(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6823218
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】残存型枠パネル連結具及び残存型枠パネルの連結構造
(51)【国際特許分類】
E04B 2/86 20060101AFI20210114BHJP
【FI】
E04B2/86 611K
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-98655(P2020-98655)
(22)【出願日】2020年6月5日
【審査請求日】2020年6月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】393010215
【氏名又は名称】山下 譲二
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】山下 譲二
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−138501(JP,A)
【文献】
特開2015−229841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/86
E04G 17/06
E02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面の上側左右の所定位置に第一被連結具接続孔が形成された、鋼線からなる第一被連結具、及び裏面の下側左右の所定位置に第二被連結具接続孔が形成された、鋼線からなる第二被連結具を有する残存型枠パネルを積み重ねる場合に使用する、鋼板からなる残存型枠パネル連結具であって、
上側挿入部と、支持具を取り付けるために取付け孔を有し、前記上側挿入部とつながる中間部と、前記残存型枠パネルに接触する側面と反対側の側面に平坦部、この平坦部の上側に形成された楔部及びこの楔部につながるストッパー部を有し、前記中間部とつながる下側挿入部と、を備え、
前記楔部は、少なくとも下側から上側に向けて幅が大きくなる傾斜部を有し、前記下側挿入部の側面に対する前記傾斜部の傾斜角が5度から8度の範囲であり、
前記ストッパー部は、下側から上側に向けて傾斜する傾斜面を有し、前記下側挿入部の側面に対する前記傾斜面の傾斜角が15度以上であり、
前記下側挿入部の前記傾斜部が下側の前記残存型枠パネルの前記第一被連結具の所定の位置まで挿入されると、前記第一被連結具が前記傾斜部と接し、前記下側挿入部は、少なくとも前記傾斜部を介して、前記第一被連結具と前記下側の残存型枠パネルの背面との間で、前記第一被連結具の弾性撓み反力を受けることにより、前記下側の残存型枠パネルの背面の所定の位置に緩みなく当接され、前記残存型枠パネルの施工途中に生じる作業工具の振動や衝撃により、前記下側挿入部が前記第一被連結具内で緩み、所定の位置からずれることを回避する、
ことを特徴とする残存型枠パネル連結具。
【請求項2】
前記下側挿入部の前記平坦部と前記第一被連結具との間に0.1mmから0.5mmの隙間が形成され、前記傾斜部で前記第一被連結具と当接させるために、前記楔部の幅が、1mmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の残存型枠パネル連結具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の残存型枠パネル連結具によって、上下の残存型枠パネルが連結された残存型枠パネルの連結構造であって、
前記残存型枠パネルは、裏面の上側左右の所定位置に前記第一被連結具接続孔が形成された前記第一被連結具、及び裏面の下側左右の所定位置に前記第二被連結具接続孔が形成された前記第二被連結具を有し、
前記下側挿入部は、少なくとも前記傾斜部を介して、前記第一被連結具と前記下側の残存型枠パネルの背面との間で、前記第一被連結具の弾性撓み反力を受け、かつ、前記上側挿入部が前記上側の前記残存型枠パネルの前記第二被連結具に挿入されたことで形成される、
ことを特徴とする残存型枠パネルの連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残存型枠パネル連結具及び残存型枠パネルの連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、壁面を構築する施工において、残存型枠パネルを積み重ねる際に、残存型枠パネル連結具が使用されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載されている残存型枠パネル連結具は、裏面の上下左右に被連結具が設けられた型枠パネルを積み重ねる場合に使用される。この残存型枠パネル連結具は、一端側が所定位置に固定される支持杆の他端側に揺動可能に取り付けられた連結部の下側挿入部分を、下側の残存型枠パネルの被連結具へ上側から挿入し、嵌合させると、下側挿入部分の前端面が残存型枠パネルの裏面に当接する。そして、連結部の上側挿入部分を、上側の残存型枠パネルの被連結具へ下側から挿入すると、上側挿入部分が被連結具内に遊嵌し、上側挿入部分の前端面と残存型枠パネルの裏面との間に所定の間隔が生じる。
【0003】
上記の残存型枠パネル連結具は、上側挿入部分を残存型枠パネルの被連結具内に間隔を確保して遊嵌させるため、下側の残存型枠パネルの前面(壁面)が前後にずれていても、上側の残存型枠パネルの上端を前後へ移動させ、残存型枠パネルを積み重ねながら残存型枠パネルの前面を簡単に調整、修正することができる。そのため、この残存型枠パネル連結具を利用することで、残存型枠パネルの積み上げ作業を効率よく行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3689324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の残存型枠パネル連結具の下側挿入部分は、ハンマーで残存型枠パネル連結具の頭部を打撃することで、下側の残存型枠パネルの被連結金具に嵌合される。しかし、
図7に示すように、下側の残存型枠パネル101の被連結金具102に嵌合された残存型枠パネル連結具103の下側挿入部分104は、施工途中に生じる作業工具の振動や衝撃等によって、被連結金具102内で緩んでしまい、ずれたり、傾いたりすることがあった。この場合、残存型枠パネル連結具103の上側挿入部分105を、積み重ねる上側の残存型枠パネル100の被連結金具106内に挿入するために、残存型枠パネル連結具103の位置を適切な位置に戻す必要があった。そのため、作業者は、施工中に、できるだけ振動を生じさせないように配慮する必要があり、さらに、残存型枠パネル連結具103がずれてしまった場合、適切な位置に戻す修正作業が生じていた。
【0006】
また、残存型枠パネル連結具がずれた状態で、上側の残存型枠パネルを積み重ねると、上側の残存型枠パネルと残存下側の型枠パネルとの間に隙間が生じる。そのため、残存型枠パネルの背面にコンクリートを打設すると、その隙間からコンクリートが残存型枠パネルの前面に漏れ出すことがあり、その場合は、大掛かりな修復作業が必要となる。
【0007】
残存型枠パネルの積み重ね作業の効率化の観点から、施工途中に生じる作業工具の振動や衝撃等が生じた場合でも、下側挿入部分が下側の残存型枠パネルの被連結金具内でずれたり、傾いたりすることをより確実に防止できる残存型枠パネル連結具の開発が強く望まれていた。
【0008】
そこで、本発明は、残存型枠パネルの施工途中に生じる作業工具の振動や衝撃により、被連結具内で緩み、所定の位置からずれることを回避できる残存型枠パネル連結具及びその残存型枠パネル連結具を利用した残存型枠パネルの連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る残存型枠パネル連結具は、裏面の上側左右の所定位置に第一被連結具接続孔が形成された、鋼線からなる第一被連結具、及び裏面の下側左右の所定位置に第二被連結具接続孔が形成された、鋼線からなる第二被連結具を有する残存型枠パネルを積み重ねる場合に使用する、鋼板からなる残存型枠パネル連結具であって、上側挿入部と、支持具を取り付けるための取付け孔を有し、上側挿入部とつながる中間部と、残存型枠パネルに接触する側面と反対側の側面に楔部を有し、中間部とつながる下側挿入部と、を備えている。そして、楔部は、少なくとも下側から上側に向けて幅が大きくなる傾斜部を有し、下側挿入部の側面に対する傾斜部の傾斜角は、3度から10度の範囲であり、下側挿入部の楔部が下側の残存型枠パネルの第一被連結具の所定の位置まで挿入されると、下側挿入部は、少なくとも傾斜部を介して、第一被連結具と下側の残存型枠パネルの背面との間で、第一被連結具の弾性撓み反力を受けることにより、下側の残存型枠パネルの背面の所定の位置に緩みなく当接され、残存型枠パネルの施工途中に生じる作業工具の振動や衝撃により、下側挿入部が第一被連結具内で緩み、所定の位置からずれることを回避することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る残存型枠パネルの連結構造は、上記の残存型枠パネル連結具によって、上下の残存型枠パネルが連結された構造であって、残存型枠パネルは、裏面の上側左右の所定位置に第一被連結具接続孔が形成された第一被連結具、及び裏面の下側左右の所定位置に第二被連結具接続孔が形成された第二被連結具を有し、下側挿入部は、少なくとも傾斜部を介して、第一被連結具と下側の残存型枠パネルの背面との間で、第一被連結具の弾性撓み反力を受け、かつ、上側挿入部が上側の残存型枠パネルの第二被連結具に挿入されたことで形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る残存型枠パネル連結具は、鋼板からなるものであり、上側挿入部と、上側挿入部とつながる中間部と、残存型枠パネルに接触する側面と反対側の側面に楔部を有し、中間部とつながる下側挿入部とを備えている。そして、この残存型枠パネル連結具において、楔部は下側から上側に向けて幅が大きくなる傾斜部を有し、下側挿入部の側面に対する傾斜部の傾斜角は、3度から10度の範囲に設計されている。そのため、下側挿入部の傾斜部が下側の残存型枠パネルの第一被連結具の所定の位置まで挿入されると、下側挿入部は、傾斜部を介して、第一被連結具と下側の残存型枠パネルの背面との間で、第一被連結具の弾性撓み反力を受け、下側の残存型枠パネルの背面の所定の位置に緩みなく当接され、残存型枠パネルの施工途中に生じる作業工具による振動や衝撃により、下側挿入部が第一被連結具内で緩み、所定の位置からずれることを回避することができる。
【0012】
本発明に係る残存型枠パネルの連結構造は、上記の残存型枠パネル連結具によって、上下の残存型枠パネルが連結されたものであり、下側挿入部が、傾斜部を介して、第一被連具と下側の残存型枠パネルの背面との間で、第一被連結具の弾性撓み反力を受け、かつ、上側挿入部が上側の残存型枠パネルの第二被連結具に挿入されたことで形成される。
そのため、残存型枠パネルの施工途中に生じる作業工具による振動や衝撃等により、下側挿入部が第一被連結具内で緩み、残存型枠パネル連結具の接続不良を回避される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る残存型枠パネル連結具を利用して積み重ねられる残存型枠パネルを示す図である。(a)は平面図であり、(b)は上面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る残存型枠パネル連結具によって積み重ねられた残存型枠によって構築された残存型枠を示す図である。(a)は平面図であり、(b)は上面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る残存型枠パネル連結具を示す図である。(a)は平面図であり、(b)は、部分拡大図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る残存型枠パネル連結具によって、上下の残存型枠パネルが連結された残存型枠パネルの連結構造を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る残存型枠パネル連結具を、下側の残存型枠パネルに嵌合する手順を説明するための図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る残存型枠パネル連結具の変形例を示す図である。(a)は、平面図、(b)は、部分拡大図である。
【
図7】従来の残存型枠パネル連結具を使用して、残存型枠パネルを積み重ねた際に生じる課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態に係る残存型枠パネル連結具及び残存型枠パネル連結構造を、
図1から
図6を参照し説明する。
【0015】
本実施形態に係る残存型枠パネル連結具は、残存型枠パネル1を積み重ねる際に使用される。残存型枠パネル1は、
図1に示すように、パネル本体2と、第一被連結金具3と、第二被連結金具4を備えている。
【0016】
パネル本体2は、
図1(b)に示すように、矩形状であり、コンクリート等から構成されている。このパネル本体2には、例えば、高さ300mm、幅900mmのサイズのものが使用される。パネル本体2の裏面2aの上側左右の所定位置に第一被連結金具3、裏面2aの下側左右の所定位置に第二被連結金具4がそれぞれ設けられている。第一被連結金具3及び第二被連結金具4は、鋼線からなる。第一被連結金具3は、パネル本体2の背面2aから突出するように設けられ、この第一被連結金具3には、第一被連結具接続孔3aが形成されている。同様に、第二被連結金具4は、パネル本体2の背面2aから突出するように設けられ、この第二被連結金具4には、第二被連結具接続孔4aが形成されている。
本実施形態において、第一被連結金具接続孔3aの直径及び第二被連結金具接続孔4aの直径は、それぞれ20mmに設計されている。ここで、第一被連結金具接続孔3aの直径とは、残存型枠パネル1の背面2aから残存型枠パネル連結具20(後述する)と第一被連結金具接続孔3aとが接する位置までの距離をいい、第二被連結金具接続孔4aの直径も同様である。
また、パネル本体2の内部の左右方向及び上下方向には、パネル本体2の強度を確保するために、複数の鉄筋5が設けられている。
【0017】
第一被連結金具3は、フック部6と、このフック部6の両端に連結された埋設部7とを備えている。第一被連結金具3は、埋設部7がパネル本体2の内部に埋め込まれ、フック部6をパネル本体2の背面2aから突出させ、パネル本体2に設けられる。この第一被連結金具3には、鋼製のものを使用でき、耐食性に優れた素材を使用することが好ましく、例えば、ステンレス鋼材(SUS304)や亜鉛メッキ鋼等を使用できる。
第二被連結金具4は、第一被連結具3と同様な構成となっている。
【0018】
次に、本実施形態に係る残存型枠パネル連結具20について説明する。
残存型枠パネル連結具20は、板状であり、
図3に示す通り、上側挿入部21と、支持具(セパレーター)11を取り付けるために取付け孔22a、bを有し、上側挿入部21とつながる中間部22と、残存型枠パネル1の裏面2aに接触する側面と反対側の側面に楔部23aを有し、中間部22とつながる下側挿入部23とを備えている。この上側挿入部21、中間部22、下側挿入部23は、一体として形成されている。
この残存型枠パネル連結具20は、鋼板製であり、例えば、ステンレス鋼が使用される。残存型枠パネル連結具20の長さLは、約175mmに設計され、上側挿入部21の長さL1は約55mm、中間部22の長さL2は約50mm、下側挿入部23の長さL3は約70mmである。また、この残存型枠パネル連結具20の厚みは、2.5mmから4.5mmである。
【0019】
本実施形態に係る残存型枠パネル連結具20は、下側挿入部23の構成に大きな特徴を有する。
下側挿入部23に形成された楔部23aは、上下方向Yの下側から上側に向けて幅が大きくなる傾斜部23bを有している。この傾斜部23bの長さL23bは10mm、高さH23bは1mmに設計されている(
図3(b))。さらに、傾斜部23bの下側挿入部23の側面23cに対する傾斜角度θ1は、3度から10度の範囲に設計されている。この傾斜角度θ1は、3度から10度が好ましく、5度から8度が最も好ましい。
【0020】
下側挿入部23の楔部23aの上側には、楔部23aとつながって形成されたストッパー部23dが形成されている。このストッパー部23dは、下側に傾斜部23eを有する三角形状であり、その頂点が、前後方向Xの後方に突き出すように形成されている。この傾斜部23eの高さL23eは4mmに設計されている。さらに、傾斜部23eの傾斜角度θ2は、下側挿入部23の側面23cに対して、15度以上で形成されている。
また、下側挿入部23の平坦部23fの幅Wは、平坦部23fの側部と第一被連結金具3との間に形成される隙間が0.1mmから0.5mmとなるように設計されている。
【0021】
上側挿入部21は、上側の残存型枠パネル1の第一被連結金具3の第一被連結金具接続孔3aに挿入され、嵌合される。
また、中間部22は、略くの字状に形成され、中間部22の上下に取付け孔22a、22bが形成されている。取付け孔22a、22bの直径は、約8mmである。
【0022】
次に、本実施形態に係る残存型枠パネル連結具20の使用方法について、説明する。
【0023】
残存型枠パネル連結具20は、
図5(a)に示したように、下側の残存型枠パネル1の上側に形成されている第一被連結金具3の第一被連結金具接続孔3aに、上側から挿入される。下側挿入部23を挿入した初期段階では、
図5(b)に示したように、平坦部23fの側部と第一被連結金具3との間に形成される隙間が形成されており、抵抗なく挿入される。
【0024】
そして、下側挿入部23の傾斜部23bが、第一被連結具接続孔3aに挿入されると、傾斜部23bと第一被連結金具3との間に形成される隙間が次第に狭くなり、最終的には、所定の位置で、傾斜部23bと第一被連結金具3とが接し、間隔はなくなる。
傾斜部23bと第一被連結金具3とが接する位置まで差し込んだ後、上側挿入部21の頭部をハンマーで打撃し、下側挿入部23を所定の位置まで押し込む。そうすると、下側挿入部23は、
図5(c)に示したように、傾斜部23bを介して、第一被連結具3と下側の残存型枠パネル1の背面2aとの間で、第一被連結金具3の弾性撓み反力を受けることにより、下側の残存型枠パネル1の背面2aの所定の位置に緩みなく当接される。
【0025】
下側挿入部23が、下側の残存型枠パネル1の背面2aの所定の位置に緩みなく当接された後、上側から残存型枠パネル1を積み重ねる。積み重ねる際、上側挿入部21は、上側の残存型枠パネル1の下側の第二被連結金具4の第二被連結金具接続孔4aに遊嵌される。
【0026】
そして、
図2に示すように、残存型枠パネル1を積み重ね、擁壁13の前面に残存型枠10を構築する。この際、残存型枠パネル連結具20と擁壁13とを支持具11によって連結することで、残存型枠パネル1は、擁壁13の前面に固定される。そして、残存型枠パネル1と擁壁13との間にコンクリート12を打設し、コンクリート12を硬化させる。
【0027】
以上の施工により、本実施形態に係る残存型枠パネル連結具20を使用して、上下の残存型枠パネル1が連結された残存型枠パネルの連結構造30が形成される。
具体的には、
図4に示したように、この残存型枠パネルの連結構造30は、残存型枠パネル1が、裏面2aの上側左右の所定位置に第一連結金具接続孔3aが形成された第一被連結金具3、及び裏面2aの下側左右の所定位置に第二被連結金具接続孔4aが形成された第二被連結金具4を有し、下側挿入部23は、少なくとも傾斜部23bを介して、第一被連結金具3と下側の残存型枠パネル1の背面2aとの間で、第一被連結金具3の弾性撓み反力を受け、かつ、上側挿入部21が上側の残存型枠パネル1の第二被連結金具4に挿入されたことで形成される。
【0028】
次に、本実施形態に係る残存型枠パネル連結具の作用及び効果について説明する。
【0029】
本実施形態に係る残存型枠パネル連結具20は、下側挿入部23の傾斜部23bが下側の残存型枠パネル1の第一被連結金具3の所定の位置まで挿入されると、下側挿入部23は、傾斜部23bを介して、第一被連結金具3と下側の残存型枠パネル1の背面2aとの間で、第一被連結金具3の弾性撓み反力を受け、下側の残存型枠パネル1の背面2aの所定の位置に緩みなく確実に当接される。そうすると、残存型枠パネルの施工途中に生じる作業工具の振動や衝撃等により、下側挿入部23が第一被連結金具3内で緩み、所定の位置からずれたり、傾いたりすることを回避できる。
したがって、作業者は、修復作業を行う必要がなく、効率よく、残存型枠パネルを積み上げることができる。
【0030】
また、本実施形態に係る残存型枠パネル連結具20では、楔部23aに傾斜部23bを有し、下側挿入部23の側面に対する傾斜部23bの傾斜角度θ1を3度から10度の範囲とすることで、残存型枠パネル連結具20は、確実に第一被連結金具3内に確実に嵌合され、所定の位置からずれたり、傾いたりすることを回避することができる。
傾斜部23bは、傾斜角度θ1が3度よりも小さく形成されている(例えばθ1が1度)と、楔の役割を果たさず、下側挿入部23は、第一被連結金具接続孔3aをすり抜けてしまい、傾斜部23bを介して、第一被連結金具3と下側の残存型枠パネル1の背面2aとの間で、第一被連結金具3の弾性撓み反力を受けることはない。そうすると、下側挿入部23を第一被連結金具3に嵌合することはできなくなり、残存型枠パネル連結具20としての機能を果たさなくなる。
【0031】
さらに、傾斜部23bは、傾斜角度θ1が10度よりも大きく形成されている(例えばθ1が30度)と、ハンマーで残存型枠パネル連結具20の頭部を打撃したときに下側の残存型枠パネル1の第一被連結金具3にしっかり嵌合されず、施工途中に生じる作業工具の振動や衝撃等によって、第一被連結金具3内で緩んでしまい、ずれたり、傾いたりするため、適切ではない。
【0032】
本実施形態に係る残存型枠パネル連結具20は、楔部23aの上側にストッパー部23dが形成されている。ストッパー部23dが形成されていることで、仮に、下側挿入部23が、楔部23a(傾斜部23b)の位置で、第一被連結金具3に当接されなかった場合でも、ストッパー部23dによって、下側挿入部23が第一被連結金具3から抜け落ちることを確実に回避できる。
【0033】
以上、本実施形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
残存型枠パネル連結具20のストッパー部23dは、残存型枠パネル連結具20が第一被連結金具3から抜け落ちてしまうことを回避できる形状であれば、本実施形態で示した形状に限定されない。例えば、このストッパー部23dは、
図6に示したように、下側挿入部23の平坦部23fに対し、略垂直に後方に突出している形状とすることができる。
【0034】
また、残存型枠パネル連結具20(各部)のサイズや第一連結金具3の直径、第二連結金具4の直径は、本実施形態で示したものに限定されず、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 残存型枠パネル
2 パネル本体
2a 裏面(背面)
3 第一被連結金具
3a 第一被連結具接続孔
4 第二被連結金具
4a 第二被連結具接続孔
5 鉄筋
6 フック部
7 埋設部
10 残存型枠
11 支持具(セパレーター)
12 コンクリート
13 擁壁
20 残存型枠パネル連結具
21 上側挿入部
22 中間部
22a、b 取付け孔
23 下側挿入部
23a 楔部
23b 傾斜部
23c 側面
23d ストッパー部
23e 傾斜部
23f 平坦部
30 残存型枠パネルの連結構造
100 上側の残存型枠パネル
101 下側の残存型枠パネル
102 被連結金具
103 残存型枠パネル連結具
104 下側挿入部分
105 上側挿入部分
106 被連結金具
θ1、θ2 傾斜角度
L23b 長さ
H23b 高さ
L、L1、L2、L3 長さ
W 幅
X 前後方向
Y 上下方向
【要約】
【課題】残存型枠パネルの施工途中に生じる作業工具の振動や衝撃によりパネル連結具の接続不良が生じることを回避できる残存型枠パネル連結具を提供する。
【解決手段】残存型枠パネル連結具20は、上側挿入部21と、上側挿入部21とつながる中間部22と、楔部23aを有し、中間部22とつながる下側挿入部23とを備え、楔部23aは傾斜部23bを有し、下側挿入部23の側面に対する傾斜部23bの傾斜角θ1は3度から10度の範囲であり、下側挿入部23の傾斜部23bが下側の残存型枠パネル1の第一被連結具3の所定の位置まで挿入されると、下側挿入部23は傾斜部23bを介して、第一被連結具3と下側の残存型枠パネル1の背面2aとの間で、第一被連結具3の弾性撓み反力を受け、施工途中に生じる作業工具の振動や衝撃により、下側挿入部23が第一被連結具3内で緩み、所定の位置からずれることを回避できる。
【選択図】
図3