特許第6823103号(P6823103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6823103
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】実装方法および実装装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20210114BHJP
【FI】
   H01L21/60 311T
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-80816(P2019-80816)
(22)【出願日】2019年4月22日
(62)【分割の表示】特願2017-52153(P2017-52153)の分割
【原出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2019-114819(P2019-114819A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2019年5月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-69628(P2013-69628)
(32)【優先日】2013年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺田 勝美
【審査官】 平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−022350(JP,A)
【文献】 特開2005−142460(JP,A)
【文献】 特開平06−252212(JP,A)
【文献】 特開2005−210608(JP,A)
【文献】 特開2003−297878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の回路パターンが形成された基板に、前記基板の上部に配置された複数のボンディングヘッドによりチップ部品を実装する実装方法であって、
個々のボンディングヘッドが前記基板にチップ部品を実装する過程で、
前記基板を移動して、チップ部品を保持したボンディングヘッドの直下に前記基板の所定位置を配し、所定時間をかけて当該チップ部品を加熱しながら本圧着する実装過程と、
前記本圧着後に前記ボンディングヘッドを上昇させるとともに所定温度まで冷却する冷却過程を備え、
一つのボンディングヘッドが実装過程の間に、他のボンディングヘッドが冷却過程となることを繰り返し行うもので、
冷却過程のボンディングヘッドの下部に、次に実装するチップ部品を供給することを特徴とする実装方法。
【請求項2】
請求項1に記載の実装方法において、
前記実装過程の間、認識機構を移動させながら、次にチップ部品の実装を行う実装部位の基板に設けられたアライメントマークを認識させてアライメント座標を求めることを特徴とする実装方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の実装方法において、
冷却過程のボンディングヘッドにおいて、チップ部品の吸着を行うアタッチメントツールの、チップ部品吸着前の、表面を観察することを特徴とする実装方法。
【請求項4】
請求項3に記載の実装方法において、
チップ部品のアライメントマークを認識する認識機構が、前記表面の観察も行うことを特徴とする実装方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の実装方法において、
チップ部品のアライメントマークを認識する認識機構が、チップ部品の吸着を行うアタッチメントツールと、前記アタッチメントツールに吸着されたチップ部品の位置ズレ量を測定することを特徴とする実装方法。
【請求項6】
請求項5に記載の実装方法において、
前記位置ズレ量に応じて、前記アタッチメントツールへのチップ部品の吸着位置を補正することを特徴とする実装方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6に記載の実装方法において、
前記実装過程は、基板を保持する保持ステージを移動させて実装位置のアライメントを行うことを特徴とする実装方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の実装方法において、
1台の保持ステージに複数枚の前記基板を所定間隔をおいて整列配置し、前記実装過程では、少なくとも2台のボンディングヘッドの組を、互いに異なる基板の同一部位にチップ部品を実装して本圧着し、冷却過程では、他のボンディングヘッドを冷却することを特徴とする実装方法。
【請求項9】
複数個の回路パターンが形成された基板にチップ部品を実装する実装装置であって、
チップ部品をピックアップするピックアップ機構と、前記ピックアップ機構から受け渡されたチップ部品を搬送するチップスライダを有するチップ部品供給部と、
前記基板を保持する保持ステージと、前記保持ステージを移動させる駆動機構と、前記保持ステージの上部に配置され、前記保持ステージ上の基板の所定位置にチップ部品を実装および本圧着する複数のボンディングヘッドと、前記ボンディングヘッドを加熱するヒータと、前記ボンディングヘッドを冷却する冷却機構とを有したチップ部品実装部と、
前記チップ部品供給部と前記チップ部品実装部の動作を制御する制御部とを備え、
前記チップスライダは前記ピックアップ機構と複数のボンディングヘッドとの間を往復移動する機能を有し、
前記チップスライダが冷却中のボンディングヘッドの下部にチップ部品を供給する機能を有する実装装置。
【請求項10】
請求項9に記載の実装装置であって、
前記ボンディングヘッドに保持されているチップ部品のアライメントマークと基板に設けられたアライメントマークを認識する認識機構を備え前記制御部は、先行するボンディングヘッドが基板にチップ部品を実装および本圧着している間、認識機構を走査させて次にチップ部品の実装を行う基板の実装予定部位に設けられたアライメントマークを認識させてアライメント座標を求めることを特徴とする実装装置。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の実装装置であって、
前記ボンディングヘッドがチップ部品を吸着するアタッチメントツールを備え、
観察機構を備え、
前記制御部が、前記観察機構を用いて、チップ部品を吸着するアタッチメントツールの表面をチップ部品を吸着していない状態で観察する機能を備えたことを特徴とする実装装置。
【請求項12】
請求項11に記載の実装装置であって、
チップ部品のアライメントマークを認識する認識機構が、前記表面を観察する機能も備えることを特徴とする実装装置。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の実装装置であって、
前記制御部が、チップ部品のアライメントマークを認識する認識機構を用いて、前記アタッチメントツールと、前記アタッチメントツールに吸着されたチップ部品の位置ズレ量を測定する機能を備えたことを特徴とする実装装置。
【請求項14】
請求項13に記載の実装装置であって、
チップ部品を搬送し、前記アタッチメントツールに受け渡す、チップ部品受け渡し機構を備え、前記制御部が、前記位置ズレ量に応じて、チップ部品受け渡し機構において、チップ部品の位置補正を行う機能を備えたことを特徴とする実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路などのチップ部品を半導体ウエハまたは回路基板などに実装する実装方法および実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス製品の軽量化および小型化に伴って回路基板のパターンがファインピッチ化(高精度化・微細化)される傾向にある。ファインピッチ化に伴って回路基板に実装する部品点数も増加する傾向にある。そこで、回路基板への実装時間を短縮するために、1枚の回路基板に複数台のボンディングヘッドを備えた実装装置でチップを実装している。つまり、回路基板上の電極部分に塗布または転写された非導電性樹脂(NCP)、非導電性フィルム(NCF)または異方導電性フィルム(ACF)などの上にチップ部品を実装して仮圧着している。
【0003】
当該仮圧着された基板を後工程に搬送し、専用のボンディングヘッドによりチップ部品を加熱して非導電性フィルム(NCF)などを加熱硬化させて本圧着している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開公報 WO2010/110165
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の実装装置では、仮圧着工程および本圧着工程ごとに個別のボンディングヘッドを設ける必要があり、装置構成が大型化し、十分な設置スペースを確保しなければならないといった不都合が生じている。
【0006】
また、仮圧着時の接着力が不十分な場合、仮圧着工程から本圧着工程に搬送する過程で、回路基板の電極からチップ部品が剥がれたり位置ズレを起こしたりするといった問題が生じている。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、半導体ウエハや回路基板などにチップ部品を高速かつ精度よく実装することが可能な実装方法および実装装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者は、上記不都合および問題を解決するために、複数台の本圧着用のボンディングヘッドを備えた実装装置を作成して1枚の回路基板にチップ部品を高速に本圧着させる実験およびシミュレーションを行って鋭意検討した結果、次のような新たな知見を得た。
【0009】
すなわち、本圧着用のボンディングヘッドを2台設置して交互に回路基板にチップ部品を実装する実験を繰り返した。しかしながら、回路基板の電極部位からチップ部品が剥がれたり、接続不良が生じたりしていた。そこで、当該接続不良などの原因を究明すべく、回路基板への実装直前のチップ部品の裏面を観察すると、電極表面を被覆しているフラックスが消滅していた。また、チップ部品によっては、フラックスの消滅だけではなく、バンプ先端部の半田が溶融または変形しているものが含まれていた。
【0010】
さらに、チップ部品の温度が高いままであると、チップ部品と回路基板との間に介在させるNCFなどの樹脂の硬化が過剰に促進される。すなわち、チップ部品のバンプと回路基板の電極のみを互いに接触させつつも、その間を封止するために余剰な樹脂を排出する必要があるにも関わらず、排出前に樹脂が硬化してしまい接触不良が生じさせていた。
【0011】
したがって、本発明は、上述の問題およびこれらの新規な問題を解決することを目的とする。
【0012】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
【0013】
すなわち複数個の回路パターンが形成された基板に、前記基板の上部に配置された複数のボンディングヘッドによりチップ部品を実装する実装方法であって、
個々のボンディングヘッドが前記基板にチップ部品を実装する過程で、
前記基板を移動して、チップ部品を保持したボンディングヘッドの直下に前記基板の所定位置を配し、所定時間をかけて当該チップ部品を加熱しながら本圧着する実装過程と、
前記本圧着後に前記ボンディングヘッドを上昇させるとともに所定温度まで冷却する冷却過程を備え、
一つのボンディングヘッド実装過程の間に、他のボンディングヘッドが冷却過程となることを繰り返し行うもので
冷却過程のボンディングヘッドの下部に、次に実装するチップ部品を供給することを特徴とする。
【0014】
(作用・効果) この方法によれば、先行するボンディングヘッドが、基板にチップ部品を実装および本圧着している間、他のボンディングヘッドが、所定の温度まで積極的に冷却される。したがって、次に実装および本圧着を実行するボンディングヘッドによってチップ部品を保持して実装するまでの間に、当該チップ部品のバンプ先端部の半田が、本圧着時の加熱温度に近い温度で加熱されることがない。すなわち、チップ部品のバンプ先端の半田の溶融、変形、およびフラックスの消滅などを回避することができ、ひいては、基板への接続不良を解消することができる。
【0015】
なお、上記方法において、実装過程の間、認識機構を移動させながら、次にチップ部品の実装を行う実装部位の基板に設けられたアライメントマークを認識させてアライメント座標を求めることが好ましい。
【0016】
この方法によれば、先行するボンディングヘッドが基板へのチップ部品の本圧着を完了すると、次に実装処理を行うボンディングヘッドと基板の実装部位とのアライメントを短時間で実施することができる。したがって、実装処理のタクトタイムを短縮することができる。
【0017】
また、この方法で、冷却過程のボンディングヘッドにおいて、チップ部品の吸着を行うアタッチメントツールの、チップ部品吸着前の表面を観察することが望ましい。更に、前記表面の観察を、チップ部品のアライメントマークを認識する認識機構が行っても良い。
【0018】
この方法によれば、アタッチメントツールへの樹脂付着などを起因とする、実装時のチップ部品の破損や位置ズレを防ぐことができる。
【0019】
チップ部品のアライメントマークを認識する認識機構を用いた場合においては、前記アタッチメントツールと、前記アタッチメントツールに吸着されたチップ部品の位置ズレ量を測定しても良い。
【0020】
更に、前記位置ズレ量に応じて、前記アタッチメントツールへのチップ部品の吸着位置を補正しても良い。
【0021】
この方法により、実装時にアタッチメントツールに樹脂が付着することを防ぐことが出来る。
【0022】
また、実装過程では、基板を保持する保持ステージを移動させて実装位置のアライメントを行うことが好ましい。
【0023】
この方法によれば、保持ステージを移動させてボンディングヘッドを固定させることができる。つまり、ボンディングヘッドの移動時に発生しているチップ部品の保持位置のズレを回避することができる。換言すれば、保持位置のズレに伴う実装位置のズレを回避することができる。
【0024】
なお、上記方法において、1台の保持ステージに複数枚の前記基板を所定間隔をおいて整列配置し、
前記実装過程では、少なくとも2台のボンディングヘッドの組を、互いに異なる基板の同一部位にチップ部品を実装して本圧着し、
冷却過程では、他のボンディングヘッドを冷却することが好ましい。
【0025】
この方法によれば、少なくとも2台のボンディングヘッドの組によって同時に複数枚の基板にチップ部品が実装されるので、実装処理のタクトタイムをさらに短縮することができる。
【0026】
また、この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
【0027】
すなわち、複数個の回路パターンが形成された基板にチップ部品を実装する実装装置であって、
チップ部品をピックアップするピックアップ機構と、前記ピックアップ機構から受け渡されたチップ部品を搬送するチップスライダを有するチップ部品供給部と、
前記基板を保持する保持ステージと、前記保持ステージを移動させる駆動機構と、前記保持ステージの上部に配置され、前記保持ステージ上の基板の所定位置にチップ部品を実装および本圧着する複数のボンディングヘッドと、前記ボンディングヘッドを加熱するヒータと、前記ボンディングヘッドを冷却する冷却機構とを有したチップ部品実装部と
前記チップ部品供給部と前記チップ部品実装部の動作を制御する制御部とを備え、
前記チップスライダは前記ピックアップ機構と複数のボンディングヘッドの間を往復移動する機能を有し、
前記チップスライダが冷却中のボンディングヘッドの下部にチップ部品を供給する機能を有する。
【0028】
(作用・効果) この構成によれば、先行するボンディングヘッドが基板にチップ部品を実装および本圧着している間に、他のボンディングヘッドおよびヒータを冷却することができる。したがって、上記方法を好適に実施することができる。
【0029】
なお、上記構成において、ボンディングヘッドに保持されているチップ部品のアライメントマークと基板に設けられたアライメントマークを認識する認識機構を備え
前記制御部は、先行するボンディングヘッドが基板にチップ部品を実装および本圧着している間、認識機構を走査させて次にチップ部品の実装を行う基板の実装予定部位に設けられたアライメントマークを認識させてアライメント座標を求めることが好ましい。
【0030】
この構成によれば、先行するボンディングヘッドが基板へのチップ部品の本圧着を完了すると、次に実装処理を行うボンディングヘッドと基板の実装部位とのアライメントを短時間で実施することができる。したがって、実装処理のタクトタイムを短縮することができる。
【0031】
また、前記ボンディングヘッドがチップ部品を吸着するアタッチメントツールを備え、観察機構を備え、前記制御部が、前記観察機構を用いて、チップ部品を吸着していない状態の前記アタッチメントツールの表面を観察する機能を備えることが望ましい。その際、チップ部品のアライメントマークを認識する認識機構が、前記表面を観察しても良い。
【0032】
この構成によれば、アタッチメントツールへの樹脂付着などを起因とする、実装時のチップ部品の破損や位置ズレを防ぐことができる。
【0033】
更に、前記制御部が、チップ部品のアライメントマークを認識する認識機構を用いて、前記アタッチメントツールと、前記アタッチメントツールに吸着されたチップ部品の位置ズレ量を測定する機能を備えることも望ましい。
【0034】
ここで、チップ部品を搬送し、前記アタッチメントツールに受け渡す、チップ部品受け渡し機構を備え、前記制御部が、前記位置ズレ量に応じて、チップ部品受け渡し機構において、チップ部品の位置補正を行う機能を備えることが更に望ましい。
【0035】
この構成によれば、実装時にアタッチメントツールに樹脂が付着することを防ぐことが出来る。
【発明の効果】
【0036】
本発明の実装方法および実装装置によれば、回路基板にチップ部品を高速かつ精度よく実装および本圧着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本実施例に係る実装装置の概略構成を示す斜視図である。
図2】チップスライダの斜視図である。
図3】ボンディングヘッドの部分破断断図である。
図4】実施例装置の一連の動作を示すフローチャートである。
図5】ボンディングヘッドによる単一処理時間内の温度プロファイルを示す図である。
図6】実施例装置によって回路基板にチップ部品を実装する動作を説明する図である。
図7】実施例装置によって回路基板にチップ部品を実装する動作を説明する図である。
図8】実施例装置によって回路基板にチップ部品を実装する動作を説明する図である。
図9】実施例装置によって回路基板にチップ部品を実装する動作を説明する図である。
図10】実施例装置によって回路基板にチップ部品を実装する動作を説明する図である。
図11】実施例装置によって回路基板にチップ部品を実装する動作を説明する図である。
図12】実施例装置によって回路基板にチップ部品を実装する動作を説明する図である。
図13】実施例装置によって回路基板にチップ部品を実装する動作を説明する図である。
図14】実施例装置によって回路基板にチップ部品を実装する動作を説明する図である。
図15】実施例装置によって回路基板にチップ部品を実装する動作を説明する図である。
図16】実施例装置によって回路基板にチップ部品を実装する動作を説明する図である。
図17】変形例の実装形態を示す図である。
図18】変形例の実装形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。
【0039】
図1は、本発明の実施例に係る実装装置の概略構成を示す斜視図である。
【0040】
実装装置は、図1および図3に示すように、チップ部品供給部1、チップ部品実装部2および制御部3などから構成されている。
【0041】
チップ部品供給部1は、マガジン載置ステージ4、ウエハ搬送機構5、ピックアップステージ6、ピックアップ機構7およびチップスライダ8などから構成されている。
【0042】
マガジン載置ステージ4は、ダイシング処理された半導体ウエハWD(以下、単に「ウエハ」という)を所定間隔をおいて多段に収納したマガジン9を載置される。ウエハWDエキスパンド処理によって個片に分断されてチップ部品Cとなる。チップ部品Cは、ダイシングテープによって接着保持されている。
【0043】
ウエハ搬送機構5は、マガジン9からウエハWDを搬出してピックアップステージ6に載置する。すなわち、レール10にスライド移動可能な可動台11から片持ち支持されたアーム12の先端にクランプ13を備えている。当該可動台は11、サーボモータで正逆駆動されるネジ軸によってネジ送り駆動されるように構成されている。
【0044】
ピックアップステージ6は、ダイシングテープに接着保持されたウエハWDを吸着保持する。
【0045】
ピックアップ機構7は、前後左右(図中のXY軸方向)に移動可能であるとともに、昇降可能(Z軸方向)な下向きのピックアップノズル14を備えている。つまり、ピックアップ機構7は、ピックアップノズル14によって吸着保持したチップ部品Cをチップスライダ8に受け渡すように構成されている。
【0046】
チップスライダ8は、後述するボンディングヘッド21a、21bの個数に対応させた台数を備えている。したがって、本実施例では、2台のチップスライダ8a、8bを上下2段に備えている。各チップスライダ8a、8bは、図2に示すように、チップ部品Cを吸着保持した吸着板16によって、ピックアップ機構7側の受け取り位置からボンディングヘッド21a、21bの下方の受け渡し位置までをそれぞれが往復移動する。すなわち、吸着板16を備え、かつ、レール17にスライド移動可能に支持された可動台18が、サーボモータ19で正逆駆動されるネジ軸20によってネジ送り駆動されるように構成されている。チップスライダ8は、タクトタイムに余裕があれば、1台のチップスライダでそれぞれのボンディングヘッド21a、21bにチップ部品Cを受け渡してもよい。
【0047】
チップ部品実装部2は、ボンディングヘッド21a、21b、2視野カメラ22および保持ステージ23などから構成されている。
【0048】
ボンディングヘッド21a、21bは、保持ステージ23を跨いで基台24に立設された門型フレーム25の梁部分にシリンダやボールネジなどの昇降機構26を介して装着されている。また、ボンディングヘッド21a、21bは、縦Z軸周り回転可能に構成されている。つまり、ボンディングヘッド21a、21bは、図中のθ方向の位置合わせが可能になっている。
【0049】
さらに、ボンディングヘッド21a、21bは、図3に示すように、金属製のツールからなる本体30の下部から順にセラミック製のホルダ31、断熱ブロック33、セラミックヒータ34およびアタッチメントツール35で構成されている。なお、アタッチメントツール35は、セラミックヒータ34に吸着固定されており、チップ部品Cの形状に応じた専用のツールを自動交換可能になっている。
【0050】
セラミックヒータ34には、例えば、熱電対、測温抵抗体などの温度検出器36が設けられている。つまり、セラミックヒータ34から受ける熱を温度検出器36で検出し、その検出結果を制御部3に送信する。
【0051】
セラミックヒータ34の発熱部分の上端面にエアーが流通して排出される流路37が、本体30まで貫通している。また、流路37には、バルブVを備えた耐圧ホース38を介してエアー供給源39に連通接続されている。
【0052】
つまり、エアー供給手段39から供給されたエアーは、流路37を通じて開口部37aから排出される。したがって、セラミックヒータ34の発熱部から発せられる熱がエアー循環により奪われ、セラミックヒータ34およびアタッチメントツール35の両方を含むボンディングヘッド21a、21bを急速に冷却することができる。また、外部に設けたノズルからセラミックヒータ34およびアタッチメントツール35の両方にエアーを吹き付けて冷却すれば、冷却時間をさらに短縮することができる。
【0053】
なお、ボンディングヘッド21a、21bは、本体30からアタッチメントツール35にかけて貫通孔40が形成されており、当該貫通孔40と外部の真空源41とが電磁弁Vを介して連通接続されている。
【0054】
2視野カメラ22は、チップ部品Cを実装する基板の回路パターンに付されたアライメントマークとチップ部品Cに付されたアライメントマークを画像認識し、画像データを制御部3に送信する。すなわち、2視野カメラ22は、保持ステージ23とチップ部品Cの間で水平移動するように構成されている。なお、本実施例においては、チップ部品Cを実装する基板としてウエハWを用いているが、基板はウエハに限定されるものではなく、耐熱性樹脂等を基材とするフレキシブルプリント基板や、セラミックスやガラス等を基材とするリジッドプリント基板であっても良い。
【0055】
保持ステージ23は、基台に24に設置され、前後左右(図中のXY方向)に水平移動するように構成されている。
【0056】
制御部3は、使用する樹脂、例えば、非導電性樹脂(NCP)、非導電性フィルム(NCF)または異方導電性フィルム(ACF)ごと応じた設定条件が入力される。例えば、加熱時間、セラミックヒータ34の冷却温度などが入力されている。これら入力条件と温度検出器36から検出される検出結果とに基づいて、セラミックヒータ34に通電する電流を調整、温度制御およびエアー供給源39からのエアーの供給のオン・オフ切り替え、流量などの制御を行なっている。例えば、温度検出器36実測値と設定値を比較し、求まる温度偏差に応じて温度を制御する。また、装置全体を統括的に制御している。具体的な制御については、以下の動作説明において詳述する。
【0057】
次に、図4のフローチャートに沿って上述の実装装置を用いて複数個の回路パターンの形成されたチップ部品を実装および本圧着する一連の動作について説明する。
【0058】
先ず、実験やシミュレーションによって、1回目の実装処理を行って加熱状態にあるボンディングヘッド21a、21bが、次のチップ部品Cを吸着してから実装部位に下降するまでの間で、チップ部品Cの下端の半田が溶融または変化しない温度およびフラックスが消滅しない温度(冷却温度)を予め求める。また、チップ部品CをウエハWに実装および本圧着するために昇温した温度から冷却温度までにセラミックヒータ34およびアタッチメントツール35の温度が低下するまでの時間を求める。すなわち、図5に示すように、チップ部品Cの実装時間、冷却時間を含む1台のボンディングヘッド21a、21bの単一処理時間と温度プロファイルのデータを取得し、そのデータを元に制御部3の記憶部に記憶する(ステップS1)。例えば、220℃まで樹脂を加熱し、樹脂のチップ部品Cの接着が安定し始めるガラス転移点の120℃まで低下した時点でボンディングヘッド21a、21bを上昇させて冷却を開始する。
【0059】
条件設定が完了し、装置を作動すると、制御部3は、ウエハ搬送機構5によってマガジン9からウエハWDを搬出させてピックアップステージ6に載置させる。その後、制御部3は、条件設定された単一処理時間に基づいて、ボンディングヘッド21a、21bの作動を切り替えながら、実装処理を開始する(ステップS2)。
【0060】
ピックアップ機構7が、吸着したチップ部品Cをチップスライダ8a、8bの順番に受け渡す。以後、ボンディングヘッド21a、21bの並列処理が実行される(ステップS2)。
【0061】
先ず、ボンディングヘッド21aによる実装処理が実行される。
【0062】
チップスライダ8aが、先行してボンディングヘッド21aの下方の受け渡し位置に移動する。ボンディングヘッド21aは、図6に示すように、下降してチップ部品Cを吸着する(ステップS3a)。同時に、2視野カメラ22が、ボンディングヘッド21aに保持されたチップ部品CとウエハWとの間に移動してくる。その後、チップスライダ8aは、次のチップ部品Cを受け取るために、ピックアップ機構7側へ移動する。
【0063】
図7に示すように、2視野カメラ22によってウエハWの回路パターンに付されたアライメントマークとチップ部品Cに付されたアライメントマークを画像認識し、画像データを制御部3に送信する。
【0064】
制御部3は、当該画像データを利用しアライメント処理を行うために駆動機構を作動制御する(ステップS4a)。すなわち、制御部3は、両アライメンマークの位置座標を求める。さらに,回路パターンのアライメントマークの位置座標からチップ部品Cのアライメントマークの位置座標までの方向および距離を算出し、保持ステージ23のみを移動させてアライメントする。他方のボンディングヘッド21aは、縦軸周りに回転してアライメントされる。
【0065】
アライメント処理が完了すると、図8に示すように、ボンディングヘッド21aを所定高さまで下降させて回路パターン上の樹脂にチップ部品Cを実装する(ステップS5a)。このとき、他方のボンディングヘッド21bの下方に2視野カメラ22が移動してくる。この段階において、ボンディングヘッド21bのアタッチメントツール35のチップ吸着面の表面に汚れがあると、チップ部品Cを吸着した際に、チップ部品Cに無用な応力が加わることになり、実装時の破損や位置ズレが起こる懸念がある。そこで、画像認識手段を用いて、アタッチメントツール35の表面状態を観察して、樹脂等の付着やキズの有無を判断する機能を制御手段3に付加してもよく、画像認識手段として2視野カメラ22を用いても良い。その際、付着物やキズが許容範囲以内と判断したら次のステップに移行する。
【0066】
図9に示すように、ボンディングヘッド21aのセラミックヒータ34によってアタッチメントツール35を加熱し、チップ部品Cを所定温度で所定時間をかけて加熱する。つまり、チップ部品Cを介して樹脂を加熱硬化させてチップ部品CをウエハWの回路パターンに本圧着する(ステップS6a)。
【0067】
ボンディングヘッド21aが、本圧着処理を行っている間、チップスライダ8bからボンディングヘッド21bにチップ部品Cが受け渡される(ステップS3b)。なお、この段階でチップ部品Cが、ボンディングヘッド21bのアタッチメントツール35の所定の位置に吸着されていないと、実装段階でチップ部品Cからはみ出した樹脂がアタッチメントツール35に付着する可能性が生じる。アタッチメントツール35への樹脂の付着は前述のとおり、チップ部品C実装時の破損や位置ズレの原因となる。そこで、チップスライダ8bが次のチップ部品Cを受け取るために、ピックアップ機構7側に移動すれば、2視野カメラ22の位置が、ボンディングヘッド21bに保持されたチップ部品CとウエハWとの間となることから、2視野カメラ22によりチップ部品Cがアタッチメントツール35の所定位置に吸着されているか否か、その位置ズレ量を測定することが可能となる。この位置ズレ量を補正するために、ピックアップ機構7からチップスライダ8bへの受け渡し段階または/およびチップスライダ8bからボンディングヘッド21bへの受け渡し時の、チップ部品Cの位置補正を行うような機能を制御手段3に付加しても良い。
【0068】
本圧着処理が完了し、図10に示すように、ボンディングヘッド21aが上昇する(ステップS7b)。当該ボンディングヘッド21aのセラミックヒータ34をオフにして、エアー供給源39からエアーを供給して当該ボンディングヘッド21aを所定の温度まで冷却させる(ステップS8a)。
【0069】
ボンディングヘッド21aの上昇と同時に、図11に示すように、保持ステージ23を予め決めた方向および所定距離だけ移動させる。図12に示すように、2視野カメラ22によってウエハWの回路パターンに付されたアライメントマークとボンディングヘッド21bに保持されているチップ部品Cに付されたアライメントマークを画像認識し、画像データを制御部3に送信する。制御部3は、当該画像データに基づいて、保持ステージ23およびボンディングヘッド21bのアライメントを行う(ステップS4b)。
【0070】
このとき、冷却処理中のボンディングヘッド21aの下方に、新たしいチップ部品Cが
搬送されてくる。
【0071】
ボンディングヘッド21bのアライメント処理が完了すると、図13に示すように、ボンディングヘッド21bが、所定高さまで下降し始める(ステップS5b)。同時に、ボンディングヘッド21aの下方に2視野カメラ22が移動してくる。
この段階において、画像認識手段を用いて、ボンディングヘッド21aのアタッチメントツール35表面状態を観察して、樹脂等の付着やキズの有無を判断する機能を制御手段3に付加してもよく、画像認識手段として2視野カメラ22を用いても良い。その際、付着物やキズが許容範囲以内と判断したら次のステップに移行する。
【0072】
図14に示すように、ボンディングヘッド21bによってウエハWの回路パターン上にチップ部位Cが実装および本圧着がされる(ステップS6b)。他方のボンディングヘッド21aにチップ部品Cが、チップスライダ8aにより受け渡される。その後、チップスライダ8aが次のチップ部品Cを受け取るために、ピックアップ機構7側に移動すれば、2視野カメラ22により、チップ部品Cがアタッチメンボンディングへッド21aのアタッチメントツール35の所定位置に吸着されているか否か、その位置ズレ量を測定することが可能となる。ここで、位置ズレ量を補正するために、ピックアップ機構7からチップスライダ8aへの受け渡し段階または/およびチップスライダ8aからボンディングヘッド21bへの受け渡し時の、チップ部品Cの位置補正を行うような機能を制御手段3に付加しても良い。
【0073】
図15に示すように、ボンディングヘッド21bによる本圧着処理が完了すると、当該ボンディングヘッド21bを上昇させるとともに、保持ステージ23を予め決めた方向および所定距離だけ移動させる(ステップS7b)。一方のボンディングヘッド21bの冷却処理が開始されると(ステップS8b)、他方のボンディングヘッド21aのアライメント処理が開始される。
【0074】
以上で2台のボンディングヘッド21a、21bを利用して本圧着処理が完了し、以後、ステップS9a、S9bにおいて、実装予定数に達するまでカウントされ、同じサイクルでウエハWに形成された回路パターンの個数分の本圧着処理が繰り返し実行される。
【0075】
上記実施例装置によれば、一方のボンディングヘッド21bがウエハWの回路パターンにチップ部品Cを実装および本圧着している間、先行して本圧着処理を完了したボンディングヘッド21aの内部にエアー供給源39からエアーを供給して積極的に冷却することができる。すなわち、チップ部品Cのバンプの半田を溶融または変形させることもなければ、回路基板上の樹脂を不用意に硬化させることなく、ボンディングヘッド21a、21bを交互に切り替えて、連続的にチップ部品CをウエハWの回路パターンに精度よく実装することができる。
【0076】
本発明は上述した実施例のものに限らず、次のように変形実施することもできる。
【0077】
(1)上記実施例装置において、ボンディングヘッド21a、21bのいずれか一方が、ウエハWの回路パターンにチップ部品Cを実装している間、2視野カメラ22を走査し、他方のボンディングヘッドが、次にチップ部品Cを実装する予定の回路パターンのアライメントマークのみを先に認識させておいてもよい。この構成によれば、待機時間を利用して一方のアライメントマークのみの画像処理させることができるので、制御部3への画像処理の負担を軽減できるとともに、処理時間を短縮することができる。
【0078】
(2)上記実施例装置において、図17に示すように、1台の保持ステージ23に複数枚の回路基板を所定ピッチをおいて整列配置し、2台一組のボンディングヘッドが同時に、回路基板の同一部位にチップ部品Cを実装可能にしてもよい。この構成によれば、上記実施例の2倍の速度でチップ部品Cを回路基板に実装することができる。
【0079】
(3)上記実施例装置において、温度検出器36でボンディングヘッド21a、21bの温度を検出し、当該検出結果に応じてエアーの供給量などを調整し、冷却時間を一定に保つよう構成してもよい。
【0080】
(4)上記実施例装置において、図18に示すように、回路基板上の実装エリアを3つに区画し、左右のエリアを各ボンディングヘッド21a、21bの実装エリアに割当て、中央のエリアを両ボンディングヘッド21a、21bが利用して実装可能な共用エリアにすることもできる。
【0081】
すなわち、各ボンディングヘッド21a、21bに割り当てられた実装エリアに、不良回路パターンの箇所にバッドマークが付されて実装できない部位がある。当該不良回路パターンに実装予定であったチップ部品Cを共用エリアに実装することにより、両ボンディングヘッド21a、21bの実装数を均等に保つことができる。
【0082】
(4)上記実施例装置では、1台に保持ステージ23に対して配備されるボンディングヘッド21a、21bは、2台に限定されない。すなわち、2台以上であればよい。
【符号の説明】
【0083】
1 … チップ部品供給部
2 … チップ部品実装部
3 … 制御部
21a… ボンディングヘッド
21b… ボンディングヘッド
22 … 2視野カメラ
30 … 本体
31 … ホルダ
32 … ヒータベース
33 … 断熱ブロック
34 … セラミックヒータ
35 … アタッチメントツール
36 … 温度検出器
37 … 流路
39 … エアー供給源
C … チップ部品
図1
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