい。
【0017】
具体的に、吸水材としては、例えば、木材、紙(パルプ)、おから、コーヒー豆の粉砕体、高吸水性樹脂などのうちから選択した1又は複数の素材を使用することができる。また、これらを付着させるスターチ等の糊剤を配合することも望ましい。
【0018】
前記パルプには、回収パルプが含まれる。回収パルプは、例えば、製造工程の製品ロス(製造工程等で発生した裁断片の他、不良品、試作品も含む)から回収されたパルプ、使用済みの吸収性物品から回収されたパルプ、或いはこれらの組み合わせからなるパルプ等である。
製造工程の製品ロスから回収された回収パルプは、例えば、ベビー用紙おむつ、ベビー用尿取りパッド、介護用紙おむつ、介護用尿取りパッド、生理用ナプキン等から得ることができる。また、使用済みの吸収性物品から回収された回収パルプは、例えば、使用済みベビー用紙おむつ、使用済みベビー用尿取りパッド、使用済み介護用紙おむつ、使用済み介護用尿取りパッド、使用済み生理用ナプキン等から得ることができる。
具体的には、上記のような製品ロスとしての吸収性物品は、破砕して、回収パルプとして利用される。また、使用済みの吸収性物品は、吸収ポリマーの吸収した水分を離水した後、不織布や防水性シート等を除去してパルプ成分が回収される。なお、パルプ成分の具体的な回収方法は、公知の方法を適用可能である。
【0019】
前記高吸水性樹脂としては、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸及びその塩類、アクリル酸塩重合体架橋物、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、ポリオキシエチレン架橋物、カルボキシメチルセルロース架橋物、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド等の水膨欄性ポリマーを部分架橋したもの、或いはイソブチレンとマレイン酸との共重合体等が好適に用いられる。
【0020】
なお、ここに挙げた吸水材はあくまで一例であって、その素材を限定するものではない。その他にも、例えば、壁紙等の建築用資材の不良品の粉砕物から回収した吸水性を有する素材等も活用することができる。
【0021】
被覆部3は、吸水性又は液透過性の素材が用いられるとともに、水分との接触により隣接する排泄物処理材1同士が接合して塊状となるように、紙粉や接着性の材料を含有させることが望ましい。
具体的に、被覆部3は、例えば、ポリアクリル酸塩などの高吸水性樹脂(SAP)、紙粉、スターチ等の糊剤を使用することができる。また、木材、紙、おからなどの粉砕物のうちから選択した1又は複数の素材を含有することができる。
【0022】
また、本実施の形態の被覆部3には、セルロースナノファイバー(以下、CNFという)が含有されている。CNFの含有量は、排泄物処理材1全体の質量に対して、5〜75質量%程度であることが望ましい。
CNFとは、パルプ繊維を解繊して得られる微細なセルロース繊維をいい、一般的に繊維幅がナノサイズ(1nm以上、1000nm以下)のセルロース微細繊維を含むセルロース繊維をいうが、平均繊維幅は、100nm以下の繊維が望ましい。平均繊維幅の算出は、例えば、一定数の数平均、メジアン、モード径(最頻値)などを用いる。
CNFは、ミクロフィブリルとして2〜6Gpaの引張破断強度が有り、これはカーボン繊維やアラミド繊維と同等であって、鋼鉄の約10倍の強さに相当する。また、CNFは、カーボン繊維やアラミド繊維よりも安価である。
CNFは繊維であるため、被覆部3に含有することで排泄物処理材1同士が強固に接着させることができる。
【0023】
CNFの製造に使用可能なパルプ繊維としては、広葉樹パルプ(LBKP)、針葉樹パルプ(NBKP)等の化学パルプ、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、更紙古紙等から製造される古紙パルプ、古紙パルプを脱墨処理した脱墨パルプ(DIP)などが挙げられる。これらは、本発明の効果を損なわない限り、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。さらに、上記パルプ繊維に対してカルボキシメチル化等の化学的処理を施したものを用いても良い。
【0024】
CNFの製造方法としては、高圧ホモジナイザー法、マイクロフリュイダイザー法、グラインダー磨砕法、ビーズミル凍結粉砕法、超音波解繊法等の機械的手法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。また、ナノファイバー化は、TEMPO酸化処理、リン酸エステル化処理酸処理等の併用により促進される。
【0025】
このような排泄物処理材1は、例えば、コア部2を構成する素材を乾燥後粉砕し、スクリュー式等の押出し造粒装置から押し出されたものを所定の長さで切断してペレット状の成形体とした上で、その表面を被覆部3で被覆することで製造することができる。
【0026】
なお、被覆部3は、コア部2の表面の少なくとも一部を覆う構成であれば良いが、全面を覆う構成であることが望ましい。
被覆部3がコア部2の全面を覆うことで、水分との接触により隣接する排泄物処理材1同士がより強固に接合できるためである。
なお、被覆部3がコア部2の表面を覆う面積を少なくした場合、被覆部3の量が少なくできるため、低コスト化を図ることができる。
【0027】
排泄物処理材1の使用方法としては、以下の通りである。
先ず、排泄物処理材1は、動物用トイレ10に敷き詰められる(
図1参照)。
動物用トイレ10に動物(猫など)が侵入し、排泄物処理材1の上から排尿や排便をする。通常、動物は排泄物処理材1を足でかいて排泄物を隠す。
【0028】
ここで、排泄物処理材1は、尿などの水分を保持すると共に、水分との接触により隣接する排泄物処理材1同士が接合して塊状となる。
本実施の形態の排泄物処理材1は、被覆部3にCNFを含有することで、従来の澱粉やCMCが用いられていた場合と比較して、固まり易いものとなっている。
【0029】
飼い主等は、塊となった排泄物処理材1を動物用トイレ10内から取り除き、取り除いた分だけ新しい排泄物処理材1を補充する。
この際、排泄物処理材1は、取り除く際に、くずれ難いものとなっている。
更に、鉱物を含むものと比較して、軽量であり、持ち運びや廃棄時の取り扱い性が良好である。
【0030】
以上のように、本実施の形態によれば、粒状の排泄物処理材1であって、吸水性を有するコア部2と、コア部2の表面を少なくとも一部を覆う被履部3と、を備え、被履部3には、CNFが含有されている。
このため、被覆部3に繊維であるCNFが含有されるので、水分と接触した際に排泄物処理材1同士を強固に接着させることができる。
よって、固まり易く、取り除く際にくずれ難いため取り扱い性を良好にすることができる。
【0031】
また、本実施の形態によれば、コア部2には、有機系繊維を主成分とした廃品の粉砕物が含まれている。
このため、廃品を再利用してコア部2を作成できるので、経済的である。
【0032】
また、本実施の形態によれば、排泄物処理材1であって、被履部2は、コア部2の全面を覆う。
このため、隣接する排泄物処理材1同士をより強固に接合することができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
(1.サンプル作成)
木材の粉砕物を主材料としたコア部を、異なる組成成分を含有した8種類の被覆部にて覆った排泄物処理材を作成し、実施例1〜5、比較例1〜3のサンプルとした。
各サンプルの被覆部の組成成分は、表Iに示す通りである。
【0035】
(2.固まり強度の評価)
実施例1〜5、比較例1〜3のサンプルの各々を、一般的な猫砂用トレー(約250mm×400mm)に、約10mm程の厚さで均等に敷いて、その中心位置に、人工尿50ccを、サンプル表面から高さ約30mmの位置から約10cc/sで滴下させ、その後、約6時間ほど静置して、塊となった部分をスコップですくったときの状態から、1名の試験官により、以下の基準に基づいて固まり強度を評価した。その結果は、表Iに示す通りである。
○:塊が崩れることなく、すくうことができる。
△:塊が多少崩れるものの、すくうことができる。
×:塊が崩れる
なお、「○」の「塊が崩れることがない」とは、スコップですくう際に、誰でも同じ評価になる位の明確な状態である。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例1〜5に示すように、被覆部にCNFを含有した場合、固まり強度が良好であり、取り扱い性が良好であることがわかる。
また、実施例1と比較例3から、被覆部にCNFを含有することで、被覆部にベントナイトを加えた場合と同様の固まり強度を付与できたことがわかる。