【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26〜29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「水素利用等先導研究開発事業/大規模水素利用技術の研究開発/水素専焼対応型Dry Low NOx高温ガスタービンの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されている燃料噴射器では、燃料ガスが導入される筐体の内部に設けられるバッフルの形状の見直しにより、燃料噴射器を低温に保っているが、基板の高温化対策として、更なる対策が望まれている。
【0006】
この発明は、高温となる基板を効率良く冷却することができる燃料噴射器及びガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様によれば、燃料噴射器は、軸線を中心とする管状をなして、前記軸線の延びる軸線方向の上流側から燃料ガスが導入される燃料供給チューブと、前記軸線方向に延在する管状をなし、上流側から空気が導入される複数の予混合チューブと、前記燃料供給チューブの前記軸線方向の下流側及び前記複数の予混合チューブの上流側端部を支持する支持プレートと、前記複数の予混合チューブの下流側端部を支持する基板と、前記支持プレートと前記基板とを連結し、かつ、前記支持プレートと前記基板とともに内部にプレナムを形成する筒状の外側壁と、前記プレナムを燃料プレナムと前記燃料プレナムと前記燃料プレナムの下流側に配置された冷却空気プレナムとに区画する仕切板と、前記仕切板の下流側に配置され、前記冷却空気プレナムを上流側冷却空気プレナムと前記上流側冷却空気プレナムの下流側に配置された下流側冷却空気プレナムとに区画し、複数の冷却孔が形成されたバッフルと、前記上流側冷却空気プレナムに冷却空気を供給する冷却空気供給チューブと、を備え、前記燃料供給チューブの下流側の端部は、前記燃料プレナム内で開口され、前記予混合チューブの前記燃料プレナムに位置する部分に、前記予混合チューブを内外に貫通する燃料導入孔が形成されて
おり、前記バッフルは、前記冷却孔が形成され、前記軸線を中心とする径方向内側に設けられたバッフル本体と、前記バッフル本体と前記外側壁との間に配置され、前記軸線を中心とする径方向外側に向かうにしたがって下流側に傾斜し、前記冷却孔が形成されていない傾斜部と、を有する。
【0008】
このような構成によれば、上流側冷却空気プレナムに導入された冷却空気がバッフルの冷却孔を介して基板に向けて噴射されて、高温となる基板を効率良く冷却することができる。
また、上流側冷却空気プレナムに導入された冷却空気は、複数の冷却孔から下流側冷却空気プレナム噴射された後、基板を冷却しつつ、傾斜部に沿って径方向外側に流れる。下流側冷却空気プレナムに導入された冷却空気は、バッフルの傾斜部に沿って径方向外側に方向付けられる。これにより、基板のみならず、下流側冷却空気プレナム内の予混合チューブも冷却することができる。
【0009】
上記燃料噴射器において、複数の前記冷却孔の少なくとも一部は、インピンジ孔であってよい。
【0012】
上記燃料噴射器において、前記基板に形成され、前記冷却空気を前記下流側冷却空気プレナムから前記基板の下流側に排出する複数の冷却空気排出孔を有してよい。
【0013】
このような構成によれば、燃料ガス及び圧縮空気の噴射により発生する火炎が予混合チューブの出口に付着するのを抑制することができる。また、火炎が付着した場合においても、火炎自体の温度を低減することができる。
【0014】
上記燃料噴射器において、前記予混合チューブの前記下流側冷却空気プレナムに位置する部分に、前記予混合チューブを内外に貫通する冷却空気導入孔が形成されてよい。
【0015】
このような構成によれば、基板を冷却した冷却空気の一部を予混合チューブの内部に導入することによって、遡上してくる火炎を抑制することができる。
【0016】
上記燃料噴射器において、前記冷却空気供給チューブは、前記燃料供給チューブの径方向内側に前記燃料供給チューブと同軸に配置されてよい。
【0017】
このような構成によれば、冷却空気の温度の上昇を抑制することができる。即ち、冷却空気供給チューブを圧縮空気に曝すことなく、プレナムに接続することができる。
【0018】
本実施形態の第二の態様によれば、燃料噴射器は、軸線を中心とする管状をなして、前記軸線の延びる軸線方向の上流側から燃料ガスが導入される燃料供給チューブと、前記軸線方向に延在する管状をなし、上流側から空気が導入される複数の予混合チューブと、前記燃料供給チューブの下流側及び前記複数の予混合チューブの上流側端部を支持する支持プレートと、前記複数の予混合チューブの下流側端部を支持する基板と、前記支持プレートと前記基板とを連結し、かつ、前記支持プレートと前記基板とともに内部にプレナムを形成する筒状の外側壁と、前記プレナムを燃料プレナムと前記燃料プレナムと前記燃料プレナムの下流側に配置された冷却空気プレナムとに区画する仕切板と、前記冷却空気プレナムに冷却空気を供給する冷却空気供給チューブと、前記冷却空気供給チューブの下流側端部よりも下流側に設けられ、記軸線を中心とする径方向外側に向かうにしたがって下流側に傾斜して前記外側壁に接続された拡径部と、前記拡径部の前記軸線を中心とする径方向の中央に形成され、前記冷却空気供給チューブから供給される前記冷却空気が流入される冷却空気流入孔と、を有するバッフルと、を備え、前記予混合チューブの前記燃料プレナムに位置する部分に、前記予混合チューブを内外に貫通する燃料導入孔が形成されている。
【0019】
このような構成によれば、冷却空気流入孔からバッフルの下流側に流入した冷却空気は、基板の中央近傍を冷却しつつ、拡径部に沿って径方向外側に流れる。即ち、冷却空気は、バッフルの拡径部に沿って径方向外側に方向付けられる。これにより、高温となる基板を効率良く冷却することができるとともに、冷却空気プレナム内の予混合チューブも冷却することができる。
【0020】
本発明の第三の態様によれば、ガスタービンは、空気を圧縮した圧縮空気を生成する圧縮機と、上記何れかの燃料噴射器を有し、前記圧縮空気に燃料を混合させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記圧縮機によって生成された圧縮空気を抽気する抽気部と、抽気された前記圧縮空気を更に圧縮する強制空冷圧縮機と、前記強制空冷圧縮機によって生成された冷却空気を前記燃料噴射器に導入する冷却空気導入部と、を備える。
【0021】
このような構成によれば、圧縮機によって生成した圧縮空気を再加圧することによって、抽気した圧縮空気よりも高い圧力の冷却空気を供給することができる。
【0022】
上記ガスタービンにおいて、前記抽気部により抽気された前記圧縮空気を冷却するクーラーを有してよい。
このような構成によれば、クーラーを使用して圧縮空気を冷却することによって、抽気した圧縮空気よりも低温の冷却空気を供給することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、上流側冷却空気プレナムに導入された冷却空気がバッフルの冷却孔を介して基板に向けて噴射されて、高温となる基板を効率良く冷却することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第一実施形態〕
以下、本発明の第一実施形態の燃料噴射器1を備えるガスタービン100について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のガスタービン100は、外気Aoを圧縮して圧縮空気Aを生成する圧縮機51と、圧縮空気Aと燃料ガスFとの混合気体を燃焼させて燃焼ガスGを生成する複数の燃焼器52と、燃焼ガスGにより駆動するタービン53と、ガスタービン100の冷却対象を冷却する冷却装置54と、を備えている。
【0026】
圧縮機51は、ガスタービン軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ56と、圧縮機ロータ56を回転可能に覆う圧縮機車室57と、複数の圧縮機静翼列58と、を有している。
【0027】
圧縮機ロータ56は、ガスタービン軸線Arに沿って延びる圧縮機ロータ軸59と、圧縮機ロータ軸59に取り付けられている複数の圧縮機動翼列60と、を有している。複数の圧縮機動翼列60は、ガスタービン軸線Arの軸線方向に並んでいる。各々の圧縮機動翼列60は、いずれも、ガスタービン軸線Arの周方向に並んでいる複数の動翼で構成される。複数の圧縮機動翼列60の各下流側には、圧縮機静翼列58が配置されている。各々の圧縮機静翼列58は、いずれも、圧縮機車室57の内側に固定されている。各々の圧縮機静翼列58は、いずれも、ガスタービン軸線Arの周方向に並んでいる複数の静翼で構成される。
【0028】
タービン53は、ガスタービン軸線Arを中心として回転するタービンロータ61と、タービンロータ61を回転可能に覆うタービン車室62と、複数のタービン静翼列63と、を有している。タービンロータ61は、ガスタービン軸線Arに沿って延びるタービンロータ軸64と、タービンロータ軸64に取り付けられている複数のタービン動翼列65と、を有している。
【0029】
複数のタービン動翼列65は、ガスタービン軸線Arの軸線方向に並んでいる。各々のタービン動翼列65は、いずれも、ガスタービン軸線Arの周方向に並んでいる複数の動翼で構成される。複数のタービン動翼列65の各上流側には、タービン静翼列63が配置されている。各々のタービン静翼列63は、タービン車室62の内側に固定されている。各々のタービン静翼列63は、いずれも、ガスタービン軸線Arの周方向に並んでいる複数の静翼で構成されている。
【0030】
ガスタービン100は、さらに、ガスタービン軸線Arを中心として筒状の中間車室67を備えている。中間車室67は、ガスタービン軸線Arの軸線方向で、圧縮機車室57とタービン車室62との間に配置されている。圧縮機ロータ56とタービンロータ61とは、同一のガスタービン軸線Ar上に位置し、互いに接続されてガスタービンロータ68を成している。ガスタービンロータ68には、例えば、発電機Gのロータが接続されている。
【0031】
燃焼器52は、圧縮機51で圧縮された圧縮空気Aに対して燃料ガスFを供給することで、高温・高圧の燃焼ガスGを生成するものである。
複数の燃焼器52は、ガスタービン軸線Arの周方向に互いの間隔をあけて、中間車室67に固定されている。燃焼器52は、燃料噴射器1と、燃料噴射器1から噴射される圧縮空気Aと燃料ガスFとが混合された気体を燃焼させ、燃焼ガスGをタービン53に導く燃焼筒69を有している。
【0032】
圧縮機51に取り込まれた外気Aoは、複数の圧縮機静翼列58と圧縮機動翼列60とを通過して圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気Aとなる。この圧縮空気Aに対し、燃焼器52において燃料ガスFが混合されて燃焼されることで高温・高圧の燃焼ガスGが生成される。そして、燃焼ガスGがタービン53のタービン静翼列63とタービン動翼列65とを通過することでタービンロータ軸64が回転駆動され、ガスタービンロータ68に連結された発電機Gに回転動力を付与することで発電を行う。
【0033】
冷却装置54は、燃焼器52へ供給される圧縮空気Aの一部を抽気し、再び圧縮してガスタービン100の冷却対象を冷却する装置である。冷却対象は、高温に曝される部品である。
冷却装置54は、圧縮空気Aの一部を抽気する抽気部72と、抽気された圧縮空気Aを冷却するクーラー73と、クーラー73によって冷却された圧縮空気Aを更に圧縮して冷却空気CAとする強制空冷圧縮機74と、強制空冷圧縮機74のサージを防止するためのアンチサージ弁75と、冷却空気CAを燃焼器52の燃料噴射器1に導入する冷却空気導入部76を有している。冷却空気導入部76は、燃料噴射器1の冷却空気供給チューブ9に接続されている。
ここで、説明のため
図1では冷却装置54は1基のガスタービン100に対して1系統設けているが、1基のガスタービン100に対して複数系統の冷却装置54を設けてもよい。
【0034】
強制空冷圧縮機74によって再び圧縮された圧縮空気Aは、冷却空気CAとして冷却空気導入部76を介して燃焼器52の燃料噴射器1に供給される。冷却空気CAは、ガスタービン100の他の冷却対象、例えば、静翼に供給されてよい。
【0035】
図2に示すように、燃焼器52は、筒状の外筒71と、外筒71の内部に配置された燃料噴射器1と、を有している。外筒71と燃料噴射器1との間から流入した圧縮空気Aは、外筒71の端壁71aで180°転回し、燃料噴射器1に供給される。
【0036】
本実施形態の燃料噴射器1は、燃料ガスFを供給する燃料供給チューブ8と、複数の予混合チューブ2と、複数の予混合チューブ2の上流側Da1の端部を支持する支持プレート3と、複数の予混合チューブ2の下流側Da2の端部を支持する基板4と、内部にプレナムPを形成する筒状の外側壁5と、プレナムPを燃料プレナムPFと冷却空気プレナムPAとに区画する仕切板6と、仕切板6の下流側Da2に配置されたバッフル7と、冷却空気プレナムPAに冷却空気CAを供給する冷却空気供給チューブ9と、を備えている。
バッフル7は、冷却空気プレナムPAを上流側冷却空気プレナムPA1と上流側冷却空気プレナムPA1の下流側Da2に配置された下流側冷却空気プレナムPA2とに区画する。支持プレート3の主面、仕切板6の主面、バッフル7の主面、及び基板4の主面は、燃料供給チューブ8の軸線Atと直交している。
【0037】
なお、以下の説明において、燃料供給チューブ8の軸線Atが延びている方向を軸線方向Daとする。また、軸線Atに直交する方向を径方向とし、この径方向で軸線Atから遠ざかる側を径方向外側と言い、この径方向で軸線Atに近づく側を径方向内側という。また、軸線方向Daの燃料ガスFが導入されてくる側(
図2紙面左側)を上流側Da1、軸線方向Daの燃料ガスFが噴射される側(
図2紙面右側)を下流側Da2とする。即ち、本実施形態の燃料噴射器1では、燃料ガスF及び圧縮空気Aが上流側Da1から下流側Da2に向かって流通している。
【0038】
燃料噴射器1では、燃料供給チューブ8によって、上流側Da1から燃料ガスFが導入される。燃料噴射器1は、導入された燃料ガスFを予混合チューブ2で圧縮空気Aと混合した後に、下流側Da2に向かって噴射させて排出する。
【0039】
燃料供給チューブ8は、上流側Da1から供給されてくる燃料ガスFを燃料プレナムPFまで流通させている。燃料供給チューブ8は、軸線Atを中心とする管状をなして延びている。燃料供給チューブ8は、下流側Da2で支持プレート3と接続されている。
燃料供給チューブ8の下流側Da2の端部は、燃料プレナムPF内に開口している。即ち、燃料供給チューブ8の下流側Da2の端部の軸線方向Daの位置は、支持プレート3の下流側Da2であって仕切板6の上流側Da1である。
【0040】
冷却空気供給チューブ9は、冷却装置54(上流側Da1)から供給されてくる冷却空気CAを上流側冷却空気プレナムPA1に流通させている。冷却空気供給チューブ9は、燃料供給チューブ8の径方向内側に燃料供給チューブ8と同軸をなすように配置されている。即ち、燃料ガスFは、冷却空気供給チューブ9と燃料供給チューブ8との間の径方向の隙間を流通する。冷却空気供給チューブ9の下流側Da2の端部は、上流側冷却空気プレナムPA1内に開口している。即ち、冷却空気供給チューブ9の下流側Da2の端部の軸線方向Daの位置は、仕切板6の下流側Da2であってバッフル7の上流側Da1である。
【0041】
支持プレート3は、軸線Atを中心とする円板状をなしており、中心に円形状の貫通孔が形成されている。この貫通孔は、燃料供給チューブ8の外径と同じ径で形成されている。支持プレート3は、この貫通孔に燃料供給チューブ8の端部が下流側Da2に飛び出すように挿入された状態で、燃料供給チューブ8と接続されている。支持プレート3には、複数の予混合チューブ2を挿通させて支持するための複数の貫通孔が形成されている。
【0042】
基板4は、支持プレート3と略同じ外径をなし、軸線Atを中心として円板状に形成されている。基板4は、外側壁5を介して支持プレート3と連結されることで、支持プレート3とともに内側に空間であるプレナムPを画成している。基板4には、複数の予混合チューブ2を挿通させて支持するための複数の貫通孔が、支持プレート3に形成された貫通孔と対応する位置に形成されている。
【0043】
外側壁5は、支持プレート3の外周と基板4の外周とを接続している。外側壁5は、支持プレート3及び基板4の外径と同じ大きさの内径で形成された円筒状をなしている。外側壁5は、上流側Da1で支持プレート3と接続されている。外側壁5は、下流側Da2の端部で基板4と接続されている。したがって、外側壁5によって接続された支持プレート3と基板4との内側に、画成された空間としてプレナムPが設けられている。
【0044】
仕切板6は、プレナムPを燃料プレナムPFと燃料プレナムPFと燃料プレナムPFの下流側Da2に配置された冷却空気プレナムPAとに区画する板である。仕切板6は、支持プレート3と略同じ外径をなし、軸線Atを中心として円板状に形成されている。仕切板6は、支持プレート3の下流側Da2であって、基板4の上流側Da1に配置されている。
【0045】
仕切板6の中心には、円形状の貫通孔が形成されている。この貫通孔は、冷却空気供給チューブ9の外径と同じ径で形成されている。仕切板6は、この貫通孔に冷却空気供給チューブ9の端部が下流側Da2に飛び出すように挿入された状態で、冷却空気供給チューブ9と接続されている。仕切板6には、複数の予混合チューブ2を挿通させて支持するための複数の貫通孔が、支持プレート3に形成された貫通孔と対応する位置に形成されている。
【0046】
バッフル7は、冷却空気プレナムPAを上流側冷却空気プレナムPA1と上流側冷却空気プレナムPA1の下流側Da2に配置された下流側冷却空気プレナムPA2とに区画する板である。バッフル7は、仕切板6と同じ外径をなし、軸線Atを中心として円板状に形成されている。バッフル7は、仕切板6の下流側Da2であって、基板4の上流側Da1に配置されている。
【0047】
バッフル7には、複数の予混合チューブ2を挿通させて支持するための複数の貫通孔が、支持プレート3に形成された貫通孔と対応する位置に形成されている。
また、バッフル7には、上流側冷却空気プレナムPA1と下流側冷却空気プレナムPA2とを連通させる複数の冷却孔11が形成されている。冷却孔11は、軸線方向Daに延在する孔である。即ち、冷却空気供給チューブ9を介して上流側冷却空気プレナムPA1に導入された冷却空気CAは、複数の冷却孔11を介して下流側冷却空気プレナムPA2に導入される。
【0048】
予混合チューブ2は、軸線方向Daに延在する円筒状の形状を有する管材である。予混合チューブ2には、上流側Da1から圧縮空気Aが導入され、下流側Da2から圧縮空気Aと燃料ガスFとの混合気体が排出される。予混合チューブ2は、上流側Da1の端部が支持プレート3によって支持され、下流側Da2の端部が基板4によって支持される。
【0049】
本実施形態の予混合チューブ2は、上流側Da1の端部が支持プレート3から上流側Da1に突出せずに略面一となるように固定されている。予混合チューブ2は、下流側Da2の端部が基板4から下流側Da2に突出せずに略面一となるように固定されている。予混合チューブ2には、径方向に向かって予混合チューブ2を内外に貫通する燃料導入孔12が、燃料プレナムPFに位置する部分に形成されている。
【0050】
燃料導入孔12は、プレナムPで燃料ガスFを予混合チューブ2内に流入させる貫通孔である。燃料導入孔12は、円形状の断面形状をなしており、予混合チューブ2を径方向に貫通している。燃料導入孔12は、仕切板6よりも上流側Da1に形成されている。燃料導入孔12の軸線方向Daの位置は、全ての予混合チューブ2で同じである。
【0051】
外側壁5には、プレナムPの内外に貫通する複数の冷却空気排出孔13が形成されている。冷却空気排出孔13は、下流側冷却空気プレナムPA2に位置する部分に形成されている。複数の冷却空気排出孔13は、軸線Atを中心とした周方向に等間隔に形成されている。
【0052】
予混合チューブ2は、支持プレート3及び基板4に対して複数設けられている。複数の予混合チューブ2は、互いに同じ断面形状及び同じ長さとなるように形成されている。複数の予混合チューブ2は、
図3に示すように、軸線方向Daから見た際に、軸線Atと直交するプレナムPの断面領域が軸線Atを中心として複数の仮想正三角形Tを敷き詰めるように区画された場合に、仮想正三角形Tの頂点の位置に配置されている。仮想正三角形Tは、軸線Atと直交するプレナムPの断面領域である仮想の平面上で、軸線Atを中心として放射状に広がるように複数配置される正三角形である。仮想正三角形Tにおける一辺の長さは、予混合チューブ2を配置する軸線Atから距離や近接する予混合チューブ2同士の距離から定められる。本実施形態では、辺の長さが同じ同形状の仮想正三角形TがプレナムPの断面領域に敷き詰められている。
【0053】
複数の予混合チューブ2は、仮想正三角形Tの頂点に配置されることにより、軸線Atを中心に径方向外側に向かうに連れて放射状をなして徐々に数が増加するように配置されている。
【0054】
複数の冷却孔11は、軸線方向Daから見た際に、仮想正三角形Tの中心の位置に配置されている。
【0055】
次に、燃料噴射器1の作用について説明する。
本実施形態の燃料噴射器1では、燃料供給チューブ8を介して上流側Da1から燃料ガスFが燃料プレナムPFに導入される。燃料プレナムPFに導入された燃料ガスFは、燃料導入孔12を介して予混合チューブ2に取り込まれる。燃料ガスFが流入した予混合チューブ2内では、上流側Da1から導入された圧縮空気Aと燃料ガスFとが混合され、混合気体が下流側Da2から噴射される。
【0056】
また、本実施形態の燃料噴射器1では、冷却空気供給チューブ9を介して上流側Da1から冷却空気CAが上流側冷却空気プレナムPA1に導入される。上流側冷却空気プレナムPA1に導入された冷却空気CAは、複数の冷却孔11から噴射されて基板4に衝突する。このように、冷却孔11により冷却空気CAを噴射することで、基板4をインピンジメント冷却と同様に冷却することができる。即ち、冷却孔11の少なくとも一部は、インピンジ孔である。
基板4の冷却に使用された冷却空気CAは、冷却空気排出孔13から径方向外側に排出される。
【0057】
上記実施形態によれば、上流側冷却空気プレナムPA1に導入された冷却空気CAがバッフル7の冷却孔11を介して基板4に向けて噴射されて、高温となる基板4を効率良く冷却することができる。即ち、燃料ガスF及び圧縮空気Aの噴射により発生する火炎が予混合チューブ2の出口(噴射孔)に付着する付着火炎となり、基板4が高温となった場合に基板4を積極的に冷却することができる。
【0058】
また、圧縮機51によって生成した圧縮空気Aを抽気し、冷却装置54の強制空冷圧縮機74を用いて抽気された圧縮空気Aを再加圧することによって、抽気した圧縮空気よりも高い圧力の冷却空気CAを供給することができる。
また、クーラー73を使用して圧縮空気Aを冷却することによって、抽気した圧縮空気Aよりも低温の冷却空気CAを供給することができる。
【0059】
また、冷却空気供給チューブ9が燃料供給チューブ8の径方向内側に燃料供給チューブ8と同軸をなすように配置されていることによって、冷却空気CAの温度の上昇を抑制することができる。即ち、冷却空気供給チューブ9を燃料ガスFよりも高温である圧縮空気Aに曝すことなく、プレナムPに接続することができる。
【0060】
〔第二実施形態〕
以下、本発明の第二実施形態の燃料噴射器1Bについて図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態では、上述した第一実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
図4に示すように、本実施形態の燃料噴射器1Bは、バッフルの形状が第一実施形態の燃料噴射器と相違する。
本実施形態のバッフル7Bは、径方向内側に配置されたバッフル本体15と、バッフル本体15の径方向外側に配置された傾斜部16と、を有している。
【0061】
バッフル本体15の直径は、基板4の直径よりも小さい。バッフル本体15の直径は、基板4の直径の1/3程度に設定することができる。バッフル本体15には、第一実施形態のバッフル7と同様の複数の冷却孔11が形成されている。
傾斜部16は、バッフル本体15の外周と外側壁5の内周面とを接続するように形成された板状の部材である。傾斜部16は、径方向外側に向かうにしたがって、下流側Da2に傾斜している。換言すれば、傾斜部16は、下流側Da2に向かうにしたがって漸次拡径するように形成されている。傾斜部16には、冷却孔11は形成されていない。
【0062】
上記実施形態によれば、上流側冷却空気プレナムPA1に導入された冷却空気CAは、複数の冷却孔11から下流側冷却空気プレナムPA2に噴射された後、基板4の中央近傍を冷却しつつ、傾斜部16に沿って径方向外側に流れる。即ち、下流側冷却空気プレナムPA2に導入された冷却空気CAは、バッフル7の傾斜部16に沿って径方向外側に方向付けられる。これにより、基板4のみならず、下流側冷却空気プレナムPA2内の予混合チューブ2も冷却することができる。
【0063】
〔第三実施形態〕
以下、本発明の第三実施形態の燃料噴射器1Cについて図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態では、上述した第一実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態の基板4Cには、第二冷却空気排出孔17が形成されている。即ち、本実施形態の燃料噴射器1は、外側壁5に形成されている冷却空気排出孔13に加えて、基板4に形成されている第二冷却空気排出孔17を有している。なお、外側壁5の冷却空気排出孔13を省略してもよい。
【0064】
第二冷却空気排出孔17は、軸線方向Daに延在する貫通孔である。本実施形態の第二冷却空気排出孔17の軸線方向Daから見た位置は、バッフル7の冷却孔11の位置と異なっている。
【0065】
上記実施形態によれば、燃料ガスF及び圧縮空気Aの噴射により発生する火炎が予混合チューブ2の出口に付着するのを抑制することができる。また、火炎が付着した場合においても、火炎自体の温度を低減することができる。
【0066】
また、軸線方向Daから見た第二冷却空気排出孔17の位置が、バッフル7の冷却孔11の位置と異なっていることによって、冷却空気CAが基板4と衝突することなく排出されるのを抑制することができる。
【0067】
〔第四実施形態〕
以下、本発明の第四実施形態の燃料噴射器1Dについて図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態では、上述した第一実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
図6に示すように、本実施形態の燃料噴射器1Dの予混合チューブ2には、予混合チューブ2を内外に貫通する冷却空気導入孔18が、下流側冷却空気プレナムPA2に位置する部分に形成されている。冷却空気導入孔18は、下流側冷却空気プレナムPA2で、冷却空気CAを予混合チューブ2内に流入させる貫通孔である。
【0068】
冷却空気導入孔18は、円形状の断面形状をなしており、予混合チューブ2を径方向に貫通している。燃料導入孔12は、バッフル7よりも下流側Da2に形成されている。冷却空気導入孔18の軸線方向Daの位置は、全ての予混合チューブ2で同じである。
冷却空気導入孔18は、冷却空気CAが、下流側Da2に向かって流れるように方向付けられている。換言すれば、冷却空気導入孔18の中心軸は、予混合チューブ2の外周面から予混合チューブ2の内周面に向かって下流側Da2に傾斜している。
【0069】
上記実施形態によれば、基板4を冷却した冷却空気CAの一部を予混合チューブ2の内部に導入することによって、遡上してくる火炎を抑制することができる。
【0070】
〔第五実施形態〕
以下、本発明の第五実施形態の燃料噴射器1Eについて図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態では、上述した第一実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
図7に示すように、本実施形態のバッフル7Eは、冷却空気供給チューブ9の下流側Da2端部よりも下流側Da2に設けられている。バッフル7Eは、冷却空気プレナムPAを区画するように形成されておらず、その中央部に冷却空気流入孔19が形成されている。
バッフル7Eは、軸線Atを中心とする径方向外側に向かうにしたがって下流側Da2に傾斜して外側壁5に接続された拡径部20と、拡径部20の径方向の中央に形成されている冷却空気流入孔19と、を有している。
【0071】
拡径部20の上流側Da1の端部(冷却空気流入孔19)の軸線方向Daの位置は、冷却空気供給チューブ9の下流側Da2の端部の位置と同じか、やや下流側Da2である。
冷却空気流入孔19の孔径は、冷却空気供給チューブ9の外径よりもやや大きい。冷却空気流入孔19は円形をなし、中心が軸線At上に配置されている。
【0072】
冷却空気供給チューブ9から供給される冷却空気CAは、冷却空気流入孔19に流入した後、基板4に衝突する。
【0073】
上記実施形態によれば、冷却空気プレナムPAに導入された冷却空気CAは、冷却空気流入孔19からバッフル7の下流側Da2に流入する。流入した冷却空気CAは、基板4の中央近傍を冷却しつつ、拡径部20に沿って径方向外側に流れる。即ち、冷却空気CAは、バッフル7の拡径部20に沿って径方向外側に方向付けられる。これにより、基板4のみならず、冷却空気プレナムPA内の予混合チューブ2も冷却することができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0075】
なお、上記実施形態では、燃料供給チューブ8と冷却空気供給チューブ9とは、同軸上に配置されている構成としたがこれに限ることはない。例えば、冷却空気供給チューブ9を外側壁5に接続して、外側壁5に形成した貫通孔を介して冷却空気プレナムPAに冷却空気CAを導入する構成としてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、一つの燃焼筒69内に一つの燃料噴射器1が配置されているが、これに限ることはない。例えば、燃焼筒69内に、筒状の外側壁を有する複数の燃料噴射器が配置されてもよい。
また、一つの燃焼器内に複数の燃料噴射器を配置する場合、各々の燃料噴射器の断面形状を円形とする必要はない。例えば、
図8に示すように、円筒形の外側壁5Aと、外側壁5Aの内部を周方向に区画する複数の複数の壁5Bとを設け、一つの燃焼器52A内に複数の扇形状の燃料噴射器1Aを設けてもよい。