【文献】
Industrial and EngineeringChemistry,1958年,Vol.50,pp.873−876
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
<塩化ビニル系樹脂用可塑剤>
本発明の塩化ビニル系樹脂用可塑剤は、下記一般式(1)で示される特定の構造を有するエポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステルからなることを特徴とする。
【化2】
なお、式中、R
1及びR
2は同一又は異なって、炭素数7〜13、好ましくは8〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、かつ式中R
1、R
2で示されるアルキル基の全量に対する直鎖状のアルキル基の比率が、50〜99%,好ましくは55〜95%、より好ましくは60〜95%、特に好ましくは70〜95%である。
【0028】
更に、前記アルキル基は、主として炭素数9〜11のアルキル基から構成され、炭素数9のアルキル基/炭素数10のアルキル基/炭素数11のアルキル基の比率(モル比)が10〜25/35〜50/30〜45の範囲であるか、または、90%以上(モル比)の炭素数9のアルキル基を含む。
【0029】
本発明のエポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(以下、「本エポキシ」または「本エポキシ化合物」という)は、可塑剤としての性能を満たすものであれば、特のその製造方法により限定されるものではないが、例えば、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸またはその酸無水物と特定の構造の飽和脂肪族アルコールをエステル化反応し、得られた4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(以下、「本エステル」ということもある)を所定の条件でエポキシ化することにより、容易に得られる。また、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸またはその酸無水物をエポキシ化後、得られた4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸またはその酸無水物と特定の構造の飽和脂肪族アルコールをエステル化する方法で得ることもできる。更に、上記飽和脂肪族アルコールの種類によっては、予め炭素数1〜6程度の低級アルコールとエステル化後、上記飽和脂肪族アルコールを加えて、エステル交換反応により得る方法もある。簡便性等、実用性の観点から、エステル化後にエポキシ化する方法が最も好ましい。
【0030】
[飽和脂肪族アルコール]
上記のエステル化反応又はエステル交換反応に用いられる飽和脂肪族アルコールは、炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールであり、好ましく炭素数8〜12、より好ましくは9〜11の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールであり、特に好ましくは、(i)炭素数9の飽和脂肪族アルコールを90%以上(モル比)、より好ましくは95%以上含む直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコール、又は(ii)主として炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールからなり、炭素数9のアルキル基/炭素数10のアルキル基/炭素数11のアルキル基の比率(モル比)が10〜25/35〜50/30〜45の範囲である飽和脂肪族アルコールである。なお、上記「主として」とは、飽和脂肪族アルコール全体に占める炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールの比率(モル比)が90%以上、好ましくは95%以上を意味する。当該飽和脂肪族アルコールは、前記一般式(1)で示されるエポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステルを構成するアルキル基となる原料アルコールであり、即ち前記説明は該アルキル基の説明と同義となる。
【0031】
また、上記飽和脂肪族アルコールは、該アルコール中に占める直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率(モル比)が、50〜99%、好ましくは55〜95%、より好ましくは60〜95%、特に好ましくは70〜95%であることを特徴とする。
【0032】
本発明に係る飽和脂肪族アルコールの態様の詳細はとしては、(i)炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールからなり、炭素数9の飽和脂肪族アルコールの比率(モル比)が90%以上、好ましくは95%以上で、かつ直鎖状の飽和脂肪族アルコールの占める比率(モル比)が50〜99%、好ましくは55〜95%、より好ましくは60〜95%、特に好ましくは70〜95%である態様、または、(ii)炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールからなる、主として炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールの混合物であり、更に、炭素数9、10、11の各アルコールの占める比率(モル比)が、10〜25/35〜50/30〜45となる範囲であり、かつ直鎖状の飽和脂肪族アルコール占める比率(モル比)が50〜99%、好ましくは55〜95%、より好ましくは60〜95%、特に好ましくは70〜95%である態様等が推奨される。
【0033】
炭素数7未満の飽和脂肪族アルコールが含まれると、十分な耐寒性や耐揮発性が得られ難く、また炭素数13を越えた飽和脂肪族アルコールが含まれると、樹脂との相溶性が悪くなる傾向があり、可塑化効率等が低下し、好ましくない。同様に、直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率が50%未満の場合には十分な耐寒性や耐揮発性が得られ難く、直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率が99%を超えると樹脂との相溶性が悪くなり、可塑化効率等の低下の懸念が出てくるため、いずれも好ましくない。
【0034】
90%以上の炭素数9の飽和脂肪族アルコールを含み、かつ直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率が50〜99%である飽和脂肪族アルコールは、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造方法により製造することができ、その製造方法で得られた飽和脂肪族アルコールをそのまま用いるか又は含有させることにより、本発明に係る飽和脂肪族アルコールとすることができる。
【0035】
前記工程(1)のヒドロホルミル化反応は、例えば、コバルト触媒又はロジウム触媒の存在下、1−オクテン、一酸化炭素及び水素を反応することにより炭素数9のアルデヒドを製造することができる。
【0036】
前記工程(2)の水素添加は、例えば、ニッケル触媒又はパラジウム触媒等の貴金属触媒の存在下、炭素数9のアルデヒドを水素加圧下で、水素添加することによりアルコールに還元することができる。市販品の具体例としては、シェルケミカルズ社のリネボール9などが挙げられる。
【0037】
同じく、主として炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールからなり、炭素数9のアルキル基/炭素数10のアルキル基/炭素数11のアルキル基の比率(モル比)が10〜25/35〜50/30〜45の範囲である飽和脂肪族アルコールで、直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率(モル比)が50〜99%である飽和脂肪族アルコールは、(1)1−オクテン、1−ノネン、1−デケンと一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9〜11のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9〜11のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造方法により製造することができ、その製造方法で得られた飽和脂肪族アルコールをそのまま用いるか又は含有させることにより、本発明に係る飽和脂肪族アルコールとすることができる。
【0038】
前記工程(1)のヒドロホルミル化反応は、例えば、コバルト触媒又はロジウム触媒の存在下、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、一酸化炭素及び水素を反応することにより炭素数9〜11のアルデヒドを製造することができる。
【0039】
前記工程(2)の水素添加は、例えば、ニッケル触媒又はパラジウム触媒等の貴金属触媒の存在下、炭素数9〜11のアルデヒドを水素加圧下で、水素添加することによりアルコールに還元することができる。市販品の具体例としては、シェルケミカルズ社のネオドール911などが挙げられる。
【0040】
[エステル化反応]
本発明に係るエステル化反応とは、本エポキシ化合物を得るためのエポキシ化反応の原料である4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(以下、「本エステル」という)を得るための上記アルコールと4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸又はその酸無水物とのエステル化反応を意味し、そのエステル化反応を行うに際し、該アルコールは、例えば、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸又はその酸無水物1モルに対して、好ましくは2.00モル〜5.00モル、より好ましくは2.01モル〜3.00モル、特に好ましくは2.02モル〜2.50モルを使用することが推奨される。
【0041】
エステル化反応に触媒を使用する場合、その触媒としては、鉱酸、有機酸、ルイス酸類等が例示される。より具体的には、鉱酸として、硫酸、塩酸、燐酸等が例示され、有機酸としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等が例示され、ルイス酸としては、アルミニウム誘導体、スズ誘導体、チタン誘導体、鉛誘導体、亜鉛誘導体等が例示され、これらの1種又は2種以上を併用することが可能である。
【0042】
それらの中でも、p−トルエンスルホン酸、炭素数3〜8のテトラアルキルチタネート、酸化チタン、水酸化チタン、炭素数3〜12の脂肪酸スズ、酸化スズ、水酸化スズ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化鉛、水酸化鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが特に好ましい。その使用量は、例えば、エステル合成原料である酸成分およびアルコール成分の総重量に対して、好ましくは0.01重量%〜5.0重量%、より好ましくは0.02重量%〜4.0重量%、特に0.03重量%〜3.0重量%を使用することが推奨される。
【0043】
エステル化温度としては、100℃〜230℃が例示され、通常、3時間〜30時間で反応は完結する。
【0044】
本エステルの原料である、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸若しくはその酸無水物は、特に制限はなく、公知の方法で製造したものや、市販品、試薬等で入手できるものなどが使用できる。例えば、市販品としてリカシッドTH(商品名,新日本理化(株))などが例示される。4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物は、通常、無水マレイン酸と1,3−ブタジエンとをディールス・アルダー反応して得られる。エステル化反応の観点から、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を使用することが推奨される。
【0045】
エステル化においては、反応により生成する水の留出を促進するために、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの水同伴剤を使用することが可能である。
【0046】
また、エステル化反応時に原料、生成エステル及び有機溶媒(水同伴剤)の酸化劣化により酸化物、過酸化物、カルボニル化合物などの含酸素有機化合物を生成すると耐熱性、耐候性等に悪影響を与えるため、系内を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下又は不活性ガス気流下で、常圧ないし減圧下にて反応を行うことが望ましい。エステル化反応終了後、過剰の原料を減圧下または常圧下にて留去することが推奨される。
【0047】
上記エステル化方法により得られた本エステルは、引き続き、必要に応じて塩基処理(中和処理)→水洗処理、液液抽出、蒸留(減圧、脱水処理)、吸着精製等により精製してもよい。
【0048】
塩基処理に用いる塩基としては、塩基性の化合物であれば特に制約はなく、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが例示される。
【0049】
吸着精製に用いる吸着剤としては、活性炭、活性白土、活性アルミナ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、シリカアルミナ、ゼオライト、マグネシア、カルシア、珪藻土などが例示される。それらを1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0050】
上記処理は、減圧下または常圧下、常温で行なっても良いが、40〜90℃程度に加温して行なうこともできる。
【0051】
[エポキシ化反応]
本発明に係るエポキシ化反応とは、本エポキシ化合物を得るための上記本エステル中の不飽和結合のエポキシ化反応を意味し、通常、「有機合成化学、第23巻第7号、612〜619頁(1985)」等に記載されているよく知られたエポキシ化反応を用いて、容易に行うことができる。
例えば、(i)エポキシ化剤に過酢酸や過蟻酸の様な有機過酸を用いる方法や(ii)エポキシ化剤に過酸化水素を用いる方法などが挙げられる。
【0052】
より具体的には、(i)の方法の場合、例えば、過酸化水素と無水酢酸または酢酸を硫酸のような強酸を触媒として反応させて得られた過酢酸を、本エステルに加え、20〜30℃で数時間攪拌した後、徐々に温度を上げていき、50〜60℃に到達した後、2〜3時間その温度を保持して反応を完結させることができる。上記有機過酸としては、上記以外にも、モノ過フタル酸、過メタクロル安息香酸、過トリフルオル酢酸なども使うことができる。
【0053】
また、(ii)の方法の場合、例えば、蟻酸などの酸素キャリアーや硫酸などの強酸触媒の共存下、本エステルに反応させることによりエポキシ化することができる。より具体的には、過酸化水素1モルに対して、酢酸または蟻酸を0.5モル以下、触媒として硫酸を0.05モル以下の少量用いて、40〜70℃で2〜15時間その温度を保持して反応させることにより、容易に本エステルをエポキシさせることができる。上記触媒としては、上記以外にも、燐酸、塩酸、硝酸、硼酸、またはその塩などがよく知られており、また、スルホン酸型強酸性陽イオン交換樹脂や酸化アルミニウムなども有効である。
【0054】
上記エポキシ化反応終了後、必要に応じて水相除去、水洗処理、液液抽出、脱水処理により精製してもよい。
【0055】
<軟質塩化ビニル系樹脂組成物>
本発明の軟質塩化ビニル系樹脂組成物は、上述した本エポキシ化合物を可塑剤として塩化ビニル系樹脂に配合することにより得られる。
【0056】
[塩化ビニル系樹脂]
本発明で用いられる塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの単独重合体及び塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの共重合体であり、その製造方法は、従来公知の重合方法で行われる。例えば、汎用塩化ビニル樹脂の場合は、油溶性重合触媒の存在下に懸濁重合する方法などが挙げられる。また、塩化ビニルペースト樹脂では水性媒体中で水溶性重合触媒の存在下に乳化重合する方法などが挙げられる。これらの塩化ビニル系樹脂の重合度は、通常300から5000であり、好ましくは400〜3500、さらに好ましくは700〜3000である。この重合度が低すぎると耐熱性等が低下し、高すぎると成形加工性が低下する傾向がある。
【0057】
共重合体の場合、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン等の炭素数2〜30のα−オレフィン類、アクリル酸およびそのエステル類、メタクリル酸およびそのエステル類、マレイン酸およびそのエステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテル等のビニル化合物、ジアリルフタレート等の多官能性モノマー及びこれらの混合物と塩化ビニルモノマーとの共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩素化ポリエチレン、ブチルゴム、架橋アクリルゴム、ポリウレタン、ブタジエンースチレンーメチルメタクリレート共重合体(MBS)、ブタジエンーアクリロニトリルー(α−メチル)スチレン共重合体(ABS)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート及びこれらの混合物へ塩化ビニルモノマーをグラフトしたグラフト共重合体等が例示される。
【0058】
[軟質塩化ビニル系樹脂組成物]
本発明に係る軟質塩化ビニル系樹脂組成物における本エポキシ化合物の含有量としては、その用途に応じて適宜選択されるが、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、好ましくは20〜200重量部であり、より好ましくは30〜150重量部である。20重量部以上であれば、柔軟性の要求される用途においても十分な柔軟性を得ることができ、更に柔軟性の要求される用途では、適宜その配合量を調整することにより柔軟性を付与することができるが、成形品表面へのブリード等が懸念される用途では、200重量部以下であれば、その懸念もなく、好ましく使用することができる。但し、上記の塩化ビニル系樹脂組成物に対して充填剤などを添加する場合は、充填剤自身が吸油するために上記の範囲を超えて当該可塑剤を配合する場合もある。例えば、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、充填剤として炭酸カルシウムを100重量部配合した場合には、当該可塑剤を500重量部程度まで配合されていてもよい。
【0059】
軟質塩化ビニル系樹脂組成物は、本エポキシ化合物と共に他の公知の可塑剤を併用することもできる。また、必要に応じて難燃剤、安定剤、安定化助剤、着色剤、加工助剤、充填剤、酸化防止剤(老化防止剤)、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン等の光安定剤、滑剤或いは帯電防止剤等の添加剤を適宜配合して使用されることが多い。
【0060】
上記本エポキシ化合物以外の他の可塑剤、添加剤は、1種でまたは2種以上組み合わせて本エポキシ化合物と共に配合されていてもよい。
【0061】
本エポキシ化合物と併用することができる他の可塑剤としては、本技術分野で従来から使用されている公知の可塑剤が使用でき、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート等の安息香酸エステル類、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)、テレフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOTP)、イソフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOIP)等のフタル酸エステル類、4−シクロヘキセン−1, 2−ジカルボン酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOTH)等のテトラヒドロフタル酸エステル類、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOS)、セバシン酸ジイソノニル(DINS)等の脂肪族二塩基酸エステル類、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(TOTM)、トリメリット酸トリイソノニル(TINTM)、トリメリット酸トリイソデシル(TIDTM)等のトリメリット酸エステル類、ピロメリット酸テトラ−2−エチルヘキシル(TOPM)等のピロメリット酸エステル類、リン酸トリ−2−エチルヘキシル(TOP)、リン酸トリクレジル(TCP)等のリン酸エステル類、ペンタエリスリトール等の多価アルコールのアルキルエステル類、アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとのポリエステル化によって合成された分子量800〜4000のポリエステル類、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化エステル類、DINCH等の脂環式二塩基酸エステル類、ジカプリン酸−1,4−ブタンジオール等の脂肪酸グリコールエステル類、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、アセチルクエン酸トリヘキシル(ATHC)、アセチルクエン酸トリエチルヘキシル(ATEHC)、ブチリルクエン酸トリヘキシル(BTHC)等のクエン酸エステル類、イソソルビドジエステル類、パラフィンワックスやn−パラフィンを塩素化した塩素化パラフィン類、塩素化ステアリン酸エステル等の塩素化脂肪酸エステル類、オレイン酸ブチル等の高級脂肪酸エステル類等が例示される。上記併用できる他の可塑剤を配合する場合、その配合量は、本発明に係る可塑剤の効果を損なわない範囲で適宜選択され、通常、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、1〜100重量部程度が推奨される。
【0062】
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等の無機系化合物、クレジルジフェニルホスフェート、トリスクロロエチルフォスフェート、トリスクロロプロピルフォスフェート、トリスジクロロプロピルフォスフェート等のリン系化合物、塩素化パラフィン等のハロゲン系化合物等が例示される。難燃剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する難燃剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
【0063】
安定剤としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸バリウム、オクチル酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の金属を含む有機酸化合物等の金属石鹸化合物、ステアリン酸バリウム−亜鉛、ラウリン酸バリウム−亜鉛、リシノール酸バリウム−亜鉛、オクチル酸バリウム−亜鉛、ステアリン酸カルシウム−亜鉛、ラウリン酸カルシウム−亜鉛、リシノール酸カルシウム−亜鉛、オクチル酸カルシウム−亜鉛等の複合金属を含む有機酸化合物等の金属石鹸化合物、ジメチルスズビス−2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズビスブチルマレエート、ジブチルスズジラウレート等の有機錫系化合物、アンチモンメルカプタイド化合物等が例示される。安定剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する安定剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
【0064】
安定化助剤としては、トリフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリデシルフォスファイト等のホスファイト系化合物、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等のベータジケトン化合物、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等のポリオール化合物、過塩素酸バリウム塩、過塩素酸ナトリウム塩等の過塩素酸塩化合物、ハイドロタルサイト化合物、ゼオライトなどが例示される。安定化助剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する安定化助剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
【0065】
着色剤としては、カーボンブラック、硫化鉛、ホワイトカーボン、チタン白、リトポン、べにがら、硫化アンチモン、クロム黄、クロム緑、コバルト青、モリブデン橙などが例示される。着色剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する着色剤の配合量は1〜100重量部程度が推奨される。
【0066】
加工助剤としては、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ブチルステアエレート、ステアリン酸カルシウムなどが例示される。加工助剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する加工助剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
【0067】
充填剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、珪藻土、フェライト、などの金属酸化物、ガラス、炭素、金属などの繊維及び粉末、ガラス球、グラファイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウムなどが例示される。充填剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する充填剤の配合量は1〜100重量部程度が推奨される。
【0068】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート]メタン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのフェノール系化合物、アルキルジスルフィド、チオジプロピオン酸エステル、ベンゾチアゾールなどの硫黄系化合物、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン酸系化合物、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛などの有機金属系化合物などが例示される。また酸化防止剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する酸化防止剤の配合量は0.2〜20重量部程度が推奨される。
【0069】
紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレートなどのサリシレート系化合物、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、1−ジオクチルアミノメチルベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物の他、シアノアクリレート系化合物などが例示される。紫外線吸収剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する紫外線吸収剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
【0070】
ヒンダードアミン系の光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(混合物)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステル及び1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールと高級脂肪酸のエステル混合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重縮合物、ポリ[{(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}}、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N' −ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、N,N' ,N'' ,N''' −テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン等が例示される。光安定剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する光安定剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
【0071】
滑剤としては、シリコーン、流動パラフィン、バラフィンワックス、ステアリン酸金属やラウリン酸金属塩などの脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド類、脂肪酸ワックス、高級脂肪酸ワックス等が例示される。滑剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する滑剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
【0072】
帯電防止剤としては、アルキルスルホネート型、アルキルエーテルカルボン酸型又はジアルキルスルホサクシネート型のアニオン性帯電防止剤、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン誘導体、ジエタノールアミン誘導体などのノニオン性帯電防止剤、アルキルアミドアミン型、アルキルジメチルベンジル型などの第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム型の有機酸塩又は塩酸塩などのカチオン性帯電防止剤、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型などの両性帯電防止剤などが例示される。帯電防止剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する帯電防止剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
【0073】
本発明の軟質塩化ビニル系樹脂組成物は、本エポキシ化合物、塩化ビニル系樹脂及び必要に応じて各種添加剤を例えばモルタルミキサー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、リボンブレンダー等の攪拌機により攪拌混合を行い、軟質塩化ビニル系樹脂組成物の混合粉とすることができる。
【0074】
また、本エポキシ化合物、塩化ビニル系樹脂及び必要に応じて各種添加剤を、例えばコニカル二軸押出機、パラレル二軸押出機、単軸押出機、コニーダー型混練機、ロール混練機等の混練機により溶融成形することによりペレット状の軟質塩化ビニル系樹脂組成物を得ることもできる。
【0075】
また、本エポキシ化合物、塩化ビニル系ペースト樹脂及び必要に応じて本エポキシ化合物以外の他の可塑剤や各種添加剤を、例えばポニーミキサー、バタフライミキサー、プラネタリミキサー、リボンブレンダー、ニーダー、ディゾルバー、二軸ミキサー、ヘンシェルミキサー、三本ロールミル等の混合機により均一に混合し、必要に応じて減圧下で脱泡処理し、ペースト状の軟質塩化ビニル系樹脂組成物を得ることもできる。
【0076】
[塩化ビニル系成形体]
本発明に係る軟質塩化ビニル系樹脂組成物(配合粉状やペレット状)を、真空成型、圧縮成形、押出成形、射出成形、カレンダー成形、プレス成形、ブロー成形、粉体成形等の従来公知の方法を用いて溶融成形加工することにより、所望の形状に成形することができる。
【0077】
一方、上記ペースト状の軟質塩化ビニル系樹脂組成物は、スプレッド成形、ディッピング成形、グラビア成形、スラッシュ成形、スクリーン加工等の従来公知の方法を用いて成形加工することにより、所望の形状に成形することができる。
【0078】
成形体の形状としては、特に限定されないが、例えば、ロッド状、シート状、フィルム状、板状、円筒状、円形、楕円形等あるいは玩具、装飾品等特殊な形状のもの、例えば星形、多角形形状が例示される。
【0079】
かくして得られた成形体は、自動車アンダーボディコート、インストルメントパネル、コンソール、ドアシート、アンダーカーペット、トランクシート、ドアトリム類などの自動車装材、各種レザー類、装飾シート、農業用フィルム、食品包装用フィルム、電線被覆、各種発泡製品、ホース、医療用チューブ、食品用チューブ、冷蔵庫用ガスケット、パッキン類、壁紙、床材、ブーツ、カーテン、靴底、手袋、止水板、玩具、化粧板、血液バック、輸液バック、ターポリン、マット類、遮水シート、土木シート、ルーフィング、防水シート、絶縁シート、工業用テープ、ガラスフィルム、字消し等に有用である。
【実施例】
【0080】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、実施例や比較例中の化合物の略号、及び各特性の測定は以下の通りである。
【0081】
(1)アルキル基の炭素数と直鎖状アルキル基の比率
本発明の実施例及び比較例で用いる可塑剤中のアルキル基の炭素数と直鎖状アルキル基の比率は、その製造に用いた原料アルコール中の組成をガスクロマトグラフィー(以下GCと略記)によって測定し、その結果を可塑剤中のアルキル基の炭素数と直鎖状アルキル基の比率とした。前記GCによる原料アルコールの測定方法は次のとおりである。
《GCの測定条件》
機種:ガスクロマトグラフ GC−17A(島津製作所製)
検出器:FID
カラム:キャピラリーカラム ZB−1 30m
カラム温度:60℃から290℃まで昇温。昇温速度=13℃/分
キャリアガス:ヘリウム
試料:50%アセトン溶液
注入量:1μl
定量:安息香酸n−プロピルを内部標準物質として用い定量した。
前記内部標準物質の選定に当たっては、原料アルコールに安息香酸n−プロピルがGCで検出限界以下であったことを予め確認した。
なお、上述のエステル化反応において、本発明の範囲内では原料アルコールの構造による反応性に差異はなく、用いた原料アルコール中の組成比と本エステル並びに本エポキシ中のアルキル基の組成比に差異がないことは、予め確認している。
【0082】
(2)本エポキシ化合物の物性評価
下記の製造例で得られたエステルは次の方法で分析を行った。
エステル価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
酸価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
ヨウ素価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
オキシラン酸素:基準油脂分析試験法 2.3.7.1-2013「オキシラン酸素定量方法(その1)」に準拠して測定した。
色相:JIS K−0071(1998)に準拠して測定して、ハーゼン単位色数を求めた。
【0083】
(3)成形加工性
塩化ビニル樹脂(ストレート、重合度1050、商品名「Zest1000Z」、新第一塩ビ(株)製)2gに可塑剤10gを入れ混合したサンプル約0.01gをスライドガラス上に滴下し、カバーガラスをかけ、微量融点測定器にセットした。5℃/minの速度で昇温し、加熱昇温による塩化ビニル樹脂の粒子の状態変化を観察し、塩化ビニル樹脂の粒子が溶け始める温度と該粒子が透明になった温度をそれぞれゲル化開始温度およびゲル化終了温度とし、その平均値をゲル化温度とした。ゲル化温度が低いほど可塑剤の吸収速度が速く加工性に優れる。
【0084】
(4)塩化ビニルシートの作製(引張特性、耐寒性、耐熱性試験用シート)
塩化ビニル樹脂(ストレート、重合度1050、商品名「Zest1000Z」、新第一塩ビ(株)製)100重量部に、安定剤としてカルシウムステアレート(ナカライテスク(株)製)及びジンクステアレート(ナカライテスク(株)製)を各々0.3及び0.2重量部を配合し、モルタルミキサーで攪拌混合した後、可塑剤50重量部を加え、均一になるまでハンドリング混合し塩化ビニル樹脂組成物とした。この樹脂組成物を5×12インチの二本ロールを用いて160〜166℃で4分間溶融混練しロールシートを作製した。続いて162〜168℃×10分間プレス成形を行い、厚さ約1mmのプレスシートを作製した。
【0085】
[樹脂の物性評価]
(5)引張特性:JIS K−6723(1995)に準拠し、プレスシートの100%モジュラス、破断強度、破断伸びを測定した。100%モジュラスの値が小さいほど柔軟性が良好であることを示し、破断強度、破断伸びはその材料の実用的な強度の目安であり、一般的にはその値が大きいほど実用的な強度に優れると言うことができる。
【0086】
(6)耐寒性:クラッシュベルグ試験機を用いて、JIS K−6773(1999)に準拠して測定した。柔軟温度(℃)が低いほど耐寒性に優れる。ここで言う柔軟温度とは、前記測定において所定のねじり剛性率(3.17×10
3kg/cm
2)を示す低温限界の温度を指す。
【0087】
(7)耐熱性:揮発減量及びシート着色の評価による。
a)揮発減量:ギヤーオーブン中、ロールシートを170℃で60分、120分加熱した後のシートの重量変化を測定し、下記の式に従って揮発減量(%)を算出した。
揮発減量の数値が小さいほど、耐熱性が高い。
揮発減量(%)=((試験前の重量―試験後の重量)/試験前の重量)×100
b)シート着色 :ギヤーオーブン中、ロールシートを170℃で30分、60分間加熱した後の着色度の強弱を目視により6段階で評価した。
◎:着色なし、 ○:僅かに着色、 ○△:少し着色、
△:着色、 ×:強い着色、 ××:著しい着色
【0088】
[製造例1]
エステル化反応
温度計、デカンター、攪拌羽、還流冷却管を備えた2L四ツ口フラスコに、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物182.6g(1.2モル,新日本理化(株)製:リカシッドTH)、炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコール重量85.1%と炭素数9の分岐鎖状の飽和族飽和アルコール重量11.7%を含む飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)416g(2.9モル)、及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.24gを加え、反応温度を200℃としてエステル化反応を実施した。減圧下アルコールを還流させて生成水を系外へ除去しながら、反応溶液の酸価が0.5mgKOH/gになるまで反応を行った。反応終了後、未反応アルコールを減圧下で系外へ留去した後、常法に従って中和、水洗、脱水して目的とする4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(以下、「エステル1」という。)449gを得た。
得られたエステル1は、エステル価:254mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、色相:15であった。
【0089】
エポキシ化反応
次に、上温度計、攪拌羽、冷却管を備えた1L四ツ口フラスコに、上記エステル化反応で得られたエステル1を423g(1.0モル)仕込み、60〜70℃に昇温した。昇温後、60%過酸化水素水76.6g(1.35モル)、76%蟻酸18.3g(0.30モル)、及び75%燐酸1.47g(0.01モル)を2.25時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、更に4時間上記温度を保持し、熟成して反応を完了した。反応終了後、水相を系外へ除去した後、常法に従って、水洗、脱水して目的とする4,5−エポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(以下、「エポキシ1」という。)397gを得た。
得られたエポキシ1は、エステル価:256mgKOH/g、酸価:0.06mgKOH/g、ヨウ素価:2.5gI
2/100g、オキシラン酸素:3.5%、色相:10であった。
【0090】
[製造例2]
飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)416gの代わりに、炭素数9/10/11の比率が19/43/38であり、全体の直鎖率が84%である炭素数9〜11の混合飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:ネオドール911)400g(2.5モル)を加えた以外は製造例1と同様に実施して、4,5−エポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(以下、「エポキシ2」という。)404gを得た。
得られたエポキシ2は、エステル価:242mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、ヨウ素価:1.9gI
2/100g、オキシラン酸素:3.1%、色相:10であった。
【0091】
[製造例3]
飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)416gの代わりに、n−ノニルアルコール251g(1.7モル)とイソノニルアルコール167g(1.2モル)を加えた以外は製造例1と同様に実施して、4,5−エポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(以下、「エポキシ3」という。)390gを得た。
得られたエポキシ3は、エステル価:250mgKOH/g、酸価:0.02mgKOH/g、ヨウ素価:1.9gI
2/100g、オキシラン酸素:3.3%、色数:10であった。
【0092】
[製造例4]
飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)416gの代わりに、2−エチルヘキサノール374g(2.9モル)を加えた以外は製造例1と同様に実施して、4,5−エポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(以下、「エポキシ4」という。)390gを得た。
得られたエポキシ4は、エステル価:273mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、ヨウ素価:3.3gI
2/100g、オキシラン酸素:3.5%、色相:10であった。
【0093】
[製造例5]
飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)416gの代わりに、イソノニルアルコール416g(2.9モル)を加えた以外は製造例1と同様に実施して、4,5−エポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(以下、「エポキシ5」という。)379gを得た。
得られたエポキシ5は、エステル価:255mgKOH/g、酸価:0.05mgKOH/g、ヨウ素価:1.6gI
2/100g、オキシラン酸素:3.4%、色相:10であった。
【0094】
[製造例6]
飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)416gの代わりに、イソデシルアルコール459g(2.9モル)を加えた以外は製造例1と同様に実施して、4,5−エポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(以下、「エポキシ6」という。)410gを得た。
得られたエポキシ6は、エステル価:239mgKOH/g、酸価:0.05mgKOH/g、ヨウ素価:2.0gI
2/100g、オキシラン酸素:3.1%、色相:10であった。
【0095】
[実施例1]
上記「(3)成形加工性」に記載した方法に従って、製造例1で得られたエポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(エポキシ1)を用いて成形加工性(ゲル化温度)を測定した。得られた結果を表1に示した。
続いて、上記「(4)塩化ビニルシートの作製」に記載した通り、エポキシ1を可塑剤として用いて軟質塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた軟質塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果を表1に示した。
【0096】
[実施例2]
エポキシ1の代わりにエポキシ2を用いた以外は実施例1と同様に実施して、成形加工性を測定し、続いて軟質塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた軟質塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
【0097】
[実施例3]
エポキシ1の代わりにエポキシ3を用いた以外は実施例1と同様に実施して、成形加工性を測定し、続いて軟質塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた軟質塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
【0098】
[比較例1]
エポキシ1の代わりにエポキシ4を用いた以外は実施例1と同様に実施して、成形加工性を測定し、続いて軟質塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた軟質塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
【0099】
[比較例2]
エポキシ1の代わりにエポキシ5を用いた以外は実施例1と同様に実施して、成形加工性を測定し、続いて軟質塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた軟質塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
【0100】
[比較例3]
エポキシ1の代わりにエポキシ6を用いた以外は実施例1と同様に実施して、成形加工性を測定し、続いて軟質塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた軟質塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
【0101】
[比較例4]
エポキシ1の代わりにフタル酸ジ2-エチルヘキシル(新日本理化(株)製、サンソサイザーDOP)を用いた以外は実施例1と同様に実施して、成形加工性を測定し、続いて軟質塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた軟質塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
【0102】
[比較例5]
エポキシ1の代わりにフタル酸ジイソノニル(新日本理化(株)製、サンソサイザーDINP)を用いた以外は実施例1と同様に実施して、成形加工性を測定し、続いて軟質塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた軟質塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
【0103】
[比較例6]
エポキシ1の代わりに市販のトリメリット酸トリ2?エチルヘキシル(TOTM)を用いた以外は実施例1と同様に実施して、成形加工性を測定し、続いて軟質塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた軟質塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
【0104】
【表1】
【0105】
表1に結果より、本発明の4,5−エポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(実施例1〜3)を可塑剤として用いることにより、現在最も良く使われているフタル酸ジエステル(比較例4、5)を用いた場合と較べると、同等の成形加工性、柔軟性及び耐寒性を保持しつつ、耐熱性、特に加熱着色性を大きく改善できることがわかる。更に、耐熱用可塑剤としてよく使われているトリメリット酸エステル(比較例6)と較べても、耐揮発性は若干劣るものの、耐熱着色性では大きく向上されており、優れた成形加工性、柔軟性、耐寒性を考慮するとその有用性は明らかである。また、表1の結果より、本発明の4,5−エポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(実施例1、3)を可塑剤として用いることにより、従来の4,5−エポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(比較例1)を用いた場合と較べて、同等の成形加工性や柔軟性を保持しつつ、耐寒性及び耐熱性を大きく改善されていることがわかる。更に、本発明の範囲外の4,5−エポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(比較例2、3)を用いた場合と較べても、その効果は明瞭である。同じく、本発明の4,5−エポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(実施例2)を可塑剤として用いた場合には、汎用可塑剤であるフタル酸ジエステルと同等以上の成形加工性を示し、更に耐寒性や耐熱性がより向上されており、より厳しい環境下で使用する場合に特に有用であることがわかる。