(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来技術の一例として、ワークWがチップ露出パッケージ(基板Wa上のチップWbが露出するパッケージ)である場合に、露出させたいチップWbの上面部分に当接するキャビティ駒23をフロート構造にし、内部にバネ(例えば、コイルスプリング)24を組み込んでキャビティ駒23が可動となる機構とした樹脂モールド金型90の構成例を
図14に示す。当該構成によれば、ワークWのチップWbの高さのばらつきを補正できる効果が得られる。しかしながら、組み込まれるバネ24の推力(弾発力)が強過ぎるとチップWbが破損し、逆に弱過ぎるとチップWbの上面にフラッシュが発生するといった問題が生じ得る。さらに、チップWbの露出部以外の面(樹脂投影部)に樹脂成形圧が掛かるため、キャビティ駒23を開こうとする力(押し上げようとする力)が発生する。そのため、組み込まれるバネ24は、チップWbの上面にフラッシュが発生しないように押し付けるための推力と、樹脂成形圧に対抗できる推力とを加算した大きさの推力が必要になる。この場合、この加算した推力がワークWのチップWbの破損につながる場合には、当該構成を採用することができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、ワークのチップ数や配列に関わらずにチップを破損させることなく樹脂モールド成形が可能であると共に、樹脂圧を上げてもキャビティ駒が移動しないように固定することが可能で、樹脂フラッシュの発生を防止することが可能な樹脂モールド金型及び樹脂モールド装置を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0009】
本発明に係る樹脂モールド金型は、第一部材に第二部材が搭載されたワークを樹脂モールドする樹脂モールド金型であって、前記ワークを支持するワーク支持部が設けられた第一金型と、前記ワークの前記第二部材を収容するキャビティが設けられた第二金型と、を備え、前記キャビティは、側部を形成するインサートと、該インサートに対して摺動可能に配設されて底部を形成するキャビティ駒とにより構成されており、前記第二金型には、前記キャビティ駒の型開閉方向における位置を固定する位置固定機構が設けられており、前記位置固定機構は、第一テーパ面を有し前記型開閉方向と直交方向に移動可能に配設された可動テーパブロックと、第二テーパ面を有し該第二テーパ面が前記可動テーパブロックの前記第一テーパ面と対向して当接可能に配設されると共に前記型開閉方向に移動可能に配設された固定テーパブロックと、前記可動テーパブロックを押動する第一押動駒と、を備え、前記可動テーパブロックと前記第一押動駒との間に、弾発力を発生させる第一弾性部材が配設されていることを要件とする。
【0010】
これによれば、簡素な機械的機構により、可動テーパブロックを型開閉方向と直交方向に押動することによって、固定テーパブロック及びキャビティ駒を型開閉方向に押動する作用を得ることができる。したがって、可動テーパブロックを所定位置まで押動して停止させることによって、キャビティ駒の位置固定を行うことができるため、樹脂モールドの際にキャビティ駒に樹脂圧反力が作用した場合であっても、キャビティ駒が移動することがなく、樹脂フラッシュの発生を防止することができる。また、第一押動駒が可動テーパブロックを押動する力が所定値以上となったときには、介在する第一弾性部材が縮むことによって、可動テーパブロックを押動しない状態とすることができるため、ワークの破損を防ぐことができる。
【0011】
また、前記第二金型には、前記型開閉方向に移動可能な第二押動駒が設けられており、前記第一押動駒は、前記第一弾性部材と対向する一端とは逆側の他端に第三テーパ面を有し、前記第二押動駒は、一端に第四テーパ面を有し該第四テーパ面が前記第一押動駒の前記第三テーパ面と対向して当接可能に配設されていることが好ましい。これによれば、第二押動駒における型開閉方向の移動作用を、第一押動駒における型開閉方向と直交方向の移動作用に変換する機構が実現できる。
【0012】
また、前記第一金型には、前記型開閉方向に移動可能なダミープランジャが設けられており、前記ダミープランジャの一端と前記第二押動駒の他端とが当接可能に配設されていることが好ましい。これによれば、第一金型に設けられるダミープランジャにおける型開閉方向の移動作用を、第二金型に設けられる第二押動駒における型開閉方向の移動作用に伝達する機構が実現できる。
【0013】
また、前記インサート及び前記キャビティ駒が保持されるチェイスブロックと前記第二押動駒の一端との間に、弾発力を発生させる第二弾性部材が配設されていることが好ましい。これによれば、第二押動駒を第一押動駒に向かう方向に押動する力の作用が無くなったときに、第二弾性部材の弾発力によって逆方向に戻すことができる。
【0014】
また、前記第一弾性部材は、金属材料を用いて形成されるバネであることが好ましい。これによれば、モールド条件に応じて、弾発力すなわちバネのバネ定数の設定を容易且つ正確に行うことができるため、高精度の成形を行うことができる。
【0015】
また、前記第一金型もしくは前記第二金型には、前記キャビティに連通してオーバーフローした樹脂を流入させるオーバーフローキャビティが設けられており、前記オーバーフローキャビティは、内部に摺動可能に配設されたピストンと、底部と該ピストンとの間に配設されて弾発力を発生させる第三弾性部材と、を備えることが好ましい。これによれば、キャビティからオーバーフローキャビティへモールド樹脂をオーバーフローさせることができるため、キャビティ内のボイドを押し流して樹脂充填性を向上させることができる。また、所定の弾発力を有する第三弾性部材を備えることにより、キャビティに充填されたモールド樹脂に、所定の樹脂圧(最終成形圧)を掛けることができる。
【0016】
また、前記第一金型には、前記キャビティ内に樹脂を供給するプランジャが設けられており、前記ダミープランジャを移動させる駆動機構として、前記プランジャを移動させるトランスファ駆動機構が共通で用いられることが好ましい。これによれば、極めて単純な機械的機構により、第一金型側に設けられるプランジャ移動用のトランスファ駆動機構を用いてダミープランジャを移動させて、第二金型側に設けられるキャビティ駒を移動させることができる。したがって、簡素な構成で低コストの装置を実現できる。
【0017】
また、本発明に係る樹脂モールド装置は、前記の樹脂モールド金型を備えることを要件とする。
【0018】
これによれば、キャビティ駒を成形に適した位置に固定することが可能となる調整機構を樹脂モールド金型の金型内で完結する構成として設けることができるため、樹脂モールド装置全体として、構成の簡易化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ワークの第一部材(例えば基板)に搭載される第二部材(例えばチップ)の数や配列に関わらずに第二部材を破損させることなく樹脂モールド成形を行うことが可能となる。特に、チップを露出させるパッケージ等においてチップを破損させることなくチップ露出成形を好適に行うことが可能となる。また、簡素な機械的構成によって、モールドする樹脂の圧力を上げてもキャビティ駒が動かないように固定させることができ、成形時の樹脂フラッシュの発生を防止することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第一の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第一の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド金型10を備える樹脂モールド装置100の例を示す概略図(平面図)である。また、
図2〜
図6は、本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド金型10の例を示す概略図(正面断面図)である(これらの図は動作説明図としても用いる)。なお、説明の便宜上、
図2〜
図13において紙面の上下により樹脂モールド金型10における上下方向を説明する場合がある。また、各実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0022】
本実施形態に係る樹脂モールド装置100は、ワーク(被成形品)Wの樹脂モールド成形を行う装置である。以下、樹脂モールド装置100として、モールド樹脂(単に「樹脂」と称する場合がある)が収容されるポット35が設けられた第一金型(下型)20と、ワークWの第二部材Wbが収容されるキャビティ32が設けられた第二金型(上型)21とを有して構成される樹脂モールド金型10を備えるトランスファ成形装置を主な例として説明する。
【0023】
先ず、成形対象であるワークWは、第一部材Wa上に、第二部材Wbが搭載された構成を備えている。より具体的には、第一部材Waとして、例えば短冊状に形成された樹脂基板、セラミックス基板、金属基板、リードフレーム、キャリア、ウェハといった各種の板状の部材が例に挙げられる。また、第二部材Wbとして、半導体チップ(単に、「チップ」と称する場合がある)、放熱板、配線・放熱のためのリードフレーム、電気的接続のためのバンプといった各種の部材が例に挙げられる。すなわち、本発明におけるワークWは、これらの第一部材Wa上に第二部材Wbが搭載(フリップチップ実装、ワイヤボンディング実装等)されて重ね合わされた状態のものをいう。したがって、当該ワークWには、基板に一段あるいは複数段にチップが搭載されたもの、基板に半導体装置が搭載されたもの、基板に撮像素子が搭載され撮像素子の受光面に光透過ガラスを接合したもの等も含まれる。また、樹脂モールドする形態に関しても、個々の搭載部品ごとに個別にキャビティに収容して樹脂モールドする場合もあれば、基板実装された複数の搭載部品を一つのキャビティに収容して一括して樹脂モールドする場合もある。
【0024】
続いて、樹脂モールド装置100の概要について説明する。
図1に示すように、樹脂モールド装置100は、ワークWを供給するワーク供給部100A、ワークWを予熱する予熱部100B、ワークWを樹脂モールドするプレス部100C、樹脂モールド後の成形品Wpを収納する成形品収納部100D、及び搬送機構100Eを備えて構成される。
【0025】
先ず、ワーク供給部100Aは、ワークWを収納したマガジン(不図示)を収容するストッカ102を備えている。各マガジンからプッシャ(不図示)により送り出されたワークWが、例えば二枚一組でセット台104に向い合わせで並べられる。
【0026】
セット台104の側方には、モールド樹脂(一例として、樹脂タブレットT)を供給するためのタブレット供給部106が設けられている。セット台104のワークWは、後述する搬送機構100Eのローダ122によって保持されて予熱部100Bへ移送される。また、タブレット供給部106の樹脂タブレットTは、ローダ122によって保持されてプレス部100Cへ移送される。
【0027】
次に、予熱部100Bは、ワークWの予熱を行うヒータブロック108を備えている。搬送機構100E(ローダ122)によってワーク供給部100Aから移送されたワークWは、ヒータブロック108上に載置され、その状態で所定温度まで加熱(予熱)が行われる。予熱されたワークWは、搬送機構100Eのローダ122によって保持されてプレス部100Cへ移送される。
【0028】
次に、プレス部100Cは、後述する樹脂モールド金型10を開閉駆動して予熱されたワークWをクランプして樹脂モールドするプレス装置110を備えている。プレス装置110は、樹脂モールド金型10を型開閉方向に押動する公知の型締め機構、樹脂モールド金型10のポット35内で溶融した樹脂をポット35からキャビティ32に充填する公知のトランスファ駆動機構を備えている。
【0029】
なお、本実施形態においては、樹脂モールド金型10の金型面(樹脂モールド面)をリリースフィルムFにより被覆して樹脂モールドする構成としている。このため、プレス装置110は、樹脂モールド金型10の金型面にリリースフィルムFを供給するフィルム供給機構112を備えている。当該フィルム供給機構112は、樹脂モールド金型10の両側にリリースフィルムFを金型面(上型面)に供給する供給ロール112aと、リリースフィルムFを巻き取る巻き取りロール112bを備えている。また、リリースフィルムFには、耐熱性、剥離容易性、柔軟性、伸展性に優れたフィルム材、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリジン等が好適に用いられる。ただし、樹脂モールド金型10の金型面をリリースフィルムFで被覆しない構成としてもよい。
【0030】
次に、成形品収納部100Dは、樹脂モールド後の成形品Wpをセットするセット部114、成形品Wpからゲート等の不要樹脂を除去するゲートブレイク部116、不要樹脂が除去された成形品Wpを収納するストッカ118を備えている。成形品Wpは、収納用のマガジン120に収納され、成形品が収納されたマガジン120はストッカ118に順次収容される。
【0031】
次に、搬送機構100Eは、ワークWをプレス部100Cに搬入するローダ122及び成形品Wpをプレス部100Cから搬出するアンローダ124を備えている。ワーク供給部100A、予熱部100B、プレス部100C及び成形品収納部100Dは、ユニット化された架台同士が連結されて樹脂モールド装置100が組み立てられている。各ユニットの装置奥側にはガイド部126が各々設けられ、ガイド部126同士を直線的に連結するように組み付けることでガイドレールが形成されている。ローダ122とアンローダ124は各々、ガイドレールに沿ってガイド部126上の所定位置からワーク供給部100A、予熱部100B、プレス部100C、成形品収納部100Dに向かって直線的に進退動可能に設けられている。
【0032】
したがって、ユニットの構成を変えることにより、ガイド部126同士を連結させた状態を維持しながら、樹脂モールド装置100の構成態様を変更することができる。たとえば、
図1に示す例は、プレス装置110を二台設置した例であるが、プレス装置110が単数または三台以上の複数台連結された樹脂モールド装置(不図示)を構成することも可能である。
【0033】
続いて、樹脂モールド装置100が備える樹脂モールド金型10の構成について説明する。
【0034】
本実施形態に係る樹脂モールド金型10の概略図(正面断面図)を
図2〜
図6に示す(なお、これらの図は動作説明図としても用いる)。前述の通り、樹脂モールド金型10は第一金型(下型)20と第二金型(上型)21とを備えている。なお、第一金型(下型)20が可動型、第二金型(上型)21が固定型の場合を例に挙げて説明するが、この構成に限定されるものではない。
【0035】
先ず、第一金型(下型)20について説明する。
図2に示すように、第一金型(下型)20は、駆動源(電動モータ)により駆動する駆動伝達機構(トグルリンク等のリンク機構もしくはねじ軸等)を有してチェイスブロック(下型チェイスブロック)33が載置される下型可動プラテンを昇降させる公知の型締め機構によって型開閉が行われるようになっている。なお、第一金型(下型)20の昇降動作は移動速度や加圧力等を任意に設定することができる。
【0036】
下型チェイスブロック33の上面にはワークW(第一部材Wa側)が載置されるワーク支持部31が設けられている。一例として、複数のワークWを載置可能なように、複数のワーク支持部31が設けられている。
【0037】
また、下型チェイスブロック33には、モールド樹脂(ここでは、樹脂タブレットT)が装填される筒状のポット35が設けられている。下型チェイスブロック33の上端面は、ポット35の上端面と面一に形成されている。ポット35内には公知のトランスファ駆動機構により上下動するプランジャ36が設けられている。一例として、プランジャ36は、複数のポット35に対応して複数本が支持ブロック(不図示)に設けられるマルチプランジャ構造が採用される。各プランジャ36の支持部には弾性部材(不図示)が設けられており、各プランジャ36は弾性部材の弾発力により僅かに変位して過剰な押圧力を逃がすとともに保圧時には樹脂タブレットTの樹脂量のばらつきに順応することができるようになっている。
【0038】
次に、第二金型(上型)21について説明する。
図2に示すように、第二金型(上型)21は、チェイスブロック(上型チェイスブロック)22にキャビティ32の底部を形成するキャビティ駒23がバネ(例えば、コイルスプリング)24を介して吊り下げ支持されている。一例として、上型チェイスブロック22には、インサート(上型インサート)26が固定的に支持されており、キャビティ駒23は、上型インサート26に形成されるキャビティ32の底部を形成するように貫通孔26a内に挿入されて摺動可能に吊り下げ支持されている。
【0039】
一例として、キャビティ32は、上型インサート26によって側部が形成され、キャビティ駒23によって底部が形成される構成となっている。また、上型インサート26には、キャビティ32に連通する上型カル26b、上型ランナ26c等の樹脂路が設けられている。なお、キャビティ32の側部は、上型チェイスブロック22によって形成される構成としてもよい。
【0040】
ここで、第二金型(上型)21には、キャビティ駒23を型閉方向に押動しつつ型開閉方向の所定位置に固定する位置固定機構12が設けられている。一例として、位置固定機構12は、第一テーパ面14cを有し型開閉方向と直交方向(直角交差のみに限定されない)に移動可能に配設された可動テーパブロック14と、第二テーパ面16cを有し当該第二テーパ面16cが可動テーパブロックの第一テーパ面14cと対向し且つ当接が可能となるように配設されると共に型開閉方向に移動可能に配設された固定テーパブロック16とを備えている。
【0041】
より詳しくは、可動テーパブロック14は、先端となる一端14aにおいて、板厚が減少するように所定の傾斜角度に形成された第一テーパ面14cを有している。一方、固定テーパブロック16は一端16aがキャビティ駒23に当接して支持されており、その一端16aとは逆側の他端16bにおいて、第一テーパ面14cに対応する所定の傾斜角度に形成された第二テーパ面16cを有している。なお、本実施形態においては、可動テーパブロック14はキャビティ駒23と別体に形成しているが、一体に形成する構成としてもよい。
【0042】
この構成によれば、可動テーパブロック14を後端(他端14b)から先端(一端14a)に向かう方向に押動することによって、第一テーパ面14cと第二テーパ面16cとが当接(摺接)しながら、固定テーパブロック16を上端(他端16b)から下端(一端16a)に向かう方向に押動する作用、つまりキャビティ駒23を型開閉方向における下向き(キャビティ32に向かう方向)に押動する作用を得ることができる。したがって、可動テーパブロック14を第一テーパ面14cと第二テーパ面16cとが当接(摺接)する所定位置まで押動して停止させることによって、固定テーパブロック16の型開閉方向における位置の固定を行うことができる。すなわち、樹脂モールドを行う工程において、キャビティ32内に圧力(最終圧)が掛かり、キャビティ駒23に当該圧力が作用した場合であっても、固定テーパブロック16が固定され、且つ、当接する可動テーパブロック14を介して上型チェイスブロック22によって荷重支持がなされるため、キャビティ駒23が移動することがなく、樹脂フラッシュの発生を防止することが可能となる。
【0043】
上記の作用を効果的に生じさせるために、第一テーパ面14c及び第二テーパ面16cにおける所定の傾斜角度は、型開閉方向と直角の面に対して1[°]〜30[°]程度の角度に形成されていることが好適である。これにより、キャビティ駒23に作用する圧力(樹脂圧反力)のほとんどを上型チェイスブロック22による支持方向に作用させることができると共に、可動テーパブロック14の押し戻しを防ぐことができる。
【0044】
本実施形態においては、可動テーパブロック14を型開閉方向と直交方向(直角交差のみに限定されない)に押動する部材として第一押動駒18を備えている。より具体的には、第一押動駒18によって可動テーパブロック14を直接押動する構成ではなく、可動テーパブロック14と第一押動駒18との間に所定の弾発力を発生させる第一弾性部材27を介在させて押動する構成としている。一例として、第一弾性部材27は、金属材料を用いて形成されるバネ(コイルスプリング)が採用される。ただし、これに限定されるものではなく、リーフスプリング等の他のバネや、バネ以外の弾性部材を用いてもよい。
【0045】
この構成によれば、第一押動駒18を型開閉方向と直交方向の可動テーパブロック14に向かう方向に押動することによって、第一弾性部材27を介して、可動テーパブロック14を同方向に押動することができる。さらに、このとき、第一押動駒18が第一弾性部材27を押動する力が所定値以上となったときには、第一弾性部材27(ここでは、バネ)が縮むことによって、可動テーパブロック14を押動しない状態とすることができる。仮に、第一押動駒18が可動テーパブロック14を直接押動する構成の場合には、第一押動駒18の押動は必ず可動テーパブロック14及び固定テーパブロック16を介して、キャビティ駒23がワークW側へ向かう押動を生じさせてしまうため、ワークWの破損を招き得る。これに対して、本実施形態の構成の場合には、第一押動駒18を押動する力が所定値以上となったときに、上記の通り可動テーパブロック14を押動しない状態とすることができるため、キャビティ駒23がワークW側へ向かう押動を生じさせることがなく、ワークWの破損を防ぐことができる。なお、第一弾性部材27の弾発力(例えば、バネのバネ定数)は、モールド条件に応じて適宜、設定すればよい。
【0046】
また、本実施形態においては、第一押動駒18を押動する部材として第二押動駒19を備えており、さらに、第二押動駒19を押動する部材としてダミープランジャ38を備えている。先ず、第二押動駒19は、型開閉方向に移動可能なように第二金型(上型)21に配設されている。ここで、第一押動駒18は、第一弾性部材27と対向する一端18aとは逆側の他端18bにおいて、所定の傾斜角度に形成された第三テーパ面18cを有している。一方、第二押動駒19は、第一押動駒18と対向する一端19aにおいて、第三テーパ面18cに対応する所定の傾斜角度に形成された第四テーパ面19cを有している。このとき、第二押動駒19は、第四テーパ面19cが第一押動駒18の第三テーパ面18cと対向し且つ当接が可能となるように配設されている。
【0047】
この構成によれば、第二押動駒19を型開閉方向における下端(他端19b)から上端(一端19a)に向かう方向に押動することによって、第四テーパ面19cと第三テーパ面18cとが当接(摺接)しながら、第一押動駒18を型開閉方向と直交方向における後端(他端18b)から先端(一端18a)に向かう方向に押動することができる。
【0048】
なお、第二押動駒19を上記押動方向とは逆方向に移動させる部材として、第二弾性部材28を備えている。より具体的には、インサート(上型インサート)26及びキャビティ駒23の保持を行うチェイスブロック(上型チェイスブロック)22と第二押動駒19の一端との間に、所定の弾発力を発生させる第二弾性部材28が配設されている。したがって、第二押動駒19を型開閉方向における下端(他端19b)から上端(一端19a)に向かう方向に押動する力の作用が無くなったときに、第二弾性部材28の弾発力によって、第二押動駒19を上端(一端19a)から下端(他端19b)に向かう方向に移動する作用が得られる。一例として、第二弾性部材28は、金属材料を用いて形成されるバネ(コイルスプリング)が採用される。ただし、これに限定されるものではなく、リーフスプリング等の他のバネや、バネ以外の弾性部材を用いてもよい。
【0049】
次に、ダミープランジャ38は、型開閉方向に移動可能なように第一金型(下型)20に配設されている。ここで、ダミープランジャ38は、上端(一端38a)が第二押動駒19の下端(他端19b)と対向し且つ当接が可能となるように配設されている。
【0050】
この構成によれば、ダミープランジャ38を型開閉方向における下端(他端38b)から上端(一端38a)に向かう方向に押動することによって、ダミープランジャ38の上端(一端38a)が第二押動駒19の下端(他端19b)に当接し、第二押動駒19を同方向に押動することができる。
【0051】
本実施形態においては、ダミープランジャ38を移動させるために、プランジャ36を移動させるトランスファ駆動機構が共通の駆動機構として用いられる構成としている。したがって、従来装置の構成を大幅に変更することなく、上記の構成を追加することができるため、簡素な構成で低コストの装置を実現することが可能となる。なお、
図2においては、理解の容易のために、ダミープランジャ38と、プランジャ36とを同一の面において示しているが、マルチプランジャ方式のトランスファ駆動機構において、ダミープランジャ38と、プランジャ36とを一列に並べた構成としてもよい。これらの構成について、以上に説明した構成を換言すれば、位置固定機構12は、テーパ面を向かい合わせて組み合わせるテーパブロックを二組備え、これらを弾性部材を介して連係させ、既存のトランスファ機構の一部のダミープランジャ38により駆動することが可能である。このような構成によれば、簡易な構成でありながらキャビティ駒23を成形に適した位置に固定することが可能となる。
【0052】
続いて、上記樹脂モールド金型10の樹脂モールド動作に伴う開閉動作について
図2〜
図6を参照しながら説明する。
【0053】
先ず、
図2に示すように、型開きした樹脂モールド金型10の第一金型(下型)20にローダ122(
図1参照)によりワークWが供給される。また、フィルム供給機構112により第二金型(上型)と第一金型(下型)との間(ワークWの上方位置)にリリースフィルムFが供給される。さらに、ポット35に樹脂タブレットTが装填される。なお、図の簡素化のため、
図2〜
図6において、リリースフィルムFの図示を省略する。また、キャビティ駒23の外周に樹脂漏れ防止用のシール構造を設けることで、リリースフィルムFを設けない構成としてもよい。
【0054】
次に、
図3に示すように、第一金型(下型)20を上昇させて樹脂モールド金型10を型閉じする。このとき、下型チェイスブロック33が上型チェイスブロック22に当接して、第二金型(上型)21と第一金型(下型)20との間に閉鎖空間が形成される。なお、当該閉鎖空間は、減圧機構(不図示)により減圧される。また、キャビティ駒23がリリースフィルムFを介してワークWの第二部材に当接して、クランプ動作が行われる。
【0055】
ここで、例えばワークW毎に第二部材の高さにばらつきが生じているような場合には、型締めの際にそれらに押し上げられることで、キャビティ駒23を吊り下げ支持するバネ24が伸縮することによってキャビティ駒23が型開閉方向に移動する作用が得られる。したがって、各ワークWをクランプする際に当該ばらつきを吸収して適正な力でクランプ動作を行うことができるため、ワークWの破損を防ぐことができる。なお、この時点では、モールド樹脂がキャビティ32内に充填されていないため、キャビティ駒23は樹脂圧反力の影響は受けない。
【0056】
次に、
図4に示すように、トランスファ駆動機構を作動させて、プランジャ36を第二金型(上型)21の方向へ押動して溶融したモールド樹脂を上型カル26b、上型ランナ26cを通じてキャビティ32に圧送する。このとき、ワークWの第二部材Wbの上面はリリースフィルムFを介してキャビティ駒23に押圧されている。これにより、第二部材Wbを露出させる第二部材露出成形が可能となる。もちろん、キャビティ駒23をリリースフィルムFを介してワークWの第二部材Wbに当接させない設定とすれば、第二部材Wbを露出させない成形も可能となる。
【0057】
また、このとき、トランスファ駆動機構の作動によって、ダミープランジャ38も第二金型(上型)21の方向へ押動されて、第二押動駒19に当接する。
【0058】
この時点では、まだキャビティ32内へのモールド樹脂の充填は完了していないため、所定の樹脂圧(最終成形圧)は掛かっておらず、樹脂流動による圧力のみであるため、最終成形圧と比較して非常に低圧であり、キャビティ駒23が樹脂圧反力を受けて移動することはない。
【0059】
次に、
図5に示すように、トランスファ駆動機構を作動させて、さらにプランジャ36を第二金型(上型)21の方向へ押動してモールド樹脂を上型カル26b、上型ランナ26cを通じてキャビティ32内の全体に行き渡るように圧送する。これと同時に、トランスファ駆動機構の作動によって、ダミープランジャ38が第二押動駒19を第二金型(上型)21の方向へ押動して、第二押動駒19が第一押動駒18を可動テーパブロック14に向かう方向に押動する。その結果、第一弾性部材27を介して、第一押動駒18が可動テーパブロック14を押動して、可動テーパブロック14は第一テーパ面14cと第二テーパ面16cとが当接(摺接)する所定位置まで押動されて停止する。したがって、固定テーパブロック16が型開閉方向において位置が固定される作用が得られる。
【0060】
このように、モールド樹脂の充填が完了に近づくと、トランスファ駆動機構の作動によって機械的に、固定テーパブロック16が型開閉方向において位置が固定される作用、すなわち、キャビティ駒23が型開閉方向において位置が固定される作用が得られる。この時点では、最終成形圧に向かって、樹脂圧が徐々に上昇する段階にあり、キャビティ駒23が樹脂圧反力を徐々に受けることとなる。しかし、キャビティ駒23が固定されているため、樹脂圧反力を受けて移動することはない。
【0061】
次に、
図6に示すように、トランスファ駆動機構を作動させて、さらに所定の最上部位置までプランジャ36を第二金型(上型)21の方向へ押動して、キャビティ32に充填されたモールド樹脂に、所定の樹脂圧(最終成形圧)を掛ける。これと同時に、トランスファ駆動機構の作動によって、さらにダミープランジャ38が第二押動駒19を第二金型(上型)21の方向へ押動して、第二押動駒19が第一押動駒18を可動テーパブロック14に向かう方向に押動する。これにより、さらに第一押動駒18が第一弾性部材27を介して可動テーパブロック14を押動することとなる。しかし、可動テーパブロック14は固定テーパブロック16と当接した位置で停止しているため、第一押動駒18を押動する力が第一弾性部材27の所定の弾発力を超えた段階で、第一弾性部材27が縮んで、所定値以上の力で可動テーパブロック14を押動してしまう状態が回避される作用が得られる。
【0062】
このように、キャビティ32に充填されたモールド樹脂に最終成形圧を掛ける段階においても、継続して、トランスファ駆動機構の作動によって機械的に、固定テーパブロック16が型開閉方向において位置が固定される作用、すなわち、キャビティ駒23が型開閉方向において位置が固定される作用が得られる。この時点では、キャビティ駒23が最大の樹脂圧反力(最終成形圧)を受けることとなるが、キャビティ駒23が固定されているため、樹脂圧反力を受けて移動することはない。また、キャビティ駒23が所定値以上の力でワークWに対して押動されることがなく、適正な力でクランプ動作を行うことができるため、ワークWの破損を防ぐことができる。
【0063】
以上のように、本実施形態によれば、第一金型(下型)20側に設けられるプランジャ移動用のトランスファ駆動機構を用いて、第二金型(上型)21側に設けられるキャビティ駒23を移動させることができる。これによって、キャビティ駒23が樹脂圧反力を受けて移動してしまうことが防止でき、且つ、適正な力を超えてワークWをクランプしてしまうことが防止できる。したがって、樹脂フラッシュの発生防止と、ワークWの破損防止とを両立することが可能となり、高精度な成形品質を実現することができる。このように、複雑な電気的な制御を必要とせず、極めて単純な機械的機構によって上記の効果を達成している点において、大きな技術的意義を有している。
【0064】
(第二の実施形態)
続いて、本発明の第二の実施形態に係る樹脂モールド金型40について説明する。本実施形態に係る樹脂モールド金型40は、前述の第一の実施形態に係る樹脂モールド金型10と基本的な構成は同様であるが、特に、オーバーフローキャビティ42を備える構成において相違する。以下、当該相違点を中心に本実施形態について説明する。
【0065】
本実施形態に係る樹脂モールド金型40の概略図(正面断面図)を
図7〜
図11に示す(これらの図は動作説明図としても用いる)。同図に示すように、樹脂モールド金型40は、第二金型(上型)において、キャビティ32に連通してオーバーフローしたモールド樹脂を流入させるオーバーフローキャビティ42が設けられている。
【0066】
この構成によれば、ワークWの樹脂モールドを行う際に、キャビティ32からオーバーフローキャビティ42へモールド樹脂をオーバーフローさせることができる。したがって、キャビティ32内のボイドを押し流して樹脂充填性を向上させることができる。
【0067】
ここで、オーバーフローキャビティ42は、内部に摺動可能に配設されたピストン44と、底部42aと当該ピストン44との間に配設されて所定の弾発力を発生させる第三弾性部材46とを備えて構成されている。一例として、第三弾性部材46は、金属材料を用いて形成されるバネ(コイルスプリング)が採用される。ただし、これに限定されるものではなく、リーフスプリング等の他のバネや、バネ以外の弾性部材を用いてもよい。
【0068】
この構成によれば、キャビティ32に充填されたモールド樹脂に、所定の樹脂圧(最終成形圧)を掛けることが可能となる。なお、第三弾性部材46の弾発力(例えば、バネのバネ定数)は、モールド条件に応じて適宜、設定すればよい。
【0069】
なお、上記の構成に限定されるものではなく、変形例として、第二金型(上型)21のキャビティ32に連通するオーバーフローキャビティ42を第一金型(下型)20に設ける構成としてもよい(不図示)。
【0070】
続いて、上記樹脂モールド金型40の樹脂モールド動作に伴う開閉動作について
図7〜
図11を参照しながら説明する。なお、前述の第一の実施形態同様に第一部材Waに第二部材Wbがフリップチップ実装されたワークWの樹脂モールドももちろん可能であるが、本実施形態においては、第一部材Waに第二部材Wbがワイヤボンディング実装されたワークWの場合を例に挙げると共に、当該ワークWに好適な樹脂モールド動作について説明する。
【0071】
先ず、
図7に示すように、型開きした樹脂モールド金型10の第一金型(下型)20にローダ122(
図1参照)によりワークWが供給される。また、フィルム供給機構112により第二金型(上型)21と第一金型(下型)20との間(ワークWの上方位置)にリリースフィルムFが供給される。さらに、ポット35に樹脂タブレットTが装填される。なお、図の簡素化のため、
図7〜
図11において、リリースフィルムFの図示を省略する。
【0072】
次に、
図8に示すように、第一金型(下型)20を上昇させて樹脂モールド金型10を型閉じする。このとき、下型チェイスブロック33が上型チェイスブロック22に当接して、第二金型(上型)21と第一金型(下型)20との間に閉鎖空間が形成される。なお、当該閉鎖空間は、減圧機構(不図示)により減圧される。ここで、前述の第一の実施形態と相違して、キャビティ駒23は、ワークWの第二部材Wbに当接しない位置において、上型チェイスブロック22にバネ24を介して吊り下げ支持された状態となっている。すなわち、ワークWの厚み寸法に対してキャビティ32内の高さ寸法が大きくなるように設定されており、キャビティ駒23がワークWに当接するクランプ動作は行われない。ただし、キャビティ駒23の構成を、ワイヤボンディング実装されたワークWの平坦部分のみに当接する突起部を下端に有する構成(不図示)とすれば、前述の第一の実施形態同様の樹脂モールド動作を行うことも可能となる。
【0073】
次に、
図9に示すように、トランスファ駆動機構を作動させて、プランジャ36を第二金型(上型)21の方向へ押動して溶融したモールド樹脂を上型カル26b、上型ランナ26cを通じてキャビティ32に圧送する。このとき、トランスファ駆動機構の作動によって、ダミープランジャ38も第二金型(上型)21の方向へ押動されて、第二押動駒19に当接する。
【0074】
この時点では、ワークWの厚み寸法に対してキャビティ32内の高さ寸法が大きい状態、すなわち、キャビティ32内の空間が広く確保された状態となっている。したがって、キャビティ32内の空間が狭い場合と比較して、キャビティ32内に充填されるモールド樹脂の流速を低下させることが可能となる。したがって、圧送される樹脂がワークWに与える負荷を低減して、ワークWにおける破損発生を防ぐことができる。特に、ワイヤボンディング実装されたワークW等のように細い配線(ワイヤ)を備える構成に対して顕著な効果が奏される。
【0075】
次に、
図10に示すように、トランスファ駆動機構を作動させて、さらにプランジャ36を第二金型(上型)21の方向へ押動してモールド樹脂を上型カル26b、上型ランナ26cを通じてキャビティ32内の全体に行き渡るように圧送する。これと同時に、トランスファ駆動機構の作動によって、ダミープランジャ38が第二押動駒19を第二金型(上型)21の方向へ押動して、第二押動駒19が第一押動駒18を可動テーパブロック14に向かう方向に押動する。その結果、第一弾性部材27を介して、第一押動駒18が可動テーパブロック14を押動して、可動テーパブロック14の第一テーパ面14cと固定テーパブロック16の第二テーパ面16cとが当接し、さらに摺動する状態まで押動される。したがって、固定テーパブロック16が上端(他端16b)から下端(一端16a)に向かう方向に押動されて、キャビティ駒23が型開閉方向における下向き(キャビティ32に向かう方向)に押動される作用が得られる。また、上記のプランジャ36及びキャビティ駒23の動作によって、キャビティ32からオーバーフローキャビティ42へのモールド樹脂のオーバーフローが生じる。
【0076】
このように、モールド樹脂の充填が完了に近づくと、トランスファ駆動機構の作動によって機械的に、キャビティ駒23が型開閉方向における下向き(キャビティ32に向かう方向)に押動されて、キャビティ32内の空間が狭くなる(キャビティ32内の高さ寸法が小さくなる)作用が得られる。このとき、オーバーフローキャビティ42へのモールド樹脂のオーバーフローによって、キャビティ32内のボイドを押し流して樹脂充填性を向上させることができる。また、キャビティ駒23においては、樹脂圧反力を徐々に受けることとなるが、前述の第一の実施形態と同様に可動テーパブロック14及び固定テーパブロック16の作用により、樹脂圧反力を受けてキャビティ駒23が移動することはない。
【0077】
次に、
図11に示すように、トランスファ駆動機構を作動させて、さらに所定の最上部位置までプランジャ36を第二金型(上型)21の方向へ押動して、キャビティ32に充填されたモールド樹脂に、所定の樹脂圧(最終成形圧)を掛ける。なお、オーバーフローキャビティ42へモールド樹脂をオーバーフローさせても、第三弾性部材46を備える構成によって、キャビティ32内のモールド樹脂に所定の樹脂圧(最終成形圧)を掛けることが可能となっている。
【0078】
これと同時に、トランスファ駆動機構の作動によって、さらにダミープランジャ38が第二押動駒19を第二金型(上型)21の方向へ押動して、第二押動駒19が第一押動駒18を可動テーパブロック14に向かう方向に押動する。これにより、さらに第一押動駒18が第一弾性部材27を介して可動テーパブロック14を押動し、可動テーパブロック14が固定テーパブロック16を押動する。したがって、キャビティ駒23は、固定テーパブロック16によって型開閉方向における所定の位置まで押動される。このとき、第一押動駒18を押動する力が第一弾性部材27の所定の弾発力を超えた段階で、第一弾性部材27が縮んで、所定値以上の力で可動テーパブロック14を押動してしまう状態が回避される作用が得られるため、キャビティ駒23は型開閉方向における所定の位置まで押動されて停止する作用が得られる。
【0079】
このように、キャビティ32に充填されたモールド樹脂に最終成形圧を掛ける段階においても、継続して、トランスファ駆動機構の作動によって機械的に、固定テーパブロック16が型開閉方向における所定の位置まで押動されて停止する作用、すなわち、キャビティ駒23が型開閉方向における所定の位置まで押動されて停止する作用が得られる。この時点では、キャビティ駒23が最大の樹脂圧反力(最終成形圧)を受けることとなるが、キャビティ駒23が固定されているため、樹脂圧反力を受けて移動することはない。また、キャビティ駒23が所定値以上の力でワークWに対して押動されることがなく、適正な力でクランプ動作を行うことができるため、ワークWの破損を防ぐことができる。
【0080】
以上のように、本実施形態によれば、第一金型(下型)20側に設けられるプランジャ移動用のトランスファ駆動機構を用いて、第二金型(上型)21側に設けられるキャビティ駒23を移動させることができる。これによって、モールド樹脂の充填中にキャビティ32内の空間を徐々に狭めることができるため、充填する樹脂の初期流速を低下させることができ、特に、ワイヤボンディング実装されたワークW等のように細い配線(ワイヤ)を備えるワークWの破損防止に顕著な効果が得られる。また、キャビティ駒23が樹脂圧反力を受けて移動してしまうことが防止でき、且つ、適正な力を超えてワークWを加圧してしまうことが防止できる。したがって、樹脂フラッシュの発生防止と、ワークWの破損防止とを両立することが可能となり、高精度な成形品質を実現することができる。このように、複雑な電気的な制御を必要とせず、極めて単純な機械的機構によって上記の効果を達成している点において、大きな技術的意義を有している。
【0081】
(第三の実施形態)
続いて、本発明の第三の実施形態に係る樹脂モールド金型50について説明する。本実施形態に係る樹脂モールド金型50は、前述の第一の実施形態に係る樹脂モールド金型10と基本的な構成は同様であるが、圧縮成形用の金型として構成した例である。すなわち、当該樹脂モールド金型50を備える樹脂モールド装置は、第一の実施形態及び第二の実施形態に係るトランスファ成形装置ではなく、圧縮成形装置である。したがって、樹脂モールド金型50は、樹脂モールド金型10の構成要素であったポット35、プランジャ36、キャビティ32に連通する上型カル26b、上型ランナ26c等の構成を備えていない点において相違する。以下、当該相違点を中心に本実施形態について説明する。
【0082】
本実施形態に係る樹脂モールド金型50の概略図(正面断面図)を
図12、
図13に示す(これらの図は動作説明図としても用いる)。同図に示すように、樹脂モールド金型50は、第一金型(下型)20において、樹脂モールド金型10の構成要素であったポット35、プランジャ36を備えない構成となっている。また、第二金型(上型)において、連通する上型カル26b、上型ランナ26cを備えない構成となっている。
【0083】
続いて、上記樹脂モールド金型50の樹脂モールド動作に伴う開閉動作について
図12、
図13を参照しながら説明する。なお、前述の第一の実施形態同様に第一部材Waに第二部材Wbがフリップチップ実装されたワークWを例に挙げて説明する。ただし、当該ワークWの構成に限定されるものではない。
【0084】
先ず、
図12に示すように、樹脂モールド金型10の第一金型(下型)20にローダ122(
図1参照)によりワークWが供給され、フィルム供給機構112により第二金型(上型)21と第一金型(下型)20との間(ワークWの上方位置)にリリースフィルムFが供給され、ワークW上に所定量のモールド樹脂(ここでは、液状樹脂R)が載置(滴下)された状態で、第一金型(下型)20を上昇させて樹脂モールド金型10を型閉じする。このとき、下型チェイスブロック33が上型チェイスブロック22に当接して、第二金型(上型)21と第一金型(下型)20との間に閉鎖空間が形成される。ここで、前述の第一の実施形態と相違して、キャビティ駒23は、ワークWの第二部材Wbに当接しない位置において、上型チェイスブロック22にバネ24を介して吊り下げ支持された状態となっている。すなわち、ワークWの厚み寸法に対してキャビティ32内の高さ寸法が大きくなるように設定されており、キャビティ駒23がワークWに当接するクランプ動作は行われない。なお、図の簡素化のため、
図12、
図13において、リリースフィルムFの図示を省略する。
【0085】
次に、
図13に示すように、駆動機構(一例として、前述の第一の実施形態に係るトランスファ駆動機構と同様の機構を採用し得る)を作動させて、ダミープランジャ38を第二金型(上型)21の方向へ押動する。これにより、ダミープランジャ38が第二押動駒19を第二金型(上型)21の方向へ押動して、第二押動駒19が第一押動駒18を可動テーパブロック14に向かう方向に押動する。その結果、第一弾性部材27を介して、第一押動駒18が可動テーパブロック14を押動して、可動テーパブロック14の第一テーパ面14cと固定テーパブロック16の第二テーパ面16cとが当接し、さらに摺動する状態まで押動される。したがって、固定テーパブロック16が上端(他端)から下端(一端)に向かう方向に押動されて、キャビティ駒23が型開閉方向における下向き(キャビティ32に向かう方向)に押動される作用が得られる。
【0086】
このとき、第一押動駒18を押動する力が第一弾性部材27の所定の弾発力を超えた段階で、第一弾性部材27が縮んで、所定値以上の力で可動テーパブロック14を押動してしまう状態が回避される作用が得られる。すなわち、第一弾性部材27の弾発力(例えば、バネのバネ定数)を適宜、設定すれば、キャビティ32の内圧(樹脂圧)が最適値にコントロールされた圧縮成形を行うことが可能となる。
【0087】
以上のように、本実施形態によれば、第一金型(下型)20側に設けられる駆動機構を用いて、第二金型(上型)21側に設けられるキャビティ駒23を移動させることができる。第一弾性部材27の弾発力(例えば、バネのバネ定数)を適宜、設定すれば、キャビティ32の内圧(樹脂圧)を最適値にコントロールすることができる。したがって、適正な力を超えてワークWを加圧してしまうことが防止でき、高精度な成形品質を実現することができる。このように、複雑な電気的な制御を必要とせず、極めて単純な機械的機構によって上記の効果を達成している点において、大きな技術的意義を有している。
【0088】
以上、説明した通り、本発明に係る樹脂モールド金型及び樹脂モールド装置によれば、樹脂モールドの際に、簡素な機械的機構によりキャビティ駒の位置固定を行うことができるため、キャビティ駒に樹脂圧反力が作用しても、キャビティ駒が移動することがなく、樹脂フラッシュの発生を防止することができる。また、第一押動駒が可動テーパブロックを押動する力が所定値以上となったときには、介在する第一弾性部材が縮むことによって、可動テーパブロックを押動しない状態とすることができる。したがって、ワークの第一部材(例えば基板)に搭載される第二部材(例えばチップ)の数や配列に関わらずに第二部材を破損させることなく樹脂モールド成形を行うことが可能となる。特に、チップを露出させるパッケージにおいてチップを破損させることなくチップ露出成形を好適に行うことが可能となる。
【0089】
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。特に、第一の実施形態及び第二の実施形態においてトランスファ成形装置を例に挙げて説明したが、第三の実施形態に示すように圧縮成形装置への応用も可能である。