(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のクラッド層、前記コア層、及び前記第2のクラッド層を溶融鋳造して、鋳塊を形成し、その後、前記鋳塊を圧延して前記複合金属シートを製造することを含む、請求項3に記載の複合金属シートを製造する方法。
【発明の概要】
【0004】
本明細書で使用する「発明」、「本発明」、「この発明」、「本発明」という用語は、本特許出願及び以下の特許請求の範囲の主題のすべてを広く参照することを意図している。これらの用語を含む陳述は、本明細書に記述された主題を限定するものでなく、以下の特許請求の範囲の意味または範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。本発明の対象となる実施形態は、この概要ではなく、特許請求の範囲によって規定される。この概要は、本発明の様々な態様の高レベルの要約であり、以下の発明を実施するための形態部分でさらに詳細に説明される幾つかの概念を紹介する。この概要は、請求項に記載された主題の肝要な、または本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、請求項に記載された主題の範囲を決定するために単独で使用されることも意図していない。主題は、明細書全体の適切な部分、任意のまたはすべての図面と各請求項を参照することによって理解されるべきである。
【0005】
流体を搬送する流路またはチューブを含むプレート熱交換器を製造するために、ロール圧接工程に使用できる異なるアルミニウム(Al)合金材料を提供する。これらの熱交換器は、比較的低コストのロール圧接工程で製造され、特に海洋環境において、高い熱伝達効率と優れた耐腐食性を示す。
【0006】
1つの工程では、2つの別個のAlシートを、通常は高温で同時にロールスタンドに通す。上側シートの下面に接触する下側シートの上面は、通常、所望のパターンの溶接停止インクでスクリーン印刷される。ロール圧接の適切な処理温度は、ゲージの総圧下率及び処理される合金の関数として変化するが、150℃〜500℃の範囲内にある可能性が高い。ロール圧接後、2枚のシートの間に永久的な金属結合が形成される(効果的に単一シートを生成する)。しかしながら、溶接停止インクを組み込んだ接着面の領域は永久的な結合を形成しない。これらの領域は分離することができ、その後の隙間は膨張して、熱交換器作動流体に適した一体的な流路を形成する(
図1)。
【0007】
片側クラッド材
1つの実施形態において、本発明は、耐腐食性金属合金コアと、片面クラッドシートを形成するために、金属合金コアに溶融鋳造される金属合金クラッディングとを含む材料を提供する。溶融鋳造は、以下の米国特許:第7748434号、第7762310号、第7789124号、第7882887号、第7975752号、第8336603号、第8347949号、第8415025号、及び第8418748号に示されるように当該技術分野において既知である。
【0008】
金属合金クラッディングは、ロール圧接を容易にするために選択される。この実施形態では、片面クラッドシートである2つのクラッド層を互いにロール圧接して、一体型チューブツインプレート熱交換器を製造する(
図1)。このロール圧接工程は、第1のシートのクラッド層と第2のシートのクラッド層の領域間に永久的な金属結合を生成する。
【0009】
最も耐腐食性の高い合金の多くは、かなりの濃度のマグネシウム(Mg)を含む。このMg含有量によって、ロール圧接の接触面で少なくとも部分的には抑制されていない酸化マグネシウムの発生に起因して、ロール圧接でのこれらの合金の使用を防止する。中心的な概念は、ロール圧接工程で単一の片面クラッドシート出発資材を使用することである。この非対称配置は、クラッド層の組成によって制御される接着面での永久的な金属結合を可能にする。これにより、ツインプレート熱交換器にコア合金を使用することができる(
図1)。
【0010】
別の実施形態において、片面がクラッド材料である2枚のシートのクラッド層が一緒にロール圧接される。AA5XXX合金をコア層として使用することができる。一般に、「希薄」または「低マグネシウム」と見なされるAA5XXX合金が好ましい。これらの合金は、粒界腐食の影響を受けず、一般に良好な耐腐食性を示す。1つの実施形態において、AA5005合金が使用される。別の実施形態において、AA5052合金が使用される。0.5%〜2.7%(重量パーセント(重量%))の範囲のマグネシウム含有量を有する合金は、上述の片面クラッド構成の現実的な候補と考えられる。この特許出願では、これらの合金中の個々の元素に関連する百分率の数値はすべて重量%で表示される。下限は良好な海洋耐腐食性を提供するのに必要な最小値を反映し、上限は、微細構造の鋭敏化のリスクを冒すことなく収容でき、粒界腐食(IGC)に対する感受性を高めることができる最大Mg含有量を表す。
【0011】
クラッド層には、AA3XXXまたはAA1XXX合金を用いることができる。一般に、「希薄」または「低マグネシウム」と見なされるAA3XXX及びAA1XXX合金がロール圧接を容易にするために用いられる。これらの合金中のマグネシウムの重量%は、一般にAA1XXX合金に対して0.01〜0.05%、AA3XXX合金に対して0.01〜0.2%の範囲である。上述の片面クラッド構成において、AA3XXXクラッド層またはAA1XXXクラッド層の主な目的は、アルミニウムシートの効果的なロール圧接を可能にすることである。Mg含有量の重要な考慮点は、効果的かつ一貫性のあるロール圧接が起こり得ない場合、Mgの酸化がある程度まで増加する上限である。通常の環境条件、大気条件下では、この限界は恐らく約0.2%Mgであり、ゲージの圧下率が十分に高い場合には、0.4%Mgが潜在的に収容される可能性がある。特別な手段(例えば、不活性雰囲気でのロール圧接)が行われた場合、理論上は、0.4%Mg未満のクラッド合金を用いてロール圧接することが可能である。
【0012】
1つの実施形態において、AA3003合金がクラッド層に使用される。別の実施形態において、AA1100合金がクラッド層に使用される。Mg含有量が0.2%未満である限り、すべてではないにしても、AA1XXX及びAA3XXX合金が使用に考慮され得る。
【0013】
両面クラッド材
本発明はまた、高含有量のスクラップ金属を含み、コアの片面に溶融鋳造された第1の金属クラッディングと、コアの反対側に溶融鋳造された第2の金属クラッディングを有する2つの側面を有する金属コアを含む材料を提供する。材料は、シートの形状であり得る。次に、これらのクラッドシートの2つをロール圧接して、第1のシートのクラッド層と第2のシートのクラッド層の領域間に永久的な金属結合を生成する(
図2)。
【0014】
この実施形態において、低コストであるが腐食に敏感なコア合金は、耐腐食性クラッディングで、コア合金が(一体的な流路内の)作動流体または外部環境(例えば海水)のいずれかと接触するのを防止するという方法で、カプセル封止される。
【0015】
この実施形態において、ロール圧接向きの合金がクラッド層に用いられる。AA3XXXまたはAA1XXX合金に片面または両面クラッド層を使用することができる。1つの実施形態において、両面クラッド層はAA3XXXである。別の実施形態において、両面クラッド層はAA1XXXである。さらに別の実施形態において、片面クラッド層はAA1XXX及び反対側のクラッド層はAA3XXXである。さらにまた別の実施形態において、片面クラッド層はAA1XXXまたはAA3XXXであり、反対側のクラッド層はAA5XXXである。クラッド層は、アルミニウムを含む比較的高い含有量のスクラップ金属を含むことができる低コストのコア層を取り囲むことができる。
【0016】
可変スクラップ源は、熱交換器パネルが効果的なアルミニウムスクラップシンクとして作用することができるようにコア層を作るために使用することができる。2つの側面クラッドの実施形態は、AA番によって規定されるか否かに関わらず、実質的に任意のアルミニウムベースの組成物をコア層にカプセル封止するように設計されたサンドイッチ構造に似ている。1つの実施形態において、合金AA4045をコア層として使用した。
【表1】
【0017】
AA3XXXまたはAA1XXX合金を片面または両面クラッド層に使用することができる。一般に、「希薄」または「低マグネシウム」と見なされるAA3XXX及びAA1XXX合金は、ロール圧接を容易にするために使用される。これらの合金中のマグネシウムの重量%は一般に、AA1XXX合金に対して0.01〜0.05%、AA3XXX合金に対して0.05〜0.2%の範囲である。1つの実施形態において、AA3003合金をクラッド層に使用する。別の実施形態において、AA1100合金をクラッド層に使用する。Mg含有量が0.2%未満である限り、すべてではないにしても、AA1XXX及びAA3XXX合金がクラッド層としての使用に考慮され得る。
【0018】
別の実施形態において、従来のロール金属クラッディングを、クラッドシート出発資源を製造するために溶融鋳造の代替品として使用することができる。その後、これらのクラッドシートを、ロール圧接工程で使用することができ、ツインプレート熱交換器を製造する。この場合、ロール圧接のための組成物に関する上記の制限がすべて適用される。最も重要な制限は、Mgレベルが0.2%未満(非常に高い圧下が行われた場合はおそらく0.4%まで)に制限されていることである。
【0019】
開示されたアルミニウムベースのシートは、海水などの水性環境において高い耐腐食性を有する熱交換器を製造するために使用される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書では、コア及びクラッディングを含むシートとして説明することができる改善されたAlベースの金属材料が記載されている。幾つかの実施形態では、改善された金属材料がシートに形成され、クラッディングがシートの片面(片面クラッディング)またはシートの両側(両側クラッディング)に取り付けられている。改良された金属材料の一例は、金属合金コアと、金属合金コアに溶融鋳造された金属合金クラッディングとを含む片面クラッドシートである。改良された金属材料の別の例は、コアの第1の側面に溶融鋳造された第1の金属クラッディングと、コアの第2の側面に溶融鋳造された第2のクラッディングとを有する金属コアを含むシートである。改良された金属材料のさらに別の例は、金属合金コアと、金属合金コアにロール圧接された金属合金クラッディングとを含むシートである。改良された金属材料のまたさらに別の例は、コアの第1の側面にロール圧接された第1の金属クラッディングと、コアの第2の側面にロール圧接された第2のクラッディングとを有する金属コアを含むシートである。本明細書に記載の改良された金属材料の実施形態は、「クラッドシート合金」と呼ぶことができる。
【0022】
本発明者らは、異なる金属合金をクラッドシート合金に組み合わせることによって、金属複合材の製造の改善された容易性、コア層にスクラップを使用することによる製造コストの低減、耐腐食性の向上、高スクラップ金属含有量の組み込みのうちの利点の1つ以上を達成することができることを発見した。溶融/ロール圧接の組み合わせについて2つの明確な利点は、(通常は、ロール圧接不可能な耐腐食性合金を使用することができるという理由で)耐腐食性であり、一体型では不可能なコア層へのスクラップの組み込みである。
【0023】
また、上記の改良された金属材料を調製する工程及びこれらの材料から製造された形態も本明細書に記載される。
【0024】
耐腐食性
金属材料の耐腐食性は、材料科学の分野において、特に、材料が浸食性環境で使用される場合において、危急の問題である。浸食性環境の一例に海洋環境がある。一般に、通常条件下では耐腐食性であるアルミニウムのような幾つかの金属は、海洋環境においては腐食しやすい。アルミニウムは、極めて酸化を受け易く、金属表面上に保護的な不動態酸化膜を形成する。アルミニウム表面上に安定した酸化膜を形成することにより、全体的に優れた腐食耐性が得られる。しかしながら、酸化膜が損傷された場合、または海水中などの塩化物アニオンの存在を含む特定の電気化学的条件下では、アルミニウムの腐食が起こる可能性がある。孔食は、金属表面に生じる高度に局所的な腐食の一形態であり、金属間介在物または粒子などの不動態膜の弱点で開始することがしばしば観察される。局所的な点で不動態膜が破壊されると、イオン/電子対が生成され、陽極及び陰極サイトで起こる半反応によって腐食が進行する可能性がある。耐孔食性は、直線偏光実験などの電気化学的試験方法によって評価することができる。
【0025】
一部のアルミニウム合金は、他の合金よりも高い耐孔食性を有し、したがって、海水などの浸食性環境で使用されると、より耐腐食性がある。しかしながら、そのような耐食性合金は、製造するのに高価である場合があり、また、特定の用途または技術的プロセスにおいて、それらを利用できる物理的特性を必ずしも有しているわけでもない。例えば、一部の利用可能な耐食性アルミニウム合金は、ロール圧接によって容易に処理することができない。
【0026】
クラッドシート合金
ロール圧接は、特定の複合金属、材料形態及び物体の製造に非常に有用な費用効率の高い製造技術である。本発明者らは、アルミニウム材料をロール圧接する利点を利用することが可能であり、さらにロール圧接に通常適した合金よりも高い耐腐食性を達成できることを発見した。この目的は、ロール圧接に適した合金と同じ材料の耐腐食性合金を組み合わせることによって達成することができる。1つの特定の例では、ロール圧接に適したアルミニウム合金及び耐腐食性の高い合金の両方を組み込んだ金属シート及び他の関連する形態を生成することができる。
【0027】
本明細書に記載されるシート及び他の形態の材料は、「クラッドシート材料」、「クラッドシート合金」、及び他の関連する用語によって参照することができる。本明細書に記載されるクラッドシート合金または材料は、通常は、ロール圧接を容易にするために、耐腐食性合金のコア及び少なくとも1つのクラッディング層を組み込む(
図1)。1つの実施形態では、本明細書に記載のクラッドシート合金または材料のクラッドは、ロール圧接工程に適合する合金から製造される。本明細書に記載のクラッドシート材料は、第2のクラッディングを含むことができる。換言すれば、クラッドシート合金は、片面または両面にクラッディングすることができる。このようなシートは、従来のロール圧接技術を用いて、またはコア及び1つ以上のクラッド層を有する鋳塊を溶融鋳造することによって、次に熱間圧延及び冷間圧延でシートにすることができる。
【0028】
コア
本明細書に記載のクラッドシート合金の幾つかの実施形態は、従来の圧接工程に適合するコアアルミニウム合金を含む。さらに、コア合金は、成形性、温冷海水中での長期耐腐食性などの耐腐食性、腐食環境に曝された縁部でのクラッドシート合金の自己保護を確実にするコア合金とクラッディング合金間の適切な流電バランス、及び従来の圧接工程のうちの1つ以上の特性を選択することができる。
【0029】
ロール圧接対応のアルミニウム合金は、以下の表に示すように様々な要素を含む。
【0030】
Mg含有量の重要な考慮点は、効果的かつ一貫性のあるロール圧接が起こり得ない場合、Mgの酸化がある程度まで増加する上限である。通常の環境条件、大気条件下では、この限界は恐らく約0.2%Mgであり、ゲージの圧下率が十分に高い場合には、0.4%Mgが潜在的に収容される可能性がある。特別な手段(例えば、不活性雰囲気でのロール圧接)が行われた場合、理論上は、0.4%Mg未満のクラッド合金を用いてロール圧接することが可能である。一般に、0.2%未満のMgを含む合金は、ロール圧接の候補である。
【0031】
一部のロール圧接適合合金の組成(重量パーセント(重量%)):
【表2】
【0032】
他の幾つかの実施形態では、本明細書に記載のクラッドシート合金は、スクラップ金属含有量の高いコアアルミニウム合金を含む。
【0033】
クラッディング
本明細書記載のクラッドシート合金は、シートの片面または両面にクラッディングを含む。クラッディングに使用される合金、すなわち「クラッディング合金」はアルミニウム合金である。一部のクラッディング合金は、耐腐食性のために選択される。例えば、幾つかの実施形態では、クラッディング合金は、高い耐腐食性のために、またはロール圧接を容易にするためのために、またはその両方のために選択される。例えば、クラッディング合金は、温冷海水中で長期間の耐食性を誇示するように選択することができる。クラッディング合金の選択に使用される幾つかの他の要因は、ロール圧接との適合性、溶融鋳造との適合性、成形性、温冷海水中での長期耐腐食性などの耐腐食性、腐食環境に曝された縁部でクラッドシート合金の自己保護を確実にするために、コア合金とクラッディング合金間の適切な流電バランス、再溶融との適合性、及び従来の圧接工程のうちの1つ以上である。
【0034】
この実施形態において、所望のクラッド組成物は、ロール圧接に適合するもの(すなわち、非常に低いMg)であるが、さらに、良好な耐海水腐食性を有する。そのような場合、より高純度の基礎組成物(最小化鉄、銅、マンガン、及び他の一般的なバックグラウンド不純物)を使用することができる。これは、これらの元素が、一般に合金マトリックス中の陰極第二相成分として存在するためである。このように、それらは、塩化物含有媒体中のマイクロガルバニック活性を促進する傾向があり、その結果、不動態膜破壊及び孔食が起こる傾向がある。したがって、AA1050、AA1060、AA1070(またはより純粋なAA1080)などの合金を使用することができる。3XXXについては、AA3003、AA3004、及びAA3104などのより高純度の基礎組成物を使用することができる。
【0035】
クラッドシート合金の実施形態
片面クラッドシート
クラッドシートの1つの例示的な実施形態は、片面クラッドシート合金である。片面クラッドシート合金は、ロール圧接との適合性のために選択されたアルミニウム合金のクラッドと、海洋環境のような浸食性環境における孔食に対する最大耐性に基づいて選択されたアルミニウム合金の片面コアとを含む。海洋環境に適した一般的なアルミニウム合金は、そのような合金中にMgベースの熱酸化物が存在するため、耐食性が高く、ロール圧接ができないことに注意することが重要である。1つの実施形態では、クラッディングは、溶融鋳造技術、次いで熱間圧延及び冷間圧延によってシートに塗布される。別の実施形態において、クラッド層は、従来のロール圧接技術によってコア層に貼付される。
【0036】
片面クラッドシートからなるアルミニウムパネルを、2つのクラッド層を互いに対向させた状態で、第2の片面クラッドシートにロール圧接して、一体型チューブツインプレート熱交換器を製造した。ロール圧接を容易にするために、耐腐食性コア合金とクラッド合金からなる片面クラッドシートを選択した(
図1)。この例では、コア合金はAA5XXX合金であり、クラッド合金はAA3XXX合金であった。最も耐腐食性の高い合金の多くは、かなりの濃度のマグネシウムを含む。このマグネシウム含有量により、これらの合金の使用及びロール圧接された界面の制御されていない酸化マグネシウム生成に関するロール圧接を防止する。この実施形態では、ロール圧接工程において、片面クラッドシートを出発資源として使用した。この非対称配置は、クラッド層の組成によって制御される合わせ面での金属結合を可能にする。これにより、ツインプレート熱交換器内のコア合金の使用が効果的に可能になる。本発明の合金及びシートを使用して製造することができる熱交換器プレートを含む熱交換器の非限定的な例は、WO2013/025797、WO2013/025802、及びWO2014/062653に示されている。
【0037】
2つの別個のアルミニウムシートを、通常は高温で同時にロールスタンドに通す(
図3)。ロール圧接のための適切な処理温度は、ゲージ総圧下率及び処理される合金の関数として変化するが、150〜500℃の範囲内にある可能性が高い。下側シートの上面は、通常、所望のパターンの溶接停止インクでスクリーン印刷される。ロール圧接後、2枚のシート間に永久的な金属結合が形成され、効果的に1枚のシートを形成する。しかしながら、溶接停止インクを組み込んだ合わせ面の領域は、永久的な結合を形成しない。これらの領域は、その後の膨張工程で分離され、熱交換器作動流体に適した一体的な流路を形成することができる。
【0038】
1つの実施形態において、本発明は、耐腐食性金属合金コアと、金属合金コアに溶融鋳造された金属合金クラッディングとを含む材料を提供する。金属合金クラッディングは、ロール圧接の容易性のために選択される。この実施形態において、2つの片面クラッドシートを互いにロール圧接して、一体型チューブツインプレート熱交換器を製造する(
図1)。このロール圧接工程によって、第1のシートのクラッド層と第2のシートのクラッドの領域間に永久的な金属結合を生成する。
【0039】
1つの実施形態において、片面クラッド材料の2枚のシートが使用され、共にロール圧接される。AA5XXX合金をコア層として使用することができる。一般に、「希薄」または「低マグネシウム」と見なされるAA5XXX合金を使用する。これらの合金は、粒界腐食に対して比較的耐性があり、良好な耐腐食性を示す。1つの実施形態において、AA5005合金を使用する。別の実施形態において、AA5052を使用する。
【0040】
AA3XXXまたはAA1XXX合金をクラッド層に使用することができる。一般に、「希薄」または「低マグネシウム」と見なされるAA3XXX及びAA1XXX合金は、ロール圧接の容易性のために使用される。これらの合金中のマグネシウムの重量%は、一般に、AA1XXX合金では0.01〜0.05%、AA3XXX合金では0.05〜0.2%の範囲である。1つの実施形態において、AA3003合金をクラッド層に使用することができる。別の実施形態において、AA1100合金がクラッド層に使用される。Mg含有量が0.2%未満である限り、すべてではないにしても、AA1XXX及びAA3XXX合金がクラッド層としての使用に考慮され得る。
【0041】
両面クラッドシート
本発明のクラッドシート合金の別の実施形態は、両面クラッドシート合金である(
図2)。一例では、両面クラッドシート合金は、耐腐食性との適合性のために選択されたクラッディングの少なくとも1つの面を含む。第2の面のクラッディングは、同じ耐腐食性合金(対称シート)または異なる合金(非対称シート)であってもよい。コアとクラッディングの異なる組み合わせを用いることにより、様々な合金特性及び製造工程を利用して、所望の特性を有する費用効果の高いクラッドシート合金を製造することが可能になる。両面クラッドシート合金の一例は、スクラップ金属含有量の高いコアと、海洋用途に適した高い耐腐食性の合金の片面クラッディングと、中程度の耐腐食性のロール圧接に適合した合金の第2の面のクラッディングとを組み込んだ非対称両面クラッドシート合金である。この非対称両面シート合金は、高スクラップ金属含有量及びロール圧接を利用し、製造を簡素化して、製造コストを低減すると同時に、高度の耐腐食性を提供する。
【0042】
本発明はまた、高含有量のスクラップ金属を含み、2つの側面、すなわちコアの片面に溶融鋳造された第1の金属クラッディングと、コアの反対側に溶融鋳造された第2の金属クラッディングとを有する金属コアを含む材料も提供する。材料は、シートの形態であり得る。次に、これらのクラッドシートの2つをロール圧接して、第1のシートのクラッド層と第2のシートのクラッド層の領域間に永久的な金属結合を生成する。
【0043】
この実施形態において、低コストであるが腐食に敏感なコア合金は、耐腐食性クラッディングで、コア合金が(一体的な流路内の)作動流体または外部環境(例えば海水)のいずれかと接触するのを防止するという方法で、カプセル封止される。
【0044】
この実施形態において、ロール圧接向きの合金が用いられる。AA3XXXまたはAA1XXX合金に片面または両面クラッド層を使用することができる。1つの実施形態において、両面クラッド層はAA3XXXである。別の実施形態において、両面クラッド層はAA1XXXである。さらに別の実施形態において、片面クラッド層はAA1XXX及び反対側のクラッド層はAA3XXXである。さらにまた別の実施形態において、片面クラッド層はAA1XXXまたはAA3XXXであり、反対側のクラッド層はAA5XXXである。
【0045】
クラッド層は、比較的高い含有量のアルミニウム含有スクラップ金属を含むことができる低コストのコア層を取り囲むことができる。
【表3】
【0046】
1つの実施形態において、コア合金は前出の通りAA4045合金である。スクラップ金属の定義は、それがより高いケイ素、鉄、銅、及び亜鉛の元素を含むことである。
【0047】
AA3XXXまたはAA1XXX合金を、片面または両面クラッド層に使用することができる。一般に、「希薄」または「低マグネシウム」と見なされるAA3XXX及びAA1XXX合金は、ロール圧接を容易にするために使用される。Mg含有量が0.2%未満である限り、すべてではないにしても、AA1XXX及びAA3XXX合金がクラッド層としての使用に考慮され得る。これらの合金中のマグネシウムの重量%は、一般に、AA1XXX合金では0.01〜0.05%、AA3XXX合金では0.05〜0.2%の範囲である。1つの実施形態において、AA3003合金がクラッド層に使用される。別の実施形態において、AA1100合金がクラッド層に使用される。
【0048】
耐腐食性熱交換器の製造工程
本明細書に記載のクラッドシート合金は、本明細書に記載の技術のうちの少なくとも幾つかを含む工程によって製造することができる。キャストシート合金を製造する工程は、本開示の範囲内に含まれる。
【0049】
2つの別個のAlシートを、ロールスタンドに同時に通す(通常は高温で)(
図3)。
下側シートの上面は、通常、上側シートの下面に接触する前に、所望のパターンの溶接停止インクでスクリーン印刷される。ロール圧接後、2枚のシートの間に永久的な金属結合が生成される(効果的に単一シートを生成する)。しかしながら、溶接停止インクを組み込んだ合わせ面の領域では、永久的な結合を形成しない。これらの領域は分離することができ、その後の隙間は膨張して、熱交換器作動流体に適した一体的な流路を形成する。
【0050】
ロール圧接の温度範囲は、当業者に既知であるように、使用されている合金/ゲージ及び総圧下率に応じて、約150℃〜500℃であろう。最大膨張高は、設計要件と、ロール圧接される合金の温間成形/高温成形特性、特に、合金薄板の最大伸び率によって決まる。
【0051】
使途及び用途
本明細書記載のクラッドシート合金は、様々な用途に使用することができる。1つの例示的な用途は、発電所用のアルミニウムパネル熱交換器モデルの製造である。より一般的には、高い耐腐食性のクラッディングを有するクラッドシート合金は、海洋環境での様々な使途に適している。これらのクラッドシート合金は、上部海洋の温水などの比較的低品位の熱廃棄物から、また、例えば、発電所からの排出物、または他の工業工程に関連する排出物などの他の廃熱流量から、有用なエネルギーを抽出するために使用することができる。
【0052】
特性及び利点
本明細書記載のクラッドシート合金は、様々な構造的及び機能的特徴及び特性を有することができる。これらの特徴及び特性は、説明目的及び区別目的のために使用することができるが、本明細書に記載した組み合わせコーティングの様々な使途及び用途に有利に用いることもできる。すべてではないが、フィルム及びコーティングの幾つかの特徴及び特性は、例えば、ロール圧接技術及び/またはスクラップ金属、ならびに優れた耐腐食性を利用することによって達成され得る、製造の容易性及び低コストである。特定の用途に適したクラッドシート合金の実施形態は、幾つかの用途特有の特徴を有することができる。
【0053】
製造する物体、形態、機器、及び同様のもの、またはクラッドシート合金を含む物体、形態、機器、及び同様のものは、本発明の範囲内に含まれる。1つの例示的な物体は、熱交換器である。
【0054】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するものであり、同時に、いかなるその限定を構成するものではない。それどころか、本発明の精神から逸脱することなく、本明細書の記載を読んだ後に、当業者に示唆される様々な実施形態、修正、及びその等価物に対する手段が手に入ることが明確に理解されるべきである。以下の実施例に記載された研究の間は、他に記載がない限り、従来の手順に従った。一部の手順は、例示的な目的のために以下に記載されている。
【0055】
実施例1
AA5005Aコア及びAA3003クラッドを含む鋳塊を、1900mm幅の型で鋳造した。鋳塊は約12,000kgであり、10%(重量%)のクラッドを有していた。コア表面は約12mmの厚さにした。ライナー表面は約11mmの厚さにした。鋳塊は生産効率を高めるために中央分割されていた。スカルプされた鋳塊は、温間ラインで底面を、冷間及び完成ラインでは上面をライナー3003付可逆圧延機に通した。2つのエッジカットが作成された。冷間鋳塊は、クロッピング後に可逆圧延機を通り、次いで仕上げ圧延機に送られた。特定の研削を施した研削ロールを用いて、シートのクラッド表面を示した。
【0056】
実施例2
実施例1と同様に製造された片面クラッドシートからなるアルミニウムパネルを、実施例1と同様に製造された第2の片面クラッドシートに、2枚のクラッド層を対向させてロール圧接し、一体型チューブツインプレート熱交換器を製造した。
【0057】
最も耐腐食性の高い合金の多くは、かなりの濃度のマグネシウムを含む。このマグネシウム含有量は、これらの合金の使用と、ロール圧接された界面の制御されていない酸化マグネシウム生成に関するロール圧接とを防止する。この実施形態では、片面クラッドシートをロール圧接工程における出発資源として使用した。この非対称配置は、クラッド層の組成によって制御される合わせ面での永久的な金属結合を可能にする。これにより、ツインプレート熱交換器内のコア合金の使用が効果的に可能になる。
【0058】
2つの別個のアルミニウムシートを、通常は高温で同時にロールスタンドに通す(
図3)。下側シートの上面は、通常、所望のパターンの溶接停止インクでスクリーン印刷される。ロール圧接後、2枚のシートの間に永久的な金属結合が形成され、効果的に単一シートを生成する。しかしながら、溶接停止インクを組み込んだ合わせ面の領域には、永久的な結合を形成しない。これらの領域は、その後の膨張工程で分離され、熱交換器の作動流体に適した一体的な流路を形成することができる。
【0059】
実施例3
この実施例では、両面クラッドシートからなるアルミニウムパネルを、別の両面クラッドシートにロール圧接して、一体型チューブツインプレート熱交換器を製造する。下側シートの被覆上面は、通常、所望のパターンの溶接停止インクでスクリーン印刷される。この実施形態において、両面クラッドシートは、耐腐食性クラッド合金と、低コストの高スクラップコアとからなる。溶接停止インクでスクリーン印刷された領域に圧力を加えることにより、上側シートと下側シートとの間に作動流体用の一体的な流路が形成される。流路の膨張は、使用される合金及び全体的なゲージに応じて、圧縮空気または水圧液(高圧が必要な場合)など、当業者に既知の技術によって達成することができる。ロール圧接を用いて上側及び下側の溶融シート間の接合領域を通る断面は、永久的な金属結合を示す。このようにして、低コストのスクラップを含む腐食に敏感なコア合金は、作動流体(一体的な流路内の)または外部環境(例えば、海水)のいずれかとの接触を防止するような方法で、耐腐食性クラッディングによってカプセル封止される。
【0060】
前掲のすべての特許、刊行物及び要約は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載された要素及び特長の異なる配置及び組み合わせが可能である。同様に、幾つかの特長及び部分的組み合わせは有用であり、他の特長及び部分的組み合わせを参照することなく使用することができる。本発明の様々な実施形態は、本発明の様々な目的を達成するために記載されている。これらの実施形態は、本発明の原理の単なる例示であることを認識すべきである。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、その多くを修正及び適合することは、当業者にとって容易に明らかであろう。