(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記錯体と前記塩との組み合わせは、四配位コバルト錯体とホスホニウム塩との組み合わせ、六配位二核鉄錯体とアンモニウム塩との組み合わせ、四配位チタン錯体とピロリジニウム塩との組み合わせ、又は六配位ルテニウム錯体とイミダゾリウム塩との組み合わせである
請求項1のガスセンサー。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1 第1実施形態
1.1 ガス検出装置
図1は、第1実施形態のガス検出装置を図示する模式図である。
図1には、第1実施形態のガス検出装置に備えられるガスセンサーの断面が図示される。
【0020】
図1に図示されるガス検出装置1000は、ガスセンサー1020及び発振回路1021を備える。ガス検出装置1000がこれらの構成物以外の構成物を備えてもよい。ガスセンサー1020は、圧電振動子1040及び感応膜1041を備える。ガスセンサー1020がこれらの構成物以外の構成物を備えてもよい。
【0021】
発振回路1021は、圧電振動子1040に電気的に接続され、圧電振動子1040の固有振動数に応じた発振周波数において発振する。
【0022】
感応膜1041は、圧電振動子1040に備えられる振動部1060に付着し、ガスに含まれる特定の被検出成分を選択的に吸着する。膜状の感応体である感応膜1041が膜状でない感応体に置き換えられてもよい。
【0023】
ガスセンサー1020は、マイクロバランスセンサーとして機能する。ガスセンサー1020が特定の被検出成分を含むガスに曝された場合は、感応膜1041が特定の被検出成分を含むガスに曝され、感応膜1041がガスに含まれる特定の被検出成分を選択的に吸着する。これにより、圧電振動子1040の固有振動数が低下し、発振回路1021の発振周波数が低下する。発振周波数の低下量は、感応膜1041に吸着した被検出成分の質量に比例する。このため、発振周波数の低下量からは、感応膜1041に吸着した被検出成分の質量が特定され、ガスに含まれる被検出成分の濃度が特定される。
【0024】
1.2 感応膜
図2及び
図3は、第1実施形態のガス検出装置に備えられる感応膜を図示する模式図である。
【0025】
図2及び
図3に図示される感応膜1250は、第1実施形態の感応膜1041として使用され、被担持体1260、担体1261及びリンカー部1262を備える。感応膜1250がこれらの構成物以外の構成物を備えてもよい。
【0026】
被担持体1260は、リンカー部1262により担体1261の表面1280に結合され、担体1261の表面1280に担持される。
【0027】
被担持体1260は、錯体1300及び塩1301を含む。被担持体1260がこれらの成分以外の成分を含んでもよい。錯体1300は、ガスに含まれる被検出成分1310を選択的に捕捉する金属錯体である。塩1301は、イオン液体の成分である。このため、塩1301は、後述する化学構造を介して担体1261の表面1280に結合されていない状態においては、イオン液体となる。錯体1300は、塩1301に分散される。
【0028】
リンカー部1262は、
図3に図示されるように、化学構造1320を備える。化学構造1320は、互いに異なる部分1340及び1341を備え、中間部1342をさらに備える。部分1340は、塩1301と共有結合する。部分1341は、担体1261の表面1280と共有結合する。部分1340と部分1341とは、中間部1342を介して互いに結合される。これにより、塩1301は、化学構造1320を介して担体1261の表面1280に結合される。中間部1342が省略され、部分1340と部分1341とが直接的に結合されてもよい。
【0029】
中間部1342は、主分子鎖のみからなる直鎖状の分子鎖であってもよいし、主分子鎖及び当該主分子鎖から分岐する副分子鎖からなる非直鎖状の分子鎖であってもよい。主分子鎖を構成する原子の数は、望ましくは20個以下である。中間部1342は、炭素(C)原子、酸素(O)原子、硫黄(S)原子及び窒素(N)原子から選択される少なくとも1種類の原子を含む。
【0030】
被担持体1260及びリンカー部1262は、担体1261の表面1280に沿って広がる。
【0031】
感応膜1250においては、錯体1300が塩1301に分散されることにより、錯体1300と塩1301との間にイオン結合が形成され、錯体1300が凝集しにくくなり、被検出成分1310が錯体1300に吸着しやすくなる。このため、ガスセンサー1020が微量の被検出成分1310を検出することが容易になる。例えば、ガスセンサー1020がppbオーダーの濃度を有する被検出成分1310を検出することが容易になる。
【0032】
また、感応膜1250においては、化学構造1320を介して担体1261の表面1280に結合された塩1301に錯体1300が分散されることにより、錯体1300が塩1301を介して担体1261の表面1280に間接的に固定される。このように錯体1300が担体1261の表面1280に間接的に固定された場合は、錯体1300が担体1261の表面1280に直接的に結合された場合と比較して、錯体1300の構造、価数等が変化して錯体1300が被検出成分1310を選択的に捕捉する機能を失うことが起こりにくくなる。
【0033】
また、感応膜1250においては、塩1301が化学構造1320を介して担体1261の表面1280に結合され、錯体1300が塩1301に分散されることにより、塩1301が担体1261の表面1280に強固に結合され、錯体1300及び塩1301が担体1261の表面1280に安定して固定される。
【0034】
1.3 錯体と塩との組み合わせ
被検出成分1310が一酸化窒素(NO)である場合は、錯体1300と塩1301との組み合わせは、一酸化窒素を選択的に捕捉する高選択応答性錯体と当該高選択応答性錯体を分散させ固定する塩との組み合わせであり、望ましくは四配位コバルト(Co)錯体とホスホニウム塩との組み合わせであり、さらに望ましくは化学式(101)で表される四配位コバルト錯体と化学式(102)で表されるホスホニウム塩との組み合わせである。化学式(102)中の「TfO
−」は、トリフラートアニオンである。
【0037】
被検出成分1310が酸素(O
2)である場合は、錯体1300と塩1301との組み合わせは、酸素を選択的に捕捉する高選択応答性錯体と当該高選択応答性錯体を分散させ固定する塩との組み合わせであり、望ましくは六配位二核鉄(Fe−Fe)錯体とアンモニウム塩との組み合わせであり、さらに望ましくは化学式(103)で表される六配位二核鉄錯体と化学式(104)で表されるアンモニウム塩との組み合わせである。化学式(103)及び(104)中の「TfO
−」は、トリフラートアニオンである。
【0040】
被検出成分1310が窒素(N
2)である場合は、錯体1300と塩1301との組み合わせは、窒素を選択的に捕捉する高選択応答性錯体と当該高選択応答性錯体を分散させ固定する塩との組み合わせであり、望ましくは四配位チタン(Ti)錯体とピロリジニウム塩との組み合わせであり、さらに望ましくはCp
2TiCl
2と1−ブチル−1−メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートとの組み合わせである。「Cp」は、シクロペンタジエニル基である。
【0041】
被検出成分1310がアンモニア(NH
3)である場合は、錯体1300と塩1301との組み合わせは、アンモニアを選択的に捕捉する高選択応答性錯体と当該高選択応答性錯体を分散させ固定する塩との組み合わせであり、望ましくは六配位ルテニウム(Ru)錯体とイミダゾリウム塩との組み合わせであり、さらに望ましくはトリス(2,2′−ビピリジル)ルテニウム(II)クロリドと1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートとの組み合わせである。
【0042】
1.4 化学構造
図4は、第1実施形態のガス検出装置に備えられる感応膜の前駆体を図示する模式図である。
【0043】
図4に図示される2価性のカップリング剤1360は、架橋剤として使用され、
図3に図示される化学構造1320の前駆体となる。
【0044】
図3に図示される部分1340は、
図4に図示される2価性のカップリング剤1360の官能基Xと
図4に図示される塩1301の官能基Yとを互いに反応させることにより生成される反応生成物が備える結合である。2価性のカップリング剤1360(R
1−X)、塩1301(Y−R
2)、反応生成物R
1−B2−R
2及び反応の組み合わせの例を下記の表に示す。
【0046】
図3に図示される部分1341は、
図4に図示される2価性のカップリング剤1360の官能基Zと
図4に図示される担体1261の表面1280に露出する表面官能基OHとを互いに反応させることにより形成される結合である。官能基Zが水酸基であり表面官能基OHが水酸基である場合は、脱水縮合により官能基Zと表面官能基OHとを互いに反応させることによりエーテル結合が形成される。官能基Zが酸ハライド基、カルボキシ基、エステル基又はスクシニミジルエステル基であり表面官能基OHが水酸基である場合は、縮合により官能基Zと表面官能基OHとを互いに反応させることによりエステル結合が形成される。官能基Zがアルコキシシラン基であり表面官能基OHが水酸基である場合は、縮合により官能基Zと表面官能基OHとを互いに反応させることによりシロキサン結合が形成される。
【0047】
2価性のカップリング剤1360が2価性でないカップリング剤に置き換えられてもよい。例えば、2価性のカップリング剤1360がチタネート系カップリング剤に置き換えられてもよい。2価性のカップリング剤1360がチタネート系カップリング剤に置き換えられた場合は、第1の部分及び第2の部分を有し第1の部分が塩1301に対する親和性を有し第2の部分が表面と共有結合する化学構造を備えるリンカー部が形成される。
【0048】
1.5 担体
担体1261は、望ましくは酸化物からなり、さらに望ましくは金属酸化物からなり、特に望ましくは酸化スズ、酸化チタン、酸化インジウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化インジウムスズ又は酸化亜鉛スズからなる。これにより、容易に共有結合を形成する水酸基が担体1261の表面1280に露出し、化学構造1320の部分1341を担体1261の表面1280に共有結合させることが容易になる。ただし、水酸基以外の表面官能基と反応する官能基を有する2価性のカップリング剤1360が使用される場合は、担体1261が酸化物以外の物質からなることも許される。
【0049】
担体1261は、望ましくは多孔体であり、さらに望ましくはセラミック多孔体である。担体1261が多孔体である場合は、担体1261が緻密体である場合と比較して、単位かさ体積当たりの表面積が大きくなり、担体1261の表面1280が担持できる被担持体1260が増加し、錯体1300が励振電極膜1081の上に高密度で分散して担持され、ガスセンサー1020が微量の被検出成分1310を検出することが容易になる。ただし、担体1261が緻密体である場合も、ガスセンサー1020が微量の被検出成分1310を検出することは可能である。
【0050】
多孔体は、三次元網目構造、ハニカム構造等を有する基体であり、望ましくは10%以上の気孔率を有し、さらに望ましくは30%以上70%以下の気孔率を有する。
図2に図示される、多孔体に形成される孔1380は、リンカー部1262を介して被担持体1260を孔1380の内面1400に担持させることが可能である大きさを有し、望ましくは0.01μm以上1mm以下の直径を有し、さらに望ましくは0.05μm以上10μm以下の直径を有する。
【0051】
1.6 圧電振動子
圧電振動子1040は、
図1に図示されるように、圧電膜1080、励振電極膜1081、励振電極膜1082、給電電極膜1083、給電電極膜1084、支持板1085及び平坦化層1086を備える。圧電振動子1040がこれらの構成物以外の構成物を備えてもよい。
【0052】
励振電極膜1081及び給電電極膜1083は、圧電膜1080の主面1100の上に配置され、圧電膜1080の主面1100に直接的に接触する。励振電極膜1082、及び給電電極膜1084の一部は、圧電膜1080の主面1101の上に配置され、圧電膜1080の主面1101に直接的に接触する。圧電膜1080の主面1100及び1101は、互いに反対の側にある。
【0053】
励振電極膜1082は、圧電膜1080の厚さ方向から見て励振電極膜1081と重なり、圧電膜1080を挟んで励振電極膜1081と対向する。
【0054】
給電電極膜1083は、励振電極膜1081から連続し、励振電極膜1081に電気的に接続される。給電電極膜1084は、励振電極膜1082から連続し、励振電極膜1082に電気的に接続される。
【0055】
給電電極膜1083及び1084は、発振回路1021に電気的に接続される。
【0056】
圧電膜1080、励振電極膜1081、励振電極膜1082、給電電極膜1083及び給電電極膜1084からなる複合膜1120は、支持板1085と対向し、平坦化層1086により平坦化されてから支持板1085に直接接合され、支持板1085に支持される。板状の支持体である支持板1085が板状でない支持体に置き換えられてもよい。例えば、板状の支持体である支持板1085がブロック状の支持体に置き換えられてもよい。このような、複合膜1120の一方の主面1140の全面が支持板1085に対向し複合膜1120が支持板1085に支持される構造によれば、圧電膜1080を薄くすることが容易になる。
【0057】
平坦化層1086は、複合膜1120の被接合面1140を覆う。平坦化層1086の平坦な主面1160は、複合膜1120とは反対の側にあり、支持板1085に直接接合される。これにより、複合膜1120が直接接合に適した平坦な主面を有しない場合においても、樹脂接合層を介しない直接接合が可能になる。
【0058】
圧電振動子1040は、エネルギー閉じ込め型である。給電電極膜1083と給電電極膜1084との間に励振信号が印加された場合は、励振電極膜1081と励振電極膜1082との間に励振信号が印加され、励振電極膜1081と励振電極膜1082とに挟まれ圧電膜1080の一部を占める電界印加部1180に励振信号に応じた励振電界が印加され、電界印加部1180が励振電界に応じて変形する。これにより、主に電界印加部1180、励振電極膜1081、励振電極膜1082、及び平坦化層1086の一部を占める追従振動部1200からなる振動部1060に励振信号に応じた厚み滑り振動が励振される。
【0059】
圧電振動子1040がエネルギー閉じ込め型でなくてもよい。この場合は、励振電極膜1081と励振電極膜1082との間に励振信号が印加されたときに電界印加部1180以外も変形し、振動部1060より大きな振動部が形成される。
【0060】
給電電極膜1083及び1084が省略され、励振信号が励振電極膜1081と励振電極膜1082との間に直接的に印加されてもよい。
【0061】
厚み滑り振動以外の振動が励振されてもよい。例えば、厚み縦振動又は厚みねじれ振動が励振されてもよい。
【0062】
支持板1085には、有底孔1220が形成される。有底孔1220は、追従振動部1200を挟んで励振電極膜1082に対向する。これにより、振動部1060が支持板1085から離され、厚み滑り振動の励振が支持板1085により阻害されにくくなる。
【0063】
感応膜1041は、励振電極膜1081の上に配置され、励振電極膜1081に直接的に接触する。このため、感応膜1041は、振動部1060に直接的に接触する。
【0064】
図5は、第1実施形態のガス検出装置における励振電極膜、温度補償層及び平坦面提供層の積層構造の断面を図示する模式図である。
【0065】
図5に図示される平坦化層1086は、温度補償層1240及び平坦面提供層1241を備える。温度補償層1240は、圧電膜1080の主面1101の上に配置され、複合膜1120の被接合面1140を覆い、圧電膜1080の弾性率の温度係数とは正負反対の弾性率の温度係数を有する。温度補償層1240は、望ましくは酸化物からなり、さらに望ましくは酸化ケイ素(SiO
2)からなる。温度補償層1240が省略されてもよい。平坦面提供層1241は、平坦化層1086の平坦な主面1160を提供する。平坦面提供層1241は、望ましくは酸化物からなり、さらに望ましくは酸化タンタル(Ta
2O
5)からなる。
【0066】
図6は、第1実施形態のガス検出装置における励振電極膜、温度補償層及び平坦面提供層の積層構造を置き換えることができる温度補償層、励振電極膜及び平坦面提供層の積層構造の断面を図示する模式図である。
【0067】
図5に図示される、励振電極膜1082、温度補償層1240及び平坦面提供層1241の積層構造が、
図6に図示される、温度補償層1240、励振電極膜1082及び平坦面提供層1241の積層構造に置き換えられてもよい。
図5に図示される積層構造においては、温度補償層1240が励振電極膜1082と平坦面提供層1241との間に配置されて励振電極膜1082を介して圧電膜1082に接触する。これに対して、
図6に図示される積層構造においては、温度補償層1240が圧電膜1080と励振電極膜1082との間に配置されて圧電膜1080に直接的に接触する。
【0068】
図5に図示される積層構造によれば、圧電膜1080、励振電極膜1081、励振電極膜1082、給電電極膜1083及び給電電極膜1084からなる複合膜1120の被接合面1140が、温度補償層1240及び平坦面提供層1241からなる平坦化層1086により覆われ、平坦化層1086の平坦な主面1160が支持板1085に直接接合される。これに対して、
図6に図示される積層構造によれば、圧電膜1080、温度補償層1240、励振電極膜1081、励振電極膜1082、給電電極膜1083及び給電電極膜1084からなる複合膜1120aの被接合面1140aが、平坦面提供層1241からなる平坦化層1086aにより覆われ、平坦化層1086aの平坦な主面1160aが支持板1085に直接接合される。
【0069】
図7及び
図8の各々は、第1実施形態のガス検出装置に追加されてもよい温度補償層の断面を図示する模式図である。
【0070】
図7に図示される温度補償層1245は、圧電膜1080の主面1100の上に配置され、圧電膜1080と励振電極膜1081及び給電電極膜1083との間にあり、圧電膜1080の弾性率の温度係数とは正負反対の弾性率の温度係数を有する。
【0071】
図8に図示される温度補償層1246は、励振電極膜1081及び給電電極膜1083に重ねて圧電膜1080の主面1100の上に配置され、励振電極膜1081と感応膜1041との間にあり、圧電膜1080の弾性率の温度係数とは正負反対の弾性率の温度係数を有する。
【0072】
膜状の圧電体である圧電膜1080が板状の圧電体である圧電板に置き換えられてもよく、膜状の複合体である複合膜1120が板状の複合体である複合板に置き換えられてもよい。
【0073】
1.7 圧電膜及び支持板の材質
圧電膜1080は、望ましくは水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、窒化アルミニウム又はチタン酸ジルコン酸鉛からなる。これにより、ガスセンサー1020を高温において動作させることが容易になる。例えば、ガスセンサー1020を100℃以上において動作させることが容易になり、150℃以上において動作させることも可能になる。圧電膜1080がこれらの材料以外の材料からなることも許される。
【0074】
支持板1085は、望ましくは水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、窒化アルミニウム又はチタン酸ジルコン酸鉛からなり、さらに望ましくは圧電膜1080を構成する材料と同じ材料からなる。支持板1085がこれらの材料以外の材料からなることも許される。
【0075】
1.8 圧電振動子の共振周波数
圧電膜1080又はそれを置き換える圧電板が水晶からなる場合は、切断方位は望ましくはAT又はSCである。
【0076】
切断方位がATである場合は、厚み滑り振動が励振される。この場合は、圧電振動子1040の共振周波数Fは、圧電膜1080又はそれを置き換える圧電板の厚さtを用いて数式(1)で表される。
【0078】
切断方位がSCである場合は、厚み滑り振動(C−mode)が励振され、その近傍の厚みねじれ振動(B−mode)及び厚み縦振動(A−mode)も励振される。厚み滑り振動が励振される場合は、共振周波数Fは、圧電膜1080又はそれを置き換える圧電板の厚さtを用いて数式(2)で表される。
【0080】
図9は、水晶における各切断方位の周波数温度特性を示すグラフである。
【0081】
図9からは、切断方位がATである場合は25℃付近において周波数温度係数が0になり、切断方位がSCである場合は80℃付近において周波数温度係数が0になることが理解される。したがって、25℃付近における温度特性が重視される場合はATカットが選択され、80℃付近における温度特性が重視される場合はSCカットが選択される。これにより、良好な温度安定性を有するガスセンサー1020が得られる。
【0082】
圧電膜1080がタンタル酸リチウム又は窒化アルミニウムからなる場合は、厚み縦振動又は厚み滑り振動が励振される。この場合は、圧電薄膜共振子(FBAR)構造を利用することによりバルク波共振子が実現され、圧電膜1080又はそれを置き換える圧電板の厚さt及び音速Vを用いて圧電振動子1040の共振周波数Fが数式(3)で表される。
【0084】
音速Vは、圧電膜1080又はそれを置き換える圧電板がタンタル酸リチウムからなる場合は約4000m/sであり、圧電膜1080又はそれを置き換える圧電板が窒化アルミニウムからなる場合は、約11300m/sである。
【0085】
1.9 圧電膜又はそれを置き換える圧電板の厚さ
圧電膜1080又はそれを置き換える圧電板は、望ましくは1μm以上150μm以下の厚さを有する。これにより、微量の被検出成分の感応膜1041への吸着による発振回路1021の発振周波数の低下量を測定することが容易になり、ガスセンサー1020が微量の被検出成分を検出することが容易になる。例えば、ガスセンサー1020がppbオーダーの濃度を有する被検出成分を検出することが容易になり、従来品の100倍から20000倍の測定感度を有するガスセンサー1020を実現することが容易になる。ただし、圧電膜1080又はそれを置き換える圧電板がこの範囲外の厚さを有する場合も、ガスセンサー1020が微量の被検出成分を検出することは可能である。
【0086】
複合膜1120又はそれを置き換える複合板が支持板1085に支持される構造によれば、圧電膜1080又はそれを置き換える圧電板が1μm以上30μm以下の厚さを有することが許容される。
【0087】
ここで、圧電膜1080又はそれを置き換える圧電板の望ましい厚さTQを決定する方法について説明する。
【0088】
付着物の圧電振動子1040への付着による圧電振動子1040の共振周波数Fの低下量ΔFは、付着物の質量Δm、励振電極膜1081及び1082の面積A、圧電膜1080のせん断応力μ
q、並びに圧電膜1080の密度ρ
qを用いて数式(4)で表される。
【0090】
数式(4)は、数式(5)及び(6)のように書き換えることができる。
【0093】
一方、適切に測定できる低下量ΔFには、下限及び上限が存在する。典型的には、下限は約100Hzであり、上限は下限の約20000倍である。
【0094】
数式(5)及び(6)からは、適切に測定できる低下量ΔFの下限及び上限に係数Kを乗じることにより、適切に特定できる質量Δmの下限及び上限がそれぞれ得られることがわかる。
【0095】
そして、感応膜1041の質量が、適切に特定できる質量Δmの下限より重くなり、適切に特定できる質量Δmの上限より軽くなり、感応膜1041の質量及び被検出成分の最大吸着質量の合計が適切に特定できる質量Δmの上限より軽くなる係数Kを与える厚さTQが決定される。
【0096】
2mmの直径を有する励振電極膜1081及び1082を用いて10ppbの濃度を有する一酸化窒素を検出するためには、数10pgの付着物が検出される必要がある。これは、圧電膜1080がATカット水晶からなる場合は、K=1.27pg/Hzを与えるTQ=14μmにより可能になる。このとき、共振周波数Fは約120MHzとなる。
【0097】
1.10 圧電振動子の作製方法
図10は、第1実施形態のガス検出装置に備えられる圧電振動子の作製方法を示すフローチャートである。
【0098】
図10に図示される工程S101においては、後に圧電膜1080の主面1101となる圧電板の一方の主面の上に励振電極膜1082及び給電電極膜1084が形成される。
【0099】
続く工程S102においては、励振電極膜1082及び給電電極膜1084に重ねて、圧電板の一方の主面の上に平坦化層1086がさらに形成される。
【0100】
図10に図示される工程S103においては、励振電極膜1082、給電電極膜1084及び平坦化層1086の形成とは別に、支持板1085が作製される。
【0101】
図10に図示される工程S104においては、励振電極膜1082、給電電極膜1084及び平坦化層1086の形成並びに支持板1085の作製の後に、平坦化層1086の平坦な主面1160と支持板1085の平坦な主面1420とが互いに直接接合される。直接接合は、常温接合により行われてもよいし、拡散接合により行われてもよい。
【0102】
続く工程S105においては、圧電板を圧電膜1080になるまで薄くする減厚加工が行われる。
【0103】
続く工程S106においては、圧電膜1080の主面1100に励振電極膜1081及び給電電極膜1083が形成される。これにより、
図1に図示される圧電振動子1040が完成する。
【0104】
圧電振動子1040の作製方法が変更されてもよい。
【0105】
1.11 感応膜の作製方法
図11は、第1実施形態のガス検出装置に備えられる感応膜の作製方法を示すフローチャートである。
【0106】
図11に図示される工程S111においては、担体1261が作製される。
【0107】
続く工程S112においては、2価性のカップリング剤1360を含む溶液が担体1261の表面1280に接触させられる。これにより、2価性のカップリング剤1360が備える官能基Zと担体1261の表面1280に露出する表面官能基OHとが互いに反応し、2価性のカップリング剤1360に由来する化学構造1320が担体1261の表面1280に結合される。
【0108】
続く工程S113においては、イオン液体を含む溶液が担体1261の表面1280に接触させられる。これにより、2価性のカップリング剤1360が備える官能基Xとイオン液体の成分である塩1301が備える官能基Yとが互いに反応し、塩1301が2価性のカップリング剤1360に由来する化学構造1320を介して担体1261の表面1280に結合される。2価性のカップリング剤1360がチタネート系のカップリング剤に置き換えられた場合は、2価性のカップリング剤1360が備える官能基Xと塩1301が備える官能基Yとが互いに反応することに代えて、チタネート系カップリング剤の塩1301に対する親和性を有する部分が塩1301と親和する。
【0109】
続く工程S114においては、錯体1300を含む溶液が担体1261の表面1280に接触させられる。これにより、錯体1300が塩1301に固定され、
図2及び
図3に図示される感応膜1250が完成する。
【0110】
担体1261の表面1280への溶液の接触は、担体1261を溶液に浸漬することにより行われてもよいし、担体1261に溶液を塗布することにより行われてもよい。
【0111】
圧電振動子1040に付着する感応膜1041は、感応膜1041を作製した後に作製した感応膜1041を圧電振動子1040に付着させることにより得られてもよいし、圧電振動子1040に担体1261を付着させた後に工程S112,S112及びS113を実行することにより得られてもよい。
【0112】
感応膜1041の作製方法が変更されてもよい。
【0113】
1.12 リフレッシュ動作を可能にするための機構
図1に図示されるガス検出装置1000は、印加回路1440をさらに備える。ガスセンサー1020は、対向電極1460をさらに備える。担体1261は、半導電性を有する。ガスセンサー1020が使い捨てでありリフレッシュ動作が不要である場合は、印加回路1440及び対向電極1460が省略されてもよく、担体1261が絶縁性を有してもよい。
【0114】
対向電極1460は、感応膜1041を挟んで励振電極膜1081と対向する。
【0115】
印加回路1440は、励振電極膜1081が負極となり対向電極1460が正極となるように励振電極膜1081と対向電極1460との間に電圧を印加する。
【0116】
錯体1300が選択的に補足する一酸化窒素等の被検出成分は、電子供与性を有し、錯体1300に補足された際に、担体1261に向かって電子を放出し、担体1261から電子を引き抜く。このため、印加回路1440が励振電極膜1081と対向電極1460との間に電圧を印加し錯体1300に電子が供給された場合は、錯体1300から被検出成分が脱離しやすくなり、感応膜1041から被検出成分が脱離しやすくなる。
【0117】
1.13 ガス検出方法
図12は、第1実施形態のガス検出方法を示すフローチャートである。
【0118】
図12に図示される工程S121においては、ガス検出装置1000が準備される。
【0119】
続く工程S122においては、ガスセンサー1020がガスに曝され、発振回路1021の発振周波数の低下量が測定される。
【0120】
続く工程S123においては、発振回路1021の発振周波数の低下量からガスに含まれる被検出成分の濃度が取得される。
【0121】
続く工程S124においては、印加回路1440に励振電極膜1081と対向電極14601との間に電圧を印加させる。これにより、感応膜1041に吸着された被検出成分を感応膜1041から脱離させるリフレッシュ動作が実行される。工程S124は、工程S122の後に実行されればよく、工程S123の前に実行されてもよい。
【0122】
1.14 試作例1
試作例1は、
図1に図示されるガス検出装置1000からリフレッシュ動作を可能にするための機構を省略したガス検出装置の試作例である。
【0123】
(a)圧電振動子の作製
(a1)励振電極及び給電電極の形成(工程S101)
後に圧電膜1080の主面1101となる40度YカットX伝搬のタンタル酸リチウムからなる圧電板の一方の主面の上に、100nmの厚さを有するチタン(Ti)膜、100nmの厚さを有する白金(Pt)膜及び300nmの厚さを有する金(Au)膜をスパッタリングにより順次に形成し、2.3mmの直径を有する励振電極膜1082及び給電電極膜1084を得た。
【0124】
(a2)平坦化層の形成(工程S102)
続いて、励振電極膜1082及び給電電極膜1084に重ねて、圧電板の一方の主面の上に、1μmの厚さを有する酸化ケイ素(SiO
2)膜及び0.2μmの厚さを有する酸化タンタル(Ta
2O
5)膜をスパッタリングにより順次に形成し、平坦化層1086を得た。
【0125】
続いて、平坦化層1086の一方の主面すなわち酸化タンタル膜の一方の主面に対して化学メカニカル研磨(CMP)を行い、0.2nmの表面粗さRaを有する平坦な主面1160を有する平坦化層1086を得た。
【0126】
(a3)支持板の作製(工程S103)
励振電極1082、給電電極1084及び平坦化層1086の形成とは別に、40度YカットX伝搬のタンタル酸リチウムからなる支持板の一方の主面の側に、3mmの直径及び100μmの深さを有する有底孔1220をレーザー加工により形成した。
【0127】
続いて、支持板の一方の主面に対してCMPを行い、0.2nmの表面粗さRaを有する平坦な主面1420を有する支持板1085を得た。
【0128】
(a4)直接接合(工程S104)
励振電極1082、給電電極1084及び平坦化層1086の形成並びに支持板1085の作製の後に、平坦化層1086の平坦な主面1160と支持板1085の平坦な主面1420とを表面活性化法による常温接合により互いに直接接合した。直接接合にあたっては、有底孔1220が平坦化層1086を挟んで励振電極1082と対向するように位置合わせを行った。
【0129】
(a5)減厚加工(工程S105)
続いて、圧電板の他方の主面に対してグラインダー研削、ラップ研磨及びCMPを順次行い、5μmの厚さを有する圧電膜1080を得た。
【0130】
続いて、圧電膜1080の主面1100の上に100nmの厚さを有するチタン(Ti)膜、100nmの厚さを有する白金(Pt)膜及び300nmの厚さを有する金(Au)膜をスパッタリングにより順次に形成し、2.3mmの直径を有する励振電極膜1081及び給電電極膜1083を得た。
【0131】
(b)感応膜の作製
(b1)担体の作製(工程S111)
0.3μmの平均粒径を有する酸化チタン粉末及び適量の分散剤を水に添加し、超音波処理により酸化チタン粉末を水に分散させ、5nmから10nmの一次粒子径を有する酸化チタンゾルを水にさらに添加し、酸化チタンゾルを水に混合し、成膜用のスラリーを調製した。
【0132】
続いて、成膜用のスラリーを高速回転する基板の上に滴下するスピンコートプロセスを実行し、スピンコート膜を得た。
【0133】
続いて、スピンコート膜を乾燥させた後に200℃から400℃で熱処理し、0.1μmの平均細孔径及び1μmの厚さを有する担体1261を得た。担体1261は、酸化チタンからなる多孔体である。
【0134】
続いて、3容積部の30%濃硫酸及び1容積部の過酸化水素水を互いに混合することによりピラニア溶液を調製し、担体1261を2時間に渡ってピラニア溶液に浸漬した。
【0135】
続いて、担体1261を水及びメタノールで順次に洗浄し、担体1261に窒素ガスを吹き付けることにより担体1261を速やかに乾燥した。
【0136】
(b2)2価性のカップリング剤を含む溶液の接触(工程S112)
続いて、担体1261を3時間に渡ってシランカップリング剤を含む70℃のトルエン溶液に浸漬した。シランカップリング剤には、信越化学工業株式会社製の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403)を用いた。
【0137】
続いて、担体1261をクロロホルム、水及びメタノールで順次に洗浄し、担体1261に窒素ガスを吹き付けることにより担体1261を速やかに乾燥した。
【0138】
(b3)イオン液体を含む溶液の接触(工程S113)
続いて、担体1261を2時間に渡ってイオン液体を含むエタノール溶液に浸漬した。イオン液体には、ビス[12−(トリヘキシルホスホニウム)ドデシル]ジスルファンビス(トリフルオロメタンスルホネート)のジスルフィド基をアミノ基に置換した置換体を用いた。イオン液体は、Chemistry Letters, Vol.45, No.4, 2016, p.436-438に記載されているものである。
【0139】
続いて、担体1261をエタノール及びクロロホルムで順次に洗浄して余剰のイオン液体を除去した。
【0140】
これにより、担体1261の表面1280にイオン液体の成分である塩1301が固定された。
【0141】
(b4)錯体を含む溶液の接触(工程S114)
続いて、担体1261を1週間に渡ってコバルト錯体を含む水溶液に浸漬した。
【0142】
続いて、担体1261をジメチルホルムアミド、アセトニトリル及び純水で順次に洗浄して余剰のコバルト錯体を除去した。
【0143】
試作例1において試作される試作品の一酸化窒素の検出性能について数値計算を行った。
【0144】
試作例1において試作される試作品においては、音速Vが4000m/sであり、厚さtが5μmであることから、感応膜1041が付着していない状態における圧電振動子1040の共振周波数Fが400MHzであることが数式(3)からわかる。
【0145】
また、面積Aが1.67×10
−5m
2であり、せん断応力μ
qが4×10
10kg/msであり、密度ρ
qが7490kg/m
3であり、感応膜1041が付着していない状態における圧電振動子1040の共振周波数Fが400MHzであることから、係数Kが1pg/Hzであることが数式(6)からわかる。
【0146】
一方、1m
3の体積を占める空間において10ppbから200ppbの濃度を有する一酸化窒素が発生する場合は、10ngから200ngの一酸化窒素が当該空間に存在する。
【0147】
また、ガスの流速が1m/分であり発生した一酸化窒素が当該空間の出口に到達するのに要する時間が1分であると仮定した場合は、2.3mmの直径を有する励振電極膜1081の上に付着する一酸化窒素の質量は、当該空間に存在する一酸化窒素の質量の25万分の1=(2.3mm/1000mm)×(2.3mm/1000mm)である。このため、当該空間において10ppbから200ppbの濃度を有する一酸化窒素が発生し10ngから200ngの一酸化窒素が当該空間に存在することは、感応膜1041が40pgから800pgの一酸化窒素を吸着することに相当する。
【0148】
また、特定の質量の一酸化窒素の吸着に必要な感応膜1041の質量は、当該特定の質量の25倍である。このため、当該空間において10ppbから200ppbの濃度を有する一酸化窒素が発生し感応膜1041が40pgから800pgの一酸化窒素を吸着しなければならない場合は、必要な感応膜1041の質量は800pgの25倍の20ngである。したがって、当該空間において10ppbから200ppbの濃度を有する一酸化窒素が発生する場合は、必要な感応膜1041の質量及び吸着する一酸化窒素の質量の合計は、20.04ngから20.8ngである。
【0149】
これらのことを総合すると、試作例1において試作される試作品においては、当該空間において10ppbから200ppbの濃度を有する一酸化窒素が発生した場合に、必要な感応膜1041の質量及び吸着する一酸化窒素の質量の合計が20.04ngから20.8ngとなり、低下量ΔFが20040Hzから20800Hzとなる。
【0150】
また、圧電振動子1040の共振周波数Fの温度係数は−20ppm/℃であることから、発振回路1021が温度補償回路を内蔵する場合は、概ね−40℃から150℃の温度範囲内において適切な測定が可能になる。
【0151】
1.15 試作例2
試作例2も、
図1に図示されるガス検出装置1000からリフレッシュ動作を可能にするための機構を省略したガス検出装置の試作例である。
【0152】
試作例2においては、圧電板及び支持板1085がSCカット水晶からなり、14μmの厚さを有する圧電膜1080が得た点を除いては、試作例1と同様に試作を行った。
【0153】
試作例2において試作される試作品の一酸化窒素の検出性能について数値計算を行った。
【0154】
試作例2において試作される試作品においては、厚さtが14μmであることから、感応膜1041が付着していない状態における圧電振動子1040の共振周波数Fが120MHzであることが数式(2)からわかる。
【0155】
また、面積Aが1.67×10
−5m
2であり、せん断応力μ
qが2.947×10
10kg/msであり、密度ρ
qが7490kg/m
3であり、感応膜1041が付着していない状態における圧電振動子1040の共振周波数Fが120MHzであることから、係数Kが1.27pg/Hzであることが数式(6)からわかる。
【0156】
一方、1m
3の体積を占める空間において10ppbから200ppbの濃度を有する一酸化窒素が発生する場合は、10ngから200ngの一酸化窒素が当該空間に存在する。
【0157】
また、発生した一酸化窒素が当該空間の出口に到達するのに要する時間が1分であると仮定した場合は、2.3mmの直径を有する励振電極膜1081の上に付着する一酸化窒素の質量は、当該空間に存在する一酸化窒素の質量の25万分の1=(2.3mm/1000mm)×(2.3mm/1000mm)である。このため、当該空間において10ppbから200ppbの濃度を有する一酸化窒素が発生し10ngから200ngの一酸化窒素が当該空間に存在することは、感応膜1041が40pgから800pgの一酸化窒素を吸着することに相当する。
【0158】
また、特定の質量の一酸化窒素の吸着に必要な感応膜1041の質量は、当該特定の質量の25倍である。このため、当該空間において10ppbから200ppbの濃度を有する一酸化窒素が発生し感応膜1041が40pgから800pgの一酸化窒素を吸着しなければならない場合は、必要な感応膜1041の質量は800pgの25倍の20ngである。したがって、当該空間において10ppbから200ppbの濃度を有する一酸化窒素が発生する場合は、必要な感応膜1041の質量及び吸着する一酸化窒素の質量の合計は、20.04ngから20.8ngである。
【0159】
これらのことを総合すると、試作例2において試作される試作品においては、当該空間において10ppbから200ppbの濃度を有する一酸化窒素が発生した場合に、必要な感応膜1041の質量及び吸着する一酸化窒素の質量の合計が20.04ngから20.8ngとなり、低下量ΔFが15722Hzから16318Hzとなる。
【0160】
また、圧電振動子1040の共振周波数Fの温度係数は
図9に示されるものであることから、発振回路1021が温度補償回路を内蔵する場合は、概ね−40℃から150℃の温度範囲内において適切な測定が可能になる。
【0161】
2 第2実施形態
図13は、第2実施形態のガス検出装置を図示する模式図である。
図13には、第2実施形態のガス検出装置に備えられるガスセンサーの断面が図示される。
【0162】
第2実施形態は、主に下記の点で第1実施形態と相違する。
【0163】
(1)第2実施形態においては、支持板2085に貫通孔2220が形成され、貫通孔2220の内部に感応膜2042が設けられる。これに対して、第1実施形態においては、支持板1085に有底孔1220が形成され、有底孔1220の内部に感応膜が設けられない。
【0164】
(2)第2実施形態においては、被検出成分を感応膜2041及び2042から脱離させるための印加回路及び対向電極が設けられない。これに対して、第1実施形態においては、被検出成分を感応膜1041から脱離させるための印加回路1440及び対向電極1460が設けられる。
【0165】
以下では、上記の主な相違を中心に第2実施形態について説明する。他の実施の形態において採用された技術が第2実施形態において採用されてもよい。第2実施形態において被検出成分を感応膜2041及び2042から脱離させるための印加回路及び対向電極が設けられてもよい。
【0166】
図13に図示されるガス検出装置2000は、ガスセンサー2020及び発振回路2021を備える。ガスセンサー2020は、圧電振動子2040、感応膜2041及び感応膜2042を備える。圧電振動子2040は、圧電膜2080、励振電極膜2081、励振電極膜2082、給電電極膜2083、給電電極膜2084、支持板2085及び平坦化層2086を備える。
【0167】
発振回路2021は、第1実施形態の発振回路1021と同様のものである。感応膜2041は、第1実施形態の感応膜1041と同様のものである。圧電膜2080、励振電極膜2081、励振電極膜2082、給電電極膜2083、給電電極膜2084及び平坦化層2086は、それぞれ第1実施形態の圧電膜1080、励振電極膜1081、励振電極膜1082、給電電極膜1083、給電電極膜1084及び平坦化層1086と同様のものである。
【0168】
ガスセンサー2020は、マイクロバランスセンサーとして機能する。ガスセンサー2020が特定の被検出成分を含むガスに曝された場合は、感応膜2041及び2042が特定の被検出成分を含むガスに曝され、感応膜2041及び2042がガスに含まれる特定の被検出成分を選択的に吸着する。これにより、圧電振動子2040の固有周波数が低下し、発振回路2021の発振周波数が低下する。発振周波数の低下量は、感応膜2041及び2042に吸着した被検出成分の質量に比例する。このため、発振周波数の低下量からは、感応膜2041及び2042に吸着した被検出成分の質量が特定され、ガスに含まれる被検出成分の濃度が特定される。
【0169】
圧電振動子2040は、エネルギー閉じ込め型である。給電電極膜2083と給電電極膜2084との間に励振信号が印加された場合は、励振電極膜2081と励振電極膜2082との間に励振信号が印加され、励振電極膜2081と励振電極膜2082とに挟まれ圧電膜2080の一部を占める電界印加部2180に励振信号に応じた励振電界が印加され、電界印加部2180が励振電界に応じて変形する。これにより、主に電界印加部2180、励振電極膜2081、励振電極膜2082、及び平坦化層2086の一部を占める追従振動部2200からなる振動部2060に励振信号に応じた厚み滑り振動が励振される。
【0170】
支持板2085には、貫通孔2220が形成される。貫通孔2220は、追従振動部2200を挟んで励振電極膜2082に対向する。これにより、振動部2060が支持板2085から離され、厚み滑り振動の励振が支持板2085により阻害されにくくなる。
【0171】
図2及び
図3に図示される感応膜1250は、感応膜2041及び2042の各々として使用される。
【0172】
感応膜2042は、励振電極膜2082の上に配置され、追従振動部2200を挟んで励振電極膜2082に対向し、追従振動部2200に直接的に接触する。このため、感応膜2042は、振動部2060に直接的に接触する。
【0173】
感応膜2042は、貫通孔2220の内部に配置される。貫通孔2220は、支持板2085を厚さ方向に貫通するため、貫通孔2220の内部へのガスの侵入は阻害されない。このため、感応膜2042が貫通孔2220の内部に配置されることは、感応膜2042をガスに曝すことを阻害しない。
【0174】
第2実施形態の圧電振動子2040は、有底孔1220に代えて貫通孔2220が形成される点を除いて、第1実施形態の圧電振動子1040と同様に作製される。
【0175】
図14は、第2実施形態のガス検出方法を示すフローチャートである。
【0176】
図14に図示される工程S221においては、ガス検出装置2000が準備される。
【0177】
続く工程S222においては、ガスセンサー2020がガスに曝され、発振回路2021の発振周波数の低下量が測定される。
【0178】
続く工程S223においては、発振回路2021の発振周波数の低下量からガスに含まれる被検出成分の濃度が取得される。
【0179】
3 第3実施形態
図15は、第3実施形態のガス検出装置を図示する模式図である。
図15には、第3実施形態のガス検出装置に備えられるガスセンサーの断面が図示される。
【0180】
第3実施形態は、主に下記の点で第1実施形態と相違する。
【0181】
(1)第3実施形態においては、複合膜3120が樹脂接合層3086により支持板3085に接合される。これに対して、第1実施形態においては、複合膜1120の被接合面1140を覆う平坦化層1086の平坦な主面1160が支持板1085に直接接合される。
【0182】
以下では、上記の主な相違を中心に第3実施形態について説明する。他の実施の形態において採用された技術が第3実施形態において採用されてもよい。
【0183】
図15に図示されるガス検出装置3000は、ガスセンサー3020及び発振回路3021を備える。ガスセンサー3020は、圧電振動子3040及び感応膜3041を備える。圧電振動子3040は、圧電膜3080、励振電極膜3081、励振電極膜3082、給電電極膜3083、給電電極膜3084、支持板3085及び樹脂接合層3086を備える。
【0184】
発振回路3021は、第1実施形態の発振回路1021と同様のものである。感応膜3041は、第1実施形態の感応膜1041と同様のものである。圧電膜3080、励振電極膜3081、励振電極膜3082、給電電極膜3083、給電電極膜3084及び支持板3085は、それぞれ第1実施形態の圧電膜1080、励振電極膜1081、励振電極膜1082、給電電極膜1083、給電電極膜1084及び支持板1085と同様のものである。
【0185】
ガスセンサー3020は、マイクロバランスセンサーとして機能する。ガスセンサー3020が被検出成分を含むガスに曝された場合は、感応膜3041が被検出成分を含むガスに曝され、感応膜3041がガスに含まれる被検出成分を選択的に吸着する。これにより、圧電振動子3040の固有振動数が低下し、発振回路3021の発振周波数が低下する。発振周波数の低下量は、感応膜3041に吸着した被検出成分の質量に比例する。このため、発振周波数の低下量からは、感応膜3041に吸着した被検出成分の質量が特定され、ガスに含まれる被検出成分の濃度が特定される。
【0186】
圧電膜3080、励振電極膜3081、励振電極膜3082、給電電極膜3083及び給電電極膜3084からなる複合膜3120は、支持板3085と対向し、樹脂接合層3086により支持板3085に接合され、支持板3085に支持される。
【0187】
圧電振動子3040は、エネルギー閉じ込め型である。給電電極膜3083と給電電極膜3084との間に励振信号が印加された場合は、励振電極膜3081と励振電極膜3082との間に励振信号が印加され、励振電極膜3081と励振電極膜3082とに挟まれ圧電膜3080の一部を占める電界印加部3180に励振信号に応じた励振電界が印加され、電界印加部3180が励振電界に応じて変形する。これにより、主に電界印加部3180、励振電極膜3081、励振電極膜3082、及び樹脂接合層3086の一部を占める追従振動部3200からなる振動部3060に励振信号に応じた厚み滑り振動が励振される。
【0188】
図2及び
図3に図示される感応膜1250は、感応膜3041として使用される。
【0189】
図15に図示されるガス検出装置3000は、印加回路3440をさらに備える。ガスセンサー3020は、対向電極3460をさらに備える。感応膜3041に備えられる担体1261は、半導電性を有する。
【0190】
印加回路3440及び対向電極3460は、それぞれ第1実施形態の印加回路1440及び対向電極1460と同様のものである。
【0191】
圧電振動子3040は、平坦化層1086に代えて樹脂接合層3086が形成される点を除いて、第1実施形態の圧電振動子1040と同様に作製される。
【0192】
図12は、第3実施形態のガス検出方法を示すフローチャートでもあり、ガス検出装置3000は、第1実施形態のガス検出装置1000と同様に使用される。
【0193】
4 第4実施形態
図16は、第4実施形態のガス検出装置を図示する模式図である。
図16には、第4実施形態のガス検出装置に備えられるガスセンサーの断面が図示される。
【0194】
第4実施形態は、主に下記の点で第1実施形態と相違する。
【0195】
(1)第4実施形態においては、支持板4085に貫通孔4220が形成され、貫通孔4220の内部に感応膜4042が設けられる。これに対して、第1実施形態においては、支持板1085に有底孔1220が形成され、有底孔1220の内部に感応膜が設けられない。
【0196】
(2)第4実施形態においては、複合膜4120が樹脂接合層4086により支持板4085に接合される。これに対して、第1実施形態においては、複合膜1120の被接合面1140を覆う平坦化層1086の平坦な主面1160が支持板1085に直接接合される。
【0197】
(3)第4実施形態においては、被検出成分を感応膜4041及び4042から脱離させるための印加回路及び対向電極が設けられない。これに対して、第1実施形態においては、被検出成分を感応膜1041から脱離させるための印加回路1440及び対向電極1460が設けられる。
【0198】
以下では、上記の主な相違を中心に第4実施形態について説明する。他の実施の形態において採用された技術が第4実施形態において採用されてもよい。第4実施形態において被検出成分を感応膜4041及び4042から脱離させるための印加回路及び対向電極が設けられてもよい。
【0199】
図16に図示されるガス検出装置4000は、ガスセンサー4020及び発振回路4021を備える。ガスセンサー4020は、圧電振動子4040、感応膜4041及び感応膜4042を備える。圧電振動子4040は、圧電膜4080、励振電極膜4081、励振電極膜4082、給電電極膜4083、給電電極膜4084、支持板4085及び樹脂接合層4086を備える。
【0200】
発振回路4021は、第1実施形態の発振回路1021と同様のものである。感応膜4041は、第1実施形態の感応膜1041と同様のものである。圧電膜4080、励振電極膜4081、励振電極膜4082及び給電電極膜4083及び給電電極膜4084は、それぞれ第1実施形態の圧電膜1080、励振電極膜1081、励振電極膜1082、給電電極膜1083及び給電電極膜1084と同様のものである。
【0201】
ガスセンサー4020は、マイクロバランスセンサーとして機能する。ガスセンサー4020が特定の被検出成分を含むガスに曝された場合は、感応膜4041及び4042が特定の被検出成分を含むガスに曝され、感応膜4041及び4042がガスに含まれる特定の被検出成分を選択的に吸着する。これにより、圧電振動子4040の固有周波数が低下し、発振回路4021の発振周波数が低下する。発振周波数の低下量は、感応膜4041及び4042に吸着した被検出成分の質量に比例する。このため、発振周波数の低下量からは、感応膜4041及び4042に吸着した被検出成分の質量が特定され、ガスに含まれる被検出成分の濃度が特定される。
【0202】
圧電振動子4040は、エネルギー閉じ込め型である。給電電極膜4083と給電電極膜4084との間に励振信号が印加された場合は、励振電極膜4081と励振電極膜4082との間に励振信号が印加され、励振電極膜4081と励振電極膜4082とに挟まれ圧電膜4080の一部を占める電界印加部4180に励振信号に応じた励振電界が印加され、電界印加部4180が励振電界に応じて変形する。これにより、主に電界印加部4180、励振電極膜4081、励振電極膜4082、及び樹脂接合層4086の一部を占める追従振動部4200からなる振動部4060に励振信号に応じた厚み滑り振動が励振される。
【0203】
支持板4085には、貫通孔4220が形成される。貫通孔4220は、追従振動部4200を挟んで励振電極膜4082に対向する。これにより、振動部4060が支持板4085から離され、厚み滑り振動の励振が支持板4085により阻害されにくくなる。
【0204】
図2及び
図3に図示される感応膜1250は、感応膜4042として使用される。
【0205】
感応膜4042は、励振電極膜4082の上に配置され、追従振動部4200を挟んで励振電極膜4082に対向し、追従振動部4200に直接的に接触する。このため、感応膜4042は、振動部4060に直接的に接触する。
【0206】
感応膜4042は、貫通孔4220の内部に配置される。貫通孔4220は、支持板4085を厚さ方向に貫通するため、貫通孔4220の内部へのガスの侵入は阻害されない。このため、感応膜4042が貫通孔4220の内部に配置されることは、感応膜4042をガスに曝すことを阻害しない。
【0207】
圧電振動子4040は、有底孔1220に代えて貫通孔4220が形成され、平坦化層1086に代えて樹脂接合層4086が形成される点を除いて、第1実施形態の圧電振動子1040と同様に作製される。
【0208】
図14は、第4実施形態のガス検出方法を示すフローチャートでもあり、ガス検出装置4000は、第2実施形態のガス検出装置2000と同様に使用される。
【0209】
5 第5実施形態
図17は、第5実施形態のガス検出装置を図示する模式図である。
図17には、第5実施形態のガス検出装置に備えられるガスセンサーの断面が図示される。
【0210】
第5実施形態は、主に下記の点で第1実施形態と相違する。
【0211】
(1)第5実施形態においては、支持板5085に有底孔が形成されず、振動部5060が支持板5085に接触する。これに対して、第1実施形態においては、支持板1085に有底孔1220が形成され、振動部1060が支持板1085から離される。
【0212】
(2)第5実施形態においては、複合膜5120が樹脂接合層5086により支持板5085に接合される。これに対して、第1実施形態においては、複合膜1120の被接合面1140を覆う平坦化層1086の平坦な主面1160が支持板1085に直接接合される。
【0213】
以下では、上記の主な相違を中心に第5実施形態について説明する。他の実施の形態において採用された技術が第5実施形態において採用されてもよい。
【0214】
図17に図示されるガス検出装置5000は、ガスセンサー5020及び発振回路5021を備える。ガスセンサー5020は、圧電振動子5040及び感応膜5041を備える。圧電振動子5040は、圧電膜5080、励振電極膜5081、励振電極膜5082、給電電極膜5083、給電電極膜5084、支持板5085及び樹脂接合層5086を備える。
【0215】
発振回路5021は、第1実施形態の発振回路1021と同様のものである。感応膜5041は、第1実施形態の感応膜1041と同様のものである。圧電膜5080、励振電極膜5081、励振電極膜5082、給電電極膜5083及び給電電極膜5084は、それぞれ第1実施形態の圧電膜1080、励振電極膜1081、励振電極膜1082、給電電極膜1083及び給電電極膜1084と同様のものである。
【0216】
ガスセンサー5020は、マイクロバランスセンサーとして機能する。ガスセンサー5020が特定の被検出成分を含むガスに曝された場合は、感応膜5041が特定の被検出成分を含むガスに曝され、感応膜5041がガスに含まれる特定の被検出成分を選択的に吸着する。これにより、圧電振動子5040の固有振動数が低下し、発振回路5021の発振周波数が低下する。発振周波数の低下量は、感応膜5041に吸着した被検出成分の質量に比例する。このため、発振周波数の低下量からは、感応膜5041に吸着した被検出成分の質量が特定され、ガスに含まれる被検出成分の濃度が特定される。
【0217】
圧電膜5080、励振電極膜5081、励振電極膜5082、給電電極膜5083及び給電電極膜5084からなる複合膜5120は、支持板5085と対向し、樹脂接合層5086により支持板5085に接合され、支持板5085に支持される。
【0218】
給電電極膜5083と給電電極膜5084との間に励振信号が印加された場合は、励振電極膜5081と励振電極膜5082との間に励振信号が印加され、励振電極膜5081と励振電極膜5082とに挟まれ圧電膜5080の一部を占める電界印加部5180に励振信号に応じた励振電界が印加され、電界印加部5180が励振電界に応じて変形する。これにより、主に電界印加部5180、励振電極膜5081、励振電極膜5082、及び樹脂接合層5086の一部を占める追従振動部5200からなる振動部5060に励振信号に応じた厚み滑り振動が励振される。
【0219】
図2及び
図3に図示される感応膜1250は、感応膜5042として使用される。
【0220】
図17に図示されるガス検出装置5000は、印加回路5440をさらに備える。ガスセンサー5020は、対向電極5460をさらに備える。感応膜5041に備えられる担体1261は、半導電性を有する。
【0221】
印加回路5440及び対向電極5460は、それぞれ第1実施形態の印加回路1440及び対向電極1460と同様のものである。
【0222】
圧電振動子5040は、有底孔が形成されず、平坦化層1086に代えて樹脂接合層5086が形成される点を除いて、第1実施形態の圧電振動子1040と同様に作製される。
【0223】
図12は、第5実施形態のガス検出方法を占めるフローチャートであり、ガス検出装置5000は、第1実施形態のガス検出装置1000と同様に使用される。
【0224】
6 第6実施形態
図18は、第6実施形態のガス検出装置を図示する模式図である。
図18には、第6実施形態のガス検出装置に備えられるガスセンサーの断面が図示される。
【0225】
第6実施形態は、主に下記の点で第1実施形態と相違する。
【0226】
(1)第6実施形態においては、支持板6085に貫通孔6220が形成され、貫通孔6220の内部に感応膜6042が設けられ、被検出成分を感応膜6042から脱離させるための印加回路6461及び対向電極6661が設けられる。これに対して、第1実施形態においては、支持板1085に有底孔1220が形成され、有底孔1220の内部に感応膜が設けられない。
【0227】
(2)第6実施形態においては、複合膜6120が樹脂接合層6086により支持板6085に接合される。これに対して、第1実施形態においては、複合膜1120の被接合面1140を覆う平坦化層1086の平坦な主面1140が支持板1085に直接接合される。
【0228】
以下では、上記の主な相違を中心に第6実施形態について説明する。他の実施の形態において採用された技術が第6実施形態において採用されてもよい。
【0229】
図18に図示されるガス検出装置6000は、ガスセンサー6020及び発振回路6021を備える。ガスセンサー6020は、圧電振動子6040、感応膜6041及び感応膜6042を備える。圧電振動子6040は、圧電膜6080、励振電極膜6081、励振電極膜6082、給電電極膜6083、給電電極膜6084、支持板6085及び樹脂接合層6086を備える。
【0230】
発振回路6021は、第1実施形態の発振回路1021と同様のものである。感応膜6041は、第1実施形態の感応膜1041と同様のものである。圧電膜6080、励振電極膜6081、励振電極膜6082、給電電極膜6083及び給電電極膜6084は、それぞれ第1実施形態の圧電膜1080、励振電極膜1081、励振電極膜1082、給電電極膜1083及び給電電極膜1084と同様のものである。
【0231】
ガスセンサー6020は、マイクロバランスセンサーとして機能する。ガスセンサー6020が特定の被検出成分を含むガスに曝された場合は、感応膜6041及び6042が特定の被検出成分を含むガスに曝され、感応膜6041及び6042がガスに含まれる特定の被検出成分を選択的に吸着する。これにより、圧電振動子6040の固有周波数が低下し、発振回路6021の発振周波数が低下する。発振周波数の低下量は、感応膜6041及び6042に吸着した被検出成分の質量に比例する。このため、発振周波数の低下量からは、感応膜6041及び6042に吸着した被検出成分の質量が特定され、ガスに含まれる被検出成分の濃度が特定される。
【0232】
圧電振動子6040は、エネルギー閉じ込め型である。給電電極膜6083と給電電極膜6084との間に励振信号が印加された場合は、励振電極膜6081と励振電極膜6082との間に励振信号が印加され、励振電極膜6081と励振電極膜6082とに挟まれ圧電膜6080の一部を占める電界印加部6180に励振信号に応じた励振電界が印加され、電界印加部6180が励振電界に応じて変形する。これにより、主に電界印加部6180、励振電極膜6081及び励振電極膜6082からなる振動部6060に励振信号に応じた厚み滑り振動が励振される。
【0233】
支持板6085には、貫通孔6220が形成される。貫通孔6220は、励振電極膜6082に対向する。これにより、振動部6060が支持板6085から離され、厚み滑り振動の励振が支持板6085により阻害されにくくなる。
【0234】
図2及び
図3に図示される感応膜1250は、感応膜6041及び6042の各々として使用される。
【0235】
感応膜6042は、励振電極膜6082の上に配置され、励振電極膜6082に直接的に接触する。このため、感応膜6042は、振動部6060に直接的に接触する。
【0236】
感応膜6042は、貫通孔6220の内部に配置される。貫通孔6220は、支持板6085を厚さ方向に貫通するため、貫通孔6220の内部へのガスの侵入は阻害されない。このため、感応膜6042が貫通孔6220の内部に配置されることは、感応膜6042をガスに曝すことを阻害しない。
【0237】
図18に図示されるガス検出装置6000は、印加回路6440及び6441をさらに備える。ガスセンサー6020は、対向電極6660及び6661をさらに備える。感応膜6042に備えられる担体1261は、半導電性を有する。
【0238】
印加回路6440は、第1実施形態の印加回路1440と同様のものである。対向電極6660は、第1実施形態の対向電極1660と同様のものである。
【0239】
対向電極6661は、感応膜6042を挟んで励振電極膜6082と対向する。
【0240】
印加回路6441は、励振電極膜6082が負極となり対向電極6661が正極となるように励振電極膜6082と対向電極6661との間に電圧を印加する。
【0241】
錯体1300が選択的に補足する一酸化窒素等の被検出成分は、電子供与性を有し、錯体1300に補足された場合に担体1261に向かって電子を放出し、錯体1300から脱離する場合に担体1261から電子を引き抜く。このため、印加回路6440が励振電極膜6081と対向電極6660との間に電圧を印加し感応膜6041に備えられる錯体1300に電子が供給された場合は、感応膜6041に備えられる錯体1300から被検出成分が脱離しやすくなり、感応膜6041から被検出成分が脱離しやすくなる。同様に、印加回路6441が励振電極膜6082と対向電極6661との間に電圧を印加し感応膜6042に備えられる錯体1300に電子が供給された場合は、感応膜6042に備えられる錯体1300から被検出成分が脱離しやすくなり、感応膜6042から被検出成分が脱離しやすくなる。
【0242】
圧電振動子6040は、有底孔1220に代えて貫通孔6220が形成され、平坦化層1086に代えて樹脂接合層6086が形成される点を除いて、第1実施形態の圧電振動子1040と同様に作製される。
【0243】
図12は、第6実施形態のガス検出方法を示すフローチャートでもある。
【0244】
図12に図示される工程S121においては、ガス検出装置6000が準備される。
【0245】
続く工程S122においては、ガスセンサー6020がガスに曝され、発振回路6021の発振周波数の低下量が測定される。
【0246】
続く工程S123においては、発振回路6021の発振周波数の低下量からガスに含まれる被検出成分の濃度が取得される。
【0247】
続く工程S124においては、印加回路6440に励振電極膜6081と対向電極6660との間に電圧を印加させ、印加回路6441に励振電極膜6082と対向電極6661との間に電圧を印加させる。これにより、感応膜6041及び6042に吸着された被検出成分を感応膜6041及び6042から脱離されるリフレッシュ動作が実行される。工程S124は、工程S122の後に実行されればよく、工程S123の前に実行されてもよい。
【0248】
7 第7実施形態
図19は、第7実施形態のガス検出装置を図示する模式図である。
図19には、第7実施形態のガス検出装置に備えられるガスセンサーの断面が図示される。
【0249】
第7実施形態は、主に下記の点で第1実施形態と相違する。
【0250】
(1)第7実施形態においては、圧電板7080、励振電極膜7081、励振電極膜7082、給電電極膜7083及び給電電極膜7084からなる複合板7120が自立する。これに対して、第1実施形態においては、圧電膜1080、励振電極膜1081、励振電極膜1082、給電電極膜1083及び給電電極膜1084からなる複合膜1120が支持板1085に支持される。
【0251】
(2)第7実施形態においては、励振電極7081及び7082の上にそれぞれ感応膜7041及び7042が設けられる。これに対して、第1実施形態においては、励振電極1081の上に感応膜1041が設けられるが、励振電極1082の上に感応膜が設けられない。
【0252】
(3)第7実施形態においては、被検出成分を感応膜7041及び7042から脱離させるための印加回路及び対向電極が設けられない。これに対して、第1実施形態においては、被検出成分を感応膜1041から脱離させるための印加回路1440及び対向電極1460が設けられる。
【0253】
以下では、上記の主な相違を中心に第7実施形態について説明する。他の実施の形態において採用された技術が第7実施形態において採用されてもよい。第7実施形態において被検出成分を感応膜7041及び7042から脱離させるための印加回路及び対向電極が設けられてもよい。
【0254】
図19に図示されるガス検出装置7000は、ガスセンサー7020及び発振回路7021を備える。ガスセンサー7020は、圧電振動子7040、感応膜7041及び感応膜7042を備える。圧電振動子7040は、圧電板7080、励振電極膜7081、励振電極膜7082、給電電極膜7083及び給電電極膜7084を備える。
【0255】
発振回路7021は、圧電振動子7040に電気的に接続され、圧電振動子7040の固有振動数に応じた発振周波数において発振する。
【0256】
感応膜7041及び7042は、圧電振動子7040に備えられる振動部7060に付着し、ガスに含まれる特定の被検出成分を選択的に吸着する。感応膜7041又は7042が省略されてもよい。
【0257】
ガスセンサー7020は、マイクロバランスセンサーとして機能する。ガスセンサー7020が特定の被検出成分を含むガスに曝された場合は、感応膜7041及び7042が特定の被検出成分を含むガスに曝され、感応膜7041及び7042がガスに含まれる特定の被検出成分を選択的に吸着する。これにより、圧電振動子7040の固有振動数が低下し、発振回路7021の発振周波数が低下する。発振周波数の低下量は、感応膜7041及び7042に吸着した被検出成分の質量に比例する。このため、発振周波数の低下量からは、感応膜7041及び7042に吸着した被検出成分の質量が特定され、ガスに含まれる被検出成分の濃度が特定される。
【0258】
励振電極膜7081及び給電電極膜7083は、圧電板7080の主面7100の上に配置され、圧電板7080の主面7100に直接的に接触する。励振電極膜7082及び給電電極膜7084は、圧電板7080の主面7101の上に配置され、圧電板7080の主面7101に直接的に接触する。圧電板7080の主面7100及び7101は、互いに反対の側にある。
【0259】
励振電極膜7082は、圧電板7080の厚さ方向から見て励振電極膜7081と重なり、圧電板7080を挟んで励振電極膜7081と対向する。
【0260】
給電電極膜7083は、励振電極膜7081から連続し、励振電極膜7081に電気的に接続される。給電電極膜7084は、励振電極膜7082から連続し、励振電極膜7082に電気的に接続される。
【0261】
給電電極膜7083及び7084は、発振回路7021に電気的に接続される。
【0262】
圧電振動子7040は、エネルギー閉じ込め型である。給電電極膜7083と給電電極膜7084との間に励振信号が印加された場合は、励振電極膜7081と励振電極膜7082との間に励振信号が印加され、励振電極膜7081と励振電極膜7082とに挟まれ圧電板7080の一部を占める電界印加部7180に励振信号に応じた励振電界が印加され、電界印加部7180が励振電界に応じて変形する。これにより、主に電界印加部7180、励振電極膜7081及び励振電極膜7082からなる振動部7060に励振信号に応じた厚み滑り振動が励振される。
【0263】
感応膜7041は、励振電極膜7081の上に配置され、励振電極膜7081に直接的に接触する。感応膜7042は、励振電極膜7082の上に配置され、励振電極膜7082に直接的に接触する。このため、感応膜7041及び7042は、振動部7060に直接的に接触する。
【0264】
図2及び
図3に図示される感応膜1250は、感応膜7041及び7042の各々として使用される。
【0265】
図14は、第7実施形態のガス検出方法を示すフローチャートでもあり、ガス検出装置7000は、第2実施形態のガス検出装置2000と同様に使用される。
【0266】
8 第8実施形態
8.1 ガス検出装置
図20は、第8実施形態のガス検出装置を図示する模式図である。
図21及び
図22は、第8実施形態のガス検出装置に備えられるガスセンサーの断面を図示する模式図である。
図21は、
図20の切断線A−Aにおける断面を図示する。
図22は、
図20の切断線B−Bにおける断面を図示する。
【0267】
図20に図示されるガス検出装置8000は、ガスセンサー8020、発振回路8021a、発振回路8021b、発振回路8021c、発振回路8021d及び信号処理回路8022を備える。ガス検出装置8000がこれらの構成物以外の構成物を備えてもよい。ガスセンサー8020は、
図20から
図22までに図示されるように、圧電振動子8040a、圧電振動子8040b、圧電振動子8040c、圧電振動子8040d、感応膜8041a、感応膜8041b、感応膜8041c及びブロッキング膜8041dを備える。ガスセンサー8020がこれらの構成物以外の構成物を備えてもよい。
【0268】
発振回路8021a,8021b,8021c及び8021dは、それぞれ圧電振動子8040a,8040b,8040c及び8040dに電気的に接続され、それぞれ圧電振動子8040a,8040b,8040c及び8040dの固有振動数に応じた発振周波数において発振する。
【0269】
信号処理回路8022は、発振回路8021a,8021b,8021c及び8021dが発振した信号を処理する。
【0270】
ガスセンサー8020は、マルチセンサー型のマイクロバランスセンサーとして機能する。ガスセンサー8020が一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(N
2O)及び窒素酸化物(NO
x)を含むガスに曝された場合は、感応膜8041a,8041b及び8041cが一酸化窒素、亜酸化窒素及び窒素酸化物を含むガスに曝され、感応膜8041a,8041b及び8041cがそれぞれガスに含まれる一酸化窒素、亜酸化窒素及び窒素酸化物を選択的に吸着する。これにより、圧電振動子8040a,8040b及び8040cの固有振動数が低下し、発振回路8021a、発振回路8021b及び発振回路8021cの発振周波数が低下する。発振回路8021a、発振回路8021b及び発振回路8021cの発振周波数の低下量は、それぞれ感応膜8041aに吸着した一酸化窒素、感応膜8041bに吸着した亜酸化窒素及び感応膜8041cに吸着した窒素酸化物の質量に比例する。このため、発振回路8021a、発振回路8021b及び発振回路8021cの発振周波数の低下量からは、それぞれ感応膜8041aに吸着した一酸化窒素、感応膜8041bに吸着した亜酸化窒素及び感応膜8041cに吸着した窒素酸化物の質量が特定され、それぞれガスに含まれる一酸化窒素、亜酸化窒素及び窒素酸化物の濃度が特定される。
【0271】
8.2 圧電振動子
圧電振動子8040a,8040b,8040c及び8040dの集合体8500は、
図20から
図22までに図示されるように、圧電膜8080、励振電極膜8081a,8081b,8081c,8081d,8082a,8082b,8082c及び8082d、給電電極膜8083a,8083b,8083c,8083d,8084a,8084b,8084c及び8084d、支持板8085並びに平坦化層8086を備える。集合体8500がこれらの構成物以外の構成物を備えてもよい。
【0272】
圧電膜8080は、例えば10mmの直径を有する円形状の平面形状を有する。
【0273】
励振電極膜8081,8081b,8081c及び8081d並びに励振電極膜8083a,8083b,8083c及び8083dは、圧電膜8080の主面8100の上に配置され、圧電膜8080の主面8100に直接的に接触する。励振電極膜8082a,8082b,8082c及び8082d並びに給電電極膜8084a,8084b,8084c及び8084dは、圧電膜8080の主面8101の上に配置され、圧電膜8080の主面8101に直接的に接触する。圧電膜8080の主面8100及び8101は、互いに反対の側にある。
【0274】
励振電極膜8081a,8081b,8081c及び8081dは、それぞれ圧電膜8080の厚さ方向から見て励振電極膜8082a,8082b,8082c及び8082dと重なり、それぞれ圧電膜8080を挟んで励振電極膜8082a,8082b,8082c及び8082dと対向する。
【0275】
給電電極膜8083a,8083b,8083c及び8083dは、それぞれ励振電極膜8081a,8081b,8081c及び8081dから連続し、それぞれ励振電極膜8081a,8081b,8081c及び8081dに電気的に接続される。給電電極膜8084a,8084b,8084c及び8084dは、それぞれ励振電極膜8082a,8082b,8082c及び8082dから連続し、それぞれ励振電極膜8082a,8082b,8082c及び8082dに電気的に接続される。
【0276】
圧電膜8080、励振電極膜8081a及び励振電極膜8082aは、圧電振動子8040aを構成する。圧電膜8080、励振電極膜8081b及び励振電極膜8082bは、圧電振動子8040bを構成する。圧電膜8080、励振電極膜8081c及び励振電極膜8082cは、圧電振動子8040cを構成する。圧電膜8080、励振電極膜8081d及び励振電極膜8082dは、圧電振動子8040dを構成する。圧電膜8080は、圧電振動子8040a,8040b,8040c及び8040dに共通である。
【0277】
給電電極膜8083a及び8084aは、発振回路8021aに電気的に接続される。給電電極膜8083b及び8084bは、発振回路8021bに電気的に接続される。給電電極膜8083c及び8084cは、発振回路8021cに電気的に接続される。給電電極膜8083d及び8084dは、発振回路8021dに電気的に接続される。
【0278】
圧電膜8080、励振電極膜8081a,8081b,8081c,8081d,8082a,8082b,8082c及び8082d並びに給電電極膜8083a,8083b,8083c,8083d,8084a,8084b,8084c及び8084dからなる複合膜8120は、支持板8085と対向し、平坦化層8086により平坦化されてから支持板8085に接合され、支持板8085に支持される。このような支持によれば、圧電膜8080の主面8100及び8101を平坦な主面にすることができる。
【0279】
平坦化層8086は、複合膜8120の被接合面8140を覆う。平坦化層8086の平坦な主面8160は、支持板8085に直接接合される。これにより、複合膜8120が直接接合に適した平坦な主面を有しない場合においても、樹脂接合層を介しない直接接合が可能になる。
【0280】
圧電振動子8040a,8040b,8040c及び8040dは、エネルギー閉じ込め型である。給電電極膜8083aと給電電極膜8084aとの間に励振信号が印加された場合は、励振電極膜8081aと励振電極膜8082aとの間に励振信号が印加され、励振電極膜8081aと励振電極膜8082aとに挟まれ圧電膜8080の一部を占める電界印加部8180aに励振信号に応じた励振電界が印加され、電界印加部8180aが励振電界に応じて変形する。これにより、主に電界印加部8180a、励振電極膜8081a、励振電極膜8082a、及び平坦化層8086の一部を占める追従振動部8200aからなる振動部8060aに励振信号に応じた厚み滑り振動が励振される。同様に、給電電極膜8083bと給電電極膜8084bとの間に励振信号が印加された場合は、主に電界印加部8180b、励振電極膜8081b、励振電極膜8082b、及び平坦化層8086の一部を占める追従振動部8200bからなる振動部8060bに励振信号に応じた厚み滑り振動が励振される。給電電極膜8083cと給電電極膜8084cとの間に励振信号が印加された場合は、主に電界印加部8180c、励振電極膜8081c、励振電極膜8082c、及び平坦化層8086の一部を占める追従振動部8200cからなる振動部8060cに励振信号に応じた厚み滑り振動が励振される。給電電極膜8083dと給電電極膜8084dとの間に励振信号が印加された場合は、主に電界印加部8180d、励振電極膜8081d、励振電極膜8082d、及び平坦化層8086の一部を占める追従振動部8200dからなる振動部8060dに励振信号に応じた厚み滑り振動が励振される。
【0281】
支持板8085には、有底孔8220a,8220b,8220c及び8220dが形成される。有底孔8220a,8220b,8220c及び8220dは、それぞれ追従振動部8200a,8200b,8200c及び8200dを挟んで励振電極膜8082a,8082b,8082c及び8082dに対向する。これにより、振動部8060a,8060b,8060c及び8060dが支持板8085から離され、厚み滑り振動の励振が支持板8085により阻害されにくくなる。
【0282】
8.3 感応膜及びブロッキング膜
感応膜8041a,8041b及び8041cは、それぞれ励振電極膜8081a,8081b及び8081cの上に配置され、それぞれ励振電極膜8081a,8081b及び8081cに直接的に接触する。このため、感応膜8041a,8041b及び8041cは、それぞれ振動部8060a,8060b及び8060cに直接的に接触する。
【0283】
図2及び
図3に図示される感応膜1250は、感応膜8041a及び8041bの各々として使用される。2個の感応膜8041a及び8041bにそれぞれ備えられる2個の錯体1300に捕捉される被検出成分は互い異なる。感応膜8041aに備えられる錯体1300は一酸化窒素を選択的に補足し、感応膜8041bに備えられる錯体1300は亜酸化窒素を選択的に補足する。3個以上の感応膜にそれぞれ備えられる3個以上の錯体1300に捕捉される被検出成分が互いに異なってもよい。
【0284】
感応膜8041a又は8041bが
図2及び
図3に図示される感応膜1250でない感応膜であってもよい。
図2及び
図3に図示される感応膜1250でない感応膜は、例えば、酸化チタン、酸化インジウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛、酸化亜鉛スズ、酸化マグネシウムアルミニウム、酸化アンチモン亜鉛スズ、イットリウム系超伝導体(YBCO)、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン等からなる吸着膜である。
【0285】
感応膜8041cは、望ましくは酸化亜鉛スズ(ZnSnO)からなる。
【0286】
ブロッキング膜8041dは、励振電極膜8081dの上へのガスの成分の吸着を阻害する。
【0287】
8.4 信号処理回路
信号処理回路8022は、発振回路8021a,8021b,8021c及び8021dにより生成された信号を処理し、一酸化窒素、亜酸化窒素及び二酸化窒素の濃度を特定する。
【0288】
一酸化窒素の濃度は、発振回路8021aの発振周波数の低下量から特定される。
【0289】
亜酸化窒素の濃度は、発振回路8021bの発振周波数の低下量から特定される。
【0290】
二酸化窒素の濃度は、発振回路8021cの発振周波数の低下量から特定される窒素酸化物の濃度から、発振回路8021aの発振周波数の低下量から特定される一酸化窒素の濃度及び発振回路8021bの発振周波数の低下量から特定される亜酸化窒素の濃度を減ずることにより特定される。
【0291】
発振回路8021dの発振周波数の低下量は、ノイズ成分を除去するために用いられる。
【0292】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。