(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6823255
(24)【登録日】2021年1月13日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】ロボットハンド及び成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20210121BHJP
B29C 49/72 20060101ALI20210121BHJP
B29C 49/42 20060101ALI20210121BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20210121BHJP
B29C 49/48 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
B25J15/08 D
B29C49/72
B29C49/42
B29C49/04
B29C49/48
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-254184(P2016-254184)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-103328(P2018-103328A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】丹治 忠敏
(72)【発明者】
【氏名】浜口 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】大野 慶詞
【審査官】
樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−220684(JP,A)
【文献】
特開平07−196153(JP,A)
【文献】
特開平09−295287(JP,A)
【文献】
特開平10−052144(JP,A)
【文献】
特開2015−160422(JP,A)
【文献】
特開2011−115980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/08
B29C 49/04
B29C 49/42
B29C 49/48
B29C 49/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、前記ベースに設けられ且つ物体を挟持するための一対のアームを備えるロボットハンドであって、
前記一対のアームは、その間の間隔が可変になるように前記ベースに設けられ、
前記一対のアームのそれぞれは、細長い形状の細長部と、前記細長部から突出する突出部を備え、
前記突出部は、前記物体に当接する当接面と、前記当接面から前記ベースの方向に前記細長部に向かって傾斜する傾斜面を備える、ロボットハンド。
【請求項2】
前記傾斜面は、前記細長部の長手方向に対する角度が15〜75度である、請求項1に関する。ロボットハンド。
【請求項3】
前記突出部は、前記細長部の長手方向に対して垂直になるように前記細長部から突出し且つ前記当接面を有する垂直突出部と、前記垂直突出部に隣接して設けられ且つ前記傾斜面を有する傾斜部を備える、請求項1又は請求項2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記当接面は、凹凸形状を有する、請求項1〜請求項3の何れか1つに記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記一対のアームは、前記ベースに設けられた支点を中心にして回転することによって開閉されるように構成される、請求項1〜請求項4の何れか1つに記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記細長部は、基端部での厚さが、前記基端部と前記突出部の間の部位での厚さよりも大きくなっている、請求項1〜請求項5の何れか1つに記載のロボットハンド。
【請求項7】
前記ベースに固定され且つ前記物体に切り込みを入れるために用いられるカッターを備える、請求項1〜請求項6の何れか1つに記載のロボットハンド。
【請求項8】
一対の分割金型を用いてパリソンを成形することによってバリ付き成形体を形成する成形工程と、
請求項1〜請求項7の何れか1つに記載のロボットハンドを用いて前記バリを除去するバリ除去工程を備える、成形体の製造方法であって、
前記成形工程において、前記成形体と前記バリの間には前記バリよりも肉厚が小さい薄肉部が設けられ、
前記バリ除去工程において、前記バリの除去は、前記一対のアームの前記当接面の間に前記バリを挟持して引っ張って、前記薄肉部を裂くことによって行われる、成形体の製造方法。
【請求項9】
前記薄肉部を裂く工程は、前記成形体と前記バリの間に前記薄肉部の面外方向の力を前記薄肉部に加えることによって行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ロボットハンドは、前記ベースに固定され且つ前記物体に切り込みを入れるために用いられるカッターを備え、
前記成形は、前記パーティングライン上に設けられたブローピンを用いて前記パリソン内にエアーを吹き込むブロー成形によって行われ、
前記バリ除去工程は、前記カッターを用いて、前記ブローピンの周囲に対応する部位に形成された筒部に切り込みを設けた後に行われる、請求項8又は請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記一対の分割金型は、前記一対のアームが前記バリを挟持して引っ張る際に前記突出部が引っかかる引っかかり部が前記バリに形成されるように構成される、請求項8〜請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体のバリ除去に利用可能なロボットハンド、及びこのロボットハンドを用いてバリ除去を行う工程を備える成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場においては、ロボットを用いた省人化が進められている。特許文献1には、一対のL字のアームで成形品のバリを把持して成形品から分離する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−160422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一対のL字のアームに把持されたバリは、一対のL字のアームを開いて自由落下させることによってアームから取り外すことができる。しかし、バリは、不規則に波打った形状になっている場合があり、この場合、バリがアームのL字の部分に引っかかってしまって速やかに自由落下しない場合がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、バリがアームに引っかかることを防ぐことができるロボットハンドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、ベースと、前記ベースに設けられ且つ物体を挟持するための一対のアームを備えるロボットハンドであって、前記一対のアームは、その間の間隔が可変になるように前記ベースに設けられ、前記一対のアームのそれぞれは、細長い形状の細長部と、前記細長部から突出する突出部を備え、前記突出部は、前記物体に当接する当接面と、前記当接面から前記ベースの方向に前記細長部に向かって傾斜する傾斜面を備える、ロボットハンドが提供される。
【0007】
本発明のロボットハンドでは、突出部の当接面からベースの方向に細長部に向かって傾斜する傾斜面が設けられているために、バリが突出部に引っかかることが抑制される。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記傾斜面は、前記細長部の長手方向に対する角度が15〜75度である。ロボットハンド。
好ましくは、前記突出部は、前記細長部の長手方向に対して垂直になるように前記細長部から突出し且つ前記当接面を有する垂直突出部と、前記垂直突出部に隣接して設けられ且つ前記傾斜面を有する傾斜部を備える。
好ましくは、前記当接面は、凹凸形状を有する。
好ましくは、前記一対のアームは、前記ベースに設けられた支点を中心にして回転することによって開閉されるように構成される。
好ましくは、前記細長部は、基端部での厚さが、前記基端部と前記突出部の間の部位での厚さよりも大きくなっている。
好ましくは、前記ベースに固定され且つ前記物体に切り込みを入れるために用いられるカッターを備える。
【0009】
本発明の別の観点によれば、一対の分割金型を用いてパリソンを成形することによってバリ付き成形体を形成する成形工程と、上記記載のロボットハンドを用いて前記バリを除去するバリ除去工程を備える、成形体の製造方法であって、前記成形工程において、前記成形体と前記バリの間には前記バリよりも肉厚が小さい薄肉部が設けられ、前記バリ除去工程において、前記バリの除去は、前記一対のアームの前記当接面の間に前記バリを挟持して引っ張って、前記薄肉部を裂くことによって行われる、成形体の製造方法が提供される。
好ましくは、前記薄肉部を裂く工程は、前記成形体と前記バリの間に前記薄肉部の面外方向の力を前記薄肉部に加えることによって行われる。
好ましくは、前記ロボットハンドは、前記ベースに固定され且つ前記物体に切り込みを入れるために用いられるカッターを備え、前記成形は、前記パーティングライン上に設けられたブローピンを用いて前記パリソン内にエアーを吹き込むブロー成形によって行われ、前記バリ除去工程は、前記カッターを用いて、前記ブローピンの周囲に対応する部位に形成された筒部に切り込みを設けた後に行われる。
好ましくは、前記一対の分割金型は、前記一対のアームが前記バリを挟持して引っ張る際に前記突出部が引っかかる引っかかり部が前記バリに形成されるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1Aは、本発明の一実施形態の成形体の製造方法中の成形工程(型締め前)を示す断面図であり、
図1Bは、左側の分割金型1の右側面図である。
図1Aは、
図1B中のA−A断面に相当する断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態の成形体の製造方法中の成形工程(型締め後)を示し、
図2A及び
図2Bは、それぞれ、
図1B中のA−A断面及びB−B断面に相当する断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態の成形体の製造方法中の成形工程(型締め後)を示し、
図3A〜
図3Cは、それぞれ、
図1B中のC−C断面、D−D断面、及びE−E断面に相当する断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態の成形体の製造方法中の成形工程によって得られたバリ付き成形体2bmを示す平面図である。
【
図5】
図4のバリ付き成形体2bmを示し、
図5A〜
図5Cは、それぞれ、
図4中のF−F断面図、G−G断面図、及びH−H断面図である。
【
図6】
図4のバリ付き成形体2bmを示し、
図5A〜
図5Cは、それぞれ、
図4中のI−I断面図、J−J断面図、及びK−K断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態のロボットハンド7を示し、
図7Aは、一対のアーム12が閉じた状態、
図7Bは、一対のアーム12が開いた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0012】
以下の説明では、本発明の一実施形態の成形体の製造方法を中心に説明を進め、バリ除去工程において、本発明の一実施形態のロボットハンドについて詳細に説明する。
【0013】
本実施形態の成形体の製造方法は、成形工程とバリ除去工程を備える。
【0014】
<成形工程>
この工程では、
図1〜
図6に示すように、一対の分割金型1を用いてパリソン2を成形することによってバリ付き成形体2bmを形成する。
【0015】
パリソン2は、溶融樹脂をヘッド内に設けられたスリットから押し出すことによって形成することができる。溶融樹脂は、原料樹脂を溶融混練することによって形成することができる。原料樹脂は、例えばポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂であり、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。溶融樹脂には発泡剤が添加されていてもいなくてもよい。溶融樹脂に発泡剤が添加されている場合、パリソン2は、発泡パリソンとなる。パリソン2は、筒状であってもシート上であってもよい。
【0016】
一対の分割金型1は、本実施形態では説明の便宜上、同じ形状にしているが、これらの形状は互いに異なっていてもよい。分割金型1は、ピンチオフ部1aと、キャビティ1bを備える。パリソン2がキャビティ1bの形状に賦形されることによって
図4に示すように成形体2mが得られる。
【0017】
ピンチオフ部1aは、一対の分割金型1でパリソン2を挟んでその肉厚を極薄にして薄肉部2aを形成するための部位である。ピンチオフ部1aは、キャビティ1bを取り囲むように設けられ、パリソン2のうち、ピンチオフ部1aよりも外側の部位がバリ付き成形体2bmにおいてバリ2bとなる(
図4を参照)。バリ2bは、金型によって挟まれている部位以外はランダムに波打った形状に形成される。バリ2bには、
図4に示すように、上側のバリ2bt、下側のバリ2bb、側面のバリ2bs、2つの成形体2mの間のバリ2biが含まれる。薄肉部2aは、バリ2bよりも肉厚が小さくなるように形成される。薄肉部2aの肉厚は、好ましくは、具体的には例えば、0.001、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0018】
図1Bに示すように、ピンチオフ部1aは、キャビティ1bの略全周を取り囲むように設けられている。またピンチオフ部1aは、一対のキャビティ1bの間に横方向に延びるように3箇所に設けられている。さらに、ピンチオフ部1aは、分割金型1の上下方向の中央に側端からキャビティ1bに向かって延びている。このような横方向に延びるピンチオフ部1aを設けることによって、バリ付き成形体2bmにおいて、横方向に延びる薄肉部2aがバリ2bに形成される。薄肉部2aにおいてはバリ2bを容易に分割することができるので、バリ2bの除去が容易になる。
【0019】
ピンチオフ部1aは、キャビティ1bの略全周を取り囲むように設けられるが、一対の分割金型1のパーティングライン上にブローピン3の吹込口1dが設けられる場合(
図1B及び
図3Cを参照)は、吹込口1dの部位にはピンチオフ部1aが設けられないので、薄肉部2aも形成されない。各分割金型1の吹込口1dは、例えば半円筒形状の溝状であり、一対の分割金型1を合わせる円筒状の開口部となる。バリ付き成形体2bmにおいては、吹込口1dに対応する部位には筒部2dが形成される。
【0020】
図1Bに示すように、一対の成形体2mの間の上下方向の中央に隣接した位置には、一対の成形体2mを繋ぐ方向に延びる溝部1cが設けられている。
図4に示すように、バリ付き成形体2bmにおいては、溝部1cに対応する部位に凸条形状の引っかかり部2cが形成される。
【0021】
バリ付き成形体2bmを成形する際には、
図1Aに示すように、一対の分割金型1間にパリソン2を配置し、その状態で一対の分割金型1の型締めを行うことによってパリソン2を成形してバリ付き成形体2bmを形成する。パリソン2の成形は、ブローピン3を用いてパリソン2内にエアーの吹き込みを行うブロー成形であってもよく、分割金型1に設けられた減圧吸引孔を通じてパリソン2を減圧吸引してキャビティ形状に賦形する真空成形であってもよい。ブローピン3を用いてパリソン2内にエアーの吹き込みを行う場合、ブローピン3を挿入するための吹込口1dは、一対の分割金型1のパーティングライン上に設けてもよく、それ以外の部位(例えばキャビティ面)に設けてもよい。
【0022】
パリソン2の成形後に一対の分割金型1を開くことによってバリ付き成形体2bmを取り出すことができる。バリ付き成形体2bmは、
図9Aに示すように、バリ取り台21にセットされる。バリ取り台21では、押え部材22を用いてバリ付き成形体2bmが固定される。
【0023】
<バリ除去工程>
この工程では、
図4〜
図11に示すように、ロボットハンド7を用いてバリ2bを除去する。
【0024】
図7〜
図8に示すように、ロボットハンド7は、ハンドベース8を備える。ハンドベース8には、アームベース9とカッター10が装着される。ハンドベース8とアームベース9によって特許請求の範囲の「ベース」が構成される。アームベース9には、一対のアーム12が装着される。一対のアーム12は、その間に物体を挟持する機能を有する。一対のアーム12は、その間の間隔が可変になるようにアームベース9に装着される。カッター10は、先端に刃部10aを備える。
【0025】
各アーム12は、取付ブラケット12aと、細長部12bと、突出部12cを備える。取付ブラケット12aは、アームベース9に相対回転可能に装着されている。取付ブラケット12aは、アームベース9に設けられた支点13において、アームベース9に対して相対回転可能になっている。細長部12bは、細長い形状であり、取付ブラケット12aに固定されている。細長部12bの基端部12b1が取付ブラケット12aに固定されている。基端部12b1は、基端部12b1と突出部12cの間の部位12b2よりも厚さが大きくなっている。これによってアーム12の強度が高められている。なお、取付ブラケット12aを省略して細長部12bをアームベース9に直接装着してもよい。
【0026】
突出部12cは、細長部12bから突出するように設けられている。一方のアーム12の突出部12cは、他方のアーム12の突出部12cに向かって突出している。突出部12cには、挟持する物体に当接する当接面12eが設けられている。一対の当接面12eは、一対のアーム12が閉じている状態で互いに対向するように設けられている。当接面12eには凹凸形状が設けられていて、挟持する物体を確実に保持できるようになっている。凹凸形状は、複数の平行な溝からなる平行溝であることが好ましい。平行溝は、細長部12bの長手方向に垂直な方向に延びるように設けられることが好ましい。この場合、物体をより確実に保持できるからである。
【0027】
突出部12cには、当接面12eからアームベース9の方向に細長部12bに向かって傾斜する傾斜面12gが設けられている。このような傾斜面12gを設けることによって、バリ2bのような物体が突出部12cに引っかかることが抑制される。傾斜面12gは平面であっても曲面であってもよい。
図7Aに示すように、細長部12bの長手方向に対する傾斜面12gの角度αは、15〜75度が好ましく、30〜60度がさらに好ましく、40〜50度がさらに好ましい。
【0028】
突出部12cは、1又は複数の部材で構成される。本実施形態では、突出部12cは、垂直突出部12fと、傾斜部12dで構成されている。垂直突出部12fは、細長部12bの長手方向に対して垂直になるように細長部12bから突出している。垂直突出部12fには、当接面12eが設けられている。傾斜部12dは、垂直突出部12fに隣接して設けられている。傾斜部12dには、傾斜面12gが設けられている。傾斜部12dはブロック状であり、垂直突出部12fを補強する機能を有する。このような構成の場合、既存のL字状のアームに傾斜部12dを装着するだけで、本実施形態の構成が得られるという利点がある。
【0029】
図7A〜
図7Bに示すように、一対のアーム12のそれぞれを、支点13を中心にして、互いに逆向きに回転させることによって一対の当接面12eの間の間隔を変化させることができる。そこで、
図7Bに示すように、一対の当接面12eの間に間隔を設けた状態で、その間に物体を配置し、その後、一対の当接面12eの間隔が狭まるように一対のアーム12を回転させることによって一対のアーム12の間に物体を挟持することが可能になる。このように、本実施形態では、一対のアーム12は、支点13を中心にして回転させることによって開閉させることができる。なお、本実施形態では、一対のアーム12を回転させることによって一対の当接面12eの間の間隔を変化させたが、一対のアーム12のそれぞれを逆向きに平行移動させることによって一対の当接面12eの間の間隔を変化させるように構成してもよい。
【0030】
図7に示すように、ロボットハンド7は、ロボットアーム6に装着して用いられる。ロボットアーム6は、バリ2bの除去の際にロボットハンド7を移動させる機能を有する。ロボットアーム6は、上記機能の実現に必要な軸数を有するものであればよく、6軸以上を有するものが好ましい。
【0031】
ここで、
図4及び
図9を用いて、ロボットハンド7を用いてバリ2bを除去する方法について説明する。バリ2bの除去は成形サイクルの間隔内で行わなければならないので、バリ2bの除去に費やすことができる時間は限られている。このため、バリ2bがアーム12に引っかかってしまってバリ2bを除去する作業が中断されてしまうことは、生産性の観点から深刻な問題である。特に、複雑な形状、大型の成形体では、バリ2bを複数個に分割したり、つかむ場所を変えて分離させる動作が行われているために、アーム12の開閉動作の回数が多くなり、バリ2bがアーム12に引っかかる可能性が高まる。このような事情により、バリ2bがアーム12に引っかかってしまうことを抑制する技術が切望されている。
【0032】
図4に示すように、バリ付き成形体2bmにおいては、上側のバリ2bt、下側のバリ2bb、側面のバリ2bs、2つの成形体2mの間のバリ2biが存在している。これらの全てのバリ2bを一度の工程で除去することは容易ではないので、バリ2bを複数の部位に分割して1つずつ除去する。本実施形態では、点線Lにおいてバリ2bsを分割することによって、バリ2bを部位P1〜P4に分割する。部位P1は、バリ2btとバリ2bsで構成される。部位P2は、バリ2bbとバリ2bsで構成される。部位P3は、下側のバリ2biで構成される。部位P4は、上側のバリ2biで構成される。部位P1〜P4を除去する順序は特に限定されない。部位P1〜P4を除去する際のロボットハンド7の移動方向は特に限定されないが、バリ付き成形体2bmの中心から端に向かって移動させることが好ましい。
図4の例では、直線Lの近傍位置においてロボットハンド7でバリ2bを挟持し、そのままロボットハンド7を上方向又は下方向に移動させることによってバリ2bを成形体2mから引き裂くことが好ましい。但し、成形体2mの大きさ、形状、バリ2bの部位や、押え部材22の押え方(押える位置)によって、ロボットハンド7の移動方向は、適宜設定することができる。
【0033】
部位P1を除去する際には、
図4及び
図9A〜
図9Bに示すように、一対のアーム12で点線Lの近傍においてバリ2bsを挟持した状態で、バリ2bsを引っ張って薄肉部2aを裂くようにロボットハンド7を移動させることによって、
図9Cに示すように、バリ2bsを含む部位P1を分離し、
図9Dに示すように、バリを回収するコンベア等の上方で一対のアーム12を開いてバリ2bsを含む部位P1を自由落下させる。バリ2bsはランダムに波打った形状を有しており、バリ2bsを自由落下させる際にバリ2bsがアーム12の垂直突出部12fに引っかかりやすい。しかし、本実施形態では、傾斜面12gが設けられているので、バリ2bsがアーム12に引っかかることなく、部位P1がスムーズに自由落下する。なお、薄肉部2aは、成形体2mとバリ2bsの間に薄肉部2aの面外方向の力を薄肉部2aに加えることによって容易に裂くことができる。例えば、
図9Bの状態から、成形体2mを上から押さえてロボットハンド7を上方に移動させることによって薄肉部2aに面外方向の力を加えることができる。
【0034】
部位P2の除去も部位P1と同様の方法によって行うことができるが、部位P2では、薄肉部2aが筒部2dで分断されているので、このままの状態では薄肉部2aを引き裂くと薄肉部2aの引き裂きが筒部2dで止まってしまうので部位P2を分離することができない。そこで、本実施形態では、部位P2を除去する前に、
図10に示すように、カッター10を用いて筒部2dに切り込みを入れることによって、筒部2dにおいて部位P2を成形体2mから分離することを容易にしている。なお、ロボットハンド7のカッター10を用いて筒部2dに切り込みを入れる代わりに、別の方法で筒部2dに切り込みを入れてもいい。筒部2dに切り込みを入れると、薄肉部2aの引き裂きが筒部2dで止まらないので、部位P2を容易に分離することができる。
【0035】
部位P3を除去する際には、
図11A〜
図11Bに示すように、アーム12で部位P4を押し下げることによって、部位P3とP4の間の薄肉部2aを裂いて、一対のアーム12の一方を部位P3の下側に配置する。次に、
図11B〜
図11Cに示すように、一対のアーム12を閉じることによって部位P3を挟持する。このまま部位P3を引き上げることによって部位P3の周囲の薄肉部2aを裂いて部位P3を分離することができるが、一対のアーム12が部位P3に対して滑ってしまって部位P3の分離がうまくいかないおそれがある。しかし、本実施形態では、部位P3に引っかかり部2cが設けられており、一対のアーム12が部位P3に対して滑ってしまった場合には、アーム12の突出部12cが引っかかり部2cに引っかかることによってアーム12の滑りが停止される。従って、本実施形態では、アーム12の滑りによる分離の失敗が抑制される。なお、本実施形態では、引っかかり部2cは、凸条形状であるが、滑りを抑制する任意の凹凸形状が引っかかり部2cとして利用可能である。
【0036】
部位P4は、部位P3と同様の方法で除去することができる。
【0037】
以上の工程により、バリ2bが除去された成形体2mが得られる。除去されたバリ2bは、コンベアなどで運ばれて再生原料として利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 :分割金型
1a :ピンチオフ部
1b :キャビティ
1c :溝部
1d :吹込口
2 :パリソン
2a :薄肉部
2b,2bt,2bb,2bs,2bi :バリ
2c :引っかかり部
2d :筒部
2m :成形体
3 :ブローピン
6 :ロボットアーム
7 :ロボットハンド
8 :ハンドベース
9 :アームベース
10 :カッター
10a :刃部
12 :アーム
12a :取付ブラケット
12b :細長部
12b1 :基端部
12b2 :基端部と突出部の間の部位
12c :突出部
12d :傾斜部
12e :当接面
12f :垂直突出部
12g :傾斜面
13 :支点
21 :バリ取り台
22 :押え部材