特許第6823117号(P6823117)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6823117-物体搬送装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6823117
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】物体搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/08 20060101AFI20210114BHJP
   B65H 43/08 20060101ALI20210114BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20210114BHJP
   B25J 9/10 20060101ALI20210114BHJP
   G07D 11/16 20190101ALN20210114BHJP
【FI】
   B65H5/08 A
   B65H43/08
   B25J13/08 A
   B25J9/10 A
   !G07D11/16 101Z
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-135157(P2019-135157)
(22)【出願日】2019年7月23日
【審査請求日】2020年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230858
【氏名又は名称】日本金銭機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】上溝 順亮
(72)【発明者】
【氏名】上田 貴司
【審査官】 佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2019/026644(WO,A1)
【文献】 特表2017−511263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/08− 5/14
B65H 7/00− 7/20
B65H 43/00−43/08
B25J 1/00−21/02
G07D 11/00
G07D 11/10−11/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄物の束を把持して搬送するロボットアームと、
前記薄物の束の厚みに応じて前記薄物の束の搬送速度を制御する速度制御部と
を備え、
前記速度制御部は、前記薄物の束の厚みが厚くなるほど前記薄物の束の搬送速度を低下させ、前記薄物の束の厚みが薄くなるほど前記薄物の束の搬送速度を上昇させる、
物体搬送装置。
【請求項2】
前記ロボットアームは、前記薄物の束を旋回させて搬送し、
前記薄物の束の前記厚みに応じて前記薄物の束の旋回半径を制御する旋回制御部
をさらに備え、
前記旋回制御部は、前記薄物の束の厚みが厚くなるほど前記薄物の束の旋回半径を短くし、前記薄物の束の厚みが薄くなるほど前記薄物の束の旋回半径を長くする、
請求項1に記載の物体搬送装置。
【請求項3】
薄物の束を把持して旋回させて搬送するロボットアームと、
前記薄物の束の厚みに応じて前記薄物の束の旋回半径を制御する旋回制御部と
を備え、
前記旋回制御部は、前記薄物の束の厚みが厚くなるほど前記薄物の束の旋回半径を短くし、前記薄物の束の厚みが薄くなるほど前記薄物の束の旋回半径を長くする、
物体搬送装置。
【請求項4】
前記ロボットアームが前記薄物の束を把持している状態で前記薄物の束の厚みを計測する厚み計測部をさらに備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の物体搬送装置。
【請求項5】
前記ロボットアームが前記薄物の束を把持する前に前記薄物の束の厚みを計測する厚み計測部をさらに備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の物体搬送装置。
【請求項6】
前記ロボットアームは、前記薄物の束を把持する把持部を有し、
前記把持部は、第1フィンガと、前記第1フィンガと対向する第2フィンガとを有し、
前記第1フィンガおよび前記第2フィンガを撮影する撮影部をさらに備え、
前記厚み計測部は、前記撮影部の撮影結果における前記第1フィンガと前記第2フィンガとの位置関係から前記薄物の束の前記厚みを演算する
請求項4に記載の物体搬送装置。
【請求項7】
前記薄物の束、紙葉類の束である
請求項1から6のいずれか1項に記載の物体搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投入された紙幣を取揃え、ロボットハンドに渡す機構を備えた紙幣投入取揃えユニットと、紙幣をロボットハンドから受取り紙幣の枚数と種別に分ける機構を備えた紙幣カウント紙幣確認ユニットと、ロボットハンドからの紙幣を収納する機構とこのユニットから紙幣を引出す機構を持ちロボットハンドへ引渡す機構からなる現金カセットユニットと、紙幣を引取り枚数をチェックしロボットへ引き渡す紙幣カウンタユニットと、ロボットからの紙幣を引き取る機構と払出し口へ紙幣を送出する紙幣払出しユニットと、それぞれのユニット間を多関節ロボットを具備して紙幣の転送を行う機構とを有する関節型ロボット組込現金処理装置が過去に提案されている(例えば、特開昭62−092095公報等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−092095公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば紙葉類の束をロボットアームで受け取り搬送して搬送先に渡す装置では、紙葉類の束が搬送中に崩れてバラバラになってしまうことがある。これは、紙葉類の束が厚いほど顕著である。紙葉類の束が崩れた場合、紙葉類を拾いなおす必要があり、このような回収作業は搬送作業効率を低下させるので好ましくない。
【0005】
本発明の課題は、紙葉類の束のような物体をロボットアームで把持して搬送する際に、できるだけ物体が崩れないように搬送することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1局面に係る物体搬送装置は、ロボットアームおよび速度制御部を備える。ロボットアームは、薄物の束を把持して搬送する。速度制御部は、薄物の束の厚みに応じて薄物の束の搬送速度を制御する。また、速度制御部は、薄物の束の厚みが厚くなるほど薄物の束の搬送速度を低下させ、薄物の束の厚みが薄くなるほど薄物の束の搬送速度を上昇させる。
【0007】
この物体搬送装置では、速度制御部が、薄物の束の厚みに応じて薄物の束の搬送速度を制御する。例えば、速度制御部が、薄物の束を搬送する際に薄物の束が厚くなるほど薄物の束の搬送速度を低下させるようにすれば、薄物の束をロボットアームで把持して搬送する際に薄物の束が搬送中に崩れることをできるだけ抑制することができる。また、例えば、速度制御部が、薄物の束を搬送する際に薄物の束が薄くなるほど薄物の束の搬送速度を上昇させるようにすれば、薄物の束をロボットアームで把持して搬送する際に薄物の束を速く搬送することができる。
【0008】
本発明の第2局面に係る物体搬送装置は、第1局面に係る物体搬送装置であって、ロボットアームは、薄物の束を旋回させて搬送する。また、この物体搬送装置は、旋回制御部をさらに備える。旋回制御部は、薄物の束の厚みに応じて薄物の束の旋回半径を制御する。旋回制御部は、薄物の束の厚みが厚くなるほど薄物の束の旋回半径を短くし、薄物の束の厚みが薄くなるほど薄物の束の旋回半径を長くする。
【0009】
この物体搬送装置では、旋回制御部が、薄物の束の厚みに応じて薄物の束の旋回半径を制御する。例えば、旋回制御部が、薄物の束を搬送する際に薄物の束が厚くなるほど薄物の束の旋回半径を短くすれば、薄物の束をロボットアームで把持して搬送する際に回転モーメントによる影響を小さくすることができ、延いては薄物の束が搬送中に崩れることをできるだけ抑制することができる。
【0010】
本発明の第3局面に係る物体搬送装置は、ロボットアームおよび旋回制御部を備える。ロボットアームは、薄物の束を把持して旋回させて搬送する。旋回制御部は、薄物の束の厚みに応じて薄物の束の旋回半径を制御する。
【0011】
この物体搬送装置では、旋回制御部が、薄物の束の厚みに応じて薄物の束の旋回半径を制御する。例えば、旋回制御部が、薄物の束を搬送する際に薄物の束が厚くなるほど薄物の束の旋回半径を短くすれば、薄物の束をロボットアームで把持して搬送する際に回転モーメントによる影響を小さくすることができ、延いては薄物の束が搬送中に崩れることをできるだけ抑制することができる。
【0012】
本発明の第4局面に係る物体搬送装置は、第1局面から第3局面のいずれか1局面に係る物体搬送装置であって、厚み計測部をさらに備える。厚み計測部は、ロボットアームが薄物の束を把持している状態で薄物の束の厚みを計測する。
【0013】
この物体搬送装置では、ロボットアームが、薄物の束を把持している状態で薄物の束の厚みが計測される。このため、この物体搬送装置では、ロボットアームが実際に把持している薄物の束の厚みに応じたロボットアームの制御を行うことができる。
【0014】
本発明の第5局面に係る物体搬送装置は、第1局面から第3局面のいずれかの1局面に係る物体搬送装置であって、厚み計測部をさらに備える。厚み計測部は、ロボットアームが薄物の束を把持する前に薄物の束の厚みを計測する。
【0015】
この物体搬送装置では、ロボットアームが、薄物の束を把持する前に厚み計測部が薄物の束の厚みを計測する。このため、この物体搬送装置では、薄物の束の厚み計測後に薄物の束の厚みを変えないことを条件として、その厚みを利用してロボットアームを制御することができる。また、この物体搬送装置では、ロボットアームが薄物の束を把持する前に薄物の束の厚みを計測することで、薄物の束を把持する機構(例えば、ロボットアームの先端に配設される上下のフィンガ)を前もって制御することができる。薄物の束を把持する前に薄物の束の厚みが不明な場合、上下のフィンガ間の距離を最大にしておく必要があり、薄物の束を上下のフィンガで把持するまでに時間がかかる。これに対して薄物の束を把持する前に薄物の束の厚みが明らかな場合、上下のフィンガの距離を前もって制御することができるため、上下のフィンガの把持前の距離調整時間を減らすことができると共に、薄物の束を上下のフィンガで把持するまでの時間も減らすことができるので搬送作業効率を高めることができる。
【0016】
本発明の第6局面に係る物体搬送装置は、第4局面に係る物体搬送装置であって、ロボットアームは、把持部を有する。把持部は、薄物の束を把持する。また、把持部は、第1フィンガと第2フィンガとを有する。第2フィンガは、第1フィンガと対向している。また、この物体搬送装置は、撮影部をさらに備える。撮影部は、第1フィンガおよび第2フィンガを撮影する。厚み計測部は、撮影部の撮影結果における第1フィンガと第2フィンガとの位置関係から薄物の束の厚みを演算する。
【0017】
この物体搬送装置では、撮影部を備えている。撮影部が第1フィンガおよび第2フィンガを撮影して、厚み計測部が撮影部の撮影結果における第1フィンガと第2フィンガとの位置関係から薄物の束の厚みを演算する。紙葉類の厚みを計測する手段として、シート束をCCDセンサを用いて撮影し、そのシート束の側端面の撮影画像の濃度データからシートの厚みを検出する手法(例えば、特開2005−104723号公報)が知られているが、シート束の側端面を撮影しただけではシートの厚みを正確に求めるための十分な濃度データを得ることは難しい。これに対してこの物体搬送装置では、例えば、第1フィンガおよび第2フィンガそれぞれに少なくとも1つのマーカーを設けて、撮影部の撮影結果におけるマーカーの位置関係から薄物の束の厚みを計測する。このため、この物体搬送装置は、薄物の束の撮影画像の濃度データに左右されずに薄物の束の厚みを計測することができる。
【0018】
本発明の第7局面に係る物体搬送装置は、第1局面から第6局面のいずれか1局面に係る物体搬送装置であって、薄物の束、紙葉類の束である。
【0019】
このため、この物体搬送装置では、紙葉類の束が崩れてバラバラにならないように紙葉類の束を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る物体搬送装置の平面図である。
図2】本発明の実施形態に係るロボットハンド付きロボットアームの側面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る物体搬送装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
−第1実施形態−
本発明の第1実施形態に係る物体搬送装置400は、紙幣の束MTを搬送するための搬送装置であって、図1および図3に示されるように、主に、ロボットハンド付きロボットアーム100、制御装置200および撮影装置300から構成されている。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0022】
1.ロボットハンド付きロボットアーム
ロボットハンド付きロボットアーム100は、図1および図2に示されるように、主に、ロボットハンド110およびロボットアームRAから構成されている。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0023】
(1)ロボットハンド
ロボットハンド110は、図1および図2に示されるように、二指型のロボットハンドである。また、ロボットハンド110は、ロボットアームRAの先端に固着されている。そして、このロボットハンド110は、図2に示されるように、主に、可動指111、固定指112、可動指往復動機構113、引きずり防止部117、引きずり防止部往復動機構118および連結部119から構成されている。
【0024】
(1−1)可動指
可動指111は、図1および図2に示されるように、紙幣の束MTを把持するための二股形の部位である。可動指111の二指の両方が、固定指112(後述)と略平行に対向している厚板部位である。なお、可動指111は、可動指往復動機構113の第1昇降板114(後述)に固定されている。また、可動指111の側面には、マーカーが表示されている。
【0025】
(1−2)固定指
固定指112は、図2に示されるように、紙幣の束MTを把持するための二股形(図示せず)の部位である。固定指112の二指の両方が、可動指111と略平行に対向している厚板部位である。なお、固定指112は、可動指往復動機構113の支持板116(後述)に固定されている。また、この固定指112において、可動指111のマーカー表示面の同じ側の側面には、マーカーが表示されている。可動指111および固定指112に表示されたマーカーは、可動指111および固定指112の対向方向に平行な方向に沿って並んでいる。
【0026】
(1−3)可動指往復動機構
可動指往復動機構113は、図2に示されるように、主に、第1昇降板114、第2昇降板115および支持板116から構成されている。第2昇降板115は第1昇降板114を支持しており、支持板116は第2昇降板115を支持している。第1昇降板114および第2昇降板115は、それぞれに配設される機構(例えば、エアシリンダ機構等)(図示せず)によってそれぞれ昇降させられる。つまり、第1昇降板114および第2昇降板115が昇降することで、第1昇降板114に固定された可動指111も昇降することになる。このため、固定指112および昇降する可動指111の間で紙幣の束MTを把持することが可能であり、さらに把持状態を解除することも可能である。
【0027】
(1−4)引きずり防止部
引きずり防止部117は、図2に示されるように、矩形の板状部材であって、引きずり防止部往復動機構118(後述)の先端に固定されている。引きずり防止部117は、引きずり防止部往復動機構118によって前後方向に往復動させられる。
【0028】
(1−5)引きずり防止部往復動機構
引きずり防止部往復動機構118は、ロボットハンド110が紙幣の束MTの搬送先から退避する際に紙幣の束MTを引きずることを防止するための機構であって、図2に示されるように、固定指112の二指間に位置して固定指112と略平行になるように配設されており、固定指112に固定されている。また、引きずり防止部往復動機構118は、往復動する機構(例えば、エアシリンダ機構等)(図示せず)であると共に、引きずり防止部117を前後方向に往復動させる。
【0029】
引きずり防止部117および引きずり防止部往復動機構118が上述の通りに構成されることによって、紙幣の束MTを把持しているロボットハンド110が紙幣の束MTを搬送先に搬送して把持状態を解除して搬送先から退避する際に、引きずり防止部往復動機構118が前方に移動することで引きずり防止部117が紙幣の引きずりを防止する。このため、ロボットハンド110が退避する際に、紙幣の束MTが崩れることを防ぐことができる。
【0030】
(1−6)連結部
連結部119は、図2に示されるように、ロボットハンド110をロボットアームRAに連結させる部位であって、例えば、フランジ等である。
【0031】
(2)ロボットアーム
ロボットアームRAは、例えば、既存の多軸ロボットアームである。ロボットアームRAの基端は、図1および2に示されるように、回転自在となるように固定台に取り付けられている。
【0032】
2.制御装置
制御装置200は、図3に示されるように、主に、制御部210、導出部220、記憶部230および取得部240から構成されている。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0033】
(1)制御部
制御部210は、例えば、コンピュータの中央処理演算装置の制御装置等であって、図3に示されるように、ロボットアームRA、ロボットハンド110および撮影装置300(後述)に接続されている。また、制御部210は、種々の制御信号をロボットアームRA、ロボットハンド110および撮影装置300に送信することによって、ロボットアームRAおよびロボットハンド110の動作や、撮影装置300の撮影処理を制御する。なお、図3に示されるように、制御部210は、記憶部230に格納される制御プログラムに記述される命令に従って、ロボットアームRA、ロボットハンド110および撮影装置300に制御信号を送信する。また、制御部210は、導出部220および記憶部230の少なくとも一方から制御信号の生成に必要なデータを読み出し、そのデータから制御信号を生成してロボットアームRA、ロボットハンド110および撮影装置300に送信する。
【0034】
(2)導出部
導出部220は、例えば、コンピュータの中央処理演算装置の演算装置等であって、図3に示されるように、記憶部230に格納されるデータおよび取得部240から送信されてくるデータから制御信号の生成に必要なデータを生成して、そのデータを制御部210に供給する。例えば、この導出部220は、取得部240を介して撮影装置300から送られてくる撮影データに基づいたロボットハンド110の可動指111および固定指112のマーカー間の距離から紙幣の束MTの厚みを計測する。導出部220は、ロボットハンド110が紙幣の束MTを把持している時のマーカー間の距離を撮影データから分析して計算することで紙幣の束MTの厚みを計測する。そして、この導出部220は、紙幣の束MTの厚みデータ(以下、「厚みデータ」という)に応じた紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径を導出する。導出部220は、例えば、厚みデータを記憶部230に格納されている制御テーブルと照合して、厚みデータに対応する搬送速度および旋回半径を導出してもよいし、厚みデータから搬送速度を計算する計算式および厚みデータから旋回半径を計算する計算式に厚みデータを代入して、厚みデータに対応する搬送速度および旋回半径を導出してもよい。そして、導出部220は、紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径のデータを制御部210に送信する。なお、紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径を制御することは、ロボットハンド110の搬送速度および旋回半径を制御することになる。
【0035】
(3)記憶部
記憶部230には、制御プログラム、制御パラメータ、制御テーブル等が格納されている。
【0036】
(4)取得部
取得部240は、例えば、コンピュータの通信インターフェイス等であって、図3に示されるように、撮影装置300によって得られた撮影データを受信して導出部220に送信する役目を担っている。
【0037】
3.撮影装置
撮影装置300は、例えば、CCDカメラ等のデジタル式カメラであって、図1に示されるように、ロボットハンド110が紙幣の束(破線)MTを把持した際にロボットハンド110の側面を撮影できる位置に配設されている。撮影装置300は、紙幣の束MTを把持している状態のロボットハンド110の可動指111と固定指112の側面を1画像におさまるように撮影して撮影データを取得する。そして、撮影装置300は、図3に示されるように、制御装置200からの制御信号に従って撮影データを制御装置200の取得部240に送信する。なお、撮影装置300における一連の処理は、ロボットハンド110が紙幣の束MTを把持してから紙幣の束MTの搬送を始めるまでの間に行われる。
【0038】
<第1実施形態に係る物体搬送装置の制御例>
ここでは、第1実施形態に係る物体搬送装置400の制御例について説明する。なお、ここで、紙幣の束MTの搬送先の一例として、図1に示されるようにターンテーブルTAの上に装着されたケースCAを採用している。この例は、本発明を限定するものでないことに留意すべきである。
【0039】
まず、制御装置200は、ロボットアームRAを制御して、所定位置に待機されたロボットハンド110が紙幣の束(図1の破線参照)MTを把持できる位置にロボットハンド110を移動させる。そして、制御装置200は、ロボットハンド110の可動指往復動機構113を制御して、あらかじめ上方に引き上げられていたロボットハンド110の可動指111を下方に移動させて固定指112と共に紙幣の束MTを把持させる。なお、ここで、ロボットハンド110が紙幣の束MTを把持しやすいように、紙幣の束MTはあらかじめ取り揃えられていることが好ましい。
【0040】
次に、ロボットハンド110が紙幣の束MTを把持している状態で、撮影装置300がロボットハンド110の可動指111と固定指112の側面を1画像におさまるように撮影する。撮影装置300は、撮影データを制御装置200の取得部240に送信する。これら一連の処理は、ロボットハンド110が紙幣の束MTを把持してからロボットハンド付きロボットアーム100が紙幣の束MTの搬送を始めるまでの間に行わる。
【0041】
続いて、制御装置200の取得部240が、撮影装置300から送信された撮影データを受信して、制御装置200の導出部220に撮影データを送信する。導出部220は、撮影データを受信して、撮影データにおけるロボットハンド110の可動指111と固定指112との位置関係から紙幣の束MTの厚みを計測する。そして、導出部220は、厚みデータに対応する紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径を導出し、それらのデータを制御装置200の制御部210に送信する。これら一連の処理も、ロボットハンド110が紙幣の束MTを把持してからロボットハンド付きロボットアーム100が紙幣の束MTの搬送を始めるまでの間に行わる。そして、制御部210は、導出された紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径を利用して以下に記載される制御を実行する。
【0042】
制御装置200は、導出した紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径のデータを利用して紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径を制御する。制御装置200は、例えば、紙幣の束MTの厚みが厚くなるほど、紙幣の束MTの搬送速度を低下させて旋回半径を短くする。また、制御装置200は、紙幣の束MTの厚みが薄くなるほど、紙幣の束MTの搬送速度を上昇させて旋回半径を長くする。ただし、制御装置200は、紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径のそれぞれに設定された最大値および最小値の範囲内で紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径を制御する。そして、制御装置200は、ロボットアームRAを制御して紙幣の束MTを搬送先であるケースCAに搬送させる。なお、制御装置200は、紙幣の束MTがケースCAの中で順次積み上がるようにロボットアームRAを制御する。
【0043】
続いて、制御装置200は、ロボットアームRAを制御して、ロボットハンド110の可動指111および固定指112をケースCAの奥側にまで差し入れさせた後、引きずり防止部往復動機構118を制御して引きずり防止部117を前方に移動させると共に、可動指往復動機構113を制御して可動指111を上方に引き上げて把持状態を解除して紙幣の束MTを手放させる。そして、制御装置200は、ロボットアームRAを制御して、ロボットハンド110の傾斜角度を維持したままロボットハンド110をケースCAから退避させる。この時、引きずり防止部往復動機構118は前方に移動しているため、引きずり防止部117が紙幣の束MTの引きずりを防止する。そして、制御装置200は、ロボットハンド110がケースCAから完全に退避してから引きずり防止部往復動機構118を制御して引きずり防止部117を後方に引き戻す。最後に、制御装置200は、ロボットアームRAを制御して、ロボットハンド110を所定位置まで移動させて次の紙幣の束MTの搬送に備えさせる。
【0044】
<第1実施形態に係る物体搬送装置の特徴>
(1)
第1実施形態に係る物体搬送装置400では、制御装置200が、紙幣の束MTの厚みを計測してその厚みに応じて紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径を制御している。制御装置200は、搬送する紙幣の束MTの厚みが厚くなるほど、紙幣の束MTの搬送速度を低下させて旋回半径を短くする。また、制御装置200は、搬送する紙幣の束MTの厚みが薄くなるほど、紙幣の束MTの搬送速度を上昇させて旋回半径を長くする。このため、第1実施形態に係る物体搬送装置400では、搬送する紙幣の束MTが厚い場合、ロボットハンド付きロボットアーム100が紙幣の束MTを把持して搬送する際に紙幣の束MTが搬送中に崩れることをできるだけ抑制することができる。また、搬送する紙幣の束MTが薄い場合、ロボットハンド付きロボットアーム100が紙幣の束MTを把持して搬送する際に紙幣の束MTを速く搬送して搬送作業効率を高めることができる。
【0045】
(2)
第1実施形態に係る物体搬送装置400では、ロボットハンド110が紙幣の束MTを把持している状態で紙幣の束MTの厚みが計測される。このため、第1実施形態に係る物体搬送装置400では、実際にロボットハンド110が把持している紙幣の束MTの厚みに応じたロボットハンド付きロボットアーム100の制御を行うことができる。
【0046】
<変形例>
(A)
第1実施形態に係る物体搬送装置400では、撮影装置300は、紙幣の束MTを把持している状態のロボットハンド110の可動指111と固定指112の側面を1画像におさまるように撮影していたが、ロボットハンド110の可動指111と固定指112の側面を2画像以上におさまるように撮影してもよい。そして、制御装置200は、例えば、それぞれの画像の特徴点を基準に画像を合成し、合成した画像から紙幣の束MTの厚みを計測してもよい。
【0047】
(B)
第1実施形態に係る物体搬送装置400では、ロボットハンド110が把持している紙幣の束MTの厚みは撮影装置300が撮影した撮影データに基づいて制御装置200の導出部220で計測されていたが、ロボットハンド110が把持している紙幣の束MTの厚みはロボットハンド110に圧力センサーを配設してその圧力センサーによって計測されてもよいしその他計測方法によって計測されてもよい。
【0048】
(C)
第1実施形態に係る物体搬送装置400では、制御装置200は、紙幣の束MTの厚みを計測してその厚みに応じて紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径を制御していた。しかし、制御装置200は、紙幣の束MTの厚みに応じて、紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径のどちらか一方だけを制御してもよい。
【0049】
−第2実施形態−
本発明の第2実施形態に係る物体搬送装置では、紙幣の束MTをロボットハンドで把持する前に紙幣の束MTの厚みが計測される。ここで、第2実施形態に係る物体搬送装置は、第1実施形態に係る物体搬送装置400で説明した撮影装置300を備えておらず、第2ロボットハンド付きロボットアームおよび第2ロボットハンド付きロボットアームを撮影する別の撮影装置が追加構成されている。以下、第1実施形態に係る物体搬送装置400との相違点について説明する。なお、第2実施形態では、第1ロボットハンド付きロボットアームは、第1実施形態に係る物体搬送装置400で説明したロボットハンド付きロボットアーム100と構造的に同様である。また、第2実施形態では便宜上、ロボットハンド付きロボットアーム100、ロボットハンド110、ロボットアームRAをそれぞれ「第1ロボットハンド付きロボットアーム」、「第1ロボットハンド」、「第1ロボットアーム」と称することとする。
【0050】
1.第2ロボットハンド付きロボットアーム
第2ロボットハンド付きロボットアームは、紙幣収容箱から紙幣の束MTを把持して抜き取り、紙幣の束MTを第1ロボットハンド付きロボットアームの可動領域まで搬送する。なお、第2ロボットハンド付きロボットアームが紙幣の束MTを把持している状態で紙幣の束MTの厚み方向の全体を撮影できる位置に撮影装置が備えられている。撮影装置は、撮影した撮影データを制御装置200に送信する。
【0051】
2.制御装置
第2実施形態では、制御装置200は、第1ロボットハンド付きロボットアーム、第2ロボットハンド付きロボットアームおよび撮影装置に接続されている。制御装置200は、第1ロボットハンド付きロボットアームおよび第2ロボットハンド付きロボットアームの動作や、撮影装置の撮影処理を制御する。また、制御装置200は、第2ロボットハンド付きロボットアームが把持している紙幣の束MTの厚み方向の全体を撮影した撮影装置から撮影データを受信し、撮影データから紙幣の束MTの厚みを計測して、厚みデータに応じて紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径を制御する。なお、紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径を制御することは、第1ロボットハンドの搬送速度および旋回半径を制御することになる。
【0052】
<第2実施形態に係る物体搬送装置の制御例>
ここでは、第2実施形態に係る物体搬送装置の制御例について説明する。なお、ここで、紙幣の束MTの搬送先の一例として、ターンテーブルの上に装着されたケース(図示せず)を採用している。なお、この例は、本発明を限定するものでないことに留意すべきである。
【0053】
まず、制御装置200は、第2ロボットハンド付きロボットアームを制御して、紙幣収容箱から紙幣の束MTを把持して抜き取らせる。この時、第2ロボットハンド付きロボットアームが紙幣の束MTを把持している状態で、撮影装置が、紙幣の束MTの厚み方向の全体が写るように撮影し、撮影した撮影データを制御装置200に送信する。次に、制御装置200は、紙幣の束MTを第1ロボットハンド付きロボットアームの可動領域まで搬送させるように第2ロボットハンド付きロボットアームを制御する。
【0054】
次に、制御装置200は、第2ロボットハンド付きロボットアームによって搬送された紙幣の束MTを第1ロボットハンド付きロボットアームに把持させる。そして、制御装置200は、第1ロボットハンド付きロボットアームに対して、ターンテーブルの上に装着されたケースに紙幣の束MTを搬送させる。このように、第1実施形態に係る物体搬送装置400の制御例とは異なり、制御装置200は、第2ロボットハンド付きロボットアームが把持している紙幣の束MTの厚み方向の全体を撮影する撮影装置から送信された撮影データに基づいて紙幣の束MTの厚みを計測する。そして、制御装置200は、厚みデータに応じて紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径を制御する。また、制御装置200は、第1ロボットハンドが紙幣の束MTを把持する前に紙幣の束MTの厚みが明らかであるため、第1ロボットハンドの可動指を上方の最大まで引き上げずに、紙幣の束MTを把持できる程度に可動指を上方に引き上げる制御をする。
【0055】
<第2実施形態に係る物体搬送装置の特徴>
第2実施形態に係る物体搬送装置では、第1ロボットハンドが紙幣の束MTを把持する前に紙幣の束MTの厚みが計測されている。このため、第2実施形態に係る物体搬送装置では、紙幣の束MTの厚み計測後に、その厚みを利用して第1ロボットハンド付きロボットアームを制御する。また、第2実施形態に係る物体搬送装置では、紙幣の束MTを把持するための第1ロボットハンドの可動指を前もって制御する。すなわち、第1ロボットハンドが紙幣の束MTを把持する前に可動指を上方の最大まで引き上げる必要がなくなるため、可動指の上方への引き上げ時間を減らすことができる。また、可動指が下方に移動して第1ロボットハンドが紙幣の束MTを把持するまでの時間も減らすことができる。このため、第2実施形態に係る物体搬送装置では、第1ロボットハンド付きロボットアームによる紙幣の束MTの搬送作業効率を高めることができる。
【0056】
<変形例>
(A)
第2実施形態に係る物体搬送装置では、第2ロボットハンド付きロボットアームが紙幣の束MTを把持している状態で紙幣の束MTの厚み方向の全体を撮影できる位置に備えられた撮影装置が撮影した撮影データに基づいて紙幣の束MTの厚みが計測されていた。しかし、第2ロボットハンド付きロボットアームに固定された撮影装置が撮影した撮影データに基づいて紙幣の束MTの厚みを計測する方法、第2ロボットハンド付きロボットアームに配設された圧力センサーによって紙幣の束MTの厚みを計測する方法、その他紙幣の束MTの厚みを計測する方法によって、第2ロボットハンド付きロボットアームが紙幣の束MTを把持している状態で紙幣の束MTの厚みが計測されてもよい。
【0057】
(B)
第2実施形態に係る物体搬送装置では、第2ロボットハンド付きロボットアームは、紙幣の束MTを第1ロボットハンド付きロボットアームの可動領域まで搬送していた。しかし、紙幣の束MTは、移送装置(例えば、ベルトコンベア、スライド装置等)によって第1ロボットハンド付きロボットアームの可動領域まで搬送されてもよい。かかる場合、第2ロボットハンド付きロボットアームは、移送装置の上に紙幣の束を移載することが好ましい。
【0058】
(C)
第2実施形態に係る物体搬送装置では、第2ロボットハンド付きロボットアームが紙幣の束MTを把持している状態で紙幣の束MTの厚み方向の全体を撮影できる位置に備えられた撮影装置が撮影した撮影データに基づいて紙幣の束MTの厚みが計測されていた。しかし、紙幣の束MTを第1ロボットハンド付きロボットアームの近傍まで移動させる移送装置の始点または終点に設置した撮影装置が撮影した撮影データに基づいて紙幣の束MTの厚みが計測されてもよい。かかる場合、移送装置はスライド装置であることが好ましい。また、スライド装置に載置された天面が開口している箱に紙幣の束MTが格納されている状態で箱の天面から箱の内部を撮影装置が撮影し、その撮影データに基づいて紙幣の束MTの厚みが計測されることが好ましい。
【0059】
(D)
第2実施形態に係る物体搬送装置では、制御装置200は、紙幣の束MTの厚みを計測してその厚みに応じて紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径を制御していた。しかし、制御装置200は、紙幣の束MTの厚みに応じて、紙幣の束MTの搬送速度および旋回半径のどちらか一方だけを制御してもよい。
【符号の説明】
【0060】
100:ロボットハンド付きロボットアーム
110:ロボットハンド
111:可動指(第1フィンガ)
112:固定指(第2フィンガ)
210:制御部(速度制御部、旋回制御部)
220:導出部(厚み計測部)
300:撮影装置(撮影部)
MT :紙幣の束
RA :ロボットアーム
【要約】
【課題】本発明の課題は、紙葉類の束のような物体をロボットアームで把持して搬送する際に、できるだけ物体が崩れないように搬送することにある。
【解決手段】本発明に係る物体搬送装置400は、ロボットアームRAおよび速度制御部を200備える。ロボットアームRAは、物体を把持して搬送する。速度制御部200は、物体の厚みに応じて物体の搬送速度を制御する。
【選択図】図1
図1
図2
図3