(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ビールテイスト飲料について飲み応えを増強できる新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、苦味がより抑えられた(例えば苦味価が5.0B.U.未満)ビールテイスト飲料を構成することを着想した。
しかしながら、苦味を低減させていくと水っぽく感じられるようになってしまい、飲み応えが低減してしまう問題があった。
本発明者は、鋭意研究の結果、原料としてホップを含有しないビールテイスト飲料において、γ−ブチロラクトンを所定の含有量で含有させることにより、飲み応えを増強できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 苦味価が5.0B.U.未満であるビールテイスト飲料であって、
γ−ブチロラクトンを含有し、その含有量が250ppb以上である、ビールテイスト飲料。
[2] 苦味料を含有しない、[1]に記載のビールテイスト飲料。
[3] 原料としてホップを含有しない、[1]または[2]に記載のビールテイスト飲料。
[4] γ−ブチロラクトンの含有量が250〜1000ppbである、[1]から[3]のいずれか一つに記載のビールテイスト飲料。
[5] 2−メチルテトラヒドロフラン−3−オンをさらに含有する、[1]から[4]のいずれか一つに記載のビールテイスト飲料。
[6] 2−メチルテトラヒドロフラン−3−オンの含有量が15ppb以上である、[5]に記載のビールテイスト飲料。
[7] 2−メチルテトラヒドロフラン−3−オンの含有量が15〜60ppbである、[5]または[6]に記載のビールテイスト飲料。
[8] γ−ブチロラクトンを含むメイラード反応物を含有する[1]から[7]のいずれか一つに記載のビールテイスト飲料。
[9] 苦味価が5.0B.U.未満であるビールテイスト飲料の製造方法であって、
当該ビールテイスト飲料の製造工程においてその含有量が250ppb以上となるようにγ−ブチロラクトンが添加されることを含む、ビールテイスト飲料の製造方法。
[10] 前記ビールテイスト飲料が苦味料を含有しない、[9]に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
[11] 当該ビールテイスト飲料の製造工程においてγ−ブチロラクトンを含むメイラード反応物が添加されることによりγ−ブチロラクトンがビールテイスト飲料中に添加される、[9]または[10]に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
[12] 苦味価が5.0B.U.未満であるビールテイスト飲料の飲み応え増強方法であって、
その含有量が250ppb以上となるように前記ビールテイスト飲料中にγ−ブチロラクトンを含有させることを含む、飲み応え増強方法。
[13] 前記ビールテイスト飲料が苦味料を含有しない、[12]に記載の飲み応え増強方法。
[14] 当該ビールテイスト飲料の製造工程においてγ−ブチロラクトンを含むメイラード反応物が添加されることによりγ−ブチロラクトンがビールテイスト飲料中に添加される、[12]または[13]に記載の飲み応え増強方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ビールテイスト飲料について飲み応えを増強できる新規な技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の1つの実施形態について、詳細に説明する。
本実施形態は、苦味価が例えば5.0B.U.未満であるビールテイスト飲料に関する。本実施形態のビールテイスト飲料は、γ−ブチロラクトンを含有し、その含有量が250ppb以上である。
【0009】
本明細書において、ビールテイスト飲料とは、炭酸ガスによる発泡性を有し、ビールと同様又は同類の香味を有するアルコール飲料およびノンアルコール飲料を意味する。なお、ビールテイスト飲料に該当するか否かは、酒税法上の分類、使用原料やその使用量にとらわれるものではない。
また、本明細書でいうところのホップには、乾燥ホップ、凍結ホップ、凍結乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスが含まれ、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品も含まれる概念である。
【0010】
以下の説明においては、ビールテイスト飲料の一例として、発酵ビールテイスト飲料を例に挙げて説明する。
当該発酵ビールテイスト飲料について、苦味価が例えば5.0B.U.未満であり、γ−ブチロラクトンが、その含有量が250ppb以上となるように含有される以外は特に限定されず、例えばこれらの点を除いて常法により製造された発酵ビールテイスト飲料とすることができる。
発酵ビールテイスト飲料のアルコール濃度は限定されず、0.5容量%以上のアルコール飲料であってもよく、0.5容量%未満のいわゆるノンアルコール飲料であってもよい。具体的には、ビール、発泡酒、ノンアルコールビール等が挙げられる。
【0011】
発酵ビールテイスト飲料の製造工程の一例を以下に示す。
一般的な発酵ビールテイスト飲料は、仕込(発酵原料液調製)、発酵、貯酒、濾過の工程で製造することができる。
まず、仕込工程として、穀物原料および糖質原料からなる群から選択される1種以上の原料(発酵原料)から発酵原料液を調製する。穀物原料としては、例えば、大麦や小麦、これらの麦芽等の麦類、米、トウモロコシ、大豆等の豆類、イモ類等が挙げられ、これらはシロップ、エキス、粉砕物等の形態であってもよい。また、糖質原料としては、液糖などの糖類が挙げられる。
具体的には、まず、穀物原料と糖質原料の少なくともいずれかと原料水とを含む混合物を調製して加温し、穀物原料等の澱粉質を糖化させる。当該混合物には、穀物原料等と水以外の副原料を加えてもよい。当該副原料としては、例えば、食物繊維、酵母エキス、甘味料、果汁、苦味料、着色料、香草、香料等が挙げられる。また、必要に応じて、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ等の糖化酵素やプロテアーゼ等の酵素剤を添加することができる。
【0012】
糖化処理は、穀物原料等由来の酵素や、別途添加した酵素を利用して行う。糖化処理時の温度や時間は、用いた穀物原料等の種類、発酵原料全体に占める穀物原料の割合、添加した酵素の種類や混合物の量、目的とする発酵ビールテイスト飲料の品質等を考慮して、適宜調整される。例えば、糖化処理は、穀物原料等を含む混合物を35〜70℃で20〜90分間保持する等、常法により行うことができる。
【0013】
糖化処理後に得られた糖液を煮沸することにより、煮汁(糖液の煮沸物)を調製する。糖液は、煮沸処理前に濾過し、得られた濾液を煮沸処理することが好ましい。また、この糖液の濾液の替わりに、麦芽エキスに温水を加えたものを用い、これを煮沸してもよい。煮沸方法及びその条件は、適宜決定することができる。
【0014】
煮沸処理前または煮沸処理中に香草等を適宜添加することにより、所望の香味を有する発酵ビールテイスト飲料を製造するようにしてもよい。香草等の添加量、添加態様(例えば数回に分けて添加するなど)および煮沸条件は、適宜決定することができる。
【0015】
仕込工程後、発酵工程前に、調製された煮汁から、沈殿により生じたタンパク質等の粕を除去することが好ましい。粕の除去は、いずれの固液分離処理で行ってもよいが、一般的にはワールプールと呼ばれる槽を用いて沈殿物を除去する。この際の煮汁の温度は、15℃以上であればよく、一般的には50〜90℃程度で行われる。粕を除去した後の煮汁(濾液)は、熱交換器により適切な発酵温度まで冷却する。この粕を除去した後の煮汁が、発酵原料液となる。
【0016】
次いで、発酵工程として、冷却した発酵原料液に酵母を接種して、発酵を行う。冷却した発酵原料液は、そのまま発酵工程に供してもよく、所望のエキス濃度に調整した後に発酵工程に供してもよい。発酵に用いる酵母は特に限定されるものではなく、通常、酒類の製造に用いられる酵母の中から適宜選択して用いることができる。上面発酵酵母であってもよく、下面発酵酵母であってもよいが、大型醸造設備への適用が容易であることから、下面発酵酵母であることが好ましい。
【0017】
さらに、貯酒工程として、得られた発酵液を、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、濾過工程として、熟成後の発酵液を濾過することにより、酵母及び当該温度域で不溶なタンパク質等を除去して、発酵ビールテイスト飲料を得ることができる。当該濾過処理は、酵母を濾過除去可能な手法であればよく、例えば、珪藻土濾過、平均孔径が0.4〜0.6μm程度のフィルターによるフィルター濾過等が挙げられる。また、所望のアルコール濃度とするために、濾過前又は濾過後に適量の加水を行って希釈してもよい。なお、本実施形態に係わる発酵ビールテイスト飲料においては当該濾過工程を省略する場合もある。
【0018】
その他、酵母による発酵工程以降の工程において、例えばアルコール含有蒸留液と混和することにより、酒税法におけるリキュール類に相当する発酵ビールテイスト飲料を製造することもできる。アルコール含有蒸留液の添加は、アルコール濃度の調整のための加水前であってもよく、加水後であってもよい。添加するアルコール含有蒸留液は、より好ましい麦感を有する発酵ビールテイスト飲料を製造し得ることから、麦スピリッツが好ましい。
得られた発酵ビールテイスト飲料は、通常、充填工程によりびん、缶、樽などの容器に容器詰めされる。
【0019】
本実施形態において、発酵ビールテイスト飲料がγ−ブチロラクトンを含有する状態とするための処理については特に限定されず、製造工程のいずれかの段階でγ−ブチロラクトンが添加されればよい。例えば、得られた発酵ビールテイスト飲料へのγ−ブチロラクトンの添加が例示できる。
具体的には、例えば、得られた発酵ビールテイスト飲料を容器に充填する前にその含有量が250ppb以上となるようにγ−ブチロラクトンを添加するなどすればよい。
また、水っぽさと飲み応えとのバランスの観点から、γ−ブチロラクトンについて、その含有量が250〜1000ppbであることが好ましい。
【0020】
また、本実施形態において、飲料における苦味価は、5.0B.U.未満とすることができる。
ここで、苦味価とは、イソフムロンを主成分とするホップ由来物質群により与えられる苦味の指標であり、例えばEBC法(ビール酒造組合:「ビール分析法」8.15 1990年)により測定することができる。具体的には、サンプルに酸を加えた後イソオクタンで抽出し、遠心分離処理後に得られたイソオクタン層の、純粋なイソオクタンを対照に測定した275nmにおける吸光度に定数(50)を乗じた値(B.U.)として得ることができる。
苦味価の調整については特に限定されず、当業者が適宜選択でき、例えば、苦味料(苦味を付与するために用いられるもの)の添加量の調整などにより行うことができる。苦味料としては、例えば、ホップやイソ化ホップエキスを挙げることができる。
このうち、本実施形態の構成を適用することで飲み応えをより改善でき、また、香味バランスとドリンカビリティ(ゴクゴクと量を飲み易い)の観点から、ホップなど苦味料を原料として使用しないことが好ましく、ホップを原料として使用しないことがより好ましい。
【0021】
また、本実施形態の発酵ビールテイスト飲料は、飲み応えの観点から、2−メチルテトラヒドロフラン−3−オンをさらに含有することが好ましい。
2−メチルテトラヒドロフラン−3−オンの含有量は特に限定されず、当業者が適宜設定できるが、飲み応えの観点から15ppb以上であることが好ましく、水っぽさと飲み応えとのバランスの観点からより好ましくは20〜60ppbである。
【0022】
なお、飲料中におけるγ−ブチロラクトンや2−メチルテトラヒドロフラン−3−オンの含有量は、使用される原材料などから算出することができるほか、例えばガスクロマトグラフ質量分析器(GC-MS)を用いた定量により得ることができる。当該定量は、例えば以下の方法により行うことができる。
<γ−ブチロラクトン及び2−メチルテトラヒドロフラン−3−オンの定量方法>
(サンプル調製法)
0℃に冷却したビールテイスト飲料30g に硫化アンモニウムを添加し、
内部標準液として、ヘキサノール及び酢酸ヘキシルを添加した。さらに二硫化炭素を3ml添加する。
これらを遠心管に入れ、振とうして溶媒抽出後、遠心分離して、溶媒層を分取する。
分取物をGC-MSに供する。
(GC/MS条件)
ガスクロマトグラフ:「Agilent 6890 ガスクロマトグラフ 」(Agilent Te
chnologies社製)
検出器:「MSD5975」(Agilent Technologies社製)
カラム:「DB−WAX capillary column」(長さ:60m、内径:
0.25mm、膜厚:0.25μm、Agilent Technologies社製)
注入口温度:230℃
注入モード:パルス化スプリットレスインジェクションモード(pulsed splitless
injection mode)
注入量:1μL
キャリアガス:ヘリウム(1mL/分)
カラム温度設定:40℃(5分)−3℃/min 230℃(30min)
イオン化条件:70eV
測定モード:シングルイオン−モニタリングモード(single ion-monitoring(SIM) mode)
定量:当該香気成分のピークエリア面積と内部標準品のピークエリア面積との比較にて実施
【0023】
γ−ブチロラクトンや2−メチルテトラヒドロフラン−3−オンは、化合物単独で添加されてもよいほか、組成物の態様で飲料中に添加されるようにしてもよく、特に限定されない。
γ−ブチロラクトンや含有されてもよい2−メチルテトラヒドロフラン−3−オンは、メイラード反応物中に含有され得る成分の一つである。そのため、メイラード反応物が添加されることによりこれらγ−ブチロラクトンや2−メチルテトラヒドロフラン−3−オンが本実施形態の発酵ビールテイスト飲料中に含有されるようにしてもよい。
ここで、メイラード反応物とは、加熱下などにおいて生じるアミノ酸と糖との反応物をいう。
メイラード反応物調製に用いられる糖としては特に限定されないが、例えば、異性化液糖、ショ糖液糖、ぶどう糖液糖、麦芽糖液糖などを挙げることができる。また、メイラード反応物調製に用いられるアミノ酸としては、大豆タンパク分解物由来、エンドウ豆タンパク分解物由来、トウモロコシタンパク由来、などを挙げることができる。メイラード反応における反応温度なども特に限定されず、当業者が適宜設定でき、例えば100℃以上、130℃以下とすることができる。
また、本明細書において、メイラード反応物とは、予め調製され、乾燥、粉末化等により製品化されている調製物であってもよい。
メイラード反応物の添加量は、飲料におけるγ−ブチロラクトンの含有量(250ppb以上)などに応じて設定できる。
【0024】
以上、本実施形態によれば、ビールテイスト飲料についてビールらしい飲み応えを増強できる技術を提供することができる。
なお、本発明はこの態様に限定されるものではない。
例えば、本実施形態においては、ビールテイスト飲料として発酵ビールテイスト飲料を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、本発明のビールテイスト飲料は、非発酵ビールテイスト飲料であってもよい。
非発酵ビールテイスト飲料とは、発酵を経ずに製造されるビールテイスト飲料を意味する。非発酵ビールテイスト飲料は、例えば、麦芽エキスなどの穀物エキス、酸味料、甘味料等の原料を混合し、得られた調合液に炭酸ガスを導入することにより製造される。
【0025】
非発酵ビールテイスト飲料は、アルコール(エタノール)を含有するアルコール飲料であってもよく、アルコール含量が1容量%未満であるいわゆるノンアルコール飲料またはローアルコール飲料であってもよい。
非発酵ビールテイスト飲料として、具体的には、発泡酒、ローアルコール発泡性飲料、ノンアルコールビール等のビールテイスト飲料が挙げられる。その他、発酵工程を経ずに製造された飲料を、アルコール含有蒸留液及び炭酸ガスと混和して得られたリキュール類であってもよい。アルコール含有蒸留液とは、蒸留操作により得られたアルコールを含有する溶液であり、スピリッツ等の一般に蒸留酒に分類されるものを用いることができる。
【0026】
非発酵ビールテイスト飲料についてもγ−ブチロラクトンを250ppb以上含有する状態とするための処理については特に限定されず、製造工程のいずれかの段階でγ−ブチロラクトンが添加されるなどすればよい。例えば、得られた非発酵ビールテイスト飲料を容器に充填する前にγ−ブチロラクトンを非発酵ビールテイスト飲料に混合するなどすればよい。γ−ブチロラクトンの含有量は、発酵ビールテイスト飲料と同様の理由から、250〜1000ppbが好ましい。
苦味価についても例えば5.0B.U.未満であり、発酵ビールテイスト飲料と同様の理由からホップなどの苦味料を含有しないことが好ましい。
また、発酵ビールテイスト飲料と同様の理由から、2−メチルテトラヒドロフラン−3−オンをさらに含有することが好ましい。2−メチルテトラヒドロフラン−3−オンの含有量についても、発酵ビールテイスト飲料と同様の理由から15ppb以上であることが好ましく、より好ましくは20〜60ppbである。
γ−ブチロラクトンや含有されてもよい2−メチルテトラヒドロフラン−3−オンは、発酵ビールテイスト飲料と同様に、単独で添加されてもよく、また、メイラード反応物のような組成物の態様で添加されてもよい。
【0027】
また、本発明に係わるビールテイスト飲料においては、穀類、とりわけ麦芽や大麦などの麦類を原料とすることができるほか、麦芽等を原料としないものであってもよい。
麦芽を使用する場合、その使用比率は、穀物由来の香味を適度なものにする観点から、90%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましく、麦芽を原料として使用していないことがより好ましい。
また、糖類と反応させた場合の化合物の香味が良好であるため、原料として大豆由来成分を含有することが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0029】
<ビールテイスト飲料A、Bの調製>
7kgの粉砕麦芽と23kgのコーンスターチに原料水を混合した混合物を常法に従って加温して糖化した後、76℃で酵素を失活させて糖化液を製造した。得られた糖化液を濾過し、得られた濾液を煮沸釜に入れ、200Lになるように水を加えた後、70分間煮沸して麦汁(穀物煮汁)を得た。ホップを原料とする場合には、適量を煮沸前の濾液に添加した。その後、当該麦汁に湯を加えて200Lになるように液量を再調整した後、ワールプール(旋回分離槽)で固液分離した。固液分離後、熱交換器によって麦汁を冷却した。冷却して得られた冷麦汁にビール酵母を接種し、発酵させた。発酵後、発酵液を濾過して清澄化し、1.2倍希釈した後に、炭酸ガス圧が0.23MPa(20℃)となるように調整して、容器に充填した(以下、得られたビールテイスト飲料のうち、ホップを含むものをビールテイスト飲料Aと、ホップを含まないものをビールテイスト飲料Bと称す)。
【0030】
<官能試験1>
ビールテイスト飲料Bにγ−ブチロラクトンを表1に示す各含有量となるように添加し、実施例および比較例のビールテイスト飲料を調製して官能評価に供した。官能評点の平均値を表1に示す。
【0031】
<評点について>
官能試験1においては、6名のパネリストにより、以下の「水っぽさ」「味の厚み」「マイルドさ」「飲み応え」「バランス」について官能検査を行った。
水っぽさ:飲んだときに感じられる水分量についての感覚に関し、水っぽさが増すとは飲料中の水分量がより多いように感じられること、または溶質に由来する味のうすさが増す感覚を意味する。
味の厚み:飲んだときに感じられるボディ感やコク、かつ後味の余韻の程度に関する。
マイルドさ:飲んだときのまろやかな味感が感じられることの程度に関する。
飲み応え:ボディ感やコクなどに起因する、飲み込むときに喉に抵抗を感じられるような感覚をいう。飲み応えが増すと飲料を飲んだことをより強く実感できる。
バランス:水っぽさと飲み応えの調和に関する。当該調和の程度が高まるとドリンカビリティが高まる傾向にある。
【0032】
官能評価にあたっては、5段階で評価した。
「水っぽさ」については、点数が高いほど水っぽいことを示す。
「味の厚み」については、点数が高いほど、ボディがあり味に厚みが出ることを示す。
「マイルドさ」については、点数が高いものほど、マイルドさが増すことを示す。
「飲み応え」については、点数が高いものほど飲み応えがあることを示す。
「バランス」については、点数が低いほどバランスが悪く、高いほどバランスが良いことを示す。
なお、比較例1がホップを含むビールテイスト飲料Aであり、比較例1を評点3にして、まずホップを含有しない比較例2(ビールテイスト飲料B)の官能評価を行った。その後、γ−ブチロラクトンを添加した実施例のビールテイスト飲料は比較例1,2を基準とした相対評価で評価した。すなわち、比較例1を評点3とするとともに、比較例2で得られた飲み応えの評価に対し改善が認められるか否かを評価した。
また、味の厚みについては、比較例2からは非常に感じられにくい要素であるため、調製した対照液を指標とした。具体的には、別途炭酸水を準備し、原料用エタノールを添加して、アルコール度数5%にしたアルコール炭酸水を準備し、該アルコール炭酸水に、γ−ブチロラクトンを800ppb添加したもの:3点、1600ppb添加したものを5点とした対照液を用いた。
マイルドさについても、同様の理由から、同じアルコール炭酸水に、2−メチルテトラヒドロフラン−3−オンを60ppb添加したものを3点、120ppb添加したものを5点とした対照液を用いた。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示すとおり、γ−ブチロラクトンの含有量を250ppb以上とすると、水っぽさが軽減して味の厚みと飲み応えが増した。また、γ−ブチロラクトンの含有量を300〜600ppbとすると、バランスの程度も高まることが理解できる。
【0035】
<比較試験>
γ−ブチロラクトンと同様アミノ化合物と糖によるメイラード反応からも生成することが知られるγ−ヘキサラクトンについてもビールテイスト飲料Bに添加し、得られたビールテイスト飲料を試験例1と同様の官能評価に供した。結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
表2から理解できるように、γ−ヘキサラクトンを添加したサンプルについては、飲み応えの増強効果は見られなかった。
【0038】
<官能試験2>
ビールテイスト飲料Bにγ−ブチロラクトンを添加して250ppbとするとともに、2−メチルテトラヒドロフラン−3−オンを表3に示す含有量となるように添加して実施例のビールテイスト飲料を調製し、官能試験1と同様の官能評価を行った。
【0039】
【表3】
【0040】
表3に示すとおり、さらに2−メチルテトラヒドロフラン−3−オンを添加すると、水っぽさが軽減して、味の厚み、マイルドさと飲み応えが増した。
【0041】
<メイラード反応物を含むビールテイスト飲料の調製>
粉砕した麦芽7kgとコーンスターチ23kgを糖化し、76℃で酵素失活を行った。得られた液(麦汁)を濾過した。濾過後、麦汁を煮沸釜に入れ、200Lになるように水を加えた後、80分煮沸し、180Lの麦汁を得た。その後、湯を加え200Lになるように液量を再調整した後、ワールプール(旋回分離槽)で固液分離した。固液分離後、熱交換器によって麦汁を冷却した。冷却後麦汁に酵母を添加し発酵させた。発酵後の液は濾過にて清澄化し、1.2倍希釈後に容器に充填した(以下、ビールテイスト飲料Cと称す)。
一方、異性化液糖150gと、タンパク質分解物2.5gに水を加え、1Lとなるように溶解した。溶解液をオートクレーブにて121℃、100分間煮沸することでメイラード反応物を生成させた。得られたメイラード反応物に由来するγ−ブチロラクトンが飲料中において約44ppbになるようにビールテイスト飲料Cにメイラード反応物を添加して実施例のビールテイスト飲料を得た。得られた実施例のビールテイスト飲料を官能評価2に供した。
【0042】
<官能評価3>
実施例のビールテイスト飲料について、6名のパネリストにより、「水っぽさ」「味の厚み」「マイルドさ」「飲み応え」「バランス」について官能評価1と同様の官能評価を行った。官能評点の平均値を表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
試験の結果、メイラード反応により得られたγ−ブチロラクトンを添加した場合においても、官能評価1と同様にγ−ブチロラクトンの濃度が高くなると、水っぽさが軽減して後味に厚みがあり、飲み応えが増す傾向が見られた。
【解決手段】 苦味価が5.0B.U.未満であるビールテイスト飲料であって、γ−ブチロラクトンを含有し、その含有量が250ppb以上である、ビールテイスト飲料。