【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代洋上直流送電システム開発事業/システム開発/要素技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通気孔は、前記操作ロッドの前記中空部と接続される部分から前記可動接触子の端面に向かって前記絶縁性ガスの流路断面積を拡大するように形成したことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のガス絶縁開閉装置。
前記可動接触子ベースの端面には、開極動作時の終了時に前記連通孔の少なくとも一部を覆うガス流量制限部を設けたことを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載のガス絶縁開閉装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るガス絶縁開閉装置の実施形態について、図面を参照して説明する。下記の実施形態に係るガス絶縁開閉装置はいずれも、遮断責務を分担可能な複数の接点部が電気的に直列に接続されたものであり、接点部であるガス接点部に適用されるものである。
【0014】
[第1の実施形態]
(構成)
図1及び
図2を用いて第1の実施形態の構成について説明する。
図1は第1の実施形態の閉路状態を示す断面図、
図2は第1の実施形態の開路状態を示す断面図である。
図1及び
図2に示すように、ガス絶縁開閉装置1には、絶縁性ガスを密封した圧力容器2が設けられている。圧力容器2の内部には固定接触子部10及び可動接触子部20が対向して配置されている。
【0015】
可動接触子部20には、圧力容器2の外部に向かって可動軸3が延出されており、可動軸3には操作機構5が接続されている。操作機構5は圧力容器2に取り付けられている。操作機構5は、可動軸3を介して可動接触子部20を直線的に往復動させ、固定接触子部10に対して可動接触子部20を離接させる機構である。
【0016】
以下の説明では、固定接触子部10及び可動接触子部20が相対的に近づく端部を各接触部10、20の先端部とし、その反対側を基端部とする。
図1及び
図2において、可動接触子部20では、
図1の右側が基端部側であり、反対側が先端部側である。一方、固定接触子部10では、
図1の右側が先端部側であり、反対側が基端側である。なお、先端部が端面である場合、先端面とも呼ぶこととする。
【0017】
(固定接触子部)
固定接触子部10には、固定アーク接触子11と、固定通電接触子12と、固定接触子ベース13と、固定シールド14とが同心円状に配置されている。固定シールド14の内側には、バネ16が配置されている。
【0018】
固定接触子ベース13は、圧力容器2に固定されている。固定接触子ベース13の中心部分には棒状の固定アーク接触子11が取り付けられている。固定接触子ベース13の先端面には当該ベース13の外径寸法よりも細い円筒部13aが突出して形成されており、この円筒部13aを囲うようにして固定通電接触子12が配置されている。
【0019】
固定通電接触子12は、周方向に複数配置されており、先端部が内側に向かって屈曲されている。固定通電接触子12は、バネ16によって内側方向に付勢されると同時に、固定接触子ベース13の円筒部13aの外周部に当接することでバネ16による内側への移動が制限されている。
【0020】
固定シールド14は、固定通電接触子12を囲うようにして固定接触子ベース13の外周面に固定されている。固定シールド14の先端部は、固定通電接触子12の先端部を覆うように内側に向かって屈曲されている。固定シールド14の先端部には円形の開口部14aが形成されている。
【0021】
固定アーク接触子11の先端部には耐弧性を有する耐弧金属15が固着されている。耐弧金属15は外方に膨らんだ紡錘形状となっている。固定アーク接触子11には長手方向に先端部側が割れているスリット17が設けられている。スリット17は、互いに平行となるように複数設けられている。これらスリット17があることで、固定アーク接触子11は先端部が径方向に変形するばね性を持っている。
【0022】
(可動接触子部)
可動接触子部20には、可動接触子21と、可動接触子ベース22と、可動シールド23と、操作ロッド25とが同心円状に配置されている。このうち、操作ロッド25は、先端部に可動接触子21が、基端部に可動軸3が、それぞれに連結されている。操作ロッド25は、操作機構5により可動軸3が往復動作を行うことにより、固定アーク接触子11及び固定通電接触子12に対して可動接触子21を離接させる部材である。
【0023】
操作ロッド25には、ディスク状のピストン25aが固定されている。また操作ロッド25には、中心部分に長手方向に延びる中空部25bが設けられている。さらに操作ロッド25には、中空部25bと直交して中空部25bから操作ロッド25の外周部に至る連通孔25cが設けられている。連通孔25cは中空部25bと後述する圧縮室30とを連通する孔である。
【0024】
可動接触子21は、操作ロッド25の先端部に取り付けられており、固定通電接触子12の長手方向に対向して可動自在に配置されている。可動接触子21が固定シールド14の開口部14aに対して挿入可能となるように、可動接触子21の外径寸法は、固定シールド14の開口部14aの内径寸法よりも小さく形成されている。可動接触子21が固定シールド14の開口部14aに挿入された時、可動接触子21は、外周部が固定通電接触子12の内周部に接するように設けられている。
【0025】
可動接触子21の先端部には、耐弧性を有する耐弧金属24が固着されている。耐弧金属24は、内周部に固定アーク接触子11の耐弧金属15が接離するようにリング状に設けられている。つまり、可動接触子部20において、前記操作ロッド25と可動接触子21とが、開極動作時及び閉極動作時に可動する部材である。一方、可動接触子部20であっても、可動接触子ベース22は圧力容器2に固定される部材であり、可動シールド23は可動接触子ベース22に固定される部材である。
【0026】
可動接触子21において、耐弧金属15が挿入する部分から見て基端部側には、可動接触子21の長手方向に伸びる通気孔21aが複数設けられている。通気孔21aは可動接触子21の端面から操作ロッド25の中空部25bまで貫通する孔である。通気孔21aの先端部側の開口部は、固定アーク接触子11の耐弧金属15の先端部と向かい合うように配置されている。
【0027】
可動接触子ベース22は、圧力容器2に固定されている。可動接触子ベース22は、中空の円筒状部材であり、内部は圧力容器2の内部空間22aと連通している。可動接触子ベース22の先端部には、厚みがあるフランジ部22dが形成されている。可動接触子ベース22のフランジ部22dの端面において、開極動作時の終了時点で操作ロッド25の連通孔25cと向かい合う角部分を、ガス流量制限部22eとする。ガス流量制限部22eは、所定の間隔を持って、開極動作時の終了時に連通孔25cの少なくとも一部を覆うように設けられている。
【0028】
可動接触子ベース22のフランジ部22dの中央には保持穴22cが開口されている。保持穴22cには操作ロッド25が挿入されている。可動接触子ベース22の保持穴22cの内周部と操作ロッド25の外周部との間には、隙間33が形成されている。この隙間33が、可動接触子ベース22のガス流量制限部22eが連通孔25cを覆う時の間隔となる。
【0029】
隙間33には可動接触子ベース22の内周部及び操作ロッド25の外周部に接するようにして、集電接触子26及び摺動パッキン27が配置されている。可動接触子ベース22のフランジ部22dにおいて集電接触子26は基端部寄りに、摺動パッキン27は先端部寄りに、それぞれ取り付けられている。摺動パッキン27が隙間33に設置されたため、隙間33から可動接触子ベース22の内部空間22a側に向かって、圧縮室30にて圧縮された絶縁性ガスが流れることはない。また、摺動パッキン27は、開極動作時の終了時に操作ロッド25の連通孔25cの一部を塞ぐように構成されている。
【0030】
可動シールド23は、可動接触子ベース22のフランジ部22dの外周部に固定されており、先端面には可動接触子21の外周部を囲むようにして円形の開口部23aが形成されている。可動接触子21の外径寸法は、開口部23aの内径寸法よりも小さく形成されている。そのため、可動接触子21の外周部と可動シールド23の開口部23aの内周部との間には、隙間31aが設けられる。
【0031】
可動シールド23の内部空間には、操作ロッド25のピストン25aを隔壁として、2つの空間が形成される。1つが可動接触子ベース22側に形成される圧縮室30であり、もう1つが可動接触子21側に形成される吸込み室31である。圧縮室30の内径の方が吸込み室31の内径よりも大きく設定されている。可動シールド23の内周部とピストン25aの外周部との間には隙間34が形成されている。隙間34には可動シールド23の内周部及びピストン25aの外周部に接するように摺動パッキン28が配置されている。
【0032】
圧縮室30は、操作ロッド25のピストン25aと、操作ロッド25の外周部と、可動接触子ベース22のフランジ部22dと、可動シールド23の内周部によって囲まれた空間である。圧縮室30は、開極動作時の操作ロッド25の移動に伴うピストン25aの移動により室内の絶縁性ガスを圧縮するようになっている。また、圧縮室30は、連通孔25c、中空部25b及び複数の通気孔21aを介して、固定アーク接触子11側の耐弧金属15と可動接触子21側の耐弧金属24との間に発生したアーク40(
図2に図示)に対し、圧縮した絶縁性ガスを吹付ける。なお、圧縮室30内の絶縁性ガスは、熱ガスに比べて、低温であるため、圧縮室30内の絶縁性ガスを低温ガスと呼ぶこととする。
【0033】
吸込み室31は、操作ロッド25のピストン25aと、操作ロッド25の外周部と、可動接触子21の外周部と、可動シールド23の内周部によって囲まれた空間である。吸込み室31は、開極動作時の操作ロッド25の移動に伴うピストン25aの移動により室内の空間を広がることで室内の圧力を低下させ、アーク40によって熱せられた高温の絶縁性ガス(以下、熱ガスと呼ぶ)を、隙間31aから室内に吸い込む部分である。
【0034】
(開極動作)
以上の構成を有する第1の実施形態の開極動作について、
図1に示す閉路状態から
図2に示す開路状態に至るまでを説明する。まず、
図1に示す閉路状態において、可動接触子21は固定アーク接触子11及び固定通電接触子12と接しており、通電状態となっている。
【0035】
閉路状態では、固定通電接触子12は、バネ16の弾性力によって可動接触子21の外周部に押し付けられている。また、閉路状態では、固定アーク接触子11は、複数のスリット17によって半径方向に縮むように変形するため、固定アーク接触子11の先端部に固着された耐弧金属15は外周方向に付勢されて可動接触子21の内周部に押し付けられている。
【0036】
以上のような閉路状態を初期状態として、外部から送られた開極指令によって操作機構5が始動し、可動軸3が
図1の右側に駆動すると、操作ロッド25及び可動接触子21も右側に駆動する。したがって、可動接触子21は、まず固定通電接触子12から開離する。このとき、固定アーク接触子11は可動接触子21に接しているため、可動接触子21と固定通電接触子12との間にはアーク40は発生しない。
【0037】
その後、開極動作が進み、可動接触子21が固定アーク接触子11から開離すると、可動接触子21側の耐弧金属24と、固定アーク接触子11側の耐弧金属15との間には、アーク40(
図2に示す)が発生する。アーク40は非常に高温であるため、その周囲の絶縁性ガスは高温の熱ガスとなり、固定アーク接触子11と可動接触子21の間に滞留する。
【0038】
開極動作がさらに進むと、ガス絶縁開閉装置1に直列に接続された他の開閉装置(不図示)によって事故電流が遮断される。そのため、固定アーク接触子11と可動接触子21間に発生していたアーク40は消滅する。しかし、アーク40が消滅しても、固定アーク接触子11と可動接触子21の間には、アーク40による熱ガスが依然として滞留したままである。したがって、遮断後の過渡回復電圧に対して絶縁性能が低下した状態となっている。
【0039】
そこで第1の実施形態では、絶縁性能の低下を抑えるべく、次のような動作を行う。すなわち、開極動作に際して、操作ロッド25の移動に伴い右側に駆動するピストン25aが、圧縮室30室内の低温ガスを圧縮する。圧縮室30室内で圧縮された低温ガスは、連通孔25cと中空部25bと複数の通気孔21aを順次通って、固定アーク接触子11と可動接触子21との間に吹き付けられる。
【0040】
また、開極動作に際して、ピストン25aが右側に駆動することで、吸込み室31の内部空間が広がり、室内の絶縁性ガスの圧力は周囲よりも低下する。このとき、吸込み室31の内部空間とアーク40の発生空間とは、可動接触子21の外周部と可動シールド23の開口部23aの内周部との間に設けた隙間31aによって連通する。そのため、耐弧金属24及び可動接触子21の周囲に存在する熱ガスを、隙間31aを介して、吸込み室31の内部に取り込むことができる。
【0041】
開極動作の終了時には、可動接触子ベース22のフランジ部22dの端面に設けたガス流量制限部22eが、操作ロッド25の連通孔25cの少なくとも一部を覆い、且つ摺動パッキン27が連通孔25cの一部を塞いだ状態となる(
図2の状態)。開極動作は
図1の状態から
図2の状態になると終了する。開極動作の終了時には、可動接触子21は可動シールド23の内部に完全に収容される。
【0042】
(閉極動作)
次にガス絶縁開閉装置1の
図2に示す開路状態から
図1に示す閉路状態に至る閉極動作について説明する。まず、
図2に示す開路状態において、可動接触子21は固定アーク接触子11及び固定通電接触子12と離れ、非通電状態となっている。
【0043】
以上のような開路状態を初期状態として、外部から送られた閉極指令によって操作機構5が始動し、可動軸3が
図2の左側に駆動すると、操作ロッド25及び可動接触子21が左側に駆動して、可動接触子21は固定アーク接触子11と閉接した後、固定通電接触子12と閉接する。
【0044】
閉極動作が進むとピストン25aが
図2の左側に駆動するため、圧縮室30の内部空間が広がり、絶縁性ガスの圧力は周囲より低下する。したがって、連通孔25cと中空部25bと通気孔21aを介して、固定アーク接触子11の周囲の絶縁性ガスを圧縮室30の内部に取り込む。
【0045】
また、ピストン25aが
図2の左側に駆動することで、吸込み室31内部の絶縁性ガスを圧縮し、隙間31aを介して可動接触子21の耐弧金属24側に絶縁性ガスを噴き出す。閉極動作は
図2の状態から
図1の状態になると終了し、可動接触子21は固定アーク接触子11及び固定通電接触子12と閉接して通電状態となる。
【0046】
(作用と効果)
(1)第1の実施形態では、圧縮室30では、開極動作時の操作ロッド25の移動に伴うピストン25aの移動によって室内の絶縁性ガスを圧縮し、連通孔25c、中空部25b及び複数の通気孔21aを介してアーク40に低温ガスを吹付ける。このとき、複数の通気孔21aが、固定アーク接触子11の耐弧金属15が挿入する部分に向かい合っている。
【0047】
そのため、通気孔21aは、アーク40による熱ガスに対して、圧縮室30からの低温ガスを、集中的に且つ大量に、吹付けることができる。したがって、アーク40による熱ガスを効率よく冷却することができ、アーク40が発生した空間から、滞留した熱ガスを四方に拡散させ、固定アーク接触子11と可動接触子21との間から吹き払うことができる。
【0048】
しかも、第1の実施形態では、ピストン25aの移動開始により圧縮室30内の絶縁性ガスを圧縮するので、開極動作の初期段階から、アーク40の発生空間に向かって低温ガスを吹き付けることが可能である。したがって、熱ガスを迅速に拡散させることができ、絶縁性能の向上に寄与することができる。
【0049】
以上のような熱ガスの拡散と同時に、第1の実施形態では、吸込み室31によりアーク40による熱ガスを吸い込むことができる。そのため、固定アーク接触子11と可動接触子21の間から熱ガスを効率よく除去することができる。このとき、吸込み室31への熱ガスの流入路となる隙間31aは、可動接触子21の外周部に位置する。
【0050】
したがって、低温ガスの吹付けにより可動接触子21の外周部に沿って拡散した熱ガスが、隙間31aに向かってスムーズに流れ込むことができる。しかも、第1の実施形態では、ピストン25aの移動開始により吸込み室31内の圧力が低下するので、吸込み室31は、開極動作の初期段階から、隙間31aを通して熱ガスを素早く吸込むことができる。
【0051】
上述したように、第1の実施形態に係るガス絶縁開閉装置1においては、固定アーク接触子11と可動接触子21の間から熱ガスを除去するため、固定アーク接触子11と可動接触子21が再点弧する心配が無い。そのため、遮断後の過渡回復電圧に対し良好な絶縁性能を得ることができる。したがって、ガス絶縁開閉装置1では高電圧用の開閉装置に要求される遮断責務を容易に達成することが可能であり、操作機構5の負担を軽減させて遮断時間の短縮化に寄与することができる。
【0052】
(2)第1の実施形態では、開極動作の終了時に、可動接触子ベース22のフランジ部22dのガス流量制限部22eが、操作ロッド25の連通孔25cの少なくとも一部を覆うので、圧縮室30に連通する連通孔25cの断面積は減少する。そのため、開極動作の終了直前には、圧縮室30から通気孔21aに向かって流れる低温ガスの流量を減らすことができ、圧縮室30内の圧力は上昇する。
【0053】
その結果、ピストン25aには開極動作時の駆動方向とは反対方向つまり
図2の左方向に働くパッファ反力が増加することになり、開極動作の終了間際では操作ロッド25及び可動接触子21を制動することができる。これにより、開極動作終了時に発生する衝撃力を緩和することができ、動作信頼性を高めることができる。
【0054】
(3)第1の実施形態においては、開極動作時の終了時に、摺動パッキン27は操作ロッド25の連通孔25cの一部だけを塞いでいる。つまり、連通孔25cが摺動パッキン27によって完全には封じられていない。したがって、前段にて述べたように、開極動作の終了直前には圧縮室30からの低温ガスの流出量を減らすものの、これをゼロとするわけではなく、連通孔25cを通して低温ガスを、圧縮室30から通気孔21a側へと抜いている。
【0055】
その結果、開極動作の終了直前には、低温ガスの流出量の低減により圧縮室30内の圧力が上昇したとしても、圧縮室30が過剰に圧力上昇することがない。このため、開極動作終了時において、パッファ反力によりピストン25aが
図2の左側に逆行することを防ぐことが可能となる。
【0056】
(4)第1の実施形態では閉極動作の終了直前において、圧縮室30の内部空間が広がり、絶縁性ガスの圧力が周囲より低下する。その一方で、吸込み室31では圧力が周囲より上昇してピストン25aには閉極動作時の駆動方向とは反対方向つまり
図1の右方向にパッファ反力が働く。そのため、閉極動作の終了間際に、操作ロッド25及び可動接触子21を確実に制動することができ、閉極動作終了時に発生する衝撃力を緩和することが可能である。
【0057】
(5)第1の実施形態では、バネ16が固定通電接触子12を可動接触子21の外周部に押し付けている。そのため、電気的な抵抗が小さくなり、通電による発熱を抑えることができる。また、固定アーク接触子11は複数のスリット17によって半径方向に縮むように変形することで外周方向への弾性力が与えられ、固定アーク接触子11を可動接触子21の内周部に押し付けている。したがって、固定通電接触子12側と同様に、電気的な抵抗が小さくなり、通電による発熱を抑えることができるといったメリットがある。
【0058】
[第2の実施形態]
(構成)
図3及び
図4を用いて第2の実施形態の構成について説明する。
図3は第2の実施形態の閉路状態を示す断面図、
図4は第2の実施形態の開路状態を示す断面図である。なお、第1の実施形態の形態と同一または類似の部分には共通の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0059】
第2の実施形態では、可動接触子ベース22のフランジ部22dには、複数の第1の吸気孔22bが形成されている。第1の吸気孔22bは、可動接触子ベース22における内部空間22aと圧縮室30とを連通させ、閉極動作時に内部空間22a内の絶縁性ガスを圧縮室30内へ吸い込むための孔である。
【0060】
圧縮室30の内部にはリング板状のバルブ32が配置されている。バルブ32は、可動シールド23の内周部に形成した溝32aにはめ込まれており、溝32aの端部に当接することで、移動範囲が制限される。溝32aは、閉極動作時の終了時におけるバルブ32の位置決め部である。バルブ32は、圧縮室30の圧力が内部空間22aの圧力より高くなると、圧力差によって第1の吸気孔22bを塞ぐ構造となっている。
【0061】
(開極動作)
以上の構成を有する第2の実施形態の開極動作について、
図3に示す閉路状態から
図4に示す開路状態に至るまでを説明する。ただし、第1の実施形態における開極動作と同様の点については説明を省略する。
【0062】
開極動作時は、ピストン25aが
図3の右側に駆動することで圧縮室30の圧力が内部空間22aの圧力よりも高くなり、バルブ32が第1の吸気孔22bを塞ぐ(
図4の状態)。そのため、第1の吸気孔22bを通って内部空間22aから圧縮室30内に絶縁性ガスが流入することがない。
【0063】
したがって、ピストン25aの駆動により圧縮室30内の低温ガスを効率よく圧縮することができ、連通孔25cと中空部25bと通気孔21aを介して、固定アーク接触子11側に圧縮室30内の低温ガスを強く噴き出すことができる。更に第2の実施形態においても第1の実施形態と同様、吸込み室31の内部空間が広がり絶縁性ガスの圧力が周囲より低下することで、耐弧金属24の周囲の絶縁性ガスを、隙間31aから吸込み室31の内部に取り込む。
【0064】
(閉極動作)
第2の実施形態の閉極動作について、
図4に示す開路状態から
図3に示す閉路状態に至るまでを説明する。ただし、第1の実施形態における閉極動作と同様の点については説明を省略する。
【0065】
閉極動作時はピストン25aが
図4の左側に駆動することで圧縮室30の圧力が内部空間22aの圧力よりも低くなり、バルブ32が第1の吸気孔22bを開放する。そのため、内部空間22aの絶縁性ガスは第1の吸気孔22bを介して圧縮室30内に流れ込み、圧縮室30の内部空間が広がることによる圧力低下を抑えることができる。したがって、圧縮室30の圧力低下に伴って、ピストン25aが閉極動作方向(
図4の左方向)へ動きにくくなるということがない。閉極動作時の終了時にはバルブ32が溝32aの端部に当接することで、バルブ32の位置決めがなされる。
【0066】
(作用と効果)
第2の実施形態では、前記第1の実施形態と同様な作用及び効果を得ることができ、更に次のような独自の作用及び効果がある。すなわち、閉極動作時には、バルブ32が第1の吸気孔22bを開放することで、可動接触子ベース22の内部空間22aから第1の吸気孔22bを介して圧縮室30内に絶縁性ガスが流れ込む。そのため、圧縮室30の圧力が低下することがなく、ピストン25aに対して発生する閉路動作への抑制力が減少する。
【0067】
しかも、第2の実施形態では、圧縮室30内へ絶縁性ガスを供給する空間として、可動接触子ベース22の内部空間22aを採用しているので、圧縮室30内への絶縁性ガスの流入量を確保し易い。また、第1の吸気孔22bの大きさを変えるなどして絶縁性ガスの流量調整も容易である。その結果、最小のエネルギーで閉路動作を実施することが可能となり、操作機構5への負担軽減をより進めて遮断時間のさらなる短縮化が可能である。
【0068】
[第3の実施形態]
(構成)
図5及び
図6を用いて第3の実施形態の構成について説明する。
図5は第3の実施形態の閉路状態を示す断面図、
図6は第3の実施形態の開路状態を示す断面図である。なお、第1の実施形態の形態と同一または類似の部分には共通の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0069】
第3の実施形態では、ピストン25aには複数の第2の吸気孔25dが形成されている。第2の吸気孔25dは、圧縮室30と吸込み室31を連通させ、前記第1の吸気孔22bと同じく、閉極動作時に圧縮室30内へ絶縁性ガスを吸い込むための孔である。
【0070】
圧縮室30の内部にはリング板状のバルブ32が配置されている。バルブ32は、操作ロッド25の外周部に固定した止め輪32bによって移動範囲が制限されている。止め輪32bは、閉極動作時の終了時におけるバルブ32の位置決め部である。さらに、バルブ32は、圧縮室30の圧力が吸込み室31の圧力より高くなると圧力差により第2の吸気孔25dを塞ぐ構造となっている。
【0071】
(開極動作)
以上の構成を有する第3の実施形態の開極動作について、
図5に示す閉路状態から
図6に示す開路状態に至るまでを説明する。ただし、第1の実施形態における開極動作と同様の点については説明を省略する。
【0072】
開極動作時はピストン25aが
図5の右側に駆動することで圧縮室30の圧力が吸込み室31の圧力よりも高くなり、バルブ32が第2の吸気孔25dを塞ぐ。そのため、第2の吸気孔25dを通って吸込み室31から圧縮室30内に絶縁性ガスが流入することがなく、圧縮室30では絶縁性ガスを効率よく圧縮することができる。
【0073】
したがって、連通孔25cと中空部25bと通気孔21aを介して、圧縮室30から、固定アーク接触子11側に圧縮室30内の低温ガスを強く噴き出すことができる。更に第3の実施形態においても、第1及び第2の実施形態と同様、吸込み室31の内部空間が広がり絶縁性ガスの圧力が周囲より低下することで、耐弧金属24の周囲の絶縁性ガスを、隙間31aから吸込み室31の内部に取り込む。
【0074】
(閉極動作)
第3の実施形態の閉極動作について、
図6に示す開路状態から
図5に示す閉路状態に至るまでを説明する。ただし、第1の実施形態における閉極動作と同様の点については説明を省略する。
【0075】
閉極動作時はピストン25aが
図6の左側に駆動することで圧縮室30の圧力が吸込み室31の圧力よりも低くなり、バルブ32が第2の吸気孔25dを開放する。そのため、吸込み室31の絶縁性ガスは第2の吸気孔25dを介して圧縮室30に流れ込み、吸込み室31内の絶縁性ガスが減り、圧縮室30内の絶縁性ガスが増える。
【0076】
したがって、圧縮室30と吸込み室31の圧力を均一化することができ、圧縮室30の圧力低下と、吸込み室31の圧力上昇とを同時に抑えることが可能である。これにより、ピストン25aが閉極動作方向(
図6の左方向)へ動きにくくなるということがない。閉極動作時の終了時にはバルブ32が止め輪32bに当接することで、バルブ32の位置決めがなされる。
【0077】
(作用と効果)
第3の実施形態では、前記第1の実施形態及び第2の実施形態と同様な作用と効果を得ることができ、更には閉極動作時に、圧縮室30の圧力低下だけではなく、吸込み室31の圧力上昇に関してもこれを抑制することができる。そのため、閉極動作時において、ピストン25aに発生する閉路動作の抑制力を確実に減少させることができ、一層小さいエネルギーで閉路動作を実施することが可能となる。したがって、操作機構5への負担軽減をさらに進めて、遮断時間の短縮化を効率よく行うことができる。
【0078】
[第4の実施形態]
(構成)
図7及び
図8を用いて第4の実施形態の構成について説明する。
図7は第4の実施形態の閉路状態を示す断面図、
図8は第4の実施形態の開路状態を示す断面図である。なお、第1の実施形態の形態と同一または類似の部分には共通の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0079】
第4の実施形態は、
図1と
図2に示す可動接触子21の通気孔21aに関する変形例である。通気孔21bは、操作ロッド25の中空部25bと接続される部分から可動接触子21の端面に向かって絶縁性ガスの流路断面積を拡大するように形成されている。つまり、通気孔21bは、中空部25bとの連通部分から低温ガスの噴き出し部分へ向けて流路断面積が拡大するようになっている。第4の実施形態では通気孔21bの数を一つとする。
【0080】
(作用と効果)
以上の第4の実施形態では、前記第1の実施形態と同様な作用と効果に加えて、次のような独自の作用と効果がある。すなわち、第4の実施形態でも、開路動作時に圧縮室30で圧縮された低温ガスは、連通孔25cと中空部25bを介して通気孔21aから噴出する。
【0081】
このとき、通気孔21bは、中空部25bとの連通部から固定アーク接触子11への噴き出し部へかけて流路断面積が大きくなっている。そのため、通気孔21bを通過する低温ガスは、熱ガスに対して噴出する際の流速が上昇する。したがって、熱ガスをより効率的に冷却し、吹き散らすことが可能となる。その結果、遮断後の過渡回復電圧に対してさらに良好な絶縁性能を得ることができる。
【0082】
[他の実施形態]
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0083】
例えば、可動接触子21の外周部に沿って形成される隙間31aの形状や寸法、可動接触子21の形状や寸法、可動接触子21に形成される通気孔21aの数や形状や寸法、操作ロッド25に形成される中空部25bや連通孔25cの数や形状や寸法などは、適宜選択可能であり、アーク40の発生空間に向けて噴き出す低温ガスの流出量を簡単に調整することで、アーク40による熱ガスの拡散及び冷却を効率良く実施することが可能である。また、可動接触子ベース22の端面や摺動パッキン27において、開極動作時の終了時に連通孔25cを覆う面積の大きさなども、操作ロッド25や可動接触子21の制動を実現させる範囲で適宜変更可能である。