(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固定バー部および前記可動バー部の少なくともいずれか一方には、前記延設方向について、前記アームガイド部を係合させることで、前記アーム部を、前記治具本体部に対して、前記治具本体部の前記ドアに対する着脱、および前記アーム部の前記車体本体に対する着脱に用いるための位置で位置決めするための着脱用係合凹部が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用ドア保持治具。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、ドアの開閉状態を所定の状態に保持するための車両用ドア保持治具において、治具本体部と、これに対して移動可能に設けられたアーム部とによるシンプルな構成を実現しながら、これら各部の構成を工夫することにより、治具に付着した塗料の剥がれに起因する塗装不良の防止、および汎用性の向上を図ろうとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る車両用ドア保持治具(以下単に「ドア保持治具」とする。)1は、車両としての自動車の車体2を塗装する塗装工程において、車体2の車体本体3に回動可能に設けられたドア4の開閉状態を所定の状態に保持するための治具である。すなわち、本実施形態のドア保持治具1は、自動車のドアチェッカーに類する機能を有するチェックアーム式ドア塗装治具である。
【0020】
車体2の塗装工程においては、車体2の外観だけではなく、ドア4により開閉される車体本体3のドア開口部をなすフロントピラーの内側面や、ドア4の内側面等にも塗装が施される。こうした部位に対する塗装に際しては、ドア4を所定の開度で開いた状態にする必要があるため、ドア保持治具1により、ドア4の開閉状態が所定の状態に保持される。車体2の塗装工程では、ドア開閉用のロボットあるいは作業者によりドア4が開閉させられ、塗装用のロボットあるいは作業者に設けられた塗装ガンにより、塗装作業が行われる。
【0021】
本実施形態に係るドア保持治具1は、ドア4がドア開口部を塞ぐ閉じ端位置、ドア4が車体本体3に対して左右外側に開きドア開口部を開放させる開き端位置、および開き端位置と閉じ端位置との間の中間位置の各位置にドア4がある状態で、ドア4の開閉状態を保持する。
【0022】
ドア4は、車体本体3に対して、ヒンジ部5により略上下方向に沿う所定の回転軸を中心に回動可能に取り付けられており、その回動動作によって、車体本体3のドア開口部を開閉する。ヒンジ部5は、ドア4の前端部と車体本体3との間において上下2箇所に設けられている。なお、ヒンジ部5は、車体本体3側およびドア4側それぞれに設けられた突片部を上下方向に貫通する枢軸5aを有する。また、ドア開口部は、フロントピラーや、フロントピラーの下端部から車体2の後方に向けて延設されたロッカや、センターピラー6等により形成されている。
【0023】
ドア4は、ドア4の内側の部分を構成するインナパネル4aと、ドア4の外側の部分を構成するアウタパネル4bとを有し、インナパネル4aとアウタパネル4bとの間にはドア内空間4sが形成されている。ドア4の前端部には、ドア4が閉じた状態で前後方向を厚さ方向とする板状の部分であるドア前壁部4cが設けられている。一方、車体本体3側においては、ドア4が閉じた状態でドア前壁部4cの前方に位置しドア前壁部4cに対向するドア開口部前壁3aが設けられている。なお、
図1に示すドア4は、自動車の前部右側に設けられた右側のフロントドアであり、本実施形態では、右側のフロントドアにドア保持治具1を用いる場合を例に説明する。
【0024】
図1に示すように、ドア保持治具1は、ドア4に取り付けられる治具本体部11と、車体本体3に取り付けられ、ドア4の開閉にともなって治具本体部11に対して移動するアーム部12とを備える。
【0025】
ドア保持治具1は、治具本体部11をドア4のドア内空間4s内に位置させるとともに、ドア前壁部4cからアーム部12を前方に向けて突出させ、アーム部12の先端部を、ドア開口部前壁3aに固定させる。そして、ドア保持治具1は、車体2に取り付けられた状態において、治具本体部11に対するアーム部12の相対移動により、ドア前壁部4cからのアーム部12の突出量を変化させることで、つまりアーム部12をドア前壁部4cから出没させることで、ドア4の開閉動作に対応する。
【0026】
本実施形態に係るドア保持治具1の構成について、
図2から
図6を用いて説明する。ドア保持治具1は、全体として、アーム部12の延設方向を長手方向とする長手状に構成されている。そして、治具本体部11に対するアーム部12の相対移動には、ドア保持治具1の長手方向に沿うアーム部12のスライド移動が含まれる。
【0027】
以下の説明では、ドア保持治具1において、ドア保持治具1の長手方向(
図3における左右方向)を前後方向とし、治具本体部11からアーム部12が突出する側(
図3において左側)を前側、その反対側(
図3において右側)を後側とする。また、
図3の上・下を、ドア保持治具1における上・下に対応させ、
図4の上・下を、ドア保持治具1における右・左に対応させる。本実施形態に係るドア保持治具1は、
図1に示すように右側のドア4に対して取り付けられた状態において、その上下を車体2の上下に対応させる。
【0028】
まず、治具本体部11について説明する。
図2から
図6に示すように、治具本体部11は、本体固定部21と、固定バー部22と、可動バー部23と、付勢部24とを有する。
【0029】
本体固定部21は、ドア4に固定される部分である。つまり、治具本体部11は、本体固定部21をドア4に固定させることで、ドア4に取り付けられる。本体固定部21は、略ボックス状の態様をなす部分であり、左右の側面部26,26と、上面部27と、下面部28と、前面部29とを有する。
【0030】
側面部26は、左右方向を板厚方向とする略矩形板状の部分である。左右の側面部26,26は、互いに平行に設けられており、左右方向に対向する。
【0031】
上面部27は、上下方向を板厚方向とする略矩形板状の部分であり、左右の側面部26,26の上端部間に水平状に架設されている。詳細には、各側面部26の上縁部の後部は同上縁部の前部に対して一段低い段下がり部となっており、矩形板状の部材がその左右両端部を左右の側面部26,26の段下がり部に嵌合させた態様で各側面部26に固定されることで、上面部27が設けられている。
【0032】
下面部28は、上下方向を板厚方向とする略矩形板状の部分であり、左右の側面部26,26の下部間に水平状に架設されている。詳細には、各側面部26の下部(下端より若干上側の部分)には後側を開放側とし前後方向を長手方向とする切欠部が形成されており、矩形板状の部材がその左右両端部を左右の側面部26,26の切欠部に嵌合させた態様で各側面部26に固定されることで、下面部28が設けられている。このように、上面部27および下面部28は、互いに平行に設けられており、上下方向に対向する。
【0033】
前面部29は、前後方向を板厚方向とする板状の部分であり、左右の側面部26,26それぞれに対してR状の角部をなすように設けられている。
【0034】
本体固定部21は、後側開口部31と、前側開口部32とを有し、前後方向の両側を開口させている。つまり、本体固定部21は、後側開口部31および前側開口部32により前後両側を開放させた前後貫通状の形態を有する。詳細には次のとおりである。
【0035】
本体固定部21の後部は、左右の側面部26,26、上面部27、および下面部28により、略四角筒状の部分となっている。この略四角筒状の部分の後側の矩形状の開口部が、後側開口部31となる。なお、左右の側面部26,26、上面部27、および下面部28の各面部の後面は、鉛直面に沿うように略面一となっており、後側開口部31の開口端面をなす。
【0036】
また、前側開口部32は、本体固定部21の前側を、上下方向について、前面部29の上端部および下端部を除いた上下中間部の範囲で、かつ、左右方向について、前面部29の全体から左右の側面部26,26の前端部に及ぶ範囲で正面視矩形状に切り欠いた態様で形成されている。したがって、前面部29は、左右の側面部26,26の上端部間をつなぐ上辺部29aと、左右の側面部26,26の下端部間をつなぐ下辺部29bとを有し、前側開口部32は、上辺部29aの下面と、下辺部29bの上面と、左右の側面部26,26の前端面とにより形成されている。
【0037】
以上のように前後貫通状の形態を有する本体固定部21は、後述するようにアーム部12が有するアーム本体部51を前後に貫通させる。
【0038】
また、前面部29においては、上辺部29aの上側に、上方に山形状に突出した上突片部29cが設けられている。上突片部29cの前側の中央部には、係止ピン33が前方に向けて突設されている。係止ピン33は、円柱状の外形に沿う基部33aと、基部33aの前側に設けられ先端側にかけて縮径したテーパ部33bとを有する。基部33aの基端部には、円柱状の外形の略下半部を切り欠いた切欠部33cが形成されている。
【0039】
また、前面部29においては、下辺部29bの下側に、下方に半円状に膨出した下突片部29dが設けられている。下突片部29dの中央部には、ネジ孔34aが形成された螺挿部34が設けられている。螺挿部34は、ネジ孔34aを形成する部分として、下辺部29bの後側に突設された円筒状のボス部34bを有する。ネジ孔34aは、下辺部29bの前側に開口し、下辺部29bからボス部34bの内周面にかけて形成され、前後に貫通している。
【0040】
このように本体固定部21に設けられた係止ピン33および螺挿部34は、ドア4のドア前壁部4cに対する本体固定部21の位置決め固定に用いられる。
【0041】
固定バー部22は、前後方向を延設方向とする略棒状の部分であり、本体固定部21と一体的に設けられている。固定バー部22は、その前端部を、本体固定部21に固定させている。具体的には、固定バー部22の前端部は、本体固定部21の下面部28に対してその下側に溶接等により固設されている。このように、固定バー部22は、本体固定部21に固設されており、治具本体部11において本体固定部21と一体の部分をなす。
【0042】
固定バー部22は、多角形状の横断面形状を有し、その横断面形状をなす面として、水平面に沿う下面22aと、鉛直面状の左右の側面22b,22bとを有する。また、固定バー部22の上側、つまり可動バー部23に対向する側の部分は、横断面において上側にかけて幅狭となるテーパ状をなし、後述するようにアーム部12が有するアームガイド部52の係合を受けてアーム部12の動作をガイドする下ガイド縁部36となっている。
【0043】
可動バー部23は、前後方向を延設方向とする略棒状の部分であり、固定バー部22と略同じ長さを有し、固定バー部22に対して前後方向について略同じ範囲で、平面視で重なるように、固定バー部22と平行状に設けられている。また、可動バー部23は、左右方向の寸法および上下方向の寸法を、固定バー部22と略同じとする。
【0044】
可動バー部23は、多角形状の横断面形状を有し、その横断面形状をなす面として、水平面状の上面23aと、鉛直面状の左右の側面23b,23bとを有する。また、可動バー部23の下側、つまり固定バー部22に対向する側の部分は、横断面において下側にかけて幅狭となるテーパ状をなし、後述するようにアーム部12が有するアームガイド部52の係合を受けてアーム部12の動作をガイドする上ガイド縁部37となっている。可動バー部23の横断面形状は、固定バー部22の横断面形状と略上下対称の形状となっている。
【0045】
可動バー部23は、固定バー部22に対して近接・離間方向(上下方向)に移動可能に支持された状態で設けられている。可動バー部23は、治具本体部11の前部に設けられた前ガイド支柱38と、治具本体部11の後部に設けられた後ガイド支柱39とを上下方向に貫通させることで、前後のガイド支柱38,39間に架設された態様で、上下方向に平行移動可能に設けられている。
【0046】
前ガイド支柱38は、上下方向に沿う円柱棒状の部分であり、本体固定部21の上面部27の上面27a上の左右中央部に立設されている。後ガイド支柱39は、上下方向に沿う円柱棒状の部分であり、固定バー部22の後端部に形成された水平面状の上端面22c上に立設されている。前ガイド支柱38および後ガイド支柱39は、上端部同士を互いに略同じ高さに位置させる。このため、上面部27の上面27aよりも低い位置にある固定バー部22の上端面22c上に設けられた後ガイド支柱39の方が、前ガイド支柱38よりも長い。
【0047】
一方、可動バー部23側においては、前端部に、前ガイド支柱38を貫通させる前支持孔23eが形成されており、後端部に、後ガイド支柱39を貫通させる後支持孔23fが形成されている。前支持孔23eおよび後支持孔23fは、いずれも上下の開口端部を逆テーパ状に拡径させた円形状の上下貫通孔である。
【0048】
このように、可動バー部23は、前ガイド支柱38および後ガイド支柱39をガイド棒として、一体の部分である本体固定部21および固定バー部22を含む部分に対して、上下方向に移動可能に設けられている。可動バー部23は、その下方に位置する固定バー部22との間に、アーム部12のアームガイド部52を挟持する。
【0049】
付勢部24は、可動バー部23を固定バー部22に近接する方向(下方向)に付勢する部分である。付勢部24は、前ガイド支柱38および後ガイド支柱39それぞれの可動バー部23からの上方突出部分に設けられている。つまり、付勢部24は、可動バー部23に対して前端部および後端部の2箇所に設けられている。
【0050】
付勢部24は、ガイド支柱38,39に螺合した上ナット41および下ナット42と、下ナット42と可動バー部23との間に介装されたコイルスプリング43とを有する。
【0051】
上ナット41および下ナット42は、2連のナットからなるロックナットとして機能する。つまり、上ナット41の締付けにより、下ナット42についてゆるみ止め作用が生じる。ガイド支柱38,39の上部は、外周面にネジ面が形成された雄ネジ部38a,39aとなっており、この雄ネジ部38a,39aに上ナット41および下ナット42が螺合している。
【0052】
コイルスプリング43は、ガイド支柱38,39を貫通させた状態で設けられ、上下方向を伸縮方向とする。コイルスプリング43は、その上端部を下ナット42の下面に当接させるとともに、下端部を可動バー部23の上面23aに当接させ、下ナット42と可動バー部23との間に圧縮状態で介装されている。コイルスプリング43は、その弾性力により、可動バー部23を下方に向けて押圧付勢する。
【0053】
このような構成により、可動バー部23は、前後の付勢部24により前端部および後端部の各部で下向きの押圧作用を受けるとともに、上記のとおり固定バー部22との間にアーム部12のアームガイド部52を挟持することで、固定バー部22に対して平行状に支持されている。
【0054】
また、付勢部24は、可動バー部23に作用させる付勢力が調整可能に構成されている。具体的には、ガイド支柱38,39の雄ネジ部38a,39aにおける下ナット42の螺合位置が変化することで、コイルスプリング43の伸縮状態が変化し、コイルスプリング43の弾性力、つまり付勢部24から可動バー部23に作用する付勢力が変化する。
【0055】
すなわち、ガイド支柱38,39に対して下ナット42を回転させて下ナット42を下げることで、コイルスプリング43の弾性力が増大し、付勢部24から可動バー部23に作用する付勢力が増大する。逆に、ガイド支柱38,39に対して下ナット42を回転させて下ナット42を上げることで、コイルスプリング43の弾性力が減少し、付勢部24から可動バー部23に作用する付勢力が減少する。
【0056】
次に、アーム部12について説明する。
図2から
図6に示すように、アーム部12は、アーム本体部51と、アームガイド部52とを有する。
【0057】
アーム本体部51は、長手方向を略前後方向とし、固定バー部22および可動バー部23の対向方向、つまり上下方向について、固定バー部22と可動バー部23との間に位置する。アーム本体部51は、固定バー部22と可動バー部23との間に挟持されたアームガイド部52から前方に向けて延設され、後側開口部31および前側開口部32を有する本体固定部21を前後に貫通し、前側開口部32から前方に向けて突出している。
【0058】
アーム本体部51は、縦長長方形の横断面形状を有し、板厚方向を横方向とした前後に細長い板状の部分である。アーム本体部51は、側面視では前後方向を長手方向とする直線状の形状を有する一方、平面視でわずかに屈曲した屈曲形状を有する。
【0059】
詳細には、アーム本体部51は、後端がアームガイド部52に繋がった後アーム部51aと、後アーム部51aに対して平面視で後アーム部51aとともに所定の屈曲角度θ1をなすように右側に屈曲した前アーム部51bとを有する。屈曲角度θ1は、例えば165〜175°の範囲内の角度であり、好ましくは約170°である。また、本実施形態では、後アーム部51aと前アーム部51bの長さの比は、約1:2である。
【0060】
アーム本体部51は、その一端側(前端側)を車体本体3に連結させる。アーム本体部51は、車体本体3に連結させる部分として、アーム固定部53を有する。アーム固定部53は、前アーム部51bの前端部にブラケット部54を介して回動可能に支持されたアームネック55を有する。
【0061】
ブラケット部54は、上下方向に平行状に設けられた一対の支持片56を有する。支持片56は、上下方向を板厚方向とする板状の部分であり、前アーム部51bの前端部を受け入れた態様で前アーム部51bに溶接等により固設され、前アーム部51bの前端から前方に突設されている。支持片56は、前アーム部51bの前端部に接合された基部56aと、基部56aの前側に設けられ略円形状の外形に沿う支持部56bとを有する。
【0062】
アームネック55は、略円筒状の支持筒部55aと、支持筒部55aの外周面から突設された支持突片部55bとを有する。支持筒部55aは、円筒状の内周面による孔部55cを形成する。支持突片部55bは、支持筒部55aの外周面部から、支持筒部55aの筒軸方向に直交する方向、つまり支持筒部55aの径方向に突設されている。支持突片部55bは、支持筒部55aの筒軸方向について、一側(
図4において下側)に寄った位置から突設されている。そして、支持筒部55aの他側(
図4において上側)の開口端部は、孔部55cの孔径を維持しながら支持筒部55aの外径を徐々に縮径させたテーパ部55dとなっている。
【0063】
アームネック55は、支持突片部55bを、上下の支持片56間に介装させた状態で、上下の支持片56および支持突片部55bを上下方向に貫通する支軸57により、ブラケット部54に対して上下方向を回動軸方向として回動自在に支持されている。アームネック55は、ブラケット部54に支持された状態において、支持筒部55aの筒軸方向を略水平面に沿わせる。支持突片部55bと支持片56との間には、皿バネ58が支軸57を貫通させた状態で介装されている(
図3参照)。これにより、アームネック55は、ブラケット部54に対する円滑な回動性を有しながら回動位置が保持されるように支持されている。
【0064】
このようにアーム部12においてアーム本体部51の前端部に設けられたアームネック55を含むアーム固定部53は、車体本体3のドア開口部前壁3aに対するアーム部12の固定に用いられる。
【0065】
アームガイド部52は、アーム本体部51の他端側(後端側)に設けられ、固定バー部22と可動バー部23に挟持された状態で治具本体部11に対するアーム部12の移動をガイドする。アームガイド部52は、固定バー部22と可動バー部23の間に挟持されることでこれらのバー部間の間隔を保持しながら、固定バー部22の下ガイド縁部36および可動バー部23の上ガイド縁部37に係合した状態で、固定バー部22および可動バー部23に沿って前後に移動する。これにより、アームガイド部52は、アーム部12が治具本体部11に対して前後方向
にスライド移動する際のガイド部として機能する。
【0066】
アームガイド部52は、固定バー部22および可動バー部23それぞれに対してローラにより相対移動可能に設けられたものであり、アーム本体部51の後アーム部51aの後端部が固定されたローラ支持体61と、ローラ支持体61に回転自在に支持された上下2つのローラ62(62A,62B)とを有する。アームガイド部52は、アーム本体部51との接続態様を含めて略上下対称かつ左右対称に構成されている。
【0067】
ローラ支持体61は、左右一対の支持壁部64,64と、左右の支持壁部64,64間に架設された支持プレート部65とを有する。左右の64,64と支持プレート部65とは、互いに固定され、一体のローラ支持体61をなす。
【0068】
支持壁部64は、左右方向を板厚方向とするとともに側面視で上下方向を長手方向とする略矩形状の外形をなす板状の部分である。支持壁部64は、上下方向について、固定バー部22と可動バー部23の間の間隔よりもわずかに大きな寸法を有する。左右の支持壁部64,64は、互いに平行に設けられている。
【0069】
支持プレート部65は、略二等辺三角形状の外形を有する板状の部分であり、平面視で頂点側を前側とする向きで、左右の支持壁部64,64の前端部の上下中央部に嵌合した態様で溶接等により固定され、支持壁部64,64から水平状に前方に突出している。支持プレート部65は、その前部の左右中央部を後アーム部51aの後端部に形成された切欠部に嵌合させた態様で、溶接等により後アーム部51aの後端部に固設されている。これにより、ローラ支持体61は、アーム本体部51と一体の部分となっている。
【0070】
ローラ62は、略鼓状の外形を有する回転体であり、左右の支持壁部64,64間に架設されたローラ支軸66により、左右の支持壁部64,64間に回転自在に支持されている。ローラ支軸66は、左右方向を軸方向とし、左右の支持壁部64,64に対して溶接等により固設されている。ローラ支軸66は、ローラ62を貫通した状態で、左右のドライブッシュ67,67を介してローラ62を支持する。ドライブッシュ67は、鍔付きの筒状部材であり、ローラ支軸66を貫通させるとともにローラ62の回転軸方向の両側に挿嵌されている。上下のローラ62は、ローラ支持体61に対して前後方向について共通の位置に配置されるとともに、上下方向については互いに干渉しないように所定の間隔を開けて設けられている。
【0071】
2つのローラ62は、固定バー部22および可動バー部23のそれぞれに対する接触部であって治具本体部11に対するアーム部12の移動にともなって転動する。すなわち、下側のローラ62Aは、固定バー部22の下ガイド縁部36に対する接触部となり、上側のローラ62Bは、可動バー部23の上ガイド縁部37に対する接触部となり、これらのローラ62は、固定バー部22および可動バー部23に対するアームガイド部52の相対移動にともなって回転する。
【0072】
以上のような構成を備えたドア保持治具1において、固定バー部22には、アームガイド部52を係合させる係合凹部70が設けられる。係合凹部70は、固定バー部22および可動バー部23の相対位置が一定の状態においてこれらのバー部間の間隔(上下に対向する面間寸法)を前後方向の位置により変化させる凹凸をなす部分となる。係合凹部70は、固定バー部22の上面部における凹部として設けられている。つまり、係合凹部70は、固定バー部22の上端の水平状の上面22dに対する凹部である。
【0073】
本実施形態では、係合凹部70として、アームガイド部52を係合させることで、アーム部12を、治具本体部11に対して、ドア4の開き端位置、閉じ端位置、および中間位置の各位置に対応する部位で位置決めするための凹状の部分が設けられている。
【0074】
すなわち、本実施形態では、係合凹部70として、アーム部12を治具本体部11に対してドア4の開き端位置に対応する部位で位置決めするための開端係合凹部70Aと、アーム部12を治具本体部11に対してドア4の閉じ端位置に対応する部位で位置決めするための閉端係合凹部70Bと、アーム部12を治具本体部11に対してドア4の中間位置に対応する部位で位置決めするための中間位置係合凹部70Cとが設けられている。これらの係合凹部70の配置に関し、固定バー部22の前側から後側にかけて開端係合凹部70A、中間位置係合凹部70C、および閉端係合凹部70Bの順に設けられている。前側に位置する係合凹部70ほど、本体固定部21からのアーム本体部51の前方への突出量を多くする。
【0075】
これらの係合凹部70は、アームガイド部52のローラ62の接触を受ける面として、固定バー部22および可動バー部23の延設方向、つまり前後方向について傾斜した傾斜面を含む。具体的には次のとおりである。
【0076】
開端係合凹部70Aは、固定バー部22の前端部に設けられている。開端係合凹部70Aは、ローラ62の当接を受けるガイド面として、前下がりの傾斜面71aと、傾斜面71aの前側に連続した水平面71bとを有する。傾斜面71aが、開端係合凹部70Aにおいて前後方向に傾斜した傾斜面となる。
【0077】
中間位置係合凹部70Cは、固定バー部22の前後中間部に設けられている。中間位置係合凹部70Cは、ローラ62の当接を受けるガイド面として、前下がりの第1傾斜面72aと、第1傾斜面72aの前側に連続した後下がりの第2傾斜面72bとを有する。中間位置係合凹部70Cは、第1傾斜面72aおよび第2傾斜面72bにより、側面視で偏平なV字状をなす。第1傾斜面72aおよび第2傾斜面72bが、中間位置係合凹部70Cにおいて前後方向に傾斜した傾斜面となる。中間位置係合凹部70Cは、ドア4の開度が例えば45°程度となるように、アーム部12を治具本体部11に対して位置決めさせる位置に設けられる。
【0078】
閉端係合凹部70Bは、固定バー部22の後端部に設けられている。閉端係合凹部70Bは、ローラ62の当接を受けるガイド面として、後下がりの傾斜面73aと、傾斜面73aの後側に連続した湾曲面73bとを有する。傾斜面73aが、閉端係合凹部70Bにおいて前後方向に傾斜した傾斜面となる。湾曲面73bは、側面視で弧状をなす凹面であり、後ガイド支柱39が立設された固定バー部22の上端面22cの前側にて上端面22cとともに側面視で略直角状の角部を形成する。閉端係合凹部70Bは、傾斜面73aおよび湾曲面73bにより側面視で略J字状をなす凹部となっている。
【0079】
以上のような各係合凹部70が有する傾斜面の傾斜角度は、特に限定されるものではないが、例えば10〜20°程度である。これらの係合凹部70に対して、固定バー部22の下ガイド縁部36に係合した下側のローラ62Aが作用し、アーム部12を治具本体部11に対して位置決めさせる。
【0080】
ここで、固定バー部22の下ガイド縁部36、可動バー部23の上ガイド縁部37、およびこれらに係合するローラ62、並びにこれらの係合構造について説明する。
【0081】
固定バー部22および可動バー部23は、互いに対向する側の縁部に、それぞれテーパ部としての下ガイド縁部36および上ガイド縁部37を有する。下ガイド縁部36は、固定バー部22の横断面視で可動バー部23に対向する側と反対側(下側)から可動バー部23に対向する側(上側)にかけて徐々に幅狭とする斜面36a,36aをなす。また、上ガイド縁部37は、可動バー部23の横断面視で固定バー部22に対向する側と反対側(上側)から固定バー部22に対向する側(下側)にかけて徐々に幅狭とする斜面37a,37aをなす。なお、固定バー部22および可動バー部23は、左右対称の形状を有する。
【0082】
詳細には、固定バー部22において、左右の側面22b,22bをなす部分の左右幅に対し、下ガイド縁部36の左右幅は、左右の斜面36a,36aにより下側から上側にかけて徐々に狭くなっている。そして、固定バー部22において、左右の斜面36a,36aは、複数の係合凹部70が形成された上面部の凹凸形状にならって、下側のローラ62Aの接触部分となる、前後の端部を除いた大部分に形成されている。同様に、可動バー部23において、左右の側面23b,23bをなす部分の左右幅に対し、上ガイド縁部37の左右幅は、左右の斜面37a,37aにより上側から下側にかけて徐々に狭くなっている。可動バー部23の下端には、水平状の下面23dが形成されている。そして、可動バー部23において、左右の斜面37a,37aは、上側のローラ62Bの接触部分となる、前後の端部を除いた大部分に形成されている。
【0083】
ローラ62は、その回転軸方向(以下「ローラ軸方向」という。)の両側に拡径部81を有する。すなわち、ローラ62は、
図6に示すように、ローラ軸方向の中間部分をなす円筒状の中間部82と、中間部82のローラ軸方向の両側に設けられローラ62のローラ軸方向の両端部をなす拡径部81,81とを有する。
【0084】
拡径部81は、その外周面として、ローラ軸方向の外側から中央側にかけてローラ62を徐々に縮径させるテーパ面部81aと、テーパ面部81aの左右外側の円筒面部81bとを有する。テーパ面部81aは、中間部82の外周面82aと、円筒面部81bとを繋ぐ面部となる。
【0085】
下ガイド縁部36および上ガイド縁部37それぞれに対するローラ62の係合構造として、ローラ62は、ローラ軸方向について、拡径部81,81間に下ガイド縁部36および上ガイド縁部37を位置させる。すなわち、下側のローラ62Aは、左右の拡径部81,81間に下ガイド縁部36を位置させ、中間部82の外周面82aに固定バー部22の上面22dを接触させた状態で、下ガイド縁部36に係合する。また、上側のローラ62Bは、左右の拡径部81,81間に上ガイド縁部37を位置させ、中間部82の外周面82aに可動バー部23の下面23dを接触させた状態で、上ガイド縁部37に係合する。
【0086】
そして、
図6に示すように、ローラ62の中間部82の左右方向の寸法D1は、固定バー部22の上面22dの左右方向の寸法D
3および可動バー部23の下面23dの左右方向の寸法D
2それぞれよりも大きい。また、
図6に示すような横断面において、ローラ62のテーパ面部81aの鉛直方向に対する傾斜角度は、下ガイド縁部36および上ガイド縁部37それぞれの斜面36a、37aの同傾斜角度よりも大きい。つまり、
図6に示す横断面において、下ガイド縁部36および上ガイド縁部37それぞれのローラ62との接触部における左右のテーパ面部81a,81aの左右外側への広がりの程度は、左右の斜面36a,36a(斜面37a,37a)の広がりの程度よりも大きい。
【0087】
これらの各部の寸法・角度の大小関係により、下ガイド縁部36および上ガイド縁部37それぞれのローラ62との接触部において、斜面36a、37aと、ローラ62のテーパ面部81aとの間に隙間83が存在する。これにより、アーム部12は、下ガイド縁部36および上ガイド縁部37それぞれのローラ62との接触部を回動中心部として、左右方向に回動可能となっている(
図4、矢印X1参照)。このアーム部12の左右方向の回動範囲は、本体固定部21の左右の
側面部26,26にアーム本体部51が当接するまでの範囲となる。
【0088】
また、アーム部12は、上下のローラ62により治具本体部11に接触したアームガイド部52の傾動をともなって、上下方向に回動可能となっている(
図3、矢印X2参照)。このアーム部12の上下方向の回動範囲は、本体固定部21の前側開口部32を形成する上辺部29aおよび下辺部29bにアーム本体部51が当接するまでの範囲となる。
【0089】
また、本実施形態のドア保持治具1において、固定バー部22および可動バー部23には、前後方向について、開端係合凹部70Aと中間位置係合凹部70Cとの間に、車体2に対するドア保持治具1の着脱に際してアームガイド部52を係合させる着脱用係合凹部90が設けられている。
【0090】
本実施形態では、治具本体部11は、着脱用係合凹部90として、固定バー部22に設けられた下着脱用係合凹部90Aと、上着脱用係合凹部90Bとを有する。下着脱用係合凹部90Aと上着脱用係合凹部90Bは、互いに上下方向に対向する位置に設けられている。
【0091】
着脱用係合凹部90は、ドア保持治具1の治具本体部11およびアーム部12による伸縮状態やドア4の開度状態を、車体本体3に対するドア保持治具1の着脱作業が行いやすい状態とするために、アーム部12を治具本体部11に対して位置決めする部位である。本実施形態では、着脱用係合凹部90は、前後方向について、開端係合凹部70Aと中間位置係合凹部70Cとの間に設けられているが、中間位置係合凹部70Cと閉端係合凹部70Bとの間に設けられてもよい。
【0092】
着脱用係合凹部90は、アームガイド部52を係合させることで、アーム部12を、治具本体部11に対して、車体2に対するドア保持治具1の着脱に用いるための位置で位置決めするための凹状の部分である。ここで、車体2に対するドア保持治具1の着脱には、治具本体部11のドア4に対する着脱、およびアーム部12の車体本体3に対する着脱が含まれる。
【0093】
下着脱用係合凹部90Aは、固定バー部22の上面部における凹部として設けられている。下着脱用係合凹部90Aは、固定バー部22において、前後方向について、開端係合凹部70Aの傾斜面71aと中間位置係合凹部70Cの第2傾斜面72bとの間に設けられている。下着脱用係合凹部90Aは、下側のローラ62の当接を受けるガイド面として、前下がりの第1傾斜面91aと、第1傾斜面91aの前側に連続した後下がりの第2傾斜面91bとを有する。第1傾斜面91aおよび第2傾斜面91bは、前後方向に傾斜した傾斜面である。下着脱用係合凹部90Aは、第1傾斜面91aおよび第2傾斜面91bにより側面視で偏平なV字状をなす。
【0094】
上着脱用係合凹部90Bは、可動バー部23の下面部における凹部として設けられている。上着脱用係合凹部90Bは、可動バー部23において、前後方向について、固定バー部22の下着脱用係合凹部90Aと上下に対応する位置に設けられている。上着脱用係合凹部90Bは、上側のローラ62の当接を受けるガイド面として、前上がりの第1傾斜面92aと、第1傾斜面92aの前側に連続した後上がりの第2傾斜面92bとを有する。第1傾斜面92aおよび第2傾斜面92bは、前後方向に傾斜した傾斜面である。上着脱用係合凹部90Bは、第1傾斜面92aおよび第2傾斜面92bにより側面視で偏平な逆V字状をなす。なお、本実施形態では、上着脱用係合凹部90Bは、前後方向について、中心位置(第1傾斜面と第2傾斜面の境界位置)を下着脱用係合凹部90Aと同じとするとともに、下着脱用係合凹部90Aよりも広い範囲に設けられている。
【0095】
以上のような構成を備えた本実施形態のドア保持治具1の車体2に対する取付構造および取付方法について、
図1、
図7および
図8を用いて説明する。
【0096】
図7に示すように、ドア保持治具1は、車体2への取付に際し、アームガイド部52を着脱用係合凹部90に係合させ、アーム部12が治具本体部11に対して着脱用の位置に位置決めされた状態となる。かかる状態において、下側のローラ62Aは、下着脱用係合凹部90Aの前後中央部、つまり第1傾斜面91aと第2傾斜面91bと境界部分に位置し、上側のローラ62Bは、上着脱用係合凹部90Bの前後中央部、つまり第1傾斜面92aと第2傾斜面92bとの境界部分に位置する。
【0097】
ドア保持治具1は、まず、ドア4のインナパネル4aに形成された円形状の側面開口部4d(
図1参照)からドア内空間4sの内部に入れられ、本体固定部21から前方に突出したアーム本体部51が、ドア前壁部4cに形成された前側開口部4eから前方に出される。なお、側面開口部4dは、例えばドア4に設置されるスピーカ取付用の開口部である。また、前側開口部4eは、矩形状の孔部であり、上下方向および左右方向について、本体固定部21の外形寸法よりも小さい寸法を有する。
【0098】
ドア保持治具1は、前側開口部4eからアーム本体部51を前方に突出させた状態において、係止ピン33を、ドア前壁部4cにおいて前側開口部4eの上方の部位に形成された係止孔4fに係止させる。すなわち、ドア保持治具1は、係止ピン33を係止孔4fから前方に向けて突出させた状態で、治具本体部11を押し下げられることにより、係止ピン33の切欠部33cに、係止孔4fの下側縁部を嵌め込ませる。これにより、治具本体部11がドア4に仮止めされた状態となる。
【0099】
治具本体部11がドア4に仮止めされた状態において、ドア4側用の取付ボルト101により、治具本体部11がドア前壁部4cに固定される。取付ボルト101は、
図7(a)に示すように、軸方向に長い頭部101aと、頭部101aと略同じ長さの軸部101bとを有し、軸部101bの基部側(頭部101a側)の部分に、ネジ面をなすネジ部101cが形成されている。
【0100】
取付ボルト101は、ドア前壁部4cにおいて前側開口部4eの下方の部位に形成されたボルト孔4gを前側から貫通し、本体固定部21に設けられた螺挿部34に螺挿される。ここで、取付ボルト101のネジ部101cが、螺挿部34のネジ孔34aにネジ係合する。このように、治具本体部11は、係止ピン33および取付ボルト101によりドア4に対して位置決めされて固定され、ドア4に取り付けられた状態となる。
【0101】
次に、車体本体3に対するアーム部12の取付けが行われる。車体本体3に対するアーム部12の取付けには、車体本体3側用の取付ボルト102が用いられる。取付ボルト102は、
図8(a)に示すように、頭部102aと、軸部102bとを有し、軸部102bの中間部分に、ネジ面をなすネジ部102cが形成されている。
【0102】
アーム部12の車体本体3に対する固定に際しては、
図8(a)に示すように、まず、アームネック55の支持筒部55aに取付ボルト102が差し込まれ、取付ボルト102の軸部102bのネジ部102cよりも先端側の軸先端側部102dが、車体本体3のドア開口部前壁3aに形成された取付孔3bから差し込まれる。これにより、取付ボルト102は、ドア開口部前壁3aの内側に溶接等により固定されたナット103を後側(図において右側)から貫通し、ナット103から軸先端側部102dを突出させ、支持筒部55aは、取付孔3bにあてがわれる。ここで、支持筒部55aが取付孔3bにあてがわれる際、テーパ部55dにより、取付孔3bに対する支持筒部55aの位置決めが容易に行われる。
【0103】
そして、
図8(b)に示すように、支持筒部55aおよびナット103を貫通した取付ボルト102は、ネジ部102cによりナット103に螺合することで締結される。これにより、取付ボルト102とナット103によってドア開口部前壁3aに対して支持筒部55aが固定され、これによってアーム部12のアーム固定部53が車体本体3に固定され、アーム部12が車体本体3に取り付けられた状態となる。
【0104】
以上のようにして取り付けられたドア保持治具1の動作について、
図9および
図10を用いて説明する。
【0105】
まず、
図9(a)および
図10(a)に、ドア4が閉じた状態、つまりドア4が閉じ端位置に位置する状態(以下「ドア閉じ状態」という。)でのドア保持治具1の状態を示す。
【0106】
図9(a)および
図10(a)に示すように、ドア閉じ状態において、ドア保持治具1では、アームガイド部52が閉端係合凹部70Bに係合した状態となっている。すなわち、ドア閉じ状態において、下側のローラ62Aは、閉端係合凹部70Bの傾斜面73aおよび湾曲面73bの少なくともいずれか一方に接触した状態となっている。
【0107】
このように、ドア閉じ状態においては、アーム部12が治具本体部11に対してドア4の閉じ端位置に対応する部位で前後方向について位置決めされる。詳細には、付勢部24の付勢力によりアームガイド部52に作用する可動バー部23と固定バー部22による挟持力により、下側のローラ62Aが傾斜面73aを上る方向(前方)へのアームガイド部52の移動が規制され、アーム部12が位置決めされる。そして、このドア閉じ状態におけるアーム部12の治具本体部11に対する位置決めは、閉端係合凹部70Bの傾斜面73aおよび湾曲面73bの形成範囲内の部位にローラ62Aを位置させるものであり、傾斜面73aおよび湾曲面73bの形成範囲をローラ62Aの可動範囲とする緩やかな位置決めである。
【0108】
図9(b)および
図10(b)に、ドア4が所定の開度で開いた状態、つまりドア4が中間位置に位置する状態(以下「ドア中開き状態」という。)でのドア保持治具1の状態を示す。
【0109】
ドア閉じ状態からドア中開き状態となる際、ドア4の開き方向への回動にともない、ドア4に固定された治具本体部11がドア4とともに移動し、車体本体3に固定されたアーム部12が治具本体部11に対して相対的に前方に移動し、アームガイド部52が閉端係合凹部70Bから中間位置係合凹部70Cに移動する。
【0110】
ここで、下側のローラ62Aが傾斜面73aを上ることにともない、アームガイド部52は、付勢部24の付勢力に抗して可動バー部23を固定バー部22に対して上昇させ、固定バー部22と可動バー部23の間の間隔を広げる。これにより、アームガイド部52に作用する挟持力が増大する。そして、アームガイド部52は、増大した挟持力を受けながら、ドア4の回動にともなって、下側のローラ62Aを、閉端係合凹部70Bと中間位置係合凹部70Cとの間の平面(上面22d)上で転動させるとともに、上側のローラ62Aを、可動バー部23の下面23d上で転動させながら移動し、下側のローラ62Aが中間位置係合凹部70Cの第1傾斜面72aに達することで、付勢部24の付勢力によりアームガイド部52が可動バー部23を介して押し下げられ、下側のローラ62Aが中間位置係合凹部70Cに嵌った状態となる。
【0111】
このように、ドア中開き状態では、
図9(b)および
図10(b)に示すように、アームガイド部52が中間位置係合凹部70Cに係合した状態となっている。すなわち、ドア中開き状態において、下側のローラ62Aは、中間位置係合凹部70Cの第1傾斜面72aおよび第2傾斜面72bの両方に接触した状態となっている。
【0112】
このように、ドア中開き状態においては、アーム部12が治具本体部11に対してドア4の中間位置に対応する部位で前後方向について位置決めされる。詳細には、付勢部24の付勢力によりアームガイド部52に作用する挟持力により、下側のローラ62Aが第1傾斜面72aを上る方向(後方)および第2傾斜面72bを上る方向(前方)へのアームガイド部52の移動が規制され、アーム部12が位置決めされる。そして、このドア中開き状態におけるアーム部12の治具本体部11に対する位置決めは、中間位置係合凹部70Cの第1傾斜面72aおよび第2傾斜面72bの境界の部位にローラ62Aを位置させるものである。
【0113】
なお、本実施形態では、中間位置係合凹部70Cは、第1傾斜面72aおよび第2傾斜面72bにより側面視で略V字状をなす凹部であるが、これに限定されるものではなく、ローラ62を位置決めさせる部位であればよい。したがって、中間位置係合凹部70Cとしては、例えば、側面視で略半円状をなす凹部等であってもよい。つまり、前後方向について傾斜した傾斜面を含む係合凹部70は、少なくとも開端係合凹部70Aおよび閉端係合凹部70Bであればよい。
【0114】
図9(c)および
図10(c)に、ドア4が全開の状態、つまりドア4が開き端位置に位置する状態(以下「ドア開き状態」という。)でのドア保持治具1の状態を示す。
【0115】
ドア中開き状態からドア開き状態となる際、上述のとおりドア4の開き方向への回動にともなってアーム部12が治具本体部11に対して相対的に前方に移動し、アームガイド部52が中間位置係合凹部70Cから開端係合凹部70Aに移動する。
【0116】
ここで、まず、下側のローラ62が第2傾斜面72bを上ることにともない、アームガイド部52は、固定バー部22と可動バー部23の間の間隔を広げ、これにより、アームガイド部52に作用する挟持力が増大する。そして、アームガイド部52(ローラ62)が着脱用係合凹部90に達することで、一旦、固定バー部22と可動バー部23の間の間隔を狭めた後、下側のローラ62Aが下着脱用係合凹部90Aの第2傾斜面91bを上るとともに上側のローラ62Bが上着脱用係合凹部90Bの第2傾斜面92b上を転動することにともない、再度固定バー部22と可動バー部23の間の間隔を広げる。その後、下側のローラ62Aが開端係合凹部70Aの傾斜面71aに達することで、付勢部24の付勢力によりアームガイド部52が可動バー部23を介して押し下げられ、下側のローラ62Aが開端係合凹部70Aに嵌った状態となる。
【0117】
このように、ドア開き状態では、
図9(c)および
図10(c)に示すように、アームガイド部52が開端係合凹部70Aに係合した状態となっている。すなわち、ドア開き状態において、下側のローラ62Aは、開端係合凹部70Aの傾斜面71aおよび水平面71bの少なくともいずれか一方に接触した状態となっている。
【0118】
このように、ドア開き状態においては、アーム部12が治具本体部11に対してドア4の中間位置に対応する部位で前後方向について位置決めされる。詳細には、付勢部24の付勢力によりアームガイド部52に作用する挟持力により、下側のローラ62Aが傾斜面71aを上る方向(後方)へのアームガイド部52の移動が規制され、アーム部12が位置決めされる。そして、このドア開き状態におけるアーム部12の治具本体部11に対する位置決めは、傾斜面71aおよび水平面71bの形成範囲内の部位にローラ62Aを位置させるものであり、傾斜面71aおよび水平面71bの形成範囲をローラ62Aの可動範囲とする緩やかな位置決めである。
【0119】
以上のような本実施形態のドア保持治具1によれば、塗装不良の原因となる塗料の剥がれ落ちを防止することができるとともに、簡単な構成で、高い汎用性および良好な作業性を得ることができる。こうした効果が得られることについて具体的に説明する。
【0120】
本実施形態のドア保持治具1において、車体2の塗装工程で塗料の付着を受ける部分は、ドア4の前側開口部4eから突出して車体本体3に固定されたアーム部12のアーム本体部51である。つまり、ドア4に固定された治具本体部11、およびこれに係合したアーム部12のアームガイド部52は、ドア4のドア内空間4s内に位置することから、塗料の付着を受けない。
【0121】
そして、ドア4の開閉にともなうドア保持治具1の動作において、部材同士の摺接部分となるのは、治具本体部11に対するアームガイド部52の係合部分、つまり固定バー部22および可動バー部23に対する上下のローラ62の接触部分である。したがって、塗料の付着を受けたアーム本体部51は、ドア保持治具1の動作において、他の部分と接触することがない。つまり、ドア保持治具1における塗料付着面が他の部分と接触することを防止することができる。
【0122】
このため、ドア保持治具1に付着した塗料(塗装被膜)が剥がれ落ちることを防止することができる。これにより、剥がれ落ちた塗装被膜が車体本体3の他の部分に付着することで生じるブツ等の塗装不良の発生を防止することができる。
【0123】
また、本実施形態のドア保持治具1は、治具本体部11を構成する固定バー部22において、アーム部12をドア4の開き端位置、閉じ端位置、および中間位置の各位置に対応する部位で位置決めする係合凹部70を有し、開端係合凹部70Aおよび閉端係合凹部70Bは、前後方向について傾斜した傾斜面を有する。
【0124】
このような構成によれば、各係合凹部70において、前後方向について凹部を形成する面の形成範囲の任意の位置にアームガイド部52を係合させることができ、その範囲で、アーム部12の位置決めの位置を変化させることができる。つまり、係合凹部70による治具本体部11に対するアーム部12の位置決めの位置に幅を持たせることが可能となる。これにより、治具本体部11における各係合凹部70によるアーム部12の位置決めの位置を、その幅内(係合凹部70におけるローラ62の可動範囲内)で、車体本体3とドア4の大きさや形状あるいはドア4の開度等に応じて変化させることができる。これにより、ドア保持治具1を異なる車種間で共用することが可能となり、高い汎用性を得ることができる。
【0125】
また、汎用性に関し、ドア保持治具1は、左右のドア4について共用される。ここで、ドア保持治具1は、左右方向に屈曲したアーム本体部51や、アームネック55を含むアーム固定部53等の左右非対称の構造部分を有する関係上、左右反対側のドア4で用いられる場合、上下反対向きで車体2に取り付けられる。
【0126】
具体的には、
図11に示すように、本実施形態のドア保持治具1が左側のドア4に用いられる場合、右側のドア4に用いられる場合(
図1参照)に対して、車体2に対する取付状態が上下反対となる。したがって、左側のドア4のドア前壁部4cにおいては、前側開口部4eの下方の部位に、係止ピン33に対する係止孔4fが設けられ、前側開口部4eの上方の部位に、取付ボルト101に対するボルト孔4gが設けられる。そして、左側のドア4に対する治具本体部11の仮止めに際しては、係止ピン33を係止孔4fから突出させた状態の治具本体部11を押し上げることにより、係止ピン33の切欠部33cに、ドア前壁部4cの係止孔4fの上側縁部が嵌め込まれる。
【0127】
このように、ドア保持治具1によれば、例えば4ドアの自動車であっても、自動車が有する全てのドア4について共通のドア保持治具1により対応することが可能である。なお、後側のドアの場合、前側のドア4と同様にそのドアの前壁部に取付ボルト101によって治具本体部11が固定されるとともに、センターピラー6(
図1参照)等により形成される後側のドア開口部における前側の壁部に、取付ボルト102等によってアーム部12のアーム固定部53が固定される。
【0128】
このように、本実施形態のドア保持治具1によれば、車種毎あるいは自動車におけるドア毎(例えば左・右、フロント・リアのドア毎)に専用の治具を用意する必要がなくなるので、治具の生産性や管理性を向上することができ、また、治具の取付けの間違いを防止することができ、作業性を向上することができる。
【0129】
また、本実施形態のドア保持治具1によれば、開端係合凹部70A、閉端係合凹部70B、および中間位置係合凹部70Cにより、ドア4を開き端位置、閉じ端位置、および中間位置の各位置で位置決めすることができる。このため、例えば治具構造として平面部に部材を押し付けてドアを停止させる構造を有する構成等と比べて、工場のラインでのコンベア等による車体の搬送中の振動や車体の停止時・起動時の惰性によりドアが開閉することを防止することができ、良好な作業性を得ることができる。
【0130】
また、本実施形態のドア保持治具1は、その全体的な構成として、ドア4に固定される治具本体部11と、車体本体3に固定されるアーム部12とからなる前後伸縮構造を有する。このため、ドア保持治具1によれば、シンプルかつコンパクトな構成を実現することができるとともに、全体的な動作態様を前後方向の直線的なものとすることができる。したがって、ドア4内において必要とされるドア保持治具1の取付スペースおよび動作スペースを小さくすることができる。ドア4内において必要とされるスペースが小さくなることは、汎用性の向上に繋がる。
【0131】
特に、本実施形態のドア保持治具1において、治具本体部11は、上下に互いに平行に配された固定バー部22および可動バー部23を主たる部分として構成されており、上下方向についてこれらのバー部の間にアーム部12が設けられている。このような構成によれば、左右幅を可及的に小さくしたスリムな構成を実現することができ、ドア4内において必要とされるスペースを効果的に小さくすることができる。
【0132】
また、本実施形態のドア保持治具1において、治具本体部11に対してアーム部12を位置決めするための係合凹部70は、固定バー部22に設けられている。
【0133】
このような構成によれば、固定バー部22が、ドア4に固定される本体固定部21と一体の部分であることから、治具本体部11においてドア4に固定された部分により、アーム部12を治具本体部11に対して位置決めすることができるので、アーム部12の位置決め状態について高い安定性を得ることが可能となる。これにより、例えば、ドア4の中間位置に対応する中間位置係合凹部70Cによるアーム部12の位置決め作用について、次のような効果を得ることができる。
【0134】
中間位置係合凹部70Cは、第1傾斜面72aおよび第2傾斜面72bよるV字溝状となっている。このため、付勢部24の付勢力による挟持力を受けるアームガイド部52は、下側のローラ62Aを中間位置係合凹部70Cの前後中央位置に位置させた状態で位置決めされる。そして、中間位置係合凹部70Cは、ドア4に固定された固定バー部22に設けられている。これらのことから、ドア4の中間位置での位置決めについては、高い位置決め精度を得ることができる。
【0135】
したがって、ドア4の開閉操作がロボットにより行われる車体2の塗装工程において、ロボットが、中間位置にあるドア4の開閉操作に際し、中間位置にあるドア4に対して所定の部位に係合する動作を行う場合、ドア4が高い精度で位置決めされることで、ロボットによるドア4に対する係合動作の正確性を向上することができる。つまり、ロボットが中間位置にあるドア4を掴みに行く際の正確性を向上することができる。ここで、ロボットが係合するドア4の所定の部位は、例えば、ドア4におけるウインドウが出没するスリット状の隙間部分であり、この部分にロボットが掛止することで、ロボットがドア4に係合する。
【0136】
なお、治具本体部11において、係合凹部70は、可動バー部23に設けられてもよい。つまり、係合凹部70は、固定バー部22および可動バー部23の少なくともいずれか一方に設けられればよい。
【0137】
また、本実施形態のドア保持治具1は、固定バー部22および可動バー部23において、車体2に対するドア保持治具1の着脱に際してアーム部12を治具本体部11に対して位置決めする着脱用係合凹部90を有する。
【0138】
このような構成によれば、車体2に対するドア保持治具1の取付け・取外しが容易となり、ドア保持治具1の着脱作業性を向上することができ、塗装工程における作業効率を向上させることができる。すなわち、ドア4の中間の保持位置として、ドア開口部前壁3aやドア前壁部4c等に対する塗装に適した保持位置、およびドア保持治具1の着脱に適した保持位置のそれぞれについて最適な位置でドア4を保持することが可能となり、車体2に対する塗装作業性およびドア保持治具1の着脱作業性を向上することができる。ただし、着脱用係合凹部90としては、中間位置係合凹部70Cが共用されてもよい。
【0139】
また、本実施形態では、着脱用係合凹部90が、固定バー部22および可動バー部23の両方に設けられている。このため、ドア保持治具1の着脱に際してアーム部12を治具本体部11に対して確実に位置決めすることができるので、ドア4の位置決め性が良く、ドア保持治具1の着脱作業においてドア4の位置を安定して保持することができる。なお、着脱用係合凹部90は、固定バー部22または可動バー部23の一方に設けられてもよい。つまり、着脱用係合凹部90は、固定バー部22および可動バー部23の少なくともいずれか一方に設けられればよい。
【0140】
また、本実施形態のドア保持治具1において、付勢部24は、可動バー部23に作用させる付勢力が調整可能に構成されている。
【0141】
このような構成によれば、例えば、固定バー部22および可動バー部23に対するローラ62の接触部における摩耗等により、アームガイド部52に作用する挟持力が減少した場合であっても、付勢部24の付勢力の調整により、アームガイド部52に作用する挟持力を所定の値に保持することが可能となる。これにより、長期間、ドア4の開閉操作についての操作感を一定に保持することができ、ドア保持治具1の耐久性を向上することが可能となる。また、例えば、車体2の塗装工程において、ロボットによりドア4の開閉操作が行われる場合、付勢部24の付勢力の調整により、ロボットの操作力に応じて、ドア4の開閉に必要な操作力を調整することが可能となる。
【0142】
特に、本実施形態では、付勢部24は、治具本体部11の前端部および後端部の2箇所に設けられており、前側の付勢部24が、開端係合凹部70Aの近傍に設けられ、後側の付勢部24が、閉端係合凹部70Bの近傍に設けられている。このような構成によれば、前側の付勢部24の付勢力が、主として開端係合凹部70Aに係合するアームガイド部52に挟持力を作用させ、後側の付勢部24の付勢力が、主として閉端係合凹部70Bに係合するアームガイド部52に挟持力を作用させる。したがって、前後の付勢部24の付勢力の調整により、ドア4を開き端位置に移動させる際の操作力、およびドア4を閉じ端位置に移動させる際の操作力をそれぞれ独立的に調整することが可能となる。
【0143】
また、本実施形態のドア保持治具1は、アームガイド部52において上下2つの略鼓状のローラ62を有するとともに、固定バー部22および可動バー部23それぞれにおいて各ローラ62の係合部分に左右の斜面36a、37aをなす下ガイド縁部36および上ガイド縁部37を有する。
【0144】
このような構成によれば、治具本体部11に対して前後にスライド移動するアーム部12を、別途支持軸等を設けることなく、左右方向および上下方向について回動させることが可能となる。これにより、係合凹部70により幅を持たせたアーム部12の前後方向の位置決めに加え、治具本体部11に対するアーム部12の姿勢について自由度を持たせることが可能となる。したがって、アーム部12の左右方向および上下方向それぞれの回動範囲内で、治具本体部11に対するアーム部12の姿勢を、車体本体3とドア4の大きさや形状等に応じて変化させることができるので、高い汎用性を得ることができる。
【0145】
また、本実施形態のドア保持治具1は、ドア4に対する治具本体部11の取付構造として、係止ピン33と取付ボルト101による取付構造を採用している。このような構成によれば、2箇所ともボルト締結が行われる場合と比べて、確実な位置決めを行いながら、ドア4に対する治具本体部11の着脱作業の時間を短縮することが可能となる。
【0146】
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係る車両用ドア保持治具は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
【0147】
上述した実施形態において、ドア4に対する治具本体部11の取付構造、および車体本体3に対するアーム部12の取付構造は、いずれもボルトを用いた締結構造であるが、これらの取付構造は上述した実施形態に限定されるものではない。これらの取付構造は、例えばフック等による係止構造等であってもよい。ただし、治具本体部11およびアーム部12と取付状態の安定性や治具本体部11に対するアーム部12の位置決めの安定性の観点からは、上述した実施形態のようにボルト等による締結構造が好ましい。
【0148】
また、上述した本実施形態において、付勢部24は、治具本体部11の前端部および後端部の2箇所に設けられているが、付勢部24の配置位置は特に限定されるものではなく、また、付勢部24の配置箇所数は1箇所であっても3箇所以上であってもよい。また、付勢部24としては、可動バー部23を固定バー部22に近接する方向に付勢する作用をなす構造であれば、その構造は特に限定されるものではない。ただし、シンプルな構成を実現する観点からは、本実施形態の付勢部24のように、固定バー部22上に立設されて可動バー部23を貫通するガイド支柱(38,39)にコイルスプリング43を設け、可動バー部23の動作のガイド部と可動バー部23に付勢力を作用させる部分とを兼ねた構成が好ましい。