特許第6823184号(P6823184)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6823184プラスチックから粉末状の物質を製造する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6823184
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】プラスチックから粉末状の物質を製造する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B29B 9/00 20060101AFI20210114BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20210114BHJP
   B01J 2/20 20060101ALI20210114BHJP
   B01J 2/00 20060101ALI20210114BHJP
   B01J 2/22 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   B29B9/00
   C08J3/12 A
   B01J2/20
   B01J2/00 A
   B01J2/22
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-538677(P2019-538677)
(86)(22)【出願日】2018年1月9日
(65)【公表番号】特表2020-507490(P2020-507490A)
(43)【公表日】2020年3月12日
(86)【国際出願番号】EP2018050468
(87)【国際公開番号】WO2018134087
(87)【国際公開日】20180726
【審査請求日】2019年9月18日
(31)【優先権主張番号】102017100981.7
(32)【優先日】2017年1月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519099818
【氏名又は名称】ドレスラー グループ ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】ドレスラー,アクセル
【審査官】 正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−086155(JP,A)
【文献】 特開2004−262115(JP,A)
【文献】 特開平08−216150(JP,A)
【文献】 特開平11−043554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/00−17/04
B01J 2/00− 2/30
C08J 3/00− 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可能な限り球状の構造を有する粉末状のプラスチック粒子(40)を製造する方法であって、
固定されており、プラスチックからなる粘体から固体の原材料(30)を、前記原材料(30)に対して少なくとも5m/sの速度vで動かされる本体(20)の滑らかな表面(24)に接触させて、前記原材料(30)と前記本体(20)との間の接触エリア(34)において前記原材料(30)を局所的に加熱し、分離させ、粉末状の形態で前記接触エリア(34)から前記本体(20)の移動方向へ投げ出す方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記本体(20)は、シリンダ軸を中心に回転されるシリンダであり、
前記原材料(30)を、前記シリンダのシリンダバレルまたは前記シリンダの円形のシリンダ面と接触させることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
前記本体(20)は、突起および/または溝の形態に構成された非連続部(26)を有することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記本体(20)の移動方向における前記非連続部(26)は、隣接する2つの非連続部(26)間の距離の10%未満、特に5%未満であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法において、
前記速度vは、少なくとも10m/sであることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の方法において、
前記原材料(30)は、少なくとも1Nの力で前記本体(20)に押し当てられることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法において、
前記粉末状のプラスチックの平均粒径は、前記本体(20)の前記表面(24)の最大粗度(Rz)よりも大きいことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の方法において、
前記本体(20)の前記表面(24)は、湾曲しており、
前記接触エリア(34)から、前記粉末状のプラスチックのためのV字状の出口エリアが形成されていることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法において、
前記移動方向において前記本体(20)の後ろに前記プラスチック粒子(40)のための収集容器(38)が配置されていることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の方法において、
前記本体(20)の材料および/または前記速度は、前記滑らかな表面(24)に前記原材料(30)が付着しないように選択されていることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法において、
原材料(30)を包囲するガイドチューブ(44)を備え、
前記ガイドチューブ(44)内において、前記原材料(30)が移動可能にガイドされ、
前記ガイドチューブ(44)は、前記本体(20)の前記表面(24)の直近において前記表面(24)とは接触せずに終了していることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の方法において、
原材料(30)を搬送する押出機(48)を備え、
前記押出機(48)のうち前記原材料(30)が出る出口エリアは、前記本体(20)の付近に位置し、
前記出る原材料(30)は、前記本体(20)に接触していることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記請求項1から12のいずれか1項に記載の方法によって、プラスチック材料を分離することによって可能な限り球状の構造を有する粉末状の物質をプラスチックから製造する装置において、
粘体から固体の原材料(30)が接触エリア(34)において前記表面(24)と接触して位置決めされた状態で、少なくとも5m/sの速度vで動かされる実質的に滑らかな表面(24)を有する本体(20)と、
前記接触エリア(34)の付近に位置する収集容器(38)とを備える装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置において、
ガイドチューブ(44)を備え、ガイドチューブ(44)は、前記接触エリア(34)の直近に自由端(46)を有し、前記ガイドチューブ(44)において、前記原材料(30)は移動可能にガイドされることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項13または14に記載の装置において、
出口エリアを有する押出機(48)を備え、
前記出口エリアは、前記接触エリア(34)の付近に位置し、前記出口エリアから、前記原材料(30)を形成する前記プラスチック材料が出て、
前記原材料(30)は、前記表面(24)と接触している装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックから可能な限り球状の構造を有する粉末状の物質を製造する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
理想とされるのは、粒径が500μm未満、特に100μm未満であり、例えば、30μmから100μmの範囲の粒子である。最大値は、800μmと指定されてもよい。下限は、ナノメートルの範囲である。球状の形状からの逸脱については、可能な限り、粒子の最小断面寸法が同じ粒子の最大断面寸法のサイズの20%以上、好ましくは50%以上である必要がある。
【0003】
このような種類の粉末状の材料は、例えば、3D印刷、パウダーコーティング等多くの目的のために必要とされる。個々の粒子が球状であるほど粉末はより流動性がある。
【0004】
このような種類の粉末状の物質を製造する装置は、DE202016106243U1から知られている。この文献では、原材料の高温の融解物がノズル装置へ供給され、ノズル装置から融解物が現れて小滴に分かれ、小滴が落下する。これらの小滴が低温ガスによって冷却され、底領域へ集められる。
【0005】
同様の装置および対応の方法は、EP945173B1からも知られている。文献US6903065B2は、上記欧州特許明細書EP945173B1に基づくこの方法を記載している。前記文献は、50μmから300μm、特に、100μmよりも大きい典型的な粒径の製造に関する。
【0006】
これらの方法では、原材料として使用される各プラスチックをスプレー可能なように加熱する。しかしながら、この加熱プロセスは、プラスチックが顕著に変化しない温度を超えて継続されてはならない。過熱はプラスチックにおける化学プロセスの開始に繋がり、これは許容できない変化という結果になる。この点に関し、上昇された温度にプラスチックを保持する時間の長さも重要と思われる。
【0007】
プラスチックを溶媒にまず溶解し、得られた溶液を例えば噴霧またはスプレーし、得られた滴を溶媒が実質的に蒸発するまで分離しておくことによって溶媒から粒子を回収することが更に知られている。この方法では、プラスチックを比較的高い温度にする必要は無く、このことは、化学的変化の懸念が無いということを意味するが、溶媒はプラスチックに浸透する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この従来の方法および装置を、所望の丸みを有するプラスチック粒子を製造するために使用することはできない。別の製造方法が必要である。したがって、本発明の目的は、可能な限り球状の形状を有するプラスチック粒子を低コストかつ産業規模で製造できる方法を提供することである。本発明の更なる目的は、対応の装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この方法に関して、上記目的は、可能な限り球状の構造を有する粉末状のプラスチック粒子を製造する方法によって達成される。この方法では、プラスチックからなる原材料、特に粘体から固体の好ましくは固定された原材料を、原材料に対して少なくとも5m/sの速度vで動かされる本体の滑らかな表面に接触させ、原材料は原材料と本体との間の接触エリアにおいて局所的に加熱され、粉末状の形態で接触エリアから本体の移動方向に投げ出される。装置に関して、上記目的は、請求項13の特徴を有する装置によって達成される。
【0010】
本発明は新たな試みを採用する。この方法は、「摩擦噴霧」と呼ばれる。原材料を、本体の比較的高速で動く表面に接触させる。このために原材料を全体的に加熱する必要はない。加熱は生じるが、原材料と本体との間の非常に狭い接触エリアに限られる。このように、その都度少量のプラスチックのみを、その都度非常に短時間、粉末化するために十分な比較的高い温度にする。したがって、何らかの化学変化が生じる可能性のある期間は限られている。プラスチックが化学変化する可能性は、例えばEP945173B1に基づくスプレー方法において同じ温度にプラスチックが加熱される場合よりも相当低い。
【0011】
驚くべきことに、実質的に球状のプラスチック粒子が接触エリアに形成されることが見出された。相対運動は、一方では摩擦熱につながるが、他方ではプラスチック材料の分離と、おそらくは成形にもつながり、つまり、最終的には小さい球状の粒子の具体的な形成および成形につながる。最終的に、相対運動は、接触エリアから球状の粒子が投げ出されるように球状の粒子を加速する効果を有する。噴出動作は実質的に接線方向であり、いずれにせよ、好ましくは、出口V字形の範囲内である。接触エリアから出る球状の粒子は、スプレー方法においてノズルから出る粒子よりも相当低い温度を有する。したがって、球状の粒子は冷却ガスなどによって特に冷却される必要はない。粒子が収集容器まで空中を飛ぶ間に冷却が行われる。その結果、収集容器における粒子は、それらの表面が粘つかなくなって、それゆえ、互いに引っ付かない程度に十分に固体である。
【0012】
この方法は、プラスチックが本体の表面を被覆またはコーティングし得ないように行われることが好ましい。本体の表面は、方法が長期間進行した後でも、開始時と同じように不純物がなく清浄なままである必要がある。この目的を達成するために複数の措置を行うことができる。相対速度を、例えば、10m/sを上回るかまたは20m/sを上回る値に上げて加速力および遠心力を上昇させてもよく、このことは、付着を抑える効果がある。表面は可能な限り滑らかで、かつ、プラスチックがそれに付着しないように構成されていることが好ましい。本体は、プラスチックが本体に付着するリスクが一般的に低減されるように、温度調節されていてもよい。材料は、本体のため、およびその表面のためにも、使用されるプラスチックによる付着に対してできるだけ少ない親和性を提供するように選択されてもよい。さらに、本体の表面に対して原材料が押し付けられる力は、様々であってもよい。好ましくは、少なくとも1Nの力が印加される。比較的高い力のほうが比較的弱い力よりも表面に塗抹が現れる可能性が高い。しかしながら、比較的高い力では、プラスチック粒子の出来高も一般的には比較的高い。したがって、この点において実用的な平均値を見出さなければならない。最終的に、この方法もその都度使用されるプラスチックに依存している。全てのプラスチックを同じように取り扱うことができる、または、取り扱うことが好ましいというわけではなく、むしろ、個別のパラメータ(相対速度、本体の材料、表面の状態、すなわち、粗さなど)は任意のプラスチックで異なる。
【0013】
本体をシリンダ軸を中心として回転するシリンダとして構成し、原材料をシリンダバレルに接触させることが有利であると証明されている。特にシリンダが10cm未満、特に2cm未満の半径を有する場合、湾曲が非常に急峻であるため、何も投げ出されるプラスチック粒子の経路の障害とならない。これは平坦な表面の場合には必ずしもそうではない。この湾曲により、プラスチック粒子を収集容器に収集し、装置の内部に容器を配置することもより簡単である。プラスチック粒子は、接触エリアからV字状の噴射の形態で噴出する。プラスチック粒子は阻止されていない噴射として噴出することが有利である。
【0014】
本体の他の部分は滑らかな表面に、非連続部を設けることが有利である。非連続部は、規則的に配置されていることが好ましい。非連続部は、溝またはリブとして構成されていてもよい。非連続部は移動方向において相対的に短く、例えば1mm未満、好ましくは0.2mm未満である。非連続部は、高さまたは深さも制限されており、つまり、非連続部は、最大で1mmまたは最大で0.2mmの高さおよび/または深さであることが好ましい。2つの隣接する非連続部の間に本体の表面の妨害されていない領域が位置する。この領域は、移動方向における非連続部についての上記寸法よりも少なくとも10倍、特に20倍長いことが好ましい。
【0015】
表面の粗さは、製造されたプラスチック粒子が表面プロファイルの隣接する先端間に全く蓄積できないように決定されていることが好ましい。本体表面の最大粗さRzは、プラスチック粒子の平均粒径よりも少なくとも10倍大きいことが好ましい。最大粗さRzは、少なくとも50倍でさえあることが好ましい。
【0016】
好ましい形態では、原材料はガイドチューブ内に位置し、その内部で移動可能にガイドされる。これにより、例えば原材料よりも柔らかいプラスチック生地、例えば粘性のある材料を使用することも可能になる。
【0017】
プラスチックから可能な限り球状の構造を有する粉末状の物質を製造する装置は、少なくとも5m/sの速度vで動かされる実質的に滑らかな表面を有する本体を備え、装置は、接触エリアにおいて表面と接触する粘体から固体の原材料のための供給装置をさらに備え、装置は、接触エリアの付近に位置決めされた収集容器も備える。供給装置は、原材料を保持する機能を果たすだけではなく、ある程度の力またはある程度の圧力によって原材料を表面へ向けて動かせるようにもし、この場合、原材料の供給も続ける。このように、十分な量の原材料を常に確実に表面に接触させることができる。
【0018】
供給装置は、接触エリアの直近に自由端を有するガイドチューブを備えることが好ましい。原材料は、ガイドチューブ内を移動可能にガイドされる。ガイドチューブにより、それ自体では形状的に安定していない原材料を使用することができるようになる。したがって、支持が不要なほど原材料が固い場合はガイドチューブを省いてもよい。
【0019】
出口エリアを有する押出機が設けられていることが好ましく、出口エリアは接触エリアの付近に在り、出口エリアから原材料を形成するプラスチック材料が放出され、この場合、この原材料は表面に接触している。この文脈では、大きな利点は、未だ温かい原材料を一時的に冷却せずに、または一時的保管などの他のステップを経ずに、すぐに粉末化することができることである。これにより、融解物をインラインで、すなわち合成の直後に粉末に加工することができる。搬送経路が比較的短く、作業を行う際に消費されるエネルギーが比較的少ない。
【0020】
接触エリアにおいて形成されるプラスチック粒子が接触エリア内で可能な限り迅速に加速されることが有利である。100gを上回る、特に1000gを上回る加速が有利である。
【0021】
原材料を温度調節、例えば、冷却または加熱することが有利である可能性がある。特に、これを、供給装置の内部で行ってもよい。原材料の状態が粘性から硬質であると特定されるならば、粘性についての限度は、原材料が表面に接触する前に分離されず、粘性のある原材料が接触エリアにおいて生じる摩擦プロセスの反動力に耐えるために依然として十分に固い場合に満たされる。ガイドチューブにより、反動力は、非常に短い距離に亘って、つまり、ガイドチューブの自由端と表面との間の空隙に生じることが確実となる。ガイドチューブは、反動力の大部分を吸収する。
【0022】
表面の粗度は、粉末製造の成功に決定的である。中央線から上向きおよび下向きに逸脱する算術平均に対応する「Ra値」は、好ましくは10μm未満、特に3μm未満、好ましくは1μm未満である。Ra値は、粒子の平均直径よりも小さいことが好ましく、特に、少なくとも10倍、好ましくは50倍小さい。適切な表面は、ASTMA A 480/48OAに準拠した少なくとも3の、好ましくはそれ以上の、つまり、4、5またはそれ以上の表面である。適切な表面は、さらに、EN 10088−2に準拠した少なくとも1Dの、好ましくは2Dまたはそれ以上の、つまり、例えば2B、2Gなどの面の表記による表面である。
【0023】
用語「固定された」は、原材料が実質的に固定されていることを意味するものと理解される。原材料は動かされ得る。天候逆転の際に原材料を迅速に動かすことができるが、本体は実質的には妨害されないまま残すことができる。機器に関する利点は、原材料は動かされず、全体の相対運動が本体の推進力によって達成される場合に生じる。
【0024】
本発明のさらなる特徴は、従属請求項に記載されている。本発明の実施形態は、以下に詳細に記載されているがこれに限定されない。この記載は図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、粉末を製造するために設計された装置の第1実施形態を概略的に示す図である。
図2図2は、第2実施形態を概略的に示す図である。
図3図3は、第3実施形態を概略的に示す図である。
図4図4は、第3実施形態と同様であるが押出機が直接取り付けられている第4実施形態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の部分では、図1の実施形態を詳しく説明する。
【0027】
他の実施形態については、第1実施形態とは異なる点のみ説明される。
【0028】
図1は、ここではシリンダとして実施されている本体20を示す。本体20は、ここではシリンダ軸である軸22を中心として回転する。回転駆動は、関連技術によれば、例えば約30,000rpmで行われる。シリンダ状の本体の半径は約20mmである。結果として、本体20の表面、この場合はシリンダバレルが約63m/sの速度で動く。
【0029】
この表面24は、複数の非連続部26を除いて滑らかである。これらの非連続部は、軸22に対して平行に延びるノッチすなわち溝として実現されている。非連続部は、例えば0.5mmの深さを有し、シリンダの軸方向の全長に亘って延びている。非連続部は周囲に亘って均等に分散し、例えば、4〜8個の非連続部26がシリンダバレルに設けられている。非連続部は、約0.5mmの幅を有する。
【0030】
本体20は矢印28の方向に動く。これにより、本体20の移動方向が示されている。本体20の表面24の阻害されていない領域は、移動方向における2つの隣接する非連続部26の間に位置している。移動方向におけるその長さは、移動方向において測定される非連続部26の幅よりも相当大きく、この場合、40倍大きい。
【0031】
固体の原材料30からなる棒は、表面24に接触している。棒は、力(矢印32参照)によって表面24に押し当てられ、この表面24対して推し進められる。矢印32は、供給装置も表している。この供給装置は、表面24に対する原材料30の図示された接触が絶えず維持されたままであるように、原材料30の材料を絶えず確実に供給する。
【0032】
この接触は接触エリア34において生じ、接触エリア34のサイズは、実質的には原材料30の断面によって決定され、典型的には断面よりも小さい。図示した実施形態では、原材料30は円形の棒である。しかしながら、原材料30は別の形状、例えば、矩形の断面を有する平坦な形状として実施されていてもよい。このような場合、矩形の長辺は軸22に対して平行に延びる。
【0033】
相当な摩擦熱が接触エリア34において生じる。その結果、原材料30の材料の接触エリア34に近い局所化された非常に小さい部分が融解される。このプロセスにおいて、材料は絶えず分離され、すなわち、原材料30の残りの部分との接続から引き離されて成形される。驚くべきことに、球状の粒子が形成されることが見出された。球状の粒子は非常に迅速に加速されて噴射36として接触エリア34から出る。球状の粒子は、収集容器38まで移動する。図が示すように、プラスチック粒子40は、原材料に対して実質的に接線方向に、かつ、垂直に接触エリア34から離れる。球状の粒子は、接触エリア34からV字状に離れる。原材料30は、力ベクトル(矢印32を参照)が軸22を通るように表面24と並んでいることが好ましい。使用され得る駆動モーターは、関連技術において知られている。
【0034】
図2の実施形態において、本体20は2つのローラー42の周囲を通って延びるベルトによって形成される。同様に、矢印28は移動方向を示す。ローラー42の少なくとも1つが駆動される。原材料30は、点線で示すように、ベルト状の本体20のうち支持されていないエリアへ押し当てられてもよいが、ローラー42の外側においてベルトに接触してもよい(実線を参照)。
【0035】
図3の実施形態では、環状のディスクが本体20として使用されている。ここでも、移動方向は矢印28によって示されている。原材料30は、ガイドチューブ44の内部に位置している。該チューブは固定されている。原材料30は、ガイドチューブ44の内部において移動可能に支持されている。ガイドチューブ44は、表面24の直近に位置する自由端46を有する。結果として、原材料30は、自由端46と表面24との間の可能な限り短い距離のみガイドされない、特に、横方向で支持されない。原材料30は、この短いエリアにおいてのみ反動力自体に耐えることができればよい。それ以外は、反動力はガイドチューブ44によって吸収される。したがって、図3の設計は、あまり硬質ではない原材料30に特に適している。
【0036】
最後に、図4は、本発明の機器と押出機48との間の相互作用を示す。押出機は、ガイドチューブ44を通して、温かいプラスチック材料を原材料30として搬送し、原材料30は回転ディスクと接触し、回転ディスクは図3の実施形態のような本体20を形成している。この実施形態において、原材料30が十分に安定していれば、ガイドチューブ44を省いてもよい。
【0037】
本体20は、例えば、ステンレス鋼などの金属から形成されている。本体20は、セラミックから製造されてもよい。
【0038】
可能な限り球状の構造を有する粉末状のプラスチック粒子を製造する方法において、プラスチックからなる原材料30、特に、粘体から固体の原材料30を、原材料30に対して少なくとも5m/sの速度vで動かされる本体20の滑らかな表面24に接触させる。原材料30は原材料30と本体20との間の接触エリア34において局所的に加熱され、粉末状の形態で接触エリア34から本体20の移動方向に投げ出される。
【0039】
熱撓み温度(HDT)(DIN EN ISO75−1〜3参照)が高いほど、粉末状の形態のスプレー可能性がより良くなる。熱撓み温度は、100℃を上回ることが好ましい。これにより、冷却せずにスプレーすることも可能になる。この効果は、糸が形成せず、所望の量の細かい材料、すなわち本発明により得られる粉末状のプラスチックに対して残る不都合な粗い材料の割合が妥当であることである。
【0040】
熱撓み温度が低いほど、「搬送エリア」とも称される本体の表面に対して接触エリア、つまり「加熱エリア」がより狭くなることが好ましい。
【0041】
熱撓み温度が低いほど、速度vは遅くなるはずである。これにより、搬送できないほど多過ぎる量が接触エリアにおいて融解することが防止される。
【0042】
接触エリアは、方法が実施されている間はプラスチックでコーティングすなわち被覆されず、むしろ、プラスチックからは可能な限り広く開いたままであることが好ましい。例えばローラーの接触エリアのコーティング自体は問題とは考えられない。しかしながら、被覆が過剰になると糸が形成される場合がある。
【0043】
原材料が柔らかく、それ以外は同じパラメータ、突起および/または溝のサイズ(後者は窪みとも称される)である場合、原材料が比較的固い場合よりも粒径分布に対する影響が大きい。ローラーの回転の方向に対する窪みの幅が広いほど、粉末は粗くなる。
【0044】
以下は柔らかい原材料の場合に当てはまる。つまり、本体の滑らかな表面の部分、すなわち突起および/または溝の無い部分が小さいほど、本体、例えばローラーはコーティングされなくなる。
【0045】
滑らかな表面部分と窪みとの比率は、滑らかな表面部分と接触することによって融解される原材料が窪みによって運び去られ、続いて分離され得るように選択しなければならない。
【0046】
熱撓み温度が高いほど、プラスチック粒子がより球状になる。可能な限り、この温度は、110℃を上回り、より好ましくは125℃、特に150℃を上回り、175℃さえ上回っていることが好ましい。
【0047】
繊維質の粉末さえ、鋭い辺および角を回避することによって流動化できる。小片のサイズはあまり重要ではない。このことは、TPUでは実験的に証明され、TPUは、125μmでは篩い分けされ得ず、500μmではほぼ全く篩い分けされなかった。したがって、500μmよりも大きく最大で20,000μm(粗い材料)までの小片サイズが利用可能である。添加物無しで最小の分離傾向しか示さない流動挙動が示される。
【0048】
その他は条件は同一のまま原材料が順次冷却するにつれて、すなわち原材料の温度が下がるにつれて、径分布が粗くなる。これは、比較的高い速度v、特に、ローラーの回転速度によって対処される。速度vを60m/sから160m/sへ上げた場合、試験では、粉末は、3+の比較的細かい、例えば3倍細かい径分布が得られた。比率は、50m/sから250m/sまでの範囲における上昇の場合、柔らかい(熱撓み温度<100℃の)材料についてはN2による冷却においてほぼ線形と思われる。
【0049】
原材料は、好ましくは−50℃未満、特に−100℃未満の温度に、例えば、ほぼ液体窒素の温度に冷却されることが好ましい。冷却されるのは、本体、例えばローラーではなく、原材料であることが好ましい。このように、方法において重要な、可能な限り薄い融解層を形成するプロセスは、融解層が窪みによって運び去られる前に達成される。
【0050】
やすりによる金属の研削、または、研磨ディスクによる金属被加工物の研磨などの純粋に機械的な除去は望ましくない。機械的な除去からの区別は、非常に短い期間(<1秒)の間に材料が溶解および/または融解されることにより定義される。
【0051】
ローラーには、その周方向に分散して複数の原材料が供給され、例えば、それぞれ120℃の角度でずれた3つの原材料が接触する。これは、多くの製品は、本体を構成するローラーから迅速に分離され、気流によりガイドされるため、可能である。
【0052】
原材料は、圧力またはある程度の力によって本体、特にローラーとは逆に動かされることが好ましい。ここでは、印加量は、原材料が大きすぎるエリアにおいて融解し粗い材料という結果にならないように、しかしながら、同時に、ローラーの搬送効果が支持されるために十分に強いように決定されることが好ましい。力は、材料に応じて1000Nから多くとも100,000Nの範囲であることが好ましい。
【0053】
上昇された温度で原材料が形状的に安定しているほど、圧力または力は大きいことが好ましい。その後、「スモーク」のような効果が開始される。これは、典型的には30μm未満の範囲の粒子から成る。比較的柔らかい材料は、ローラーによって「引きずられる」傾向がより高い。
【0054】
上昇された温度、例えば、熱撓み温度>100℃で形状的に安定している原材料は、好ましくは、ローラーの中央に置かれることが好ましい。100℃未満の熱撓み温度での材料は、ウォームスプレー(すなわち、冷却しない)の場合はローラーへ塗布されるか、または、コールドスプレーでは、熱撓み温度>100℃の場合の材料と同様に処理されることが好ましい。ウォームスプレープロセスは、冷却無しの平均スプレーと理解される。
【0055】
50m/s未満の速度vでスプレーすることは可能であるが、経済的に実現可能ではない。なぜなら、融解のための接触エリアが大きすぎてしまい、その結果、利用可能な搬送力が小さすぎるからである。
【0056】
窪みは、球状のセグメントの形状であることが好ましい。窪みはディンプルとも称される。このような種類の窪みは、例えばゴルフボールなどにおいても見られる。ディンプルを有するローラーにより、ディンプルの円形内において絶えず変化する遠心力により窪みが他の幾何学的な構成である場合よりも細かい噴霧が可能になる。
【0057】
この方法が行われている間、ローラーは材料に特有の最終温度となるが、最終温度は常に原材料の融点未満である。通常はローラーの外部冷却を提供する必要は無い。
【0058】
上昇された温度(>100℃)で形状的に安定した原材料では、X10、X50、X90断片の細かさはローラーの周速vが上昇するにつれて、10%〜20%の範囲でわずかしか変化しない。値vが大きくなるにつれて、断片がより細かくなる。粉末/hの量は、圧力が同時に上昇されるならば、速度vと共に上昇する。しかしながら、圧力は線形に上昇する必要は無くむしろ1/2〜1/3の範囲になる。
【0059】
冷却された原材料および>100℃の熱撓み温度を有する原材料の双方は、各ケースにおいて圧力、周速および冷却に関して個々の経済的な設定でX10:25 X50:60 X90:95 X99:115の範囲内で径分布という結果になる。粉末は125μmで篩い分けされている。
【0060】
熱撓み温度が100℃を超えて高いほど、原材料に必要な冷却は少ない。原材料の低い熱撓み温度は、より低い温度へ冷却することによりある程度代替されてもよい。一般的に、原材料が低い熱伝導性を有していると有利である。
【0061】
原材料が多孔性であれば、例えば、少量の空気を含んでいるか、または泡として存在していれば有利である。多孔性等はスプレープロセスを促進する。なぜなら、空気を含むことは接触エリアにおける有効エリア、同時に融解エリアを低減する効果があり、したがって、より小さいプラスチック粒子の生成ための条件を提供するからである。同時に、原材料によりローラーに加えられる圧力または力は、そのより摩擦がより少ないため上昇する可能性がある。
【0062】
100℃を上回る軟化温度を有し、一般にウォームスプレー、すなわち追加の冷却無しのスプレーに適している原材料は、液体ガスが冷却のために使用されるならば、より粗くより繊維質になる。この場合、冷却は、方法において重要な融解フィルムの形成を防止し、むしろ、材料は代わりに摩耗によって除去される。材料が短時間融解されたことが分かるかもしれないが、この段階は、125μmを下回る範囲の球状の粒子の経済的に利用可能な量の形成につながるには短すぎる。
【0063】
多孔質の原材料は、スプレー中の最終製造物のかさ密度pSchを低減しない。(多孔質PEKKは、265のかさ密度となった/固体のPEKKは、同様の粒径分布で270のかさ密度となった)。表1を参照。
【0064】
最大周速v[m/s]
【表1】
【0065】
本発明の方法は、研磨が非常に難しいかまたは不可能である原材料から粉末を製造することを可能に出来るだけではない。本発明の方法は、さらに、可能な限り球状に近い形状で粉末を産出する。これは、方法を区別する特徴である。本発明の方法は、かさ密度およびタップ密度と同様に流動性も上昇する効果を有する(nid=106849980Xを参照)。
【0066】
本発明の方法は、その充填のため研磨はほぼ不可能であるか、または、研磨の際に破壊されるかもしれない、充填された原材料にも適している。充填された原材料は、例えば、GF、CFなどの繊維を含むが、鉄成分またはマグネタイトなどでもよい。これにより、強化材料から、または、電導性材料から例えば焼結されてできた(SLL、SLA)プラスチック部分も同様に処理できるようになる。
【0067】
この方法は、既に以下の原材料すなわち、PP、HDPE、POM、TPU、PEEK、PEKK、PEI、PPSで成功している。これまでにスプレーされた充填物を有する粉末は、すなわちPPS+ガラス繊維、PEKK+カーボン繊維、PEKK+マグネタイトである。
【0068】
本発明に基づいてスプレーされる場合、TPU(これは、従来の研磨の後凝集する傾向があることが知られており、充分な注入挙動が得られる前にまず最大48時間の間保管しなければならない)は、本発明の方法が使用される場合はこの複雑さを示さず、直ぐに流動化可能であり処理され得る。これは、添加物が何かしら追加されていない。よって、最終的に所望の後の添加の場合は、添加物の量を減らすことができ、その結果、向上した融解挙動と最終製品におけるより良好な性質とに繋がる。これは、潤滑油についてと同様にSLL、SLAについても顕著な利点を表す。
【0069】
熱撓み温度が低い(100℃未満)製品では、追加冷却を液体ガス、CO2またはN2により行うことができる。
【0070】
熱撓み温度が高い(100℃を上回る、150℃を上回る)製品では、短い接触時間の間に十分な原材料(材料とも称される)を融解するために、高いエネルギー入力が必要である。したがって、追加の冷却を最小化するように試みる必要がある。
【0071】
本発明の方法において、可能な限り、原材料は、非常に短い時間かつ(比較的低い)融点に近い温度でしか融解されない。そのため、材料の化学特性は、最小にしか影響されない。これは、DSCによりPEKKについて証明された。ポリマー劣化はほぼ起こらない。方法の特性により、粉末は異方性である。結晶性が望ましいならば、続いて調整が必要である。
【0072】
より球状のプラスチック粒子を得てそれによりバルク重量を上昇するために、製造された粉末は、本発明の方法の直後に、その熱を用いて、および、追加の熱を導入することにより、重力室における自由落下において融解され得る。このプロセスにおいて、プラスチック粒子の外殻が融解され、球状の構造形態が向上する。重力室は、その端に引っ付くのを防止するために、円錐状に広がることが好ましい。さらに、この室における空気が加熱される温度は、室が所用曝露時間を増大するために拡張されなくてもよいように、原材料の実際の溶融温度よりも少なくとも25%高いことが好ましい。ここで重要なことは、この効果が細かい割合<5μmを凝集により減らすことを目的としていない限り、プラスチック粒子が巧な空気経路指定により個々に融解し、まとまって引っ付かないように十分な空間を有することである。落下距離を選択後、原材料の熱容量に応じて、得られた粉末状の材料を、液体ガスN2またはCO2によって迅速に冷却して材料が篩い分けされ得るようにすることが推奨される。
【符号の説明】
【0073】
20 本体
22 軸
24 表面
26 不連続部
28 矢印
30 原材料
32 矢印
34 接触エリア
36 噴射
38 収集容器
40 プラスチック粒子、粒子
42 ローラー
44 ガイドチューブ
46 自由端
48 押出機

図1
図2
図3
図4