(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の送風機付きの衣料は、身体を曲げたり捻ったりする等、着用者の動きや姿勢によっては空気の流れが悪化して部分的に冷却できないおそれがあったり、衣料全体が膨らむことで太って見えることがあった。
そこで、本発明は、着用者が動いたり姿勢を変えても衣料全体を冷却しつつ、スリムなシルエットも得られる送風機付きの衣料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決することができた本発明の衣料の一実施態様は、表地と、表地よりも着用者の肌側に配置されている裏地と、表地の縁部と裏地が互いに止着されている第1止着部と、表地に取り付けられており、外部の空気を表地と裏地の間に取り込む送風機と、裏地に形成されており、表地と裏地の間の空気を着用者側に排出する複数の排気口と、を有している衣料であって第1止着部から離間している位置において表地と裏地が互いに止着されている複数の第2止着部が設けられており、複数の第2止着部は、身幅方向の一方側と他方側のそれぞれにおいて身長方向に離間して配置されていることを特徴とする。送風機付きの衣料においては、空気を効率よく流すことが必要であるから第1止着部以外の箇所では表地と裏地が止着されていないことが本来望ましい。しかし、着用者の姿勢は直立不動のときばかりではなく身体を曲げたり捻ったりすることがある。本発明によれば、上記配置で第2止着部が設けられていることにより表地と裏地の間の空気の流れを適度に分岐させることができるため、送風機からの空気は複数のルートを通って排気口から排出されることが可能となる。その結果、着用者が身体を曲げたり捻ったりする等、姿勢を変えても空気の流れをせき止めずに維持することができ、衣料全体を冷却することができる。また、第2止着部を複数設けていることにより衣料の膨らみを抑制することができるため、スリムなシルエットを得ることもできる。
【0006】
第2止着部が、身幅方向の一方側と他方側のそれぞれにおいて少なくとも3つずつ配置されており、身幅方向の一方側と他方側のそれぞれにおいて、隣り合う第2止着部間の身長方向の距離は、空気の流れ方向の下流側ほど小さいことが好ましい。これにより下流側での空気の流れ方向を制御しやすくなり、衣料全体を好適に冷却することができる。
【0007】
第2止着部は、身長方向に延在するように配置されていることが好ましい。これにより、空気を身長方向に沿って流れやすくすることができるため、空気の流速が高められ、高い冷却効果を得ることができるようになる。
【0008】
第2止着部は、身長方向の上方から下方に向かって身幅方向の内方から外方に延在するように配置されていることが好ましい。また、第2止着部は、身長方向の上方から下方に向かって身幅方向の外方から内方に延在するように配置されていてもよい。このように第2止着部を延在させることによって空気の流れ方向を制御することができるとともに、衣料のシルエットの微調整が可能になる。
【0009】
第2止着部は、帯状または線状に形成されていることが好ましい。第2止着部をこのような形状とすることにより、空気の流れ方向の制御や衣料のシルエットの調整が行いやすくなる。
【0010】
第2止着部が、身幅方向の一方側と他方側のそれぞれにおいて少なくとも2つずつ配置されており、身幅方向の一方側と他方側のそれぞれにおいて、第2止着部の長さは、空気の流れ方向の下流側ほど長いことが好ましい。これにより下流側での空気の流れ方向を制御しやすくなり、衣料全体を好適に冷却することができる。
【0011】
送風機は、身幅方向の一方側と他方側にそれぞれ取り付けられており、身幅方向において、第2止着部は、2つの送風機の内方端よりも内方に配置されていることが好ましい。これにより、送風機からの空気をスムーズに第2止着部に誘導しながら、身幅方向の内方側の膨らみを抑制することができるため、スリムなシルエットを得ることができる。
【0012】
第2止着部において、表地と裏地の間に一方主面と一方主面と反対側の他方主面を有する中地が配置されており、中地の一方主面の一方端部が表地の裏側面に取り付けられており、中地の一方主面の他方端部が裏地の表側面に取り付けられていることが好ましい。このように中地を配置することで、第2止着部における空気の流れ抵抗を調節することができるため、空気の流れ方向を制御しやすくなる。
【0013】
中地の他方主面は、空気の流れ方向の下流側に配置されていることが好ましい。このように中地を配置することにより、送風機からの空気抵抗を小さくすることができる。
【0014】
さらに、第1止着部から離間している位置において表地と裏地が互いに止着されている複数の第3止着部が設けられており、第3止着部は、身幅方向に延在するように配置されており、複数の第3止着部は、身幅方向の一方側と他方側のそれぞれにおいて、身幅方向に離間して配置されていることが好ましい。上記配置で第3止着部が設けられていることにより表地と裏地の間の空気の流れをさらに分岐することができる。
【0015】
身長方向において、複数の第3止着部は、複数の第2止着部よりも下方に配置されていることが好ましい。複数の第3止着部によって空気の流れがせき止められ、送風機からの空気を、空気の流れを適度に分岐させることができる第2止着部に優先的に流すことができるため、衣料全体の冷却効果を一層高めることができる。
【0016】
衣料は、前身頃と後身頃を有する上衣であり、送風機は、後身頃に取り付けられており、複数の第2止着部は、前身頃の身幅方向の一方側と他方側と、後身頃の身幅方向の一方側と他方側にそれぞれ配置されていることが好ましい。これにより送風機を衣料を着用したときに邪魔にならない位置に配置しつつ、第2止着部によって前身頃と後身頃の両方で空気の流れ方向が制御されるため、衣料全体を効率よく冷却することができる。
【0017】
衣料は、表地と該表地よりも着用者の肌側に配置されている裏地とを有し着用者の頭部および首を覆うフードが取り付けられている上衣であり、第2止着部は、フードの身幅方向の一方側と他方側にそれぞれ配置されており、フードの裏地に排気口が配置されていることが好ましい。これにより、着用者の顔周りや頭部に風を送ることができるため、身体全体を効率よく冷却することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の衣料は、上記配置で第2止着部が設けられていることにより表地と裏地の間の空気の流れを適度に分岐させることができるため、送風機からの空気は複数のルートを通って排気口から排出されることが可能となる。その結果、着用者が身体を曲げたり捻ったりする等、姿勢を変えても空気の流れをせき止めずに維持することができ、衣料全体を冷却することができる。また、第2止着部を複数設けていることにより衣料の膨らみを抑制することができるため、スリムなシルエットを得ることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る衣料に関して、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0021】
本発明において衣料とは身に着けるものであり、コート・ジャケット・ジャンパー等の上衣、ズボン・スカート等の下衣、ワンピース・つなぎ等の上衣と下衣が一体化したつなぎ服を含む。また、本発明の衣料は、防暑用、スポーツ用、アウトドア用として好適に用いられる。
【0022】
本発明において衣料の裏側とは、衣料を着用した際の着用者の肌に向く側を意味し、衣料の表側とは、衣料を着用した際の着用者とは反対側を意味する。また、本発明において身幅方向とは着用者の左右方向を意味し、身長方向とは着用者の身長方向であって上下方向を意味する。
【0023】
図1〜
図4を用いて衣料の構成について説明する。
図1〜
図2は、それぞれ本発明の実施の形態に係る衣料1の前身頃3を表側と裏側から見た平面図を表し、
図3〜
図4は、それぞれ
図1に示した衣料1の後身頃4を表側と裏側から見た平面図を表す。なお、
図1および
図2において、身幅方向xの一方側x1に配置されているのが右前身頃3R、他方側x2に配置されているのが左前身頃3Lである。
図1〜
図4では、衣料1が、袖が無いベストである例を用いて説明するが、衣料の態様はこれに限定されるものではなく、袖付きのものであってもよい。袖部は、裏地がなく、表地一枚で構成されるものであってもよい。衣料1は、表地11と、裏地12と、第1止着部21と、送風機15と、複数の排気口16と、複数の第2止着部22と、を有している。
【0024】
表地11は、衣料1の表側に配置されている生地であり、裏地12は、表地11よりも着用者の肌側に配置されている生地である。表地11と裏地12は、それぞれ1枚の生地から構成されていてもよく、複数の生地を積層することにより構成されていてもよい。排気口16とは別に裏地12から着用者側に空気を排出することで冷却効果を一層高めるために、裏地12は表地11よりも高い通気性を有していてもよい。
【0025】
表地11や裏地12を構成する生地の材料は、衣料1に一般に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、布地(織布、編布、不織布等)、樹脂が積層されている布地、樹脂フィルム、これらを組み合わせた材料等を用いることができる。布地を構成する繊維としては、例えば、綿・絹等の天然繊維、ポリエステル・ポリエチレン・ナイロン等の合成繊維が挙げられる。生地同士は、縫合、接着剤による接着、熱融着、超音波融着等により接合することができる。
【0026】
表地は裏地に比べて通気度(フラジール通気度:JIS L 1096)の低い生地で構成されていてもよい。これにより、表地から外部に空気が抜けることに起因する空気の取り込み効率が落ちることがなく、また裏地から全体的に身体に空気を与えることができる。表地の通気度は低いほど好ましく、例えばフラジール通気度をゼロ(測定限界以下)とすることができる。
【0027】
第1止着部21では、表地11の縁部11aと裏地12が互いに止着されている。このように表地11の縁部11aが裏地12に止着されていることにより、表地11と裏地12の間に空気を通す流路のベースとなる部分を形成することができる。このように第1止着部21を形成することにより、衣料1にポケットが設けられていてもよい。表地11の縁部11aは、表地11の縁から5cm以内の範囲を指すものとする。
【0028】
第1止着部21において、表地11の縁部11aと裏地12の縁部が互いに止着されていてもよい。
図1〜
図4に示すように、第1止着部21において、表地11の周縁部と裏地12の周縁部が互いに止着されていてもよい。第1止着部21の数は特に限定されず、複数設けられていてもよい。
【0029】
送風機15は、表地11に取り付けられており、外部の空気を表地11と裏地12の間に取り込む。複数の排気口16は、裏地12に形成されており、表地11と裏地12の間の空気を着用者側に排出する。排気口16は、裏地12の表面側から裏面側へと貫通するように形成される。表地11と裏地12の間に取り込まれた空気が排気口16から排出されることにより、例えば汗が蒸発するときの気化熱を利用して身体の熱を逃がすことができる。
【0030】
送風機15は、衣料1を着用したときに邪魔にならない位置に配置されていればよい。例えば衣料1が上衣2の場合、送風機15は前身頃3と後身頃4の少なくともいずれか一方に形成されていることが好ましく、後身頃4に形成されていることがより好ましい。具体的には、送風機15は、身長方向yにおいて肩甲骨よりも下方に配置されていることが好ましく、着用者の腰に対応する位置に配置されていることがより好ましく、また、袖には形成されていないことが好ましい。
【0031】
送風機15の数は特に限定されないが、身体全体を効率よく冷却するために、送風機15は、身幅方向xの一方側x1と他方側x2にそれぞれ取り付けられていることが好ましく、後身頃4の左側と右側にそれぞれ取り付けられていることがより好ましい。送風機15は、身幅方向xに離間して配置されていてもよい。なお、本発明において身幅方向xの一方側x1と他方側x2はそれぞれ身幅方向xの中央線Cの右側と左側を意味する。
【0032】
排気口16は、汗をかきやすい所に形成されていることが好ましく、例えば、頭部、首、脇の下、胸、左右の肩甲骨の間、膝の裏に対応する位置に形成されていることが好ましい。複数の排気口16は、左右対称に配置されていてもよい。
図2および
図4では、排気口16が、前身頃3および後身頃4の脇の下に対応する位置、後身頃4の左右の肩甲骨の間に対応する位置(特に
図4では身幅方向xの中央線Cに重なる位置)、前身頃3の胸部に対応する位置に設けられている例を示している。
【0033】
排気口16の開口面積は特に限定されないが、例えば10mm
2以上であることが好ましく、20mm
2以上であることがより好ましく、30mm
2以上であることがさらに好ましく、また、300mm
2以下であることが好ましく、280mm
2以下であることがより好ましく、250mm
2以下であることがさらに好ましい。排気口16が円形である場合、排気口16の直径は、5mm以上、好ましくは7mm以上とすることができ、20mm以下、好ましくは15mmの範囲としてもよい。
【0034】
排気口16の数は特に限定されないが、身体全体を効率よく冷却するために、排気口16は、身幅方向xの一方側x1と他方側x2にそれぞれ形成されていることが好ましく、後身頃4の左側と右側にそれぞれ形成されていることがより好ましい。また、複数の排気口16は、身幅方向xの一方側x1と他方側x2にそれぞれにおいて身長方向yに離間して配置されていてもよい。
【0035】
排気口16が、身幅方向xの一方側x1と他方側x2のそれぞれにおいて少なくとも2つずつ配置されており、身幅方向xの一方側x1と他方側x2のそれぞれにおいて、排気口16の開口面積は、空気の流れ方向の下流側ほど大きいことが好ましい。これにより空気の流れ方向の下流側で空気を積極的に排出しやすくなるため、空気の流速が高められ、衣料1を素早く冷却することができる。
【0036】
身長方向yにおいて衣料1を上側y1と下側y2に二等分割したときに、上側y1に複数の排気口16が配置されており、下側y2に送風機15が配置されていることが好ましい。これにより、送風機15を衣料1を着用したときに邪魔にならない位置に配置しつつ、身長方向yの下方から上方に向かって空気を流すことで衣料1全体を効率よく冷却することができる。
【0037】
本発明では、第1止着部21から離間している位置において表地11と裏地12が互いに止着されている複数の第2止着部22が設けられている。複数の第2止着部22は、身幅方向xの一方側x1と他方側x2のそれぞれにおいて身長方向yに離間して配置されている。上記配置で第2止着部22が設けられていることにより表地11と裏地12の間の空気の流れを適度に分岐させることができるため、送風機15からの空気は複数のルートを通って排気口16から排出されることが可能となる。その結果、着用者が身体を曲げたり捻ったりする等、姿勢を変えても空気の流れをせき止めずに維持することができ、衣料1全体を冷却することができる。また、第2止着部22を複数設けていることにより衣料1の膨らみを抑制することができるため、スリムなシルエットを得ることもできる。
【0038】
空気流通性の向上の観点から、第1止着部21と第2止着部22の離間距離は、1cm以上であることが好ましく、3cm以上であることがより好ましく、5cm以上であることがさらに好ましい。また、衣料1の膨らみ抑制の観点から、第1止着部21と第2止着部22の離間距離は、30cm以下であることが好ましく、25cm以下であることがより好ましく、20cm以下であることがさらに好ましい。
【0039】
第2止着部22は、第1止着部21よりも身幅方向xの内方に配置されていることが好ましい。これにより、特に膨らみやすい位置での膨張抑制効果を高めることができる。
【0040】
第2止着部22の数は特に限定されないが、第2止着部22は、身幅方向xの一方側x1と他方側x2のそれぞれにおいて、少なくとも3つずつ配置されていることが好ましく、少なくとも4つずつ配置されていることがより好ましい。また、第2止着部22の身幅方向xの一方側x1と他方側x2のそれぞれにおいて、15以下配置されていることが好ましく、12以下配置されていることがより好ましい。これにより、表地11と裏地12の間の空気の流れをより多数に分岐させることができるようになる。
【0041】
衣料1は、前身頃3と後身頃4を有する上衣2であり、送風機15は、後身頃4に取り付けられており、複数の第2止着部22は、前身頃3の身幅方向xの一方側x1と他方側x2と、後身頃4の身幅方向xの一方側x1と他方側x2にそれぞれ配置されていることが好ましい。これにより送風機15を衣料1を着用したときに邪魔にならない位置に配置しつつ、第2止着部22によって前身頃3と後身頃4の両方で空気の流れ方向が制御されるため、衣料1全体を効率よく冷却することができる。
【0042】
複数の第2止着部22は、身幅方向xの一方側x1と他方側x2のそれぞれにおいて、身幅方向xにも離間して配置されていることが好ましい。これにより、空気の流れをより多数に分岐させることができる。
【0043】
第2止着部22が、身幅方向xの一方側x1と他方側x2のそれぞれにおいて少なくとも3つずつ配置されており、身幅方向xの一方側x1と他方側x2のそれぞれにおいて、隣り合う第2止着部22間の身長方向yの距離は、空気の流れ方向の下流側ほど小さいことが好ましい。これにより下流側での空気の流れ方向を制御しやすくなり、衣料1全体を好適に冷却することができる。ここで、隣り合う第2止着部22間の身長方向yの距離は、身長方向yにおいて、上側に位置する第2止着部22の下方端と、下側に位置する第2止着部22の上方端との最短距離を意味する。
【0044】
一の第2止着部22が身幅方向xに隣り合う他の第2止着部22との距離は、一の第2止着部22が身長方向yに隣り合うさらに他の第2止着部22との距離よりも大きいことが好ましい。これにより、空気を身幅方向xよりも身長方向yに優先的に流れやすくすることができる。ここで、一の第2止着部22が身幅方向xに隣り合う他の第2止着部22との距離(すなわち、身幅方向xにおいて隣り合う第2止着部22間の距離)は、身幅方向xにおいて、左側に位置する第2止着部22の右方端と、右側に位置する第2止着部22の左方端との最短距離を意味する。
【0045】
隣り合う第2止着部22間の身幅方向xの距離は、身長方向yにおいて一定であってもよい。これにより空気の流れ方向を制御しやすくなり、衣料1の大量生産にも適している。
【0046】
隣り合う第2止着部22間の身幅方向xの距離は、空気の流れ方向の下流側ほど小さくなっていてもよい。これにより下流側での空気の流れ方向を制御しやすくなり、衣料1全体を好適に冷却することができる。
【0047】
第2止着部22の延在方向は特に限定されないが、身幅方向xに対して45度以上傾斜していることが好ましく、60度以上傾斜していることがより好ましく、70度以上傾斜していることがさらに好ましく、また135度以下傾斜していることが好ましく、120度以下傾斜していることがより好ましく、110度以下傾斜していることがさらに好ましい。このように第2止着部22を延在させることにより、衣料1全体としては空気がおおよそ身長方向yに流れるようになる。
【0048】
図1〜
図4に示すように、第2止着部22は、身長方向yに延在するように配置されていることが好ましい。これにより、空気を身長方向yに沿って流れやすくすることができるため、空気の流速が高められ、衣料1を素早く冷却することができる。
【0049】
図5〜
図6を参照しながら、
図1〜
図4とは異なる第2止着部22の配置例について説明する。
図5〜
図6は、
図3に示した衣料1の後身頃4を表側から見た平面図の他の変形例を表す。
図5に示すように、第2止着部22は、身長方向yの上方から下方に向かって身幅方向xの内方から外方に延在するように配置されていることが好ましい。このように第2止着部22を延在させることによって空気の流れ方向を制御することができるとともに、衣料1のシルエットの微調整が可能になる。また、送風機15よりも身長方向yの上方に配置されている第2止着部22が、身長方向yの上方から下方に向かって身幅方向xの内方から外方に延在するように配置されていることが好ましい。これにより、空気の流れ方向の下流側では身幅方向xの内方に向かって空気が流れやすくなる。身体の身幅方向xの内方を集中的に冷やすことで、着用者の体温を効率的に下げることができる。
【0050】
図6に示すように、第2止着部22は、身長方向yの上方から下方に向かって身幅方向xの外方から内方に延在するように配置されていることが好ましい。このように第2止着部22を延在させることによっても空気の流れ方向を制御することができるとともに、衣料1のシルエットの微調整が可能になる。また、送風機15よりも身長方向yの上方に配置されている第2止着部22が、身長方向yの上方から下方に向かって身幅方向xの外方から内方に延在するように配置されていてもよい。これにより、空気の流れ方向の下流側では身幅方向xの外方に向かって空気が流れやすくなり、衣料1全体に空気が行き渡りやすくなるため、衣料1全体を冷却する効果が高められる。
【0051】
図1〜
図5に示すように、複数の第2止着部22の延在方向は同じであることが好ましい。これにより空気の流れ方向を制御しやすくなり、衣料1の大量生産にも適している。
【0052】
図6に示すように、複数の第2止着部22の延在方向が異なっていてもよい。様々な向きに第2止着部22を配置することによって、衣料1全体に空気が行き渡りやすくなり、衣料1全体を冷却する効果が高められる。例えば、身幅方向xの一方側x1において身長方向yに離間している一の第2止着部22と他の第2止着部22が設けられている場合、一の第2止着部22が身長方向yの上方から下方に向かって身幅方向xの外方から内方に延在するように配置されており、他の第2止着部22が身長方向yの上方から下方に向かって身幅方向xの内方から外方に延在するように配置されていてもよい。
【0053】
身幅方向xの一方側x1と他方側x2の少なくともいずれか一方において、身幅方向xに隣り合う第2止着部22の延在方向は、同じであることが好ましい。このように第2止着部22の延在方向を設定することにより、身長方向yにおける空気の流れを身幅方向x全体で均一にしやすくなる。
【0054】
身幅方向xの一方側x1と他方側x2の少なくともいずれか一方において、身長方向yに隣り合う第2止着部22の延在方向が異なっていることが好ましい。このように第2止着部22の延在方向を設定することにより、空気の流れ方向を複雑にすることができるため、衣料1全体に空気が行き渡りやすくなり、衣料1全体を冷却する効果が高められる。
【0055】
第2止着部22の延在方向は、左右対称であることが好ましい。これにより、左右均等に冷却効果が得られるとともに、衣料1のいびつな膨張を抑制することができる。
【0056】
第2止着部22の形状は特に限定されないが、第2止着部22は、帯状または線状に形成されていることが好ましい。第2止着部22をこのような形状とすることにより、空気の流れ方向の制御や衣料1のシルエットの調整が行いやすくなる。なお、第2止着部22は、連続的または断続的な帯状または線状に形成されていてもよい。
【0057】
複数の第2止着部22の長さは、同じでもよく、異なっていてもよい。第2止着部22の長さは特に限定されないが、例えば、1cm以上であることが好ましく、3cm以上であることがより好ましく、5cm以上であることがさらに好ましく、また、15cm以下であることが好ましく、12cm以下であることがより好ましく、10cm以下であることがさらに好ましい。第2止着部22の長さをこのような範囲に設定することによって、適度に空気の流れを確保しながら、衣料1の膨らみを抑制することができる。
【0058】
下流側での空気の流れ方向を制御しやすくするためには、第2止着部22の長さは、空気の流れ方向の下流側ほど長いことが好ましい。
【0059】
身幅方向xの一方側x1と他方側x2の少なくともいずれか一方において、身幅方向xに隣り合う第2止着部22の長さは、同じであることが好ましい。このように第2止着部22の長さを設定することにより、身長方向yにおける空気の流れを身幅方向x全体で均一にしやすくなる。
【0060】
第2止着部22が、身幅方向xの一方側x1と他方側x2のそれぞれにおいて少なくとも2つずつ配置されており、身幅方向xの一方側x1と他方側x2のそれぞれにおいて、第2止着部22の長さは、空気の流れ方向の下流側ほど長いことが好ましい。これにより下流側での空気の流れ方向を制御しやすくなり、衣料1全体を好適に冷却することができる。
【0061】
第1止着部21と第2止着部22がそれぞれ帯状または線状に形成されている場合、すべての第2止着部22の合計長さが、すべての第1止着部21の合計長さよりも短いことが好ましい。これにより、空気の流れを低下させない程度に適度に分岐させることができるため、空気が衣料1全体に行き渡りやすくなり、衣料1全体を冷却することができる。
【0062】
複数の第2止着部22の幅は、同じでもよく、異なっていてもよい。第2止着部22の幅は、例えば0.5mm以上、1mm以上、3mm以上、または20mm以下、15mm以下、10mm以下とすることができる。第2止着部22の幅をこのような範囲に設定することによって、適度に空気の流れを確保しながら、衣料1の膨らみを抑制することができる。
【0063】
第2止着部22は、左右対称な形状に形成されていることが好ましい。これにより、衣料1の左右均等に冷却効果が得られるとともに、衣料1のいびつな膨張を抑制することができる。
【0064】
送風機15は、身幅方向xの一方側x1と他方側x2にそれぞれ取り付けられており、身幅方向xにおいて、第2止着部22は、2つの送風機15の内方端よりも内方に配置されていることが好ましい。これにより、送風機15からの空気をスムーズに第2止着部22に誘導しながら、身幅方向xの内方側の膨らみを抑制することができるため、スリムなシルエットを得ることができる。同様の理由から、身幅方向xの一方側x1と他方側x2のそれぞれにおいて、さらに身幅方向xを内方側と外方側に二等分割したときの内方側に第2止着部22が配置されており、外方側に送風機15が配置されていてもよい。
【0065】
身長方向yにおいて、送風機15は、最も下方側に配置されている第2止着部22の下方端よりも上方に配置されていることが好ましい。これにより、送風機15からの空気は、最も下方側に並んで配置されている2つの第2止着部22間を通りやすくなるため、空気が様々な方向に流れやすくなって衣料1全体に行き渡りやすくなる。
【0066】
図示していないが、身長方向yにおいて、送風機15は、最も下方側に配置されている第2止着部22の下方端よりも下方に配置されていてもよい。これにより、送風機15からの空気は身幅方向xに並んで配置されている2つの第2止着部22間を通り、身長方向yに沿って流れやすくなる。
【0067】
身幅方向xの一方側x1と他方側x2のそれぞれにおいて、身幅方向xに並んでいる一の第2止着部22と他の第2止着部22の間に複数の排気口16が配置されていることが好ましい。これにより身幅方向xに並んでいる第2止着部22間に誘導された空気を効率よく排気口16から排出することができるため、衣料1の冷却効果を高めることができる。なお
図6に示されている排気口16の位置は勿論のことながら特に制限されるものではなく、
図4に示されているように背中部あるいは脇部にあってもよい。
【0068】
身長方向yにおいて、最も上方に配置されている排気口16の上方端は、最も上方に配置されている第2止着部22の上方端よりも下方に配置されていることが好ましい。また、身長方向yにおいて、最も下方に配置されている排気口16の下方端は、最も下方に配置されている第2止着部22の下方端よりも上方に配置されていることが好ましい。これにより第2止着部22で空気の流れ方向を制御しながら、空気を効率よく排気口16から排出することができる。
【0069】
図7は、
図3に示したVII−VII線に沿った断面図を表し、第2止着部22における止着状態を示している。
図7では表地11と裏地12が積層されている方向をzと示している。第2止着部22において表地11と裏地12は、縫合、接着剤の塗布、ヒートシールや熱音波融着等の熱融着、鋲止め、またはこれらの組み合わせにより止着することができる。なお、第1止着部21や後述する第3止着部23も同様の方法で止着することができる。
図7では、表地11と裏地12が接着剤14によって接着されている例を示している。
【0070】
衣料1の膨らみを抑制するために、第2止着部22は、表地11の裏側面と裏地12の表側面が互いに当接していてもよい。
【0071】
図8は、
図7に示す断面図の変形例を表している。
図8に示すように、第2止着部22において、表地11と裏地12の間に一方主面13Aと該一方主面13Aと反対側の他方主面13Bを有する中地13が配置されていてもよい。その場合、中地13の一方主面13Aの一方端部が表地11の裏側面に取り付けられており、中地13の一方主面13Aの他方端部が裏地12の表側面に取り付けられていることが好ましい。このように中地13を配置することで、第2止着部22における空気の流れ抵抗を調節することができるため、空気の流れ方向を制御しやすくなる。
【0072】
中地13を構成する材料としては、表地11や裏地12を構成する材料と同様のものを使用することができる。第2止着部22における空気の流れ抵抗を低くするためには、中地13は表地11と裏地12よりも高い通気性を有していることが好ましい。例えば、中地13は、メッシュ生地から構成されていることが好ましい。これにより第2止着部22においても空気が流れやすくなるため、衣料1全体の冷却効果をより一層高めることができる。
【0073】
第2止着部22における空気の流れ抵抗を高くするためには、中地13は表地11と裏地12よりも低い通気性を有していることが好ましい。
【0074】
図8に示すように、中地13の他方主面13Bは、空気の流れ方向の下流側に配置されていることが好ましい。このように中地13を配置することにより、送風機15からの空気抵抗を小さくすることができる。
【0075】
図示していないが、中地13の一方主面13Aが、空気の流れ方向の下流側に配置されていてもよい。このように中地13を配置することにより、送風機15からの空気抵抗を大きくすることができる。
【0076】
表地11および中地13と、裏地12および中地13は、縫合、接着剤の塗布、ヒートシールや熱音波融着等の熱融着、鋲止め、またはこれらの組み合わせにより止着することができる。表地11および中地13の止着方法と、裏地12および中地13の止着方法は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0077】
衣料1には、さらに、第1止着部21から離間している位置において表地11と裏地12が互いに止着されている複数の第3止着部23が設けられており、第3止着部23は、身幅方向xに延在するように配置されており、複数の第3止着部23は、身幅方向xの一方側x1と他方側x2のそれぞれにおいて、身幅方向xに離間して配置されていることが好ましい。このように第3止着部23が配置されていることにより表地11と裏地12の間の空気の流れをさらに多数に分岐することができ、また、裾部をあまり膨らませなくすることで腰回りをすっきりとしたデザインにすることができる。
【0078】
身長方向yにおいて、複数の第3止着部23は、複数の第2止着部22よりも下方に配置されていることが好ましい。複数の第3止着部23によって空気の流れがせき止められ、送風機15からの空気を、空気の流れを適度に分岐させることができる第2止着部22に優先的に流すことができるため、衣料1全体の冷却効果を一層高めることができる。同様の理由から、身長方向yにおいて、第3止着部23は、送風機15よりも下方に配置されていることが好ましい。
【0079】
第3止着部23は、身幅方向xの中心線Cと交差するように配置されていてもよい。これにより、表地11と裏地12の間の空気の流れをより多数に分岐させることができるようになる。
【0080】
第3止着部23の延在方向は、第2止着部22の延在方向と異なっていることが好ましい。例えば、第3止着部23の延在方向は、身幅方向xと平行であるか、身幅方向xに対して3度以上、5度以上、あるいは10度以上傾斜していてもよく、また、30度以下、25度以下、あるいは20度以下傾斜していてもよい。
【0081】
第3止着部23の形状は特に限定されないが、第2止着部22と同様に帯状または線状に形成することができる。複数の第3止着部23の長さや幅は、同じでもよく、異なっていてもよい。第3止着部23の長さや幅は、第2止着部22と同様に設定することができる。
【0082】
第3止着部23の数は特に限定されないが、第3止着部23は、4つ以上配置されていることが好ましく、5つ以上配置されていることがより好ましく、また、8つ以下配置されていることが好ましく、7つ以下配置されていることがより好ましい。また、第3止着部23は、身幅方向xの一方側x1と他方側x2のそれぞれにおいて、2つ以上配置されていればよく、4つ以下配置されていてもよい。
【0083】
身幅方向xにおいて、隣り合う第3止着部23間の距離は、一定であることが好ましい。これにより空気の流れ方向を制御しやすくなり、衣料1の大量生産にも適している。ここで、隣り合う第3止着部23間の距離は、身幅方向xにおいて左側に位置する第3止着部23の右方端と、右側に位置する第3止着部23の左方端との最短距離を意味する。
【0084】
身幅方向xにおいて、隣り合う第3止着部23間の距離は、第3止着部23の長さよりも短いことが好ましい。これにより、複数の第3止着部23によって空気の流れがせき止められやすくなるため、送風機15からの空気を第2止着部22に優先的に流すことができる。同様の理由から、身幅方向xにおいて、隣り合う第3止着部23間の最大距離は、身長方向yにおいて隣り合う第2止着部22間の最小距離よりも小さいことが好ましい。
【0085】
衣料1には、さらに、第3止着部23よりも身幅方向xの外方であって第2止着部22よりも身長方向yの下方に表地11と裏地12が互いに止着されている第4止着部24が設けられており、第4止着部24の外方端が、第1止着部21と接していることが好ましい。このように第4止着部24が設けられていることにより表地11と裏地12の間の空気の流れをせき止めることができる。
【0086】
第4止着部24は、身幅方向xに延在していることが好ましい。また、第4止着部24は、身幅方向xの一方側x1と他方側x2にそれぞれ設けられていることが好ましい。第4止着部24の延在方向は、第3止着部23の延在方向と同様にすることができる。また、第4止着部24の形状は、第2止着部22と同様に帯状または線状に形成することができる。複数の第4止着部24の長さや幅は、同じでもよく、異なっていてもよい。第4止着部24の長さや幅は、第2止着部22と同様に設定することができる。
【0087】
次に、
図1〜
図8に示した衣料とは異なる態様の衣料について
図9〜
図12を参照しながら説明する。なお、
図9〜
図12の説明において、上記の説明と重複する部分は説明を省略する。
図9は、本発明の他の実施の形態に係る衣料の斜視図を表し、
図10は、
図9に示した衣料の背面図を表している。
図11および
図12に、それぞれ
図9に示したフードを表側または裏側から見た側面図を表している。衣料1は、表地11と表地11よりも着用者の肌側に配置されている裏地12とを有し着用者の頭部および首を覆うフード5が取り付けられている上衣であり、第2止着部22は、フード5の身幅方向xの一方側x1と他方側x2にそれぞれ配置されており、フード5の裏地12に排気口16が配置されていることが好ましい。表地11は裏地12に比べて通気度(フラジール通気度:JIS L 1096)の低い生地で構成されていてもよい。これにより、表地11から外部に空気が抜けることに起因する空気の取り込み効率が落ちることがなく、また裏地12から全体的に頭部に空気を与えることができる。
【0088】
フード5の左頭側部と右頭側部の裏地12にそれぞれ複数の排気口16が配置されていることが好ましい。これにより、着用者の顔周りや頭部にさらに風を送ることができるため、身体全体を効率よく冷却することができる。
【0089】
本発明において、フード5の頭側部は、着用者の頭部の側部を覆う部分であり、例えば、頬、耳、側頭骨、蝶形骨、側頭筋を覆う。着用者の左側の頭側部を覆う部分が左頭側部、右側の頭側部を覆う部分が右頭側部である。
図11〜
図12では、左頭側部から見たフード5の側面図を示している。
【0090】
図10に示すように、フード5の後頭部にも排気口16(より好ましくは複数の排気口16)が配置されていることが好ましい。これにより、着用者の首部にも風を送ることができる。なお、フード5の後頭部は頭部の後側や首の後側を覆う部分であり、例えば、後頭骨、頭頂骨の後側半分、後頭筋、僧帽筋の首部分を覆う。