(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
抗ROR−1抗体を含む、ROR−1発現癌の転移を抑制するための薬学的組成物であって、該抗ROR−1抗体が、配列番号27に示される配列を含むCDR1、配列番号28に示される配列を含むCDR2、および配列番号29に示される配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号30に示される配列を含むCDR1、配列番号31に示される配列を含むCDR2、および配列番号32に示される配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、薬学的組成物。
抗ROR−1抗体を含む、ROR−1発現癌を治療するための薬学的組成物であって、該抗ROR−1抗体が、配列番号27に示される配列を含むCDR1、配列番号28に示される配列を含むCDR2、および配列番号29に示される配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号30に示される配列を含むCDR1、配列番号31に示される配列を含むCDR2、および配列番号32に示される配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、薬学的組成物。
【図面の簡単な説明】
【0028】
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図1】乳癌におけるROR1の高レベルの発現が、より短い無転移生存およびEMT遺伝子シグネチャに関連していることを示している。(A)グラフは、PubMedのGEOデータベース(GSE2603、GSE5327、GSE2034、およびGSE12276)を介して利用可能な公開されているデータから得られた。カプランマイヤー曲線は、全体的無転移生存におけるROR1の発現の予後の影響を示している。各分析のために、582件の症例を、最も高いレベルのROR1 mRNAを伴う腫瘍を有していた患者の3分の1を表すROR1Hと指定されたグループと、最も低いレベルのROR1 mRNAを伴う癌を有していた患者の3分の1を表すROR1Lと指定されたグループとにより、三分位に分離した。ROR1 mRNAの中間の発現を伴う腫瘍を有していた患者の三分の一が、ROR1Mと指定された。無転移生存は、カプランマイヤー分析により判定され、統計的な差は、ログランク検定により判定された。各カテゴリにおける患者の数、総転移性事象、および対応するP値(カイ二乗検定)が、組み込まれた表に示されている。(B)ROR1(上)、患者から単離された原発性乳癌細胞内のEMT関連遺伝子(SNAI1およびSNAI2コードスネイル1およびスネイル2、ZEB1コードZEB−1、VIMコードビメンチン、CDH2コードN−カドヘリン、CDH1コードE−カドヘリン、TJP1コードZO−1、TJP3コードZO−3、KRT19コードCK−19、またはCLDN3コードクラウディン3)の発現を示すヒートマップ。(C)ROR1−siRNAまたはCTRL−siRNAで治療されたMDA−MB−231(左)、HS−578T(中央)、BT549(右)細胞から単離されたEMT関連遺伝子の発現を示すヒートマップ。(D)上に示されるように、CTRL−shRNAまたはROR1−shRNAがトランスフェクトされた(下に示される)MDA−MB−231、HS−578T、またはBT549のタンパク質溶解物の免疫ブロット。免疫ブロットは左側に示されたタンパク質に特異的な抗体でプローブされた。(E)上に示されるように、対照ベクターまたはROR1発現ベクターがトランスフェクトされた、MCF7のタンパク質溶解物の免疫ブロット。免疫ブロットは左側に示されたタンパク質に特異的な抗体でプローブされた。
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図2】乳癌細胞株によるROR1の発現が、EMTの特徴およびより高い転移可能性と関連していることを示している。(A)上で示されるCTRL−shRNAまたはROR1−shRNAがトランスフェクトされたMDA−MB−231、HS−578T、またはBT549(左に示される)の形態的変化(40倍)。(B)CK−19、Eカドヘリン、またはビメンチンの発現が、63倍率下でCTRL−shRNAまたはROR1−shRNAがトランスフェクトされたMDA−MB−231細胞内で免疫蛍光法染色によって検出された。(C)(上で示される)対照ベクターまたはROR1発現ベクターがトランスフェクトされたMCF7細胞の形態的変化(40倍)。(D)CK−19、Eカドヘリン、またはビメンチンの発現が、対照ベクターまたはROR1−発現ベクター(63倍率)のいずれかがトランスフェクトされたMCF7細胞の免疫蛍光法染色によって検出された。(E)CTRL−shRNA(黒)またはROR1−shRNA(白)のいずれかがトランスフェクトされたMDA−MB−231、HS−578T、またはBT549上の細胞遊走(左ヒストグラム)または浸潤(右ヒストグラム)のアッセイ。全てのデータは、親細胞株について述べたものと異ならなかったCTRL−shRNAがトランスフェクトされた細胞の結果に対して正規化された。結果は、各試験群の平均値である(±標準誤差)(n=試験群あたり3)。(F)細胞遊走(上)または浸潤(下)のアッセイにおける、CTRL−shRNAがトランスフェクトされたMDA−MB−231(左パネル)またはROR1−shRNAがトランスフェクトされたMDA−MB−231(右パネル)の代表的な顕微鏡写真。データは平均±標準誤差として示され、CTRL−shRNA群と比較して、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001である。
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図3】ROR1サイレンシングが、乳房体異種移植後に乳癌の転移を低減することを示している。(A)研究のステージIまたはIIを示す図。(B)ステージIの間の経時(日)的な腫瘍体積。(C)各群から切除された腫瘍の重さ。(D)各群の原発性腫瘍のエクスビボ光子束。(E〜F)段階II中での各マウスのインビボ(e)肺光子束または(f)肝臓光子束は、各マウスについて原発性腫瘍光子束で正規化された。ヒストグラムは、各群の正規化された肺および肝臓光子束を示している。(G)各群のステージII中のインビボ肺光子束(H)水平線は、各群について21日目のマウスの平均エクスビボ肺光子束を示している(左)。右は、各群から摘出された肺の代表的な生物発光画像である。(I)ヒストグラムは、各群の肺重量指数を表す。(J)代表的なH&E染色された肺切片。(K)水平線は、各群についての21日目のマウスの平均エクスビボ肝臓光子束を示している(左)。右は、各群の21日目の摘出された肝臓の代表的な生物発光画像である。(l)各群について注射されたマウスの21日目のH&E染色された代表的な肝臓切片。データは、平均±標準誤差として示されている。データは、平均±標準誤差として示され、P>0.05は、有意でない(N.S.)と見なされ、CTRL−shRNA群と比較して、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001である。
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図4】ROR1サイレンシングは、インビボでMDA−MB−231細胞の実験的肺転移および骨転移を低減することを示す。A)5x10
5個のCTRL−shRNAがトランスフェクトされた、またはROR1−shRNAがトランスフェクトされた細胞を静脈内注射されたマウスのカプランマイヤー生存曲線(P<0.001、ログランク検定による)。(B)注射に続く、経時的な各群のインビボ肺光子束(左)。各群のマウスの代表的な生物発光画像が右に示されている。(C〜E)(c)3日目、(d)21日目、および(e)28日目の代表的なH&E染色された肺切片。(F)下のヒストグラムは、各群について28日目のエクスビボ肺GFP光子束を提供する。28日目の摘出された肺の代表的な生物発光画像。(G)28日目の各群からの肺重量指数(下)。各群の肺(上)の代表的な写真。(H)1x10
5個のCTRL−shRNAがトランスフェクトされた、またはROR1−shRNAがトランスフェクトされた細胞を食間に注射されたマウスのカプランマイヤー生存曲線(P=0.0017、ログランク検定による)。(I)食間の腫瘍注射後のマウスの代表的な生物発光画像。白いボックスは、(J)で提示された生物発光データを取得した領域を定義する。(J)ヒストグラムは、各群の正規化されたインビボ骨光子束を提供する。(K)21日目の各群の抽出された骨盤骨のエクスビボ骨光子束。抽出された骨盤骨の代表的な生物発光画像が、右に示されている。(L)各々からのマウスの代表的なH&E染色された組織学的骨切片。マウスの漫画は、参照文献(30)から修正されている。データは平均±標準誤差として示され、CTRL−shRNA群と比較して、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001である。
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図5】抗ROR1抗体がインビボでMDA−MB−231細胞の肺転移を低減することを示している。(A)D10 mAbは、ROR1の内在化を引き起こす。MDA−MB−231細胞が、氷上で30分間、対照IgG−Alexa647(red)またはD10−Alexa647で染色され、次いで、氷上で保存されたか(青)、またはフローサイトメトリーの前に37℃に1時間移された(橙)。(B)37℃で1時間のインキュベーションの前後にD10染色された(緑)MDA−MB−231細胞の共焦点顕微鏡。(C)MDA−MB−231細胞は、生存能力を喪失せずに蛍光色素ラベル、非交差遮断抗ROR1での染色の前に、24時間、(−)対照IgG(IgG)もしくはD10を伴いまたは伴わずに処理された。処理された細胞の平均蛍光強度(MFI)が示されている(***P<0.001、一元配置ANOVAによる)。(D)代表的な免疫ブロットは、D10または対照IgGでの治療の前(0時間)または1、4、または24時間後、MDA−MB−231から調製された溶解物のビメンチン(上)またはβ−アクチン(下)をプローブした。ビメンチンのβアクチンバンドに対する強度比率が、以下に提供される。対照IgG(IgG)または抗ROR1(ROR1)を使用したMDA−MB−231細胞溶解物の(E)免疫沈降物が、分析ビメンチン(上)またはROR1(下)に特異的な抗体でプローブされた免疫ブロットに使用された。(F)ヒストグラムは、D10または対照IgGで1時間予備処理された遊走したMDA−MB−231細胞の数を提供する。(G)左、インビボでの肺光子束を示すヒストグラム。右、代表的なH&E染色された肺切片。(H)グラフは、正規化されたインビボ肺光子束を示している。(I)IgG(上)またはD10(下)で処理された、腫瘍注射されたマウスの代表的な生物発光画像。(J)ヒストグラムは、肺重量指数を示している。(K)代表的なH&E染色された肺切片。データは平均±標準誤差として示され、IgG群と比較して、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001である。
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図6】ROR1抗体D10のエピトープをマッピングするために使用されるキメラ構築を示している。構築物の明部はマウスであり、暗部はヒトである。
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図7】マウスROR1タンパク質と反応しないD10抗体をマッピングするエピトープを示している。マウスまたはヒトのROR1タンパク質は、アミノ酸138、142、または160位において異なるアミノ酸残基を有し、ヒトROR1タンパク質は、これらの位置でアミノ酸残基E、S、またはYを有するが、一方で、マウスROR1タンパク質はそれぞれ、アミノ酸138、142、または160位においてアミノ酸残基K、T、またはSを有する。これらの位置でのみマウスまたはヒトのアミノ酸残基のいずれかを有する組換えヒトROR1タンパク質を生成した。これらの組換えタンパク質は、非変性ポリアクリルアミドゲル中で分離され、次いで、D10 mAbでプローブされたナイロン上に移された。この図に見られるように、D10は、組換えタンパク質1、3、4、および7と反応するが、2、5、または6とは反応せず、下の凡例に説明されている。ヒトROR1タンパク質の138位のヒトアミノ酸残基Eと、138位のマウスアミノ酸残基Tとの置換が、D10結合を終わらせることに留意されたい。
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図8】抗ヒトROR1抗体4A5をマッピングするエピトープを示している。マウスまたはヒトのROR1タンパク質は、アミノ酸88、105、109、または111位において異なるアミノ酸残基を有し、ヒトROR1タンパク質は、これらの位置でアミノ酸残基T、L、S、またはIを有するが、一方で、マウスROR1タンパク質はそれぞれ、アミノ酸88、105、109、または111位においてアミノ酸残基S、I、A、またはNを有する。これらの位置でのみマウスまたはヒトのアミノ酸残基のいずれかを有する組換えヒトROR1タンパク質を生成した。これらの組換えタンパク質は、非変性ポリアクリルアミドゲル中で分離され、次いで、4A5 mAbでプローブされたナイロン上に移された。この図に見られるように、4A5は、組換えタンパク質1、2、3、または5に結合することができたが、4には結合できなかった。組換えタンパク質4は、ヒトROR1タンパク質であるが、ヒトROR1タンパク質中に見て取れるアミノ酸残基Iではなく111位のマウスアミノ酸残基Nを伴う。
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図9A】抗ヒトROR1抗体D10が乳癌細胞の転移を阻害することを示す。A〜B.D10モノクローナル抗体は、ROR1受容体の内在化を容易にする。C.24時間の抗ROR1抗体によるD10の処理は、MDA−MB−231細胞中でROR1表面発現を減少させる。D.ROR1は乳癌MDA−MB−231細胞中でビメンチンと複合体を形成する。E.インビトロでのD10抗体処理は、ビメンチン発現を減少させることができた。F.抗ヒトROR1抗体は、インビトロで乳癌遊走を減少させる。G.D10モノクローナル抗体は、MDA−MB−231乳癌早期(2日目)の肺転移を阻害する。H.D10モノクローナル抗体は、MDA−MB−231乳癌の肺転移を阻害する。I.5E5 MDA−MB−231細胞を注射された代表的なマウスが背位で示されている。J.抗ヒトROR1抗体処置は、MDA−MB−231担持マウスの肺重量を低減させた。K.抗ROR1抗体治療の後のMDA−MB−231担持マウスからの代表的な肺H&E組織学。エラーバーは、標準誤差を示し、*p<0.05、**p<0.01であり、対応のない両側スチューデントt検定に基づく。
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図10】mAbs D10、99451、99961、または99221によって認識されるROR1エピトープに対して生成された高い親和性の抗体を示している。マウスまたはヒトのROR1タンパク質は、アミノ酸138、142、または160位において異なるアミノ酸残基を有し、ヒトROR1タンパク質は、これらの位置でアミノ酸残基E、S、またはYを有するが、一方で、マウスROR1タンパク質はそれぞれ、アミノ酸138、142、または160位においてアミノ酸残基K、T、またはSを有する。これらの位置でのみマウスまたはヒトのアミノ酸残基のいずれかを有する組換えヒトROR1タンパク質を生成した。これらの組換えタンパク質は、非変性ポリアクリルアミドゲル中で分離され、次いで、ナイロン上に移されて、左の余白に示されているように、3個のmAbの各々、99451、99961、または99221でプローブされた。この図に見られるように、これらの抗体の各々は、組換えタンパク質2、4、5、および8と反応するが、2、3、6、または7とは反応しない(下の凡例に説明されている)。ヒトROR1タンパク質の138位のヒトアミノ酸残基Eと、138位のマウスアミノ酸残基Tとの置換が、99451、99961、または99221のいずれかの結合を終わらせることに留意されたい。
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図11】野生型もしくは組換えROR1タンパク質に対する抗体D10または99961の結合活性を示している。ヒトまたはキメラROR1タンパク質をコードするベクターが、293個の細胞にトランスフェクトされた。これは、組換えヒト−マウスキメラROR1タンパク質の産生を可能にし、この組換えヒト−マウスキメラROR1タンパク質は、次いで、異なる抗ROR1 mAbでの免疫ブロット分析のために非変性PAGEゲル(右)またはSDS−PAGEゲル(左)においてサイズ分離することが可能であった。この結果は、D10および99961抗体の両方が、Ig様ドメインのC末端上の同じ領域に結合すること、ならびにD10および99961が、変性条件および天然条件の両方においてROR1と結合し得ることを示している。D10および99961は、13を除く全ての組換えタンパク質に結合することに留意されたい。13番のキメラタンパク質は、
図6に説明される通りである。完全なヒト細胞外ドメインは、いずれかのゲルの一番左のレーンで提供される。
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図12】抗ヒトROR1抗体99961の特徴付けを示している。A、B.99961抗体は、トランスジェニックマウスにおいてCLL生着を阻止することができた。C.99961抗体は、D10抗体の約50倍より大きい結合親和性を有する。
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図13】ヒト臍帯血再構成免疫不全マウスにおけるCLL細胞に対する99961の特異的活性を示す。A.99961抗体は、90%を超えるCLL細胞を排除する。B、C.99961抗体は、正常なBまたはT細胞発生には影響しない。
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図14】ROR+原発性AMLにおける99961の特異的活性を示している。
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図15】99961によって認識されるエピトープが、正常な造血幹または前駆細胞によって発現されないことを示している。
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図16】99961が正常な成体組織と交差反応しないことを示している。
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図17】免疫欠損マウスにおける99961についてのPK研究を示している。
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図18】ROR1ペプチドワクチンの設計を示している。3個の異なる抗体エピトープを使用して、ペプチドA19、R22、およびK19を作成した。ヒト(上)またはマウス(下)ROR1のいずれかに対応する線の上にA19、R22、またはK19のラベルが付けられた線がある。これらの線は、ROR1細胞外ドメインにおけるペプチド、A19、R22、またはK19の位置を説明する。
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図19】KLHをペプチドに複合体化するために使用される方法を示している。
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図20】ペプチドR22のペプチド設計を示している。KLHに複合体化するために使用されるようにペプチドのC端末に添加される。
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図21】D10および99961がR22ペプチドに結合する一方で、4A5は結合しないことを示している。
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図22】BALB/cマウスのR22免疫化のための免疫化スキームを示している。
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図23】R22誘導ROR1抗体がROR1に結合する、エピトープの免疫ブロット分析を示している。
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図24】C57BL/6マウスにおけるR22−KLHための免疫化スキームを示している。
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図25】4℃または37℃で1時間抗R22−KLH抗血清とインキュベートされ、次いで、ROR1発現のFACS分析の前に30分間氷上で、アイソタイプ対照−Alexa647ラベル抗体または4A5−Alexa647複合体で対比染色された、ROR1陽性MDA−MB−231乳癌細胞のFACS分析を示している。この結果は、トランスジェニックマウスからの抗ROR1血清が、37℃でROR1受容体内在化を誘導したが、4℃では誘導しなかったことを示した。
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図26】R22−KLHで免疫化されたトランスジェニックマウスからの抗ROR1血清が、インビトロで乳癌遊走を阻害することを示している。
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図27】C57BL/6マウスにおけるR−22−KLHのための免疫化スキームを示している。
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図28】
図18で説明される3個のペプチドのうちの任意の1個のKLH複合体で免疫化されたマウスの抗血清の滴定曲線を示している。ELISAを介して評価された、抗血清のヒトROR1タンパク質でコーティングされたポリスチレンプレートへの結合を描写する。
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図29】EW36、JeKo−1、またはCLL細胞のFACS分析を示している。この研究のために、R22−KLHで免疫化されたマウスからの抗血清の希釈物を、20分間4℃で細胞と共にインキュベートした。細胞は、次いで、洗浄され、次いで、フローサイトメトリーによる検出のために蛍光色素と複合体化されたヤギ抗マウスIgでラベル付けされた。中空のヒストグラムは、最初にR22−KLH抗血清で細胞をインキュベートせずに、ヤギ抗マウスIgで染色された細胞である。影付きのヒストグラムは、最初に抗R22−KLH抗血清とインキュベートされた細胞の蛍光である。細胞の蛍光の増加は、表面に結合されたマウス抗ROR1抗体によるものであり、これは、次いで、ヤギ抗マウスIgで検出された。予備免疫化されたこれらのマウスの抗血清またはKLHで免疫化されたマウスの抗血清は、これらの細胞に結合しなかった。
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図30】凡例に示されている細胞を洗浄し、丸底96ウェルプレート(Corning Costar)においてRPMI/10%FBS中で1ウェルあたり5×10
5個の細胞25μlを播種した。希釈された抗血清(25μl)および赤ん坊のウサギ補体の1:5での希釈25μlがウェル毎に添加された。D10 mAbが、陽性対照として使用された。全ての条件は三連で行われた。プレートを4時間37℃でインキュベートし、細胞は、DiOC6/PI染色およびフローサイトメトリー分析によって生存率を直ちに定量した。この研究は、D10、またはR22−KLHペプチドに対して生成された抗血清のいずれかが、細胞担持ヒトROR1の補体媒介溶解を方向付けることができたことを示している。ROR1を担持しない細胞は、死滅しなかった(図示されず)。
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図31】C57BL/6マウスのための第1のR22−KLH免疫化スキームを示している。このペプチドは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)と複合体化され、次いで、上で図示されたスキーマに従ってC57BL/6マウスを免疫化するために使用された。KLHまたはR22−KLHの第1の注射は、フロイント完全アジュバント(CFA)においてであった。第2の注射およびその後の注射は、フロイント不完全アジュバント(IFA)においてであった。これらの動物は、紫色の矢印でマークされた日に採血された。第1の注射の日から44日後に、C57BL/6マウスは、ヒトROR1トランスジェニックC57BL/6マウスに由来するヒトROR1発現CLLを投与され、マウスはまた、T細胞白血病1(TCL1遺伝子)についてもトランスジェニックであり、同様にB細胞特異的プロモータ/エンハンサ(E−Cμ)の制御下にある。この白血病はヒトCLLに類似し、ヒト表面ROR1を発現する。
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図32】R22−KLHでの免疫化の結果を示している。A.KLHで免疫化されたマウスからの代表的な脾臓対R22−KLHで免疫化されたマウス。B.C57BL/6マウスにおけるROR1ペプチドR22−KLHでの免疫化によるROR1+CLLの生着の阻害。
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図33】C57BL/6マウスにおけるR22−KLHについての第2の免疫化スキームを示している。
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図34】R22ペプチドの免疫化の結果を示している。A.KLHで免疫化されたマウスからの脾臓およびR22−KLHで免疫化されたマウス。B.C57BL/6マウスにおけるR22−KLHでの免疫化に続くROR1+CLLの生着の阻害。
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図35】B220(y軸)またはROR1(x軸)に特異的な蛍光色素複合体化mAbを使用して、KLH(上行)またはR22−KLH(下行)のいずれかで免疫化されたC57BL/6マウスからの脾細胞のFACS分析である。細胞を染色するために使用されるmAbは、R22−KLHによって誘導される抗体よりROR1の非交差遮断エピトープと結合する。ボックスは、白血病細胞が検出された領域の輪郭を示している。存在する場合、R22−KLHワクチンで免疫化されたマウスの脾臓内の白血病細胞がはるかに少ないことに留意されたい。
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図36】ROR1+CLL細胞上のROR1のFACS分析であり、これは、ROR1がC57BL/6マウスにおけるR22−KLHでの免疫化後に下方調節されたことを示している。
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図37】KLHまたはR22−KLHで免疫化されたマウス内に存在するCD8+T細胞のFACS分析である。A.R22での免疫化は、KLHで免疫化されたマウスに存在しない、CD8+T細胞の数の増加を引き起こす。下のパネルは、KLHまたはR22−KLHのいずれかで75日前に、最初に免疫化されたマウスの脾臓からのCD8+T細胞の割合を示している。
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図38】ROR1トランスジェニックマウスのR22−KLH免疫化のための免疫化スキームを示している。
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図39】ROR1−TgマウスにおけるROR1ペプチドR22での免疫化によるROR+CLL生着の阻害のFACS分析である。
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図40】ROR1トランスジェニックマウスにおけるR22−KLHでの免疫化の結果を示している。ROR1+CLLは、ROR1トランスジェニックマウスにおいてR22−KLHでの免疫化に続き阻害された。
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図41】ROR1+CLL細胞上のROR1のFACS分析であり、これは、ROR1がROR1トランスジェニックマウスにおけるR22−KLHでの免疫化後に下方調節されたことを示している。
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図42】KLHまたはR22−KLHで免疫化されたROR1−Tgマウスに存在するCD3+Tリンパ球のFACS分析である。パネルAは、R22−KLHでの免疫化がTリンパ球の増殖を引き起こしたことを示している。パネルBは、75日目にマウスの脾臓から採取されたCD3+Tリンパ球の割合(%)を示している。
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図43】KLHまたはR22−KLHで免疫化されたマウスに存在するCD4+T細胞のFACS分析である。パネルAは、R22−KLHでの免疫化が、KLHで免疫化されたマウスに検出されないCD4+T細胞の数の増加を引き起こすことを示している。パネルB.75日目にマウスの脾臓から採取されたCD4+T細胞の割合(%)を示している。
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図44】KLHまたはR22−KLHで免疫化されたマウスに存在するCD8+T細胞のFACS分析である。パネルAは、R22−KLHでの免疫化は、KLHで免疫化されたマウスに検出されないCD8+T細胞の数の増加を引き起こすことを示している。パネルB.75日目にマウスの脾臓から採取されたCD8+Tの割合(%)を示している。
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図45】乳癌におけるROR1の高レベルの発現は、肺、骨、および脳のより短い無転移生存に関連していることを示している。グラフはPubMedのGEOデータベース(GSE2603、GSE5327、GSE2034、およびGSE12276)を介して入手可能な公開済みのデータから得られた。カプランマイヤー曲線は、(A)肺無転移生存、(B)骨無転移生存、または(C)脳無転移生存におけるROR1発現の予後の影響を示している。各分析のために、582件の症例は、最も高いレベルのROR1 mRNAを伴う腫瘍を有していた患者の3分の1を表すROR1Hと指定されたグループと、最も低いレベルのROR1 mRNAを伴う癌を有していた患者の3分の1を表すROR1Lと指定されたグループとにより、三分位に分離された。ROR1 mRNAの中間の発現を伴う腫瘍を有していた患者の三分の一が、ROR1Mと指定された。無転移生存は、カプランマイヤー分析により判定され、統計的な差は、ログランク検定により判定された。各カテゴリにおける患者の数、総転移性事象、および対応するP値(カイ二乗検定)が、組み込まれた表に示されている。
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図46】乳癌におけるROR1の高レベル発現は、より短い無転移生存に関連し、それらのER、PR、およびHER2状態から独立していることを示している。乳腺癌を有する582人の患者のコホートが、生存分析に含まれた。(A)ERNeg(n=242)およびER+(n=325)乳癌患者(左パネル)、PRNeg(n=274)およびPR+(n=271)乳癌患者(中央パネル)、ならびにHER2Neg(n=404)およびHER2+(n=106)乳癌患者(右パネル)の悪性細胞のROR1 mRNA発現のレベルの比較。結果は平均±標準誤差であり、p値は、スチューデントt−検定によって判定された。(B)全体的無転移生存におけるER状態の予後の影響(P=0.13、ログランク検定による)。(C)ER状態およびROR1 mRNA発現の全体的無転移生存に対する予後の影響(P<0.0001、ログランク検定による)。(D)全体的無転移生存におけるPR状態(P=0.0007、ログランク検定による)。(E)全体的無転移生存に対するPR状態およびROR1 mRNA発現の予後の影響(P<0.0001、ログランク検定による)。(F)全体的無転移生存におけるHER2状態(P=0.16、ログランク検定による)。(G)HER2状態およびROR1 mRNA発現の全体的無転移生存に対する予後の影響(P<0.0001、ログランク検定による)。
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図47】乳癌細胞株によるROR1の発現が、EMTの機能に関連していることを示している。(A)CTRL−shRNAまたはROR1−shRNAでトランスフェクトされたMDA−MB−231からの溶解物の免疫ブロットは、左に示されるように、ROR1(上)またはβ−アクチン(下)に特異的な抗体でプローブされた。(B)三連のサンプルにおいてqRT−PCRを介して検出される、VIMおよびKRT19の平均量(±標準誤差)。データは平均±標準誤差として示され、CTRL−shRNA群と比較して、*P<0.05、**P<0.01である。
【
図48】ROR1をサイレンシングすることはCXCR4の発現を低減することを示している。(A)ヒストグラムは、各ヒストグラムの下に示される、CTRL−shRNA2またはROR1−shRNA2のいずれかでトランスフェクトされたMDA−MB−231の三連のサンプルにおいてqRT−PCRを介して検出されたCXCR4 mRNAの量を示している。(B)それぞれ抗CXCR4−APCmAbまたはアイソタイプ対照mAb(影付きヒストグラム)で染色された、ROR1−shRNA2(緑の線の中空のヒストグラム)またはCTRL−shRNA2(青い線の中空のヒストグラム)が形質導入されたMDA−MB−231細胞の代表的なフローサイトメトリー蛍光ヒストグラムである。(C)細胞は、下部チャンバに200ng/mlの最終濃度まで添加されたCXCL12に対する走化性を検査するためにBDマトリゲル(商標)なしでトランスウェルの上部チャンバに播種された。37℃で6時間後に遊走した細胞が、10倍の倍率で計数された。ヒストグラムは各々、ヒストグラムの下に示されるように、CNTL−shRNAまたはROR1−shRNAのいずれかでトランスフェクトされたMDA−MB−231細胞が播種された3個のチャンバの各々において、遊走した細胞の数を提供する。結果は、3回の独立した実験を代表している。データは平均±標準誤差として示され、CTRL−shRNA群と比較して、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001である。
【
図49】ROR1をサイレンシングすることがEMT遺伝子発現を調整することを示している。ヒストグラムは、各ヒストグラムの下に示される、CTRL−siRNAまたはROR1−siRNAのいずれかでトランスフェクトされたMDA−MB−231(A)、HS578T(B)、およびBT549(C)の三連のサンプルにおいてqRT−PCRを介して検出された、様々な遺伝子の相対的なmRNAの量を示している。結果は、2回の独立した実験を代表している。データは平均±標準誤差として示され、CTRL−siRNA群と比較して、*P<0.05、**P<0.01である。
【
図50】ROR1をサイレンシングすることが注射部位における同所性異種移植片の中程度の後期成長阻害、しかし実験的肺転移の強力な阻害をもたらすことを示している。(A)RAG−/−γc−/−マウスが、CTRL−shRNAでトランスフェクトされたまたはROR1−shRNAでトランスフェクトされたMDA−MB−231の皮下(s.c.)または静脈内(i.v.)注射をされた。各マウスの注射された乳房脂肪体または肺内の原発性腫瘍の生物発光光子束は、腫瘍の注射に続く第1の測定のために検出された光子束に対して正規化された(100は、初期測定の日に検出された光子束の100%を表す)(上のパネル)。上の3つのグラフは、1×10
6個(左)、5×10
5個(中央)、または2.5×10
5個(右)の示された細胞の皮下注射を与えられたマウスの乳房脂肪体の正規化された生物発光光子束を示している。下のグラフは、1×10
6個(左)、5×10
5個(中央)、または2.5×10
5個(右)の示された細胞の静脈内注射を与えられた、マウスの肺の正規化された生物発光光子束を提供する。(注意:左下のグラフは、1×10
6個の示された細胞の静脈内注射を与えられたマウスの肺の実際の平均生物発光光子束を示している。)(B)ヒストグラムは、CTRL−shRNAでトランスフェクトされた(黒)もしくはROR1−shRNAでトランスフェクトされた(灰)MDA−MB−231、または細胞無し(白)を静脈内注射された21日目(n=5−8)の各群のマウスについての肺重量指数を示している。P値は、一元配置ANOVAによって判定された。(C)21日目の各群からのマウスを代表するH&E染色された肺切片。データは平均±標準誤差として示され、CTRL−shRNA群と比較して、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001である。
【
図51】実験的な転移巣の免疫組織化学を示している。RAG−/−γc−/−マウスが、5x10
5のCTRL−shRNAでトランスフェクトされたMDA−MB−231(上のパネル)およびROR1−shRNAでトランスフェクトされたMDA−MB−231(下のパネル)の静脈内(i.v.)注射をされた。(A)肺の切片が、21日目に安楽死させた動物から調製された。ROR1−shRNAでトランスフェクトされた細胞を注射されたマウスの肺は、免疫組織化学分析のために識別される転移巣をほとんど有さない。切片は、Ki67+、CK−19、またはビメンチン、または端末デオキシヌクレオチド転移dUTPニック末端ラベリング(トンネル)に特異的なmAbsで染色された。(40倍の倍率)。(B)(a)におけるような肺の切片が、ホスホ−AKT(左パネル)またはホスホ−CREB(右パネル)(40倍の倍率)に特異的なmAbで染色された。
【
図52】ROR1をサイレンシングすることが、インビボでMDA−MB−231由来の細胞株LM2−4175およびBoM−1833の肺転移および骨転移を減少させることを示している。(A)LM2−4175細胞が肺に優先的に転移し、BoM−1833細胞が骨に優先的に転移することを示す概略図。LM2−4175およびBoM−1833におけるROR1発現を示すフローサイトメトリー分析。マウスの漫画は、参照文献から修正されている(Canceer Cell、2009、1、67−78)。(B〜C)ROR1−shRNA2を使用した、LM2−4175およびBoM−1833におけるROR1サイレンシング効率を示すフローサイトメトリー分析。(D)マウスは各々、2x10
5個のCTRL−shRNAでトランスフェクトされたまたはROR1−shRNAでトランスフェクトされたLM2−4175細胞の静脈内注射を与えられた。左、各群の代表的な生物発光画像、右、各群の正規化されたインビボ肺光子束。(E)2x10
5個の示されるLM2−4175細胞を静脈内注射されたマウスのカプランマイヤー生存曲線(P<0.0001、ログランク検定による)。(F)21日目の各群の肺重量指数(下)。各群の肺の代表的な写真(上)。(G)21日目の各群のエクスビボ肺GFP光子束(下)。各群の骨の代表的な写真(上)。(H)21日目の代表的なH&E染色された組織学的肺切片。(I)マウスは各々、1x10
5個のCTRL−shRNAがトランスフェクトされたまたはROR1−shRNAがトランスフェクトされたBoM−1833細胞をi.c.注射された。上、各群の代表的な生物発光画像、下、各群の正規化されたインビボ骨光子束(J)21日目の代表的な骨のエクスビボ光子束、および骨のH&E染色された組織学的切片。(K)21日目の代表的な肝臓のエクスビボ光子束および肝臓のH&E染色された組織学的切片。データは平均±標準誤差として示され、CTRL−shRNA群と比較して、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001である。
【
図53】ROR1をサイレンシングすることがインビトロでHS−578TおよびBT549の遊走を阻害することを示している。データは平均±標準誤差として示され、対照IgGで処理された細胞と比較して、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、抗ROR1抗体またはこれらの抗原結合断片、ROR1抗体免疫複合体、ROR1ペプチドワクチン、またはROR1結合ペプチドを使用して、転移を阻害する組成物および方法の発展性のある発見に関する。
【0030】
本発明の組成物および方法を説明する前に、組成物、方法、および条件は様々であり得るので、本発明は、記載される特定の組成物、方法、および実験条件に限定されないことを理解されたい。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を記述することのみを目的としており、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲においてのみ制限されるため、制限することを意図しないこともまた理解されたい。
【0031】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される、単数形「a」、「an」、および「the」は、特に明確に記載のない限り、複数形の参照を含む。したがって、例えば、「方法」への言及は、1個以上の方法、および/または本開示などを閲読するとき、当業者に明らかになるであろう本明細書に記載の種類のステップを含む。
【0032】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および物質と同様もしくは同等の任意の方法および物質を本発明の実践または試験において使用することもできるが、好ましい方法および物質を、これから記載する。
【0033】
ROR1
本出願人は、多数の癌細胞株およびサンプル中に完全長ROR1の発現を以前発見したが、非白血病患者または正常な成人ドナーの血液もしくは脾臓リンパ球を含めた他の組織では発見せず、かつ全長ヒトROR1に対するマウス抗血清をも生成した。Fukuda et al.,Blood:ASH Annual Meeting Abstracts 2004 104,Abstract 772(2004)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。ポリペプチドおよびROR1のためのコード配列は他にも報告されており、また、この参照により本明細書に組み込まれる(例えば、受託番号NP_005003.1およびNM_005012.1を参照されたい)。CLL細胞などのWnt5aタンパク質を発現する癌細胞は、ROR1と結合するのみならず、結果として付与された生存優位性を持っている。本発明は、したがって、癌を治療または予防するために、癌細胞におけるROR−1発現の特異性を利用する手段を提供する。
【0034】
ROR1発現は、アポトーシスに対する耐性を高め、癌細胞の成長を促進することが示されている。例に示されるように、ROR1の発現は、胚形成および癌転移の間に起こる上皮間葉転換(EMT)と関連する。ROR1の高レベルの発現は、乳腺癌の患者における増大した再発および転移率と関連する。転移しやすい乳癌細胞株内でROR1をサイレンシングすることは、EMT関連タンパク質(例えば、ビメンチン、スネイル−1/2、およびZEB)の発現、上皮サイトケラチンおよびタイトジャンクションタンパク質(例えば、CK−19およびZO−1)の増大した発現を減弱し、それらの遊走/浸潤能および転移の可能性を少なくした。D10、ROR1に特異的なmAb、でのMDA−MB−231の処置は、癌細胞遊走を阻害するように、(ROR1と関連する)ビメンチンを下方調節する。MDA−MB−231を移植した免疫不全マウスへのD10の投与は、腫瘍転移を有意に阻害する。
【0035】
抗体
ある特定の実施形態は、ヒトROR1タンパク質に対して向けられる免疫ペプチドを含む。本明細書で記載される免疫グロブリンペプチドまたは抗体は、ROR1タンパク質に結合することが示される。ROR1結合活性は、特異的であり、ROR1に対する観察された抗体の結合は、非特異的な試薬により実質的に阻止されない。これらのROR1特異的な抗体を使用して、ROR1細胞と正常な細胞との間で区別することができる。ROR1特異的な抗体はまた、ROR−1癌の治療後の応答を判定し、転移を阻害するために、ROR1癌に対する免疫療法において使用することができる。このような免疫ペプチドは、当該技術分野で既知の種々の手段で産生され得る。
【0036】
本明細書で使用されるとき、抗体という用語は、全てのタイプの抗体および抗体断片(例えば、ポリクローナル、モノクローナルおよび、ファージ提示法によって産生されるもの)を包含する。特に好ましい本発明の抗体は、ROR1に対して比較的高い程度の親和性を有する抗体である。一定の実施形態において、抗体は、約Kd<10
−8MのROR1に対する親和性を呈する。
【0037】
実質的に精製されたものは一般に、非精製、例えば、天然状態または環境で抗体が関連している他の細胞成分を本質的に含まない組成物を指す。精製された抗体は、それは乾燥状態または水溶液中のいずれかにあり得るが、一般に均質な状態にある。純度および均一性は、典型的には、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学技術を用いて判定される。
【0038】
実質的に精製されたROR−1特異的抗体は、通常、医薬担体、賦形剤、アジュバント、緩衝剤、吸収増強剤、安定剤、防腐アジュバント、または他の共成分と抗体との混合または製剤化の前に、製剤中に存在する全ての高分子種の80%超を構成するであろう。より典型的には、抗体は、精製された調製物中に存在する全タンパク質の90%以上となるように精製される。特定の実施形態において、抗体は、95%を超える純度まで精製されるか、または本質的に均質であってもよく、他の高分子種は、従来の技術では検出されない。
【0039】
免疫グロブリンペプチドは、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、および抗体断片を含む。以下は、実施例で使用されたものと機能的に同等である類似の親和性および特異性を有する他の好適な免疫グロブリンペプチドを作るために当業者によって使用され得る方法を介した免疫グロブリンペプチド、具体的にはROR1抗体の生成を説明する。
【0040】
ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、ウマ、ウシ、種々の家禽、ウサギ、マウス、またはラットなどの種々の温血動物から当業者によって容易に生成され得る。簡潔に述べると、ROR1抗原は、フロイント完全または不完全アジュバントなどのアジュバントで、腹腔内注射、筋肉内注射、眼内注射、または皮下注射を介して動物を免疫化するために利用される。数回の追加免疫の後、血清のサンプルが収集され、ROR1に対する反応性について試験される。特に好ましいポリクローナル抗血清は、これらのアッセイの1つに、背景よりも少なくとも3倍大きいシグナルを与えるであろう。動物の力価は、ROR1に対するその反応性に関して安定状態に達すると、より大量の抗血清が、動物を毎週採血するかまたは放血させるかのいずれかによって容易に取得され得る。
【0041】
モノクローナル抗体
モノクローナル抗体(mAb)技術を使用して、ROR1に対するmAbsを取得することができる。簡潔に述べると、ハイブリドーマが、ヒトROR1抗原で免疫化されたマウスからの脾臓細胞を使用して産生される。各免疫化されたマウスの脾臓細胞は、例えば、ポリエチレングリコール融合法(Galfre,G.and Milstein,C.,Methods Enzymol.,73:3−46(1981))を用いて、マウス骨髄腫Sp2/0細胞と融合される。ハイブリドーマの成長、HAT培地での選択、抗原に対するクローンのクローニングおよびスクリーニングは、標準的な手法を用いて実行される(Galfre,G.and Milstein,C.,Methods Enzymol.,73:3−46(1981))。
【0042】
HAT選択されたクローンが、Galfre,G.and Milstein,C.,Methods Enzymol.,73:3−46(1981)に記載されるように、腹水中のmAbを大量に産生するためにマウスに注射され、これは、タンパク質Aカラムクロマトグラフィー(BioRad,Hercules,Calif.)を使用して精製され得る。mAbは、ROR−1に対するそれらの(a)特異性、(b)高い結合親和性、(c)アイソタイプ、および(d)安定性についてに基づいて選択され得る。
【0043】
mAbは、ウエスタンブロッティング(Koren,E.et al.,Biochim.Biophys.Acta 876:91−100(1986))および酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)(Koren,E.et al.,Biochim.Biophys.Acta 876:91−100(1986))を含む種々の標準的な技術のいずれかを使用して、ROR1特異性についてスクリーニングまたは試験することができる。
【0044】
ヒト化抗体
マウス抗体のヒト化形態は、組換えDNA技術(例えば、Queen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029−10033,1989、および国際特許第WO90/07861号(各々が、参照により組み込まれる)を参照)によって、非ヒト抗体のCDR領域をヒト定常領域に連結することによって生成することができる。ヒト抗体は、ファージディスプレイ法を使用して取得できる(例えば、Dower et al.、国際特許第WO91/17271号、McCafferty et al.、国際特許第WO92/01047号を参照)。これらの方法で、メンバーがそれらの外表面上に異なる抗体を提示する、ファージのライブラリが産生される。抗体は、通常、FvまたはFab断片として提示される。所望の特異性を有する抗体を提示するファージは、親和性濃縮度によって選択され得る。
【0045】
抗体断片
特定の用途のためにmAbの機能的断片を産生し使用することが所望であり得る。典型的なIgG分子の周知の基本構造は、2個の同一の軽ポリペプチド鎖(約220個のアミノ酸含有)および2個の同一の重ポリペプチド鎖(約440個のアミノ酸含有)からなる、約150,000〜200,000ダルトンの対称四量体のY字型分子である。重鎖は、少なくとも1個のジスルフィド結合により互いに連結されている。各軽鎖は、ジスルフィド結合によって隣接する重鎖に連結されている。抗原結合部位またはドメインは、Y字型の抗体分子の各腕に位置し、ジスルフィド結合された軽鎖および重鎖の各対のアミノ末端領域の間に形成される。軽鎖および重鎖のこれらのアミノ末端領域は、最初の約110個のアミノ末端のアミノ酸からなり、軽鎖および重鎖の可変領域として知られている。
【0046】
加えて、軽鎖および重鎖の可変領域内に、相補性決定領域(CDR)として知られているアミノ酸配列の広がりを含有する超可変領域が存在する。CDRは、エピトープと呼ばれる抗原分子上の1個の特定部位に対する抗体の特異性の原因である。したがって、典型的なIgG分子は、各抗原結合部位が各抗原分子の特異的なエピトープに結合可能であるので、それが2個の抗原分子に結合できるという点で、二価である。軽鎖および重鎖のカルボキシ末端領域は、他の抗体分子のものと類似するかまたは同一であり、定常領域と呼ばれる。特定の抗体の重鎖の定常領域のアミノ酸配列は、それが抗体のどのクラス(例えば、IgG、IgD、IgE、IgA、またはIgM)であるかを定義する。抗体のいくつかのクラスは、多価の抗原結合配置において互いに関連する2個以上の同一の抗体を含有する。
【0047】
ROR−1に結合するmAbのFabおよびF(ab')
2断片を、全mAbの代わりに使用することができる。FabおよびF(ab')
2断片は、完全な抗体分子より小さいので、より多くの抗原結合ドメインが、全抗体分子が使用されるときより、利用可能である。パパインによる典型的なIgG分子のタンパク質分解切断は、ジスルフィド連結を介して隣接する重鎖のアミノ末端部分に連結された完全な軽鎖を含有する、Fab断片と呼ばれる2個の個別の抗原結合断片を産生することが知られている。パパイン消化した免疫グロブリン分子の残りの部分は、Fc断片と呼ばれ、完全なまま残され、かつジスルフィド結合を介し一緒に連結された抗体のカルボキシ末端部分からなる。抗体がペプシンで消化される場合、Fc領域を欠いているが(Fab断片として)隣接する軽鎖と重鎖と間のジスルフィド結合によって一緒に保持される両方の抗原結合ドメイン、および隣接する重鎖の残りの部分の間のジスルフィド結合も含有する、F(ab')
2断片として知られる断片が産生される(Handbook of Experimental Immunology.Vol 1:Immunochemistry,Weir,D.M.,Editor,Blackwell Scientific Publications,Oxford(1986))。
【0048】
単鎖Fv断片(ScFvまたはScFv抗体)として知られる一本鎖抗原結合ポリペプチドである、組換え免疫グロブリンペプチドの産生および選択を容認する組換えDNA法が開発されている。更に、ScFvは、二重特異性抗体を産生するために二量体化することができる。ScFvは、目的の特異的なエピトープに結合し、例えば、Lowman et al.(1991) Biochemistry,30,10832−10838;Clackson et al.(1991) Nature 352,624−628;and Cwirla et al.(1990) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,6378−6382に記載されているように、組換え細菌ファージに基づく種々の方法のいずれかを使用して産生することができる。これらの方法は、通常、組換えM13またはfdファージなどの遺伝的に改変された繊維状ファージの産生に基づいており、それらは、融合タンパク質のアミノ末端領域として抗原結合性のScFv抗体と、融合タンパク質のカルボキシ末端領域として微量のファージコートタンパク質g3pとを含有する組換え融合タンパク質をファージ粒子の表面上に提示する。このような組換えファージは、容易に成長し得、周知のファージ法を用いて単離され得る。さらに、完全なファージ粒子は、通常、ファージ粒子から離れたScFvを単離する必要なしに、それらの表面上の抗原結合ScFvの存在(提示)を直接スクリーニングされ得る。
【0049】
ScFvを生成するために、標準的な逆転写酵素プロトコルが、ROR1抗原を標的化するためのmAbを産生するハイブリドーマから単離されたmRNAからcDNAを最初に生成するために使用される。mAbの重鎖および軽鎖可変領域をコードするcDNA分子が、次いで、マウス免疫グロブリン重鎖および軽鎖可変領域のための1組のプライマーを使用した標準的なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)手法によって増幅され得る(Clackson(1991) Nature,352,624−628)。mAb 重鎖および軽鎖可変領域をコードする増幅されたcDNAsは、次いで、組換えScFv DNA分子を生成するためにリンカーオリゴヌクレオチドで共に連結される。ScFvDNAは、g3pと呼ばれる微量のコートタンパク質をコードするファージ遺伝子の5'領域に増幅されたcDNA配列を融合するように設計された繊維状ファージプラスミドに連結される。大腸菌の細菌細胞は、組換えファージプラスミドで形質転換されるより、繊維状ファージが成長し、採取された。所望の組換えファージは、微量のコートタンパク質のアミノ端末領域と融合した抗原結合ドメインを提示する。次いで、このような「提示ファージ」は、結合抗原を可能にするScFv抗体タンパク質を含有するそれらのファージ粒子を吸着するために、例えば、「パニング」として知られる方法を用いて固定された抗原上を通過することができる(Parmley and Smith(1989) Adv.Exp.Med.Biol.251,215−218;Cwirla et al.(1990) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,6378−6382を参照されたい)。次いで、抗原結合ファージ粒子は、標準的なファージ感染法によって増幅され得、増幅された組換えファージ集団は、再度抗原結合能力について選択される。増幅前の、抗原結合能力についての選択のこのような連続ラウンドは、組換えファージ上に提示されたScFvにおいて増大した抗原結合能力のために選択する。増加した抗原結合親和性のための選択は、より緊密な結合活性を必要とするために結合が起こる条件を調整することによって行われ得る。
【0050】
増大した抗原結合活性を選択する別の方法は、抗原結合活性および増幅についての選択の連続ラウンドにScFv対象組換えファージ集団の結合ドメインをコードするcDNA内のヌクレオチド配列を改変することである(Lowman et al.(1991) Biochemistry 30,10832−10838;and Cwirla et al.(1990) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,6378−6382を参照されたい)。
【0051】
一旦ScFvが選択されると、組換えROR1抗体は、大腸菌株HB2151と併せて適切なベクターを使用して自由な形態で産生され得る。これらの細菌は実際に、ファージ成分を含まない可溶性形態のScFvを分泌する(Hoogenboom et al.(1991) Nucl.Acids Res.19,4133−4137)。HB2151細菌培養培地からの可溶性のScFvの精製は、AFFIGEL(商標)などの固体支持体上に固定された抗原分子を用いたアフィニティークロマトグラフィーによって達成することができる(BioRad,Hercules,Calif.)。
【0052】
組換え抗体技術の他の開発は、二量体および四量体にScFvを重合することによって、増加する結合の意欲などのさらなる改善の可能性について実証する(Holliger et al.(1993) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90,6444−6448を参照されたい)。
【0053】
ScFvがFabまたはF(ab')
2断片よりさらに小さい分子であるため、それらを使用して、可能な全抗体、F(ab')
2、またはFab断片の使用よりも、固体支持体物質上に固定化されたとき、単位面積当たりの抗原結合部位のより高い密度を達成することができる。さらに、組換え抗体技術は、ハイブリドーマと比較して、抗体のより安定した遺伝源を提供する。組換え抗体はまた、標準的な細菌ファージ産生法を使用して、より迅速かつ経済的に産生することができる。
【0054】
本発明の抗体またはこれらの抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、ポリクローナル、モノクローナル、多重特異性、ヒト、ヒト化、霊長類化された、もしくはキメラ抗体、単鎖抗体、エピトープ結合断片(例えば、Fab、Fab'およびF(ab')サブ2、Fd、Fv、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結Fv(sdFv))、VLもしくはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリによって産生された断片、ならびに抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書に開示されているROR1抗体に対する抗Id抗体)を含むが、これらに限定されない。ScFv分子は、当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第5,892,019号に記載されている。本発明の免疫グロブリンまたは抗体分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、または免疫グロブリン分子のサブクラスであり得る。ヒトROR1に対するscFvの例は、配列番号21、配列番号22、配列番号23、および配列番号24を含む。
【0055】
単鎖抗体を含む抗体断片は、単独で、または以下の全部または部分と組み合わせて可変領域(複数可)を含み得る:ヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメイン。また、本発明において、ヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメインを有する可変領域(複数可)の任意の組み合わせも含む抗原結合断片が含まれる。本発明の抗体またはその免疫特異的断片は、鳥類および哺乳類を含む任意の動物に由来し得る。好ましくは、抗体は、ヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマ、またはニワトリの抗体である。別の実施形態において、可変領域は、コンドリクトイド(condricthoid)が起源であり得る(例えば、サメ)。本明細書で使用されるとき、「ヒト」抗体は、例えば、米国特許第5,939,598号(Kucherlapatiら)において下に説明されるように、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、1個以上のヒト免疫グロブリンのためのヒト免疫グロブリンライブラリまたは動物のトランスジェニックから単離された、内因性免疫グロブリンを発現しない抗体を含む。
【0056】
組換え抗体産生
本明細書に記載される抗体を組換えて産生するために、軽鎖および重鎖可変領域をコードする核酸が、任意選択により、定常領域に連結され、発現ベクターに挿入される。軽鎖および重鎖は、同じまたは異なる発現ベクター内でクローニングすることができる。例えば、配列番号1〜5の重鎖および軽鎖を、本発明に従って使用することができる。米国特許第6,287,569号(Kippsら)の教示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、本明細書において提供される方法は、本発明のワクチンを作るために当業者によって容易に適合され得る。抗体鎖をコードするDNAセグメントは、抗体鎖の発現を確実にする発現ベクター(複数可)における制御配列に操作可能に連結される。このような制御配列は、シグナル配列、プロモータ、エンハンサ、および転写終結配列を含み得る。
【0057】
発現ベクターは、典型的には、エピソームとして、または宿主染色体の不可欠な部分として、宿主生物内で複製可能である。大腸菌は、本発明の抗体を発現するために特に有用である1個の原核生物宿主である。使用に好適な他の微生物宿主として、枯草菌などのバチルス、およびサルモネラ、セラチア、および様々なシュードモナス種など他の腸内細菌が挙げられる。これらの原核生物宿主中でまた、典型的に宿主細胞(例えば、複製起源)と適合性のある発現制御配列を含有する発現ベクター、およびラクトースプロモータ系などの調節配列、トリプトファン(trp)プロモータ系、β−ラクタマーゼプロモータ系、またはファージラムダからのプロモータ系を作ることができる。酵母などの他の微生物も発現のために使用され得る。サッカロミセスは、所望に応じて、3−ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の糖分解酵素を含むプロモータ、および複製起源、終結配列などの、発現制御配列を有する好適なベクターを有する好ましい宿主である。哺乳類組織細胞培養もまた、本発明の抗体を発現し産生するために使用され得る(例えば、Winnacker,From Genes to Clones VCH Publishers,N.Y.,1987を参照されたい)。完全な抗体を分泌することが可能ないくつかの好適な宿主細胞株が開発されているので、真核細胞が好ましい。本発明の免疫グロブリンをコードする核酸を発現するために好ましい好適な宿主細胞は、以下を含む:SV40(COS−7、ATCC CRL 1651)によって形質転換されたサルの腎臓CV1株、ヒト胚性腎臓株、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK,ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、マウスセルトリ細胞、サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL 1587)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2)、イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065)、マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51)、およびTRI細胞。
【0058】
目的のポリヌクレオチド配列を含有するベクター(例えば、配列および発現制御配列をコードする重鎖および軽鎖)は、宿主細胞に移すことができる。塩化カルシウムトランスフェクションが、一般に、原核細胞に利用されるが、リン酸カルシウム処理または電気穿孔を、他の細胞宿主に使用することができる(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,2nd ed.,1989を参照されたい)。重鎖および軽鎖が、個別の発現ベクター上でクローニングされるとき、ベクターは、完全な免疫グロブリンの発現およびアセンブリを取得するように同時トランスフェクトされる。組換えDNAの導入後、免疫グロブリン産生物を発現する細胞株は、選択された細胞である。安定した発現が可能な細胞株が好ましい(すなわち、細胞株の50回の継代後、衰えることのない発現レベル)。
【0059】
一旦発現されると、全抗体、それらの二量体、個々の軽鎖および重鎖、または本発明の他の免疫グロブリンの形態は、硫酸アンモニウム沈殿、親和性カラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む、当該技術分野の標準的な手順に従って精製することができる(例えば、Scopes,Protein Purification,Springer−Verlag,N.Y.,1982を参照されたい)。少なくとも約90〜95%の均質性の実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、98〜99%以上の均質性が最も好ましい。
【0060】
複数の特異的抗体、抗体免疫複合体、および融合分子
本発明のROR1抗体またはこれらの抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、「多重特異性」(例えば、二重特異性、三重特異性、またはそれ以上の多重特異性)であり得、これは、1個以上の異なる抗原(例えば、タンパク質)上に同時に存在する2個以上の異なるエピトープを認識し、それに結合することを意味する。したがって、ROR1抗体が「単一特異性」であるか、または「多重特異性」(例えば、「二重特異性」)であるかは、結合ポリペプチドが反応する異なるエピトープの数を指す。多重特異性抗体は、本明細書に記載の標的ポリペプチドの異なるエピトープに対して特異的であり得るか、または標的ポリペプチド、ならびに異種ポリペプチドまたは固体支持物質などの異種エピトープに対して特異的であり得る。
【0061】
本明細書で使用されるとき、「結合価」という用語は、可能性のある結合ドメイン(例えば、ROR1抗体、結合ポリペプチド、または抗体内に存在する抗原結合ドメイン)の数を指す。各結合ドメインは、1個のエピトープに特異的に結合する。ROR1抗体、結合ポリペプチド、または抗体は、2個以上の結合ドメインを含むとき、各結合ドメインは、「二価単一特異性」と呼ばれる2個の結合ドメインを有する抗体のために、同じエピトープと特異的に結合し得るか、または「二価二重特異性」と呼ばれる2個の結合ドメインを有する抗体のために、異なるエピトープに対して結合し得る。抗体はまた、各特異性について二重特異性および二価であり得る(「二重特異性四価抗体」と呼ばれる)。別の実施形態において、四価低分子化抗体またはドメイン欠失抗体を作ることができる。
【0062】
二重特異性二価抗体およびそれらを作る方法は、例えば、米国特許第5,731,168号、同第5,807,706号、同第5,821,333号、および米国特許出願公開第2003/020734号および同第2002/0155537号(これらの全ての開示は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。二重特異性四価抗体およびそれを作る方法は、例えば、国際特許第WO02/096948号および同第WO00/44788号(これらの両方の開示は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。一般に、PCT公開第WO93/17715号、同第WO92/08802号、同第WO91/00360号、同第WO92/05793号、Tutt et al.,J.Immunol.147:60−69(1991)、米国特許第4,474,893号、同第4,714,681号、同第4,925,648号、同第5,573,920号、同第5,601,819号、Kostelny et al.,J.Immunol.148:1547−1553(1992)を参照されたい。
【0063】
本発明は、多重特異性ROR1抗体を含む。例えば、二重特異性抗体は、2個のscFv抗体断片から構成され、その両方がROR1と結合する。scFv抗体断片は、ROR1上で同じまたは異なるエピトープを結合し得る。追加の例として、多重特異性抗体は、配列番号1、配列番号5、配列番号9、配列番号13、配列番号17、配列番号39、または配列番号42からなる群から選択される重鎖可変領域と、配列番号3、配列番号7、配列番号11、配列番号15、配列番号19、配列番号41、または配列番号45からなる群から選択される軽鎖可変領域とを有する抗体のエピトープに結合する二重特異性抗体であり得る。
【0064】
本発明は、融合タンパク質までさらに拡張する。融合タンパク質は、例えば、少なくとも1個の標的結合部位を有する免疫グロブリン抗原結合ドメインと、少なくとも1個の異種部分(すなわち、それが自然の中で自然に連結されていない部分)とを含むキメラ分子である。アミノ酸配列は、通常、融合ポリペプチド内で一緒になる別個のタンパク質内に存在し得るか、またはそれらは、通常、同じタンパク質内に存在し得るが、融合ポリペプチド内の新しい配置内に置かれる。融合タンパク質は、例えば、化学合成によって、またはペプチド領域が所望の関係においてコードされるポリヌクレオチドを作り、翻訳することによって、作られ得る。
【0065】
本発明のROR1抗体またはこれらの抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、N末端もしくはC末端で異種ポリペプチドに組換え的にさらに融合され得るか、またはポリペプチドもしくは他の組成物と化学的に複合体化(共有および非共有複合体化を含む)され得る。例えば、ROR1特異的な抗体は、組換え的に融合され得るか、または検出アッセイおよび異種ポリペプチド、薬物、放射性核種、または毒素などのエフェクター分子でラベルとして有用な分子に複合体化され得る。例えば、PCT公開第WO92/08495号、同第WO91/14438号、同第WO89/12624号、米国特許第5,314,995号、および欧州特許第EP396,387号を参照されたい。本発明の放射標識ROR1抗体は、特に有用であろう一方、抗体薬物複合体(ADC)は、まだ開発されていない。
【0066】
本発明のROR1抗体、またはこれらの抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、(すなわち、抗体に対する任意のタイプの分子の共有結合によって)修飾された誘導体を含み、共有結合が、抗体がROR1に結合することを妨げないようにする。例えば、限定はしないが、抗体誘導体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、ホスフィル化、リン酸化、アミド化、既知の保護/ブロック基、タンパク質分解切断による誘導体化、細胞リガンドまたは他のタンパク質などへの結合によって修飾された抗体を含む。多数の化学修飾のいずれも、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含むがこれらに限定されない、既知の技術によって実施することができる。加えて、誘導体は、1個以上の非古典的アミノ酸を含有し得る。
【0067】
本発明のROR1抗体またはこれらの抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、ペプチド結合または修飾されたペプチド結合(すなわち、ペプチド等価物)によって互いに接合されるアミノ酸からなり得、20個の遺伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸を含み得る。ROR1特異的抗体は、翻訳後の処理として、または当該技術分野で周知の化学修飾技術などの天然のプロセスによって修飾され得る。このような修飾は、基本的な文書およびより詳細な学術論文、ならびに多数の研究文献に十分に説明されている。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノもしくはカルボキシル末端を含むROR1特異的抗体のどこでも、または炭水化物などの部分に発生し得る。同じタイプの修飾が、所定のROR1特異的抗体のいくつかの部位に同じまたは様々な程度で存在し得ることが理解されるであろう。
【0068】
本発明はまた、ROR1抗体またはこれらの抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体と、異種ポリペプチドとを含む、融合タンパク質を提供する。抗体が融合された異種ポリペプチドは、機能のために有用であるか、ROR1ポリペプチド発現細胞を標的とするのに有用であり得る。一実施形態において、本発明の融合タンパク質は、本発明の抗体またはこれらの断片もしくは変異体のVH領域のうちの任意の1個以上のアミノ酸配列もしくは本発明の抗体のVL領域のうちの任意の1個以上のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有する、ポリペプチドを含む。
【0069】
別の実施形態において、本明細書に開示される治療方法で使用するための融合タンパク質は、ROR1特異的な抗体、またはその断片、変異体、もしくは誘導体の、配列番号27、配列番号28、および配列番号29からなる群から選択されるVH−CDRのうちの任意の1個、2個、3個のアミノ酸配列、あるいはROR1特異的な抗体、またはその断片、変異体、もしくは誘導体の、配列番号30、配列番号31、および配列番号32からなる群から選択されるVL−CDRのうちの任意の1個、2個、3個のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有する、ポリペプチドを含む。一実施形態において、融合タンパク質は、本発明のROR1特異的な抗体、またはこの断片、誘導体、もしくは変異体のVH−CDR3のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有する、ポリペプチドを含み、この融合タンパク質は、ROR1の少なくとも1個のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態において、融合タンパク質は、本発明のROR1特異的な抗体またはこの断片、誘導体、もしくは変異体の少なくとも1個のVH領域のアミノ酸配列および本発明のROR1特異的な抗体の少なくとも1個のVL領域のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有する、ポリペプチドを含む。好ましくは、融合タンパク質のVHおよびVL領域は、ROR1の少なくとも1個のエピトープに特異的に結合する単一源抗体(またはscFvもしくはFab断片)に対応する。さらに別の実施形態において、本明細書に開示される診断および治療方法で使用するための融合タンパク質は、ROR1特異的な抗体のVHC DRのうちの任意の1個、2個、3個、もしくはそれ以上のアミノ酸配列およびROR1特異的な抗体のうちの任意の1個、2個、3個、もしくはそれ以上のVL CDRのアミノ酸配列と、あるいはこれらの断片もしくは変異体と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含む。好ましくは、2個、3個、4個、5個、6個、またはそれ以上のVH−CDR(複数可)もしくはVL−CDR(複数可)が、本発明の単一源抗体(またはscFvもしくはFab断片)に対応する。これらの融合タンパク質をコードする核酸分子もまた、本発明により包含される。
【0070】
融合タンパク質は、当該技術分野で周知の方法を用いて調製され得る(例えば、米国特許第5,116,964号および同第5,225,538号を参照されたい)。融合がなされる正確な部位は、融合タンパク質の分泌または結合特性を最適化するように経験的に選択され得る。融合タンパク質をコードするDNAは、次いで、発現のために宿主細胞内にトランスフェクトされる。
【0071】
本発明は、特に好ましい抗ヒトROR1抗体(すなわち、抗体99961と同じ結合特異性を有する単離された抗ROR1抗体)を提供する。一態様において、抗体は、ROR1のCRDドメインと隣接するIg様ドメインに結合する。追加の態様において、抗体は、hROR1のアミノ酸42〜160に結合する。さらなる態様において、抗体は、ROR−1のアミノ酸130〜160に結合する。別の態様において、抗体は、結合するために、hROR1の138位のグルタミン酸の存在を必要とする。
【0072】
追加の実施形態において、本発明は、配列番号1、配列番号5、配列番号9、配列番号13、および配列番号17からなる群から選択される重鎖可変領域が、および配列番号3、配列番号7、配列番号11、配列番号15、および配列番号19からなる群から選択される軽鎖可変領域を含む単離された抗ROR1抗体を提供する。一態様において、重鎖可変領域に従う抗体は配列番号5であり、軽鎖可変領域は配列番号7である。
【0073】
一実施形態において、本発明は、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号33、配列番号34、および配列番号35からなる群から選択されるCDR1、CDR2、およびCDR3から構成される重鎖可変領域、および配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号36、配列番号37、および配列番号38からなる群から選択されるCDR1、CDR2、およびCDR3から構成される軽鎖可変領域を含む単離された抗ヒトROR1抗体を提供する。一態様において、CDR1、CDR2、およびCDR3から構成される重鎖可変領域は、配列番号27、配列番号28、および配列番号29から構成され、かつCDR1、CDR2、およびCDR3から構成される軽鎖可変領域が、配列番号30、配列番号31、および配列番号32からなる群から選択される。
【0074】
さらなる実施形態において、本発明は、41nMを超える結合親和性を有する抗ヒトROR1抗体を提供する。一態様において、抗体結合親和性が、約500pM〜約6nMの間である。一態様において、抗体結合親和性が、約800pMである。
【0075】
別の態様において、抗体は、転移を阻害する。追加の態様において、抗体は、内在化し、細胞遊走を阻害する。さらなる態様において、抗体は、内在化し、ビメンチン、スネイル1/2、またはZEBを下方調節する。別の態様において、抗体は、ヒト、ヒト化、またはキメラである。一態様において、抗体は、99961、99961.1、99961.2、99961.3、または99961.4である。好ましい態様において、抗体は、99961.1である。
【0076】
本発明の一実施形態は、ROR1に対する抗体および薬学的に許容される担体を含む医薬製剤を提供する。追加の実施形態において、本発明は、ROR1に対する抗体をコードする単離された核酸を提供する。別の実施形態において、本発明は、ROR1に対する抗体をコードする核酸に従う核酸を含む発現ベクターを提供する。追加の実施形態において、本発明は、ROR1に対する抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、抗体を産生するための条件下で、宿主細胞を培養することを含む、抗ROR1抗体を産生する方法を提供する。一態様において、抗体を産生する方法は、抗体を回収することをさらに含む。
【0077】
実施例に示されるように、抗ROR1抗体D10は、マウスおよびヒトCLL生着を阻害し、補体依存性細胞傷害を方向付けることができ、白血病の負荷の大幅な低減を誘発し、かつ乳癌細胞の肺および骨への転移を阻止する。
【0078】
D10は、生物活性を有することが示されている一方で、他の既知の抗ROR1抗体(例えば、4A5およびK19)は、4A5がROR1のためにさらに有意に高い結合親和性を有するにも関わらず、生物活性を呈さない。抗体4A5は、D10よりも異なるエピトープに結合することが示されている。癌がROR+である癌患者のサブセット、ROR1に対する抗血清が産生されることが示されている。患者のさらなるサブセットが、Wnt5a活性を阻害する抗体を作り、したがって、全てのROR1抗体が生物活性を有するわけではないという結論に至る。
【0079】
実施例にさらに説明されているように、エピトープのマッピングが、D10および4A5のエピトープを判定するために実施された。これらの研究は、D10は、ROR1上でCRDに隣接するIg様ドメインのC末端でエピトープに結合すると判定した。4A5のためのエピトープはまた、Ig様ドメインにマッピングされたが、ドメインのアミノ端末により近いものであった。これらの知見は、D10と同じエピトープに結合する抗体は、ROR1生物活性を阻害するであろうが、一方、他の場所で結合する抗体は阻害しないこともあるという結論に至った。
【0080】
実施例に示されるように、高い親和性抗体(すなわち、99961)は、高い親和性の組換え抗体を選択するために、D10エピトープを用いて得られた。選択された抗体の一つ、99961は、D10よりROR1のために有意により高い結合親和性を有する。99961抗体は、D10より50倍高い結合親和性(すなわち、800pM v.41 nM)を有する。加えて、99961は、4個の異なる抗体を生成するようヒト化された。実験により、99961がD10と同じエピトープを有することが確認された。実験により、このエピトープが正常な造血幹および前駆細胞上で発現されないことが確認された。さらに、99961は、正常な成体組織と交差反応しない。この抗体はまた、CLL細胞に対する活性、ROR+原発性AML内の活性、およびROR1内在化の誘導を実証した。
【0081】
ワクチン
加えて、本発明は、単離または合成的に産生されたROR1結合ペプチドの薬学的に許容される組成物からなる、対象における治療のためのワクチン、癌の予防、または転移の阻害を提供する。本発明はまた、D10のROR−1結合領域に対して少なくとも95%の配列同一性を有するROR1結合ペプチドを提供する。さらなる態様において、本発明は、D10の結合領域に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%配列同一性を有するROR1結合ペプチドを提供する。一態様において、D10の結合領域は、VATNGKEVVSSTGVLFVKFGPCである。追加の態様において、D10の結合領域は、EVVSSTGVLFVKFGPCである。一態様において、D10結合領域は、少なくとも22個のアミノ酸である。さらなる態様において、D10結合領域は、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22個のアミノ酸である。
【0082】
本発明はまた、リンパ腫(例えば、ROR1の発現を伴うCLL)などの疾患に対するROR1結合ペプチドワクチンの使用を提供する。正常な成体組織がROR−1を発現するように見えないため、能動免疫療法で標的化することができる腫瘍特異的な抗原を表す。例えば、ROR1のレベルは、動物においてROR1に対して保護的または治療的免疫応答およびその発現の効果をもたらす、治療有効量のROR1結合ペプチドワクチンを患者に投与することによって下方調節され得る。ワクチンは、ペプチドを含み得る。このようなペプチドを使用する方法は、ワクチンの、ROR1に対する抗体を生成するための使用を含む。ROR1結合ペプチドはまた、免疫アジュバントを含む。免疫アジュバントは、結合ペプチドと複合体化された免疫原性担体部分であり得る。一態様において、免疫原性担体部分はペプチドである。ワクチンのための好適な担体の例としては、免疫原性アジュバントがさらに挙げられる。さらなる態様において、アジュバントは、結合ペプチドと複合体化された免疫原性担体部分である。免疫原性担体部分は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、オボアルブミン、水酸化アルミニウム、または他の薬学的に許容される免疫アジュバントなどの担体ペプチドであり得る。薬学的に許容される免疫アジュバントの例は、以下に見ることができる:Methods in Molecular Medicine,Vol.42:Vaccine adjuvants:Preparation,Methods and Research Protocols;Edited by D.T.O'Hagan;Humana Press Inc.,Totowa NJ and European Agency for the Evaluation of Medicinal Products,Committee for Proprietary Medicinal Products,Guidelines on Adjuvants in Vaccines,London 2004。典型的には、ワクチン組成物はまた、薬学的に許容される担体または希釈液を含むであろう。
【0083】
一実施形態において、本発明は、ROR−1発現細胞に対するワクチンであって、抗体D10のROR−1結合領域に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する単離されたまたは合成的に産生されたペプチドの薬学的に許容される組成物を含むワクチンを提供する。一態様において、ワクチン、抗体D10のROR−1結合領域のアミノ酸配列は、VATNGKEVVSSTGVLFVKFGPCである。さらなる態様において、ワクチン、抗体D10のROR−1結合領域のアミノ酸配列は、EVVSSTGVLFVKFGPCである。別の態様において、ROR1発現細胞は、癌細胞である。追加の態様において、癌細胞は、B細胞白血病、リンパ腫、CLL、AML、B−ALL、T−ALL、卵巣癌、結腸癌、肺癌、皮膚癌、膵臓癌、精巣癌、膀胱癌、子宮癌、前立腺癌、または副腎癌からのものである。
【0084】
別の実施形態において、本発明は、VATNGKEVVSSTGVLFVKFGPCに対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するROR1結合ペプチドと、薬学的に許容される担体とを有するワクチンを提供する。一態様において、ペプチドは、哺乳類のものである。追加の態様において、ペプチドは、キメラおよび/またはヒト、マウス、ラット、ブタ、ウシ、霊長類、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ニワトリまたはクマの起源である。別の態様において、ワクチンは、免疫原性アジュバントをさらに含む。さらなる態様において、アジュバントは、結合ペプチドと複合体化された免疫原性担体ペプチドである。一態様において、結合ペプチドのアミノ酸配列は、VATNGKEVVSSTGVLFVKFGPCである。別の態様において、免疫原性担体ペプチドは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)である。ワクチンは、免疫原性アジュバントをさらに含む。さらなる態様において、アジュバントは、結合ペプチドと複合体化された免疫原性担体部分である。一態様において、結合ペプチドのアミノ酸配列は、VATNGKEVVSSTGVLFVKFGPCである。免疫原性担体部分は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、オボアルブミン、水酸化アルミニウム、または他の薬学的に許容される免疫アジュバントなどの担体ペプチドであり得る。薬学的に許容される免疫アジュバントの例は、以下に見ることができる:Methods in Molecular Medicine,Vol.42:Vaccine adjuvants:Preparation,Methods and Research Protocols;Edited by D.T.O'Hagan;Humana Press Inc.,Totowa NJ and European Agency for the Evaluation of Medicinal Products,Committee for Proprietary Medicinal Products,Guidelines on Adjuvants in Vaccines,London 2004。
【0085】
別の実施形態において、本発明は、EVVSSTGVLFVKFGPCに対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するROR1結合ペプチドと、薬学的に許容される担体とを有するワクチンを提供する。一態様において、ペプチドは、哺乳類のものである。追加の態様において、ペプチドは、キメラおよび/またはヒト、マウス、ラット、ブタ、ウシ、霊長類、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ニワトリまたはクマの起源である。別の態様において、ワクチンは、免疫原性アジュバントをさらに含む。さらなる態様において、アジュバントは、結合ペプチドと複合体化された免疫原性担体ペプチドである。一態様において、結合ペプチドのアミノ酸配列は、EVVSSTGVLFVKFGPCである。免疫原性担体部分は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、オボアルブミン、水酸化アルミニウム、または他の薬学的に許容される免疫アジュバントなどの担体ペプチドであり得る。薬学的に許容される免疫アジュバントの例は、以下に見ることができる:Methods in Molecular Medicine,Vol.42:Vaccine adjuvants:Preparation,Methods and Research Protocols;Edited by D.T.O'Hagan;Humana Press Inc.,Totowa NJ and European Agency for the Evaluation of Medicinal Products,Committee for Proprietary Medicinal Products,Guidelines on Adjuvants in Vaccines,London 2004。
【0086】
追加の実施形態において、本発明は、VATNGKEVVSSTGVLFVKFGPCに対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するROR1結合ペプチドと、薬学的に許容される担体とを有するワクチンを有する医薬製剤を提供する。
【0087】
追加の実施形態において、本発明は、EVVSSTGVLFVKFGPCに対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するROR1結合ペプチドと、薬学的に許容される担体とを有するワクチンを有する医薬製剤を提供する。
【0088】
実施例に示されるように、ペプチドワクチンは、
図18に示されるように開発された。3個のペプチドが、ROR1抗体D10、4A5、およびK19のエピトープに基づいて使用された。動物は、3個のペプチドで免疫化された。3個のペプチド全てが、ROR1抗血清の産生を誘導した。結果は、R22ペプチドでの免疫化が最大の抗体力価をもたらしたこと実証する。実施例に示されるように、ROR1抗血清は、ROR1と結合し、白血病の負荷を減少させ、ROR1内在化を誘導し、補体依存性細胞傷害を媒介し、乳癌細胞遊走を阻害し、ROR+白血病細胞の生着を阻害する。したがって、本発明は、遊走して転移するROR+癌細胞の能力を阻害するための抗体の誘導を可能にするように、ROR1に対して患者を免疫化する方法を提供する。
【0089】
ROR1結合ペプチド
一実施形態において、本発明は、配列番号25および配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むROR1結合ペプチドを提供する。一態様において、ペプチドは、VATNGKEVVSSTGVLFVKFGPCに対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。別の態様において、ペプチドは、EVVSSTGVLFVKFGPCに対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸ペプチド配列を有する。別の態様において、結合ペプチドは哺乳類のものである。追加の態様において、結合ペプチドは、キメラおよび/またはヒト、マウス、ラット、ブタ、ウシ、霊長類、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ニワトリまたはクマの起源である。
【0090】
一実施形態において、本発明は、配列番号25および配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むROR1結合ペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む医薬製剤を提供する。
【0091】
別の実施形態において、本発明は、配列番号25および配列番号26のアミノ酸配列を含むROR1結合ペプチドをコードする単離された核酸を提供する。別の実施形態において、本発明は、配列番号25および配列番号26のアミノ酸配列を含むROR1結合ペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターを提供する。さらなる実施形態において、本発明は、配列番号25および配列番号26のアミノ酸配列を含むROR1結合ペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞を提供する。追加の実施形態において、本発明は、結合ペプチドを産生する条件下で、配列番号25および配列番号26のアミノ酸配列を含むROR1結合ペプチドをコードする宿主細胞を培養することを含む、ペプチドを産生する方法を提供する。一態様において、ペプチドを生成するための方法は、結合ペプチドを回収することをさらに含む。
【0092】
転移の抑制
一実施形態において、本発明は、ROR−1発現癌の転移を抑制する方法を提供し、該方法は、モノクローナル抗体99961の結合特異性を有する抗体、抗体D10のROR−1結合領域に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するペプチドから構成されるワクチン、VATNGKEVVSSTGVLFVKFGPCに対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するROR−1結合ペプチド、またはEVVSSTGVLFVKFGPCに対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するROR−1結合ペプチドを投与することによって腫瘍細胞の上皮間葉転換を妨害することを含む。一態様において、ROR−1発現癌は、B細胞白血病、リンパ腫、CLL、AML、B−ALL、T−ALL、卵巣癌、結腸癌、肺癌、皮膚癌、膵臓癌、精巣癌、膀胱癌、子宮癌、前立腺癌、または副腎癌である。
【0093】
実施例は、ROR1抗体、結合ペプチド、およびワクチンが、ROR+癌細胞が遊走することまたは転移することを阻害する能力を有する証拠を提供する。
【0094】
治療
本明細書で使用されるとき、「治療する」または「治療」という用語は、治療的処置および予防法または予防措置の両方を指し、その目的は、癌の進行または拡大などの所望でない生理学的変化または障害を予防するまたは遅らせる(軽減する)ことである。有益なまたは所望の臨床結果としては、検出可能または検出不可能に関わらず、症状の緩和、疾患の程度の軽減、安定化した(すなわち、悪化しない)疾患の状態、疾患の進行の遅延または減速、疾患状態の改善または緩和、および寛解(部分的または全体的に関わらず)が挙げられるが、これらに限定されない。「治療」はまた、治療を受けない場合に予想される生存と比較して、延長された生存を意味し得る。治療を必要とする者としては、状態または障害を既に有する者、ならびに状態もしくは障害を有する傾向がある者、または予防されるべき状態または障害を有する者が挙げられる。
【0095】
本明細書で使用されるとき、「癌」、「癌細胞」、「ROR1発現癌」、または「ROR1発現癌細胞」という用語は、悪性または良性に関わらず、全ての新生物細胞の成長および増殖を指し、全ての形質転換された細胞および組織と全ての癌性細胞および組織とを含む。癌は新生物に限定されず、良性または悪性に関わらず、以下に位置するものを含む:前立腺、結腸、腹部、骨、乳房、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、精巣、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頸部、神経(中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、胸部、および尿生殖路。一定の実施形態において、このような新生物は、ROR1を発現する、過剰に発現する、または異常に発現する。
【0096】
癌としてはまた、B細胞白血病、リンパ腫、CLL、AML、B−ALL、T−ALL、卵巣癌、結腸癌、肺癌、皮膚癌、膵臓癌、精巣癌、膀胱癌、子宮癌、前立腺癌、および副腎癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
本明細書に記載の抗ROR1抗体、ROR1結合ペプチド、およびROR1ワクチンは、対象におけるROR1癌の治療または予防のため、またはROR1癌細胞の転移を阻害するために使用することができる。
【0098】
抗体
一定の治療的実施形態において、選択された抗体は典型的には、単独で、または1つ以上の組み合わせ治療剤と組み合わせて、もしくはそれと複合体化されて投与され得る抗ROR1抗体であるだろう。本明細書に記載の抗体が、治療剤として単独で投与される場合、それらは、種々の機構によって対象において有益な効果を発揮し得る。一定の実施形態において、hROR−1を特異的に結合するモノクローナル抗体は、1つ以上のhROR−1の活性を阻止するために、または1つ以上の形態のhROR−1の別の生体分子との相互作用を阻止するもしくは阻害するために、精製され、hROR−1の1つ以上の形態を中和するように患者に投与される。
【0099】
本発明の免疫治療的試薬は、ヒト化抗体を含み得、追加の活性または不活性成分(例えば、従来の薬学的に許容される担体または希釈液、例えば、免疫原性アジュバント、および任意に、抗新生物薬などの補助的または組み合わせ的に活性な薬剤)を治療的使用のために組み合わせることができる。
【0100】
他の実施形態において、本明細書に記載の治療的抗体は、組み合わせ治療剤(例えば、放射性核種、分化誘導物質、薬物、または毒素)と協調的に投与される、それと製剤化される、またはそれと繋がれる(例えば、共有結合される)。
90Y、
123I、
125I、
131I、
186Re、
188Re、および
211Atを含む、様々な既知の放射性核種を用いることができる。このような組み合わせ治療製剤および方法における使用のための有用な薬物としては、メトトレキサート、ならびにピリミジンおよびプリン類似体が挙げられる。好適な分化誘導物質としては、ホルボールエステルおよび酪酸を含む。好適な毒素としては、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、コレラ毒素、ゲロニン、シュードモナス外毒素、赤痢菌毒素、およびヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質が挙げられる。これらの組み合わせ治療剤は、直接的または間接的(例えば、リンカー基を介して)のいずれかで抗ROR1抗体に繋がることができる。各々が他方と反応できる置換基を有するとき、薬剤と抗体との間の直接反応が可能である。例えば、一方のアミノまたはスルフヒドリル基などの求核性基は、他方で酸無水物または酸ハロゲン化物などのカルボニル含有基と、または良好な脱離基(例えば、ハロゲン化物)を含むアルキル基と反応することが可能である場合がある。代替的に、結合能力の妨害を回避するために、組み合わせ治療剤から抗体を引き離すためのスペーサとして、リンカー基を介して組み合わせ治療剤および抗体を繋ぐことが所望であり得る。リンカー基はまた、薬剤または抗体上の置換基の化学反応性を増加させ、したがって、結合効率を増加させるために作用し得る。ホモおよびヘテロ官能性の両方である種々の二官能性または多官能性試薬(例えば、イリノイ州、ロックフォードのPierce Chemical Co.のカタログに記載されている)が、リンカー基として用いられ得ることは、当業者にとって明らかであろう。結合は、例えば、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、または酸化炭水化物残基を介して影響され得る。
【0101】
2つ以上の薬剤を抗ROR1抗体と繋ぐこともまた所望であり得る。一実施形態において、薬剤の複数の分子は、1つの抗体分子に繋がれる。別の実施形態において、2つ以上のタイプの薬剤は、1つの抗体に繋がれ得る。特定の実施形態によらず、2つ以上の薬剤を有する免疫複合体は、種々の方法で調製され得る。例えば、2つ以上の薬剤は、抗体分子と直接繋がれ得、または付着のために複数の部位を提供するリンカーが使用され得る。代替的に、担体が使用され得る。
【0102】
抗体および免疫複合体のための種々の投与経路が、使用され得る。典型的には、投与は、静脈内、筋肉内、または皮下である。
【0103】
抗体/免疫複合体の正確な用量は、使用される抗体、抗原密度、および抗体のクリアランス速度などの要因に応じて様々であることは明らかであろう。抗ROR1剤の安全かつ有効な量は、例えば、所望でない副作用を最小限に抑えながら、患者に所望の治療効果を引き起こすであろう量である。一般に、治療上有効な量は、1つ以上のサイトカインの産生を促進する、および/または補体媒介性または抗体依存性細胞傷害を引き起こすのに十分な量である。投薬レジメンは、治療される状態の正確な性質、状態の重症度、患者の年齢および一般的身体状態などの要因に基づいて熟練した臨床医によって決定されるであろう。
【0104】
追加の実施形態において、本発明は、対象において癌を治療または予防するための方法を提供し、該方法は、モノクローナル抗体99961の結合特異性を有する抗体、ヒト抗体D10のROR−1結合領域に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するペプチドから構成されるワクチン、VATNGKEVVSSTGVLFVKFGPCに対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するROR−1結合ペプチド、またはEVVSSTGVLFVKFGPCに対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するROR−1結合ペプチドを対象に投与することを含む。一態様において、癌は、B細胞白血病、リンパ腫、CLL、AML、B−ALL、T−ALL、卵巣癌、結腸癌、肺癌、皮膚癌、膵臓癌、精巣癌、膀胱癌、子宮癌、前立腺癌、または副腎癌である。
【0105】
ROR1を標的化することによる転移の阻害
元の部位から身体の遠隔領域への新生物細胞の広がりは癌関連死の90%の原因である。転移プロセスは、遠隔臓器への原発性腫瘍細胞の物理的な移動およびその後のコロニー化を含む。いくつかの悪い予後遺伝子シグネチャは、いくつかの原発性腫瘍内の細胞が、転移しやすいことを示唆している。しかしながら、転移の分子および細胞決定因子の理解は限られており、腫瘍細胞がこのイベントを体験するプロセスは、不明な点が多い。最近の注目は、現在、腫瘍の進行、運動性の獲得、浸潤性、転移、および自己複製特徴に顕著な要因と見なされる、上皮間葉転換(EMT)と呼ばれる細胞生物学的プログラムに集まっている。
【0106】
EMTは、新生物上皮細胞に浸潤転移カスケードのステップのほとんどを達成するために必要な生物学的特徴を付与する。正常な発達および癌転移の両方において、EMTは、上皮細胞がそれらの微小環境から受け取る文脈シグナルにより調節されるようである。胚の形態形成および創傷治癒に関与する複数の経路の使用により、癌細胞は、浸潤および転移を可能にする属性を並存して取得することができる。
【0107】
治療後の転移または再発を説明することができる癌幹細胞(CSC)を定義する研究は、様々な腫瘍内のCSCの1つ以上の亜集団に関連する種々の特徴を特定している。これらの研究のうちのいくつかでは、EMTにおける細胞の表現型特徴の取得が、CSCのような状態に入るために非CSCを誘導することができることを見出した。したがって、恐らくEMTを体験した移転性癌細胞は、CSC表現型を呈し、循環中の生存、遠隔臓器への管外溢出、脈管形成、転移部位で制御されない増殖を促進する浸潤性特性を獲得し得る。
【0108】
実施例においてさらに詳述されるように、癌細胞におけるROR1の高レベルの発現は、再発および/または転移性疾患の高い割合に関連している。実施例1に記載の乳腺癌を有する患者におけるROR1発現およびサイレンシングの効果は、転移を阻害する本発明の実施を示している。図示されるように、転移を起こしやすい乳癌細胞株におけるROR1発現のサイレンシングは、EMTに関連する表現型の特徴を逆転させ、インビトロでおよびインビボでの遊走、浸潤、および転移を損なう。さらに、ROR1に対して特異的な本発明の抗体は、免疫不全マウスに異種移植されたヒト乳癌細胞の転移を阻害する。これらの研究は、乳癌転移についての以前に未知であった経路を識別し、癌治療のための有望な標的としてROR1を検証する。低いROR1発現レベルはより長い無転移生存と相関し、より重要なことに、抗ROR1抗体によるROR1の治療的標的化は、乳癌転移発達を阻害し得る。
【0109】
転移は、原発位置から身体の他の部分への癌細胞の広がりである。癌が転移性になると、それは効果的に手術または放射線療法によって治療することができない。さらに、癌患者の死亡の主な原因は、転移である。受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、分化、増殖、遊走、脈管形成、および生存を含む、多くの細胞プロセスにおいて重要な役割を果たすことが知られている。ROR2が、メラノーマおよび前立腺癌細胞の転移を促進することが見出されているが、攻撃的乳癌細胞株と非攻撃的乳癌細胞株との間でROR2発現に有意な差異はない。しかしながら、ROR1の発現は、攻撃的な乳癌細胞株と強い相関がある。
【0110】
本発明は、その作用機構としての理論によって限定されないが、ROR1は、スネイル1、スネイル2、TCF8/ZEB、CK−19、ビメンチン、CXCR4などの乳癌転移に関与するタンパク質をコードする遺伝子を活性化することは注目すべきことである。AKTは最近、細胞死および脈管形成への耐性のある、EMTを含む転移の機能に関与することが報告された。実施例において実証されるように、ROR1は、AKT活性およびMDA−MB−231細胞の抗ROR1抗体D10低減p−AKT活性への曝露を上方調整する。これらのデータは、ROR1により調節されるAKT活性化の阻害が、D10がその抗腫瘍効果を発揮する1つの機構であり得ることを示唆している。
【0111】
具体的には、乳癌転移に関して、遺伝子発現シグネチャを用いて、原発性乳房腫瘍におけるROR1の発現は、骨、肺、および脳転移を含む乳癌転移に関連することが見出された。分析された582例のうち、再発率は、ROR1の低い群における37%と比較してROR1の高い群で55%であった。重要なことには、この再発率は、ROR1の75〜100番目の群において63%まで増加した。ROR1発現はまた、ER、PR、およびHer2を含む、臨床的に攻撃的な乳癌腫瘍マーカーと強く相関している。乳癌のTステージに基づいた群の間に統計的に有意な差異はないが、ROR1の高い患者の割合は、T1およびT4ステージにおいてそれぞれ51%〜77%に増加した。臓器特異的な転移(乳癌から肺または骨へ)は、本発明に従うROR1ノックダウンノックダウンによって有意に阻害された。これらのデータは、ROR1が、CXCR4などのある種の肺および骨に特異的な遺伝子を調節し得ることを示唆している。
【0112】
ヒトケモカインは、19個の異なるGタンパク質結合ケモカイン受容体に結合する48個のリガンドのスーパーファミリーで構成されている。転移性腫瘍細胞は、ケモカイン受容体媒介性細胞遊走ハイウェイを「ハイジャック」できるという仮説が立てられている。乳癌腫瘍細胞は、CXCR4を含む選択されたケモカイン受容体を発現する。本発明に従うCXCL12−CXCR4軸の阻害は、肺への細胞株MDA−MB 231のインビボ転移を阻止できる。ROR1についてサイレンシングされたMDA−MB−231細胞は、CTRL−shRNAがトランスフェクトされた親のMDA−MB−231またはMDA−MB−231よりもCXCR4の低い発現を有した。
【0113】
遺伝子発現分析を使用して、ROR1の発現はまた、肺(
図1B)、骨(
図1C)、および脳(
図1D)転移と関連していることが見出された。ハザード比分析に基づいて、ROR1は、ER、PRおよびHER2より全体、骨、および肺転移のはるかに良い予測因子であることが判定された。ROR1はまた、ERおよびROR1状態による乳癌患者の全体的な再発の全体的な再発率に基づく、転移関連予測因子の遺伝子であり得る。無転移生存の初期段階においてER+の症例とER−の症例との間にいくつかの違いがあったが、ROR1低い症例およびROR1高い症例のみが、無転移生存の後期段階で著しい違いを有した。したがって、本発明は、転移を阻害し、患者の生存を改善するための経路を提供する。
【0114】
一般に、投与されるROR1抗体、ROR1抗体成分、結合ペプチドワクチン組成物、それらの免疫複合体、融合タンパク質の用量は、患者の年齢、体重、身長、性別、一般的な病状、および以前の病歴などの要因に応じて様々であるだろう。典型的には、約1ng/kg〜20mg/kg(薬剤の量/患者の体重)の範囲で、抗体成分、ワクチン、免疫複合体、または融合タンパク質の用量を受容者に提供することが所望であるが、諸事情により、より低いまたはより高い用量も投与され得る。
【0115】
患者への抗体、抗体成分、ワクチン、免疫複合体、または融合タンパク質の投与は、局所カテーテルを介した灌流によるか、または直接的病巣内注射による、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、胸膜内、髄腔内であり得る。注射による治療的タンパク質、ペプチド、または複合体を投与するとき、投与は、連続注入によるか、または単一もしくは複数のボーラスによるものであり得る。
【0116】
当業者は、静脈内注射は、抗体を急速に配布する際の循環の徹底のために、投与に有用なモードを提供することを認識している。しかしながら、静脈内投与は、脈管構造の内皮細胞および内皮下のマトリックスを含む血管障壁により制限される。依然として、血管障壁は、固形腫瘍による治療抗体の取込みのためのより注目すべき問題である。リンパ腫は、比較的高い血流速度を有し、有効な抗体送達に寄与する。皮下または筋肉内注射、またはリンパ管のカテーテル法などによる投与のリンパ管内経路はまた、リンパ腫の治療の有用な手段を提供する。
【0117】
好ましくは、ROR1抗体、結合ペプチド、これらの免疫複合体、および融合タンパク質は、一度または繰り返し非経口的に与えられた用量当たり20〜3000ミリグラムのタンパク質といった低いタンパク質用量で投与される。代替的に、投与は、用量当たり100〜300ミリグラムのタンパク質、または用量当たり300〜1000ミリグラムのタンパク質、用量当たり1000〜2000ミリグラムのタンパク質の用量である。
【0118】
本発明はまた、ROR1抗体成分が、放射標識であるか、または放射標識免疫複合体もしくは融合タンパク質投与で補われる、治療的方法を企図している。一変形形態では、ROR1抗体は、低線量放射標識ROR1抗体または断片として、またはそれと共に投与される。代替として、ROR1抗体は、低線量の放射標識ROR1サイトカイン免疫複合体と共に投与され得る。当業者は、薬学的に許容される放射標識分子およびそれらの適切な投与レベルに精通しているであろう。参考までに、好ましい用量は、
131Iラベル免疫複合体の「低線量」を考慮されたく、ここで15〜40mCiの範囲であるが、最も好ましい範囲は、20〜30mCiである。対照的に、
90Yラベル免疫複合体の好ましい線量は、10〜30mCiの範囲であるが、最も好ましい範囲は、10〜20mCiである。
【0119】
全ての態様での本発明が、次の実施例でさらに例示される。実施例は、しかしながら、本発明の範囲を限定せず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。
【実施例1】
【0120】
ROR1は、乳腺癌における早期転移性再発に関連する。
582人の患者の組み合わされたコホートにおける患者から単離された乳癌細胞についてのGEOデータベースにおける、トランスクリプトームデータを調査した。これらの症例のおよそ3分の2(582人中426人)は、外科手術時点で所属リンパ節において検出可能な癌を有せず、補助療法を施与されなかった。残りの症例は、所属リンパ節において検出可能な疾患を有し、補助ホルモン療法および/または化学療法を受けた。582症例の中で、46%が再発し(n=270)、22.1ヶ月の無転移生存時間中央値を有した。我々は、患者を、彼らのROR1の相対的な癌細胞発現に基づいて3つの群に分離した。上位3分の1レベルのROR1 mRNA発現(ROR1
H)を有する腫瘍を有する患者は、ROR1の下位3分の1レベル(ROR1
L)または中間レベル(ROR1
M)の発現を有した腫瘍を有する患者よりも、有意により短い無転移生存を有した(p<0.0001、
図1A)。臓器部位別の無転移生存を検査した。ROR1H腫瘍を有する患者は、ROR1
LまたはROR1
M乳癌を有する患者よりも、肺(p=0.002、
図45A)、骨(p=0.004、
図45B)、または脳(p=0.04、
図45C)へのより高い転移率を有することが見出された。ROR1
H癌は、ROR1
LまたはROR1
Mである癌よりも、エストロゲン/プロゲステロン受容体またはHER2等の、予後良好の兆候を有する腫瘍の有意により低い割合を有した。
【0121】
ROR1の高レベルの発現はまた、より短い無転移生存を予測することにおいて独立因子として機能した。ROR1
H腫瘍を有する患者は、ER、PR、またはHER2状態に関わらず、ROR1
L/M腫瘍を有する患者よりも、より高い転移率、より早期の再発、およびより良好でない生存率を有した(
図46)。さらに、乳癌におけるEMT遺伝子シグネチャについてのGSE2034、GSE2603、GSE5327、およびGSE12276アレイデータの調査は、ROR1
L腫瘍が、ROR1
H腫瘍よりも、CDH1(E−カドヘリンをコードする)、TJP1(ZO1をコードする)、およびTJP3(ZO3をコードする)等の、上皮細胞に関連する遺伝子の有意により高い発現レベルを有するが、SNAI1(Snail−1をコードする)、SNAI2(Snail−2をコードする)、CDH2(N−カドヘリンをコードする)、またはVIM(ビメンチンをコードする)等の、間葉細胞に関連する遺伝子のより低い発現レベルを有することを明らかにした(
図1B)。
【実施例2】
【0122】
ROR1+乳癌細胞株
6個の基底細胞型乳癌細胞株および8個の管腔細胞型乳癌細胞株を含む、14個の明確に異なる乳癌上皮細胞株のROR1の発現を検査した。ROR1の発現のレベルは、基底細胞型乳癌細胞株において、概してROR1を発現しなかった管腔細胞型乳癌細胞株におけるROR1の発現のレベルと比べて、有意により高かった。その上、ROR1の相対的発現レベルは、三種陰性ER
NegPR
NegHER2/Neu
Neg等の、攻撃的腫瘍表現型、ならびにインビトロでの高レベルの遊走能および浸潤能と相関していた。
【0123】
ROR1を、2つの異なるROR1配列のいずれかを標的とする短ヘアピンRNA(shRNA)を使用して、高浸潤性の基底細胞型乳癌細胞株(例えば、MDA−MB−231)においてサイレンシングした。ROR1タンパク質の発現は、対照shRNA(CTRL−shRNA)がトランスフェクトされた細胞とは対照的に、ROR1−shRNA1またはROR1−shRNA2のいずれかがトランスフェクトされた細胞において阻害された(
図47A)。CTRL−shRNAまたはROR1−shRNAがトランスフェクトされたMDA−MB−231(GEO受託:GSE31631)間の遺伝子発現差異についてのアレイデータの調査は、ROR1をサイレンシングされた細胞が、親MDA−MB−231またはCTRL−shRNAがトランスフェクトされたMDA−MB−231よりも、KRT19(CK19をコードする)のより高い発現レベル、CXCR4およびVIMのより低い発現レベルを有することを明らかにした。これらの知見は、qRT−PCRによって確認した(
図47B、
図48A)。フローサイトメトリー分析もまた、CXCR4の細胞表面発現が、ROR1をサイレンシングされた細胞においてより低いことを実証した(
図48B)。
【0124】
EMTの調節におけるROR1の可能性のある役割を評価するために、我々は、CTRL−shRNAまたはROR1−shRNAで治療された細胞におけるEMT関連マーカーについて検査した。3つの明確に異なる基底細胞型乳癌細胞株(MDA−MB−231、HS−578T、またはBT549)のいずれかにおいて、ROR1−siRNAまたはROR1−shRNA1/2のいずれかでROR1の発現を抑制することにより、EMTに関連するmRNAおよび/またはコードされるタンパク質(例えば、ビメンチン、SNAIL−1/2、およびZEB1)のそれらの発現は減弱された。逆に、ROR1のサイレンシングにより、mRNAおよびコードされる上皮サイトケラチン(例えば、CK−19)の発現が増加した。検査された3つの細胞株のいずれにおいてもZO−1をコードするTJP1 mRNAの有意な変化は何ら存在しなかったが、ROR1をサイレンシングされた細胞は、このタイトジャンクションタンパク質のより高い発現レベルを有したことから、ZO−1が転写後制御下にあり得ることが示唆される(
図1C〜Dおよび
図49)。最後に、ROR1を発現させるようなROR1陰性MCF7細胞のトランスフェクションは、上皮タンパク質(例えば、E−カドヘリンおよびCK19)の発現を減少させ、SNAIL1/2等のEMT転写因子の発現を増加させた(
図1E)。
【0125】
培養物において、MDA−MB−231、HS−578T、またはBT549細胞は、典型的に星状の形態を示していたが、これはインビトロでの間葉細胞の形態と同様である。しかしながら、ROR1−shRNAでのトランスフェクション後に、これらの細胞は、より球状の形態を呈し、これは上皮細胞の形態と同様であった(
図2A)。CTRL−shRNAでのこれらの細胞のトランスフェクションは、そのような変化を誘導しなかった。さらに、免疫蛍光染色は、ROR1−shRNAでのトランスフェクションが、MDA−MB−231細胞を、中程度のレベルのE−カドヘリンおよびより高いレベルのCK−19を発現するように誘導するが、ビメンチンの発現を低減させることを明らかにした(
図2B)。同様の結果がまた、HS−578TまたはBT549細胞についても観察された。他方で、無処理の細胞または対照ベクターがトランスフェクトされた細胞と比較して、ROR1陰性MCF7細胞は、ROR1を発現するようにトランスフェクトされたとき、間葉細胞に対して形態的な類似性を生じ、上皮マーカー(例えば、CK19およびE−カドヘリン)の減少した発現、およびビメンチン等の間葉マーカーの増加した発現を有した。さらに、ROR1をサイレンシングされた細胞は、CTRL−shRNAで処理された細胞の遊走/浸潤能と比較して、より低い遊走/浸潤能を有した(
図2EおよびF)。CXCL12への走化性が、ROR1をサイレンシングされた細胞において有意に低減されたこともまた見出された(
図48)。ROR1−shRNA1またはROR1−shRNA2のいずれかでサイレンシングされた細胞を使用して、事実上同一の結果が得られた。集合的に、これらの結果は、ROR1の発現がEMTおよび腫瘍転移に寄与し得ることを示す。
【実施例3】
【0126】
ROR1のサイレンシングは、同所性肺転移を阻害する
細胞培養
乳癌細胞株MDA−MB−231、HS−578T、BT549、MDA−MB−415、MDA−MB−435s、MDA−MB−436、MDA−MB−157、MDA−MB−134、MCF7、BT−474、MDA−MB−453、SKBR3、MDA−MB−330、およびBT−483を、American Type Culture Collection(ATCC)から得、以前に記載されたように維持した(Neve et al.Cancer Cell,10:515(2006))。
【0127】
ROR1−ノックダウン
ROR1のノックダウンを、以前に記載されたように(Zhang,S.Et al.,Cancer Cell,16:67(2009))、配列5′−TCC GGA TTG GAA TTC CCA TG−3′(shRNA1)、および5′−CTT TAC TAG GAG ACG CCA ATA−3′(shRNA2)を標的とすることによって達成した。非特異的なshRNA対照を、配列5′−AGC GGA CTA AGT CCA TTG C−3′を標的とすることによって作り出した。Virapower(商標)レンチウイルス発現システム(Invitrogen)を使用して、製造業者の指示に従ってshRNAを発現させた。ROR1−shRNA1およびCTRL−shRNA1構築物はまた、赤色蛍光タンパク質(RFP)もコードした。ROR1−shRNA1およびCTRL−shRNA1構築物に対するオリゴヌクレオチドを合成し(Integrated DNA Technologies)、RFP−pLKO.1ベクターに挿入した。ROR1−shRNA2およびCTRL−shRNA2構築物は、Open Biosystems(イリノイ州、ロックフォード)から購入した。乳癌細胞株の感染のためのウイルス粒子を、293−FTパッケージング細胞株のトランスフェクションによって得、トランスフェクション後48および72時間時点で細胞上清から収集した。上清を濾過し、43,000×gで遠心分離してウイルス粒子を濃縮し、それを使用して、コンフルエントに達していない培養物を、5μg/mlのポリブレンの存在下で一晩感染させた。
【0128】
トランスフェクションの24時間後、細胞を2μg/mlのピューロマイシンで選択した。ノックダウン細胞を、抗ROR1 mAb(4A5)を使用してフローサイトメトリーによって選別した。shRNA1またはshRNA2を安定に発現する選別された細胞を、それぞれROR1−shRNA1またはROR1−shRNA2と指定した。サブクローニングを用いずに細胞選別後の最初の10世代において得られた、ノックダウン細胞のプールされた集団を、インビボ実験のためにrag−/−γ−/−マウスに注射した。ROR1のノックダウン効率を、逆転写による定量PCR(qRT-PCR)SYBR Green遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems)、またはウェスタン免疫ブロット分析(抗ROR1抗体、S4102、Cell Signaling)によって確認した。β2−ミクログロブリンおよびアクチンを、それぞれqRT-PCRおよびウェスタンブロットに対する内在性対照として使用した。
【0129】
トランスウェル遊走および浸潤アッセイ
癌細胞を、成長因子を含まない0.2%ウシ胎仔血清(FBS)を補充したダルベッコ変法イーグル培地中で一晩馴化した。翌日、細胞をトリプシン処理し、成長因子を含まない0.2%FBS DMEM培地中に再懸濁させた。腫瘍細胞を、遊走アッセイについて1ウェル当たり25,000細胞の密度でトランスウェルインサート(3μM細孔サイズ、BD Falcon)中に、または1ウェル当たり50,000細胞の密度でマトリゲルコーティング、成長因子低減、浸潤チャンバ(8μM細孔サイズ、BD Biosciences)中に播種した。遊走アッセイについては6時間後、または浸潤アッセイについては22時間後に、ウェルをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで固定した。各インサートの頂端側上の細胞を、削り落とすことによって除去した。膜の基底側に遊走した細胞を染色し、ニコン倒立顕微鏡で可視化した。
【0130】
mRNAおよびタンパク質発現の分析
総RNAを、RNeasyキット(Qiagen)を用いて精製し、2μgの各試料を使用して、高性能cDNA Reverser転写キット(ABI)を用いてcDNAを生成した。各cDNAを、ABI 7500 FastリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystem)を使用して3系列で分析した。タンパク質発現レベルを、プロテアーゼ阻害剤(Roche)を含有する溶解緩衝液(20mM HEPES(pH 7.9)、25%グリセロール、0.5N NaCl、1mM EDTA、1%NP−40、0.5mMジチオトレイトール、および0.1%デオキシコール酸塩)中の細胞溶解物(40〜60μg)で、抗ROR1(Cell Signaling)および抗β−アクチン抗体(Cell Signaling)を使用して、免疫ブロット分析によって評価した。
【0131】
フローサイトメトリー
乳癌細胞をフローサイトメトリーによって染色またはプール選別した。細胞を洗浄し、PBS溶液中の2%ウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma)中に再懸濁させ、ROR1発現に対して、製造業者のプロトコルに従ってAlex488複合体化抗体(クローン4A5またはクローンD10)またはAlex488複合体化IgG2bもしくはIgG2aアイソタイプ対照を使用して染色した。フローサイトメトリーデータを、FACSCalibur血球計算器(BD Biosciences)を使用して収集し、FlowJoソフトウェアを使用して分析した。
【0132】
免疫蛍光法および免疫組織化学分析
マウス肺を4%パラホルムアルデヒドで固定し、病理組織検査のためにOCTでパラフィン包埋または凍結させた。組織切片(5μm thick)を調製し、ヘマトキシリン&エオジン(H&E)、またはp−AKT(Ser473、D9E、Cell Signaling)、p−Creb(Ser133、87G3、Cell Signaling)、CK−19(RCK108、Dako)、もしくはビメンチン(D21H3、Cell Signaling)一次抗体で染色した。画像を、Delta Vision顕微鏡を使用して収集し、SPOTソフトウェアで処理した。
【0133】
転移の分析
メスRag−/−γ−/−マウスに、親MDA−MB−231 ROR1−shRNA1細胞(群1)、および親MDA−MB−231に対する対照shRNA細胞(群2)のプールを注射した。細胞を、100μLのPBS中、側面尾静脈を通じて静脈内注射したか(群1〜2について5×10
5、群3〜4について2×10
5)、または100μLのPBS中、心内注射によって投与した(群5〜6について1×10
5)。非侵襲的な生物発光撮像をIVIS 200撮像システムによって毎週行った。事前に死亡しなかったかまたは病気であるように見えなかった全てのマウスを、注射の3〜4週間後に安楽死させ、それらの肺を摘出し、10%ホルマリン中に固定した。
【0134】
乳房体異種移植片のインビボ転移に及ぼすROR1の影響を研究するために、乳癌腫瘍を8週齢のメスRag−/−γ−/−マウスにおいて、100μLの単細胞懸濁液(1×10
6生細胞/マウス)を、右腹部乳腺の第2の脂肪体領域の皮下に注射することによって誘導した。腫瘍サイズを3日毎に測定した。腫瘍体積が300mm
3に到達したとき、腫瘍を摘出した。乳癌転移における抗ROR1モノクローナル抗体の治療効果を研究するために、乳癌腫瘍を8週齢のメスRag−/−γ−/−マウスにおいて、100μLの単細胞懸濁液(5×10
5細胞/マウス)の静脈内注射を通じて誘導した。マウスIgGまたは抗ROR1 mAbを毎週静脈内注射した。非侵襲的な生物発光撮像を毎週行った。異種移植片の定着の5週間後、マウスを屠殺して肺を摘出し、10%ホルマリン中に固定した。
【0135】
Oncomine遺伝子発現データ分析
Pubmed GEOデータベース(GEO2603、GSE5327、GSE2034、およびGSE12276)からの582人の患者のマイクロアレイデータセットを編集した。これらのデータセットを、log2によって変換し、各マイクロアレイを全てのプローブの中央値の中心に合わせた。各患者について、無転移生存を、外科手術と転移の診断との間の時間間隔として定義した。ヒト組織におけるROR1 mRNA発現の相対レベルを、公開された遺伝子発現データセットのOncomine癌マイクロアレイデータベース分析(www.oncomine.org)によって決定した。データをlog2変換し、このうち中央値をゼロに設定し、標準偏差を1に設定した。
【0136】
統計分析。カプランマイヤー曲線間の比較を、ログランク検定を使用して行った。データを平均値±平均値の標準誤差(SEM)として提示する。別途指定のない限り、対応のないスチューデントt検定を使用して、2つの群を比較した。p<0.05を統計的に有意であると見なした。
【0137】
無転移生存を予測することにおけるROR1の性能を、Cox比例ハザード回帰モデルによる多変量解析によって分析した。各共変数のハザード比およびその95%信頼区間を報告する。P値を正規分布に基づいて算出して、帰無仮説の確率(ハザード比=1、すなわち予後の有意性なし)を評価する。
【0138】
CTRL−shRNAがトランスフェクトされた細胞の転移可能性を、同所性モデルにおいてルシフェラーゼ/GFP発現ベクターを使用して安定にトランスフェクトされた、ROR1−shRNAがトランスフェクトされたMDA−MB−231細胞と比較した(
図3A)。免疫不全RAG−/−γc−/−マウスの皮下乳房脂肪体への2.5〜10×10
5細胞の注射により、生物発光を介して監視することができる注射部位で原発性腫瘍を生成した。我々は、以前の研究で留意されたように、少なくとも1×10
6個の細胞の注射の3週間以上後まで、CTRL−shRNAがトランスフェクトされた細胞対ROR1−shRNAがトランスフェクトされた細胞の注射からもたらされた腫瘍の生物発光の漸進的増加において、有意な差異を観察しなかった。「自発的」癌転移の率における差異について検査するために、1×10
6個の細胞の注射からもたらされた原発性腫瘍を、それらが300mm
3の体積に到達したときに外科的に摘出した(点線、
図3B)。異なる成長率のために、原発性腫瘍の細胞注射から外科的摘出までの日数中央値は、同等の数のCTRL−shRNAがトランスフェクトされた細胞を受けたマウスについての日数中央値(31±0.5日間)よりも、ROR1をサイレンシングされた細胞を注射されたマウスについて、有意により大きかった(40±2.5日間)(
図3B)。摘出された原発性腫瘍は、同様の体積、重量、およびエクスビボ生物発光(
図3、C〜E)を有した。原発性腫瘍の摘出後、我々は、生物発光を介して転移性疾患について監視した。CTRL−shRNAがトランスフェクトされた細胞を注射された動物は、マウスの原発性腫瘍が切除されたときのより後の時点でROR1をサイレンシングされた細胞を移植されたマウスが有した生物発光よりも、原発性腫瘍切除の時点で肺または肝臓において有意により高い生物発光を有した(
図3、EおよびF)。ROR1をサイレンシングされた細胞を注射された動物は、CTRL−shRNAがトランスフェクトされた細胞を注射されたマウスの生物発光と比べて、肺の生物発光においてより検出しづらい増加を有した(
図3G)。動物の原発性腫瘍を切除して、エクスビボ生物発光、サイズ、ならびに肺(
図3、H〜J)および肝臓(
図3、KおよびL)の組織像を検査した21日後に、動物を屠殺した。CTRL−shRNAがトランスフェクトされた細胞を注射されたマウスの摘出された肺および肝臓は、ROR1がサイレンシングされた細胞を注射されたマウスの生物発光および重量よりも、有意により高い生物発光および重量を有した。その上、CTRL−shRNAがトランスフェクトされた細胞を注射されたマウスの肺および肝臓は全般的に、ROR1がサイレンシングされた細胞を注射されたマウスの組織においては観察されなかった、広範な転移性疾患を有した(
図3、JおよびL)。
【実施例4】
【0139】
ROR1のサイレンシングは、実験上の肺および骨転移を阻害する
ROR1−shRNAまたはCTRL−shRNAがトランスフェクトされたMDA−MB−231細胞を、6〜8週齢のRag
−/−γ
−/−マウスに、静脈内(5×10
5細胞)または心内(1×10
5細胞)注射を介して投与して、静脈血中または動脈血中のいずれかに注射された細胞の転移可能性の差異について評価した。CTRL−shRNAがトランスフェクトされた細胞を側面尾静脈中に受けた全ての動物は、肺転移に起因して注射の32日以内に死亡した。同等の数のROR1−shRNAがトランスフェクトされた細胞を尾静脈に注射された動物は、有意により長く生存した(
図4A)。CTRL−shRNAがトランスフェクトされた細胞を注射された動物は、ROR1をサイレンシングされた細胞を注射されたマウスよりも、肺においてそれぞれ21日目または28日目に19倍または60倍高い生物発光を有した(
図4B)。我々はまた、別の実験において種々の時点で動物を屠殺して、転移性疾患について肺を検査した。発生期の転移巣は、CTRL−shRNAがトランスフェクトされた細胞の注射の3日後に容易に検出された一方で、ROR1がサイレンシングされた細胞を注射された動物の肺において検出することができた転移巣は、より後の時点でさえも、たとえあったとしてもほんのわずかであった(
図4C〜E)。その上、CTRL−shRNAがトランスフェクトされた細胞を注射されたマウスから摘出された肺は、ROR1がサイレンシングされた細胞を注射されたマウスの肺よりも、有意により高いエクスビボ生物発光および重量中央値(それぞれ21および28日目に3倍および6倍)を有した(
図4F〜G、データは図示されず)。CTRL−shRNAがトランスフェクトされた細胞を注射された動物において発達した転移巣はまた、我々がROR1がサイレンシングされた細胞を注射されたマウスにおいて検出したほんのわずかな転移巣(それはより高いレベルのCK−19およびより低いレベルのビメンチンを代わりに発現した)よりも、より高いレベルのホスホ−AKTおよびホスホ−CREBを発現し、より高い割合の増殖性細胞を有した(
図47)。
【0140】
我々はまた、左心室中への1×10
5個の細胞の注射後の転移性疾患についても検査した。CTRL−shRNAがトランスフェクトされた細胞を側面尾静脈中に受けた全てのマウスは、この注射の30日以内に死亡したが、一方で、ROR1がサイレンシングされた細胞を注射された動物は、有意により長く生存した(
図4H)。CTRL−shRNAがトランスフェクトされた細胞を注射されたマウスは、実質的な大腿/骨盤領域の生物発光を生じたが、この生物発光は、ROR1をサイレンシングされた腫瘍細胞を注射されたマウスにおいては検出されなかった(
図4、IおよびJ)。我々は、21日目に動物を屠殺し、CTRL−shRNAがトランスフェクトされた細胞を注射されたマウスの単離された大腿/骨盤骨が、広範な骨髄転移(
図4L)に起因して、高い生物発光(
図4K)を有することを見出したが、この生物発光は、ROR1をサイレンシングされた細胞を注射されたマウスにおいては明らかでなかった。
【0141】
最近の研究は、異なる組織部位が、血中循環癌細胞による転移の定着のために異なる要件を課すことを見出している。ヒト乳癌細胞株BoM1833およびLM2−4175を、異なる組織向性を有するようにMDA−MB−231から選択した。BoM−1833は、骨に優先的に転移し、LM2−4175は、肺に優先的に転移する。我々は、これらの細胞株の各々がROR1の発現を保持することを見出した(
図5A)。各細胞株のROR1−shRNA2とのトランスフェクションが、ROR1の発現サイレンシングしたことから(
図5BおよびC)、我々は、6〜8週齢のRAG−/−γc−/−マウスへの2×10
5LM2−4175の静脈内注射または1×10
5BoM−1833の心内注射後の、臓器特異的転移のROR1依存性を検査することとなった。ROR1をサイレンシングされたLM2−4175を注射されたマウスは、CTRL−shRNAがトランスフェクトされたLM2−4175を注射されたマウスが有した増加中央値および生存中央値よりも、肺の生物発光において有意により低い増加中央値、および有意により長い生存中央値を有した(
図5DおよびE)。これらの観察と一致して、ROR1がサイレンシングされたLM2−4175の注射の21日後に単離されたマウスの肺は、CTRL−shRNAがトランスフェクトされたLM2−4175を注射されたマウスよりも、有意により低い重量中央値、エクスビボ生物発光、およびより少数かつより小さい転移巣を有した(
図5F〜H)。同様に、ROR1をサイレンシングされたBoM−1833を注射されたマウスは、同等の数のCTRL−shRNAがトランスフェクトされたBoM−1833を注射されたマウスが有した生物発光の増加よりも、骨格の生物発光において有意により低い増加を有した(
図5IおよびJ)。その上、心内注射の21日後に屠殺された動物の検死は、骨または肝臓における検出可能な転移巣がたとえあったとしてもほんのわずかであることを明らかにした。これは、CTRL−shRNAがトランスフェクトされたBoM−1833を注射された動物においてこれらの部位の各々で検出された、広範な転移性疾患と際立った対照を成した(
図5JおよびK)。
【実施例5】
【0142】
抗ROR1抗体は、癌転移を阻害する
ROR1の細胞外ドメインに特異的なモノクローナル抗体(mAb)を生成し、D10と指定されるものは、37℃で表面ROR1の急速な下方調節を誘導することができた(
図5A)。D10によるMDA−MB−231の処理は、共焦点顕微鏡を介して評価したとき、ROR1内在化を引き起こした(
図5B)。これは、ROR1の明確に異なる非交差遮断(non−cross−blocking)エピトープに特異的な異なるmAbを使用して、フローサイトメトリーを介して評価したとき、表面ROR1の有意な低減をもたらした(
図5C)。D10によるMDA−MB−231の処理はまた、共免疫沈降研究においてROR1に結合した(
図5E)、細胞質ビメンチンの発現も低減した(
図5D)。D10による処理はまた、インビトロでMDA−MB−231の遊走および浸潤能を有意に阻害した(
図5FおよびG)。D10はまた、他のROR1+癌細胞株(例えば、HS−578TおよびBT549(
図9))の遊走/浸潤能を阻害することもできた。
【0143】
D10を、RAG−/−γc−/−マウスの尾静脈に注射されたMDA−MB−231の浸潤および転移の阻害について評価した。5×10
5個の細胞の注射後、マウスに5mg/kgの対照IgGまたはD10の静脈内注射を与え、次いで3日後に屠殺した。D10を与えられた動物からの肺のエクスビボ生物発光は、対照IgGで処置された動物の肺のエクスビボ生物発光よりも有意により低かった(
図5H)。その上、対照IgGを受けた動物の肺は、複数の転移巣を有したが、D10で処置されたマウスにおいては検出不可能であった。別の実験において、各マウスに、5×10
5MDA−MB−231の静脈内注射を受けさせ、次いで5mg/kgの対照IgGまたはD10の3回の毎週の静脈内注射を与えた。D10で処置されたマウスは、対照IgGを与えられたマウスよりも有意により低い肺の生物発光を発生させた(
図5、IおよびJ)。35日目に屠殺されたとき、D10で処置されたマウスの肺は、対照IgGを与えられた動物の肺よりも有意により低い重量(
図5K)およびより少数の転移巣(
図5L)を有した。全体として、これらのデータは、D10が免疫不全マウスにおいて転移を阻害し得ることを示す。
【0144】
結論として、ROR1が乳癌転移を媒介し得ること、およびROR1の治療的標的化が乳癌転移進行を遅延させ得ることが、これにより実証される。胚性幹細胞は検出可能なROR1タンパク質を発現し、ROR1の喪失はROR2欠損マウスにおいて心臓および骨格異常を増大させ得るが、主要な成体組織は、膵臓および脂肪組織における低レベルでの発現を除いて、ROR1タンパク質をまれにしか発現しないことから、ROR1癌特異性を有する本発明の抗体およびそれらの使用方法を提供している。
【実施例6】
【0145】
ROR1高親和性抗体
エピトープ研究を上述のROR1抗体D10に対して行った。ヒトおよびマウスROR1の広がりを含む一連のキメラタンパク質を生成して、インビトロでROR1を下方調節し、ビメンチンの発現の低減をもたらし、癌細胞遊走(転移を形成する癌の能力の良好な代用マーカー)を阻害し得るD10によって認識される、エピトープ(複数可)をマッピングした。関与するROR1の唯一の領域は、ROR1のアミノ末端上にあるIg様ドメインである。各構築物は、キメラIg様ドメインならびにヒトCRDおよびクリングルドメイン(マウス部分は明色であり、ヒト部分は暗色である)を含有する。Ig様ドメインのみがここでは示される(
図6)。これらの構築物をフリースタイル(free−style)293細胞内で発現させた。培養培地を免疫ブロットに使用し、精製タンパク質をELISAに使用した。D10 mAb抗ROR1は、ヒトROR1を認識したが、マウスROR1を認識しなかったため、これらの構築物うちのどちらが結合可能または不可能であったかを見出すことは、D10によって認識されるエピトープをマッピングする一助となり得た。結果は、抗体D10が、CRDドメインと隣接するIg様ドメインのC末端でROR1に結合することを示す(
図7)。
図8は、ROR1抗体4A5に対するエピトープのマッピングを示す。示されるように、4A5エピトープは、D10エピトープとは異なる。
【0146】
上述のように、抗ROR1抗体、すなわちD10は、インビボでMDA−MB−231細胞の肺転移を阻害することができる。D10モノクローナル抗体は、ROR1受容体の内在化を容易にする(
図9A、B)。MDA−MB−231細胞をイソ−Alex647、またはD10−Alex647で30分間、氷上で染色した。染色された細胞を次いで、2つの画分へと分離した。1つの画分を氷上で1時間保ち、その他の画分を37℃に15分間、30分間移した。24時間の抗ROR1抗体D10治療は、MDA−MB−231細胞においてROR1表面発現を減少させる(
図9C)。ROR1は、乳癌MDA−MB−231細胞においてビメンチンとの複合体を形成する(
図9D)。インビトロでのD10抗体治療は、ビメンチン発現を減少することができた(
図9E)。抗ROR1抗体は、インビトロで乳癌遊走を減少させる。(
図9F)。D10モノクローナル抗体は、MDA−MB−231乳癌の早期(2日目)肺転移を阻害する(
図9G)。D10モノクローナル抗体は、MDA−MB−231乳癌の肺転移を阻害する(
図9H)。異種移植マウスに、200mgの抗ROR1抗体を1日目に、および100mgの抗ROR1抗体を3、7、14、および21日目に、静脈内(i.v.)注射した。MDA−MB−231担持マウスの肺からの正規化された光子束が示される。5E5 MDA−MB−231細胞を注射された代表的なマウスが背位で示される(
図9I)。抗ROR1抗体治療は、MDA−MB−231担持マウスの肺重量を低減した(
図9J)。抗ROR1抗体治療の後のMDA−MB−231担持マウスからの代表的な肺のH&E組織像(
図9K)。エラーバーは、標準誤差を示し、*p<0.05、**p<0.01であり、対応のない両側スチューデントt検定に基づく。
【0147】
図6に描写される構築物を使用して、高親和性組換え抗体を選択した。ネイティブウェスタンはまた、全ての3つのヒト化D10様mAbが、D10と同じエピトープを標的とし、ヒトROR1への結合のためにアミノ酸138を必要とすることを示した(
図10)。ヒトおよびキメラROR1−細胞外(ex)構築物を293細胞中にトランスフェクトした。これは、組換えヒト−マウスキメラROR1タンパク質の産生を可能にし、この組換えヒト−マウスキメラROR1タンパク質は、異なる抗ROR1 mAbでの免疫ブロット分析のために非変性PAGEゲルまたはSDS−PAGEゲルにおいてサイズ分離することが可能であった。この結果は、D10および99961抗体の両方が、Ig様ドメインのC末端上の同じ領域に結合すること、ならびにD10および99961が、変性条件および天然条件の両方においてROR1と結合し得ることを示している。完全ヒト細胞外ドメインは、いずれかのゲルの一番左のレーンで提供される(
図11)。抗体99961は、ROR1に対して、D10よりも50倍高い結合親和性を有し、白血病負荷をD10よりも大きく低減した(
図12)。99961抗体をヒト化して、99961.1、99961.2、99961.3、および99961.4と指定される4つの抗体を産生した。
【0148】
ROR1抗体99961の特徴付け
ヒト臍帯血再構成免疫不全マウスにおいてCLL細胞に対する99961の特異的活性を実証するために、アッセイを実施した。ヒト免疫系を発生するようにヒト臍帯血(CB)細胞で再構成されたRag−/−γ−/−マウスに、新鮮なまたは凍結したCLL PBMCを腹腔内注射した。翌日、マウスに1mg/kgの99961またはD10または対照mIgGを静脈内で与えた。7日後、腹腔からのCLL PBMC細胞を採取し、フローサイトメトリーによって分析した(
図13A)。データは、99961が、90%超のCLL細胞を排除し、正常なヒトB細胞またはT細胞発生には何の影響も及ぼさないことを示す(
図13B、C)。
【0149】
ROR+原発性AMLにおける99961の特異的活性を実証するために、研究をまた行った。結果は、99961が、原発性コロニーの生存および続発性コロニーの自己再生能を減少させることを示す(
図14)。
【0150】
99961 mAbのエピトープマッピングは、このエピトープが種々の癌上でのみ発現され、臍帯血細胞または成体ヒト細胞、および胎児肝臓由来の前駆細胞もしくは幹細胞上では発現されないことを実証した(
図15)。99961が白血病細胞に結合するが、正常な成体組織とは交差反応しないこともまた示されている(
図16)。リンパ腫多組織アレイは、切片が40個のリンパ腫由来であるLifescan Biosciences(LS−SLYCA5)からのものであり、Ab9991が悪性細胞に結合した5つの症例を有した。切片が複数の異なる正常な組織由来である、Biomax(FDA999)からの正常な多組織アレイは、99961との特異的な結合領域を何ら示さなかった。免疫組織化学を、DAKO(カリフォルニア州、カーペンテリア)からの高pH緩衝液による熱誘導抗原賦活化を使用して行い、続いてビオチニルチラミド増幅(DAKOからのCSAキット)を使用して増強した。
【0151】
99961のPK研究を、マウス1匹当たり1mgの抗体をRag−/−γ−/−マウスに静脈内注射することにより行った。血液を異なる時点で採取し、血漿中の99961 mAbのレベルをELISAによって測定した。結果は、抗体半減期が11.4日間であり、体積が1.18mL(47mL/kg)であり、クリアランスが0.072mL/日(0.12mL/時/kg)であったことを示し、他の高分子および臨床的に利用される抗体と全て一致していた(
図17)。
【実施例7】
【0152】
ROR1ペプチドワクチン
上で考察されるように、D10が、ROR1のCRDドメインに隣接するIg様ドメインのカルボキシ末端で結合することが示された。抗体4A5は、Ig様ドメイン内で異なるエピトープに結合し、生物活性を欠いている。mAbのエピトープは、ヒトとマウスのROR1との間の異なるアミノ酸のキメラROR1−細胞外および部位突然変異によって確認された。D10、4A5、および他のROR1抗体が結合するROR1の細胞外ドメインに対応するペプチド、すなわちA19、R22、およびK19を構築した。A19ペプチドは、4A5 mAbによって認識されるエピトープに対応し、R22ペプチドは、D10 mAb、99961 mAb(すなわち、VATNGKEVVSSTGVLFVKFGPC)、およびヒト化99961 mAbsによって認識されるエピトープに対応し、K19ペプチドは、ROR1特異的な他のmAbによって認識されるクリングルドメイン内の領域に対応する(
図18)。3つのペプチドは各々、フロイント完全アジュバント(CFA)またはフロイント不完全アジュバント(IFA)のアジュバントにおいて、免疫化のためのキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)とC末端で複合体化された。システイン(C)は、C末端に付加され、MBSとのKLHの複合体化のために使用された(
図20)。複合体化反応は、
図19に示されている。複合体化されたペプチドが、D10および99961に結合することが示される(
図21)。C57BL/6およびトランスジェニックマウスは、複合体化されたペプチドで免疫化された。抗体力価は、免疫化後4週目に収集した。R22−KLHワクチンは、C57BL/6マウスまたはROR1−Tgマウスのいずれかにおいて、抗ROR1抗血清の最も高い力価を誘導した(
図28)。この実験を、D10エピトープの16個のアミノ酸ペプチド、R16により再び行い、このペプチドもまた、ヒトのROR1タンパク質と反応する抗体を誘導したが、力価は一般的に、R22−KLHによって誘導されたものよりも低かった(データは示されない)。
【0153】
R22−KLHワクチンにより誘導された抗ROR1抗体は、EW36、JeKo−1、またはCLL細胞上に存在する表面ROR1に結合することが示された(
図29)。この研究において、R22−KLHで免疫化されたマウスからの抗血清の希釈は、20分間4℃で細胞とインキュベートされた。細胞は、次いで、洗浄され、次いで、フローサイトメトリーによる検出のために蛍光色素と複合体化されたヤギ抗マウスIgでラベル付けされた。中空のヒストグラムは、最初にR22−KLH抗血清で細胞をインキュベートせずに、ヤギ抗マウスIgで染色された細胞である。影付きのヒストグラムは、最初に抗R22−KLH抗血清とインキュベートされた細胞の蛍光である。細胞の蛍光における増加は、表面に結合されたマウス抗ROR1抗体によるものであり、これは、次いで、ヤギ抗マウスIgで検出された。これらのマウスの免疫化前の抗血清またはKLHで免疫化されたマウスの抗血清は、これらの細胞に結合しなかった(
図29)。
【0154】
R22−KLH誘導抗血清が、補体依存性細胞傷害について検査された。EW36、Jeko−1、CLL−1、およびCLL−2細胞を洗浄し、丸底96ウェルプレート(Corning Costar)においてRPMI/10%FBS中で1ウェルあたり5×10
5個の細胞25μlをプレーティングした。希釈された抗血清(25μl)および赤ん坊のウサギ補体の1:5での希釈25μlがウェル毎に添加された。D10 mAbが、陽性対照として使用された。全ての条件は三連で行われた。プレートは4時間37℃でインキュベートされ、細胞は、DiOC6/PI染色およびフローサイトメトリー分析によって生存率を直ちに定量した。この研究は、D10、またはR22ペプチドに対して生成された抗血清のいずれかが、細胞担持ヒトROR1の補体媒介溶解を方向付けることができたことを示している(
図30)。ROR1を担持しない細胞は、死滅しなかった。
【0155】
R22−KLHによって誘導された抗体のIgのサブクラスを検査した。このために、我々はヒトROR1でコーティングされたプレートを用いてELISAを使用し、これを、次いで、希釈された抗血清とインキュベートし、洗浄し、次いで、x 軸上に示されるようにIgGサブクラスの各々に特異的な酵素複合体化された二次抗体を使用して検出された。この結果は、IgG1、IgG2a、IgG2b、およびIgG3がすべて、様々な程度に誘導されたことを示した。IgG2a、IgG2b、およびIgG3は、Th1のプロファイルと関連し、IgG1は、Th2のプロファイルと関連する。これらの結果は、Th1およびTh2のCD4+Tヘルパー細胞が両方、ワクチン接種後に活性化されることを示している。
【0156】
R22−KLHを使用して、
図31に示されるようにC57BL/6マウスを免疫化した。KLHまたはR22−KLHペプチドの第1の注射は、CFAにおいてであった。第2の注射およびその後の注射は、IFAにおいてであった。これらの動物は、紫色の矢印でマークされた日に採血された。第1の注射の日から44日後に、C57BL/6マウスは、ヒトROR1トランスジェニックマウスに由来するヒトROR1発現CLL細胞で喚起された。このマウスは、T細胞白血病1に対してトランスジェニックであった(TCL1遺伝子)。両方の導入遺伝子は、B細胞特異的プロモータ/エンハンサ(E−Cμ)の制御下にある。この白血病はヒトCLLに類似し、ヒト表面ROR1を発現する。
【0157】
収集された抗血清は、R22−KLHで免疫化されたマウスの白血病細胞負荷において著しい低減をもたらしたが、KLHで免疫化されたマウスではそれをもたらさなかった。(
図32)
【0158】
C57BL/6マウス
R22−KLHを使用して、
図33に示されるスキーマに従ってC57BL/6マウスを免疫化した。KLHまたはR22−KLHペプチドの第1の注射は、CFAにおいてであった。第2の注射およびその後の注射は、IFAにおいてであった。これらの動物は、紫色の矢印でマークされた日に採血された。第1の注射の日から44日後に、C57BL/6マウスは、ヒトROR1トランスジェニックマウスに由来するヒトROR1発現CLL細胞で喚起され、これはまた、T細胞白血病1(TCL1遺伝子)についてトランスジェニックであった。両方の導入遺伝子は、B細胞特異的プロモータ/エンハンサ(E−Cμ)の制御下にある。この白血病はヒトCLLに類似し、ヒト表面ROR1を発現する。
【0159】
抗体は、42日目にR22−KLHで免疫化されたマウスにおいて観察されたヒトROR1に反応するが、KLHで免疫化されたマウスでは反応しなかった。R22−KLHで免疫化された4匹のマウス全てが、組換えヒトROR1タンパク質の細胞外ドメインでコーティングされたプレートを用いて、ELISAを介して検出されたヒトROR1に対して高力価抗体を生成した。これらのデータは、R22−KLHペプチドでの免疫化が、これらのROR1−TgマウスのすべてのB細胞に発現されるROR1に対する自己寛容を破壊することができることを示す。R22−KLHペプチドを与えられたマウスからの脾臓は、対照動物に類似したままであるが、KLHマウスは、有意により大きい脾臓を有する(
図34)。
【0160】
C57BL/6マウスからの脾細胞のフローサイトメトリーは、CD5またはROR1に特異的な蛍光色素複合体化mAbを使用して、KLHまたはR22−KLHのいずれかで免疫化した。細胞を染色するために使用されるmAbは、R22−KLHによって誘導される抗体よりROR1の非交差遮断エピトープと結合する。存在する場合、R22−KLHワクチンで免疫化されたマウスの脾臓内の白血病細胞がはるかに少ないことに留意されたい(
図39)。
【0161】
1x10
5個のヒトROR1+CLL細胞より30日早くR22−KLHペプチドを注射されたC57BL/6マウスの脾臓内に見て取れた白血病細胞の総数は、KLHを注射されたマウスの脾臓より有意に低かった。1個の脾臓あたりの白血病細胞の数は、(フローサイトメトリーを介して評価された)脾細胞集団における白血病細胞のパーセントと脾臓から採取された脾細胞の数を乗算することによって得られた(
図34)。
【0162】
KLHまたはR22−KLHで免疫化されたマウスの脾臓内のCD8+細胞の数は、フローサイトメトリーによって判定された。R22−KLHでの免疫化に続き、CD8T細胞において劇的に増加したが、これは、KLHで免疫化されたマウスにおいて増加しなかった。下列は、75日目にマウスの脾臓から採取されたCD8T細胞の絶対数を示す(
図37)。
【0163】
C57BL/6 ROR1トランスジェニックマウス
トランスジェニックマウスは、
図38に示されるように、R22−KLHまたはKLHのいずれかを注射された。マウスは、B細胞特異的プロモータ/エンハンサ(E−Cμ)下でヒトROR1にトランスジェニックである。KLHまたはR22−KLHペプチドの第1の注射は、CFAにおいてであった。第2の注射およびその後の注射は、IFAにおいてであった。これらの動物は、紫色の矢印でマークされた日に採血された。第1の注射の日から44日後に、C57BL/6マウスは、ヒトROR1−Tgマウスに由来するヒトROR1発現CLL細胞で喚起され、これはまた、T細胞白血病1(TCL1遺伝子)についてトランスジェニックであった。両方の導入遺伝子は、B細胞特異的なプロモータ/エンハンサ(E−Cμ)の制御下にある。それゆえに、これらのROR1−Tgマウスは、ヒトROR1を発現するB細胞を有する。結果は、R22−KLHペプチドが、ROR1を発現するマウスにおける抗ROR1保護的免疫を誘導できることを実証し、それゆえに、自己寛容を破壊する
【0164】
抗体は、42日目にR22−KLHで免疫化されたROR1−TgマウスにおいてヒトROR1に反応するが、KLHで免疫化されたマウスでは反応しないことが観察された。R22−KLHで免疫化された4匹のマウス全てが、組換えヒトROR1タンパク質の細胞外ドメインでコーティングされたプレートを用いて、ELISAを介して検出されたヒトROR1に対して高力価抗体を生成した。フローサイトメトリーによるさらなる分析は、KLHで免疫化されたマウスよりR22−KLHワクチンで免疫化されたマウスの脾臓内の白血病細胞が、存在したとしても、はるかに少ないことを実証した(
図40)。FACS分析はまた、ROR1が、R22−KLHで免疫化されたマウスにおいて下方調節されたが、KLHで免疫化されたマウスでは調節されなかったことを示した。R22−KLHで免疫化されたマウスからの脾臓は、KLHで免疫化されたマウスと比較して、有意にさらに少ない白血病細胞を有する。C57BL/6マウスを用いたとき、R22ペプチドKLHでの免疫化は、CD8T細胞における劇的な増加をもたらしたが、これは、KLHで免疫化されたマウスでは増加しなかった(
図39).類似する結果が、CD4+T細胞(
図43)およびCD3+T細胞(
図42)で見られた。
【0165】
BALB/cマウス
BALB/cマウスは、
図22に示されているように、KLHまたはR22−KLHで免疫化された。このため、KLHまたはKLHと複合体化されたペプチドは各々、アジュバント(CFAまたはIFA)と乳剤を形成した。CFAは、第1の免疫化のために使用され、IFAは、その後のブーストのために使用された。採血およびペプチド注射の日が示されている。
【0166】
R22−KLH誘導抗ROR1抗体レベルは、ELISAによって判定された。精製されたROR1細胞外ドメインを、96ウェルプレートにコーティングし、個々の採血日から示された希釈時間で抗血清をインキュベートした。ELISAの結果は、抗ROR1抗体の濃度は、免疫化されたBALB/cマウスにおいて、経時的に誘導されたことを示した。免疫化前に収集されたこれらの動物からの血清は、低い血清希釈でさえ、ROR1タンパク質と反応しなかった。
【0167】
免疫ブロット分析はまた、BALB/cマウスのR22−KLHでの免疫化によって生成された抗ROR1抗体は、D10と同じエピトープ特異性を有する抗ROR1抗体を誘導したことを示した(
図23)。加えて、抗血清はまた、マウスのタンパク質と反応するように見える。
【0168】
FACS分析は、細胞の表面上でのROR1への、R22−KLHで免疫化されたBALB/cマウスからの抗血清の結合を確認した。
【0169】
トランスジェニックマウスII
トランスジェニックマウスは、
図24に示されるように、KLHまたはR22−KLHのいずれかで免疫化された。ペプチドと複合体化されたKLHは、アジュバントと混合された(CFAまたはIFA)。CFAは、第1の免疫化のために使用され、IFAは、続くブーストのために使用された。ELISAの結果は、抗ROR1抗体の濃度は、R22−KLHで免疫化されたROR1トランスジェニックマウスに経時的に誘導されたことを示した。FACS分析は、細胞の表面上でのROR1への、R22−KLHで免疫化されたROR1トランスジェニックマウスからの抗血清の結合を確認した。
【0170】
R22−KLHで免疫化されたマウスからの抗血清を、ROR1受容体内在化能力について検査した。MDA−MB−231細胞を、4℃または37℃で1時間トランスジェニックマウスからの抗血清とインキュベートし、次いで、ROR1発現のFACS分析前に、30分間氷上においてアイソタイプAlexa647または4A5−Alexa647を用いて染色された。この結果は、R22−KLHで免疫化されたトランスジェニックマウスからの抗ROR1血清が、ROR1受容体内在化を誘導したことを示していた(
図25)。
【0171】
R22−KLHで免疫化されたマウスからの抗血清を、乳癌遊走におけるそれらの影響を判定するために検査した。遊走した細胞は、10倍の倍率下で1時間の抗血清処理、次いで、16時間の37℃でのインキュベーション後に観察された。結果は、平均±標準誤差である。n=3である。(**p<0.01)。この結果は、トランスジェニックマウスからの抗ROR1血清が、インビトロで乳癌遊走を減少させることができたことを示した(
図26)。