(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記供給先振分部は、前記発電部から前記蓄電池部へ供給される電力及び前記水素製造部へ供給される電力における前記蓄電池部と前記水素製造部との配分比を設定する供給先配分比設定部を備えた請求項3に記載の監視制御システム。
前記供給元振分部は、前記蓄電池部から前記電力需要へ供給される電力及び前記燃料電池部から前記電力需要へ供給される電力における前記蓄電池部と前記燃料電池部の配分比を設定する供給元配分比設定部を備えた請求項3又は4に記載の監視制御システム。
前記電力需要に対する前記発電部の電力余剰あるいは電力不足を判定し、判定結果を前記エネルギー管理部に出力する電力判定部を備えた請求項1〜7のいずれかに記載の監視制御システム。
前記エネルギー管理部は、前記水素貯蔵部から前記水素需要又は前記燃料電池部への水素供給の配分を制御することで電力エネルギー及び水素エネルギーを管理する請求項1〜9のいずれかに記載の監視制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、本発明に係る第1の実施形態を、
図1〜
図5を参照しながら説明する。
(構成)
図1に示すように、第1の実施形態に係る監視制御システム100は、システム内の電力及び水素の双方を監視制御するものである。監視制御システム100は、CPUやメモリなどを包含し所定のプログラムで動作するコンピュータで構成され、電力需要102及び水素需要103が組み込まれたマイクログリッド101に適用されている。水素需要103は水素を消費する燃料電池自動車などからなる。
【0014】
図1において、太い実線の矢印は電力の流れ、点線の矢印は水素の流れ、細い実線の矢印は計測した実績値などのデータの流れ、一点鎖線の矢印は制御指令の流れである。太い実線の矢印で示すように、監視制御システム100における電力需要102から見た場合の電力供給元は、発電部1と、蓄電池部2と、燃料電池部5である。また、発電部1からの電力の供給先は、電力需要102と、蓄電池部2と、水素製造部3である。点線の矢印で示すように、監視制御システム100における水素製造部3からの水素の供給先は、水素貯蔵部4と、燃料電池部5である。
【0015】
監視制御システム100には、発電部1、蓄電池部2、水素製造部3、水素貯蔵部4及び燃料電池部5が設けられている。このうち、発電部1は、再生可能エネルギーを用いることにより発電し電力需要102に電力を供給する。蓄電池部2は、蓄電池などからなり、発電部1が発電した電力を充電し、充電した電力を放電して電力需要102に供給する。
【0016】
水素製造部3は、発電部1及び蓄電池部2からの電力を取り込み、発電部1が発電した電力を用いて水を電気分解し水素を製造する装置である。水素製造部3には、水素貯蔵部4と燃料電池部5とが順次接続される。水素貯蔵部4は、例えば水素を貯蔵可能なタンクなどからなり、水素製造部3が製造した水素を貯蔵し、水素需要103に水素を供給する。燃料電池部5は、水素貯蔵部4から水素を、周囲から空気をそれぞれ取り込み、水素と空気中の酸素との化学反応によって電力を生成する装置である。燃料電池部5は、水素と酸素を用いて発電を行う水素貯蔵システムの一部であり、生成した電力を電力需要102に供給する。
【0017】
蓄電池部2には蓄電量計測部8が接続されている。蓄電量計測部8は、蓄電池部2の蓄電量を計測する。水素貯蔵部4には水素貯蔵量計測部9が設置されている。水素貯蔵量計測部9は、水素貯蔵部4における水素貯蔵量を計測する。蓄電量計測部8及び水素貯蔵量計測部9にはデータベース15(
図2参照)が接続されている。データベース15には蓄電量計測部8及び水素貯蔵量計測部9の計測結果が収集、格納される。
【0018】
電力需要102には電力計測部10が設けられ、水素需要103には水素計測部11が設けられている。電力計測部10は、電力需要102で任意の時間帯に必要とされる電力必要量を計測する。水素計測部11は、水素需要103で任意の時間帯に必要とされる水素必要量を計測する。これら計測部10、11の計測結果はデータベース15に収集、格納される。
【0019】
データベース15には、データベース15との間でデータの授受を行うように、電力基準を算出する電力基準算出部6、水素基準を算出する水素基準算出部7及び電力判定部12、エネルギー管理部16が接続されている。エネルギー管理部16には、供給先振分部13及び供給元振分部14が設けられている。
【0020】
電力基準算出部6は、蓄電量計測部8の計測結果を反映させつつ電力計測部10の計測結果に応じて電力基準を算出する。電力基準算出部6にて算出される電力基準とは、蓄電池部2における蓄電量を管理するための基準である。水素基準算出部7は、水素貯蔵量計測部9の計測結果を反映させつつ水素計測部11の計測結果に応じて水素基準を算出する。水素基準算出部7にて算出される水素基準とは、水素貯蔵部4における水素貯蔵量を管理するための基準である。電力基準算出部6及び水素基準算出部7にて算出された電力基準及び水素基準は、データベース15に収集、格納される。
【0021】
電力判定部12は、電力需要102での電力必要量に対して発電部1の発電量が足りて電力余剰が発生しているか、あるいは、電力需要102での電力必要量に対して発電部1の発電量が足りずに電力不足が発生しているのかを判定する。電力判定部12は、任意の時間帯における発電部1の発電量を取り込むと共に、データベース15から電力計測部10の計測結果を取り出して、発電部1の発電量と電力需要102での電力必要量とを比較することで、電力余剰あるいは電力不足の発生を判定する。
【0022】
電力判定部12では、任意の時間帯において、発電部1の発電量>電力需要102の電力必要量(電力必要量が負)であれば、電力余剰が発生したと判定する。反対に、任意の時間帯において、発電部1の発電量<電力需要102の電力必要量(電力必要量が正)であれば、電力判定部12は電力不足が発生したと判定する。電力判定部12は、判定結果をデータベース15に出力する。
【0023】
エネルギー管理部16は、電力基準及び水素基準に基づいて監視制御システム100内に貯蔵される電力エネルギー及び水素エネルギーを管理する部分である。エネルギー管理部16は、発電部1、蓄電池部2及び燃料電池部5の電力供給の配分を制御することで電力エネルギー及び水素エネルギーを管理している。エネルギー管理部16は、データベース15に格納した電力基準及び水素基準を時系列的に管理する。
【0024】
エネルギー管理部16は、電力計測部10の計測結果に応じて電力基準を複数の区間に分けて、例えば大中小の3つの区間に分けて、管理する。また、エネルギー管理部16は、水素計測部11の計測結果に応じて水素基準を複数の区間に分けて、例えば大中小の3つの区間に分けて、管理する。したがって、エネルギー管理部16に管理される電力基準と水素基準の組み合わせは、この場合は3×3=9通りとなる。
【0025】
エネルギー管理部16に設けられる構成要素のうち、供給先振分部13は、電力基準及び水素基準さらには電力判定部12の判定結果に基づいて、発電部1の発電電力を、その供給先として蓄電池部2及び水素製造部3に振り分ける。供給先振分部13は、電力判定部12が電力余剰であると判定したとき、発電部1の発電電力の供給先を、蓄電池部2とするか、水素製造部3とするか、もしくは両方とするのかを決める。
【0026】
また、供給先振分部13は、余剰電力分を蓄えるための蓄電池部2への充電量及び水素製造部3への電力使用量を算出する。供給先振分部13により水素製造部3での電力使用量が決まると、水素製造部3での水素製造量が決まる。水素製造部3での水素製造量が決まれば、ひいては水素貯蔵部4に蓄えられる水素の貯蔵量が決まることになる。
【0027】
供給先振分部13によって算出される蓄電池部2の充電量及び水素貯蔵部4の貯蔵量(電力エネルギーの観点からは水素製造部3の電力使用量)は、発電部1が出力する余剰電力の大きさに応じて複数の段階、例えば3段階に分けて決められる。蓄電池部2の充電量及び水素貯蔵部4の貯蔵量は、蓄電池部2の充電余力及び水素貯蔵部4の空き容量を最大値とする。
【0028】
さらに、供給先振分部13は、余剰電力を蓄える部分として決めた部分に対し、余剰電力を振り分けて供給するように発電部1へ制御指令を出力する。電力基準と水素基準の区間は3×3でこの場合は9通りあるので、エネルギー管理部16は、供給先振分部13による発電部1の発電電力の供給先を、次のように決める(
図3の表を参照)。
【0029】
すなわち、
電力基準が大区間で水素基準が大区間の場合、蓄電池部2と水素製造部3の両方とし(両方で充電)、
電力基準が大区間で水素基準が中区間の場合、水素製造部3とし(水素としてエネルギー貯蔵)、
電力基準が大区間で水素基準が小区間の場合、水素製造部3とし(水素としてエネルギー貯蔵)、
電力基準が中区間で水素基準が大区間の場合、蓄電池部2とし(蓄電池部で充電)、
電力基準が中区間で水素基準が中区間の場合、蓄電池部2と水素製造部3の両方とし(両方で充電)、
電力基準が中区間で水素基準が小区間の場合、水素製造部3とし(水素としてエネルギー貯蔵)、
電力基準が小区間で水素基準が大区間の場合、蓄電池部2とし(蓄電池部で充電)、
電力基準が小区間で水素基準が中区間の場合、蓄電池部2とし(蓄電池部で充電)、
電力基準が小区間で水素基準が小区間の場合、蓄電池部2と水素製造部3の両方とする(両方で充電)。
【0030】
エネルギー管理部16では、供給先振分部13がこのような制御を行うことで、電力基準の区間と水素基準の区間との大きさが同等であれば、蓄電池部2と水素製造部3の両方で余剰電力を取り込む。電力基準の区間の方が水素基準の区間よりも大きければ、水素製造部3で余剰電力を取り込み、水素としてエネルギーを貯蔵する。反対に、水素基準の区間の方が電力基準の区間よりも大きければ、蓄電池部2で余剰電力を取り込み、蓄電池部2で充電する。
【0031】
上記の供給先振分部13が発電部1の電力供給を制御するのに対して、供給元振分部14は、蓄電池部2及び燃料電池部5の電力供給を制御する部分である。供給元振分部14は、電力基準及び水素基準電力さらには判定部12の判定結果に基づいて、電力需要102へ供給する電力を、その供給元として蓄電池部2の放電電力と燃料電池部5の放電電力に振り分ける。供給元振分部14は、電力判定部12が電力不足であると判定したとき、電力需要102への電力供給元を、蓄電池部2とするか、燃料電池部5とするか、もしくは両方とするのかを決める。
【0032】
また、供給元振分部14は、不足電力を補うための蓄電池部2及び燃料電池部5の放電量を算出する。燃料電池部5の放電量が決まると、水素貯蔵部4に蓄えられた水素の使用量が決まることになる。ここで決められる蓄電池部2及び燃料電池部5の放電量は、蓄電池部2及び燃料電池部5の充電残量を最大値として、不足電力分の大きさに応じて複数の段階、例えば3段階に分けて決められる。
【0033】
さらに、供給元振分部14は、電力需要102への電力供給元として決めた部分へ、不足電力を補う放電を実施させる制御指令を出力する。電力基準と水素基準の区間が3×3でこの場合は9通りあるので、エネルギー管理部16は、供給元振分部14による電力需要102への電力供給元を、次のように決める(
図4の表を参照)。
【0034】
すなわち、
電力基準が大区間で水素基準が大区間の場合、蓄電池部2と燃料電池部5の両方とし(両方で放電)、
電力基準が大区間で水素基準が中区間の場合、蓄電池部2とし(蓄電池部で放電)、
電力基準が大区間で水素基準が小区間の場合、蓄電池部2とし(蓄電池部で放電)、
電力基準が中区間で水素基準が大区間の場合、燃料電池部5とし(燃料電池部で放電)、
電力基準が中区間で水素基準が中区間の場合、蓄電池部2と燃料電池部5の両方とし(両方で放電)、
電力基準が中区間で水素基準が小区間の場合、蓄電池部2とし(蓄電池部で放電)、
電力基準が小区間で水素基準が大区間の場合、燃料電池部5とし(燃料電池部方で放電)、
電力基準が小区間で水素基準が中区間の場合、燃料電池部5とし(燃料電池部で放電)、
電力基準が小区間で水素基準が小区間の場合、蓄電池部2と燃料電池部5の両方とする(両方で放電)。
【0035】
エネルギー管理部16では、供給元振分部14がこのような制御を行うことで、電力基準の区間と水素基準の区間との大きさが同等であれば、蓄電池部2と燃料電池部5の両方で不足電力を補う。電力基準の区間の方が水素基準の区間よりも大きければ、蓄電池部2で不足電力を補う。反対に、水素基準の区間の方が電力基準の区間よりも大きければ、発電に水素を利用する燃料電池部5で不足電力を補う。
【0036】
(作用)
以上のような構成を有する第1の実施形態の処理の流れについて、
図5のフローチャートを用いて説明する。蓄電量計測部8は蓄電池部2の蓄電量を計測し、水素貯蔵量計測部9は水素貯蔵部4における水素貯蔵量を計測して、計測結果をデータベース15に出力し、データベース15はこれらの実績値を格納、蓄積する。
【0037】
電力計測部10及び水素計測部11は、電力需要102及び水素需要103での任意の時間帯における電力必要量及び水素必要量を計測して、計測結果をデータベース15に出力し、データベース15は計測結果を格納、蓄積する。このようにして電力計測部10及び水素計測部11は、電力需要102及び水素需要103の数値監視を行い、電力必要量及び水素必要量を検出する(ステップ01)。
【0038】
ステップ02では、電力基準算出部6が、蓄電量計測部8及び電力計測部10の計測結果に応じて電力基準を算出し、水素基準算出部7が、水素貯蔵量計測部9及び水素計測部11の計測結果に基づいて水素基準を算出する。電力基準算出部6及び水素基準算出部7は算出した電力基準及び水素基準をデータベース15に格納、蓄積する。
【0039】
ステップ03では、エネルギー管理部16は、9通りある水素基準及び電力基準の区間の組み合わせのうち、どの組み合わせとするのかを決める。続いて、ステップ04では、電力判定部12が電力余剰あるいは電力不足の発生を判定する。すなわち、ステップ01にて検出した電力必要量が正であれば、電力需要102にて必要とされる電力量が発電部1が発電した発電量に対して不足電力が生じていると電力判定部12が判定する(ステップ04のYes)。
【0040】
このような電力判定部12の判定結果を受けて、ステップ05では、水素基準及び電力基準の区間の組み合わせに基づいて、供給元振分部14が不足電力を補うための蓄電池部2及び燃料電池部5の放電量を算出する。ステップ06では、供給元振分部14が蓄電池部2及び燃料電池部5へ制御指令を出力し、蓄電池部2及び燃料電池部5を配分制御して不足電力を補う。
【0041】
また、ステップ01にて検出した電力必要量が負であれば、電力需要102にて必要とされる電力量が発電部1が発電した発電量に対して余剰電力が生じていると、電力判定部12が判定する(ステップ04のNo)。このような電力判定部12の判定結果を受けて、ステップ07では、水素基準及び電力基準の区間の組み合わせに基づいて、供給元振分部13が余剰電力を蓄えるための発電部1からの電力供給先での電力配分つまり蓄電池部2の充電量及び水素製造部3での電力使用量を算出する。
【0042】
ステップ08では、供給先振分部13が発電部1へ配分制御指令を出力する。配分制御指令を受けた発電部1は余剰電力を蓄電池部2又は水素製造部3もしくは両方に供給する。発電部1から電力を受けた蓄電池部2はこれを充電し、発電部1から電力を受けた水素製造部3は、余剰電力を利用して水素を生成し、これを水素貯蔵部4に送る。
【0043】
(効果)
第1の実施形態に係る監視制御システム100では、電力基準算出部6が電力基準を算出し、水素基準算出部7が水素基準を算出し、これら電力基準及び水素基準に基づいて、エネルギー管理部16が発電部1、蓄電池部2及び燃料電池部5の電力供給の配分を制御する。エネルギー管理部16では、供給先振分部13が発電部1の発電電力を蓄電池部2及び水素製造部3に振り分け、供給元振分部14が蓄電池部2の放電電力及び燃料電池部5の放電電力を供給元として振り分ける。
【0044】
電力基準算出部6にて算出される電力基準は、蓄電量計測部8の計測結果を反映させつつ電力計測部10の計測結果に応じて算出されるので、蓄電池部2の蓄電量と電力計測部10の電力必要量に対応した基準である。水素基準算出部7にて算出される水素基準は、水素貯蔵量計測部9の計測結果を反映させつつ水素計測部11の計測結果に応じて算出されるので、水素貯蔵部4の水素貯蔵量と水素計測部11の水素必要量に対応した基準である。
【0045】
第1の実施形態では、このような電力基準及び水素基準の区間の組み合わせに基づいて、発電部1、蓄電池部2、水素製造部3、水素貯蔵部4及び燃料電池部5を連系して制御することが可能となる。例えば、発電部1の発電電力が電力需要102に対して余剰となる場合には、エネルギー管理部16が発電部1の電力供給の配分を制御する。すなわち、供給先振分部13が発電部1の発電電力の一部を蓄電池部2及び水素製造部3に振り分けることで、蓄電池部2に電力を貯蔵し、水素貯蔵部4に水素を貯蔵することができる。
【0046】
また、発電部1の発電電力が電力需要102に対して不足する場合には、エネルギー管理部16が蓄電池部2及び燃料電池部5の電力供給の配分を制御する。すなわち、供給元振分部14が蓄電池部2の放電電力及び燃料電池部5の放電電力を供給元として振り分けることで、蓄電池10の放電と燃料電池部5の放電により、電力の不足分を補うことができる。
【0047】
第1の実施形態によれば、電力需要102だけではなく水素需要103についても監視し、電力供給の配分に際して、監視結果を組み込んだ電力基準及び水素基準を用いて電力エネルギーの蓄電状態と水素エネルギーの貯蔵状態を的確に管理することができる。したがって、電力エネルギーと水素エネルギーを効率良く利用することが可能となる。その結果、電力需要102と水素需要103への安定的なエネルギー供給を実現することができ、エネルギー効率の良い社会の実現に寄与することができる。
【0048】
また、第1の実施形態では、エネルギー管理部16が電力基準及び水素基準をそれぞれ、3つの区間に分けて管理するので、発電部1、蓄電池部2及び燃料電池部5の電力供給の大きさを適切に配分することができる。しかも、電力基準及び水素基準の3つの区間の組み合わせは9通りであるが、電力供給の配分パターンは3通りに絞っている。
【0049】
すなわち、供給先振分部13による発電部1の電力供給先の振り分けは、蓄電池部2か、水素製造部3か、その両方かという3通りであり、供給元振分部14による電力供給元の振り分けは、蓄電池部2か、燃料電池部5か、その両方かという3通りである。したがって、エネルギー管理部16による電力供給の配分制御が複雑化することがない。これにより、マイクログリッド101を安定して運用することが可能である。
【0050】
しかも、本実施形態では、電力需要102における電力の過剰や不足を判定する電力判定部12を独立して設けたので、電力の過剰や不足を正確に判定することが可能である。このため、エネルギー管理部16は発電部1、蓄電池部2及び燃料電池部5の電力供給の配分制御をスピーディーに行うことができ、監視制御システム100の信頼性が向上する。
【0051】
また、第1の実施形態では、エネルギー管理部16は、データベース15に格納した電力基準及び水素基準を時系列的に管理している。したがって、監視制御システム100における電力エネルギーの蓄電状態と水素エネルギーの貯蔵状態をリアルタイムに反映させた電力配分が可能となり、エネルギーの利用効率に優れたマイクログリッド101を実現することができる。
【0052】
(第2の実施形態)
以下、本発明に係る第2の実施形態を、
図6を参照しながら説明する。第2の実施形態の基本的な構成は第1の実施形態のそれと同様である。そのため、
図6は第2の実施形態に独自の構成であるエネルギー管理部だけを示す。また、同一部材に関しては同一符号を付して説明は省略する。
【0053】
(構成)
図6に示すように、第2の実施形態では、供給先振分部13に、供給先配分比設定部17が設けられている。前述したように、供給先振分部13は、電力判定部12が電力余剰であると判定したとき、発電部1の発電電力の供給先を、蓄電池部2とするか、水素製造部3とするか、もしくは両方とするのかを決める。
【0054】
したがって、供給先配分比設定部17は、発電部1から蓄電池部2及び水素製造部3へ余剰電力を供給する時、電力の供給先である蓄電池部2と水素製造部3の配分比を設定する。供給先配分比設定部17は、発電部1から蓄電池部2への充電配分をα(0≦α≦1)とし、発電部1から水素製造部3への電力配分を1−αとする。供給先振分部13は、供給先配分比設定部17が設定した配分比に従って、余剰電力分を蓄えるための蓄電池部2への充電量及び水素製造部3への電力使用量を算出する。
【0055】
電力基準と水素基準の区間が3×3でこの場合は9通りあるので、供給先配分比設定部17を有する供給先振分部13では、例えば発電部1の発電電力の供給先は次のようにする(
図7の表を参照)。電力基準の区間の方が水素基準の区間よりも大きい場合には、供給先振分部13が以下のような電力配分制御を行うことで、発電部1が余剰電力を主に水素製造部3側へ供給する。
【0056】
すなわち、
電力基準が大区間で水素基準が小区間の場合、充電配分α=0.1、
電力基準が大区間で水素基準が中区間の場合、充電配分α=0.2、
電力基準が中区間で水素基準が小区間の場合、充電配分α=0.2である。
電力基準の区間と水素基準の区間との大きさに開きがある場合、つまり電力基準が大区間で水素基準が小区間の場合には、発電部1がより高い比率で電力を水素製造部3側へ供給し、高い割合で水素としてエネルギーを貯蔵する。
【0057】
電力基準の区間と水素基準の区間の大きさが等しい場合には、発電部1は余剰電力を蓄電池部2及び水素製造部3へ半分ずつ供給する。供給先振分部13がこのような制御を行うことで、電力基準の区間と水素基準の区間との大きさが同等であれば、蓄電池部2と水素製造部3の両方が半分ずつ余剰電力を取り込む。
【0058】
すなわち、
電力基準が大区間で水素基準が大区間の場合、充電配分α=0.5、
電力基準が中区間で水素基準が中区間の場合、充電配分α=0.5、
電力基準が小区間で水素基準が小区間の場合、充電配分α=0.5である。
【0059】
電力基準の区間の方が水素基準の区間よりも小さい場合には、供給先振分部13が以下の電力配分制御を行うことで、発電部1は余剰電力を主に蓄電池部2側へ供給する。電力基準の区間と水素基準の区間との大きさに開きがある場合、つまり電力基準が小区間で水素基準が大区間の場合には、発電部1がより高い比率で電力を蓄電池部2側へ供給する。
【0060】
すなわち、
電力基準が中区間で水素基準が大区間の場合、充電配分α=0.8、
電力基準が小区間で水素基準が大区間の場合、充電配分α=0.9、
電力基準が小区間で水素基準が中区間の場合、充電配分α=0.8である。
【0061】
供給元振分部14には、供給元配分比設定部18が設けられている。前述したように、供給元振分部14は、電力判定部12が電力不足であると判定したとき、電力需要102への電力供給元を、蓄電池部2とするか、燃料電池部5とするか、もしくは両方とするのかを決める。したがって、供給元配分比設定部18は、蓄電池部1から電力需要102へ電力を供給する時、及び燃料電池部5から電力需要102へ電力を供給する時、電力の供給元である蓄電池部1と燃料電池部5の配分比を設定する。
【0062】
供給元配分比設定部18は、蓄電池部2から電力需要102への放電配分をα(0≦α≦1)とし、燃料電池部5から電力需要102への放電配分を1−αとする。供給元振分部14は、供給元配分比設定部18が設定した配分比に従って、供給元振分部14は、不足電力を補うための蓄電池部2及び燃料電池部5の放電量を算出する。
【0063】
電力基準と水素基準の区間が3×3でこの場合は9通りあるので、供給元配分比設定部18を有する供給元振分部14では、例えば電力需要102への電力供給元を次のようにする(
図8の表を参照)。電力基準の区間の方が水素基準の区間よりも大きい場合には、供給元振分部14がこのような制御を行うことで、主に蓄電池部2が電力を電力需要102へ供給する。
【0064】
すなわち、
電力基準が大区間で水素基準が小区間の場合、放電配分α=0.9、
電力基準が大区間で水素基準が中区間の場合、放電配分α=0.8、
電力基準が中区間で水素基準が小区間の場合、放電電配分α=0.8である。
電力基準の区間と水素基準の区間との大きさに開きがある場合、つまり電力基準が大区間で水素基準が小区間の場合には、蓄電池部2側がより高い比率で電力を電力需要102へ供給する。
【0065】
電力基準の区間と水素基準の区間の大きさが等しい場合には、蓄電池部2と燃料電池部5は電力を電力需要102へ半分ずつ供給する。供給元振分部14がこのような制御を行うことで、電力基準の区間と水素基準の区間との大きさが同等であれば、蓄電池部2と燃料電池部5の両方が半分ずつ電力需要102に電力を放電する。
【0066】
すなわち、
電力基準が大区間で水素基準が大区間の場合、放電配分α=0.5、
電力基準が中区間で水素基準が中区間の場合、放電配分α=0.5、
電力基準が小区間で水素基準が小区間の場合、放電配分α=0.5である。
【0067】
電力基準の区間の方が水素基準の区間よりも小さい場合には、供給元振分部14が以下のような制御を行うことで、主に燃料電池部5が電力を電力需要102へ供給する。電力基準の区間と水素基準の区間との大きさに開きがある場合には、燃料電池部5側がより高い比率で電力を電力需要102へ供給する。
【0068】
すなわち、
電力基準が中区間で水素基準が大区間の場合、放電配分α=0.2、
電力基準が小区間で水素基準が大区間の場合、放電配分α=0.1、
電力基準が小区間で水素基準が中区間の場合、放電配分α=0.2である。
【0069】
(作用及び効果)
上記のような第2の実施形態では、供給先振分部13は供給先配分比設定部17を設けたので、発電部1から蓄電池部2へ供給される電力及び水素製造部3へ供給される電力の配分比を自由に設定することができる。そのため、電力余剰が発生した際、電力基準及び水素基準の大きさを、より的確に反映させつつ、蓄電池部2及び水素製造部3を制御することができ、余剰電力をより有効に利用することが可能である。
【0070】
また、供給元振分部14が供給元配分比設定部18を設けたことで、蓄電池部2から電力需要102への放電電力及び燃料電池部5から電力需要102への放電電力の配分比を自由に設定することができる。したがって、電力不足が発生した際、電力基準及び水素基準の大きさを、より的確に反映させつつ、蓄電池部2及び燃料電池部5の放電を制御することができ、電力需要102に対して不足した電力を無理なく供給することが可能である。このような第2の実施形態によれば、電力エネルギーと水素エネルギーの利用効率がさらに向上し、電力需要102と水素需要103へのエネルギー供給を一層安定させることができる。
【0071】
(他の実施形態)
上記の実施形態は、一例であって、発明の範囲を限定するものではなく、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0072】
上記の各部の処理を実行する方法、プログラム及びプログラムを記録した記録媒体も、実施形態の一態様である。また、ハードウェアで処理する範囲、プログラムを含むソフトウェアで処理する範囲をどのように設定するかは、特定の態様には限定されない。さらに、上記の各部のいずれかを、それぞれの処理を実現する回路として構成することも可能である。
【0073】
例えば、燃料電池部5は、発電装置と水素貯蔵装置の役割を兼ねる装置なので、その貯蔵量を水素貯蔵部の容量の一部として組み込むようにしてもよい。また、蓄電池部2は、自然エネルギー発電装置110の発電電力の短周期変動抑制を目的とした充放電を行うようにしてもよい。エネルギー管理部16が管理する電力基準及び水素基準の各区間は、上記の実施形態では3つとしたが、これに限らず、例えば1つ、2つあるいは4つ以上であってもよい。第2の実施形態に示した供給先配分比設定部17及び供給元配分比設定部18において、配分比αの値は0以上1以下の範囲であれば適宜選択可能であり、電力基準や水素基準の区間の組み合わせごとに変更することも自由である。
【0074】
上記の実施形態では、エネルギー管理部16が電力基準及び水素基準に基づいて発電部1、蓄電池部2及び燃料電池部5の電力供給の配分を制御したが、このような電力供給の配分に加えて、水素供給の配分を制御するようにしてもよい。
【0075】
例えば、
図9に示すエネルギー管理部16には、水素配分制御部19が設けられている。水素配分制御部19は、電力基準及び水素基準に基づいて、水素貯蔵部4から水素需要103への水素供給量、又は水素貯蔵部4から燃料電池部5への水素供給量に関して、水素供給量を振り分ける。また、データベース15には、水素判定部20が接続されている。水素判定部20は、データべース15から水素計測部11の計測結果を取り出し、水素需要103における水素必要量の過不足を判定する。水素判定部20は判定結果をデータベース15に出力する。
【0076】
水素計測部11は、水素需要103での水素必要量を検出するが、水素計測部11が負の水素必要量を検出した場合は、水素需要103に水素が足りていることになる。
図9に示す実施形態では、水素需要103において水素が足りている場合には、電力基準の区間と水素基準の区間との大きさが同等であれば、水素貯蔵部4と燃料電池部5の両方で水素を貯蔵する。
【0077】
また、電力基準の区間の方が水素基準の区間よりも大きければ、水素貯蔵部4を通過させて燃料電池部5側で水素を取り込む。燃料電池部5への貯蔵量は燃料電池部5での水素貯蔵容量によって制約を受ける。反対に、水素基準の区間の方が電力基準の区間よりも大きければ、水素貯蔵部4側で水素を取り込む。水素貯蔵部4への貯蔵量は水素貯蔵部4の最大容量によって制約を受ける。
【0078】
また、水素需要103において水素が不足した場合には、燃料電池部5を水素貯蔵装置として捉え、ここからも水素需要103に水素を供給するようにする。すなわち、水素計測部11が正の水素必要量を検出した場合は、水素需要103において水素が不足していることになる。そのため、
図9に示す実施形態では、電力基準の区間と水素基準の区間との大きさが同等であれば、水素貯蔵部4と燃料電池部5の両方から水素需要103に水素を送り込む。
【0079】
電力基準の区間の方が水素基準の区間よりも大きければ、水素貯蔵部4側から水素需要103に水素を送り込む。反対に、水素基準の区間の方が電力基準の区間よりも大きければ、燃料電池部5側から水素需要103に水素を送り込む。以上の実施形態によれば、水素需要が拡大したマイクログリッドにおいても、電力基準及び水素基準に基づいてバランスを考慮した電力エネルギーと水素エネルギーの供給が可能となり、エネルギー効率に優れた社会の実現に貢献することができる。