特許第6823013号(P6823013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6823013卵胞同期化後の単回リコンビナントウシFSH
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6823013
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】卵胞同期化後の単回リコンビナントウシFSH
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/24 20060101AFI20210114BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20210114BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   A61K38/24ZNA
   A61P15/08ZMD
   A61P43/00 121
   A61P43/00 171
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-129177(P2018-129177)
(22)【出願日】2018年7月6日
(62)【分割の表示】特願2015-542272(P2015-542272)の分割
【原出願日】2013年11月15日
(65)【公開番号】特開2018-168189(P2018-168189A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2018年7月27日
(31)【優先権主張番号】12306428.9
(32)【優先日】2012年11月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500061279
【氏名又は名称】セヴァ・サンテ・アニマール
【氏名又は名称原語表記】CEVA SANTE ANIMALE
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ソウザ,アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】イサカ,ナオミ
(72)【発明者】
【氏名】キャリー,オード
(72)【発明者】
【氏名】ティボー,ドミニク
【審査官】 参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/098169(WO,A1)
【文献】 特開2011−026206(JP,A)
【文献】 特開平09−401638(JP,A)
【文献】 米国特許第05589457(US,A)
【文献】 Theriogenology,1994年,Vol.42,pp.895-907
【文献】 ANDRES TRIBULO,ANIMAL REPRODUCTION SCIENCE,2011年11月 1日,Vol.129,pp.7-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/24
A61P 15/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排卵率を向上させることによって非ヒト哺乳動物において繁殖成績を向上させるための、リコンビナントFSH(rFSH)又はrFSHを含む組成物の使用であって、前記rFSHを卵胞同期化後に100μgの用量で、単回投与で前記非ヒト哺乳動物に投与し、以下の工程:
(a)非ヒト哺乳動物の卵胞アブレーション又はホルモン処理によって卵胞同期化処理された少なくとも一つの非ヒト哺乳動物を提供すること;
(b)100μgの用量で単回用量のrFSHを、卵胞同期化後24〜48時間のウィンドウにおいて、前記少なくとも一つの非ヒト哺乳動物に投与すること;
(c)該非ヒト哺乳動物を人工受精させること及び/又は該非ヒト哺乳動物から工程(b)の投与の2〜7日後に卵母細胞を採取すること
を含む方法における、使用。
【請求項2】
約1μg〜2mg、好ましくは約10μg〜1mgに含まれる用量範囲で、rFSHを単回投与で投与する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
筋肉内注射によって、工程(b)で前記rFSHを投与する、請求項1又は2のいずれか一項に記載の使用。
【請求項4】
前記rFSHが、非ヒト哺乳動物FSHアルファ鎖の配列を有するアルファサブユニットと、該アルファ鎖と同じ種の非ヒト哺乳動物FSHベータ鎖の配列を有するベータサブユニットとを含み、前記アルファサブユニット及びベータサブユニットがペプチドリンカーによって共有結合されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
rFSHが、有蹄動物リコンビナントFSH、好ましくは、ペプチドリンカーによって共有結合されたウシアルファサブユニット及びウシベータサブユニットを含むウシリコンビナントFSHである、請求項に記載の使用。
【請求項6】
アルファサブユニットが、配列番号1と少なくとも95%相同の配列を含むポリペプチドであり、ベータサブユニットが、配列番号2と少なくとも95%相同の配列を含むポリペプチドである、請求項に記載の使用。
【請求項7】
ペプチドリンカーが、ヒト絨毛性ゴナドトロピンカルボキシ末端ペプチド(CTP)である、請求項5〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
ペプチドリンカーが、配列GSを含む、請求項5〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
rFSHが、配列番号3と少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記非ヒト哺乳動物から卵母細胞を採取することをrFSH投与の4〜6日後に行う、請求項1〜のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
卵胞同期化が、卵胞アブレーションによって得られる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
非ヒト哺乳動物が、好ましくは、ウシ、ヒツジ又はウマから選択される、有蹄動物であり、より好ましくはウシである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
非ヒト哺乳動物において過剰排卵を誘導することによって繁殖成績を向上させる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
非ヒト哺乳動物において妊娠を向上させることによって繁殖成績を向上させる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的に活性なリコンビナント卵胞刺激ホルモン(rFSH)を使用して、非ヒト哺乳動物において繁殖成績を向上させるための方法及び組成物に関する。本発明はまた、rFSHを使用して、非ヒト哺乳動物において排卵、胚生産又は妊娠を向上させるための方法に関する。本発明は、特にウシ又はウマなどの有蹄動物で、人工授精又は体外受精プログラムに使用され得る。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ウシ、ウマ又は他の有蹄動物などの非ヒト哺乳動物において繁殖成績を向上させる能力は、所有者にとって大きな利益になり得る。これは、このような非ヒト哺乳動物において受精能及び/又は受胎能を向上させることによって達成され得る。現在、エストラジオール及び他のホルモン、例えばGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)、LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)又はプロゲスターゲン(例えば、プロゲステロン)を使用して、ターゲット種に存在するホルモンの自然レベル又はほぼ自然レベルを模倣することに基づいて、繁殖成績を向上させるいくつかの方法又はプロトコールが提案されている。これらのプロトコールのいくつかは、発情期検出の必要がなく定時の人工授精を可能にする同期化方法で、雌における排卵を同期化して、卵胞の刺激、成長及び排卵を促進する工程を含む。これらのいわゆる同期化プロトコールは、世界中の商業乳牛群で広く使用されている。
【0003】
卵胞波の出現を同期化するのに使用される最も一般的な処理の1つは、異なる種類のエストロゲンの使用を含む。しかしながら、世界の多くの地域では、このステロイドホルモンは使用不可能であり、エストラジオールが利用不可能な国々では、例えば、胚ドナーウシの過剰排卵過程の改善を目的として、卵胞期及び黄体期をコントロールする代替方法が開発されている。有望な選択肢と思われるアプローチは、GnRH誘発排卵後の新たな卵胞波の出現時に、FSH処理を開始することである。加えて、現在入手可能なFSH製品の半減期は、一般的に短いので(約6時間)、過剰排卵プロトコールは、4〜5日間にわたって1日2回のFSH処理を含むが、これはかなり時間がかかり、ストレスが多く、誤りが生じやすい。さらに、現在開発されている過剰排卵スキームにおけるこれらの頻繁な管理は、例えば、牧草地で飼われている肉牛にそれを適用することをほとんど不可能にする。したがって、標準的な過剰排卵アプローチは、卵胞波の出現時(これは、通常、自然に生じる発情期の8〜12日後に起こる)に、FSHを複数回注射することに基づいている。この方法は「発情期ベース」として公知であり、胚生産の点で効率的であるが、発情周期の段階によって調整され、発情期検出を必要とする。その後の研究により、「発情期ベース」のプログラムでは、授精から排卵までのより理想的な間隔を可能にする最新の同期化プロトコールと比較して、受精率が有意に低いことが見出された。
【0004】
FSH刺激プロトコールの長期化が排卵応答を増大させ得るかを決定するために、研究が行われている。著者らは、FSH注射期間を4日間連続から7日間連続に延長することにより、卵胞の成長が持続され、より多くの卵胞が排卵能力を獲得し得ると結論しているようである。この仮説を異なる牛種で確認するために、より多くの研究が進行中である。
【0005】
報告されている別のプロトコールでは、4日間ではなく3日間にわたってウシをFSHで処理し、4日目の最後2回の注射を2回のeCG(ウマ絨毛性ゴナドトロピン)注射に替えた(Barros et al., 2008)。この処理は胚の数を増加させるようだが、処理時間は依然として長い。加えて、eCGはかなり長い分子であり、繰り返し使用すると抗体形成を誘導して、おそらくはこの種のプロトコールの広範/頻繁な使用を制限すると記載されている。
【0006】
FSH注射の回数を減少させるために、FSHを徐放性ポリマー(ヒアルロナン)に埋め込む代替プロトコールが開発されている。この徐放製剤を使用して、「発情期ベース」の過剰排卵スケジュール後に単回注射が行われた。しかしながら、著者らは、ヒアルロナンは過度に粘性であり、単回筋肉内注射はより低い過剰排卵応答をもたらしたと結論している(Bo et al., 2010)。
【0007】
欧州特許出願公開第2134165号では、単鎖FSHを使用して生殖を向上させるための代替方法(ペプチドリンカーによって両サブユニットを共有結合し、発情期の7〜13日後にこれを単回投与で投与する)が提案されている。この方法によれば、基準発情(estrus)(又は発情(heat))日(最後の発情日)を特定することによってFSH注射用に動物を準備し、次いで、その動物の周期の7〜8日目にFSHを単回注射で投与する。結果は十分なように見えるが、最も有効な処理計画を決定するためには、動物の個々の観察及びモニタリングが必要とされる。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、生物学的に活性なリコンビナント卵胞刺激ホルモン(rFSH)を使用して、非ヒト哺乳動物において繁殖成績を向上させるための方法及び組成物に関する。本発明はまた、非ヒト哺乳動物において生殖、特に受精能及び受胎能を向上させるための改善された方法を提供する。
【0009】
より具体的には、本発明は、投与回数及び投与量を最小限にすることによって、非ヒト哺乳動物において改善された繁殖成績を提供する改善されたrFSH系組成物及び処理方法を提供する。
【0010】
本発明の特定の目的は、卵胞同期化プロトコール及び/又は処理を受けている非ヒト哺乳動物において繁殖成績を向上させるのに使用するための、リコンビナントrFSH類似体又はrFSH類似体を含む組成物に関する。より好ましくは、rFSH類似体を、好ましくは、約0.01μg〜約5mgに含まれる用量範囲で単回投与で投与する。
【0011】
本発明の特定の目的は、卵胞同期化プロトコール及び/又は処理を受けている非ヒト哺乳動物において繁殖成績を向上させるための、リコンビナントrFSH類似体又はrFSH類似体を含む組成物の使用に関する。より好ましくは、rFSH類似体を、好ましくは、約0.01μg〜約5mgに含まれる用量範囲で単回投与で投与する。
【0012】
本発明の別の目的は、1又は複数の非ヒト哺乳動物において繁殖成績を向上させるのに使用するための、rFSH類似体(又はrFSH類似体を含む組成物)であって、好ましくは、10μg〜1mgに含まれる用量範囲で、卵胞同期化後に単回投与で前記1又は複数の非ヒト哺乳動物のそれぞれに投与されるrFSH類似体にある。
【0013】
本発明の別の目的は、1又は複数の非ヒト哺乳動物において繁殖成績を向上させるための方法であって、好ましくは、10μg〜1mgに含まれる用量範囲で、rFSH類似体を卵胞同期化後に単回投与で前記1又は複数の非ヒト哺乳動物のそれぞれに投与することを含む方法にある。
【0014】
本発明のさらなる目的は、1又は複数の非ヒト哺乳動物において過剰排卵を誘導するための方法であって、rFSH類似体を前記1又は複数の非ヒト哺乳動物のそれぞれに投与することを含み、好ましくは、10μg〜1mgに含まれる用量範囲で、前記rFSH類似体を卵胞同期化プロトコール及び/又は処理後に単回投与で前記非ヒト哺乳動物に投与する方法である。
【0015】
本発明の別の目的は、1又は複数の非ヒト哺乳動物において排卵率を向上させるための方法であって、rFSH類似体を前記1又は複数の非ヒト哺乳動物のそれぞれに投与することを含み、好ましくは、10μg〜1mgに含まれる用量範囲で、前記rFSH類似体を単回投与で前記非ヒト哺乳動物に投与する方法である。好ましくは、卵胞同期化後に投与を実施する。
【0016】
本発明の別の目的は、1又は複数の非ヒト哺乳動物において卵母細胞を生産又は回収するための改善された方法であって、rFSH類似体を前記1又は複数の非ヒト哺乳動物のそれぞれに投与することを含み、好ましくは、10μg〜1mgに含まれる用量範囲で、前記rFSH類似体を単回投与で前記非ヒト哺乳動物に投与する方法である。
【0017】
好ましくは、卵胞同期化後に投与を実施する。このような方法は、体外受精(IVF)プロトコール又は手順の性能を改善するのに特に有利である。
【0018】
この点では、本発明のさらなる目的は、体外受精(IVF)方法であって、非ヒト哺乳動物ドナーから卵母細胞を得る工程、及び前記卵母細胞を体外受精させる工程を含み、好ましくは、10μg〜1mgに含まれる用量範囲で、rFSH類似体を単回投与することによって該非ヒト哺乳動物ドナーを処理して、卵母細胞生産を向上させる体外受精(IVF)方法に関する。好ましくは、非ヒト哺乳動物ドナーの卵胞同期化後に、投与を実施する。
【0019】
本発明の別の目的は、非ヒト哺乳動物において黄体の質及び量を改善するための方法であって、rFSH類似体を前記非ヒト哺乳動物に投与することを含み、好ましくは、10μg〜1mgに含まれる用量範囲で、前記rFSH類似体を単回投与で前記非ヒト哺乳動物に投与する方法である。
【0020】
特定の実施態様では、本発明は、
(a)卵胞同期化処理された非ヒト哺乳動物(例えば、有蹄動物)若しくは非ヒト哺乳動物(例えば、有蹄動物)群を提供すること;又は、非ヒト哺乳動物(例えば、有蹄動物)若しくは非ヒト哺乳動物(例えば、有蹄動物)群を卵胞同期化処理すること;
(b)約0.01μg〜約5mgに含まれる用量範囲で、好ましくは注射によって、より好ましくは筋肉内注射によって、単回用量のrFSH類似体を前記非ヒト哺乳動物又は哺乳動物群に投与すること;及び
(c)好ましくは排卵時近くに、より好ましくは投与工程(b)の2〜7日後、さらにより好ましくは4〜6日後に、好ましくは人工授精によって該非ヒト哺乳動物若しくは非ヒト哺乳動物群を授精させること
を含む方法に関する。
【0021】
この方法は、発情期を検出又はモニタリングする必要がなく、特に非ヒト哺乳動物群により有効である。
【0022】
別の特定の実施態様では、本発明は、
(a)卵胞同期化処理された有蹄動物若しくは有蹄動物群を提供すること;又は、有蹄動物若しくは有蹄動物群を卵胞同期化処理すること;
(b)約10μg〜約1mgに含まれる用量範囲で、好ましくは注射によって、より好ましくは筋肉内注射によって、単回用量のrFSH類似体を前記有蹄動物又は有蹄動物群に投与すること;
(c)好ましくは、卵胞吸引によって、該有蹄動物から卵母細胞を回収すること;
(d)場合により、該回収した卵母細胞を体外受精させること;及び
(e)場合により、レシピエント動物、好ましくは、約10μg〜約1mgに含まれる用量範囲で単回用量のrFSH類似体を投与することによって予め処理されたレシピエント動物に、該受精させた卵母細胞を移植すること
を含む方法に関する。
【0023】
本発明に使用のためのrFSH類似体は、好ましくは、単鎖rFSHである。さらに、rFSH類似体は、好ましくは、本質的に純粋な形態で使用され、場合により、1つ又は複数の薬学的に許容し得る賦形剤又は担体と併せて使用される。
【0024】
本発明は、哺乳動物、好ましくは任意の有蹄動物、例えばウシ、ヒツジ、ウマ、ヒツジ又はヤギで使用され得る。本発明の組成物及び方法は、ウシにおいて受精能及び/又は受胎能、特に過剰排卵、排卵率、卵母細胞生産又は黄体(CL)の質及び量を向上させるのに特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】rFSH類似体を用いて繁殖成績を向上させるのに使用したプロトコール。
図2】本発明に使用するためのウシrFSH類似体のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列。ベータサブユニット及びアルファサブユニットを連結するCTPリンカー配列には下線が付されている。下線が付されている太字のヌクレオチドは、シグナルペプチドをコードする。
【0026】
発明の詳細な説明
本発明は、非ヒト哺乳動物、好ましくは有蹄動物、さらにより好ましくはウシにおいて繁殖成績を向上させるための方法を提供する。特に、リコンビナント単鎖FSHは、過剰排卵、胚生産の向上及び/又は妊娠の向上によって例証した場合の、非ヒト哺乳動物の雌における受精能及び/又は受胎能を刺激するのに使用される。リコンビナント単鎖FSHはまた、卵胞の成長及び成熟を刺激して、卵母細胞の回収、過剰排卵及び排卵率の改善、並びに黄体(CL)の質及び量の改善をもたらすのに有効である。
【0027】
リコンビナント単鎖FSHは、胚移植及び体外受精を含む授精プロトコール及び/又は処理に使用され得る。本発明は、任意の有蹄動物、好ましくはウシで使用され得る。
【0028】
定義
本発明との関連では、用語「繁殖成績を向上させる」又は「繁殖成績の向上」は、非ヒト哺乳動物又は複数の非ヒト哺乳動物が受精及び受胎する可能性を高めることを指す。
【0029】
繁殖成績の向上は、卵胞の成長及び/若しくは成熟の刺激、又は黄体の質及び量の改善を含む。
【0030】
繁殖成績の向上はまた、授精した非ヒト哺乳動物又は複数の非ヒト哺乳動物が妊娠し、生きている子孫を出産し、又は生存可能な胚を発達させる可能性の上昇を含む。
【0031】
繁殖成績の向上はまた、非ヒト哺乳動物又は複数の非ヒト哺乳動物が子宮内及び/又は体外で生産する生存可能な胚の数の増加を含む。繁殖成績の向上は、受精能、受胎能、過剰排卵、卵母細胞の比率、排卵率、胚生産及び/又は妊娠の向上を含む。向上は、好ましくは、未処理非ヒト哺乳動物と比較しておよそ少なくとも1%、より好ましくは少なくとも2%、3%、4%、5%、10%又はそれ以上である。
【0032】
本発明との関連では、用語「受精能」又は「受精」は、受精可能な卵母細胞を生産する能力を指す。
【0033】
本発明との関連では、用語「受胎」又は「受胎能」は、妊娠を達成する能力を指す。
【0034】
本発明との関連では、用語「過剰排卵」は、排卵される卵胞の数及び/又は受精卵の創出の増大を指す。
【0035】
用語「妊娠」は、その一部が現在妊娠しているか、又は授精済みで妊娠の可能性がある非ヒト哺乳動物又は非ヒト哺乳動物群を指す。
【0036】
本明細書で使用される用語「発情期」は、非ヒト哺乳動物が妊娠する可能性が最も高い期間を指す。発情期は、非ヒト哺乳動物が発情状態にあることの行動的実証(発情していることを示すことを含む)によって検出又はモニタリングされ得る。
【0037】
「授精」は、限定されないが、自然授精及び人工授精(AI)並びに体外受精(IVF)を含む当技術分野で公知の任意の方法によって、精液を導入することを指す。
【0038】
動物「群」は、例えば、少なくとも2つの非ヒト哺乳動物の任意の群、例えば集団又は一団を表す。
【0039】
「有蹄動物」は、蹄を有する任意の動物、特に2つの分類学的な目Perissodactyla及びCetartiodactylaを指す。
【0040】
用語「投与」は、経口、経腸粘膜、非経口又は経皮などの全ての投与経路を指す。好ましくは、投与経路は注射である。
【0041】
本発明との関連では、用語「卵胞同期化」は、卵胞波の出現の同期化を指す。
【0042】
リコンビナントFSH類似体
卵胞刺激ホルモンは、生殖ホルモンのクラスに属する。FSHは、アルファ及びベータと称される2つの鎖(又はサブユニット)から構成される。生理学的条件下では、両サブユニットは、非共有結合相互作用によって連結されている。異なる種由来のFSHのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は開示されており、ウシFSH(Kim KE et al., 1988, "nucleotide sequence of the bovine gene for follicle-stimulating hormone beta-subunit", DNA1988, 7(4): 227-233)又はヒトFSH:gene bankナンバーCAA43996.1など、公共データベースで入手可能である。
【0043】
本発明は、FSH類似体を利用する。用語「類似体」は、一般的に、天然化合物の生理学的効果を模倣する化合物を表す。類似体は天然化合物と構造的に類似しており、例えば、生産方法に起因して、又は差異が有益な活性を類似体に付与するので、構造的差異を示してもよい。
【0044】
好ましい実施態様では、本発明のFSH類似体は、共有結合されたアルファサブユニット及びベータサブユニットの両方を有するFSHである。このような好ましいFSH類似体はまた、「単鎖」FSHと表記され得る。
【0045】
好ましい実施態様では、本発明は、アルファサブユニットが、ペプチドリンカーによってベータサブユニットに共有結合されたリコンビナントFSHを使用する。本発明は、FSHのこのようなリコンビナント単鎖類似体が、有蹄動物において繁殖成績を向上させるための改善された特性を提供することを示す。ペプチドリンカーは、FSHのコンフォメーション及び活性に影響を及ぼさない任意のペプチドリンカーであり得る。好ましい実施態様では、リンカーは、CTPリンカー、例えば、米国特許第6,242,580号及び米国特許出願公開第2008/0312151号に記載されているヒト絨毛性ゴナドトロピンのカルボキシ末端ペプチドの配列を含むリンカーである。別の実施態様では、リンカーは、複数回繰り返され得る(GS)配列を含むペプチドである。
【0046】
本発明に使用するためのリコンビナントウシFSH類似体のcDNA配列及びアミノ酸配列を図2に示す(配列番号3及び配列番号4)。第1の部分(アミノ酸1〜129)は、ウシFSHベータサブユニットの配列(配列番号2)に対応し、中央部分は、カルボキシ末端ペプチドリンカー(アミノ酸130〜157)に対応し、第3の部分(アミノ酸158〜253)は、ウシFSHアルファサブユニットの配列(配列番号1、欧州特許出願公開第2134165号も参照のこと)に対応する。
【0047】
本発明の一実施態様は、配列番号3のアミノ酸配列、又は配列番号3のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有する単鎖リコンビナントウシFSHを使用する。
【0048】
前記方法がウシを処理するためのものである場合、上に開示されているウシFSH類似体(すなわち、ウシFSH由来のアルファドメイン及びベータドメインがペプチドリンカーによって連結されたリコンビナントFSH)を使用することが好ましい。
【0049】
前記方法が別の有蹄動物を処理するためのものである場合、前記有蹄動物由来のFSH類似体を使用することが好ましい。
【0050】
タンパク質は、好ましくは、本質的に純粋である(すなわち、少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97、98又は99%の純粋レベルを有する)。
【0051】
好ましい実施態様では、FSHは、適切な医薬製剤を含む組成物で投与される。医薬製剤は、1つ又は複数の賦形剤又は担体を含み得る。
【0052】
好ましい一実施態様では、ウシFSHは、10000IU/mg超;より好ましくは13000IU/mg超、例えば約16000IU/mgの活性を有する。ASRM practice committee (Fertility and Sterility, vol90, supl3, November 2008- American Society for Reproductive Medecine)が公開している変換係数によれば、ウシFSH 10000IUは、600μgに対応する。
【0053】
処理
前記のように、本発明は、リコンビナントFSH類似体を使用して、非ヒト哺乳動物において繁殖成績を向上させるための新規な方法に関する。本発明は、例えば、処理動物において排卵率及び/若しくは過剰排卵、並びに/又は黄体の質及び量を改善するために、授精プログラム、特に有蹄動物の人工授精に使用され得、並びに例えば、ドナー動物からの卵母細胞の回収及び/又はレシピエント動物において妊娠率を改善するために、体外受精プログラムに使用され得る。
【0054】
より具体的には、本発明の目的は、非ヒト哺乳動物において繁殖成績を向上させるのに使用するためのリコンビナントFSH類似体であって、ペプチドリンカーによって共有結合されたアルファサブユニット及びベータサブユニットを含み、好ましくは、10μg〜1mgに含まれる用量で、卵胞同期化後に単回投与で前記非ヒト哺乳動物に投与されるリコンビナントFSH類似体に関する。
【0055】
本発明の別の目的は、非ヒト哺乳動物において繁殖成績又は胚生産を向上させるための方法であって、10μg〜1mgに含まれる用量で、リコンビナントFSH類似体を卵胞同期化後に単回投与で前記非ヒト哺乳動物に投与することを含み、前記リコンビナントFSH類似体が、ペプチドリンカーによって共有結合されたアルファサブユニット及びベータサブユニットを含む方法にある。
【0056】
本発明の別の目的は、非ヒト哺乳動物において卵母細胞の回収を改善するための方法であって、10μg〜1mgに含まれる用量で、リコンビナントFSH類似体を卵胞同期化後に単回投与で前記非ヒト哺乳動物に投与することを含み、前記リコンビナントFSH類似体が、ペプチドリンカーによって共有結合されたアルファサブユニット及びベータサブユニットを含む方法にある。
【0057】
本発明の別の目的は、非ヒト哺乳動物において妊娠率を向上させるための方法であって、10μg〜1mgに含まれる用量で、リコンビナントFSH類似体を卵胞同期化後に単回投与で前記非ヒト哺乳動物に投与することを含み、前記リコンビナントFSH類似体が、ペプチドリンカーによって共有結合されたアルファサブユニット及びベータサブユニットを含む方法にある。
【0058】
本発明の別の目的は、非ヒト哺乳動物において排卵率を向上させるための方法であって、10μg〜1mgに含まれる用量で、リコンビナントFSH類似体を卵胞同期化後に単回投与で非ヒト哺乳動物に投与することを含み、前記リコンビナントFSH類似体が、ペプチドリンカーによって共有結合されたアルファサブユニット及びベータサブユニットを含む方法にある。
【0059】
本発明のさらなる目的は、非ヒト哺乳動物において過剰排卵を誘導するための方法であって、リコンビナントFSH類似体を非ヒト哺乳動物に投与することを含み、前記リコンビナントFSH類似体が、ペプチドリンカーによって共有結合されたアルファサブユニット及びベータサブユニットを含み、好ましくは、10μg〜1mgに含まれる用量で、前記リコンビナントFSH類似体を卵胞同期化後に単回投与で前記哺乳動物に投与する方法である。
【0060】
好ましい実施態様では、前記方法は、
(a)非ヒト哺乳動物(例えば、有蹄動物)若しくは非ヒト哺乳動物群(例えば、有蹄動物群)を卵胞同期化処理すること、又は卵胞同期化処理された非ヒト哺乳動物(例えば、有蹄動物)若しくは非ヒト哺乳動物群(例えば、有蹄動物群)を提供すること;
(b)リコンビナントFSH類似体10μg〜1mgを単回投与で該処理非ヒト哺乳動物に投与すること;及び
(c)場合により、好ましくは排卵時近くに、より好ましくは投与工程(b)の2〜7日後、さらにより好ましくは4〜6日後に、該非ヒト哺乳動物を授精させ、及び/又は卵母細胞を採取すること
を含む。
【0061】
第1の処理工程では、新たな卵胞波の出現を同期化する。本発明は、本発明のリコンビナントFSHと組み合わせると、ホルモンがより低用量で注射がより少ない場合でさえ、このような処理が胚生産の改善を可能にすることを示す。
【0062】
ウシなどの非ヒト哺乳動物では、卵胞の成長は連続的ではなく、波のように起こる(1周期当たり2〜4つの波)。各波は、前の波の主卵胞が最大サイズに達する際に大体始まり、その際に、多数の小さな卵胞が急成長期を開始する。この卵胞群から、1つの卵胞が、他のものよりもかなり大きなサイズに成長することができる。この大きな卵胞は、副卵胞と称されるより小さな卵胞の成長を調節及び制限する能力を有するので、主卵胞と称される。最大サイズに達した数日後、主卵胞は退行し始めて死ぬ。主卵胞が退行するにつれて、他の卵胞を制限するその能力は低下する;したがって、新たな卵胞波が始まる。このダイナミックプロセスの結果、発情周期の各日において、少なくとも1つの大きな卵胞を含む全てのサイズの卵胞が存在する。
【0063】
卵胞波の同期化は、限られた期間内に全ての非ヒト哺乳動物を処理し、したがって、授精の経済的利益を受ける機会を与える。発情周期の同期化により、処理された雌の大部分が受精、厳密に同期化された発情期及び排卵を示す。
【0064】
排卵の同期化又は定時AIプロトコール(timed-AI protocol)は、排卵が所定時間に開始するように卵胞の成長及び定時の排卵を人為的に刺激し、発情行動をモニタリングする必要がない方法及び/又はプロトコールを指す。ウシで適用される一般的な方法及びプロトコールの概説は、Bo et al in the 28thAnnual meeting AETE- Saint Malo, France, 7-8th September 2012 (Recent advances in the control of follicular development and superovulation protocols in cattle)の論文に記載されている。
【0065】
新たな卵胞波の出現は、ホルモン処理又は物理的処理によって実施され得る。ホルモン処理は、プロスタグランジン、プロゲスターゲン又はGnRHなどの適切なホルモンの投与を含む。物理的処理は、卵胞アブレーションを含む。
【0066】
好ましい実施態様では、好ましくは、プロゲスターゲン、プロゲスターゲン−プロスタグランジンの組み合わせ、プロスタグランジンのみ、プロゲスターゲン−エストロゲンの組み合わせ、ゴナドトロピン−プロスタグランジンの組み合わせ(プロゲスターゲンの有無にかかわらず)による非ヒト哺乳動物のホルモン処理によって卵胞同期化を行う。
【0067】
好ましい実施態様では、以下の処理の1つによって卵胞同期化を行う:
− PGF2アルファ又はその類似体;
− GnRH+PGF2アルファ
− 場合により、エストロゲン又はPGF2アルファ又はGnRHと組み合わせたプロゲスターゲン(プロゲステロン...のような)。
【0068】
具体的な投与量及び/又はプロトコールは、当技術分野で、例えばThatcher et al., 2001 (American Association of Bovine Practitioner, AABP, Vancouver, 95-105); Diskin et al., 2001 (occasional publication n° 26, p175, British society of Animal Science);又はPursley et al., 1995 (Theriogenology 44 p915)などに開示されている。また、プロゲスターゲンは、インプラントなどの特定のデバイスを使用して投与され得る(例えば、Ceva Sante AnimaleのPRID)。
【0069】
別の実施態様では、卵胞アブレーションによって、卵胞同期化を行う。卵胞アブレーションは、少なくとも1つの卵胞の排除、除去又は破壊を表す。卵胞アブレーションは、物理的な卵胞アブレーション法、例えば発情周期のランダムな段階における焼灼又は超音波誘導経膣卵胞吸引を指す(Bergfelt, 1997)。アブレーションは、全ての卵胞を対象とし得るか、又は少なくとも主卵胞を確実に抑制するために1つ若しくは2つの最も大きな卵胞のみ(Baracaldo et al., 2000)を対象とし得る。
【0070】
好ましい実施態様では、本発明は、
(a)プロゲスターゲン、プロゲスターゲン−プロスタグランジンの組み合わせ、プロスタグランジン、プロゲスターゲン−エストロゲンの組み合わせ若しくはゴナドトロピン−プロスタグランジンの組み合わせ(プロゲスターゲンの有無にかかわらず)で非ヒト哺乳動物(例えば、有蹄動物)若しくは非ヒト哺乳動物(例えば、有蹄動物)群を卵胞同期化処理すること;又はプロゲスターゲン、プロゲスターゲン−プロスタグランジンの組み合わせ、プロスタグランジン、プロゲスターゲン−エストロゲンの組み合わせ若しくはゴナドトロピン−プロスタグランジンの組み合わせ(プロゲスターゲンの有無にかかわらず)で卵胞同期化処理された非ヒト哺乳動物(例えば、有蹄動物)若しくは非ヒト哺乳動物(例えば、有蹄動物)群を提供すること;
(b)リコンビナントFSH類似体10μg〜1mgを単回投与で該処理非ヒト哺乳動物(例えば、有蹄動物)に投与すること;及び
(c)場合により、好ましくは排卵時近くに、より好ましくは投与工程(b)の2〜7日後、さらにより好ましくは4〜6日後に、(b)の処理非ヒト哺乳動物(例えば、有蹄動物)を授精させ、及び/又は(b)の処理非ヒト哺乳動物(例えば、有蹄動物)から卵母細胞を採取することを含む方法に関する。
【0071】
工程(b)では、限定されないが、全身投与、例えば筋肉内、静脈内、皮下などを含む当技術分野でそれ自体が公知の任意の手段又は技術を使用して、リコンビナントFSH類似体を投与し得る。好ましい投与経路は、筋肉内注射である。
【0072】
好ましい実施態様では、本発明の組成物又は方法は、単回用量のrFSH類似体50μgを使用する。
【0073】
別の好ましい実施態様では、本発明の組成物又は方法は、単回用量のrFSH類似体100μgを使用する。
【0074】
実験セクションで示されている結果は、有蹄動物のような同期化非ヒト哺乳動物において、このような単回投与は受精胚の生産を引き起こし、生殖活動を実質的に向上させることを示している。
【0075】
好ましい実施態様では、前記方法は、好ましくは排卵時近くに、より好ましくはrFSH類似体投与の2〜7日後、さらにより好ましくは4〜6日後に、前記有蹄動物を授精させる工程(c)をさらに含む。
【0076】
rFSHだけではなく、黄体形成ホルモン、絨毛性ゴナドトロピン及びプロスタグランジンなどのさらなるホルモンを場合により投与する。一実施態様では、rFSH類似体の投与に加えて、プロスタグランジンを非ヒト哺乳動物に投与する。典型的には注射によって単回投与として、又は数時間おいて投与される複数回投与として、プロスタグランジンを場合により投与する。一実施態様では、第1の用量のプロスタグランジンをrFSH類似体投与後に非ヒト哺乳動物に投与し、続いて、第1のプロスタグランジン投与の約6時間〜1日後に、第2の用量のプロスタグランジンを非ヒト哺乳動物に投与する。
【0077】
あるいは、前記方法は、好ましくは排卵時近くに、より好ましくはrFSH類似体投与の2〜7日後、さらにより好ましくは4〜6日後に、(b)の処理非ヒト哺乳動物から卵母細胞を回収又は採取する工程(c)を含む。卵母細胞は、当技術分野でそれ自体が公知の技術、例えば限定されないが、卵胞吸引によって回収され得る。採取された卵母細胞は、改善された受精特性を示す。採取された卵母細胞を体外受精し、続いて、レシピエント非ヒト哺乳動物、例えば有蹄動物に移植し得る。
【0078】
本発明は、任意の有蹄動物、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、シカ、ヤク、水牛、バイソン、アンテロープ、ガゼル、ヘラジカ、トナカイ、ムース、オオツノヒツジ、キリン、ラクダ、ブタ、ウマ、アルパカ及びビクーニャで使用され得る。それは、若雌ウシを含む雌の乳牛を処理するのに特に適切である。
【0079】
特許請求の範囲に記載されている本発明を例証する以下の実験セクションにおいて、本発明のさらなる態様及び利点を開示する。
【0080】
実施例
実施例1 − 同期化非ヒト哺乳動物において、rFSH類似体50μgの単回投与が繁殖成績に及ぼす効果
本発明者らは、ウシrFSH類似体(50μg/若雌ウシ)の単回筋肉内注射で14日齢の若雌ウシを処理した。卵胞アブレーションの30時間(24〜48時間のウィンドウ)後に、注射を実施した。使用したウシrFSH類似体を図2に示す。処理プロトコールを図1に示す。
【0081】
最初のFSH注射(F0)の2日後及び3日後に、プロスタグランジンPGF2αを全ての群に2回注射した。F0の5日後にhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)注射を実施し、hCG処理の12時間後及び24時間後に人工授精(AI)を実施した。AIの7日後に、非外科的手順による胚の採取を行った。
【0082】
Folltropin(登録商標)-V (Bioniche Animal Health Product, Canada)を参照処理として使用した。Folltropin(登録商標)-Vは、ブタ下垂体から得られた精製凍結乾燥フォリトロピン抽出物である。Folltropin(登録商標)-V(50mg)を4日間にわたって漸減用量で1日2回筋肉内投与した(処理終了時の累積FSHは、400mg/若雌ウシである)。14日齢の若雌ウシをFolltropin(登録商標)-Vで処理した。
【0083】
様々なパラメータを測定した:
− 過剰排卵:洗浄日においてCL(黄体)が>2の場合に、過剰排卵が成功したとみなした;
− 排卵率:ウシ1頭当たりの排卵応答の全群LSM(最小二乗平均)に基づく;
− 胚の質:ウシ1頭当たりの生存可能な胚の数の全群LSM(最小二乗平均)に基づく;
【0084】
結果を以下の表に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
結果は、本発明の処理が、ウシで過剰排卵応答を明確に誘導し得ることを示している。比較として、参照プロトコール(Folltropin(登録商標)-Vなどの天然FSH 400mgを8回注射)で処理した若雌ウシでは、本発明の処理(rFSH類似体50μgを単回注射)は、より高い排卵率(81%対76%)及びより多数の生存可能な胚(7.9個対5.9個)をもたらした。したがって、(参照処理によって全頭が過剰排卵した一方で)本発明の処理によって1頭の若雌ウシが過剰排卵しなかった場合であっても、胚の質は、本発明の方が優れていると思われる。したがって、卵胞同期化処理をrFSH類似体の単回注射と組み合わせることにより、過剰排卵胚の安定生産が可能になる。
【0087】
実施例2 − 同期化非ヒト哺乳動物において、rFSH類似体100μgの単回投与が繁殖成績に及ぼす効果
本発明者らは、ウシrFSH類似体(100μg/若雌ウシ)の単回筋肉内注射で14日齢の若雌ウシを処理した。卵胞アブレーションの30時間(24〜48時間のウィンドウ)後に、注射を実施した。使用したウシrFSH類似体を図2に示す。処理プロトコールを図1に示す。
【0088】
最初のFSH注射(F0)の2日後及び3日後に、プロスタグランジンPGF2αを全ての群に2回注射した。F0の5日後にhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)注射を実施し、hCG処理の12時間後及び24時間後に人工授精(AI)を実施した。AIの7日後に、非外科的手順による胚の採取を行った。
【0089】
Folltropin(登録商標)-V (Bioniche Animal Health Product, Canada)を参照処理として使用した。Folltropin(登録商標)-Vは、ブタ下垂体から得られた精製凍結乾燥フォリトロピン抽出物である。Folltropin(登録商標)-V(50mg)を4日間にわたって漸減用量で1日2回筋肉内投与した(処理終了時の累積FSHは、400mg/若雌ウシである)。14日齢の若雌ウシをFolltropin(登録商標)-Vで処理した。
【0090】
様々なパラメータを測定した:
− 過剰排卵:洗浄日において2CL(黄体)が>2の場合に、過剰排卵が成功したとみなした;
− 排卵率:ウシ1頭当たりの排卵応答の全群LSM(最小二乗平均)に基づく;
− 胚の質:ウシ1頭当たりの生存可能な胚の数の全群LSM(最小二乗平均)に基づく;
【0091】
結果を以下の表に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
結果は、本発明の処理が、ウシで過剰排卵応答を明確に誘導し得ることを示している。比較として、参照プロトコール(Folltropin(登録商標)-Vなどの天然FSH 400mgを8回注射)で処理した若雌ウシでは、本発明の処理(rFSH類似体100μgを単回注射)は、より高い排卵率(88%対76%)をもたらした。したがって、(参照処理によって全頭が過剰排卵した一方で)本発明の処理によって2頭の若雌ウシが過剰排卵しなかった場合であっても、胚の質は、2つの製品間で同等であると思われる。前記処理は、70%超の過剰排卵応答を達成し、さらには胚の質の点で基準を満たしていた。したがって、卵胞同期化処理をrFSH類似体の単回注射と組み合わせることにより、過剰排卵胚の安定生産が可能になる。
図1
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]