特許第6823102号(P6823102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ヤマトの特許一覧

<>
  • 特許6823102-ショーケース洗浄装置 図000002
  • 特許6823102-ショーケース洗浄装置 図000003
  • 特許6823102-ショーケース洗浄装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6823102
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】ショーケース洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   A47F 3/04 20060101AFI20210114BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20210114BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   A47F3/04 K
   F25D11/00 101E
   F25D23/00 307
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-69738(P2019-69738)
(22)【出願日】2019年4月1日
(65)【公開番号】特開2020-168054(P2020-168054A)
(43)【公開日】2020年10月15日
【審査請求日】2019年5月9日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年2月13日〜15日幕張メッセにおいて開催された、第53回スーパーマーケット・トレードショー2019で公開
(73)【特許権者】
【識別番号】392035972
【氏名又は名称】株式会社ヤマト
(74)【代理人】
【識別番号】100092808
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 亘
(74)【代理人】
【識別番号】100140981
【弁理士】
【氏名又は名称】柿原 希望
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 智
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−254664(JP,A)
【文献】 特開2018−118251(JP,A)
【文献】 特開2005−152689(JP,A)
【文献】 特開昭61−095105(JP,A)
【文献】 特開平01−168214(JP,A)
【文献】 特開2000−083773(JP,A)
【文献】 特開昭61−090000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 3/04
F25D 11/00
F25D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口を備えた下部空間を有するショーケースの洗浄装置であって、
前記下部空間の長手方向に沿って複数設けられた洗浄ノズルと、
前記洗浄ノズルへ洗浄水を供給する給水管と、
前記洗浄ノズルへの洗浄水の供給をオン・オフする開閉手段と、
前記開閉手段を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記排水口から遠い洗浄ノズルから順に前記下部空間内への洗浄水の散水と停止とを行わせるとともに、
前記排水口から吐出される洗浄水を上方に設けられたドレン排水配管に揚水する揚水機構をさらに有し、
前記揚水機構は、
前記排水口と繋がったドレン配管に接続し、洗浄水のショーケース側への逆流を防止する下部逆流防止部材と、
前記下部逆流防止部材を介して前記ドレン配管と接続した貯留部と、
前記貯留部と接続し上方に延びた揚水配管と、
前記揚水配管の上部に設置され前記揚水配管内のエアを分離するエア分離部と、
前記揚水配管と前記ドレン排水配管との間に設けられ洗浄水の前記貯留部側への逆流を防止する上部逆流防止部材と、
前記エア分離部から前記揚水配管内のエアを吸引するとともに前記貯留部にエアを圧送するエア吸引供給部と、を有し、
前記エア吸引供給部は、前記揚水配管からのエア吸引と前記貯留部へのエア圧送により前記貯留部に貯留した洗浄水を前記揚水配管を通して揚水することを特徴とするショーケース洗浄装置。
【請求項2】
洗浄ノズルを回転可能に形成するとともに、両端に散水孔を備えた略S字形状もしくは略クランク形状とし、
前記散水孔からの洗浄水の噴出により前記洗浄ノズルを回転させることを特徴とする請求項1記載のショーケース洗浄装置。
【請求項3】
揚水機構が、エア吸引供給部に圧縮空気を送出するエア圧送部をさらに有し、
前記エア吸引供給部が、内部に狭隘部を備えるとともに、前記エア圧送部からの圧縮空気が前記狭隘部を通過した際の負圧によってエア分離部からエアを吸引する真空発生装置であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のショーケース洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵冷凍ショーケースの商品陳列棚下の下部空間内を洗浄するショーケース洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、食料品等を扱う商業施設、店舗等においては商品を冷凍もしくは冷蔵状態で保管するショーケースが多く用いられている。このようなショーケースの内、特に前方が開放したオープンタイプのショーケースでは、例えば下記[特許文献1]に記載されているように、冷気を循環させて所謂エアーカーテンを形成し、庫内の保冷を行うものが一般的である。そして、このようなオープンタイプのショーケースでは、最下段の商品陳列棚の下に冷気を循環させるための庫内ファンやドレン水等を捕集する排水溝を備えた下部空間を有するものが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−221561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この下部空間には前述のようにドレン水等が滴下する他、冷気を吸引する際に混入する空気中の塵埃等が侵入するため定期的な清掃が必要となる。しかしながら、下部空間の清掃のためには商品陳列棚の商品を全て移動して清掃後に再陳列する必要があり作業負担が大きいことに加え、例えば24時間営業の店舗等では清掃を行う事自体が困難であり、頻繁に行うことができない。このため、下部空間には徐々に汚れが堆積し、不衛生な状態となる他、錆や腐食の原因ともなる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ショーケースの下部空間の洗浄を商品を移動することなく自動で行う事が可能なショーケース洗浄装置の提供を目的とする。
尚、本願発明者らは冷却設備から排出されるドレン水を揚水して上方の排水配管を通して排水する特願2019−008213に記載の発明を行った事を付言する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(1)排水口20を備えた下部空間Aを有するショーケース10の洗浄装置であって、
前記下部空間Aの長手方向に沿って複数設けられた洗浄ノズル60と、
前記洗浄ノズル60へ洗浄水を供給する給水管62と、
前記洗浄ノズル60への洗浄水の供給をオン・オフする開閉手段64と、
前記開閉手段64を制御する制御部66と、を有し、
前記制御部66は、前記排水口20から遠い洗浄ノズル60から順に前記下部空間A内への洗浄水の散水と停止とを行わせるとともに、
前記排水口20から吐出される洗浄水を上方に設けられたドレン排水配管14に揚水する揚水機構70をさらに有し、
前記揚水機構70は、
前記排水口20と繋がったドレン配管12に接続し、洗浄水のショーケース10側への逆流を防止する下部逆流防止部材30aと、前記下部逆流防止部材30aを介して前記ドレン配管12と接続した貯留部32と、前記貯留部32と接続し上方に延びた揚水配管34と、前記揚水配管34の上部に設置され前記揚水配管34内のエアを分離するエア分離部36と、前記揚水配管34と前記ドレン排水配管14との間に設けられ洗浄水の前記貯留部32側への逆流を防止する上部逆流防止部材30bと、前記エア分離部36から前記揚水配管34内のエアを吸引するとともに前記貯留部32にエアを圧送するエア吸引供給部40と、を有し、
前記エア吸引供給部40は、前記揚水配管34からのエア吸引と前記貯留部32へのエア圧送により前記貯留部32に貯留した洗浄水を前記揚水配管34を通して揚水することを特徴とするショーケース洗浄装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)洗浄ノズル60を回転可能に形成するとともに、両端に散水孔60bを備えた略S字形状もしくは略クランク形状とし、前記散水孔60bからの洗浄水の噴出により前記洗浄ノズル60を回転させることを特徴とする上記(1)記載のショーケース洗浄装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)揚水機構70が、エア吸引供給部40に圧縮空気を送出するエア圧送部50をさらに有し、
前記エア吸引供給部40が、内部に狭隘部44を備えるとともに、前記エア圧送部50からの圧縮空気が前記狭隘部44を通過した際の負圧によってエア分離部36からエアを吸引する真空発生装置であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のショーケース洗浄装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るショーケース洗浄装置はショーケースの下部空間内に洗浄水を散水する洗浄ノズルを備えている。このため、商品陳列棚上の商品を移動することなく下部空間の洗浄を行うことができる。これにより、作業者の負担を大きく軽減することができる。また、本発明に係るショーケース洗浄装置は排水口から遠い位置にある洗浄ノズルから順に洗浄水の散水を行う。このため排水溝内のゴミ等は順次排水口側へ押し流され、比較的重いゴミであっても排水口から排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るショーケース洗浄装置の洗浄部分を説明する図である。
図2】揚水機構を備えた本発明に係るショーケース洗浄装置を説明する図である。
図3】本発明に係る揚水機構のエア吸引供給部の略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るショーケース洗浄装置80について図面に基づいて説明する。ここで、図1(a)はショーケース10の下部空間Aの内部を示す側面方向からの模式図であり、図1(b)は上面方向からの模式図である。
【0010】
先ず、ショーケース10は主に食料品等の商品を冷蔵もしくは冷凍保存しながら陳列するものであり、排水口20を有する下部空間Aを備えている。尚、ここではショーケース10としてオープンタイプのものを例に説明を行うが、本発明はオープンタイプのショーケースに限定されるものではなく、クローズドタイプのショーケースの他、排水口20を有する下部空間Aを備えていれば、如何なるショーケースにも適用が可能である。
【0011】
ここで、一般的なオープンタイプのショーケース10では、この下部空間Aにショーケース10内で冷気を循環させるための庫内ファン22と、ドレン水や洗浄水、商品陳列棚24側からの落水等を捕集する排水溝26と、を有している。尚、排水溝26は排水口20に向けて緩やかに傾斜しており、下部空間Aに落水した各水は排水溝26を流下して適宜、排水口20から排出される。また、下部空間Aはフタ部材24aで閉塞され、このフタ部材24aの上に商品陳列棚24が載置される。そして、商品陳列棚24上に商品Sが陳列される。
【0012】
そして、本発明に係るショーケース洗浄装置80は、図1(b)に示すように、下部空間Aの長手方向(通常はショーケース10の正面左右方向)に沿って複数設けられた洗浄ノズル60と、この洗浄ノズル60へ洗浄水を供給する給水管62と、洗浄ノズル60への洗浄水の供給をそれぞれオン・オフ(開閉)する開閉手段64と、この開閉手段64を制御する制御部66と、を有している。尚、本発明に係るショーケース洗浄装置80は、既存のショーケース10への後付けが可能である。
【0013】
また、ショーケース洗浄装置80を構成する給水管62は元管62aと、この元管62aから分岐しそれぞれの洗浄ノズル60に接続する分岐管62bとを有し、元管62aの一端は例えば上水道等の給水配管と接続する。尚、給水管62には水抜き機構を設けることが好ましい。この構成では、不使用時に給水管62内に残留した洗浄水を排出することで、下部空間A内の温度低下による洗浄水の凍結を防止することができる。また、開閉手段64は制御部66の指示により分岐管62bを開閉する周知の開閉弁等を用いることができる。また、制御部66に関してはマイコンやシーケンサ等の演算機器を用いても良いが、コスト面からタイマとリレースイッチとを用いた比較的簡易なものを用いることが好ましい。尚、ショーケース洗浄装置80の起動はスタートボタン等の押下により行っても良いが、制御部66を構成するタイマに開始時間を設定し、毎日設定された時間、例えば夜間の時間に自動的に洗浄動作するようにしても良い。
【0014】
また、ショーケース洗浄装置80を構成する洗浄ノズル60の形状に関しては特に限定は無く、如何なるものを用いても良い。ただし、φ3mm〜φ8mm、好ましくはφ5mm程度の比較的径の小さな管体を用いることが望ましい。このように洗浄ノズル60に細管を用いた構成では、洗浄水のオン・オフの際に生じるウォーターハンマー現象を軽減することができる。また、設置や加工が容易となり高い施工性を有する。
【0015】
次に、本発明に好適な洗浄ノズル60に関して説明を行う。本発明に好適な洗浄ノズル60は細管を二股とした後、その二股部分60aの両端に散水孔60bを設け、さらに二股部分60aを上面視で略S字形状もしくは略クランク形状とする。そして、二股部分60aの合流部分60cを分岐管62bに対して回転可能に形成する。この構成によれば、洗浄ノズル60に洗浄水が流下すると、二股部分60aの両側の散水孔60bから洗浄水が互いに逆の方向に噴出し、この洗浄水の噴出によって洗浄ノズル60が回転する。この構成では、電力等のエネルギーを用いることなく洗浄ノズル60の回転を行う事が可能となり、洗浄水を広範囲に散水して下部空間A内の洗浄を効率良く行うことができる。またさらに、洗浄ノズル60を回転式として、給水管62とは別部材で構成することで、洗浄ノズル60に不具合が生じた場合でも洗浄ノズル60の交換で対応することができる。
【0016】
次に、本発明に係るショーケース洗浄装置80の洗浄動作を説明する。先ず、予め設定された所定の時間となって制御部66のタイマが起動すると、制御部66は水抜き機構を閉塞するとともに給水管62に水道水等の洗浄水を供給する。このとき、開閉手段64は全て閉状態にある。次に、制御部66は排水口20から一番遠い位置にある洗浄ノズル60の開閉手段64を開動作させる。これにより、この洗浄ノズル60には給水管62の元管62aから分岐管62bを介して洗浄水が供給される。供給された洗浄水は洗浄ノズル60の合流部分60cから二股部分60aを通って散水孔60bから下部空間A内に噴出する。この洗浄水の噴出により洗浄ノズル60は回転し、洗浄水を広範囲に散水する。これにより、散水された部位の汚れやゴミ等は洗浄水とともに排水溝26へ流れ込み排水口20から排出される。
【0017】
この一番遠い位置にある洗浄ノズル60の散水動作が予め設定された所定の時間行われると、制御部66はこの開閉手段64を閉動作して散水動作を停止させるとともに、排水口20から2番目に遠い位置にある洗浄ノズル60の開閉手段64を開動作させる。これにより、排水口20から2番目に遠い位置にある洗浄ノズル60には洗浄水が供給され回転しながら洗浄水を散水する。そして、散水された部位の汚れやゴミ等を洗浄水とともに排水溝26へ流し込み排水口20から排出する。次に、この洗浄ノズル60による散水動作が予め設定された所定の時間行われると、制御部66はこの洗浄ノズル60の開閉手段64を閉動作させて散水動作を停止するとともに、排水口20から3番目に遠い位置の洗浄ノズル60の開閉手段64を開動作させる。これにより、排水口20から3番目に遠い位置にある洗浄ノズル60は回転しながら洗浄水を散水し、散水された部位の汚れやゴミ等を洗浄水とともに排水溝26へ流し込み排水口20から排出する。そして、これらの動作を排水口20から一番遠い洗浄ノズル60から排水口20に一番近い洗浄ノズル60まで順に行うと、制御部66は給水管62への洗浄水の供給を停止するとともに、水抜き機構を動作させて給水管62内に残留した洗浄水を例えば排水溝26に排出する。そして、ショーケース洗浄装置80は次の洗浄動作開始時間まで待機する。
【0018】
以上のように、本発明に係るショーケース洗浄装置80は排水口20から遠い位置にある洗浄ノズル60から順に洗浄水の散水を行うため、排水溝26内のゴミ等は順次排水口20側へ押し流され、比較的重いゴミであっても排水口20から排出することができる。また、洗浄ノズル60による散水を順に行うため、一度に大量の洗浄水を必要とせず給水設備、排水設備への負荷を低く抑える事ができる。
【0019】
次に、本発明に係るショーケース洗浄装置80揚水機構70に関して図2を用いて説明を行う。尚、ここではショーケース洗浄装置80で散水した洗浄水の揚水及び排水に関して主に説明を行うが、この揚水機構70は他のドレン水に対しても同様の動作を行う。
【0020】
図2に示す揚水機構70は、ドレン配管12から排出される洗浄水を上方に設けられたドレン排水配管14に揚水して排出するものであり、ドレン配管12と接続した下部逆流防止部材30aと、この下部逆流防止部材30aを介してドレン配管12と接続した貯留部32と、この貯留部32と接続し上方に延びた揚水配管34と、この揚水配管34の上部に設置され揚水配管内のエアを分離するエア分離部36と、揚水配管34とドレン排水配管14との間に設けられた上部逆流防止部材30bと、エア分離部36からエアを吸引するとともに貯留部32にエアを圧送するエア吸引供給部40と、図示しない揚水制御部と、を有している。尚、ドレン配管12は下部空間Aの排水口20と繋がっており、排水口20から吐出した洗浄水等はドレン配管12を通って貯留部32に送出される。
【0021】
また、貯留部32はショーケース10から排出された洗浄水(及びドレン水)を一旦貯留するものであり、ある程度の容積を有していれば如何なるものを用いても良い。ただし、貯留部32はショーケース10から排出された洗浄水(ドレン水)を基本的に自然流下によって流入させるため、ドレン配管12、ドレン排水口12aと同等もしくはそれよりも低い位置とする。また、貯留部32はショーケース10を設置する床の上に設けても良いし、床下に空間が存在する場合には床下に設けても良い。尚、貯留部32を床下に設ける場合でも、貯留した洗浄水は揚水して上方のドレン排水配管14を通して排出するため、床下に排水経路等を構築する必要は無く比較的容易に設置が可能である。また、貯留部32を床上に設ける場合、前述のように貯留部32は自然流下によって洗浄水を流入させるため、特にショーケース10のドレン排水口12aが下方に位置する場合には低背なものが好ましく、角柱や円筒等のパイプ部材を用いることが特に好ましい。また、貯留部32内には洗浄水(ドレン水)の水位を取得する水位測定手段32aを設け、貯留部32内の水の水位が予め設定された稼働閾値を超えた場合に揚水機構70が揚水動作するように構成することが好ましい。
【0022】
そして、ドレン配管12は下部逆流防止部材30aを介して貯留部32と接続する。尚、下部逆流防止部材30aは、貯留部32へのエア加圧により貯留部32のドレン水がショーケース10側へ逆流することを防止するためのものであり、チャッキ弁等の周知の逆止弁を用いることができる。
【0023】
また、貯留部32には一端が貯留部32の底部近傍に位置し上方に伸びた揚水配管34が接続する。そして、揚水配管34の他端側にはエア分離部36が設けられるとともに、上部逆流防止部材30bを介して例えば天井裏等に配設されたドレン排水配管14と接続する。また、ドレン排水配管14の他端は例えば排水溝や排水口、排水タンク等の所定の排水設備16と接続する。尚、エア分離部36は揚水配管34中の気体(エア)と液体(洗浄水、ドレン水)とを分離する気液分離機構であり、周知のエア抜き弁等を用いることができる。また、上部逆流防止部材30bは前述の下部逆流防止部材30aと同様にチャッキ弁等の周知の逆止弁を用いることができる。
【0024】
また、揚水機構70は、その特徴的な構成としてエア吸引供給部40を備えている。尚、エア吸引供給部40としてはエアの吸引と圧送が可能であれば如何なるものを用いても良いが、圧縮空気によりエアの吸引と圧送(排出)とを同時に行う周知の真空発生装置を用いることが特に好ましい。この場合、揚水機構70は、エア吸引供給部40に対して圧縮空気を送出するエアコンプレッサ等の周知のエア圧送部50を有する。そして、真空発生装置をエア吸引供給部40に用いる構成では、エアの吸引と圧送とを一つの部材で達成できるため、配管経路の単純化と装置規模の小型化とを図ることができる。また、真空発生装置は様々な寸法、仕様のものが市販されているため、適切な寸法、能力のエア吸引供給部40を比較的容易に入手することができる。
【0025】
ここで、真空発生装置(エア吸引供給部40)の略断面図を図3に示す。真空発生装置としてのエア吸引供給部40は、圧縮空気が供給される供給口42aと、圧縮空気が通過する狭隘部(ノズル部)44と、狭隘部44の下流に位置するディフューザ部46と、圧縮空気が狭隘部44を通過した際に生じる負圧によってエアを吸引する吸引口42bと、供給された圧縮空気及び吸引したエアを排気する排気口42cと、を有している。そして、供給口42aにはエア圧送部50から延びた圧縮空気配管48aが接続し、吸引口42bにはエア分離部36から延びた吸引配管48bが接続し、排気口42cには圧力調整手段52へと延びるエア供給配管48cが接続する。尚、圧力調整手段52は貯留部32へ供給するエアの圧力を調整するためのものであり、レギュレータ等の周知の部材を用いることができる。
【0026】
そして、圧力調整手段52と貯留部32とはエア供給配管48dを介して接続する。尚、エア吸引供給部40の前後の圧縮空気配管48a、エア供給配管48cにはエア圧送部50の起動、停止時や貯留部32の負荷変動に伴うエア圧力の急変を緩衝する補助タンクを設けても良い。また、圧縮空気配管48a、エア供給配管48dには揚水制御部によって開閉制御される開閉弁54a、54bが設けられている。尚、このうち開閉弁54bは圧力調整手段52に設けても良い。
【0027】
次に、揚水機構70の動作を説明する。尚、ここではショーケース洗浄装置80の洗浄動作によって生じる洗浄水を揚水する動作を説明するが、前述のように、この揚水動作は通常のドレン水に対しても同様に行われる。
【0028】
先ず、平常時では揚水機構70は待機状態にあり、エア圧送部50は停止し開閉弁54aは閉状態、開閉弁54bは開状態にある。よって貯留部32内は常圧となる。次に、ショーケース洗浄装置80が洗浄動作して洗浄水が排水口20に流入すると、この洗浄水はドレン配管12を通して貯留部32に流入し貯留される。このときの貯留部32における洗浄水の水位は水位測定手段32aが取得する。次に、貯留部32内に洗浄水が溜まり、その水位が予め設定された稼働閾値を超えると、揚水制御部は開閉弁54bを閉じて閉状態にするとともに開閉弁54aを開けて開状態とする。尚、揚水制御部は貯留部32の水位が稼働閾値を超えない場合でも、予め設定された待機時間が経過した場合には揚水動作を行わせることが好ましい。この構成では定期的に揚水動作が行なわれるため、貯留部32内における水の長期の停留を防止することができる。また、水位測定手段32aに不具合が生じた場合でも、満水による漏水等を防止することができる。尚、揚水機構70は水位測定手段32aを用いずに、タイマ等により予め設定された日時もしくは所定の時間間隔で動作するようにしても良い。
【0029】
次に、揚水制御部はエア圧送部50を動作させる。これにより、圧縮空気が圧縮空気配管48aを通してエア吸引供給部40の供給口42aに送出される。供給口42aに送出された圧縮空気は狭隘部44によって絞られ、下流のディフューザ部46に高速噴射される。そして、この高速噴射の際に負圧が発生する。この負圧は吸引口42bに接続した吸引配管48bとエア分離部36を介して揚水配管34内を吸引する。このとき、上部逆流防止部材30bがドレン排水配管14側を閉塞するため、揚水配管34は貯留部32側を吸引動作する。また、ディフューザ部46に噴射されたエアは排気口42c、エア供給配管48cを通して圧力調整手段52に送出され、この圧力調整手段52で所定の圧力に調整された後、エア供給配管48dを通して貯留部32に圧送される。このとき、下部逆流防止部材30aはドレン配管12側を閉塞するため、エア供給配管48dからのエアは貯留部32内を加圧する。これにより、貯留部32内はエア供給配管48dからのエアによって加圧されるとともに、揚水配管34は吸引配管48b側からの吸引動作により減圧され、これらの所謂プッシュプル動作により貯留部32内に貯留した洗浄水は揚水配管34によって揚水される。揚水された洗浄水はエア分離部36を通過せず上部逆流防止部材30bを通してドレン排水配管14に送出される。そして、ドレン排水配管14を通して排水設備16に排出される。また、揚水配管34内に巻き込まれたエアはエア分離部36を通過してエア供給配管48cで吸引された後、エア吸引供給部40に送出される。
【0030】
ここで、本発明揚水機構70は上記のようにエアによる加圧と吸引によるプッシュプル方式によって揚水を行うため、極めて低圧でも高所への揚水が可能となる。例えば、内形25mmの揚水配管34を用いた実験では、圧力調整手段52の吐出圧力が0.1MPaで高さ8mの揚水が可能であった。
【0031】
そして、上記の揚水動作が例えば予め設定された時間行われると、揚水制御部はエア圧送部50を停止するとともに、開閉弁54aを閉じ、また開閉弁54bを開状態とする。これにより、貯留部32へのエア供給及び揚水配管34からのエア吸引は停止し、また開閉弁54bの開放により貯留部32内は常圧となる。これにより、揚水機構70は揚水動作を停止して待機状態となる。
【0032】
また、ショーケース10が複数存在し貯留部32をそれぞれに設ける場合には、圧縮空気配管48aを分岐してそれぞれに開閉弁54a等の流路切替手段を設け、揚水制御部がこの流路切替手段を適宜開閉することでエア圧送部50を複数の揚水機構70で共用しても良い。
【0033】
以上のように、本発明に係るショーケース洗浄装置80は下部空間A内に洗浄水を散水する洗浄ノズル60を備えている。このため、商品陳列棚24上の商品Sを移動することなく下部空間Aの洗浄を行うことができる。特に、ショーケース洗浄装置80がタイマによって自動で洗浄動作する構成では、作業者は何ら操作をすることなく下部空間Aの清掃を行うことができる。また、本発明に係るショーケース洗浄装置80は排水口20から遠い位置にある洗浄ノズル60から順に洗浄水の散水を行う。このため、排水溝26内のゴミ等は順次排水口20側へ押し流され、比較的重いゴミであっても排水口20から排出することができる。また、一度に大量の洗浄水を必要とせず給水設備、排水設備への負荷を低く抑える事ができる。
【0034】
さらに、本発明に係るショーケース洗浄装置80は、揚水機構70が洗浄水及びドレン水を揚水し天井等の上方を通して排水設備16に排出する。このため、排水経路等の構築のために床下を掘削するなどの大規模な工事が必要なく、ショーケース10の移動やレイアウト変更を容易に行うことができる。
【0035】
また、本発明の揚水機構70はエアによる加圧と吸引によるプッシュプル方式により揚水を行う。このため、比較的少ないエネルギーで高所まで揚水を行うことができる。また、揚水をエアを用いて行うため揚水ポンプ等の直接的な送水手段を用いる必要が無く、またエアコンプレッサ等の駆動設備には水が流下しない。このため、駆動系のメンテナンス作業の負荷を大きく軽減することができる。
【0036】
またさらに、本発明の揚水機構70では、エア吸引供給部40に真空発生装置を用いることで、エアによる加圧と吸引とをコンパクトな一つの部材で構成することが可能となる。これにより、装置構成の単純化と小型化とを図ることができる。
【0037】
尚、本例で示したショーケース洗浄装置80、揚水機構70、洗浄ノズル60等の各部の構成、機構、形状、寸法、動作、配管経路等は一例であるから、特に本例に限定される訳ではなく、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 ショーケース
20 排水口
60 洗浄ノズル
60b 散水孔
62 給水管
64 開閉手段
66 制御部
70 揚水機構
80 ショーケース洗浄装置
A 下部空間
図1
図2
図3