特許第6823083号(P6823083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アプティニックス インコーポレイテッドの特許一覧

特許6823083スピロラクタム系NMDA受容体モジュレーターおよびその使用
<>
  • 特許6823083-スピロラクタム系NMDA受容体モジュレーターおよびその使用 図000022
  • 特許6823083-スピロラクタム系NMDA受容体モジュレーターおよびその使用 図000023
  • 特許6823083-スピロラクタム系NMDA受容体モジュレーターおよびその使用 図000024
  • 特許6823083-スピロラクタム系NMDA受容体モジュレーターおよびその使用 図000025
  • 特許6823083-スピロラクタム系NMDA受容体モジュレーターおよびその使用 図000026
  • 特許6823083-スピロラクタム系NMDA受容体モジュレーターおよびその使用 図000027
  • 特許6823083-スピロラクタム系NMDA受容体モジュレーターおよびその使用 図000028
  • 特許6823083-スピロラクタム系NMDA受容体モジュレーターおよびその使用 図000029
  • 特許6823083-スピロラクタム系NMDA受容体モジュレーターおよびその使用 図000030
  • 特許6823083-スピロラクタム系NMDA受容体モジュレーターおよびその使用 図000031
  • 特許6823083-スピロラクタム系NMDA受容体モジュレーターおよびその使用 図000032
  • 特許6823083-スピロラクタム系NMDA受容体モジュレーターおよびその使用 図000033
  • 特許6823083-スピロラクタム系NMDA受容体モジュレーターおよびその使用 図000034
  • 特許6823083-スピロラクタム系NMDA受容体モジュレーターおよびその使用 図000035
  • 特許6823083-スピロラクタム系NMDA受容体モジュレーターおよびその使用 図000036
  • 特許6823083-スピロラクタム系NMDA受容体モジュレーターおよびその使用 図000037
  • 特許6823083-スピロラクタム系NMDA受容体モジュレーターおよびその使用 図000038
  • 特許6823083-スピロラクタム系NMDA受容体モジュレーターおよびその使用 図000039
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6823083
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】スピロラクタム系NMDA受容体モジュレーターおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/10 20060101AFI20210114BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20210114BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20210114BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20210114BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20210114BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210114BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20210114BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20210114BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20210114BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20210114BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20210114BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20210114BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20210114BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20210114BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20210114BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20210114BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   C07D487/10CSP
   A61K31/407
   A61P25/00
   A61P25/24
   A61P25/18
   A61P43/00 111
   A61P25/22
   A61P25/30
   A61P25/20
   A61P25/28
   A61P27/02
   A61P27/06
   A61P25/14
   A61P25/08
   A61P21/02
   A61P9/10
   A61P43/00 107
   A61P25/04
【請求項の数】6
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2018-560848(P2018-560848)
(86)(22)【出願日】2017年5月18日
(65)【公表番号】特表2019-516735(P2019-516735A)
(43)【公表日】2019年6月20日
(86)【国際出願番号】US2017033323
(87)【国際公開番号】WO2017201283
(87)【国際公開日】20171123
【審査請求日】2020年5月14日
(31)【優先権主張番号】62/338,767
(32)【優先日】2016年5月19日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516014270
【氏名又は名称】アプティニックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】カーン,エム.,アミン
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−506958(JP,A)
【文献】 特表2012−503008(JP,A)
【文献】 特表2016−506960(JP,A)
【文献】 特表2016−506961(JP,A)
【文献】 特表2016−506959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY/MARPAT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式で表される化合物、その立体異性体、N−オキシド及び/又は薬学的に許容される塩。
【請求項2】
以下の式で表される請求項1に記載の化合物、そのN−オキシド及び/又は薬学的に許容される塩。
【請求項3】
以下の式で表される請求項1に記載の化合物、そのN−オキシド又は薬学的に許容される塩。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項5】
経口投与用の形態である請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
静脈内、鼻腔内、皮下及び/又は舌下投与用の形態である請求項4に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年5月19日に出願された米国特許仮出願第62/338,767号明細書の優先権および利益を主張するものであり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
N−メチル−d−アスパラギン酸(「NMDA」)受容体は、特に興奮性アミノ酸のグルタミン酸およびグリシンならびに合成化合物NMDAに応答する後シナプスイオンチャネル型受容体である。NMDA受容体は、受容体関連チャネルを介した二価および一価イオンの両方の後シナプス神経細胞への流入を制御する(Foster et al.,Nature 1987,329:395−396;Mayer et al.,Trends in Pharmacol.Sci.1990,11:254−260)。NMDA受容体は、発生の過程でニューロン構造およびシナプス接続の指定に関与すると考えられており、経験依存的シナプス修飾に関与している可能性がある。さらに、NMDA受容体は、長期増強および中枢神経系障害にも関与すると考えられている。
【0003】
NMDA受容体は、記憶獲得、記憶保持および学習などの多くの高次認知機能の根底にあるシナプス可塑性、ならびに特定の認知経路および疼痛の知覚において大きい役割を果たしている(Collingridge et al.,The NMDA Receptor,Oxford University Press,1994)。さらに、NMDA受容体の特定の特性から、それが意識自体の根底にある脳の情報処理に関与している可能性が示唆される。
【0004】
NMDA受容体は、多岐にわたるCNS障害に関与していると思われることから、特に注目を集めている。例えば、脳卒中または外傷によって生じる脳虚血状態中、損傷を受けたかまたは酸欠状態になったニューロンから過剰量の興奮性アミノ酸のグルタミン酸が放出される。この過剰なグルタミン酸は、NMDA受容体と結合してそのリガンド依存性イオンチャネルを開き、次いでカルシウム流入により、細胞内カルシウムの濃度が上昇して生化学的カスケードを活性化し、タンパク質変性および細胞死をもたらす。この現象は、興奮毒性として知られ、低血糖および心停止から癲癇に及ぶ他の障害に関連する神経学的損傷に関与するとも考えられている。さらに、ハンチントン病、パーキンソン病ならびにジスキネジーおよびL−ドーパ誘導性ジスキネジーなどのパーキンソン病関連病態、ならびにアルツハイマー病の慢性神経変性にも同様に関与することを示す予備的報告がある。NMDA受容体の活性化が脳卒中後の痙攣に関与することが示されており、また癲癇の特定のモデルでは、発作の発生にNMDA受容体の活性化が必要であることが示されている。また、動物用麻酔薬のPCP(フェンシクリジン)によりNMDA受容体Ca++チャネルを遮断すると、統合失調症に類似した精神病的状態をヒトに引き起こすことから、NMDA受容体の神経精神医学的関与が認められている(Johnson,K.and Jones,S.,1990で概説されている)。さらに、NMDA受容体は、特定の種類の空間学習にも関与すると考えられている。
【0005】
NMDA受容体は、後シナプス膜に埋め込まれている複数のタンパク質からなると考えられている。これまでに発見されたサブユニットのうち、最初の2種類は、アロステリック結合部位の大部分を含むと考えられる大きい細胞外領域、Ca++透過性の小孔またはチャネルを形成するようにループを形成しかつ折り畳まれた複数の膜貫通領域およびカルボキシル末端領域を形成している。細胞外表面に存在するタンパク質のドメイン(アロステリック部位)に様々なリガンドが結合することにより、チャネルの開閉が調節される。このリガンドの結合は、タンパク質の構造全体のコンホメーション変化に影響を及ぼすと考えられており、これは、最終的にチャネルが開くか、部分的に開くか、部分的に閉じるか、または閉じることに反映される。
【0006】
NMDA受容体化合物は、アロステリック部位を介してNMDA受容体に二重の(アゴニスト/アンタゴニスト)作用を及ぼし得る。これらの化合物は、通常、「機能的部分アゴニスト」と呼ばれる。主要部位リガンドが存在する場合、部分アゴニストは、そのリガンドの一部に取って代わり、したがって受容体を通したCa++流量を減少させる。主要部位リガンドが存在しないかまたはその濃度が低下した場合、部分アゴニストは、受容体チャネルを通したCa++流量を増加させるように作用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
当該技術分野では、NMDA受容体のグリシン結合部位と結合することができ、医薬品としての有益性が得られる、新規でより特異的/強力な化合物が依然として必要とされている。さらに、医療分野では、経口送達可能な形態のこのような化合物が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、NMDAモジュレーター、例えばNMDAの部分アゴニストであり得る化合物を提供する。より具体的には、本開示は、式:
【化1】
(I)
(式中、Rは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノおよびC〜Cアルキルからなる群から選択され、Rは、水素、ハロゲンおよびC〜Cアルキルからなる群から選択され、およびRは、水素、ハロゲンおよびC〜Cアルキルからなる群から選択される)
を有する化合物またはその立体異性体、N−オキシドおよび/もしくは薬学的に許容される塩を提供する。
【0009】
本明細書では、開示される化合物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物も提供される。このような組成物は、患者への経口または静脈内投与に適したものであり得る。
【0010】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物は、NMDA受容体サブタイプに結合する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物は、1つのサブタイプに結合し、かつ別のサブタイプに結合しない。
【0011】
別の態様では、自閉症、不安、うつ病、双極性障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害(ADHD)、統合失調症、精神病性障害、精神病症状、社会的引きこもり、強迫性障害、恐怖症、心的外傷後ストレス症候群、行動障害、衝動制御障害、物質乱用障害、睡眠障害、記憶障害、学習障害、尿失禁、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、フリードリヒ運動失調症、ダウン症候群、脆弱X症候群、結節性硬化症、オリーブ橋小脳萎縮症、脳性麻痺、薬物性視神経炎、虚血性網膜症、糖尿病性網膜症、緑内障、認知症、AIDS認知症、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、痙攣、ミオクローヌス、筋攣縮、トゥレット症候群、癲癇、脳虚血、脳卒中、脳腫瘍、外傷性脳損傷、心停止、脊髄症、脊髄損傷、末梢性ニューロパチー、線維筋痛症、急性神経因性疼痛および慢性神経因性疼痛からなる群から選択される病態を治療することを、それを必要とする患者において行う方法が提供される。そのような方法は、薬学的有効量の開示される化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、N−オキシドおよび/もしくは水和物を患者に投与することを含み得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、方法は、うつ病を治療することを含む。例えば、うつ病は、大うつ病性障害、気分変調性障害、精神病性うつ病、産後うつ病、季節性感情障害、双極性障害、気分障害または慢性の医学的状態を原因とするうつ病の1つ以上を含み得る。特定の実施形態では、方法は、統合失調症を治療し得る。そのような統合失調症は、妄想型統合失調症、解体型統合失調症、緊張型統合失調症、鑑別不能型統合失調症、残遺型統合失調症、統合失調症後抑うつまたは単純型統合失調症であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】肯定的感情学習(PEL)モデルにおける化合物Aの平均50kHz USVデータを示す。
図2】化合物Aの野生型NMDAR2サブタイプに対する[H]MK−801結合の増強を示す。
図3】雄Sprague Dawleyラットにおける単回静脈内(2mg/kg)および経口(10mg/kg)投与後の化合物Aの平均血漿濃度−時間プロファイルを示す。
図4】雄Sprague Dawleyラットにおける単回経口(10mg/kg)投与後の化合物Aの平均血漿、脳およびCSF濃度−時間プロファイルを示す。
図5】PELモデルにおける化合物Bの平均50kHz USVデータを示す。
図6】化合物Bの野生型NMDAR2サブタイプに対する[H]MK−801結合の増強を示す。
図7】雄Sprague Dawleyラットにおける単回静脈内(2mg/kg)および経口(10mg/kg)投与後の化合物Bの平均血漿濃度−時間プロファイルを示す。
図8】雄Sprague Dawleyラットにおける単回経口(10mg/kg)投与後の化合物Bの平均血漿、脳およびCSF濃度−時間プロファイルを示す。
図9】化合物AのインビトロMN、AmesおよびhERGアッセイの結果を示す。
図10】化合物BのインビトロMN、AmesおよびhERGアッセイの結果を示す。
図11】化合物AについてPELによって測定された逆爆風誘発性認知障害を示す。
図12】化合物BについてPELによって測定された逆爆風誘発性認知障害を示す。
図13】化合物Aについてのラットにおける新規性誘発性食欲不振(NIH)試験の結果を示す。
図14】化合物Bについてのラットにおける新規性誘発性食欲不振(NIH)試験の結果を示す。
図15】化合物Aの鎮痛効果を示す。
図16】化合物Bの鎮痛効果を示す。
図17】化合物AのPorsolt強制水泳試験の結果を示す。
図18】化合物BのPorsolt強制水泳試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、概して、NMDAを調節することができる化合物、例えばNMDAアンタゴニストまたは部分アゴニストと、本開示の化合物を用いる組成物および/または方法とに関する。本開示の化合物は、他のタンパク質標的および/またはNMDA受容体サブタイプを調節し得ることを理解されたい。
【0015】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、飽和直鎖状または分岐鎖状炭化水素、例えば本明細書ではそれぞれC〜Cアルキル、C〜CアルキルおよびC〜Cアルキルと呼ばれる、炭素原子が1〜6個、1〜4個または1〜3個の直鎖状または分岐鎖状の基などを指す。例えば、「C〜Cアルキル」は、1〜6個の炭素原子を含む直鎖状または分枝鎖状の飽和炭化水素を指す。C〜Cアルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチルおよびネオペンチルが含まれるが、これらに限定されない。例示的なアルキル基としては、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、3−メチル−2−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチルおよびヘキシルが挙げられる。
【0016】
本明細書で使用される「シアノ」という用語は、ラジカル−CNを指す。
【0017】
本明細書で使用される「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)および/またはヨード(I)を指す。
【0018】
本明細書で使用される「ヒドロキシ」および「ヒドロキシル」という用語は、ラジカル−OHを指す。
【0019】
本明細書で使用される「化合物」という用語は、本明細書に関連して別段に理解されるか、または化合物の1つの特定の形態(すなわち化合物自体、その特定の立体異性体および/もしくは同位体標識された化合物、または薬学的に許容される塩、水和物、エステルもしくはN−オキシド)に明確に限定されない限り、化合物自体およびその薬学的に許容される塩、水和物、エステルおよびN−オキシドを指し、その様々な立体異性体およびその同位体標識された形態を含む。化合物は、化合物の立体異性体および/または同位体標識化合物の薬学的に許容される塩、または水和物、エステルもしくはN−オキシドを指し得ることを理解されたい。
【0020】
本明細書で使用される「部分」という用語は、化合物または分子の一部を指す。
【0021】
本開示の化合物は、1つ以上のキラル中心および/または二重結合を含み得、したがって幾何異性体およびエナンチオマーまたはジアステレオマーなどの立体異性体として存在し得る。本明細書で使用される場合、「立体異性体」という用語は、化合物のあらゆる幾何異性体、エナンチオマーおよび/またはジアステレオマーからなる。例えば、特定のキラル中心を有する化合物が示されている場合、その化合物のそのキラル中心および他のキラル中心においてそのようなキラリティーがないと示される化合物は、本開示の範囲内である(すなわち、例えば実線または破線のくさび形結合を有する三次元ではなく、「フラット」または「直線的」な結合を有する二次元で示された化合物)。立体特異的化合物は、立体中心炭素原子の周囲にある置換基の立体配置に応じて記号「R」または「S」と表記され得る。本開示は、これらの化合物の様々な立体異性体およびそれらの混合物の全てを包含する。エナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物は、命名法では「(±)」と表記され得るが、当業者は、構造が暗示的にキラル中心を示し得ることを理解するであろう。別段の指示がない限り、化学構造、例えば一般的な化学構造の図形表示は、特定される化合物の全ての立体異性体を包含することが理解される。
【0022】
本明細書で論じられるように、本開示の化合物は、複数のキラル中心を有し得る。各キラル中心は、独立して、R、SまたはRとSとの任意の混合物であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、キラル中心は、R:Sの比が約100:0〜約50:50(「ラセミ体」)、約100:0〜約75:25、約100:0〜約85:15、約100:0〜約90:10、約100:0〜約95:5、約100:0〜約98:2、約100:0〜約99:1、約0:100〜50:50、約0:100〜約25:75、約0:100〜約15:85、約0:100〜約10:90、約0:100〜約5:95、約0:100〜約2:98、約0:100〜約1:99、約75:25〜25:75または約50:50であり得る。1つ以上の異性体(すなわちRおよび/またはS)をより大きい比で含む本開示の化合物の製剤は、開示される化合物または化合物の混合物のラセミ製剤と比べて増強された治療的特徴を有し得る。
【0023】
本開示の化合物の個々のエナンチオマーおよびジアステレオマーは、不斉中心もしくは立体中心を含む市販の出発物質から合成することにより、またはラセミ混合物を調製した後、当業者に周知の分割法により調製することができる。このような分割法の例には、(1)エナンチオマーの混合物とキラル補助基とを結合させ、得られたジアステレオマーの混合物を再結晶もしくはクロマトグラフィーによって分離し、補助基から光学的に純粋な生成物を遊離させる方法、(2)光学活性分割剤を用いる塩の形成、(3)光学エナンチオマーの混合物をキラル液体クロマトグラフ用カラムで直接分離する方法、または(4)立体選択的化学試薬または酵素試薬を用いる速度論的分割がある。ラセミ混合物は、キラル相ガスクロマトグラフィーまたはキラル溶液中の化合物の結晶化などの周知の方法により、その構成成分のエナンチオマーに分割することもできる。新たな立体中心の形成または既存の立体中心の変換の過程で単一の反応物質が不均等な立体異性体の混合物を形成する化学反応または酵素反応である立体選択的合成が当該技術分野で周知である。立体選択的合成は、エナンチオ選択的変換およびジアステレオ選択的変換の両方を包含する。例えば、Carreira and Kvaerno,Classics in Stereoselective Synthesis,Wiley−VCH:Weinheim,2009を参照されたい。
【0024】
本開示の化合物中には、炭素間二重結合周囲の置換基の配置またはシクロアルキルもしくは複素環周囲の置換基の配置により生じる幾何異性体も存在し得る。記号
【化2】

は、本明細書に記載される単結合、二重結合または三重結合であり得る結合を表す。炭素間二重結合周囲の置換基について、「Z」または「E」立体配置であることが示され、ここで、「Z」および「E」という用語は、IUPAC標準に従って使用される。特に明記されない限り、二重結合が記されている構造は、「E」異性体および「Z」異性体の両方を包含する。
【0025】
あるいは、炭素間二重結合周囲の置換基を「シス」または「トランス」と呼ぶことができ、ここで、「シス」は、二重結合の同じ側にある置換基を表し、「トランス」は、二重結合の反対側にある置換基を表す。炭素環周囲の置換基の配置も「シス」または「トランス」と表記され得る。「シス」という用語は、環の面の同じ側にある置換基を表し、「トランス」という用語は、環の面の反対側にある置換基を表す。化合物の混合物は、置換基が環の面の同じ側と反対側との両方に配置されている場合、「シス/トランス」と表記される。
【0026】
本開示はまた、1つ以上の原子が天然に通常みられる原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する原子に置き換わっていること以外、本明細書に記載の化合物と同一である、同位体で標識された化合物を包含する。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体、例えばそれぞれH(「D」)、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18Fおよび36Clなどが挙げられる。例えば、本明細書に記載の化合物は、1つ以上のH原子が重水素に置き換えられる。
【0027】
同位体で標識された特定の化合物(例えば、Hおよび14Cで標識されたもの)は、化合物および/または基質の組織分布アッセイに有用であり得る。トリチウム化(すなわちH)および炭素−14(すなわち14C)同位体は、その調製が容易で検出感度が高いために特に好ましい。さらに、重水素(すなわちH)などのさらに重い同位体で置換することにより、代謝安定性の増大による特定の治療的利点(例えば、インビボ半減期の増大または必要投与量の減少)を得ることができ、したがって状況によってはこのような置換が好ましいものになり得る。同位体で標識された化合物は、一般に、本明細書、例えば実施例の項に開示される方法と同様の方法に従い、非同位体標識試薬を同位体標識試薬に置き換えることによって調製され得る。
【0028】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という表現は、必要に応じて動物またはヒトに投与したときに有害反応、アレルギー反応または他の不都合な反応を引き起こさない化合物、分子的実体、組成物、物質および/または剤形を指す。ヒトに投与する場合、製剤がFDA生物製剤局の基準で求められる無菌性、発熱原性、一般的安全性および純度に関する基準を満たさなければならない。
【0029】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される賦形剤」という表現は、医薬品投与に適合するあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、等張剤および吸収遅延剤などを指す。薬学的に許容される担体は、リン酸緩衝化生理食塩水、水、エマルジョン(例えば、油/水または水/油エマルジョン)および様々なタイプの湿潤剤を含み得る。組成物は、安定化剤および保存剤も含み得る。
【0030】
本明細書で使用される「医薬組成物」という表現は、1つ以上の薬学的に許容される担体と共に製剤化される、本明細書に開示される少なくとも1つの化合物を含む組成物を指す。医薬組成物は、補助的な、追加の、または増強された治療機能をもたらす他の活性化合物も含有し得る。
【0031】
本明細書で使用される「個体」、「患者」および「対象」という用語は、互換的に使用され、哺乳動物、好ましくはマウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマまたは霊長類、より好ましくはヒトを含む任意の動物を包含する。本開示に記載の化合物は、ヒトなどの哺乳動物に投与することができるが、獣医学的治療を必要とする動物、例えば家庭動物(例えば、イヌ、ネコなど)、農業動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)などの他の哺乳動物にも投与することができる。本開示に記載の方法で治療する哺乳動物は、好ましくは、例えば疼痛またはうつ病の治療が望まれる哺乳動物である。
【0032】
本明細書で使用される「治療」という用語は、1つ以上のその症状を含む、病態、疾患、障害などの改善をもたらす任意の効果、例えば緩和、軽減、調節、寛解または消失を包含する。治療は、障害を治癒、改善または少なくとも部分的に回復させるものであり得る。
【0033】
「障害」という用語は、別段の指示がない限り、「疾患」、「病態」または「病気」という用語を指し、それらと互換的に使用される。
本明細書で使用される「調節」という用語は、アンタゴニズム(例えば、阻害)、アゴニズム、部分的アンタゴニズムおよび/または部分的アゴニズムを指し、これらを包含する。
【0034】
本明細書で使用される「薬学的有効量」および「治療有効量」という表現は、研究者、獣医、医師または他の臨床医が求める組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を引き起こす、化合物(例えば、開示される化合物)の量を指す。本開示に記載の化合物を、疾患を治療するために治療有効量で投与することができる。化合物の治療有効量は、うつ病などの疾患または障害の症状の軽減をもたらす量など、所望の治療および/または予防効果を得るのに必要な量であり得る。
【0035】
本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」という表現は、本開示の化合物中に存在し得、かつ/または本開示の化合物中で使用され得る酸性または塩基性基の塩を指す。本開示の化合物の薬学的に許容される塩(例えば、酸または塩基)は、患者への投与時、本発明の化合物またはその活性代謝物もしくは残渣を提供することができる。
【0036】
本発明の組成物中に含まれる本来塩基性の化合物は、様々な無機酸および有機酸と多様な塩を形成することができる。このような塩基性化合物の薬学的に許容される酸付加塩の調製に使用し得る酸には、非毒性酸付加塩、すなわち、限定されないが、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、過リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロナート(glucaronate)、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(すなわち1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトアート))を含む、薬理学的に許容される陰イオンを含む塩を形成する酸がある。本発明の組成物中に含まれる本来酸性の化合物は、様々な薬理学的に許容される陽イオンと塩基性塩を形成することができる。このような塩の例としては、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、特にカルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、カリウム塩および鉄塩が挙げられる。本発明の組成物中に含まれる塩基性または酸性部分を含む化合物は、様々なアミノ酸と薬学的に許容される塩も形成し得る。本開示の化合物は、酸性基および塩基性基の両方、例えば1つのアミノ基と1つのカルボン酸基とを含有し得る。そのような場合、化合物は、酸付加塩、両性イオンまたは塩基塩として存在し得る。
【0037】
本明細書に開示される化合物は、水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒との溶媒和形態および非溶媒和形態として存在し得、本開示は、溶媒和形態と非溶媒和形態との両方を包含することが意図される。いくつかの実施形態では、化合物は、非晶質である。特定の実施形態では、化合物は、単一の多形である。様々な実施形態では、化合物は、多形の混合物である。特定の実施形態では、化合物は、結晶形態である。
【0038】
本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、インビボで変換されて開示の化合物またはその化合物の薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を生じる化合物を指す。この変換は、様々な場所(腸管腔内または腸管、血液もしくは肝臓内の通過時など)において様々な機序(エステラーゼ、アミダーゼ、ホスファターゼ、酸化的および/または還元的代謝など)によって起こり得る。プロドラッグは、当該技術分野で周知である(例えば、Rautio,Kumpulainen et al.,Nature Reviews Drug Discovery 2008,7,255を参照されたい)。例えば、本明細書に記載の化合物またはその化合物の薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物がカルボン酸官能基を含む場合、プロドラッグは、カルボン酸基の水素原子が、(C〜C)アルキル、(C〜C12)アルカノイルオキシメチル、炭素原子を4〜9個有する1−(アルカノイルオキシ)エチル、炭素原子を5〜10個有する1−メチル−1−(アルカノイルオキシ)−エチル、炭素原子を3〜6個有するアルコキシカルボニルオキシメチル、炭素原子を4〜7個有する1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、炭素原子を5〜8個有する1−メチル−1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、炭素原子を3〜9個有するN−(アルコキシカルボニル)アミノメチル、炭素原子を4〜10個有する1−(N(アルコキシカルボニル)アミノ)エチル、3−フタリジル、4−クロトノラクトニル、γ−ブチロラクトン−4−イル、ジ−N,N−(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル(β−ジメチルアミノエチルなど)、カルバモイル−(C〜C)アルキル、N,N−ジ(C〜C)アルキルカルバモイル−(C〜C)アルキル、ピペリジノ−(C〜C)アルキル、ピロリジノ−(C〜C)アルキルまたはモルホリノ(C〜C)アルキルなどの基に置換されることによって形成されるエステルであり得る。
【0039】
同様に、本明細書に記載の化合物がアルコール官能基を含む場合、プロドラッグは、アルコール基の水素原子の、(C〜C)アルカノイルオキシメチル、1−((C〜C)アルカノイルオキシ)エチル、1−メチル−1−((C〜C)アルカノイルオキシ)エチル(C〜C)アルコキシカルボニルオキシメチル、N−(C〜C)アルコキシカルボニルアミノメチル、スクシノイル、(C〜C)アルカノイル、α−アミノ(C〜C)アルカノイル、アリールアシル、およびα−アミノアシルまたはα−アミノアシル−α−アミノアシル(ここで、α−アミノアシル基のそれぞれは、独立して、天然のL−アミノ酸、P(O)(OH)、P(O)(O(C〜C)アルキル)またはグリコシル(ヘミアセタール型炭水化物のヒドロキシル基の除去によって生じるラジカル)から選択される)などの基による置き換えによって形成され得る。
【0040】
本明細書に記載の化合物にアミン官能基を組み込む場合、プロドラッグは、例えば、アミドまたはカルバミン酸エステル、N−アシルオキシアルキル誘導体、(オキソジオキソレニル)メチル誘導体、N−マンニッヒ塩基、イミンまたはエナミンの生成によって形成され得る。さらに、第二級アミンが代謝的に切断されて生物活性第一級アミンを生じ得るか、または第三級アミンが代謝的に切断されて生物活性第一級または第二級アミンを生じ得る。例えば、Simplicio et al.,Molecules 2008,13,519およびその参考文献を参照されたい。
【0041】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的用語および科学的用語は、本開示が関係する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
本明細書全体を通して、組成物およびキットが特定の構成要素を有する、包含する、もしくは含むと記載される場合、またはプロセスおよび方法が特定の工程を有する、包含する、または含むと記載される場合、列挙された構成要素から本質的になるかまたはそれらからなる本開示の組成物およびキットが存在すること、および列挙されたプロセス工程から本質的になるかまたはそれらからなる本開示によるプロセスおよび方法が存在することがさらに企図される。
【0042】
本出願では、要素または構成要素が、列挙された要素または構成要素のリストに含まれかつ/またはそれから選択されると言われる場合、その要素または構成要素は、列挙された要素または構成要素のいずれか1つであり得るか、またはその要素または構成要素は、列挙された要素または構成要素の2つ以上からなる群から選択され得ることを理解されたい。
【0043】
さらに、本明細書において、明示的または暗示的にかかわらず、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の組成物または方法の要素および/または特徴を様々な方法で組み合わせ得ることを理解されたい。例えば、特定の化合物に言及される場合、その化合物は、文脈から別段の理解がない限り、本開示の組成物の様々な実施形態および/または本開示の方法において使用され得る。換言すれば、本出願において、実施形態は、明瞭かつ簡潔な適用が記述されかつ描かれることを可能にするように説明されかつ示されてきたが、本教示および本開示から逸脱することなく、実施形態を様々に組み合わせ得るかまたは分離し得ることが意図され、それが理解されるであろう。例えば、本明細書に記載され示された全ての特徴は、本明細書に記載されかつ示された本開示の全ての態様に適用可能であり得ることが理解されるであろう。
【0044】
文脈が不適切でない限り、「1つの(a)」および「1つの(an)」という冠詞は、本開示では、冠詞の文法的目的語の1つ以上(すなわち少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0045】
本開示における「および/または」という用語は、他に示されない限り、「および」または「または」のいずれかを意味するために使用される。
【0046】
「少なくとも1つ」という表現は、文脈および用法から別段に理解されない限り、表現の後に列挙される対象のそれぞれおよび列挙される対象の2つ以上の様々な組み合わせを個々に含むことを理解されたい。3つ以上の列挙された対象に関連する「および/または」という表現は、文脈から別段の理解がない限り、同じ意味を有するものと理解されたい。
【0047】
「含む(include)」、「含む(includes)」、「含んでいる」、「有する(have)」、「有する(has)」、「有している」、「含有する(contain)」、「含有する(contains)」または「含有している」という用語の使用は、それらの文法的均等物を含み、特に別段の記述または文脈からの理解がない限り、一般的にオープンエンドかつ非限定的であり、例えば、記載のない追加的な要素または工程を排除しないことを理解されたい。
【0048】
「約」という用語の使用が定量値の前にある場合、別段の特定の記述のない限り、本開示は、特定の定量値自体も含む。本明細書中で使用される「約」という用語は、別段の指示または推論がない限り、公称値から±10%の変動を指す。
【0049】
組成物中の成分または物質の量に関してパーセンテージが提供される場合、パーセンテージは、別段の記述または文脈からの理解がない限り、重量に基づくパーセンテージであることを理解されたい。
【0050】
分子量が提供され、それが例えばポリマーの絶対値でない場合、別段の記載または文脈からの理解がない限り、その分子量は、平均分子量であると理解されたい。
【0051】
本開示が実施可能なままである限り、工程の順序または特定の動作を実行するための順序は重要でないことを理解されたい。さらに、2つ以上の工程または動作を同時に実行することができる。
【0052】
本明細書中の様々な箇所において、置換基は、群または範囲で開示される。本明細書は、そのような群および範囲のメンバーのそれぞれおよび全ての個々のサブコンビネーションを含むことが特に意図される。例えば、「C1−6アルキル」という用語は、具体的には、C、C、C、C、C、C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜CおよびC〜Cを個々に開示することが意図される。他の例として、0〜40の範囲の整数は、具体的には、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39および40を個々に開示することが意図され、0〜20の範囲の整数は、具体的には、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20を個々に開示することが意図される。さらなる例として、「1〜5個の置換基で任意に置換された」という表現は、具体的には、0、1、2、3、4、5、0〜5、0〜4、0〜3、0〜2、0〜1、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2、2〜5、2〜4、2〜3、3〜5、3〜4および4〜5個の置換基を含み得る化学基を個々に開示することが意図されることが含まれる。
【0053】
本明細書の任意のおよび全ての例または例示的な文言、例えば「〜などの」または「〜を含む」の使用は、単に本開示をよりよく説明することを意図したものであり、特許請求の範囲に記載されていない限り、本開示の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる文言も、本開示の実施に必須であると主張されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0054】
さらに、変数が定義を伴わない場合、その変数は、文脈から異なって理解されない限り、開示の別の箇所に見出されるように定義される。さらに、各変数および/または置換基、例えばC〜Cアルキル、R、R、wなどの定義は、それが任意の構造または化合物において2回以上出現する場合、同じ構造または化合物における他の箇所での定義から独立したものであり得る。
【0055】
本明細書の式および/または化合物における変数および/または置換基の定義は、複数の化学基を包含する。本開示は、例えば、i)変数および/または置換基の定義が、本明細書に記載の化学基から選択される単一の化学基であり、かつii)定義が、本明細書に記載のものから選択される2つ以上の化学基の集合体であり、iii)化合物が、変数および/または置換基が(i)または(ii)によって定義される変数および/または置換基の組み合わせによって定義される、実施形態を含む。
【0056】
本開示の様々な態様は、本明細書において、明確性のために見出しおよび/またはセクションの下に記載されるが、1つの特定のセクションに記載される本開示の全ての態様、実施形態または特徴は、その特定のセクションに限定されるのではなく、むしろ本開示の任意の態様、実施形態または特徴に適用され得ることが理解される。
【0057】
化合物
開示される化合物は、式:
【化3】
(I)
(式中、Rは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノおよびC〜Cアルキルからなる群から選択され、Rは、水素、ハロゲンおよびC〜Cアルキルからなる群から選択され、およびRは、水素、ハロゲンおよびC〜Cアルキルからなる群から選択される)
を有する化合物またはその立体異性体、N−オキシドおよび/もしくは薬学的に許容される塩を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、Rは、水素である。特定の実施形態では、Rは、C−Cアルキル、例えばメチル(CH)である。
【0059】
いくつかの実施形態では、Rは、水素である。特定の実施形態では、Rは、C−Cアルキル、例えばメチル(CH)である。
【0060】
いくつかの実施形態(本明細書に記載の実施形態のいずれかを含む)では、Rは、水素である。いくつかの実施形態では、Rは、C−Cアルキル、例えばメチル(CH)である。
【0061】
様々な実施形態において、開示される化合物は、式:
【化4】
またはその立体異性体、N−オキシドおよび/もしくは薬学的に許容される塩を有する。
【0062】
いくつかの実施形態では、化合物は、実施例に記載の化合物から選択される。
【0063】
特定の実施形態において、開示される化合物は、式:
【化5】
またはそのN−オキシドおよび/もしくは薬学的に許容される塩を有する。
【0064】
特定の実施形態において、開示される化合物は、式:
【化6】
またはそのN−オキシドおよび/もしくは薬学的に許容される塩を有する。
【0065】
開示される化合物は、効率的なNMDA受容体の陽イオンチャネル開口をもたらし得、例えば、NMDA受容体のグルタミン酸部位と結合または会合して、陽イオンチャネルを開口することを補助し得る。本開示の化合物を用いて、アゴニストとしての作用を介してNMDA受容体を調節する(オンまたはオフにする)ことができる。
【0066】
本明細書に記載の化合物は、いくつかの実施形態では、特定のNMDA受容体サブタイプに結合する。例えば、開示される化合物は、1つのNMDAサブタイプに結合し得、かつ別のNMDAサブタイプに結合し得ない。特定の実施形態では、開示される化合物は、1つまたは2つ以上のNMDAサブタイプに結合し得、かつ/または例えば特定の他のNMDAサブタイプに対して実質的により少ない(または実質的にない)結合活性を有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、開示される化合物(例えば、化合物A)は、NR2Aに結合し、かつNR2Dに実質的に結合しない。いくつかの実施形態では、開示される化合物(例えば、化合物B)は、NR2BおよびNR2Dに結合し、かつNR2AおよびNR2Cとの結合が実質的により低い。
【0067】
本明細書に記載の化合物は、グリシン部位NMDA受容体部分アゴニストであり得る。これに関連して使用される部分アゴニストは、低濃度では類似体がアゴニストとして作用し、高濃度では類似体がアンタゴニストとして作用することを意味することが理解されるであろう。グリシン結合は、グルタミン酸によってもグルタミン酸の競合阻害剤によっても阻害されることはなく、またNMDA受容体上のグルタミン酸と同じ部位で結合しない。NMDA受容体には第2の別のグリシン結合部位が存在する。したがって、NMDA受容体のリガンド依存性イオンチャネルは、少なくともこの2つの異なるアロステリック部位の制御下にある。開示される化合物は、NMDA受容体のグリシン結合部位と結合または会合することができる部位であり得る。いくつかの実施形態では、開示される化合物は、既存のNMDA受容体グリシン部位部分アゴニストの活性の10倍以上の効力を有する。
【0068】
本開示の化合物は、高い治療指数を示し得る。本明細書で使用される治療指数は、集団の50%に毒性を引き起こす用量(すなわちTD50)と、集団の50%に最小有効用量(すなわちED50)との比を指す。したがって、治療指数=(TD50):(ED50)である。いくつかの実施形態では、開示される化合物は、治療指数が少なくとも約10:1、少なくとも約50:1、少なくとも約100:1、少なくとも約200:1、少なくとも約500:1または少なくとも約1000:1である。
【0069】
組成物
他の態様では、本開示の化合物と、任意に薬学的に許容される賦形剤とを含む製剤および組成物が提供される。いくつかの実施形態では、製剤は、1つ以上の本開示の化合物のラセミ混合物を含む。
【0070】
製剤は、使用のための任意の様々な形態で調製され得る。限定するものではなく、例を挙げると、化合物は、製剤技術分野で知られている、それを必要とする患者に活性な薬剤を投与するための経口投与、皮下注射または他の方法に適した製剤に調製され得る。例えば、本開示の医薬組成物は、眼への送達に適し得る。関連する方法は、開示される化合物または開示される化合物を含む医薬組成物の薬学的有効量を、それを必要とする患者、例えば患者の眼に投与することを含み得、ここで、投与は、局所的、結膜下、網膜下、硝子体内、眼球後部、眼球周囲、前房内および/または全身的であり得る。
【0071】
製剤中の本明細書に記載される開示化合物の量は、個体の病的状態、年齢、性別および体重などの要因によって異なり得る。投与レジメンは、最適な治療応答を提供するように調節され得る。例えば、単回ボーラスを投与し得、または複数の分割用量を、時間をかけて投与し得、または治療状況の緊急度に応じて用量を増減させ得る。投与を容易にし、かつ用量を均一にするため、非経口組成物を投与単位形態で製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される投与単位形態は、治療する哺乳動物対象に対する単位用量として適した物理的に分離した単位を指し、各単位には、所望の治療効果が得られるよう計算された所定量の活性化合物が必要な医薬担体と共に含まれている。
【0072】
投与単位形態の仕様は、(a)選択する化合物の固有の特徴および達成するべき特定の治療効果、ならびに(b)個体の感度を治療するためのこのような活性化合物の合成技術分野に本来存在する制限によって決まり、これに直接依存する。
【0073】
治療用組成物は、通常、製造および保管条件下で無菌および安定でなければならない。組成物を、薬物濃度を高めるのに適した溶液、微細乳濁液、リポソームまたは他の秩序構造として製剤化することができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびその適した混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどの使用により、分散液の場合に必要とされる粒子径を維持することにより、かつ界面活性剤の使用により維持することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコールまたは塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含ませることにより、その持続的吸収をもたらすことができる。
【0074】
化合物を徐放性製剤、例えば徐放ポリマーを含む組成物において投与することができる。化合物は、埋込物およびマイクロカプセル送達システムを含む徐放製剤など、化合物を即時放出から保護する担体を用いて調製することができる。生分解性生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸およびポリ乳酸、ポリグリコール酸コポリマー(PLG)などを使用することができる。このような製剤を調製するための多数の方法が当業者に一般的に知られている。
【0075】
必要量の化合物を、必要に応じて上に挙げた成分の1つまたはその組合せと共に適切な溶媒に組み込んだ後、濾過滅菌することにより、無菌注射用液剤を調製することができる。一般に、基礎となる分散媒と、上に挙げたもののうちの必要とされる他の成分とを含有する無菌賦形剤に活性化合物を組み込むことにより、分散液剤を調製する。無菌注射用液剤を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法には、有効成分と任意の追加の所望成分の粉末とが予め滅菌濾過したその溶液から得られる、真空乾燥および凍結乾燥がある。
【0076】
代替的な態様によれば、化合物を、その化合物の溶解性を増強する1つ以上の追加の化合物と共に製剤化し得る。
【0077】
方法
治療有効量または治療有効用量の本明細書に記載の化合物を投与することにより、病態の治療を、それを必要とする患者において行う方法が提供される。いくつかの実施形態では、病態は、精神病態であり得る。例えば、精神疾患を治療し得る。別の態様では、神経系病態を治療し得る。例えば、中枢神経系、末梢神経系および/または眼球に発症する病態を治療し得る。いくつかの実施形態では、神経変性疾患を治療し得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、本方法は、自閉症、不安、うつ病、双極性障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害(ADHD)、統合失調症、精神病性障害、精神病症状、社会的引きこもり、強迫性障害(OCD)、恐怖症、心的外傷後ストレス症候群、行動障害、衝動制御障害、物質乱用障害(例えば、離脱症状、アヘン中毒、ニコチン中毒およびエタノール中毒)、睡眠障害、記憶障害(例えば、欠如、喪失または新たに記憶する能力の低下)、学習障害、尿失禁、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、フリードリヒ運動失調症、ダウン症候群、脆弱X症候群、結節性硬化症、オリーブ橋小脳萎縮症、脳性麻痺、薬物性視神経炎、虚血性網膜症、糖尿病性網膜症、緑内障、認知症、AIDS認知症、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、痙攣、ミオクローヌス、筋痙攣、点頭痙攣、トゥレット症候群、癲癇、脳虚血、脳卒中、脳腫瘍、外傷性脳損傷、心停止、脊髄症、脊髄損傷、末梢性ニューロパチー、急性神経因性疼痛および慢性神経因性疼痛に罹患している患者を治療するための化合物を投与することを含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、加齢による記憶障害、統合失調症、特殊学習障害、発作、脳卒中後の痙攣、脳虚血、低血糖、心停止、癲癇、レヴィー小体型認知症、片頭痛、AIDS認知症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、初期アルツハイマー病およびアルツハイマー病を治療する方法が提供される。
【0080】
特定の実施形態では、統合失調症を治療する方法が提供される。例えば、本明細書に記載の方法および組成物を用いて、妄想型統合失調症、解体型統合失調症(すなわち、破瓜型統合失調症)、緊張型統合失調症、鑑別不能型統合失調症、残遺型統合失調症、統合失調症後抑うつおよび単純型統合失調症を治療し得る。また、本明細書に記載の組成物を用いて、精神病性障害、例えば統合失調感情障害、妄想性障害、短期精神病性障害破、妄想または幻覚を伴う共有精神病性障害および精神病性障害などを治療し得る。
【0081】
妄想型統合失調症の特徴は、妄想または幻覚がみられるが、思考障害、解体した行動または感情鈍麻がみられないことであり得る。妄想は、被害妄想および/または誇大妄想であり得るが、これらに加えて嫉妬、信心深さまたは身体化などの他のテーマがみられる場合もある。解体型統合失調症の特徴は、思考障害と感情鈍麻とが共にみられることであり得る。緊張型統合失調症は、患者がほとんど不動であったり、興奮した無目的な動きを示したりすることであり得る。症状には、緊張病性昏迷および蝋屈症が含まれ得る。鑑別不能型統合失調症の特徴は、精神病症状がみられるが、妄想型、解体型または緊張型のいずれの基準も満たさないことであり得る。残遺型統合失調症の特徴は、陽性症状が軽度にみられるにとどまることであり得る。統合失調症後抑うつの特徴は、統合失調症の影響でうつ病エピソードが生じ、依然として低レベルの統合失調症の症状が一部みられることであり得る。単純型統合失調症は、精神病エピソードの病歴がなく、顕著な陰性症状が穏やかに進行することを特徴とし得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、限定されないが、双極性障害、境界性パーソナリティ障害、薬物中毒および薬物誘発性精神病を含む他の精神障害にみられ得る精神病症状を治療する方法が提供される。特定の実施形態では、例えば妄想性障害にみられ得る妄想(例えば、「奇異ではない」妄想)を治療する方法が提供される。
【0083】
様々な実施形態では、限定されないが、社会不安障害、回避性パーソナリティ障害および統合失調型パーソナリティ障害を含む病態にみられる社会的引きこもりを治療する方法が提供される。
【0084】
いくつかの実施形態では、本開示は、シナプス機能不全に関連する神経発達障害の治療を、それを必要とする患者において行うための方法を提供し、ここで、方法は、一般に、治療有効量の開示化合物または開示化合物を含む医薬組成物を患者に投与することを含む。特定の実施形態では、シナプス機能不全に関連する神経発達障害は、脳萎縮性高アンモニア血症、MECP2重複症候群(例えば、MECP2障害)、CDKL5症候群、脆弱X症候群(例えば、FMR1障害)、結節硬化症(例えば、TSC1障害および/またはTSC2障害)、神経線維腫症(例えば、NF1障害)、アンジェルマン症候群(例えば、UBE3A障害)、PTEN過誤腫腫瘍症候群、Phelan−McDermid症候群(例えば、SHANK3障害)、または乳児痙攣としても知られるレット症候群であり得る。特定の実施形態において、神経発達障害は、ニューロリジン(例えば、NLGN3障害および/またはNLGN2障害)および/またはニューレキシン(例えば、NRXN1障害)の突然変異によって引き起こされ得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、神経因性疼痛を治療する方法が提供される。神経因性疼痛は、急性または慢性であり得る。いくつかの場合、神経因性疼痛は、ヘルペス、HIV、外傷性神経損傷、脳卒中、虚血後、慢性背部痛、ヘルペス後神経痛、線維筋痛症、反射性交感神経性ジストロフィー、複合性局所疼痛症候群、脊髄損傷、坐骨神経痛、幻肢痛、糖尿病性末梢神経障害(DPN)などの糖尿病性ニューロパチー、および癌化学療法による神経因性疼痛などの病態に関連し得る。また、疼痛緩和を増強する方法および患者に鎮痛をもたらす方法も提供される。
【0086】
様々な実施形態では、本開示の方法は、患者に有効量の開示される化合物を投与することを含む、自閉症および/または自閉症スペクトラム障害の治療を、それを必要とする患者において行う方法を含む。いくつかの実施形態では、自閉症の症状の軽減を、それを必要とする患者において行う方法が提供され、ここで、方法は、患者に有効量の開示される化合物を投与することを含む。例えば、化合物を投与することにより、自閉症の症状、例えば視線を合わせない、人付き合いができない、注意欠陥、情緒が乏しい、多動性、音に異常に過敏である、不適切な会話、睡眠障害および固執などの1つ以上の症状の発生頻度が低下し得る。そのような発生頻度の低下は、未治療の個体での発生頻度と比較して測定されたものであり得る。
【0087】
本明細書では、細胞と、有効量の本明細書に記載の化合物とを接触させることを含む、細胞内での自閉症標的遺伝子発現を調節する方法も提供される。自閉症遺伝子発現は、例えば、ABAT、APOE、CHRNA4、GABRA5、GFAP、GRIN2A、PDYNおよびPENKから選択され得る。特定の実施形態では、患者に有効量の化合物を投与することを含む、シナプス可塑性に関連する障害に罹患している患者のシナプス可塑性を調節する方法が提供される。
【0088】
いくつかの実施形態では、化合物を投与することを含む、アルツハイマー病の治療を、それを必要とする患者において行う方法、または例えば初期アルツハイマー病に伴って起こる記憶喪失の治療が提供される。本明細書では、アルツハイマー病アミロイドタンパク質と、有効量の開示の化合物とを接触させることを含む、インビトロまたはインビボ(例えば、細胞内)でアルツハイマー病アミロイドタンパク質(例えば、βアミロイドペプチド、例えばアイソフォームAβ1−42)を調節する方法も提供される。例えば、いくつかの実施形態では、化合物により、このようなアミロイドタンパク質が海馬スライス内で長期増強を阻害する能力およびアポトーシスによる神経細胞死を阻止し得る。いくつかの実施形態では、開示の化合物は、それを必要とするアルツハイマー病患者に神経保護特性、例えば後期アルツハイマー病による神経細胞死に対する治療効果をもたらし得る。
【0089】
特定の実施形態では、開示される方法は、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症(ALSまたはルーゲーリック病)、多発性硬化症、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、認知症および/またはパーキンソン病などの別の病状によって誘発される精神病または仮性球情動(「PBA」)を治療することを含む。そのような方法は、本開示の他の方法と同様に、開示された化合物の薬学的有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0090】
様々な実施形態では、本明細書に記載の化合物を投与することを含む、うつ病を治療する方法が提供される。いくつかの実施形態では、治療は、行動または運動協調性に影響を及ぼさず、また発作活動を誘発または促進せずにうつ病またはうつ病の症状を緩和し得る。この態様による治療の対象となることが予想される例示的なうつ病の病態としては、限定されないが、大うつ病性障害、気分変調性障害、精神病性うつ病、産後うつ病、月経前症候群、月経前不快気分障害、季節性感情障害(SAD)、双極性障害(または躁うつ性障害)、気分障害、慢性の医学的状態、例えば癌または慢性疼痛、化学療法、慢性ストレスなどを原因とするうつ病および心的外傷後ストレス障害が挙げられる。さらに、いずれかの形態のうつ病に罹患している患者では、多くの場合に不安が認められる。不安を原因とする様々な症状としては、特に恐怖、パニック、心臓の動悸、息切れ、疲労、嘔気および頭痛が挙げられる。本明細書に記載の化合物を投与することにより、不安またはそのいずれかの症状を治療し得る。
【0091】
本明細書では、治療抵抗性患者、例えば少なくとも1つもしくは少なくとも2つの化合物もしくは治療剤による適切な治療が奏効せず、かつ/またはこれまで奏効しなかった精神もしくは中枢神経系の病態に罹患している患者の病態を治療する方法も提供される。例えば、本明細書では、a)患者が治療抵抗性であることを任意に確認することと、b)前記患者に有効量の化合物を投与することとを含む、治療抵抗性患者のうつ病を治療する方法が提供される。
【0092】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物を患者の急性治療に使用し得る。例えば、化合物を患者に投与して、本明細書に記載の病態の特定のエピソード(例えば、重症エピソード)を治療する。
【0093】
本明細書には、1つ以上の他の活性薬剤と組み合わせた開示される化合物を含む併用療法も含まれる。例えば、開示される化合物を1つ以上の抗うつ薬、例えば三環系抗うつ薬、MAO−I、SSRI、二重取込み阻害剤、三重取込み阻害剤などおよび/または抗不安薬と組み合わせ得る。化合物と併用し得る例示的な薬物としては、アナフラニール、アダピン、アベンチル、エラビル、ノルプラミン、パメロール、パートフラン、セネクアン、スルモンチール、トフラニール、ビバクティル、パルネート、ナーディル、マープラン、レクサプロ、ルボックス、パキシル、プロザック、ゾロフト、ウエルバトリン、エフェクサー、レメロン、サインバルタ、デシレル(トラゾドン)およびルジオミールが挙げられる。他の例では、化合物を抗精神病薬と組み合わせ得る。抗精神病薬の非限定的な例としては、ブチロフェノン、フェノチアジン、チオキサンテン、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、アセナピン、パリペリドン、イロペリドン、ゾテピン、セルチンドール、ルラシドンおよびアリピプラゾールが挙げられる。化合物と1つ以上の上記治療剤との組合せは、任意の適切な病態の治療に使用され得、抗うつ薬または抗精神病薬としての使用に限定されないことを理解するべきである。
【実施例】
【0094】
以下の実施例は、単に例示目的で提供され、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0095】
以下の略語を本明細書で使用することができ、それらは、以下に示す定義を有する:Acは、アセチル(−C(O)CH)であり、AIDSは、後天性免疫不全症候群であり、BocおよびBOCは、tert−ブトキシカルボニルであり、BocOは、ジ−tert−ブチルジカーボネートであり、Bnは、ベンジルであり、BOM−Clは、塩化ベンジルオキシメチルであり、CANは、硝酸セリウムアンモニウムであり、Cbzは、カルボキシベンジルであり、DCMは、ジクロロメタンであり、DIADは、ジイソプロピルアゾジカルボキシレートであり、DIPEAは、N,N−ジイソプロピルエチルアミンであり、DMAPは、4−ジメチルアミノピリジンであり、DMFは、N,N−ジメチルホルムアミドであり、DMSOは、ジメチルスルホキシドであり、EDCおよびEDCIは、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩であり、ESIは、エレクトロスプレーイオン化であり、EtOAcは、酢酸エチルであり、Glyは、グリシンであり、hは、時間であり、HATUは、2−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートであり、HIVは、ヒト免疫不全ウイルスであり、HOBtは、ヒドロキシベンゾトリアゾールであり、HPLCは、高速液体クロマトグラフィーであり、LCMSは、液体クロマトグラフィー/質量分析法であり、LDAは、リチウムジイソプロピルアミドであり、LiHMDSは、リチウムヘキサメチルジシラザンであり、MTBEは、メチルtert−ブチルエーテルであり、NMDARは、N−メチル−d−アスパルテート受容体であり、NMPは、N−メチル−2−ピロリドンであり、NMRは、核磁気共鳴であり、Pd/Cは、炭素上パラジウムであり、PMBは、パラメトキシベンジルであり、RTは、室温(例えば、約20℃〜約25℃)であり、TBSおよびTBDMSは、tert−ブチルジメチルシリルであり、TEAは、トリエチルアミンであり、TLCは、薄層クロマトグラフィーであり、TFAは、トリフルオロ酢酸であり、THFは、テトラヒドロフランであり、TMSは、トリメチルシリルであり、TMSCNは、トリメチルシリルシアニドであり、TPPは、トリフェニルホスフィンである。
【0096】
実施例1 − 化合物Aおよび化合物Aマレイン酸塩の合成
【化7】
(3R、7aS)−3−(トリクロロメチル)テトラヒドロ−1H,3H−ピロロ[1,2−c]オキサゾール−1−オン(1)の合成:
クロロホルム(50L)中のL−プロリン(2.0kg、0.017mol)の懸濁液に室温で抱水クロラール(5.7kg、0.034mol)を添加した。反応混合物をリバースディーンスターク装置下で60℃に加熱し、得られた水を収集した。16時間後、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗固体を冷エタノールで洗浄し、濾過し、乾燥させて化合物1(2.2kg、57%)を白色固体として得た。H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ5.82(s,1H),4.11−4.08(m,1H),3.33−3.27(m,2H),3.19−3.14(m,1H),2.15−2.10(m,1H),1.96−1.91(m,1H),1.80−1.74(m,1H),1.65−1.58(m,1H).
【0097】
(3R、7aR)−7a−((ベンジルオキシ)メチル)−3−(トリクロロメチル)テトラヒドロ−1H,3H−ピロロ[1,2−c]オキサゾール−1−オン(2)の合成:
ジイソプロピルアミン(221.2mL、1.533mol)のTHF(870mL)溶液に窒素雰囲気下において−78℃でn−BuLi(ヘキサン中1.6M)(958.5mL、1.533mol)を滴下した。添加終了後、反応混合物の温度を−20℃に上げ、1時間撹拌した。再び−78℃に冷却し、THF(1L)中の化合物1(250g、1.022mol)を加え、30分間撹拌した。次いで、ベンジルクロロメチルエーテル(208mL、1.329mol)を滴下し、1時間撹拌を続けた。出発物質が消費された後(TLCによる)、氷冷水(100mL)で反応混合物の反応を停止させ、EtO(2×100mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して粗化合物を得、これを10%EtOAc/n−ヘキサンで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物2(220g、粗製)を褐色の粘度の高いシロップとして得た。H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ7.42−7.26(m,5H),5.60(s,1H),4.59−4.53(d,2H),3.67−3.61(m,2H),3.37−3.33(m,1H),3.31−3.10(m,1H),2.12−1.99(m,2H),1.87−1.75(m,2H);LCMS(ESI):m/z363.9[M+1].
【0098】
メチル(R)−2−((ベンジルオキシ)メチル)ピロリジン−2−カルボキシレート塩酸塩(3)の合成:
化合物2(400g、1.096mol)のメタノール(1L)溶液に室温でMeOH(1.64L、3.29mol)中の2N HClを添加し、80℃で16時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。得られた粗生成物をヘキサン(3×750mL)で洗浄し、減圧下で乾燥させて、化合物3(358g、粗製)を、赤味を帯びた粘度の高いシロップとして得た。H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ10.40(br s,1H),7.40−7.21(m,5H),4.64−4.50(d,2H),4.49−4.3(d,2H),3.76(s,3H),3.33−3.22(m,2H),2.22−2.15(s,1H),2.02−1.9(m,2H),1.95−1.83(m,1H).
【0099】
1−(tert−ブチル)2−メチル(R)−2−((ベンジルオキシ)メチル)ピロリジン−1,2−ジカルボキシレート(4)の合成:
DCM(2.19L)中の化合物3(313g、粗製1.096mol)の撹拌懸濁液に窒素雰囲気下において0℃でEtN(458.4mL、3.288mol)を滴下し、10分間撹拌した。次いで、Boc無水物(358.4g、1.644mol)を0℃で滴下した。反応混合物を室温にし、16時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応物を水(2×1L)で希釈し、CHCl(2×500mL)で抽出した。合わせた有機層を10%クエン酸(pH〜7)およびブライン溶液(1L)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して粗化合物を得、これを20%EtOAc/n−ヘキサンで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物4(215g、56%)を無色の粘度の高いシロップとして得た。H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ7.37−7.26(m,5H),4.56−4.48(m,2H),4.03−3.87(dd,1H),3.69−3.67(d,1H),3.62(s,3H),3.53−3.47(m,1H),3.33−3.30(m,1H),2.27−2.20(m,1H),2.03−1.89(m,2H),1.88−1.79(m,1H),1.46−1.24(2s,9H);LCMS(ESI):m/z250.1[(M+1)−Boc].
【0100】
(R)−2−((ベンジルオキシ)メチル)−1−(tert−ブトキシカルボニル)ピロリジン−2−カルボン酸(5)の合成:
化合物4(215g、0.616mol)のMeOH:THF:HO(3L、5:5:3)溶液にNaOH(73.9g、1.848mol)を添加し、室温で10分間撹拌した。反応混合物を80℃に加熱し、16時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応混合物を室温にし、揮発性物質を蒸発させた。粗物質を水(1L)で希釈し、EtO(2×500mL)で抽出した。分離した水層を、2N HCl溶液(pH〜3)を用いて酸性化し、DCM(2×750mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮して、化合物5(170g、82.4%)をオフホワイトの固体として得た。H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ12.66(br s,1H),7.36−7.26(m,5H),4.54−4.47(m,2H),4.05−3.90(dd,1H),3.88−3.63(d,1H),3.63−3.44(m,1H),3.34−3.27(m,1H),2.27−2.01(m,1H),2.02−1.8(m,2H),1.79−1.76(m,1H),1.17−1.14(2s,9H);LCMS(ESI):m/z235.1[(M+1)−Boc].
【0101】
(R)−1−(tert−ブトキシカルボニル)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−2−カルボン酸(6)の合成:
CHOH(1L)中の化合物5(170g、0.507mol)の撹拌溶液に50%湿10%Pd−C(68g)を室温で添加し、H雰囲気下で16時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応混合物をセライトパッドで濾過し、パッドをCHOH(1L)で洗浄した。得られた濾液を減圧下で濃縮して、化合物6(110g、88%)を白色固体として得た。H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ12.66(br s,1H),3.96−3.83(dd,1H),3.63−3.60(m,1H),3.49−3.46(m,1H),3.34−3.25(m,2H),2.30−2.15(m,1H),1.95−1.72(m,3H),1.38−1.33(2s,9H);LCMS(ESI):m/z244[M−1];キラルHPLC:95.88%.
【0102】
tert−ブチル(R)−2−(((2S,3R)−1,3−ビス(ベンジルオキシ)−1−オキソブタン−2−イル)カルバモイル)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−カルボキシレート(7)の合成:
雰囲気下で0℃に冷却したDCM(20mL)中の化合物6(110g、0.448mol)の撹拌溶液にジイソプロピルエチルアミン(206mL、1.12mol)、中間体D1(150g、0.448mol)およびHATU(204g、0.537mol)を添加した。反応混合物を室温にし、4時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応混合物をDCM(1L)で希釈し、水(2×500mL)、10%クエン酸溶液(500mL)およびブライン溶液(500mL)で洗浄した。有機層を無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して粗化合物を得、これを30%EtOAc/n−ヘキサンで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物7(143g、60%)を無色の粘度の高いシロップとして得た。H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ8.20−8.12(d,1H),7.29−7.18(m,10H),5.83−5.59(m,1H),5.08(s,2H),4.50−4.44(m,2H),4.30−4.26(m,1H),4.08−4.00(m,2H),3.42−3.40(m,2H),3.39−3.29(m,1H),2.19−2.08(m,1H),1.96−1.87(m,1H),1.68−1.63(m,2H),1.23−1.15(2s,9H),1.14−1.13(d,3H);LCMS(m/z):525.2[M−1];HPLC:76.2%;ChiralHPLC:69.47%.
【0103】
tert−ブチル(R)−2−((2S,3R)−1,3−ビス(ベンジルオキシ)−1−オキソブタン−2−イル)−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−5−カルボキシレート(8)の合成:
トリフェニルホスフィン(161.4g、0.612mol)のTHF(430mL)溶液に窒素雰囲気下において室温でDIAD(123.8g、0.612mol)を滴下し、15分間撹拌した。これに化合物7(215g、0.408mol)のTHF(860mL)溶液を滴下し、室温で4時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。得られた粗物質を20%EtOAc/ヘキサンで溶離させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物8(180g、DIAD副生成物との混合物)を黄色のシロップとして得た。H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ7.31−7.18(m,10H),5.18−5.10(m,2H),4.61−4.54(m,2H),4.27−4.18(m,2H),3.78−3.77(d,1H),3.45−3.43(d,1H),3.35−3.31(d,1H),3.27−3.23(m,1H),2.03−1.98(m,2H),1.78−1.76(m,2H),1.39−1.31(2s,9H),1.23−1.22(d,3H)(DIAD副生成物のピークは捕捉されなかった);LCMS(ESI):m/z509.4[M+1].
【0104】
(2S,3R)−2−((R)−5−(tert−ブトキシカルボニル)−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−2−イル)−3−ヒドロキシブタン酸(9)の合成:
化合物8(85g、0.167mol)のメタノール(850mL)溶液をN雰囲気下で脱気した。次いで、50%湿10%Pd−C(40g)を室温で添加し、H雰囲気下で24時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応混合物をセライトパッドで濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた粗固体をEtO(1L)で希釈し、室温で1時間激しく撹拌した。得られた固体物質を濾別し、乾燥して化合物9(75g、68%)を白色固体として得た。H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ12.86(br s,1H),5.24(br s 1H),4.06−4.00(m,2H),3.88−3.82(m,1H),3.51−3.50(m,1H),3.43−3.34(m,1H),3.31−3.23(m,1H),2.15−2.09(m,2H),1.82−1.78(m,2H),1.39−1.31(2s,9H),1.10−1.08(d,3H);LCMS(m/z):329.1[M+1];HPLC:93.97%.
【0105】
tert−ブチル(R)−2−((2S,3R)−1−アミノ−3−ヒドロキシ−1−オキソブタン−2−イル)−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−5−カルボキシレート(A4)の合成:
0℃のCHCl(2L)中の化合物9(150g、0.457mol)の撹拌溶液にジイソプロピルエチルアミン(176.85g、1.37mol)、NHCl(48.8g、0.914mol)およびHATU(208.3g 0.548mol)を窒素雰囲気下で添加した。反応混合物を室温にし、12時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応混合物を水(2×750mL)で希釈し、CHCl(2×1L)で抽出した。合わせた有機層を2N HCl溶液および飽和塩化ナトリウム溶液(750mL)で洗浄した。有機層を無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗化合物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、純化合物を3%MeOH/CHClで溶離した。得られた物質をDCM(2L)で希釈し、飽和クエン酸(5×500mL)で洗浄し、飽和重炭酸塩洗浄、続いてブライン洗浄し、NaSOで乾燥した。物質をエーテル(2×500mL)で研和して化合物A4(80g、53%)を白色固体として得た。H−NMR:(400MHz,DO):δ4.36−4.21(m,2H),4.03−3.98(m,1H),3.76−3.67(m,1H),3.56−.3.37(m,2H),2.32−2.23(m,2H),1.97−1.93(m,2H),1.49−1.47(2s,9H),1.33−1.32(d,3H);LCMS(ESI):m/z328.3[M+1];HPLC:99.30%;キラルHPLC:98.97%;SOR(c=1、CHOH):−11.08.
【0106】
(2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−((R)−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−2−イル)ブタンアミド(10)の合成:
化合物A4(10g、0.030mol)のCHCl(50mL)中の撹拌溶液に窒素雰囲気下において0℃でTFA(24mL、0.3058mol)を添加した。反応混合物を室温にし、4時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。得られた粘度の高いシロップ物質をエーテル(2×100mL)およびヘキサン(1×100mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて、化合物10(3.5g、TFA塩)を粘度の高いシロップとして得、これを次の工程に用いた。粗製RMは、精製することなくそのまま先に進めた。LCMS(ESI):m/z228.1[M+1].
【0107】
(2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−((R)−5−イソブチル−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−2−イル)ブタンアミド(化合物A)の合成:
メタノール(50mL)中の化合物10(10g、TFA塩0.028mol)の撹拌溶液にイソブチルアルデヒド(10mL、0.115mmol)、続いてAcOH(12mL)を窒素雰囲気下において室温で添加し、10分間撹拌した。次いで、NaCNBH(7.2g、11.5mmol)を少しずつ添加し、16時間撹拌を続けた。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応混合物をCHCl(10mL)で希釈し、減圧下で濃縮した。5gのバッチで同様の反応を行った。両方のロットを合わせ、得られた粗物質を4%MeOH/DCMで溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、(2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−((R)−5−イソブチル−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−2−イル)ブタンアミドの混合物を得た。得られた混合物をさらにカラムクロマトグラフィーに供し、(2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−((R)−5−イソブチル−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−2−イル)ブタンアミド(8g)を粘度の高いシロップとして得た。H−NMR:(500MHz,CDOD):δ4.16−4.12(m,1H),4.09(d,J=7.0Hz,1H),3.60(d,J=6.0Hz,1H),3.54(d,J=6.0Hz,1H),2.97−2.93(m,1H),2.75(q,J=8.0Hz,1H),2.47−2.45(m,2H),2.22−2.18(m,1H),2.16−2.10(m,1H),1.92−1.83(m,2H),1.76−1.73(m,1H),1.24(d,J=6.0Hz,3H),0.92−0.89(m,6H);LCMS(ESI):m/z284.1[M+1];HPLC:97.65%;キラルHPLC:98.25%;SOR(c=1、CHOH):1.6.
【0108】
(4R)−2−((2S,3R)−1−アミノ−3−ヒドロキシ−1−オキソブタン−2−イル)−5−イソブチル−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−5−イウム(Z)−3−カルボキシアクリレート(化合物Aマレイン酸塩)の合成:
(2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−((R)−5−イソブチル−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−2−イル)ブタンアミド(400mg、1.41mmol)の溶液にマレイン酸(148mg、1.27mmol)を室温で添加し、16時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、水を減圧下で除去した。得られた粗物質をペンタンおよびヘキサンで研和し、真空下で乾燥して、(4R)−2−((2S,3R)−1−アミノ−3−ヒドロキシ−1−オキソブタン−2−イル)−5−イソブチル−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−5−イウム(Z)−3−カルボキシアクリレート(530mg、94%)を白色固体として得た。H NMR(500MHz,CDOD)δ6.29(s,2H),4.21−4.12(m,2H),3.91−3.85(m,1H),3.83−3.79(m,1H),3.61−3.51(m,1H),3.29−3.19(m,1H),3.04(dd,J=9.0,12.5Hz,1H),2.90(dd,J=5.8,12.2Hz,1H),2.52−2.43(m,1H),2.40−2.31(m,1H),2.25−1.97(m,3H),1.28(d,J=5.8Hz,3H),1.04(dd,J=6.4,9.9Hz,6H);LCMS(ESI):m/z284.3[M+1−マレイン酸];HPLC:96.83%;融点:113.4℃〜117.5℃.
【0109】
Int−Dの調製:
(tert−ブトキシカルボニル)−L−トレオニン(A1)の合成:
SM−2(50g、0.420mol)の1,4−ジオキサン:水(500mL、1:1)溶液にNaHCO(133g、1.255mol)を室温で少しずつ加え、15分間撹拌した。次いで、Boc無水物(144mL、0.629mol)を反応混合物に滴下し、撹拌を室温で16時間継続した。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応混合物を減圧下で濃縮し、得られた残渣を水(200mL)で希釈し、1NのHCl(pH約2)を用いることによって酸性にした。水層をEtOAc(2×300mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(1×200mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、A1(80g、87%)を無色のシロップとして得た。H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ12.5(br s,1H),6.30(d,J=8.5Hz,1H),4.50(br s,1H),4.05−4.02(m,1H),3.88−3.86(m,1H),1.39(s,9H),1.08(d,J=6.0Hz,3H);
LCMS(m/z):218.1[M−1]
【0110】
O−ベンジル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−トレオニン(B1)の合成:
DMF(800mL)中の化合物A1(80g、0.365mol)の撹拌溶液にN雰囲気下において−20℃で60%NaH(22g、0.913mol)を少しずつ添加し、2時間撹拌した。これに臭化ベンジル(52mL、0.438mol)を滴下し、反応混合物を0℃で4時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、氷冷水で反応混合物の反応を停止させ、ジエチルエーテル(2×500mL)で抽出した。水層を、1N HCl(pH〜2)を用いて酸性化した。水層をEtOAc(2×1L)で抽出した。分離した有機層をブライン溶液で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、化合物B1(84g、粗製)を粘度の高いシロップとして得た。
H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ12.64(br s,1H),7.34−7.25(m,5H),6.46(d,J=8.5Hz,1H),4.53(d,J=11.5Hz,1H),4.39(d,J=12.0Hz,1H),4.00−3.98(m,2H),1.39(s,9H),1.15(d,J=6.0Hz,3H).
【0111】
ベンジルO−ベンジル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−トレオニン酸(C1)の合成:
DMF(780mL)中の化合物B1(78g、0.252mol)の撹拌溶液にKCO(87g、0.631mol)をN雰囲気下において室温で添加し、30分間撹拌した。これに臭化ベンジル(45mL、0.378mol)を室温で滴下し、16時間撹拌した。水(2L)で反応混合物の反応を停止させ、ジエチルエーテル(2×1L)で抽出した。分離した有機層をブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗物質を10%EtOAc/n−ヘキサンで溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物C1(68g、68%)を黄色のシロップとして得た。H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ7.37−7.18(m,10H),6.81(d,J=9.0Hz,1H),5.08(s,2H),4.49(d,J=12.0Hz,1H),4.32(d,J=12.0Hz,1H),4.25−4.22(m,1H),4.01−3.98(m,1H),1.38(s,9H),1.15(d,J=6.0Hz,3H);質量(ESI):m/z399.4[M].
【0112】
ベンジルO−ベンジル−L−トレオニン塩酸塩(D1)の合成:
化合物C1(68g、0.170mol)のジエチルエーテル(500mL)溶液に1,4−ジオキサン中の4N HCl(130mL、0.511mol)を添加し、室温で16時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応混合物を減圧下で濃縮した。粗物質をジエチルエーテル(1L)に溶解し、室温で1時間激しく撹拌した。得られた固体を濾別し、減圧下で乾燥させて化合物D1(50g、87%)を白色固体(HCl塩)として得た。H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ8.59(s,2H),7.50−7.25(m,10H),5.23(d,J=12.5Hz,1H),5.16(d,J=12.5Hz,1H),4.54(d,J=12.0Hz,1H),4.36(d,J=12.0Hz,1H),4.12−4.09(m,1H),4.09−3.99(m,1H),1.29(d,J=6.5Hz,3H);質量(ESI):m/z336.4[M+1].
【0113】
実施例2 − 化合物Bおよび化合物Bマレイン酸塩の合成
【化8】
(3S,7aR)−3−(トリクロロメチル)テトラヒドロ−1H,3H−ピロロ[1,2−c]オキサゾール−1−オン(1)の合成:
クロロホルム(60L)中のD−プロリン(3kg、26.057mol)の懸濁液に室温で抱水クロラール(8.62kg、52.115mol)を添加した。反応混合物をリバースディーンスターク装置下で80℃に加熱し、得られた水を収集した。24時間撹拌した後、反応混合物を室温に冷却し、ブライン溶液(25L)を添加した。反応混合物を30分間撹拌し、30分間静置した。分離した有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、揮発物を減圧下で蒸発させた。得られた粗製固体を冷エタノール(5L)でスラリー化し、濾過し、乾燥して、化合物1(4.7kg、74%)をオフホワイトの固体として得た。H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ5.82(s,1H),4.11−4.09(m,1H),3.33−3.28(m,1H),3.19−3.14(m,1H),2.17−2.10(m,1H),1.97−1.91(m,1H),1.80−1.74(m,1H),1.65−1.58(m,1H).
【0114】
(3S,7aS)−7a−((ベンジルオキシ)メチル)−3−(トリクロロメチル)テトラヒドロ−1H,3H−ピロロ[1,2−c]オキサゾール−1−オン(2)の合成:
ジイソプロピルアミン(442mL、3.067mol)のTHF(1L)溶液に窒素雰囲気下において−78℃でn−BuLi(ヘキサン中1.6M)(1.91L、3.067mol)を滴下した。添加終了後、反応混合物の温度を−20℃に上げ、45分間撹拌した。再び−78℃に冷却し、THF(2L)中の化合物1(500g、2.044mol)を滴下し、45分間撹拌した。次いで、ベンジルクロロメチルエーテル(425mL、3.067mol)を滴下し、2時間撹拌を続けた。出発物質が消費された後(TLCによる)、氷冷水(2L)で反応混合物の反応を停止させ、EtO(2×1L)で抽出した。合わせた有機層をブライン(3L)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して粗化合物を得、これを10%EtOAc/n−ヘキサンで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物2(425g、57%)を黄色の液体として得た。H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ7.35−7.26(m,5H),5.60(s,1H),4.59−4.53(d,2H),3.67−3.62(m,2H),3.71−3.31(m,1H),3.16−3.11(m,1H),2.12−1.99(m,2H),1.86−1.72(m,2H);LCMS(ESI):m/z363.8[M−1].
【0115】
メチル(S)−2−((ベンジルオキシ)メチル)ピロリジン−2−カルボキシレート塩酸塩(3)の合成:
化合物2(1kg、2.742mol)のメタノール(2L)溶液にメタノール中の2N HCl(4.1L、8.227mol)を室温で添加し、30分間撹拌した。反応混合物を60℃で16時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。得られた粗シロップをDM水(3L)で希釈し、EtOAc(2×1L)で洗浄した。水層pH(8〜9)をNaHCO3溶液で調整した。水層を5%MeOH/DCM(2×2L)で抽出した。合わせた有機層をブライン溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して化合物3(600g、88%)を褐色のシロップとして得た。別の1kgバッチを繰り返し、600gの化合物3を得た。H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ10.54(br s,1H),9.44(br s,1H),7.40−7.30(m,5H),4.68−4.62(d,1H),4.51−4.46(d,1H),4.00−3.90(m,2H),3.76(s,3H),3.33−3.16(m,2H),2.20−2.14(s,1H),2.01−1.85(m,3H).
【0116】
1−(tert−ブチル)2−メチル(S)−2−((ベンジルオキシ)メチル)ピロリジン−1,2−ジカルボキシレート(4)の合成:
DCM(6L)中の化合物3(1.2kg、4.819mol)の撹拌懸濁液に窒素雰囲気下において0℃でEtN(1.35L、9.638mol)を滴下し、20分間撹拌した。次いで、0℃でBoc無水物(1.65L、7.228mol)を滴下した。反応混合物を室温にし、8時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応物をDM水(3L)で希釈し、DCM(2L)で抽出した。合わせた有機層を10%クエン酸(2L)溶液およびブライン溶液(2L)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、化合物4(2kg、粗製)を褐色のシロップとして得た。H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ7.37−7.28(m,5H),4.57−4.50(m,2H),4.03−3.88(dd,1H),3.71−3.69(d,1H),3.63(s,3H),3.52−3.47(m,1H),3.36−3.31(m,1H),2.32−2.23(m,1H),2.05−1.88(m,2H),1.82−1.77(m,1H),1.38−1.26(s,9H);LCMS(ESI):m/z350.2[(M+1)].
【0117】
(S)−2−((ベンジルオキシ)メチル)−1−(tert−ブトキシカルボニル)ピロリジン−2−カルボン酸(5)の合成:
化合物4(1kg、2.865mol)のMeOH:THF(3L、1:1)溶液にHO(1.5L)中のNaOH(343.84g、8.595mol)を室温で添加し、70℃で6時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応混合物を室温にし、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗物質を水(5L)で希釈し、EtOAc(2×2L)で抽出した。分離した水層を、6N HCl溶液(pH〜2)を用いて酸性化し、DCM(3×2L)で抽出した。合わせた有機層をブライン溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮して化合物5(550g、58%)を褐色のシロップとして得た。別の1kgバッチを繰り返し、550gの化合物5を得た。H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ12.68(br s,1H),7.36−7.28(m,5H),4.56−4.49(m,2H),4.07−3.90(dd,1H),3.66−3.64(d,1H),3.50−3.44(m,1H),2.29−2.20(m,1H),2.03−1.75(m,3H),1.39−1.28(2s,9H).LCMS(ESI):m/z236.0[M+1−Boc];HPLC:76.79%;キラルHPLC:96.26%
【0118】
(S)−1−(tert−ブトキシカルボニル)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−2−カルボン酸(6)の合成:
メタノール(10L)中の化合物5(1.1kg、32.835mol)の撹拌溶液に50%湿10%Pd−C(500g)を室温で添加し、H雰囲気下で8時間撹拌した(3kg)。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応混合物をセライトパッドで濾過し、パッドをメタノール(50mL)で洗浄した。得られた濾液を減圧下で濃縮して粗生成物を得、これをEtOで研和してオフホワイトの固体として化合物6(650g、81%)を得た。H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ3.92−3.80(dd,1H),3.64−3.61(m,1H),3.49−3.34(m,1H),3.32−3.26(m,1H),2.29−2.16(m,1H),1.95−1.71(m,3H),1.38−1.33(s,9H);LCMS(ESI):m/z243.8[M−1].
【0119】
tert−ブチル(S)−2−(((2S,3R)−1,3−ビス(ベンジルオキシ)−1−オキソブタン−2−イル)カルバモイル)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−カルボキシレート(7)の合成:
化合物6(450g、0.836mol)のDCM(4.5L)溶液に窒素雰囲気下において0〜5℃でN,N−ジイソプロピルエチルアミン(846mL、4.591mol)を添加した。10分間撹拌した後、中間体D1(615g、1.836mol)を添加した。10分間撹拌した後、HATU(701g、2.204mol)を添加した。反応混合物を室温にし、6時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応混合物をDCM(1L)で希釈し、水(2×2L)、10%クエン酸溶液(2L)およびブライン溶液(2L)で洗浄した。有機層を無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して粗化合物を得、これを40%EtOAc/n−ヘキサンで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物7を得、これをEtO(1.5L)中に溶解し、1時間撹拌した。得られた沈殿物を濾過し、真空下で乾燥して化合物7(630g、65%)を白色固体として得た。H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ7.91−7.89(d,0.5H),7.53−7.51(d,0.5H),7.32−7.19(m,10H),5.64(br s,1H),5.16−5.04(m,2H),4.62−4.49(m,2H),4.31−4.28(m,1H),4.09−4.02(m,1.5H),3.87(br s,1H),3.57−3.56(m,0.5H),3.43−3.37(m,1H),3.29−3.25(m,1H),2.32−2.14(m,1H),1.98−1.90(m,1H),1.75−1.69(m,2H),1.33−1.26(2s,9H),1.14−1.12(d,3H);LCMS(m/z):527.6[M+1];HPLC:96.60%.
【0120】
tert−ブチル(S)−2−((2S,3R)−1,3−ビス(ベンジルオキシ)−1−オキソブタン−2−イル)−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−5−カルボキシレート(8)の合成:
トリフェニルホスフィン(295g、1.125mol)のTHF(846mL)溶液に窒素雰囲気下において室温でDIAD(227g、1.125mol)を滴下し、30分間撹拌した。反応混合物を15℃に冷却し、化合物7(423g、0.804mol)のTHF(1.2L)溶液を滴下し、室温で4時間撹拌した。得られた粗物質をヘキサンで洗浄し、続いて50%EtO/ヘキサンで30分間撹拌した。形成された沈殿物を濾別し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた粗生成物を40%EtOAc/ヘキサンで溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物8(425g、粗製)を褐色のシロップとして得た。H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ7.38−7.21(m,10H),5.17−5.10(m,2H),4.56−4.50(m,2H),4.31−4.28(d,1H),4.06−3.99(m,2H),3.89−3.88(d,0.5H),3.48−3.47(d,0.5H),3.36−3.34(m,1H),3.25−3.19(m,1H),2.10−2.02(m,2H),1.79−1.77(m,2H),1.40−1.25(s,9H),1.15−1.12(d,3H).LCMS(ESI):m/z509.4[M+1];HPLC:92.31%;キラルHPLC:86.47%.
【0121】
(2S,3R)−2−((S)−5−(tert−ブトキシカルボニル)−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−2−イル)−3−ヒドロキシブタン酸(9)の合成:
化合物8(283g、0.557mol)のメタノール(1.2L)溶液をN雰囲気下で脱気した。次いで、50%湿10%Pd−C(140g)を室温で添加し、H雰囲気下で24時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応混合物をセライトパッドで濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた粗固体をEtO(500mL)で希釈し、0℃で1時間激しく撹拌した。得られた固体物質を濾別し、乾燥して化合物9(140g、76%)を白色固体として得た。H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ12.86(br s,1H),5.24(br s 1H),4.06−4.00(m,2H),3.88−3.82(m,1H),3.51−3.50(m,1H),3.43−3.34(m,1H),3.31−3.23(m,1H),2.15−2.09(m,2H),1.82−1.78(m,2H),1.39−1.31(2s,9H),1.10−1.08(d,3H);LCMS(m/z):327.1[M−1];HPLC:95.44%;キラルHPLC:100.00%.
【0122】
tert−ブチル(S)−2−((2S,3R)−1−アミノ−3−ヒドロキシ−1−オキソブタン−2−イル)−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−5−カルボキシレート(B4)の合成:
CHCl(4.2L)中の化合物9(420g、1.28mol)の撹拌溶液に窒素雰囲気下において0℃でHATU(584g、1.536mol)、NHCl(137g、2.56mol)およびジイソプロピルエチルアミン(708mL、3.841mol)を添加した。反応混合物を室温にし、8時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応混合物を水(2L)とCHCl(2L)との間で分配し、15分間撹拌した。有機層を分離し、2N HCl溶液(2×1L)および飽和NaHCO溶液(2L)およびブライン溶液(2L)で洗浄した。有機層を無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた粗生成物を5%MeOH/CHClで溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物B4(320g、混合物)をオフホワイトの固体として得た。混合化合物B4(87g)をDCMに溶解し、室温で1時間激しく撹拌しながらEtOで再沈殿させた。生成物を濾過し、真空下で乾燥して化合物B4(82g)を白色固体として得た。H−NMR:(400MHz,DO):δ4.53−4.10(m,2H),4.08−3.96(m,1H),3.80−3.72(m,1H),3.60−3.39(m,2H),2.53−2.31(m,2H),2.02−1.93(m,2H),1.51−1.45(s,9H),1.31−1.29(d,3H);LCMS(ESI):m/z326.1[M−1];HPLC:99.66%;キラルHPLC:99.76%;SOR(c=1、MeOH):−49.61.
【0123】
(2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−((S)−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−2−イル)ブタンアミド(10)の合成:
化合物B4(10g、0.031mol)のCHCl(40mL)中の撹拌溶液に窒素雰囲気下において0℃でTFA(23mL、0.305mol)を添加した。反応混合物を室温にし、3時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。得られた粘度の高いシロップ物質をエーテル(2×50mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて、化合物10(10g、TFA塩、粗製)を粘度の高いシロップとして得、これを次の工程に用いた。H−NMR:(400MHz,DO):δ4.38−4.10(m,2H),4.11−3.94(m,2H),3.56−3.44(m,2H),2.52−2.38(m,2H),2.24−2.16(m,2H),1.39−1.27(d,3H);LCMS(ESI):m/z228.2[M+1].
【0124】
(2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−((S)−5−イソブチル−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−2−イル)ブタンアミド(化合物B)の合成:
メタノール(50mL)中の粗化合物10(10g、TFA塩0.029mol)の撹拌溶液にイソブチルアルデヒド(6.5mL、0.073mol)、続いてAcOH(2.5mL)を窒素雰囲気下において室温で添加し、10分間撹拌した。次いで、NaCNBH(5.4g、0.087mol)を少しずつ添加し、16時間撹拌を続けた。出発物質の消費(TLCによる)は完了しなかった。再度、イソブチルアルデヒド(3.2mL、0.036mol)およびAcOH(1mL)を添加し、2時間撹拌を続けた。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応混合物をCHCl(20mL)で希釈し、減圧下で濃縮した。得られた粗物質を4%MeOH/DCMで溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、(2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−((S)−5−イソブチル−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−2−イル)ブタンアミド(6g)を粘度の高いシロップとして得た。H−NMR:(500MHz,CDOD):δ4.10−4.07(m,2H),3.63(d,J=5.5Hz,1H),3.49(d,J=6.0Hz,1H),2.97−2.93(m,1H),2.74(q,J=8.0Hz,1H),2.41−2.34(m,2H),2.26−2.20(m,1H),2.17−2.11(m,1H),1.94−1.81(m,2H),1.73−1.69(m,1H),1.21(d,J=6.0Hz,3H),0.91−0.89(m,6H);LCMS(ESI):m/z284.1[M+1];HPLC:99.53%;キラルHPLC:100.00%;SOR(c=0.5、MeOH):−60.25.
【0125】
(4S)−2−((2S,3R)−1−アミノ−3−ヒドロキシ−1−オキソブタン−2−イル)−5−イソブチル−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−5−イウム(Z)−3−カルボキシアクリレート(化合物Bマレイン酸塩)の合成:
(2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−((S)−5−イソブチル−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−2−イル)ブタンアミド(180mg、0.636mmol)の溶液にマレイン酸(59mg、0.508mmol)を室温で添加し、16時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、水を減圧下で除去した。得られた粗物質をペンタンおよびヘキサンで研和し、真空下で乾燥して、(4S)−2−((2S,3R)−1−アミノ−3−ヒドロキシ−1−オキソブタン−2−イル)−5−イソブチル−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−5−イウム(Z)−3−カルボキシアクリレート(210mg、86%)を淡黄色の固体として得た。H NMR(400MHz,CDOD)δ6.28(s,2H),4.21−4.11(m,2H),3.90(d,J=7.0Hz,1H),3.71(d,J=7.0Hz,1H),3.47−3.36(m,1H),3.20−3.09(m,1H),2.92−2.82(m,1H),2.81−2.71(m,1H),2.48−2.38(m,1H),2.36−2.26(m,1H),2.20−1.88(m,3H),1.24(d,J=6.0Hz,3H),1.00(t,J=7.0Hz,6H);LCMS(ESI):m/z284.2[M+1−マレイン酸];HPLC:97.98%;融点:114.8℃〜118.3℃.
【0126】
実施例3 − 化合物Cの合成
【化9】
(3R,7aS)−3−(トリクロロメチル)テトラヒドロ−1H,3H−ピロロ[1,2−c]オキサゾール−1−オン(1)の合成:
クロロホルム(50L)中のL−プロリン(2.0kg、0.017mol)の懸濁液に室温で抱水クロラール(5.7kg、0.034mol)を添加した。反応混合物をリバースディーンスターク装置下で60℃に加熱し、得られた水を収集した。16時間後、揮発性物質を減圧下で濃縮した。粗固体を冷エタノールで洗浄し、濾過し、乾燥させて化合物1(2.2kg、57%)を白色固体として得た。H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ5.82(s,1H),4.11−4.08(m,1H),3.33−3.27(m,2H),3.19−3.14(m,1H),2.15−2.10(m,1H),1.96−1.91(m,1H),1.80−1.74(m,1H),1.65−1.58(m,1H).
【0127】
(3R,7aR)−7a−((ベンジルオキシ)メチル)−3−(トリクロロメチル)テトラヒドロ−1H,3H−ピロロ[1,2−c]オキサゾール−1−オン(2)の合成:
ジイソプロピルアミン(221.2mL、1.533mol)のTHF(870mL)溶液に窒素雰囲気下において−78℃でn−BuLi(ヘキサン中1.6M)(958.5mL、1.533mol)を滴下した。添加終了後、反応混合物の温度を−20℃に上げ、1時間撹拌した。再び−78℃に冷却し、THF(1L)中の化合物1(250g、1.022mol)を加え、30分間撹拌した。次いで、ベンジルクロロメチルエーテル(208mL、1.329mol)を滴下し、1時間撹拌を続けた。出発物質が消費された後(TLCによる)、氷冷水(100mL)で反応混合物の反応を停止させ、EtO(2×100mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、これを10%EtOAC/n−ヘキサンで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物2(220g、粗製)を褐色の粘度の高いシロップとして得た。H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ7.42−7.26(m,5H),5.60(s,1H),4.59−4.53(d,2H),3.67−3.61(m,2H),3.37−3.33(m,1H),3.31−3.10(m,1H),2.12−1.99(m,2H),1.87−1.75(m,2H);LCMS(ESI):m/z363.9[M+1].
【0128】
メチル(R)−2−((ベンジルオキシ)メチル)ピロリジン−2−カルボキシレート塩酸塩(3)の合成:
化合物2(400g、1.096mol)のメタノール(1L)溶液に室温でMeOH(1.64L、3.29mol)中の2N HClを添加し、80℃で16時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。得られた粗生成物をヘキサン(3×750mL)で洗浄し、減圧下で乾燥させて、化合物3(358g、粗製)を、赤味を帯びた粘度の高いシロップとして得た。H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ10.40(br s,1H),7.40−7.21(m,5H),4.64−4.50(d,2H),4.49−4.3(d,2H),3.76(s,3H),3.33−3.22(m,2H),2.22−2.15(s,1H),2.02−1.9(m,2H),1.95−1.83(m,1H).
【0129】
1−(tert−ブチル)2−メチル(R)−2−((ベンジルオキシ)メチル)ピロリジン−1,2−ジカルボキシレート(4)の合成:
DCM(2.19L)中の化合物3(313g、粗製1.096mol)の撹拌懸濁液に窒素雰囲気下において0℃でEtN(458.4mL、3.288mol)を滴下し、10分間撹拌した。次いで、Boc無水物(358.4g、1.644mol)を0℃で滴下した。反応混合物を室温にし、16時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応物を水(2×1L)で希釈し、CHCl(2×500mL)で抽出した。合わせた有機層を10%クエン酸(pH〜7)およびブライン溶液(1L)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して粗化合物を得、これを20%EtOAC/n−ヘキサンで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物4(215g、56%)を無色の粘度の高いシロップとして得た。H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ7.37−7.26(m,5H),4.56−4.48(m,2H),4.03−3.87(dd,1H),3.69−3.67(d,1H),3.62(s,3H),3.53−3.47(m,1H),3.33−3.30(m,1H),2.27−2.20(m,1H),2.03−1.89(m,2H),1.88−1.79(m,1H),1.46−1.24(2s,9H);LCMS(ESI):m/z250.1[(M+1)−Boc].
【0130】
(R)−2−((ベンジルオキシ)メチル)−1−(tert−ブトキシカルボニル)ピロリジン−2−カルボン酸(5)の合成:
化合物4(215g、0.616mol)のMeOH:THF:HO(3L、5:5:3)溶液にNaOH(73.9g、1.848mol)を添加し、室温で10分間撹拌した。反応混合物を80℃に加熱し、16時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応混合物を室温にし、揮発性物質を蒸発させた。粗物質を水(1L)で希釈し、EtO(2×500mL)で抽出した。分離した水層を、2N HCl溶液(pH〜3)を用いて酸性化し、DCM(2×750mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮して、化合物5(170g、82.4%)をオフホワイトの固体として得た。H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ12.66(br s,1H),7.36−7.26(m,5H),4.54−4.47(m,2H),4.05−3.90(dd,1H),3.88−3.63(d,1H),3.63−3.44(m,1H),3.34−3.27(m,1H),2.27−2.01(m,1H),2.02−1.8(m,2H),1.79−1.76(m,1H),1.17−1.14(2s,9H);LCMS(ESI):m/z235.1[(M+1)−Boc].
【0131】
(R)−1−(tert−ブトキシカルボニル)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−2−カルボン酸(6)の合成:
CHOH(1L)中の化合物5(170g、0.507mol)の撹拌溶液に50%湿10%Pd−C(68g)を室温で添加し、H雰囲気下で16時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応混合物をセライトパッドで濾過し、パッドをCHOH(1L)で洗浄した。得られた濾液を減圧下で濃縮して、化合物6(110g、88%)を白色固体として得た。H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ12.66(br s,1H),3.96−3.83(dd,1H),3.63−3.60(m,1H),3.49−3.46(m,1H),3.34−3.25(m,2H),2.30−2.15(m,1H),1.95−1.72(m,3H),1.38−1.33(2s,9H);LCMS(ESI):m/z244[M−1];キラルHPLC:95.88%.
【0132】
tert−ブチル(R)−2−(((2S,3R)−1,3−ビス(ベンジルオキシ)−1−オキソブタン−2−イル)カルバモイル)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−カルボキシレート(7)の合成:
雰囲気下で0℃に冷却したDCM(20mL)反応混合物中の化合物6(110g、0.448mol)の撹拌溶液にジイソプロピルエチルアミン(206mL、1.12mol)を添加し、中間体D1(150g、0.448mol)およびHATU(204g、0.537mol)を窒素雰囲気下で添加した。反応混合物を室温にし、4時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応混合物をDCM(1L)で希釈し、水(2×500mL)、10%クエン酸溶液(500mL)およびブライン溶液(500mL)で洗浄した。有機層を無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して粗化合物を得、これを30%EtOAc/n−ヘキサンで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物7(143g、60%)を無色の粘度の高いシロップとして得た。H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ8.20−8.12(d,1H),7.29−7.18(m,10H),5.83−5.59(m,1H),5.08(s,2H),4.50−4.44(m,2H),4.30−4.26(m,1H),4.08−4.00(m,2H),3.42−3.40(m,2H),3.39−3.29(m,1H),2.19−2.08(m,1H),1.96−1.87(m,1H),1.68−1.63(m,2H),1.23−1.15(2s,9H),1.14−1.13(d,3H);LCMS(m/z):525.2[M−1];HPLC:76.2%;キラルHPLC:69.47%.
【0133】
tert−ブチル(R)−2−((2S,3R)−1,3−ビス(ベンジルオキシ)−1−オキソブタン−2−イル)−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−5−カルボキシレート(8)の合成:
トリフェニルホスフィン(161.4g、0.612mol)のTHF(430mL)溶液に窒素雰囲気下において室温でDIAD(123.8g、0.612mol)を滴下し、15分間撹拌した。これに化合物7(215g、0.408mol)のTHF(860mL)溶液を滴下し、室温で4時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。得られた粗物質を20%EtOAc/ヘキサンで溶離させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物8(180g、DIAD副生成物との混合物)を黄色のシロップとして得た。H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ7.31−7.18(m,10H),5.18−5.10(m,2H),4.61−4.54(m,2H),4.27−4.18(m,2H),3.78−3.77(d,1H),3.45−3.43(d,1H),3.35−3.31(d,1H),3.27−3.23(m,1H),2.03−1.98(m,2H),1.78−1.76(m,2H),1.39−1.31(2s,9H),1.23−1.22(d,3H)(DIAD副生成物のピークは捕捉されなかった);LCMS(ESI):m/z509.4[M+1].
【0134】
(2S,3R)−2−((R)−5−(tert−ブトキシカルボニル)−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−2−イル)−3−ヒドロキシブタン酸(9)の合成:
化合物8(85g、0.167mol)のメタノール(850mL)溶液をN雰囲気下で脱気した。次いで、50%湿10%Pd−C(40g)を室温で添加し、H雰囲気下で24時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応混合物をセライトパッドで濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた粗固体をEtO(1L)で希釈し、室温で1時間激しく撹拌した。得られた固体物質を濾別し、乾燥して化合物9(75g、68%)を白色固体として得た。H−NMR:(400MHz,DMSO−d):δ12.86(br s,1H),5.24(br s 1H),4.06−4.00(m,2H),3.88−3.82(m,1H),3.51−3.50(m,1H),3.43−3.34(m,1H),3.31−3.23(m,1H),2.15−2.09(m,2H),1.82−1.78(m,2H),1.39−1.31(2s,9H),1.10−1.08(d,3H);LCMS(m/z):329.1[M+1];HPLC:93.97%.
【0135】
tert−ブチル(R)−2−((2S,3R)−1−アミノ−3−ヒドロキシ−1−オキソブタン−2−イル)−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−5−カルボキシレート(A4)の合成:
反応混合物を0℃に冷却した状態のCHCl(2L)中の化合物9(150g、0.457mol)の撹拌溶液にジイソプロピルエチルアミン(176.85g、1.37mol)、NHCl(48.8g、0.914mol)およびHATU(208.3g 0.548mol)を窒素雰囲気下で添加した。反応混合物を室温にし、12時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応混合物を水(2×750mL)で希釈し、CHCl(2×1L)で抽出した。合わせた有機層を2N HCl溶液および飽和塩化ナトリウム溶液(750mL)で洗浄した。有機層を無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗化合物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、純化合物を3%MeOH/CHClで溶離した。得られた物質をDCM(2L)で希釈し、飽和クエン酸(5×500mL)で洗浄し、飽和重炭酸塩洗浄、続いてブライン洗浄し、NaSOで乾燥した。物質をエーテル(2×500mL)で研和して化合物A4(80g、53%)を白色固体として得た。H−NMR:(400MHz,DO):δ4.36−4.21(m,2H),4.03−3.98(m,1H),3.76−3.67(m,1H),3.56−.3.37(m,2H),2.32−2.23(m,2H),1.97−1.93(m,2H),1.49−1.47(2s,9H),1.33−1.32(d,3H);LCMS(ESI):m/z328.3[M+1];HPLC:99.30%;キラルHPLC:98.97%;SOR(c=1、CHOH):−11.08.
【0136】
(2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−((R)−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−2−イル)ブタンアミド(10)の合成:
化合物A4(2g、6.16mmol)のCHCl(10mL)中の撹拌溶液に窒素雰囲気下において0℃でTFA(1.0mL、12.2mmol)を添加した。反応混合物を室温にし、2時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。得られた粘度の高いシロップ物質をエーテル(2×50mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて、粗化合物10(2.5g、TFA塩)を粘度の高いシロップとして得、これを次の工程に用いた。H NMR(500MHz,CDOD):δ4.24−4.17(m,2H),3.99−3.89(m,2H),3.52−3.39(m,2H),2.46−2.32(m,2H),2.26−2.10(m,2H),1.28(d,J=6.1Hz,3H);LCMS(ESI):m/z228.1[M+1].
【0137】
(2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−((R)−5−((S)−2−ヒドロキシプロピル)−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−2−イル)ブタンアミド(化合物C):
メタノール(10mL)中の化合物10(TFA塩、2g、5.86mmol)の撹拌溶液にNaOMe(630mg、11.7mmol)、続いて(S)−2−メチルオキシラン(510mg、8.79mmol)を窒素雰囲気下において室温で添加した。反応混合物を室温で24時間撹拌した。出発物質が消費された後(TLCによる)、反応混合物をCHCl(10mL)で希釈し、減圧下で濃縮した。得られた粗物質を5%MeOH/DCMで溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、(2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−((R)−5−((S)−2−ヒドロキシプロピル)−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−2−イル)ブタンアミド(185mg、12%)を粘度の高いシロップとして得た。H NMR(400MHz,CDOD):δ4.18−4.07(m,2H),3.90−3.81(m,1H),3.63(d,J=6.1Hz,1H),3.58(d,J=6.1Hz,1H),3.11(dt,J=4.2,8.2Hz,1H),2.83−2.67(m,2H),2.62−2.54(m,1H),2.26−2.12(m,2H),1.98−1.83(m,2H),1.24(d,J=6.1Hz,3H),1.14(d,J=6.3Hz,3H);LCMS(ESI):m/z285.9[M+1];HPLC:97.20%.
【0138】
実施例4
この例は、肯定的感情学習(PEL)試験を示す。実験は、Burgdorf et al.,“The effect of selective breeding for differential rates of 50−kHz ultrasonic vocalizations on emotional behavior in rats,”Devel.Psychobiol.,51:34−46(2009)に記載されているように行った。ラットの50kHzの超音波啼鳴(ヘドニックUSV)は、肯定的感情状態の研究のための有効なモデルであり、取っ組み合い遊び(rough−and−tumble play)によって最もよく誘発される。50kHzの超音波啼鳴は、ラットにおける報酬および食欲に関する社会的行動と正の相関を有し、肯定的感情状態を反映することが以前に示されている。
【0139】
PELアッセイは、社会的刺激、異種特異的取っ組み合い遊び刺激に対する陽性(ヘドニック)50kHz超音波啼鳴(USV)の獲得を測定する。実験者の右手で異種特異的な取っ組み合い遊び刺激を施した。動物は、異種特異的な遊びの15秒のブロックと無刺激の15秒のブロックとの交互のブロックからなる3分の異種特異的な取っ組み合い遊びを受けた。Burgdorf et al.,“Positive emotional learning is regulated in the medial prefrontal cortex by GluN2B−containing NMDA receptors,”Neuroscience,192:515−523(2011)によって以前に記載されているように、Avasoft SASlab Pro(Germany)を用いて超音波による高周波数超音波啼鳴(USV)を記録し、分析した。各無刺激期間中に発生した周波数変調された50kHzのUSVを定量してPELを測定した。動物は、刺激を与えるため、試験前に馴化しなかった。くすぐり無条件刺激(UCS)試験に先行する条件付き刺激(CS)試験中に肯定的感情学習を測定した。動物は、それぞれ6回のCSおよび6回のUCS試験からなる15回の第2回試験を受けた(合計3分間)。3分間のセッションの最後に、自発的に受けるくすぐりに対する動物の走行速度も測定した。
【0140】
図1は、ラットPEL試験の結果を示す。結果は、化合物AがPEL試験の1時間前に投与された場合、ラットUSVによって測定された肯定的感情学習を増加させ、それにより抗うつ効果を示すことを実証する。
【0141】
実施例5
化合物Aのミクロソームおよび血漿安定性を調査した。以下の表は、60分後に残存する化合物Aのパーセントを示す。
【表1】

脳内の未結合薬物濃度も調査し、血漿タンパク質結合アッセイを実施した。以下の表(%結合)は、化合物Aの結果を示す。
【表2】

PO投与後に化合物Aのバイオアベイラビリティを調査した。CSF、脳および血漿試料を、化合物A(10mg/kg)を投与した後に分析した。以下の表は、バイオアベイラビリティならびにCSF/血漿および脳/血漿比を示す。
【表3】
【0142】
実施例6
アッセイは、Moskal et al.,“GLYX−13:a monoclonal antibody−derived peptide that acts as an N−methyl−D−aspartate receptor modulator,”Neuropharmacology,49,1077−87,2005によって記載されているように行った。濃度を漸増させた化合物Aの存在下において、[H]MK−801(5nM;22.5Ci/mmol)と十分に洗浄したラット皮質膜(200μg)との結合の増強を非平衡条件下で(25℃で15分間)測定した。
図2は、Aに対する野生型NMDAR2サブタイプの[H]MK−801結合の増強を示す。図2に示すように、化合物Aは、NR2Aを高度に選好し、NR2Dに結合しない。
【0143】
実施例7
Sprague Dawleyラットに2mg/kgの化合物Aを静脈内投与した。第2群のSprague Dawleyラットに10mg/kgの化合物Aを経口投与した。血漿試料を24時間にわたって採取し、化合物Aについて分析した。
図3は、24時間にわたる雄Sprague Dawleyラットにおける単回静脈内(2mg/kg)および経口(10mg/kg)投与後の化合物Aの平均血漿濃度−時間プロファイルを提示する。
別の実験では、Sprague Dawleyラットに10mg/kgの化合物Aを経口投与した。血漿、脳およびCSF試料を24時間にわたって様々な時点で分析した。
図4は、24時間にわたる雄Sprague Dawleyラットにおける単回経口(10mg/kg)投与後の化合物Aの平均血漿、脳およびCSF濃度−時間プロファイルを示す。
【0144】
実施例8
この例は、実施例3で上述したように、PEL実験に関する。ラット超音波啼鳴(USV)試験である。
くすぐり無条件刺激(UCS)試験に先行する条件付き刺激(CS)試験中に肯定的感情学習を測定した。動物は、それぞれ6回のCSおよび6回のUCS試験からなる15回の第2回試験を受けた(合計3分間)。
図5は、ラットUSV試験の結果を示す。この結果は、化合物BがラットUSV試験において肯定的感情学習を増加させ、それにより抗うつ効果を示すことを実証する。
【0145】
実施例9
化合物Bのミクロソームおよび血漿安定性を調査した。以下の表は、60分後に残存する化合物Bのパーセントを示す。
【表4】

脳内の未結合薬物濃度も調査し、血漿タンパク質結合アッセイを実施した。以下の表(%結合)は、化合物Bの結果を示す。
【表5】

化合物Bのバイオアベイラビリティを調査した。CSF、脳および血漿試料を、化合物Bを投与した後に分析した。以下の表は、バイオアベイラビリティならびにCSF/血漿および脳/血漿比を示す。
【表6】

化合物Aおよび化合物Bは、両方とも経口バイオアベイラビリティがより低いが、より高い割合でCSFおよび脳に到達することができる。
【0146】
実施例10
アッセイは、Moskal et al.(2005)による上記の実施例5に記載されるように行った。濃度を漸増させた化合物Bの存在下において、[H]MK−801(5nM;22.5Ci/mmol)と十分に洗浄したラット皮質膜(200μg)との結合の増強を非平衡条件下で(25℃で15分間)測定した。図6は、化合物Bの野生型NMDAR2サブタイプに対する[H]MK−801結合の増強を示す。化合物Bは、NR2BおよびNR2Dを高度に選好し、NR2AおよびNR2Cにおける効力がより低い。
【0147】
実施例11
Sprague Dawleyラットに2mg/kgの化合物Bを静脈内投与した。第2群のSprague Dawleyラットに10mg/kgの化合物Bを経口投与した。血漿試料を24時間にわたって採取し、化合物Bについて分析した。
図7は、24時間にわたる雄Sprague Dawleyラットにおける単回静脈内(2mg/kg)および経口(10mg/kg)投与後の化合物Bの平均血漿濃度−時間プロファイルを示す。
別の実験では、Sprague Dawleyラットに10mg/kgの化合物Bを経口投与した。血漿、脳およびCSF試料を24時間にわたって様々な時点で分析した。
図8は、24時間にわたる雄Sprague Dawleyラットにおける単回経口(10mg/kg)投与後の化合物Bの平均血漿、脳およびCSF濃度−時間プロファイルを示す。
【0148】
実施例12
インビトロMN(小核)アッセイを化合物Aについて実施した。化合物Bについてもアッセイを行った。細胞毒性は、対照増殖の%として示される。60%未満の細胞毒性値が標識され、化合物は、それぞれの濃度で毒性であると考えられる。化合物AのインビトロMNアッセイの結果を図9に示す。化合物BのインビトロMNアッセイの結果を図10に示す。
Amesアッセイは、化合物Aおよび化合物Bのそれぞれについて行った。Amesアッセイの結果では、ハイフン(−)は、否定的な結果を示す。p<0.05の場合、弱い陽性は、「+」として示される。p<0.01の場合、強い陽性は、「++」と示される。p<0.001の場合、非常に強い陽性は、「+++」と示される。化合物AのAmesアッセイの結果を図9に示す。化合物BのAmesアッセイの結果を図10に示す。
潜在的なhERGチャネル相互作用を同定するために、化合物Aを用いてhERGアッセイを行った。また、化合物Bを用いてhERGアッセイを行った。hERGについて、50%より高い阻害または刺激を示す結果は、試験化合物に有意な影響を表すと考えられる。化合物AのhERGアッセイの結果を図9に示し、化合物BのhERGアッセイの結果を図10に示す。
【0149】
実施例13
Goldstein et al.,“Chronic traumatic encephalopathy in blast−exposed military veterans and a blast neurotrauma mouse model,”Science Translational Medicine,Vol.4,Issue 134,pp.134ra60,2012のプロトコルに従い、ラットにおける使用のために改変して、単一の爆風誘発性外傷性脳傷害/認知障害を誘発した。2〜3ヶ月齢の雄Sprague Dawleyラットを用いた。ラットをアスペンウッドチップの敷材と共にLuciteケージに収容し、12:12の明暗サイクル(午前5時に点灯)で維持し、試験を通してPurina研究用飼料(USA)および水道水を自由摂取させた。最初に3.5〜4%イソフルランを用いてラットを麻酔し、次いで耳を1.5×1.5mm発泡プラグ(Pura−Fit(登録商標)、Moldex−Metric Inc.、Culver City、California)で保護し、ラットを頭部アクセス齧歯類用胸部拘束具(Stoelting、USA)に入れて、頭部を自由に動かせるようにしながら身体を保護した。アルミニウムショックチューブ(183×61cm;L−3 Applied Technologies、USA)をラットの頭部から10cmに配置した。ラットは、0.014インチのポリエステルフィルムを穿刺することによって発生したヘリウムの1回の約42PSIの爆風を受けた。擬似対照は、爆風半径の外側に配置された。爆風の1時間後に化合物A(10mg/kg PO)、化合物B(10mg/kg PO)、または0.9%滅菌生理食塩水中0.5%Na−CMCビヒクル(1ml/kg PO)を動物に投与した。
【0150】
PEL(肯定的感情学習)は、爆風の48時間後に実施された。異種特異的な取っ組み合い遊びは、以前にBurgdorf et al.,“The long−lasting antidepressant effects of rapastinel(GLYX−13)are associated with a metaplasticity process in the medial prefrontal cortex and hippocampus,”Neuroscience 308:202−211,2015に記載されるように実施した。実験者の右手で異種特異的な取っ組み合い遊び刺激を施した。動物は、異種特異的な遊びの15秒のブロックと無刺激の15秒のブロックとの交互のブロックからなる3分の異種特異的な取っ組み合い遊びを受けた。Burgdorf et al.,“Positive emotional learning is regulated in the medial prefrontal cortex by GluN2B−containing NMDA receptors,”Neuroscience,192:515−523,2011によって以前に記載されているように、Avasoft SASlab Pro(Germany)を用いて超音波による高周波数超音波啼鳴(USV)を記録し、分析した。各無刺激期間中に発生した周波数変調された50kHzのUSVを定量してPELを測定した。動物は、刺激を与えるため、試験前に馴化しなかった。
化合物AおよびBについてのPEL研究の結果は、図11および12に報告されている。
【0151】
実施例14
この実施例は、ストレス誘発性不安モデル、新規性誘発性食欲不振における治療の抗不安効果の評価に関する。このアッセイは、速効型抗うつ薬ケタミンおよびGLYX−13にも感受性である(Li et al.,“mTOR−dependent synapse formation underlies the rapid antidepressant effects of NMDA antagonists,”Science 329:959−964,2010;およびBurgdorf et al.,2013)。Bodnoff et al.,“A comparison of the effects of diazepam versus several typical and atypical anti−depressant drugs in an animal model of anxiety,”Psychopharmacology,97:277−279,1989も参照されたい。
【0152】
試験は、(Burgdorf et al.,2013)に記載されているように行った。以前にケタミンの急性抗不安様作用を検出することが示されている(Li et al.,2010)新規性誘発性食欲不振(NIH)試験の1バージョンが用いられた。動物は、試験前に一晩食物を与えられず、研究用飼料は、オープンフィールド(40×40×20cm)の中央チャンバ内に暗い赤色の照明下において10分間置かれた。各動物の試験間で糞便および尿を装置から除去した。NIH試験後、動物のホームケージでの摂食までの待ち時間は、摂食に対する効果が新規な環境に特異的であることを確認するための対照として決定された。動物は、ビデオテープに録画され、最初の食料摂取までの待ち時間(秒)は、オフラインで手動採点された。
【0153】
平均からの標準偏差2以上であった用量群あたりの単一点は、外れ値とみなされ、データ分析から除外された。ED50は、log(用量)線形(NIH値)プロットから半最大効果(ビヒクルおよび最大有効用量の平均)を示す用量(または用量の対数線形補間)として定義した。最大有効用量は、ビヒクルと統計学的に異なるが、その用量より高い用量と統計学的に均等(フィッシャーのPLSDによる;αを0.05に設定)である最低容量であると定義された。
【0154】
結果を図13および図14に示す。図13に示すように、化合物Aは、ラットの新規性誘発性食欲不振(NIH)試験において抗不安効果を生じる。単回10分間の試験セッションの1時間前に化合物A(10〜1000μg/kg PO;青丸)または滅菌生理食塩水+0.5%Na−CMCビヒクル(1ml/kg PO;黒丸)で処置した2〜3ヵ月齢の雄SDラットでの、新規性誘発性食欲不振(NIH)試験における摂食までの待ち時間平均±SEMである。動物は、試験前に一晩食物を与えられず、研究用飼料は、試験中にオープンフィールドの中央チャンバ内に置かれた。
【0155】
図14に示すように、化合物Bは、ラットの新規性誘発性食欲不振(NIH)試験において抗不安効果を生じる。単回10分間の試験セッションの1時間前に化合物B(0.0001〜1μg/kg PO;青丸)または滅菌生理食塩水+0.5%Na−CMCビヒクル(1ml/kg PO;黒丸)で処置した2〜3ヵ月齢の雄SDラットでの、新規性誘発性食欲不振(NIH)試験における摂食までの待ち時間平均±SEMである。動物は、試験前に一晩食物を与えられず、研究用飼料は、試験中にオープンフィールドの中央チャンバ内に置かれた。
【0156】
実施例15
器質的鎮痛のBennettモデルを用いて、足引込み閾値によって測定された化合物の鎮痛効果を評価する。Bennett GJ,Xie YK,“A peripheral mononeuropathy in rat that produces disorders of pain sensation like those seen in man,”Pain33:87−107,1988。動物が手術から回復したが、von freyフィラメントの適用後に依然として低い足引込み閾値を示す場合、鎮痛応答の試験をしている動物で神経部分損傷手術を実施する。ビヒクル動物は、手術を受け、次いで試験化合物ではなくビヒクルを投与される。試験化合物またはビヒクル投与の1時間後、24時間後および1週間後に動物を試験した。
【0157】
2〜3ヶ月齢の雄Sprague Dawleyラットを用いた。Harlanは、全研究のサプライヤであった。ラットをアスペンウッドチップの敷材と共にLuciteケージに収容し、12:12の明暗サイクル(午前5時に点灯)で維持し、試験を通してPurina研究用飼料(USA)および水道水を自由摂取させた。
【0158】
吸入イソフルラン(2.5%)を用いてラットを麻酔した。神経部分損傷手術は、以前に記載されているように(Bennett and Xie,1988)実施した。切開部(約1.5cmの長さ)を、大腿と平行およびその後方に、右後脚の皮膚上にメスの刃で背中側に作製した。小さい先尖止血鉗子を用いて大腿二頭筋と大腿筋とを分離した。湾曲した鈍頭鉗子を用いて一般的な坐骨神経を分離し、露出させた。器質的鎮痛試験のために坐骨神経全体を結紮した。止血鉗子/鉗子およびchromic gut(5−0)を使用して神経をゆるくこま結びで結紮し、3つの結紮を1mm間隔で神経上に配置した。結紮糸は、縫合糸が神経の上または下に滑らない程度まで締め付けられた。このプロトコルは、神経の部分的機能喪失をもたらした。熱鎮痛試験のために坐骨神経の一般的な腓骨および脛骨の枝を結紮し切断し、腓腹枝を温存した。Decosterd I,Woolf CJ,“Spared nerve injury: an animal model of persistent peripheral neuropathic pain,”Pain 87:149−158,2000を参照されたい。試験は、手術後1〜2週間で行われた。
【0159】
試験中、ラットを、懸架されたワイヤメッシュグリッド(1cm×1cm、直径0.3cmのワイヤを用いた)の表面に15〜20分間順化した。各Von Freyフィラメントを、最も小さいものから、障害した(同側の)後足の足底面にわずかに曲がるまで垂直に押し付け、次いで6秒間保持した。フィラメントの回収直後に明白な後足引込みまたは尻込み挙動が観察されなかった場合、次のより大きいフィラメントが同様に使用された。応答があった場合、より低いフィラメントが使用された。これは、6応答が収集されるまで繰り返された。
【0160】
試験は、化合物Aおよび化合物B(0.1〜10mg/kg PO)、ガバペンチン(150mg/kg PO)または0.9%滅菌生理食塩水中0.5%Na−CMC投与の1時間後に行った。動物は、投薬の24時間後および1週間後に再試験した。化合物Aの結果を図15に示し、化合物Bの結果を図16に示す。両方の化合物について、10mg/kg POの単回投与は、投与後1時間、24時間および1週間、Bennettモデルにおける器質的鎮痛効果を生じたが、ガバペンチンは、投与後1時間のみ鎮痛効果を生じた。
【0161】
実施例16
抗うつ薬様作用を測定するために非臨床インビボ薬理試験(Porsoltアッセイ)を行った。化合物Aおよび化合物Bと比較するために陰性対照(0.9%滅菌食塩水中0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム)および陽性対照(化合物D)を用いた。本研究は、5分間の水泳試験中のラットの応答(浮遊時間の減少)によって評価されるPorsolt強制水泳試験における各化合物の効果の用量反応曲線の構築を可能にした。
【0162】
2〜3ヶ月齢の雄Sprague Dawleyラットを使用した(Harlan、Indianapolis、IN)。ラットをアスペンウッドチップの敷材と共にLuciteケージに収容し、12:12の明暗サイクル(午前5時に点灯)で維持し、試験を通してPurina研究用飼料(USA)および水道水を自由摂取させた。
【0163】
ラットでの使用に適合させたPorsolt強制水泳試験は、Burgdorf et al.,(The long−lasting antidepressant effects of rapastinel(GLYX−13)are associated with a metaplasticity process in the medial prefrontal cortex and hippocampus.Neuroscience 308:202−211,2015)に記載されるように実施した。動物を、初日に15分間(馴化)、その後の試験日には5分間、水道水(23±1℃)で30cmまで満たした高さ46cm×直径20cmの透明ガラス管に入れた。動物を化合物(化合物Aおよび化合物B)、陽性対照(化合物D、10μg/kg)またはビヒクル(0.9%滅菌生理食塩水中0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na−CMC))の投与から1時間後に試験した。1動物おきの後に水を変えた。動物をビデオ撮影し、動物の頭を水の上に保つのに必要な労力の最小量として定義される浮遊時間が、高い評価者間信頼度(ピアソンのr>0.9)を有する盲検の実験者によってオフラインで採点された。
【0164】
EC50は、log(用量)線形プロットから半最大効果(ビヒクルおよび最大有効用量の平均)を示す用量(または用量の対数線形補間)として定義した。最大有効用量は、ビヒクルと統計学的に異なるが、その用量より高い用量と統計学的に均等(フィッシャーのPLSDによる)である最低容量であると定義された。
【0165】
化合物Aの結果を図17に示す。成体雄Sprague Dawleyラットに化合物A(10〜1000μg/kg PO;青丸または線で接続されたデータ点)、陽性対照化合物D(10μg/kg PO;緑丸または10μg/kg POのデータ点)または0.9%生理食塩水中Na−CMC(1ml/kg PO;黒丸または1ml/kg POのデータ点)を試験の1時間前に投与した。ラットPorsolt試験における平均±SEM浮遊時間を示す。動物は、5分間の試験の1日前に15分間の馴化セッションを受けた。一群あたりN=6〜18である。示されるように、化合物Aは、投与後1時間のビヒクル群と比較して、Porsolt試験における浮遊時間の減少によって測定される抗うつ薬様効果を生じる。
【0166】
化合物Bの結果を図18に示す。成体雄Sprague Dawleyラットに化合物B(0.1〜10μg/kg PO;青丸または線で接続されたデータ点)、陽性対照化合物D(10μg/kg PO;緑丸または10μg/kg POのデータ点)または0.9%生理食塩水中Na−CMC(1ml/kg PO;黒丸または1ml/kg POのデータ点)を試験の1時間前に投与した。ラットPorsolt試験における平均±SEM浮遊時間を示す。動物は、5分間の試験の1日前に15分間の馴化セッションを受けた。一群あたりN=6〜18である。示されるように、化合物Bは、投与後1時間のビヒクル群と比較して、Porsolt試験における浮遊時間の減少によって測定される抗うつ薬様効果を生じる。
【0167】
実施例17
以下の表は、化合物A、化合物B、tert−ブチル(R)−2−((2S,3R)−1−アミノ−3−ヒドロキシ−1−オキソブタン−2−イル)−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−5−カルボキシレート(化合物W)、tert−ブチル(S)−2−((2S,3R)−1−アミノ−3−ヒドロキシ−1−オキソブタン−2−イル)−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−5−カルボキシレート(化合物X)、(2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−((R)−5−イソブチリル−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−2−イル)ブタンアミド(化合物Y)、または(2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−((S)−5−イソブチリル−1−オキソ−2,5−ジアザスピロ[3.4]オクタン−2−イル)ブタンアミド(化合物Z)の存在下での野生型NMDAR2サブタイプの相対インビボ結合データを示す。
【0168】
【表7】
【0169】
【表8】
【0170】
均等物
当業者は、ルーチンの実験のみを用いて、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多数の均等物を認識または確認することができる。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されるものとする。
【0171】
参照による組み込み
本明細書に引用される特許、公開特許出願、ウェブサイトおよび他の参考文献の全内容は、その全体が参照により明示的に本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18