【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者は、上記不都合および問題を解決するために、複数台の本圧着用のボンディングヘッドを備えた実装装置を作成して1枚の回路基板にチップ部品を高速に本圧着させる実験およびシミュレーションを行って鋭意検討した結果、次のような新たな知見を得た。
【0009】
すなわち、本圧着用のボンディングヘッドを2台設置して交互に回路基板にチップ部品を実装する実験を繰り返した。しかしながら、回路基板の電極部位からチップ部品が剥がれたり、接続不良が生じたりしていた。そこで、当該接続不良などの原因を究明すべく、回路基板への実装直前のチップ部品の裏面を観察すると、電極表面を被覆しているフラックスが消滅していた。また、チップ部品によっては、フラックスの消滅だけではなく、バンプ先端部の半田が溶融または変形しているものが含まれていた。
【0010】
さらに、チップ部品の温度が高いままであると、チップ部品と回路基板との間に介在させるNCFなどの樹脂の硬化が過剰に促進される。すなわち、チップ部品のバンプと回路基板の電極のみを互いに接触させつつも、その間を封止するために余剰な樹脂を排出する必要があるにも関わらず、排出前に樹脂が硬化してしまい接触不良が生じさせていた。
【0011】
したがって、本発明は、上述の問題およびこれらの新規な問題を解決することを目的とする。
【0012】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
【0013】
すなわち複数個の回路パターンが形成された基板に
、前記基板の上部に配置された複数のボンディングヘッドによりチップ部品を実装する実装方法であって、
個々のボンディングヘッドが前記基板にチップ部品を実装する過程で、
前記基板を移動して、チップ部品を保持したボンディングヘッドの直下に前記基板の所定位置
を配し、所定時間をかけて当該チップ部品を加熱しながら本圧着する実装過程と、
前記本圧着後に前記ボンディングヘッドを
上昇させるとともに所定温度まで冷却する冷却過程を備え、
一つのボンディングヘッド
が実装過程
の間に、他のボンディングヘッドが冷却過程となることを繰り返し
行うもので、
冷却過程
のボンディングヘッドの下部に、次に実装するチップ部品
を供給することを特徴とする。
【0014】
(作用・効果) この方法によれば、先行するボンディングヘッドが、基板にチップ部品を実装および本圧着している間、他のボンディングヘッドが、所定の温度まで積極的に冷却される。したがって、次に実装および本圧着を実行するボンディングヘッドによってチップ部品を保持して実装するまでの間に、当該チップ部品のバンプ先端部の半田が、本圧着時の加熱温度に近い温度で加熱されることがない。すなわち、チップ部品のバンプ先端の半田の溶融、変形、およびフラックスの消滅などを回避することができ、ひいては、基板への接続不良を解消することができる。
【0015】
なお、上記方法において、実装過程の間、認識機構を移動させながら、次にチップ部品の実装を行う実装部位の基板に設けられたアライメントマークを認識させてアライメント座標を求めることが好ましい。
【0016】
この方法によれば、先行するボンディングヘッドが基板へのチップ部品の本圧着を完了すると、次に実装処理を行うボンディングヘッドと基板の実装部位とのアライメントを短時間で実施することができる。したがって、実装処理のタクトタイムを短縮することができる。
【0017】
また、この方法で、冷却過程のボンディングヘッドにおいて、チップ部品の吸着を行うアタッチメントツールの、チップ部品吸着前の表面を観察することが望ましい。更に、前記表面の観察を、チップ部品のアライメントマークを認識する認識機構が行っても良い。
【0018】
この方法によれば、アタッチメントツールへの樹脂付着などを起因とする、実装時のチップ部品の破損や位置ズレを防ぐことができる。
【0019】
チップ部品のアライメントマークを認識する認識機構を用いた場合においては、前記アタッチメントツールと、前記アタッチメントツールに吸着されたチップ部品の位置ズレ量を測定しても良い。
【0020】
更に、前記位置ズレ量に応じて、前記アタッチメントツールへのチップ部品の吸着位置を補正しても良い。
【0021】
この方法により、実装時にアタッチメントツールに樹脂が付着することを防ぐことが出来る。
【0022】
また、実装過程では、基板を保持する保持ステージを移動させて実装位置のアライメントを行うことが好ましい。
【0023】
この方法によれば、保持ステージを移動させてボンディングヘッドを固定させることができる。つまり、ボンディングヘッドの移動時に発生しているチップ部品の保持位置のズレを回避することができる。換言すれば、保持位置のズレに伴う実装位置のズレを回避することができる。
【0024】
なお、上記方法において、1台の保持ステージに複数枚の前記基板を所定間隔をおいて整列配置し、
前記実装過程では、少なくとも2台のボンディングヘッドの組を、互いに異なる基板の同一部位にチップ部品を実装して本圧着し、
冷却過程では、他のボンディングヘッドを冷却することが好ましい。
【0025】
この方法によれば、少なくとも2台のボンディングヘッドの組によって同時に複数枚の基板にチップ部品が実装されるので、実装処理のタクトタイムをさらに短縮することができる。
【0026】
また、この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
【0027】
すなわち、複数個の回路パターンが形成された基板にチップ部品を実装する実装装置であって、
チップ部品をピックアップするピックアップ機構と、前記ピックアップ機構から受け渡されたチップ部品を搬送するチップスライダを有するチップ部品供給部と、
前記基板を保持する保持ステージと、前記保持ステージを移動させる駆動機構と、
前記保持ステージの上部に配置され、前記保持ステージ上の基板の所定位置にチップ部品を実装および本圧着する複
数のボンディングヘッドと、前記ボンディングヘッドを加熱するヒータと、前記ボンディングヘッドを冷却する冷却機構とを有したチップ部品実装部と
、
前記チップ部品供給部と前記チップ部品実装部の動作を制御する制御部とを備え、
前記チップスライダは前記ピックアップ機構と
複数のボンディングヘッド
との間を往復移動する機能を有し、
前記チップスライダが冷却中
のボンディングヘッド
の下部にチップ部品を
供給する機能を有する。
【0028】
(作用・効果) この構成によれば、先行するボンディングヘッドが基板にチップ部品を実装および本圧着している間に、他のボンディングヘッドおよびヒータを冷却することができる。したがって、上記方法を好適に実施することができる。
【0029】
なお、上記構成において、ボンディングヘッドに保持されているチップ部品のアライメントマークと基板に設けられたアライメントマークを認識する認識機構を備え
前記制御部は、先行するボンディングヘッドが基板にチップ部品を実装および本圧着している間、認識機構を走査させて次にチップ部品の実装を行う基板の実装予定部位に設けられたアライメントマークを認識させてアライメント座標を求めることが好ましい。
【0030】
この構成によれば、先行するボンディングヘッドが基板へのチップ部品の本圧着を完了すると、次に実装処理を行うボンディングヘッドと基板の実装部位とのアライメントを短時間で実施することができる。したがって、実装処理のタクトタイムを短縮することができる。
【0031】
また、前記ボンディングヘッドがチップ部品を吸着するアタッチメントツールを備え、観察機構を備え、前記制御部が、前記観察機構を用いて、チップ部品を吸着していない状態の前記アタッチメントツールの表面を観察する機能を備えることが望ましい。その際、チップ部品のアライメントマークを認識する認識機構が、前記表面を観察しても良い。
【0032】
この構成によれば、アタッチメントツールへの樹脂付着などを起因とする、実装時のチップ部品の破損や位置ズレを防ぐことができる。
【0033】
更に、前記制御部が、チップ部品のアライメントマークを認識する認識機構を用いて、前記アタッチメントツールと、前記アタッチメントツールに吸着されたチップ部品の位置ズレ量を測定する機能を備えることも望ましい。
【0034】
ここで、チップ部品を搬送し、前記アタッチメントツールに受け渡す、チップ部品受け渡し機構を備え、前記制御部が、前記位置ズレ量に応じて、チップ部品受け渡し機構において、チップ部品の位置補正を行う機能を備えることが更に望ましい。
【0035】
この構成によれば、実装時にアタッチメントツールに樹脂が付着することを防ぐことが出来る。