(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
廃棄物を焼却し、焼却により生じた灰分を溶融させるガス化溶融炉に複数の空気供給口が設けられ、前記複数の空気供給口のそれぞれに共通の空気供給装置から空気が供給されるガス化溶融炉プラントの空気量制御装置であって、
制御対象の空気供給口における空気流量の測定値である対象測定値と、非制御対象の空気供給口における空気流量の測定値である非対象測定値とを取得する測定値取得手段と、
前記制御対象の空気流量の目標値である対象目標値を設定する目標値設定手段と、
前記測定値取得手段によって取得された前記対象測定値及び前記非対象測定値、並びに前記目標値設定手段によって設定された前記対象目標値に基づいて、前記制御対象の空気供給口における空気流量を調節するために前記空気供給口に接続された空気調節弁の操作量を決定する操作量決定手段と
を備える、
ガス化溶融炉プラントの空気量制御装置。
前記測定値取得手段は、前記対象測定値として前記ガス化溶融炉に含まれる溶融炉の一次空気流量測定値を取得し、前記非対象測定値として前記溶融炉の二次空気流量測定値を取得するように構成され、
前記目標値設定手段は、前記対象目標値として前記溶融炉の一次空気流量目標値を設定するように構成され、
前記操作量決定手段は、前記溶融炉の一次空気供給口に接続された前記空気調節弁の操作量を決定するように構成されている、
請求項1又は2に記載のガス化溶融炉プラントの空気量制御装置。
前記測定値取得手段は、前記対象測定値として前記ガス化溶融炉に含まれる溶融炉の二次空気流量測定値を取得し、前記非対象測定値として前記溶融炉の一次空気流量測定値を取得するように構成され、
前記目標値設定手段は、前記対象目標値として前記溶融炉の二次空気流量目標値を設定するように構成され、
前記操作量決定手段は、前記溶融炉の二次空気供給口に接続された前記空気調節弁の操作量を決定するように構成されている、
請求項1又は2に記載のガス化溶融炉プラントの空気量制御装置。
前記測定値取得手段は、前記ガス化溶融炉に含まれるガス化炉バーナへの空気供給量測定値、前記溶融炉に設けられた溶融炉始動バーナへの空気供給量測定値、前記溶融炉に設けられた溶融炉補助バーナへの空気供給量測定値、前記溶融炉から溶融スラグを排出するための出滓エゼクタへの空気供給量測定値、及び前記一次空気に混合される酸素流量測定値の少なくとも1つを、前記非対象測定値としてさらに取得するように構成されている、
請求項3又は4に記載のガス化溶融炉プラントの空気量制御装置。
前記制御対象及び前記非制御対象の空気流量それぞれの実績値、及び前記空気調節弁の操作量の実績値に基づいて、前記対象測定値、前記非対象測定値及び前記対象目標値に基づき前記空気調節弁の操作量を決定するための空気流量特性モデルを構築するモデル構築手段をさらに備え、
前記操作量決定手段は、前記モデル構築手段によって構築された前記空気流量特性モデルに前記対象測定値、前記非対象測定値及び前記対象目標値を適用して前記操作量を決定するように構成されている、
請求項1乃至5の何れかに記載のガス化溶融炉プラントの空気量制御装置。
前記モデル構築手段は、前記制御対象の空気流量の過去の第1時点での実績値である第1対象空気流量実績値、前記非制御対象の空気流量の前記第1時点での実績値である非対象空気流量実績値、及び前記空気調節弁における前記第1時点での操作量実績値のそれぞれを説明変数とし、前記制御対象の空気流量の前記第1時点より所定時間経過後の第2時点での実績値である第2対象空気流量実績値を目的変数として、重回帰分析により前記空気流量特性モデルを構築するように構成されており、
前記操作量決定手段は、前記空気流量特性モデルにおける前記第1対象空気流量実績値を前記対象測定値に、前記第2対象空気流量実績値を前記対象目標値に、前記非対象空気流量実績値を前記非対象測定値に置き換えて、前記操作量を決定するように構成されている、
請求項6に記載のガス化溶融炉プラントの空気量制御装置。
前記モデル構築手段は、前記ガス化溶融炉に含まれる溶融炉の一次空気流量の前記第1時点での実績値を前記第1対象空気流量実績値とし、前記一次空気流量の前記第2時点での実績値を前記第2対象空気流量実績値とし、前記溶融炉の二次空気流量の前記第1時点での実績値を前記非対象空気流量実績値とし、前記溶融炉の一次空気供給口に接続された前記空気調節弁の操作量の前記第1時点での実績値を前記操作量実績値として、前記空気流量特性モデルを構築するように構成されており、
前記測定値取得手段は、前記対象測定値として前記溶融炉の一次空気流量測定値を取得し、前記非対象測定値として前記溶融炉の二次空気流量測定値を取得するように構成され、
前記目標値設定手段は、前記対象目標値として前記溶融炉の一次空気流量目標値を設定するように構成され、
前記操作量決定手段は、前記空気流量特性モデルに前記対象測定値、前記非対象測定値及び前記対象目標値を適用して、前記空気調節弁の操作量を決定するように構成されている、
請求項7に記載のガス化溶融炉プラントの空気量制御装置。
前記モデル構築手段は、前記空気調節弁の操作量の前記第1時点での実績値の二乗、前記空気調節弁の操作量の実績値の時間変化率、前記一次空気流量の実績値の時間変化率、及び前記空気調節弁の操作量の実績値の時間変化率と前記一次空気流量の実績値の時間変化率との積の少なくとも1つにさらに基づいて、前記空気流量特性モデルを構築するように構成されている、
請求項8に記載のガス化溶融炉プラントの空気量制御装置。
前記モデル構築手段は、前記ガス化溶融炉に含まれるガス化炉バーナへの空気供給量の実績値、前記溶融炉に設けられた溶融炉始動バーナへの空気供給量の実績値、前記溶融炉に設けられた溶融炉補助バーナへの空気供給量の実績値、前記溶融炉から溶融スラグを排出するための出滓エゼクタへの空気供給量の実績値、及び前記一次空気と混合される酸素流量の実績値の少なくとも1つにさらに基づいて、前記空気流量特性モデルを構築するように構成されており、
前記測定値取得手段は、前記ガス化炉バーナへの空気供給量測定値、前記溶融炉始動バーナへの空気供給量測定値、前記溶融炉補助バーナへの空気供給量測定値、前記出滓エゼクタへの空気供給量測定値、及び前記一次空気に混合される酸素流量測定値の少なくとも1つを、前記非対象測定値としてさらに取得するように構成されている、
請求項8又は9に記載のガス化溶融炉プラントの空気量制御装置。
前記モデル構築手段は、前記ガス化溶融炉に含まれる溶融炉の二次空気流量の前記第1時点での実績値を前記第1対象空気流量実績値とし、前記二次空気流量の前記第2時点での実績値を前記第2対象空気流量実績値とし、前記溶融炉の一次空気流量の前記第1時点での実績値を前記非対象空気流量実績値とし、前記溶融炉の二次空気供給口に接続された前記空気調節弁の操作量の前記第1時点での実績値を前記操作量実績値として、前記空気流量特性モデルを構築するように構成されており、
前記測定値取得手段は、前記対象測定値として前記溶融炉の二次空気流量測定値を取得し、前記非対象測定値として前記溶融炉の一次空気流量測定値を取得するように構成され、
前記目標値設定手段は、前記対象目標値として前記溶融炉の二次空気流量目標値を設定するように構成され、
前記操作量決定手段は、前記空気流量特性モデルに前記対象測定値、前記非対象測定値及び前記対象目標値を適用して、前記空気調節弁の操作量を決定するように構成されている、
請求項7に記載のガス化溶融炉プラントの空気量制御装置。
前記モデル構築手段は、前記空気調節弁の操作量の前記第1時点での実績値の平方根、前記空気調節弁の操作量の実績値の時間変化率、前記二次空気流量の実績値の時間変化率、及び前記空気調節弁の操作量の実績値の時間変化率と前記二次空気流量の実績値の時間変化率との積の少なくとも1つにさらに基づいて、前記空気流量特性モデルを構築するように構成されている、
請求項12に記載のガス化溶融炉プラントの空気量制御装置。
前記モデル構築手段は、前記ガス化溶融炉に含まれるガス化炉バーナへの空気供給量の実績値、前記溶融炉に設けられた溶融炉始動バーナへの空気供給量の実績値、前記溶融炉に設けられた溶融炉補助バーナへの空気供給量の実績値、前記溶融炉から溶融スラグを排出するための出滓エゼクタへの空気供給量の実績値、及び前記一次空気と混合される酸素流量の実績値の少なくとも1つにさらに基づいて、前記空気流量特性モデルを構築するように構成されており、
前記測定値取得手段は、前記ガス化炉バーナへの空気供給量測定値、前記溶融炉始動バーナへの空気供給量測定値、前記溶融炉補助バーナへの空気供給量測定値、前記出滓エゼクタへの空気供給量測定値、及び前記一次空気に混合される酸素流量測定値の少なくとも1つを、前記非対象測定値としてさらに取得するように構成されている、
請求項12又は13に記載のガス化溶融炉プラントの空気量制御装置。
前記操作量決定手段は、前記モデル構築手段によって構築された重回帰式である前記空気流量特性モデルを式変換して、前記操作量実績値を目的変数とし、前記第2対象空気流量実績値を説明変数とした操作量決定式を導出し、前記操作量決定式を用いて前記操作量を決定するように構成されている、
請求項7乃至16の何れかに記載のガス化溶融炉プラントの空気量制御装置。
廃棄物を焼却し、焼却により生じた灰分を溶融させるガス化溶融炉に複数の空気供給口が設けられ、前記複数の空気供給口のそれぞれに共通の空気供給装置から空気が供給されるガス化溶融炉プラントの空気量制御方法であって、
制御対象の空気供給口における空気流量の測定値である対象測定値と、非制御対象の空気供給口における空気流量の測定値である非対象測定値とを取得するステップと、
前記制御対象の空気流量の目標値である対象目標値を設定するステップと、
取得された前記対象測定値及び前記非対象測定値、並びに設定された前記対象目標値に基づいて、前記制御対象の空気供給口における空気流量を調節するために前記空気供給口に接続された空気調節弁の操作量を決定するステップと
を有する、
ガス化溶融炉プラントの空気量制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、多くのガス化溶融炉プラントには、燃焼空気の供給先が複数存在し、これらに共通の送風機から空気を供給する構成となっている。このため、複数の供給先に設置された空気調節弁それぞれにおける空気流量特性、即ち空気流量と弁開度との関係が互いに関連し、ある供給先の空気流量が他の供給先の空気流量特性に影響を及ぼす。しかしながら、特許文献1に開示された方法では、算出された燃焼空気量から空気調節弁の開度を設定する上で他の供給先における空気流量が考慮されておらず、空気調節弁の開度操作を適切に行うことができない虞がある。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、上記課題を解決しうるガス化溶融炉プラントの空気量制御装置及び空気量制御方法並びに空気流量特性モデルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様のガス化溶融炉プラントの空気量制御装置は、廃棄物を焼却し、焼却により生じた灰分を溶融させるガス化溶融炉に複数の空気供給口が設けられ、前記複数の空気供給口のそれぞれに共通の空気供給装置から空気が供給されるガス化溶融炉プラントの空気量制御装置であって、制御対象の空気供給口における空気流量の測定値である対象測定値と、非制御対象の空気供給口における空気流量の測定値である非対象測定値とを取得する測定値取得手段と、前記制御対象の空気流量の目標値である対象目標値を設定する目標値設定手段と、前記測定値取得手段によって取得された前記対象測定値及び前記非対象測定値、並びに前記目標値設定手段によって設定された前記対象目標値に基づいて、前記制御対象の空気供給口における空気流量を調節するために前記空気供給口に接続された空気調節弁の操作量を決定する操作量決定手段とを備える。
【0007】
この態様において、前記目標値設定手段は、前記非制御対象の空気流量の目標値である非対象目標値をさらに設定するように構成されており、前記操作量決定手段は、前記目標値設定手段によって設定された前記非対象目標値にさらに基づいて、前記操作量を決定するように構成されていてもよい。
【0008】
また、上記態様において、前記測定値取得手段は、前記対象測定値として前記ガス化溶融炉に含まれる溶融炉の一次空気流量測定値を取得し、前記非対象測定値として前記溶融炉の二次空気流量測定値を取得するように構成され、前記目標値設定手段は、前記対象目標値として前記溶融炉の一次空気流量目標値を設定するように構成され、前記操作量決定手段は、前記溶融炉の一次空気供給口に接続された前記空気調節弁の操作量を決定するように構成されていてもよい。
【0009】
また、上記態様において、前記測定値取得手段は、前記対象測定値として前記ガス化溶融炉に含まれる溶融炉の二次空気流量測定値を取得し、前記非対象測定値として前記溶融炉の一次空気流量測定値を取得するように構成され、前記目標値設定手段は、前記対象目標値として前記溶融炉の二次空気流量目標値を設定するように構成され、前記操作量決定手段は、前記溶融炉の二次空気供給口に接続された前記空気調節弁の操作量を決定するように構成されていてもよい。
【0010】
また、上記態様において、前記測定値取得手段は、前記ガス化溶融炉に含まれるガス化炉バーナへの空気供給量測定値、前記溶融炉に設けられた溶融炉始動バーナへの空気供給量測定値、前記溶融炉に設けられた溶融炉補助バーナへの空気供給量測定値、前記溶融炉から溶融スラグを排出するための出滓エゼクタへの空気供給量測定値、及び前記一次空気に混合される酸素流量測定値の少なくとも1つを、前記非対象測定値としてさらに取得するように構成されていてもよい。
【0011】
また、上記態様において、前記空気量制御装置は、前記制御対象及び前記非制御対象の空気流量それぞれの実績値、及び前記空気調節弁の操作量の実績値に基づいて、前記対象測定値、前記非対象測定値及び前記対象目標値に基づき前記空気調節弁の操作量を決定するための空気流量特性モデルを構築するモデル構築手段をさらに備え、前記操作量決定手段は、前記モデル構築手段によって構築された前記空気流量特性モデルに前記対象測定値、前記非対象測定値及び前記対象目標値を適用して前記操作量を決定するように構成されていてもよい。
【0012】
また、上記態様において、前記モデル構築手段は、前記制御対象の空気流量の過去の第1時点での実績値である第1対象空気流量実績値、前記非制御対象の空気流量の前記第1時点での実績値である非対象空気流量実績値、及び前記空気調節弁における前記第1時点での操作量実績値のそれぞれを説明変数とし、前記制御対象の空気流量の前記第1時点より所定時間経過後の第2時点での実績値である第2対象空気流量実績値を目的変数として、重回帰分析により前記空気流量特性モデルを構築するように構成されており、前記操作量決定手段は、前記空気流量特性モデルにおける前記第1対象空気流量実績値を前記対象測定値に、前記
第2対象空気流量実績値を前記対象目標値に、前記非対象空気流量実績値を前記非対象測定値に置き換えて、前記操作量を決定するように構成されていてもよい。
【0013】
また、上記態様において、前記モデル構築手段は、前記ガス化溶融炉に含まれる溶融炉の一次空気流量の前記第1時点での実績値を前記第1対象空気流量実績値とし、前記一次空気流量の前記第2時点での実績値を前記
第2対象空気流量実績値とし、前記溶融炉の二次空気流量の前記第1時点での実績値を前記非対象空気流量実績値とし、前記溶融炉の一次空気供給口に接続された前記空気調節弁の操作量の前記第1時点での実績値を前記操作量実績値として、前記空気流量特性モデルを構築するように構成されており、前記測定値取得手段は、前記対象測定値として前記溶融炉の一次空気流量測定値を取得し、前記非対象測定値として前記溶融炉の二次空気流量測定値を取得するように構成され、前記目標値設定手段は、前記対象目標値として前記溶融炉の一次空気流量目標値を設定するように構成され、前記操作量決定手段は、前記空気流量特性モデルに前記対象測定値、前記非対象測定値及び前記対象目標値を適用して、前記空気調節弁の操作量を決定するように構成されていてもよい。
【0014】
また、上記態様において、前記モデル構築手段は、前記空気調節弁の操作量の前記第1時点での実績値の二乗、前記空気調節弁の操作量の実績値の時間変化率、前記一次空気流量の実績値の時間変化率、及び前記空気調節弁の操作量の実績値の時間変化率と前記一次空気流量の実績値の時間変化率との積の少なくとも1つにさらに基づいて、前記空気流量特性モデルを構築するように構成されていてもよい。
【0015】
また、上記態様において、前記モデル構築手段は、前記ガス化溶融炉に含まれるガス化炉バーナへの空気供給量の実績値、前記溶融炉に設けられた溶融炉始動バーナへの空気供給量の実績値、前記溶融炉に設けられた溶融炉補助バーナへの空気供給量の実績値、前記溶融炉から溶融スラグを排出するための出滓エゼクタへの空気供給量の実績値、及び前記一次空気と混合される酸素流量の実績値の少なくとも1つにさらに基づいて、前記空気流量特性モデルを構築するように構成されており、前記測定値取得手段は、前記ガス化炉バーナへの空気供給量測定値、前記溶融炉始動バーナへの空気供給量測定値、前記溶融炉補助バーナへの空気供給量測定値、前記出滓エゼクタへの空気供給量測定値、及び前記一次空気に混合される酸素流量測定値の少なくとも1つを、前記非対象測定値としてさらに取得するように構成されていてもよい。
【0016】
また、上記態様において、前記モデル構築手段は、前記一次空気流量の実績値が時間経過に伴って増加したか否かにさらに基づいて、前記空気流量特性モデルを構築するように構成されていてもよい。
【0017】
また、上記態様において、前記モデル構築手段は、前記ガス化溶融炉に含まれる溶融炉の二次空気流量の前記第1時点での実績値を前記第1対象空気流量実績値とし、前記二次空気流量の前記第2時点での実績値を
第2対象空気流量実績値とし、前記溶融炉の一次空気流量の前記第1時点での実績値を前記非対象空気流量実績値とし、前記溶融炉の二次空気供給口に接続された前記空気調節弁の操作量の前記第1時点での実績値を前記操作量実績値として、前記空気流量特性モデルを構築するように構成されており、前記測定値取得手段は、前記対象測定値として前記溶融炉の二次空気流量測定値を取得し、前記非対象測定値として前記溶融炉の一次空気流量測定値を取得するように構成され、前記目標値設定手段は、前記対象目標値として前記溶融炉の二次空気流量目標値を設定するように構成され、前記操作量決定手段は、前記空気流量特性モデルに前記対象測定値、前記非対象測定値及び前記対象目標値を適用して、前記空気調節弁の操作量を決定するように構成されていてもよい。
【0018】
また、上記態様において、前記モデル構築手段は、前記空気調節弁の操作量の前記第1時点での実績値の平方根、前記空気調節弁の操作量の実績値の時間変化率、前記二次空気流量の実績値の時間変化率、及び前記空気調節弁の操作量の実績値の時間変化率と前記二次空気流量の実績値の時間変化率との積の少なくとも1つにさらに基づいて、前記空気流量特性モデルを構築するように構成されていてもよい。
【0019】
また、上記態様において、前記モデル構築手段は、前記ガス化溶融炉に含まれるガス化炉バーナへの空気供給量の実績値、前記溶融炉に設けられた溶融炉始動バーナへの空気供給量の実績値、前記溶融炉に設けられた溶融炉補助バーナへの空気供給量の実績値、前記溶融炉から溶融スラグを排出するための出滓エゼクタへの空気供給量の実績値、及び前記一次空気と混合される酸素流量の実績値の少なくとも1つにさらに基づいて、前記空気流量特性モデルを構築するように構成されており、前記測定値取得手段は、前記ガス化炉バーナへの空気供給量測定値、前記溶融炉始動バーナへの空気供給量測定値、前記溶融炉補助バーナへの空気供給量測定値、前記出滓エゼクタへの空気供給量測定値、及び前記一次空気に混合される酸素流量測定値の少なくとも1つを、前記非対象測定値としてさらに取得するように構成されていてもよい。
【0020】
また、上記態様において、前記モデル構築手段は、前記二次空気流量の実績値が時間経過に伴って増加したか否かにさらに基づいて、前記空気流量特性モデルを構築するように構成されていてもよい。
【0021】
また、上記態様において、前記モデル構築手段は、複数の線型モデルが結合された前記空気流量特性モデルを構築するように構成されていてもよい。
【0022】
また、上記態様において、前記操作量決定手段は、前記モデル構築手段によって構築された重回帰式である前記空気流量特性モデルを式変換して、前記操作量実績値を目的変数とし、前記第2対象空気流量実績値を説明変数とした操作量決定式を導出し、前記操作量決定式を用いて前記操作量を決定するように構成されていてもよい。
【0023】
また、本発明の他の態様のガス化溶融炉プラントの空気量制御方法は、廃棄物を焼却し、焼却により生じた灰分を溶融させるガス化溶融炉に複数の空気供給口が設けられ、前記複数の空気供給口のそれぞれに共通の空気供給装置から空気が供給されるガス化溶融炉プラントの空気量制御方法であって、制御対象の空気供給口における空気流量の測定値である対象測定値と、非制御対象の空気供給口における空気流量の測定値である非対象測定値とを取得するステップと、前記制御対象の空気流量の目標値である対象目標値を設定するステップと、取得された前記対象測定値及び前記非対象測定値、並びに設定された前記対象目標値に基づいて、前記制御対象の空気供給口における空気流量を調節するために前記空気供給口に接続された空気調節弁の操作量を決定するステップとを有する。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るガス化溶融炉プラントの空気量制御装置、空気量制御方法、及び空気流量特性モデルによれば、複数の空気供給先の空気流量特性を考慮して空気供給弁の開度操作を適切に行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す各実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための方法及び装置を例示するものであって、本発明の技術的思想は下記のものに限定されるわけではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0028】
<ガス化溶融炉プラントの構成>
図1は、ガス化溶融炉プラントの概略構成を示す模式図である。本実施の形態に係るガス化溶融炉プラント10は、ガス化炉20及び溶融炉30を含むガス化溶融炉15を備えている。ガス化溶融炉プラント10は、廃棄物を貯留するごみピット40を備えており、ごみ収集車41から排出された廃棄物がごみピット40に収容される。ごみピット40にはごみクレーン42が設けられている。ごみクレーン42は、ごみピット40に貯留された廃棄物を把持して上昇することにより、ごみピット40から定量ずつ廃棄物を取り出す。
【0029】
ごみピット40の隣には、給じんホッパ50が設けられている。ごみクレーン42は、ごみピット40から引き上げた廃棄物を給じんホッパ50に投入する。給じんホッパ50は、図示しない破砕機を備えており、投入された廃棄物を破砕する。給じんホッパ50の下方には、ベルトコンベアである給じんコンベア51が設けられており、破砕された廃棄物が定量ずつ給じんコンベア51に供給される。給じんコンベア51が廃棄物を搬送し、ガス化炉20に投入する。
【0030】
ガス化炉20には、底部に流動粒子(例えば、砂)からなる流動床21が設けられている。流動床21の下部には風箱22が設けられており、風箱22内に連通された押込送風機23により押込空気を導入すると、上向きに流動化空気が噴射され、流動床21の流動粒子及び給じんコンベア51により供給された廃棄物が流動撹拌される。このガス化炉20は、鉄及びアルミニウムなどの金属を未酸化状態で回収するため、流動床21の流動粒子の流動層温度(砂層温度)が、アルミニウムの融点(600℃)以下である約500〜600℃となるように運転される。廃棄物は、流動床21内で空気比0.2〜0.3程度の還元雰囲気の中で熱分解され、熱分解ガス(可燃性ガス)及び未燃固形分(チャー、灰分など)となる。ガス化炉20の炉頂部分には溶融炉30に連通する流路24が設けられており、熱分解ガス及び未燃固形分が当該流路24を通って溶融炉30に供給される。
【0031】
溶融炉30は、ガス化炉20で生成された熱分解ガス及び未燃固形分を約1300〜1400℃の高温で燃焼させる。流路24には燃焼用空気を供給するための一次空気供給口25が設けられており、一次空気供給口25には一次空気供給装置である二次送風機26が空気を供給するためのダクト27を通じて接続されている。また、かかるダクト27には、酸素富化装置28が接続されており、二次送風機26から供給された燃焼用空気と酸素富化装置28から供給された酸素とが混合されて一次空気供給口25から流路24に供給され、流路24から溶融炉30に供給される。ダクト27の一次空気供給口25の近傍にはバタフライ弁である空気調節弁29が設けられており、この空気調節弁29の開度調整により溶融炉30への一次空気供給量が調節される。
【0032】
溶融炉30は、流路24に連通する部分が一次燃焼室31になっており、供給された燃焼用空気が図の矢印に示すように強旋回される。この一次燃焼室31では、ガス化炉から流入する熱分解ガスの一部が燃焼される。一次燃焼室31の頂上部には、溶融炉補助バーナ35が設けられており、熱分解ガスの燃焼が補助される。溶融炉補助バーナ35は、ポートである空気供給口35aを通じてダクト27が連通しており、二次送風機26から空気が供給される。また、ダクト27の空気供給口35aの近傍にはバタフライ弁である空気調節弁35bが設けられており、この空気調節弁35bの開度調整により溶融炉補助バーナ35への空気供給量が調節される。
【0033】
また、溶融炉30は、一次燃焼室31の下端に、断面積が他の部分よりも小さい絞部36を有し、絞部36の後段に二次燃焼室32を有している。二次燃焼室32には、ダクト27のポートである二次空気供給口33が設けられており、二次送風機26から燃焼用空気が供給される。また、ダクト27の二次空気供給口33の近傍にはバタフライ弁である空気調節弁34が設けられており、この空気調節弁34の開度調整により溶融炉30への二次空気供給量が調節される。
【0034】
二次燃焼室32において、未燃の熱分解ガスが燃焼用空気によって高温燃焼する。灰分は溶融し、スラグが生成されるとともに、ダイオキシン類を分解する。溶融炉30の下部にはスラグ下流口37が設けられており、スラグ下流口37には出滓エゼクタ38が付設されている。出滓エゼクタ38には、空気供給口38aを通じてダクト27が連通しており、二次送風機26から空気が供給される。また、ダクト27の空気供給口38aの近傍にはバタフライ弁である空気調節弁38bが設けられており、この空気調節弁38bの開度調整により出滓エゼクタ38への空気供給量が調節される。なお、空気調節弁29,34,35b,38bはバタフライ弁に限られず、他の種類の弁とすることもできる。出滓エゼクタ38は二次送風機26からの供給空気を用いてスラグ下流口37から溶融スラグを排出する。溶融スラグは、スラグ下流口37より炉外へと回収されることにより有用な資源として利用される。
【0035】
ボイラ60は、溶融炉30に付属して設置されており、ガス化溶融のプロセスで発生した熱を回収する。ボイラ60は、ガス化溶融のプロセスで発生した熱を利用して水を蒸発させ、図示されない蒸気タービン及び発電機を駆動して電力を生成する。また、溶融炉30には排気用の煙突70が接続されている。溶融炉30と煙突70の間には、図示されないガス冷却装置、排ガス処理装置(バグフィルタ等)、脱硝装置、誘引送風機が設置されており、溶融炉30によって生じた排ガスを冷却、除塵して煙突70へと送出する。なお、ここではボイラが設けられたガス化溶融炉プラントについて説明しているが、ボイラが設けられていないガス化溶融炉プラントであってもよい。
【0036】
上記のようなガス化溶融炉プラント10には、各種のセンサが設けられている。押込送風機23から風箱22へ繋がる流路には、風箱22に導入される押込空気の温度を計測するための押込空気温度計71と、押込空気の流量を計測するための押込空気流量計72と、押込空気の圧力を計測するための押込空気圧力計73とが設けられている。ダクト27における二次送風機26からの送風口付近には、二次送風機26から吐出される空気の温度を計測するための吐出温度計74と、当該空気の圧力を計測するための吐出圧力計75とが設けられている。また、一次空気供給口25には、二次送風機26からダクト27を通じて流路24に供給される燃焼用空気(以下、「一次空気」という)の流量を計測するための一次空気流量計76が設けられており、酸素富化装置28には、酸素富化装置28から供給されるO2ガスの流量(以下、「酸素流量」という)を計測するための酸素流量計77が設けられている。溶融炉補助バーナ35に開設された空気供給口35aには、溶融炉補助バーナ35へ供給される空気の流量(以下、「補助バーナ空気流量」という)を計測するための補助バーナ空気流量計78が設けられている。また、二次空気供給口33には、二次送風機26からダクト27を通じて二次燃焼室32に供給される燃焼用空気(以下、「二次空気」という)の流量を計測するための二次空気流量計79が設けられている。出滓エゼクタ38に開設された空気供給口38aには、出滓エゼクタ38へ供給される空気の流量(以下、「エゼクタ空気流量」という)を計測するためのエゼクタ空気流量計80が設けられている。
【0037】
かかるガス化溶融炉プラント10は、空気量制御装置100に接続されている(
図2参照)。空気量制御装置100は、押込空気温度計71、押込空気流量計72、押込空気圧力計73、吐出温度計74、吐出圧力計75、一次空気流量計76、酸素流量計77、補助バーナ空気流量計78、二次空気流量計79、及びエゼクタ空気流量計80のそれぞれに接続されており、これらの出力データを受信するようになっている。また、空気量制御装置100は、空気調節弁29,34,35b,38bに接続されている。かかる空気量制御装置100は、これらのセンサの出力データに基づいて空気調節弁29,34,35b,38bの開度を調整し、溶融炉30への空気供給量を制御する。
【0038】
<空気量制御装置の構成>
次に、本実施の形態に係る空気量制御装置の構成について説明する。
図2は、本実施の形態に係る空気量制御装置の構成を示すブロック図である。空気量制御装置100は、コンピュータ200によって実現される。
図2に示すように、コンピュータ200は、本体300と、入力部400と、表示部500とを備えている。本体300は、CPU301、ROM302、RAM303、ハードディスク305、入出力インタフェース306、及び画像出力インタフェース307を備えており、CPU301、ROM302、RAM303、ハードディスク305、入出力インタフェース306、及び画像出力インタフェース307は、バスによって接続されている。
【0039】
CPU301は、RAM303にロードされたコンピュータプログラムを実行する。そして、空気量制御用のコンピュータプログラムである空気量制御プログラム310をCPU301が実行することにより、コンピュータ200が空気量制御装置100として機能する。また、空気量制御プログラム310には、一次空気の空気調節弁29及び二次空気の空気調節弁34の操作量を算出するための空気流量特性モデル311,312が含まれる。
【0040】
ROM302は、マスクROM、PROM、EPROM、又はEEPROM等によって構成されており、CPU301に実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータ等が記録されている。
【0041】
RAM303は、SRAM又はDRAM等によって構成されている。RAM303は、ハードディスク305に記録されている空気量制御プログラム310の読み出しに用いられる。また、RAM303は、CPU301がコンピュータプログラムを実行するときに、CPU301の作業領域として利用される。
【0042】
ハードディスク305は、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU301に実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。空気量制御プログラム310も、このハードディスク305にインストールされている。
【0043】
また、ハードディスク305には、上記の各センサから出力されたデータを格納する実績データベース(実績DB)320と、機械学習に使用する学習データを格納する学習データベース(学習DB)330と、機械学習により構築された空気流量特性モデル311,312のモデルパラメータを格納するモデル学習結果データベース(モデル学習結果DB)340と、一次及び二次空気供給用の空気調節弁29,34の操作量の決定に用いられるデータを格納する動作条件データベース(動作条件DB)350とが設けられている。
【0044】
入出力インタフェース306は、例えばUSB,IEEE1394,又はRS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又は IEEE1284等のパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース306には、キーボード及びマウスからなる入力部400が接続されており、ユーザが当該入力部400を使用することにより、コンピュータ200にデータを入力することが可能である。また、入出力インタフェース306には、上述した押込空気温度計71、押込空気流量計72、押込空気圧力計73、吐出温度計74、吐出圧力計75、一次空気流量計76、酸素流量計77、補助バーナ空気流量計78、二次空気流量計79、及びエゼクタ空気流量計80のそれぞれが接続されており、これらセンサから出力データを受信するように構成されている。さらに、入出力インタフェース306には、空気調節弁29,34,35b,38bが接続されており、これらに制御信号を送信できるようになっている。
【0045】
画像出力インタフェース307は、LCDまたはCRT等で構成された表示部500に接続されており、CPU301から与えられた画像データに応じた映像信号を表示部500に出力するようになっている。表示部500は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0046】
<空気量制御装置の動作>
次に、空気量制御装置100の動作について説明する。
図3は、本実施の形態に係る空気量制御装置100の動作の手順を示すフローチャートである。空気量制御装置100は、ガス化溶融炉プラント10に対する空気量制御処理を実行する。かかる空気量制御処理は、各種センサからの出力データに基づく一次及び二次空気の供給量制御であり、これにより溶融炉30内の燃焼状態が適正に保たれる。
【0047】
空気量制御装置100は、上記の各センサ、具体的には、押込空気温度計71、押込空気流量計72、押込空気圧力計73、吐出温度計74、吐出圧力計75、一次空気流量計76、酸素流量計77、補助バーナ空気流量計78、二次空気流量計79、エゼクタ空気流量計80等から出力されたデータ(以下、「測定データ」という)を受信する(ステップS101)。CPU301は、この測定データに対してノイズ除去、スムージング、補正などの前処理を実行する(ステップS102)。前処理では、式(1)にしたがって、一次空気流量計76、酸素流量計77、補助バーナ空気流量計78、二次空気流量計79、及びエゼクタ空気流量計80の測定データの移動平均が算出され、また、式(2)にしたがって、空気流量の測定値が温度及び圧力により補正(温圧補正)され、立米からノルマル立米へと変換される。
【数1】
なお、上記の式(2)において、ここでは温圧補正の対象は一次空気流量、酸素流量、補助バーナ空気流量、二次空気流量、及びエゼクタ空気流量である。この前処理により、一次空気流量、酸素流量、補助バーナ空気流量、二次空気流量、及びエゼクタ空気流量のそれぞれの運転データが取得される。その後、CPU301は、取得された運転データを実績DB320に保存する(ステップS103)。
【0048】
次にCPU301は、空気流量特性モデル311,312を構築するか否かを判定する(ステップS104)。例えば、CPU311は、モデル学習結果DB340を参照し、空気流量特性モデル311,312のモデルパラメータが格納されていない場合(つまり、空気流量特性モデル311,312が構築されていない場合)、前回の空気流量特性モデル311,312の構築から所定時間が経過した場合、ユーザによって空気流量特性モデル311,312の構築が指示された場合等には、空気流量特性モデル311,312を構築すると判定する。空気流量特性モデル311,312を構築すると判定された場合(ステップS104においてYES)、CPU301は、モデル構築処理を実行する(ステップS105)。
【0049】
以下、モデル構築処理について詳細に説明する。本実施の形態に係る空気量制御装置100では、空気流量特性モデル311,312を重回帰式により定義する。一般化した空気流量特性モデルを次式(3)に示す。
【数2】
但し、y(t)は時刻tにおける目的変数であり、x
1(t),x
2(t),…,x
I(t)は説明変数であり、θ
1,θ
2,…,θ
Iはモデルパラメータであり、θ
0はオフセット項(定数)であり、Iは説明変数の数である。本実施の形態に係る空気量制御装置100では、一次空気の空気調節弁29の空気流量特性モデル311と、二次空気の空気調節弁34の空気流量特性モデル312とが構築される。
【0050】
本実施の形態に係る空気流量特性モデル311は、具体的には次式(4)で表される。
【数3】
但し、x
pp(t)は時刻tにおける一次空気流量の測定値(以下、「PV値」という)であり、x
pm(t)は時刻tにおける空気調節弁29の操作量(以下、操作量を「MV値」といい、空気調節弁29のMV値を「一次空気流量MV値」という)であり、x
sp(t)は時刻tにおける二次空気流量PV値であり、x
other(t)は時刻tにおける補助バーナ空気流量PV値及びエゼクタ空気流量PV値の和であり、x
O2(t)は時刻tにおける酸素流量PV値である。また、T
1は一次空気流量の時定数であり、T
2は二次空気流量の時定数であり、ΔTは制御周期である。したがって、x
pp(t+T
1)は、一次遅れ系である一次空気流量を時刻tにおける目標値(以下、「SV値」という)に応じて制御した結果収束した実測値であり、同様にx
sp(t+T
2)は、一次遅れ系である二次空気流量を時刻tにおける二次空気流量SV値に応じて制御した結果収束した実測値である。また、x
pp(t−ΔT)は、時刻tより一制御周期前の時点における一次空気流量PV値である。また、sign()は符号関数である。ここで符号関数とは、入力された数値が正であれば「1」を、負であれば「−1」を出力する関数である。したがって、sign(x
pp(t+T
1)−x
pp(t))は、一次空気流量PV値が時刻tからt+T
1にかけて増加したか否かを示している。
【0051】
また、本実施の形態に係る空気流量特性モデル312は、具体的には次式(5−1)及び(5−2)で表される。
【数4】
また、x
sm(t)は時刻tにおける空気調節弁29のMV値(以下、「二次空気流量MV値」という)である。式(5−1)はx
sm(t)が閾値T
sm未満場合の線型モデルであり、式(5−2)はx
sm(t)が閾値T
sm以上の場合の線型モデルであり、空気流量特性モデル312は、これらの2つの線型モデルが結合されたものである。
【0052】
モデル構築処理では、最小二乗法により実績値を近似して、上記のような空気流量特性モデル311,312のモデルパラメータを特定する。最小二乗法では、目的変数の実測値に対する誤差を最小にするように近似が行われ、説明変数の実測値に対する誤差は考慮されない。MV値は空気量制御装置100により算出される制御量であるので、制御の結果であるSP値より実測値に対する誤差は少ない。本実施の形態では、式(4)、(5−1)及び(5−2)に示すようにMV値を説明変数とし、SP値を目的変数としているため、かかる空気流量特性モデル311,312を最小二乗法により構築することで、MV値を目的変数とする場合に比べて構築された空気流量特性モデル311,312の確からしさが向上する。
【0053】
空気流量特性モデル311は、一次空気用の空気調節弁29の操作に用いられるため、空気流量特性モデル311に係る制御対象は一次空気供給口25である。なお、ここでいう「制御対象」は、空気量制御装置100全体の制御対象を指すのではなく、空気流量特性モデルが対象とする空気供給口における空気流量を指す。つまり、空気流量特性モデル311に係る制御対象は一次空気供給口25における空気流量であり、二次空気供給口33、及び空気供給口35a,38aにおける空気流量は非制御対象である。同様に、空気流量特性モデル312に係る制御対象は二次空気供給口33における空気流量であり、一次空気供給口25、及び空気供給口35a,38aにおける空気流量は非制御対象である。 一次空気用の空気調節弁29の空気流量特性モデル311は、制御対象の一次空気供給口25における一次空気流量PV値及びSV値(これに対応するx
pp(t+T
1))だけでなく、非制御対象の空気供給口33,35a,38aにおける二次空気流量PV値、二次空気流量SV値(これに対応するx
sp(t+T
2))、補助バーナ空気流量PV値、及びエゼクタ空気流量PV値の各要素を含んでいる。つまり、空気流量特性モデル311は、一次空気と空気供給源である二次送風機26を共有する二次空気、補助バーナ空気、及びエゼクタ空気の各空気流量を考慮して定義されている。このため、かかる空気流量特性モデル311を用いることで、空気調節弁29の開度操作を適切に行うことができる。同様に、二次空気用の空気調節弁34の空気流量特性モデル312は、制御対象の二次空気供給口33における二次空気流量PV値及びSV値(これに対応するx
sp(t+T
2))だけでなく、非制御対象の空気供給口25,35a,38aにおける一次空気流量PV値、一次空気流量SV値(これに対応するx
pp(t+T
1))、補助バーナ空気流量PV値、及びエゼクタ空気流量PV値の各要素を含んでいる。つまり、空気流量特性モデル312は、二次空気と空気供給源である二次送風機26を共有する一次空気、補助バーナ空気、及びエゼクタ空気の各空気流量を考慮して定義されている。このため、かかる空気流量特性モデル312を用いることで、空気調節弁34の開度操作を適切に行うことができる。
【0054】
図4は、モデル構築処理の手順を示すフローチャートである。モデル構築処理において、CPU301は、まず実績DB320から運転データを読み出す(ステップS201)。実績DB320には、上記のステップS103において格納された一次空気流量、酸素流量、補助バーナ空気流量、二次空気流量、及びエゼクタ空気流量の各PV値だけでなく、一次空気流量MV値及び二次空気流量MV値の実績値も時刻情報と対応付けられた運転データとして格納されている。ステップS201では、時刻tにおける一次空気流量、酸素流量、補助バーナ空気流量、二次空気流量、及びエゼクタ空気流量の各PV値、時刻t+T
1における一次空気流量PV値、時刻t+T
2における二次空気流量PV値、時刻tにおける一次及び二次空気流量の各MV値、並びに時刻t−ΔTにおける一次及び二次空気量それぞれのPV値及びMV値が読み出される。
【0055】
次に、CPU301は、前処理変数情報を作成する(ステップS202)。前処理変数情報の作成について説明する。式(4)に示したように、空気流量特性モデル311は、計算の必要のない説明変数(x
pp(t),x
pp(t+T
1),x
pm(t),x
sp(t),x
sp(t+T
2),x
O2(t))だけでなく、次のような計算する必要のある説明変数を含んでいる。
【数5】
【0056】
また、式(5−1)及び(5−2)に示したように、空気流量特性モデル312は、計算の必要のない説明変数(x
pp(t),x
pp(t+T
1),x
sm(t),x
sp(t),x
sp(t+T
2),x
O2(t))だけでなく、次のような計算する必要のある説明変数を含んでいる。
【数6】
【0057】
そこで、CPU301は、読み出された運転データを用いて、上記の説明変数の実績値を算出する。これが前処理変数情報の作成である。
【0058】
次にCPU301は、学習データ作成処理を実行する(ステップS203)。学習データ作成処理は、空気流量特性モデル311,312の機械学習に用いられるデータを作成するための処理である。
【0059】
ここで、二次空気流量特性、つまり、空気調節弁34の空気流量特性について説明する。一次空気流量特性、つまり、空気調節弁29の空気流量特性は、概ね線形を示すため、式(4)に示す線形モデルによって実績値を近似できる。これに対して、二次空気流量特性は非線形である。したがって、単純に線型モデルによって二次空気流量特性を近似することはできない。
【0060】
図5は、空気調節弁34の空気流量特性を示すグラフである。
図5において、縦軸は目的変数y(t)(つまり、時刻t+T2における二次空気流量PV値)を示し、横軸は二次空気流量MV値に関する説明変数jを示している。二次空気流量MV値に関する説明変数jとは、具体的には、次の各説明変数である。なお、
図5には、横軸の説明変数が二次空気流量MV値である例を示している。
【数7】
【0061】
図5に示すように、二次空気流量特性は、説明変数jが閾値T(j)未満の領域では、説明変数jに比例して目的変数y(t)が増加し、説明変数jが閾値T(j)以上となると目的変数y(t)が一定値に収束する。このため、二次空気流量特性では、変曲点に閾値T(j)を設定し、この閾値T(j)を境界として上記の式(5−1)及び(5−2)に示した2つの線型モデルで実績値を近似する。よって、学習データの説明変数jが閾値T(j)未満の場合には、式(5−1)のモデルに学習データを与えて式(5−2)のモデルには学習データを与えず、説明変数jが閾値T(j)以上の場合には、式(5−1)のモデルには学習データを与えずに式(5−2)のモデルに学習データを与えるようにする。学習データ作成処理では、上記のような学習を行うための学習データ行列Aを作成する。
【0062】
学習データ行列Aの一例を次に示す。
【数8】
学習データ行列Aは、一行が同一時刻(t)についての各説明変数の実績値が含まれるデータセットとなっており、互いに異なる行には互いに異なる時刻の実績値のデータセットが含まれる。また、列は説明変数に対応しており、上記のような閾値T(j)による場合分けが必要のない説明変数は一列に、場合分けが必要な説明変数は隣り合う二列に表現されている。場合分けが必要な説明変数は、左の列が閾値T(j)未満の場合の学習データであり、右の列が閾値T(j)以上の場合の学習データである。ある説明変数jの実績値x(i,j)が閾値T(j)未満であった場合、左の列の要素A(i,k)に実績値x(i,j)が格納され、右の列の要素A(i,k+1)には「0」が格納される。また、説明変数jの実績値x(i,j)が閾値T(j)以上であった場合、左の列の要素A(i,k)には「0」が格納され、右の列の要素A(i,k+1)に実績値x(i,j)が格納される。この学習データ行列Aは、要素毎に学習DB330に格納される。
【0063】
図6は、学習データ作成処理の手順を示すフローチャートである。学習データ作成処理において、CPU301は、データインデックスi、つまり実績DB320から読み出されたレコードのインデックスi、説明変数インデックスj、及び機械学習に用いられる学習データ行列Aの列成分インデックスkのそれぞれを初期化する(ステップS301〜S303)。
【0064】
次にCPU301は、説明変数jが二次空気流量MV値に関する説明変数であるか否かを判別し(ステップS304)、説明変数jが二次空気流量MV値に関する説明変数である場合(ステップS304においてYES)、説明変数jの実績値x(i,j)が閾値条件を満たすか否か、即ち、閾値T(j)未満であるか否かを判別する(ステップS305)。閾値条件を満たしている場合、即ち、実績値x(i,j)が閾値T(j)未満である場合には(ステップS305においてYES)、CPU301は学習DB330における学習データ行列Aの要素A(i,k)に実績値x(i,j)を格納し(ステップS306)、要素A(i,k+1)に「0」を格納する(ステップS307)。他方、閾値条件を満たしていない場合、即ち、実績値x(i,j)が閾値T(j)以上である場合には(ステップS305においてNO)、CPU301は学習DB330の要素A(i,k)に「0」を格納し(ステップS308)、要素A(i,k+1)に実績値x(i,j)を格納する(ステップS309)。ステップS307又はS308の処理の後、CPU301は、kを2つインクリメントし(ステップS310)、ステップS313へ処理を移す。
【0065】
説明変数jが二次空気流量MV値に関する説明変数でない場合(ステップS304においてNO)、CPU301は学習DB330の要素A(i,k)に実績値x(i,j)を格納し(ステップS311)、kを1つインクリメントして(ステップS312)、ステップS313へ処理を移す。
【0066】
CPU301は、jが説明変数の数Jに一致するか否かを判定し(ステップS313)、一致しなければ(ステップS313においてNO)、jを1つインクリメントし(ステップS314)、ステップS304へ処理を戻す。これにより、次の説明変数の実績値が学習行列に格納される。
【0067】
他方、jがJに一致する場合には(ステップS313においてYES)、CPU301は目的変数ベクトルBの要素B(i)にデータiにおける目的変数の実績値y(i)を格納し(ステップS315)、iが実績DB320から読み出されたレコードの数Iに一致するか否かを判定する(ステップS316)。iがIに一致しない場合には(ステップS316においてNO)、CPU301はiを1つインクリメントし(ステップS317)、ステップS302へ処理を戻す。他方、iがIに一致する場合には(ステップS316においてYES)、CPU301は学習データ作成処理を終了する。
【0068】
再び
図4を参照する。学習データ作成処理を終了すると、CPU301は、モデルパラメータを算出する(ステップS204)。モデルパラメータは、次式(6)にしたがって最小二乗法により算出される。
【数9】
但し、Θはモデルパラメータベクトルであり、Aは学習データ行列であり、Bは目的変数ベクトルである。
【0069】
CPU301は、算出されたモデルパラメータをモデル学習結果DB340に格納し(ステップS205)、モデル構築処理を終了する。
【0070】
再び
図3を参照する。モデル構築処理を終了すると、CPU301は、ステップS101へ処理を戻す。これにより、ステップS101以降の処理が再び実行される。ステップS104において、空気流量特性モデル311,312を構築しないと判定された場合(ステップS104においてNO)、CPU301は、前回の制御処理(つまり、制御信号の送信)を実行した後、所定の制御周期ΔTが経過したか否かを判定する(ステップS106)。制御周期ΔTが経過していない場合(ステップS106においてNO)、CPU301は、ステップS101に処理を戻す。
【0071】
他方、制御周期ΔTが経過している場合(ステップS106においてYES)、CPU301は、一次及び二次空気流量のSP値をそれぞれ設定する(ステップS107)。ステップS107の処理では、ガス化溶融炉プラント10における一次及び二次空気流量のSP値が算出される。このルールとしては、特願2016−206568に記載されたルールを利用することができる。設定された一次及び二次空気流量SP値は、動作条件DB350に格納される。
【0072】
次にCPU301は、操作量決定処理を実行する(ステップS108)。操作量決定処理は、一次及び二次空気流量SP値に対する一次及び二次空気流量MV値を算出する処理である。
図7は、操作量決定処理の手順を示すフローチャートである。操作量決定処理において、CPU301は、まず、動作条件DB350から一次及び二次空気流量SP値と、動作条件データとを読み出し、また実績DB320から前処理後の運転データを読み出す(ステップS401)。動作条件データには、前回の一次及び二次空気流量MV値、一次空気流量MV値の上限値及び下限値等が含まれる。
【0073】
次にCPU301は、一次空気操作量算出処理を実行する(ステップS402)。一次空気操作量算出処理は、空気流量特性モデル311に基づいて一次空気流量MV値を算出する処理である。
図8は、一次空気操作量算出処理の手順を示すフローチャートである。一次空気操作量算出処理において、CPU301は、まず中間変数Vを算出する(ステップS501)。中間変数Vは、次式(7a)乃至(7e)にしたがって算出される。
【数10】
【0074】
上記の式(7a)乃至(7g)は、式(4)をx
pm(t)の式に変形することで得られる。なお、このときx
pp(t+T
1)がx
ps(t)に、x
sp(t+T
2)がx
ss(t)に、x
pp(t−ΔT)がx
pp(t−1)に、x
pm(t−ΔT)がx
pm(t−1)にそれぞれ置き換えられる。これにより、目的変数が誤差の大きい一次空気流量PV値として精度よく求められた式(4)の形式の空気流量特性モデル311を、一次空気流量MV値を算出するための形式に変更できる。
【0075】
次にCPU301は、Vが0以上であるか否かを判別する(ステップS502)。Vが0以上である場合(ステップS502においてYES)、式(7f)及び(7g)にしたがって一次空気流量MV値の候補C
11,C
12を算出する(ステップS503)。さらにCPU301は、上下限リミッタ処理を実行する(ステップS504)。この処理では、一次空気流量MV値の候補C
11,C
22のそれぞれを一次空気流量MV値の上限値及び下限値と比較し、これらの一方又は両方が上限値又は下限値を超える場合にはその候補を上限値又は下限値に変更する処理である。
【0076】
次にCPU301は、C
11が0より大きいか否かを判別する(ステップS505)。C
11が0より大きい場合(ステップS505においてYES)、CPU301は一次空気流量MV値をC
11に決定し(ステップS506)、一次空気操作量算出処理を終了する。他方、C
11が0以下である場合には(ステップS505においてNO)、CPU301はC
12が0より大きいか否かを判別する(ステップS507)。C
12が0より大きい場合(ステップS507においてYES)、CPU301は一次空気流量MV値をC
12に決定し(ステップS508)、一次空気操作量算出処理を終了する。C
12が0以下である場合(ステップS507においてNO)、CPU301は、前回の一次空気流量MV値を新たな一次空気流量MV値として再度決定し(ステップS509)、一次空気操作量算出処理を終了する。
【0077】
また、ステップS502においてVが0未満であった場合(ステップS502においてNO)、CPU301は、一次空気流量MV値を下限値に決定し(ステップS510)、一次空気操作量算出処理を終了する。
【0078】
再び
図7を参照する。一次空気操作量算出処理を終了すると、CPU301は二次空気量算出処理を実行する(ステップS403)。二次空気操作量算出処理は、空気流量特性モデル312に基づいて二次空気流量MV値を算出する処理である。
図9は、二次空気操作量算出処理の手順を示すフローチャートである。二次空気操作量算出処理において、CPU301は、まず中間変数W
1,W
2を算出する(ステップS601)。中間変数W
1,W
2は、次式(8a)乃至(8j)にしたがって算出される。
【数11】
【0079】
上記の式(8a)乃至(8n)は、式(5−1)及び(5−2)をx
sm(t)の式に変形することで得られる。なお、このときx
pp(t+T
1)がx
ps(t)に、x
sp(t+T
2)がx
ss(t)に、x
sp(t−ΔT)がx
sp(t−1)に、x
sm(t−ΔT)がx
sm(t−1)にそれぞれ置き換えられる。これにより、目的変数が誤差の大きい一次空気流量PV値として精度よく求められた式(4)の形式の空気流量特性モデル311を、一次空気流量MV値を算出するための形式に変更できる。
【0080】
次にCPU301は、W
1が0以上であるか否かを判別する(ステップS602)。CPU311は、W
1が0以上である場合には(ステップS602においてYES)、そのままステップS604に処理を移し、W
1が0未満である場合には(ステップS602においてNO)、W
1を「0」に設定し(ステップS603)、ステップS604に処理を移す。
【0081】
CPU301は、W
2が0以上であるか否かを判別する(ステップS604)。CPU311は、W
2が0以上である場合には(ステップS604においてYES)、そのままステップS606に処理を移し、W
2が0未満である場合には(ステップS604においてNO)、W
2を「0」に設定し(ステップS605)、ステップS606に処理を移す。
【0082】
CPU301は、式(8k)乃至(8n)にしたがって二次空気流量MV値の候補C
21,C
22,C
23,C
24を算出する(ステップS606)。さらにCPU301は、上下限リミッタ処理を実行する(ステップS607)。この処理では、二次空気流量MV値の候補C
21,C
22,C
23,C
24のそれぞれを二次空気流量MV値の上限値及び下限値と比較し、これらの一方又は両方が上限値又は下限値を超える場合にはその候補を上限値又は下限値に変更する処理である。
【0083】
CPU301は、C
21,C
22,C
23,C
24のそれぞれと前回の二次空気流量MV値との絶対値差分を算出し(ステップS608)、C
21,C
22,C
23,C
24のうち絶対値差分が最小のものを二次空気流量MV値として決定する(ステップS609)。以上で、二次空気操作量算出処理が終了する。
【0084】
再び
図7を参照する。二次空気操作量算出処理を終了すると、CPU301は操作量決定処理を終了する。
【0085】
再び
図3を参照する。操作量決定処理を終了すると、CPU301は、得られた一次及び二次空気流量MV値に応じた制御信号を送信し、空気調節弁29の弁開度を操作する(ステップS109)。CPU301は、処理結果として、一次及び二次空気流量MV値を実績DB320及び動作条件DB350に保存し(ステップS110)、空気量制御処理を終了するか否かを判定する(ステップS111)。空気量制御処理を終了しない場合には(ステップS111においてNO)、CPU301は、ステップS101へ処理を戻す。例えば運転員から終了指示が与えられ、空気量制御処理を終了する場合には(ステップS111においてYES)、CPU301は空気量制御処理を終了する。
【0086】
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態では、空気流量特性モデル311が、二次空気流量PV値、二次空気流量SV値(これに対応するx
sp(t+T
2))、補助バーナ空気流量PV値、エゼクタ空気流量PV値、及び酸素流量PV値の各要素を含んで定義される構成について述べたが、これに限定されるものではない。二次空気流量SV値、補助バーナ空気流量PV値、エゼクタ空気流量PV値、及び酸素流量PV値を用いることなく、二次空気流量PV値を用いて空気流量特性モデル311を定義することもできるし、二次空気流量SV値、補助バーナ空気流量PV値、エゼクタ空気流量PV値、及び酸素流量PVの少なくとも1つを用いて空気流量特性モデル311を定義することもできる。また、二次空気流量PV値、二次空気流量SV値(これに対応するx
sp(t+T
2))、補助バーナ空気流量PV値、エゼクタ空気流量PV値、及び酸素流量PV値とは異なる空気流量、例えば、溶融炉30を始動するための始動バーナに二次送風機26からの空気を供給する構成の場合には、始動バーナへ供給される空気流量(以下、「始動バーナ空気流量」という)、ガス化炉20に設けられたバーナに二次送風機26からの空気を供給する構成の場合には、当該バーナへ供給される空気流量(以下、「ガス化炉バーナ空気流量」という)を用いて空気流量特性モデル311を定義することもできる。具体的には、式(4)及び式(7d)におけるx
other(t)を、時刻tにおける補助バーナ空気流量PV値、エゼクタ空気流量PV値、始動バーナ空気流量PV値、及びガス化炉バーナ空気流量PV値の和としてもよい。
【0087】
また、上述した実施の形態では、空気流量特性モデル312が、一次空気流量PV値、一次空気流量SV値(これに対応するx
pp(t+T
1))、補助バーナ空気流量PV値、エゼクタ空気流量PV値、及び酸素流量PV値の各要素を含んで定義される構成について述べたが、これに限定されるものではない。一次空気流量SV値、補助バーナ空気流量PV値、エゼクタ空気流量PV値、及び酸素流量PV値を用いることなく、一次空気流量PV値を用いて空気流量特性モデル312を定義することもできるし、一次空気流量SV値、補助バーナ空気流量PV値、エゼクタ空気流量PV値、及び酸素流量PVの少なくとも1つを用いて空気流量特性モデル312を定義することもできる。また、一次空気流量PV値、一次空気流量SV値(これに対応するx
pp(t+T
1))、補助バーナ空気流量PV値、エゼクタ空気流量PV値、及び酸素流量PV値とは異なる空気流量、例えば、始動バーナ空気流量、ガス化炉バーナ空気流量を用いて空気流量特性モデル311を定義することもできる。具体的には、式(5−1)及び(5−2)並びに式(8d)及び(8h)におけるx
other(t)を、時刻tにおける補助バーナ空気流量PV値、エゼクタ空気流量PV値、始動バーナ空気流量PV値、及びガス化炉バーナ空気流量PV値の和としてもよい。
【0088】
また、上述した実施の形態では、空気流量特性モデル311,312を重回帰分析によって構築する構成について述べたが、これに限定されるものではない。運転員等が経験に基づいて空気流量特性モデル311,312を作成してもよい。また、上述した実施の形態では、線形最小二乗法によって空気流量特性モデル311,312を構築する構成について述べたが、他の線形フィッティング方法を用いる構成としてもよい。また、上述した実施の形態では、空気流量特性モデル312を2つの線型モデルとしてそれぞれ線形最小二乗法によって近似する構成としたが、非線形最小二乗法を用いて空気流量特性モデル312を構築する構成とすることもできる。また、重回帰分析ではなく、ニューラルネットワーク、決定木、遺伝的プログラミング等の機械学習によって空気流量特性モデルを構築してもよい。
【0089】
また、上述した実施の形態では、単一のコンピュータ200によって空気量制御プログラム310のすべての処理が実行される構成について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく、空気量制御プログラム310と同様の処理を、複数の装置(コンピュータ)により分散して実行する分散システムとすることも可能である。