特許第6823026号(P6823026)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6823026
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】流入部ユニットおよび沈殿槽
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/24 20060101AFI20210114BHJP
   B01D 21/06 20060101ALI20210114BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   B01D21/24 D
   B01D21/06 A
   B01D21/01 A
   B01D21/24 Z
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-172486(P2018-172486)
(22)【出願日】2018年9月14日
(65)【公開番号】特開2020-44463(P2020-44463A)
(43)【公開日】2020年3月26日
【審査請求日】2019年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小城 和高
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀昭
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−79440(JP,A)
【文献】 特開2018−20289(JP,A)
【文献】 特開2002−143842(JP,A)
【文献】 実開昭62−17310(JP,U)
【文献】 特開2017−205732(JP,A)
【文献】 特開2018−69142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/24
B01D 21/01
B01D 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿槽の掻寄板を回転させる回転シャフトの周囲に配置される流入管と、
前記流入管の外側に配置され、前記流入管の第1方向の第1端部を取り囲み、前記第1端部から前記流入管の内側に流入する被処理水を収容可能な収容部と、
前記流入管または前記回転シャフトに付着した付着物を清掃する清掃機構と、を有する、
流入部ユニット。
【請求項2】
前記流入管は、前記第1端部に切欠きを有する、
請求項1に記載の流入部ユニット。
【請求項3】
前記清掃機構は、前記回転シャフトに連結可能な連結部を有する、
請求項1または2に記載の流入部ユニット。
【請求項4】
前記清掃機構は、前記流入管の前記第1端部の内周側および外周側のうち少なくとも一方を掻き取る掻取り部を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の流入部ユニット。
【請求項5】
前記掻取り部は、前記第1端部の外周面に沿って周方向に相対移動し、移動方向の面が前記第1方向を向いている、
請求項4に記載の流入部ユニット。
【請求項6】
前記清掃機構は、前記流入管の前記第1端部に流体を供給する流体供給機構を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の流入部ユニット。
【請求項7】
前記流体供給機構は、
流体を貯留する貯留部と、
前記貯留部から前記第1端部に流体を供給する第1配管と、
を有する、
請求項6に記載の流入部ユニット。
【請求項8】
前記流体供給機構は、
前記貯留部から溢れた流体を回収する回収部と、
前記回収部から前記第1端部に流体を供給する第2配管と、
を有する、
請求項7に記載の流入部ユニット。
【請求項9】
前記清掃機構は、前記第1端部に流体を噴霧する流体噴霧機構を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の流入部ユニット。
【請求項10】
前記清掃機構は、前記流入管の軸方向に伸び、前記流入管の内周面に沿って相対移動する流入管清掃部材を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の流入部ユニット。
【請求項11】
前記清掃機構は、前記回転シャフトの軸方向に伸び、前記回転シャフトの外周面に沿って相対移動するシャフト清掃部材を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の流入部ユニット。
【請求項12】
槽体と、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の流入部ユニットと、を有する、
沈殿槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、流入部ユニットおよび沈殿槽に関する。
【背景技術】
【0002】
工業廃水などに含まれる浮遊物質等を沈降分離させる沈殿槽が知られている。沈殿槽は、沈降分離性能の低下を抑制することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−166272号公報
【特許文献2】特開2015−188793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、沈降分離性能の低下を抑制することができる流入部ユニットおよび沈殿槽を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の流入部ユニットは、流入管と、収容部と、清掃機構と、を持つ。流入管は、沈殿槽の掻寄板を回転させる回転シャフトの周囲に配置される。収容部は、流入管の外側に配置され、流入管の第1方向の第1端部を取り囲む。収容部は、第1端部から流入管の内側に流入する被処理水を収容可能である。清掃機構は、流入管または回転シャフトに付着した付着物を清掃する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態の沈殿槽の全体構成を示す側面断面図。
図2】第1の実施形態の流入部ユニットの平面断面図。
図3】第1の実施形態の流入部ユニットの側面断面図。
図4図3のIV矢視図。
図5】第2の実施形態の流入部ユニットの平面断面図。
図6】第2の実施形態の流入部ユニットの側面断面図。
図7】第3の実施形態の流入部ユニットの側面断面図。
図8】第4の実施形態の流入部ユニットの側面断面図。
図9】第5の実施形態の流入部ユニットの側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の流入部ユニットおよび沈殿槽を、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0008】
(第1の実施形態)
図1から図4を参照し、第1の実施形態について説明する。
本実施形態の沈殿槽1は、例えば、工業廃水などの被処理水に含まれる微小のSS(懸濁物質または浮遊物質)を被処理水から分離させる沈殿槽であり、例えば沈降分離法が用いられる沈殿槽である。
【0009】
まず、沈殿槽1の全体構成について、図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態の沈殿槽1の全体構成を示す断面図である。
図1に示されるように、沈殿槽1は、槽体11、流入部ユニット12、溢流堰13、被処理水排出部14、掻寄ユニット15、および汚泥引抜管16を有する。なお図1中では、被処理水の流れを矢印で模式的に示す。
【0010】
槽体11は、円筒状または多角筒状などの有底の筒状に形成された容器である。槽体11は、例えば、底壁31と、底壁31の周縁部から上方に向けて起立した周壁32と、を含む。槽体11は、筒状の周壁32の上端部に上部開口部33を有する。槽体11は、内部に被処理水を貯留するとともに、フロックを沈殿させる。なお「フロック」とは、凝集作用などによって生成された塊状物を意味し、例えば浮遊物質を含む被処理水中に凝集剤などが添加されることで生じる綿くず状の塊状物を意味する。槽体11は、例えば槽体11の中心軸11cを鉛直方向と略一致させて設置されている。また、槽体11の底壁31の中央部には、沈殿物を槽体11の外部に排出する排出口31aが設けられている。排出口31aには、汚泥引抜管16が接続されている。
【0011】
沈殿槽1の上流側には、被処理水を前処理するための凝集槽(図示略)が配置されている。凝集槽において、凝集剤が被処理水に投入される。これにより、被処理水中の特定の成分が凝集して、フロックが生成される。すなわち、被処理水はフロックを含んだ状態で沈殿槽1内に流入する。
【0012】
流入部ユニット12は、例えば被処理水供給部17と、分配部(収容部)18と、流入管19と、偏向部21(図2参照)と、清掃機構5と、を有する。流入部ユニット12は、槽体11の内側(すなわち、沈殿槽1の内側)に配置される。流入部ユニット12は、凝集槽から被処理水供給部17を通じて供給された被処理水を、分配部18および流入管19を介して槽体11内に流入させる。なお本願で言う「槽体の内側に配置される」とは、槽体11の内側の上部開口部33上に流入部ユニット12の少なくとも一部が配置されることを意味する。
【0013】
図2は、第1の実施形態の流入部ユニットの説明図であり、図1のII−II線における平面断面図である。
図2に示されるように、被処理水供給部17は、例えば槽体11の外側から槽体11の内側に延びた供給配管または流入トラフなどである。本願で言う「トラフ」とは、溝を形成する構造体を意味する。本実施形態においては、被処理水供給部17は、後述の分配部18に接続されて、被処理水供給部17の端部である流出端部17aから被処理水を分配部18内に連続的に供給する。被処理水供給部17の流出端部17aは、外周壁18aの内側面上に、分配部18の中心軸18cに向いた開口部を形成している。被処理水は、流出端部17aによって形成された開口部を通じて、分配部18の中心軸18cに向かって放出される。
【0014】
分配部18は、「分散トラフ」または「流入プール」とも称される。本実施形態において分配部18は、円筒形の外周壁18aおよびリング状の底壁によって形成された所定の容積を有するトラフである。なお、分配部18は、円筒形とは異なった形状、例えば多角筒形とすることも可能である。分配部18は、槽体11の内側に配置される。分配部18の中心軸18cは、槽体11の中心軸11cと略一致している。分配部18の大きさは、被処理水の必要処理量や槽体11の大きさに応じて、適宜設定可能である。被処理水供給部17から分配部18に流入した被処理水は、分配部18内を流れることで後述の流入管19の周方向に分配される。
【0015】
偏向部21は、分配部18内において流出端部17aと、後述する堰20との間に設けられる。偏向部21は、流出端部17aの近傍に位置した例えばバッフル板である。偏向部21は、被処理水の放出方向から見て、少なくとも部分的に流出端部17aとオーバーラップして、被処理水の放出方向に対して水平面内で所定の角度を有するように配置されている。これにより、分配部18内に流入した被処理水は偏向部21に衝突する。衝突した被処理水の流れは、分配部18の外周壁18aの周方向に沿うように向きを変え、分配部18内を旋回する向き(流入管19の周りを旋回する向き)の流れを形成する。本願でいう「旋回する向き」とは、中心軸18cからの径方向の距離が一定に保たれる場合に限らず、旋回するに従い徐々に中心軸18cに近づく渦巻状の向きも含む。
【0016】
流入管19は、「センターウェル」または「フィードウェル」とも称され、例えば円筒状または多角筒状などの筒状に形成されている。流入管19は、分配部18の内側に配置される。すなわち分配部18は、流入管19の径方向の外側に配置される。図1に示されるように、流入管19の中心軸19cは、分配部18の中心軸18cおよび槽体11の中心軸11cと略一致している。流入管19の大きさは、被処理水の必要処理量や槽体11の大きさに応じて、適宜設定可能である。
【0017】
流入管19の上方向(第1方向)の第1端部19eは、分配部18の底面よりも上方に突出して、分配部18内に堰20を形成している。堰20の高さは、少なくとも分配部18の外周壁18aよりも低く、且つ溢流堰13よりも高く形成される。後述するように、堰20の第1端部19eには、切欠きが形成されている。分配部18内に流入した被処理水は、分配部18内を流れた後に、堰20に近づくに従って整流される。次いで、整流された被処理水はフロックとともに堰20を乗り越えて流入管19内に流入する。
このように分配部18は、流入管19の第1端部19eを取り囲む。分配部18は、第1端部19eから流入管19に流入する被処理水を収容可能である。
【0018】
流入管19の下端19aは、槽体11の底壁31から離れている。すなわち、流入管19の下端19aと槽体11の底壁31との間には、被処理水が水平方向に分散して流れる流路が形成されている。また、流入管19の下端19aは、流入管19の内部を槽体11内に連通させる開口部(流入口)19bを有する。被処理水供給部17から分配部18を介して流入管19内に供給された被処理水は、流入管19内を下方に向けて流れ、流入管19の下端19aの開口部19bから槽体11内に供給される。流入管19から槽体11内に供給された被処理水は、槽体11の周壁32の内壁面と流入管19の外周面との間をゆっくりと上昇する。例えばこの過程で、フロックの一部が被処理水から分離して沈殿する。
【0019】
溢流堰13は、槽体11の上部に設けられている。溢流堰13は、この溢流堰13の上端から溢れた被処理水を収容できるように槽体11内に溝状に設けられている。例えば、溢流堰13は、槽体11の周壁32の内壁面32aに沿って設けられている。溢流堰13は、フロックの分離除去が行われて清浄化された被処理水を被処理水排出部14に流出させる。
【0020】
被処理水排出部14は、例えば溢流堰13の内部に連通するとともに槽体11の外側に伸びた流出トラフ(または排出配管など)である。被処理水排出部14は、溢流堰13の上端から溢れた被処理水を槽体11の外部に流出させる。槽体11の外部に流出した被処理水は、例えばさらに別の処理が行われて、ユースポイントに送出される。
【0021】
掻寄ユニット15は、回転シャフト41と、駆動モータ42と、支持部材43と、複数の掻寄板44と、を有する。回転シャフト41は、槽体11の中心部(流入管19の中心部)に配置されている。回転シャフト41は、流入管19の中心軸19cの軸方向において、流入管19を貫通している。すなわち流入管19は、回転シャフト41の周囲に配置される。なお「流入管の中心軸の軸方向」とは、流入管19の中心軸19cと略平行な方向である。駆動モータ42は、直接または伝達機構などを介して回転シャフト41に接続され、回転シャフト41を回転させる。支持部材43は、回転シャフト41の下端に連結されて径方向に伸びている。複数の掻寄板44は、支持部材43に取り付けられている。すなわち、回転シャフト41は沈殿槽1の掻寄板44を回転させる。複数の掻寄板44は、支持部材43から槽体11の底壁31に向けて設けられている。このような構成の掻寄ユニット15によれば、駆動モータ42によって回転シャフト41が回転されることで、支持部材43および複数の掻寄板44が回転する。これにより、槽体11の底壁31に沈殿した沈殿物が底壁31の中央部に向けて掻寄せられる。掻寄られた沈殿物は、底壁31の中央部に設けられた排出口31aおよび汚泥引抜管16を通じて槽体11の外部に排出される。
【0022】
清掃機構5について詳しく説明する。
図3は、図2のIII−III線における側面断面図である。図4は、図3のIV矢視図である。図4に示されるように、流入管19の上方向(第1方向)の第1端部19eには、「Vノッチ」とも称される複数の切欠き19vが形成される。切欠き19vは、上方向から下方向に向かって先細るV字状に形成される。複数の切欠き19vが、流入管19の周方向に連続して形成される。複数の切欠き19vは、分配部18から流入管19に流入する被処理水を、流入管19の周方向において均等に分配する。
【0023】
被処理水に含まれるフロックFは、流入管19の第1端部19eを乗り越えて流入管19に流入する。フロックFの一部が、第1端部19eの切欠き19vに付着する場合がある。フロックFが切欠き19vに付着すると、流入管19の周方向において被処理水を均等に流入管19に流入させることが困難になる。これにより、沈殿槽1の内部において局所的な被処理水の高速流が発生し、沈殿槽1の内部における被処理水の実質的滞留時間が減少する。その結果、沈殿槽1の沈降分離性能が低下する。またフロックFは、流入管19の内周面や回転シャフト41の外周面にも付着する。この場合にも、沈殿槽1の内部において被処理水が均等に低速で流通することが妨げられるので、沈殿槽1の沈降分離性能が低下する。
【0024】
また、フロックFが切欠き19vに付着すると、後続するフロックが第1端部19eを乗り越えて流入管19に流入することが困難になる。これにより、フロックFが分配部18に堆積し、分配部18における被処理水の安定した流通を妨げる。その結果、流入管19の周方向において被処理水を均等に流入管19に流入させることが困難になる。
そこで清掃機構5は、流入管19または回転シャフト41に付着したフロックFを清掃する。
【0025】
第1の実施形態の流入部ユニット12は、清掃機構5として掻取り機構50を有する。掻取り機構50は、流入管19の第1端部19eの内周側および外周側を掻き取る。図2に示されるように、掻取り機構50は、連結部51と、アーム52と、掻取り部54と、を有する。
【0026】
連結部51は、掻取り機構50を回転シャフト41に連結可能である。例えば連結部51は、回転シャフト41を径方向に挟持するクランプ機構である。掻取り機構50が連結部61により回転シャフト41に連結されると、掻取り機構50は回転シャフト41と共に回転する。
アーム52は、連結部51に接続される。アーム52は、連結部51から回転シャフト41の径方向の外側に向かって伸びる。
【0027】
掻取り部54は、アーム52の先端に装着される。掻取り部54は、内側掻取り部54aと、外側掻取り部54bと、を有する。
内側掻取り部54aは、図3に示されるように、流入管19の内側に配置される。内側掻取り部54aは、支持板55aと、ゴム板56aと、を有する。支持板55aは、金属材料等で形成される。支持板55aの上端部は、アーム52に接続される。ゴム板56aは、支持板55aの下半部に装着される。ゴム板56aは、流入管19の軸方向および径方向と平行に配置される。ゴム板56aの上端部は、流入管19の第1端部19eの上方に配置される。ゴム板56aの下端部は、第1端部19eに形成された切欠きの下方に配置される。ゴム板56aは、流入管19の内周面に当接するか、流入管19の内周面から僅かに離れて配置される。僅かに離れて配置される場合は、支持板55aの材料を樹脂等(例えばポリ塩化ビニルなど)にして、ゴム板56aを用いなくてもよい。
【0028】
図4に示されるように、回転シャフト41の回転に伴って、掻取り機構50は矢印50rの方向に移動する。内側掻取り部54aは、第1端部19eの内周面に沿って矢印50rの方向に移動する。内側掻取り部54aのゴム板56aは、切欠き19vに付着したフロックFを第1端部19eの内周側で掻き取る。ゴム板56aで掻き取られたフロックFは、流入管19の内側に落下する。したがって、第1端部19eに付着したフロックFが清掃される。
【0029】
外側掻取り部54bは、流入管19の外側に配置される。外側掻取り部54bも、内側掻取り部54aと同様に、支持板55bと、ゴム板56bと、を有する。ゴム板56bは、流入管19の外周面に当接するか、流入管19の外周面から僅かに離れて配置される。流入管19の外周面から僅かに離れて配置される場合は、支持板55bの材料を樹脂等(例えばポリ塩化ビニルなど)にして、ゴム板56bを用いなくてもよい。外側掻取り部54bは、流入管19の外周面に沿って矢印50rの方向に移動する。外側掻取り部54bは、第1端部19eの切欠き19vに付着したフロックFを第1端部19eの外周側で掻き取る。外側掻取り部54bのゴム板56bは、移動方向の面56sが上方向を向いて配置される。これにより、ゴム板56bで掻き取られたフロックFは、切欠き19vを乗り越えて流入管19の内側に落下する。したがって、第1端部19eに付着したフロックFが清掃される。
【0030】
以上に説明されたように、第1の実施形態の流入部ユニット12は清掃機構5を有する。清掃機構5は、流入管19または回転シャフト41に付着したフロックを清掃する。これにより、流入部ユニット12における被処理水の流通が、付着したフロックによって阻害され難くなる。そのため、沈殿槽1の内部において被処理水が均等に低速で流通する。したがって、沈殿槽1の沈降分離性能の低下を抑制することができる。
【0031】
流入管19は、第1端部19eに切欠き19vを有する。切欠き19vにフロックが付着しやすい場合でも、清掃機構5により切欠き19vに付着したフロックが清掃される。
清掃機構5は、回転シャフト41に連結可能な連結部51を有する。清掃機構5は、回転シャフト41とともに回転しながら、流入管19を全周にわたって清掃する。これにより、複数の清掃機構5を設ける必要がないので、装置コストが抑制される。
【0032】
第1の実施形態の流入部ユニット12は、清掃機構5として掻取り機構50を有する。掻取り機構50は、流入管19の第1端部19eの内周側および外周側のうち少なくとも一方を掻き取る。掻取り機構50が第1端部19eを掻き取ると、第1端部19eに付着したフロックが清掃される。これにより、流入管19の周方向において被処理水が均等に流入管19に流入する。そのため沈殿槽1の内部において、局所的に被処理水の高速流が発生することなく、被処理水が均等に低速で流通する。したがって、沈殿槽1の沈降分離性能の低下を抑制することができる。また掻取り機構50は低コストで形成される。
【0033】
第1の実施形態の掻取り機構50は、内側掻取り部54aおよび外側掻取り部54bを共に有する。これに対して掻取り機構50は、内側掻取り部54aおよび外側掻取り部54bのうちいずれか一方のみを有してもよい。
第1の実施形態の掻取り機構50は、ゴム板56a,56bを有する。これに対して掻取り機構50は、ブラシ類を有してもよい。
【0034】
(第2の実施形態)
図5および図6を参照し、第2の実施形態について説明する。
図5は、第2の実施形態の流入部ユニット212の説明図であり、図1のII−II線に相当する部分における平面断面図である。図6は、図5のVI−VI線における側面断面図である。
図6に示されるように、第2の実施形態の流入部ユニット212は、清掃機構5として流体供給機構60を有する点で、第1の実施形態と異なる。第2の実施形態のうち、第1の実施形態と同様の部分の説明は省略される。
【0035】
流体供給機構60は、流入管19の第1端部19eに流体を供給する。流体供給機構60は、連結部61と、アーム62と、貯留部64と、導入配管69と、第1配管65と、回収部66と、第2配管67と、を有する。
連結部61は、流体供給機構60を回転シャフト41に連結可能である。流体供給機構60が連結部61により回転シャフト41に連結されると、流体供給機構60は回転シャフト41と共に回転する。
アーム62は、連結部61と貯留部64とを接続する。
【0036】
貯留部64は流体を貯留する。例えば貯留部64は、リング状のトラフである。貯留部64は、回転シャフト41と同軸状に配置される。
導入配管69は、流体を貯留部64に導入する。例えば流体は、沈殿槽1の被処理水排出部14(図1参照)から流出した被処理水の一部である。
【0037】
第1配管65は、貯留部64から流入管19の第1端部19eに流体を落水させて供給する。第1配管65は、貯留部64の周方向の少なくとも1箇所に配置される。図5の例では、一対の第1配管65が、回転シャフト41を挟んで貯留部64の両側に配置される。図6に示されるように、第1配管65の上端部は、貯留部64の内側の底部に開口する。第1配管65の下端部は、第1端部19eの外周側の上方から第1端部19eに向けて配置される。第1配管65は、第1端部19eの外周側から第1端部19eに向かって流体を供給する。これにより、第1端部19eに付着したフロックが流入管19の内側に落下する。
【0038】
回収部66は、貯留部64から溢れた流体を回収する。回収部66は、貯留部64の周方向の少なくとも一部に形成される。図5の例では、一対の回収部66が、回転シャフト41を挟んで貯留部64の両側に形成される。回収部66は、貯留部64の径方向の内側および外側のうち少なくとも一方に形成される。図5の例では、一対の回収部66が貯留部64の径方向の外側に配置される。図6に示されるように、回収部66との接続部分における貯留部64の外周壁64bの高さは、他の部分における外周壁64aの高さに比べて低い。貯留部64に導入された流体は、外周壁64bの高さを越えると回収部66に溢れる。貯留部64に貯留される流体の水位は、外周壁64bの高さに保持される。これにより、第1配管65から第1端部19eに供給される流体の流量が一定に保持される。
【0039】
第2配管67は、回収部66から第1端部19eに流体を供給する。これにより、回収部66に回収された流体が有効活用される。第2配管67は、第1端部19eの外周側から第1端部19eに向かって流体を供給する。これにより、第1端部19eに付着したフロックが流入管19の内側に落下する。
【0040】
以上に説明されたように、第2の実施形態の流入部ユニット212は、清掃機構5として流体供給機構60を有する。流体供給機構60は、流入管19の第1端部19eに流体を供給する。第1端部19eに流体が供給されると、第1端部19eに付着したフロックが清掃される。これにより、流入管19の周方向において被処理水が均等に流入管19に流入する。そのため沈殿槽1の内部において、被処理水が均等に低速で流通する。したがって、沈殿槽1の沈降分離性能の低下を抑制することができる。
【0041】
流体供給機構60は、貯留部64と、第1配管65と、を有する。貯留部64は流体を貯留する。第1配管65は、貯留部64から第1端部19eに流体を供給する。これにより、流体供給機構60が低コストで形成される。
【0042】
第2の実施形態の流体供給機構60は、貯留部64の径方向の外側に回収部66を有する。これに対して流体供給機構60は、貯留部64の径方向の内側に回収部66を有してもよい。
第2の実施形態の流体供給機構60は、第1端部19eの外周側の上方から第1端部19eに向かって流体を供給する。これに対して流体供給機構60は、第1端部19eの内周側の上方から第1端部19eに向かって流体を供給してもよい。また流体供給機構60は、第1端部19eの真上から第1端部19eに向かって流体を供給してもよい。
【0043】
(第3の実施形態)
図7を参照し、第3の実施形態について説明する。
図7は、第3の実施形態の流入部ユニット312の説明図であり、図2のIII−III線に相当する部分における側面断面図である。
図7に示されるように、第3の実施形態の流入部ユニット312は、清掃機構5として流体噴霧機構70を有する点で、第1の実施形態と異なる。第3の実施形態のうち、第1の実施形態と同様の部分の説明は省略される。
【0044】
流体噴霧機構70は、流入管19の第1端部19eに流体を噴霧する。流体噴霧機構70は、連結部71と、アーム72と、導入配管79と、スプレー74と、を有する。
連結部71は、流体噴霧機構70を回転シャフト41に連結可能である。
アーム72は、連結部71から回転シャフト41の径方向の外側に向かって伸びる。
【0045】
導入配管79は、流体をスプレー74に導入する。例えば流体は、沈殿槽1の被処理水排出部14(図1参照)から流出した被処理水の一部である。流体は、ポンプ(不図示)等により導入配管79を介してスプレー74に供給される。
スプレー74は、流入管19の第1端部19eに向かって流体を噴霧する。スプレー74は、第1端部19eの外周側の上方に配置される。スプレー74は、流入管19の外周側から第1端部19eに向かって流体を噴霧する。これにより、第1端部19eに付着したフロックが流入管19の内側に落下する。
【0046】
フロックが壊れやすい場合には、流体の噴霧によりフロックが壊れて細分化される。細分化されたフロックは、沈殿槽1の内部で沈降しにくいので、沈殿槽1の沈降分離性能を低下させる。そこでスプレー74は、第1端部19eの内周側の上方に配置されてもよい。このスプレー74は、流入管19の内周側から第1端部19eに向かって流体を噴霧する。細分化されたフロックは、第1端部19eから分配部18に戻されて、分配部18で再成長する。再成長したフロックは、第1端部19eを乗り越えて流入管19の内側に流入する。再成長したフロックは沈殿槽1の内部で沈降しやすいので、沈殿槽1の沈降分離性能の低下が抑制される。
【0047】
流体噴霧機構70は、流体の噴霧により細分化されたフロックを発生させる。そこで流体噴霧機構70は、時間を置いて運転されることが望ましい。例えば、第1端部19eに相当量のフロックが付着した場合に、流体噴霧機構70が運転される。
【0048】
以上に説明されたように、第3の実施形態の流入部ユニット312は、清掃機構5として流体噴霧機構70を有する。流体噴霧機構70は、流入管19の第1端部19eに流体を噴霧する。第1端部19eに流体が噴霧されると、第1端部19eに付着したフロックが清掃される。これにより、流入管19の周方向において被処理水が均等に流入管19に流入する。そのため沈殿槽1の内部において、被処理水が均等に低速で流通する。したがって、沈殿槽1の沈降分離性能の低下を抑制することができる。
【0049】
(第4の実施形態)
図8を参照し、第4の実施形態について説明する。
図8は、第4の実施形態の流入部ユニット412の説明図であり、図2のIII−III線に相当する部分における側面断面図である。
図8に示されるように、第4の実施形態の流入部ユニット412は、清掃機構5として流入管内清掃機構80を有する点で、第1の実施形態と異なる。第4の実施形態のうち、第1の実施形態と同様の部分の説明は省略される。
【0050】
流入管内清掃機構80は、流入管19の内周面および回転シャフト41の外周面に付着したフロックを清掃する。流入管内清掃機構80は、連結部81と、アーム82と、流入管清掃部材84と、シャフト清掃部材86と、を有する。
連結部81は、流入管内清掃機構80を回転シャフト41に連結可能である。
アーム82は、連結部81から回転シャフト41の径方向の外側に向かって伸びる。
【0051】
流入管清掃部材84は、線状の金属材料や硬化樹脂などで形成される。流入管清掃部材84は、流入管19の軸方向に沿って伸びる。流入管清掃部材84の上端部は、アーム82に接続される。流入管清掃部材84の下端部は、流入管19の下端部の近くまで伸びる。流入管清掃部材84は、流入管19の内周面に当接するか、流入管19の内周面から僅かに離れて配置される。
【0052】
回転シャフト41の回転に伴って、アーム82および流入管清掃部材84が回転する。これにより流入管清掃部材84は、流入管19の内周面に沿って相対移動する。第1端部19eを乗り越えて流入管19の内側に流入したフロックの一部は、流入管19の内周面に付着する。流入管清掃部材84は、流入管19の内周面に付着したフロックを清掃する。
【0053】
シャフト清掃部材86は、線状の金属材料や硬化樹脂などで形成される。シャフト清掃部材86の第1端部(下端部)は、流入管19の下端部の外周面に固定される。シャフト清掃部材86は、流入管19の下端部から下方向に伸び、径方向の内側に向かって折れ曲がる。シャフト清掃部材86は、回転シャフト41の近くで上方向に折れ曲がり、回転シャフト41の軸方向に沿って伸びる。シャフト清掃部材86の第2端部(上端部)は、沈殿槽1の水面となる位置(すなわち、図1に示される溢流堰13の上端位置)の近くまで伸びる。シャフト清掃部材86は、回転シャフト41の外周面に当接するか、回転シャフト41の外周面から僅かに離れて配置される。
【0054】
回転シャフト41が回転すると、流入管19に固定されたシャフト清掃部材86は、回転シャフト41の外周面に沿って相対移動する。第1端部19eを乗り越えて流入管19の内側に流入したフロックの一部は、回転シャフト41の外周面に付着する。シャフト清掃部材86は、回転シャフト41の外周面に付着したフロックを清掃する。
【0055】
前述したアーム82および流入管清掃部材84は回転シャフト41と共に回転するが、流入管19に固定されたシャフト清掃部材86は回転しない。アーム82および流入管清掃部材84は、流入管19の上方および内周面に沿って配置される。シャフト清掃部材86は、流入管19の下方および回転シャフト41に沿って配置される。そのため、アーム82および流入管清掃部材84が回転しても、シャフト清掃部材86と衝突しない。
【0056】
以上に説明されたように、第4の実施形態の流入部ユニット412は、清掃機構5として流入管内清掃機構80を有する。流入管内清掃機構80は、流入管清掃部材84と、シャフト清掃部材86と、を有する。流入管清掃部材84は、流入管19の内周面に付着したフロックを清掃する。シャフト清掃部材86は、回転シャフト41の外周面に付着したフロックを清掃する。これにより、流入管19の内部において、被処理水が均等に低速で流通する。したがって、沈殿槽1の沈降分離性能の低下を抑制することができる。
【0057】
第4の実施形態の流入部ユニット412は、流入管清掃部材84およびシャフト清掃部材86を共に有する。これに対して流入部ユニットは、流入管清掃部材84およびシャフト清掃部材86のうち、いずれか一方のみを有してもよい。
【0058】
(第5の実施形態)
図9を参照し、第5の実施形態について説明する。
図9は、第5の実施形態の流入部ユニット512の側面断面図である。
図9に示されるように、第5の実施形態の流入部ユニット512は、清掃機構5として掻取り機構50、流体供給機構60および流入管内清掃機構80を共に有する点で、前述した各実施形態と異なる。第5の実施形態のうち、前述した各実施形態と同様の部分の説明は省略される。
【0059】
掻取り機構50、流体供給機構60および流入管内清掃機構80の構成は、前述した各実施形態と同様である。流体供給機構60の第1配管65は、掻取り機構50の内側掻取り部54aと外側掻取り部54bとの間に流体を供給する。掻取り機構50のアーム52は、流入管内清掃機構80のアーム82を兼ねている。
【0060】
掻取り機構50は、流入管19の第1端部19eの内周面および外周面を掻き取って、第1端部19eに付着したフロックを清掃する。流体供給機構60は、第1端部19eに流体を供給して、第1端部19eの内周面と外周面との間に残るフロックを清掃する。流入管内清掃機構80は、流入管19の内周面および回転シャフト41の外周面に付着したフロックを清掃する。これにより、流入管19および回転シャフト41に付着したフロックの大部分が清掃される。そのため、沈殿槽1の内部において被処理水が均等に低速で流通する。したがって、沈殿槽1の沈降分離性能の低下を抑制することができる。
【0061】
第5の実施形態の流入部ユニット512は、清掃機構5として掻取り機構50、流体供給機構60および流入管内清掃機構80を共に有する。これに加えて流入部ユニットは、流体噴霧機構70をさらに有してもよい。また流入部ユニットは、掻取り機構50、流体供給機構60、流体噴霧機構70および流入管内清掃機構80のうち、いずれか2つまたは3つを共に有してもよい。
【0062】
実施形態の清掃機構5は、連結部により回転シャフト41に連結され、回転シャフト41と共に回転する。これに対して清掃機構5は、回転シャフト41から独立して回転してもよい。また清掃機構5は回転せずに、流入管19に対して複数の清掃機構5が相対的に固定されてもよい。
実施形態の流入管19は、第1端部19eに切欠き19vを有する。これに対して流入管19は、第1端部19eにスリットを有してもよい。また流入管19は、切欠き19vやスリットのない平坦な第1端部19eを有してもよい。
【0063】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、清掃機構5を持つことにより、沈殿槽1の沈降分離性能の低下を抑制することができる。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0065】
F…フロック(付着物)、1…沈殿槽、5…清掃機構、11…槽体、12,212,312,412,512…流入部ユニット、18…分配部(収容部)、19…流入管、19e…第1端部、19v…切欠き、41…回転シャフト、44…掻寄板、51,61,71,81…連結部、54…掻取り部、56s…面、50…掻取り機構、60…流体供給機構、64…貯留部、65…第1配管、66…回収部、67…第2配管、70…流体噴霧機構、80…流入管内清掃機構、84…流入管清掃部材、86…シャフト清掃部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9