特許第6823292号(P6823292)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6823292
(24)【登録日】2021年1月13日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 26/02 20060101AFI20210121BHJP
   G05G 1/30 20080401ALI20210121BHJP
   G05G 5/03 20080401ALI20210121BHJP
   F02D 11/04 20060101ALI20210121BHJP
   B60W 50/16 20200101ALI20210121BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20210121BHJP
【FI】
   B60K26/02
   G05G1/30 E
   G05G5/03
   F02D11/04 C
   B60W50/16
   B60W40/08
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-121865(P2017-121865)
(22)【出願日】2017年6月22日
(65)【公開番号】特開2019-6185(P2019-6185A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2018年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】藪中 翔
(72)【発明者】
【氏名】武田 雄策
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 雅年
【審査官】 中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−000581(JP,A)
【文献】 特開2015−041252(JP,A)
【文献】 特開2014−148285(JP,A)
【文献】 特開平10−166889(JP,A)
【文献】 特開2012−171526(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0276750(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 26/02
G05G 1/30 − 1/50
G05G 5/03
F02D 11/02 − 11/10
B60W 40/08 − 40/09
B60W 50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
往特性及び復特性を有し且つアクセルペダルの踏込量と反力値との相関関係を設定した基準制御マップと、この基準制御マップに基づきアクセルペダルの反力値を制御する反力制御機構と、この反力制御機構を制御する制御手段とを備えた車両用制御装置において、
前記アクセルペダルに対する運転者の足の踏込速度を検出する踏込速度検出手段と、
運転者による前記アクセルペダルの踏込又は踏戻操作量を検出する踏込量検出手段とを備え、
前記制御手段は、前記踏込量検出手段によって検出されたアクセルペダルの踏込又は踏戻操作量に基づき運転者による操作の主体筋が単関節筋である緩加減速操作か、運転者による操作の主体筋が二関節筋である急加減速操作かを判定、緩加減速操作であると判定されたとき、前記基準制御マップの往特性と復特性との間のヒステリシスを前記踏込速度に基づき増加すると共に急加減速操作であると判定されたとき、前記基準制御マップの往特性と復特性を前記踏込速度に基づき増加補正することを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記緩加減速操作であると判定されたとき、前記基準制御マップの往特性を増加補正すると共に復特性を減少補正することを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記基準制御マップの往特性の増加補正量と復特性の減少補正量が等しく設定されたことを特徴とする請求項2に記載の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の筋活動に応じてアクセルペダルの反力値を制御可能な車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドライブ・バイ・ワイヤ式エンジンを搭載した車両の場合、アクセルペダルとスロットルバルブや燃料噴射装置等の出力制御機器とがケーブルによって接続されていないため、電動式アクチュエータによって踏込量に応じた反力値を運転者に付与している。
アクセルペダルの踏込量と反力値とは、概ね比例関係を有するように設定されているため、運転者はアクセルペダルから付与される反力値によってアクセルペダルの踏込量を認識することが一般的である。それ故、アクセルペダルの反力値を変化させることにより、運転者の好みや走行環境に応じて運転者によるアクセルペダルの踏込操作を誘導するような反力制御装置が提案されている。
【0003】
特許文献1の操作補助装置は、現時点を含む過去の所定時間区間における複数の仮想運転者の運転意図系列を動的に生成し、運転意図系列毎に、仮想運転者の運転操作量と実際の運転者の運転操作量との系列的な近似度合を表す運転操作量系列近似度合を算出すると共に複数の運転操作量系列近似度合を比較することにより実際の運転者の運転意図を推定し、推定した運転意図に基づいて実際の運転者の状態を推定している。
アクセルペダルの踏込操作の場合、運転者が車線変更を意図してから運転者の運転意図が車線変更であると推定されるまでの経過時間が長い程、アクセルペダルの反力指令値を速やかに低下させている。
【0004】
また、本出願人によって人間の知覚特性を考慮したアクセルペダルの反力特性を設定する技術も提案されている。
特許文献2の車両のアクセルペダル制御装置は、アクセルペダルの踏込量とアクセルペダルの踏込速度と運転者に付与される反力値によって規定された三次元マップを有する反力設定手段と、アクセルペダルの踏込速度を検出する踏込速度検出手段とを備え、反力設定手段は、踏込速度が速いとき、踏込速度が遅いときに比べてアクセルペダルの反力値が小さくなるように反力特性を設定している。
これにより、運転者の負担と違和感を軽減しつつ、走行環境や運転意思に適合した反力特性を設定することができる。
【0005】
運転者によるアクセルペダルの踏込及び踏戻動作は、筋活動の観点から、足関節の底屈及び背屈運動と見做すことができる。
図9に示すように、足関節によるアクセルペダルの操作には、主に、前脛骨筋p、ヒラメ筋q及び腓腹筋r等が関与している。
前脛骨筋pは、足関節の背屈運動を行う単(一)関節筋であり、ヒラメ筋qは、足関節の底屈運動を行う単関節筋である。腓腹筋rは、足関節の底屈運動と膝関節の屈曲運動を行う二関節筋である。これらの骨格筋のうち、単関節筋は、機械的な力比に依存し、重力に抗して体を持ち上げる抗重力性を有し、また、二関節筋は、機械的なエネルギー消費を抑制し、外力の方向制御、所謂体を特定の方向に推進移動させる推進性を有している。
そして、骨格筋は、運動作用による筋収縮によって関節運動を起こす主働筋と、主働筋と対になって逆の働きをする拮抗筋とに分類される。
そこで、踏込動作の際には、主働筋がヒラメ筋q、拮抗筋が前脛骨筋pとなり、主働筋であるヒラメ筋qを主体とした動作が行われる。一方、踏戻動作の際には、拮抗筋である前脛骨筋pを主体とした動作が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5293784号公報
【特許文献2】特開2016−000581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
運転者によるアクセルペダルの操作は、運転シーンに応じて、アクセルペダルを初期位置から目標位置まで急激に操作する急加速(急減速)操作と、アクセルペダルを所定の領域内で微調整する緩加速(緩減速)操作とが存在している。
一方、筋の特性上、急加速操作の場合、運転者は高負荷で大きな動作(踏込又は踏戻)を行うため、二関節筋主体の操作によって運転者が認識する操作知覚性を高めることができ、臨場感を得ることができる。また、緩加減速操作の場合、運転者は高精度で小さな動作(微調整)を行うため、単関節筋主体の操作によって操作容易性を高めることができ、操作性を得ることができる。
それ故、臨場感と操作性、所謂操作感を向上するには、急加速操作のとき、二関節筋を主働筋にして単関節筋の寄与率よりも高くし、緩加速操作のとき、単関節筋を主働筋にして二関節筋の寄与率よりも高くすることが好ましい。
【0008】
しかし、緩加減速操作のとき、単関節筋を主働筋にして二関節筋の寄与率よりも高くしてもアクセルペダルの操作感を十分に確保できない虞がある。
アクセルペダルを微調整する緩加減速操作の踏込操作では、ヒラメ筋qが主働筋、前脛骨筋pが拮抗筋として機能している。そして、踏戻操作では、踏込操作を解除するように拮抗筋である前脛骨筋pを主体とする操作が行われている。
即ち、アクセルペダルを微調整する緩加減速操作では、主働筋と拮抗筋共に単関節筋であり、単関節筋と二関節筋の寄与率の調整を行うだけでは、踏込動作から踏戻動作への移行時において、筋活動を主働筋から拮抗筋へ円滑に切替えることが容易ではなく、運転者は感覚的に十分な操作感を知覚することができない。
【0009】
本発明の目的は、操作主体となる筋の種類に拘らず運転者が感覚的に十分な操作感を知覚することができる車両用制御装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の車両用制御装置は、往特性及び復特性を有し且つアクセルペダルの踏込量と反力値との相関関係を設定した基準制御マップと、この基準制御マップに基づきアクセルペダルの反力値を制御する反力制御機構と、この反力制御機構を制御する制御手段とを備えた車両用制御装置において、前記アクセルペダルに対する運転者の足の踏込速度を検出する踏込速度検出手段と、運転者による前記アクセルペダルの踏込又は踏戻操作量を検出する踏込量検出手段とを備え、前記制御手段は、前記踏込量検出手段によって検出されたアクセルペダルの踏込又は踏戻操作量に基づき運転者による操作の主体筋が単関節筋である緩加減速操作か、運転者による操作の主体筋が二関節筋である急加減速操作かを判定、緩加減速操作であると判定されたとき、前記基準制御マップの往特性と復特性との間のヒステリシスを前記踏込速度に基づき増加すると共に急加減速操作であると判定されたとき、前記基準制御マップの往特性と復特性を前記踏込速度に基づき増加補正することを特徴としている。
【0011】
この車両用制御装置では、前記制御手段が、前記踏込量検出手段によって検出されたアクセルペダルの踏込又は踏戻操作量に基づき運転者による操作の主体筋が単関節筋である緩加減速操作か、運転者による操作の主体筋が二関節筋である急加減速操作かを判定すると共に、緩加減速操作であると判定されたとき、前記基準制御マップの往特性と復特性との間のヒステリシスを前記踏込速度に基づき増加するため、運転者によるアクセルペダルの操作負荷が大きい踏込操作から踏戻操作への操作切替時、拮抗筋に作用する反力を低減しながら主な筋活動を主働筋から拮抗筋へ円滑に切替えることができ、アクセルペダルの操作性を確保することができる。また、急加減速操作であると判定されたとき、拮抗筋に作用する反力を低減しながら筋活動を主働筋から拮抗筋へ円滑に切替えることができ、アクセルペダルの操作性を確保することができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記制御手段は、前記緩加減速操作であると判定されたとき、前記基準制御マップの往特性を増加補正すると共に復特性を減少補正することを特徴としている。
この構成によれば、踏込操作時、運動性能に優れた主働筋に作用する反力を高めて運転者の操作知覚性を向上し、踏戻操作時、拮抗筋に作用する反力を低減して運転者の操作容易性を向上している。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記基準制御マップの往特性の増加補正量と復特性の減少補正量が等しく設定されたことを特徴としている。
この構成によれば、踏込操作から踏戻操作への操作切替時、アクセルペダルの操作性を確保しつつ運転者が感じる違和感の発生を抑制することができる。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両用制御装置によれば、操作主体となる筋の種類に拘らず、特にアクセルペダルの緩加減速操作において、運転者が感覚的に十分な操作感を知覚することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1に係る車両用制御装置のブロック図である。
図2】アクセルペダルと反力制御機構の概略図である。
図3】基準制御マップを示す図である。
図4】緩加減速時における補正後の制御マップを示す図である。
図5】急加減速時における補正後の制御マップを示す図である。
図6】制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
図7】動作量検出手段の変形例を示す図である。
図8】動作量検出手段の別の変形例を示す図である。
図9】アクセルペダル操作時における骨格筋の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明は、本発明を車両の制御装置に適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
【実施例1】
【0021】
以下、本発明の実施例1について図1図6に基づいて説明する。
車両用制御装置1は、運転者の筋活動に応じてアクセルペダル3の反力値を制御することにより、運転者に対して操作主体になる筋に拘らず操作リニアリティを付与可能に構成されている。
図1に示すように、制御装置1は、ECU(Electronic Control Unit)2(制御手段)を備えている。ECU2は、CPU、ROM、RAM等からなる電子制御ユニットであり、ROMに記憶されているアプリケーションプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することにより各種演算処理を行っている。
【0022】
ECU2は、アクセルペダル3の踏込又は踏戻操作量(以下、踏込量と略す)sを検出する踏込量センサ4と、アクセルペダル3の踏込速度Vを検出する踏込速度センサ5と、車両の走行速度を検出する速度センサ6と、車両に作用するヨーレートを検出するヨーレートセンサ7と、車両の走行加速度を検出する加速度センサ8等に電気的に接続されている。
【0023】
図2に示すように、アクセルペダル3は、車体に対して回動可能に保持され、その踏込操作によって運転者によるエンジン出力の増減意図が入力される。
踏込量センサ4は、アクセルペダル3又は回転軸31に設けられ、その回動量からアクセルペダル3の踏込ストローク、所謂踏込量sを検出する。踏込量センサ4で検出されたアクセルペダル3の踏込量sは、ECU2に出力される。尚、運転者の踏込みによる踏力が作用しない場合、アクセルペダル3は、アクセルペダル3に連結されたリターンスプリング32によって踏込量sが零である初期位置に戻るように付勢されている。
踏込速度センサ5は、アクセルペダル3の回転軸31に設けられ、その回転速度からアクセルペダル3の踏込速度Vを検出する。踏込速度センサ5で検出されたアクセルペダル3の踏込速度Vは、ECU2に出力される。
【0024】
速度センサ6、ヨーレートセンサ7、加速度センサ8は、各々の検出結果をECU2に出力している。
車両走行部10は、車両の走行制御を実行するための駆動機構や操舵機構である。
この車両走行部10は、エンジン制御部、ステアリングアクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、及びシフトアクチュエータ(何れも図示略)等によって構成されている。
車両走行部10は、ECU2からの出力信号に基づいて車両の走行制御を実行している。
【0025】
図2に示すように、反力制御機構11は、第1,第2摩擦部材41,42と、電磁式アクチュエータ43等を備えている。
第1摩擦部材41は回動軸31の一端部に固着され、第2摩擦部材42が第1摩擦部材41に臨む状態で配設されている。第2摩擦部材42は、回動軸31の軸心延長上に配設された保持軸44に対して、回転不能且つ軸心方向に相対移動可能に保持されている。
アクチュエータ43は、第1,第2摩擦部材41,42を圧接状態と離隔状態との間において相対位置関係を変更し、圧接時における圧接力を調整可能に構成されている。
【0026】
次に、ECU2について説明する。
図1に示すように、ECU2は、走行制御部21と、記憶部22と、特性補正部23と、反力設定部24等を備えている。
走行制御部21は、アクセルペダル3の踏込量sと速度センサ6によって検出された車速に基づいてエンジンの出力を制御すると共に車両走行状態とエンジンの運転状態とに基づいて変速機の変速比を選択可能に構成されている。
変速機で減速されたエンジンの出力はドライブシャフト(図示略)を介して駆動輪に伝達される。
【0027】
記憶部22は、運転者によるアクセルペダル3の踏込量sと踏込速度Vとアクセルペダル3から運転者に作用する物理的な反力値に相当している反力fとによって規定された基準制御マップF(F−S特性)を予め格納している。
図3に示すように、基準制御マップFは、アクセルペダル3の踏込量s(s1,s2)に相当するs軸(横軸)と、アクセルペダル3を介して運転者に付与される反力f(f2,f4,f5,f7)に相当するf軸(縦軸)とによって構成されている。
この基準制御マップFは、標準的な運転者を対象として形成され、この運転者による所定のアクセルペダル3の操作、所謂踏込及び踏戻動作(足関節の底屈及び背屈運動)において、二関節筋(例えば、腓腹筋等)と単関節筋(例えば、前脛骨筋やヒラメ筋等)とが所定のバランス範囲(例えば、二関節筋の寄与率が40%以上且つ60%未満)内で動作されることを前提条件として設定されている
【0028】
基準制御マップFにおいて、踏込側特性は、原点から踏込量s1(反力f5)までの初期往特性F3と踏込量s1から最大踏込量s2(反力f7)までの往特性F1とによって構成されている。往特性F1は、踏込量sに比例する1次関数で表すことができ、反力f7は、反力f5よりも大きい値に設定されている。
また、踏込操作の解除操作に相当する踏戻側特性は、最大踏込量s2(反力f4)から初期踏込量s1(反力f2)までの復特性F2と踏込量s1から原点までの終期復特性F4とによって構成されている。復特性F2は、往特性F1と略平行状に設定され、反力f4は、反力f2よりも大きい値に設定されている。
往特性F1と復特性F2との離隔距離が、基準制御マップFのヒステリシスF5に相当している。
【0029】
次に、特性補正部23について説明する。
特性補正部23は、アクセルペダル3の操作ストロークが小さい、換言すれば運転者による操作の主体筋が単関節筋(例えば、前脛骨筋、ヒラメ筋等)である緩加減速操作時、基準制御マップFのヒステリシスF5を増加補正した制御マップFAを設定している。
ここで、緩加減速操作とは、運転者の意思として略定速走行を狙いとした操作であり、車両Vの挙動としては、例えば、短時間内における30Km/hから40Km/h、或いは40Km/hから30Km/h等の微小変化を伴う一時的且つ過渡的走行である。
【0030】
図4に示すように、特性補正部23は、緩加減速操作時において、踏込速度Vが大きいとき、往特性F1を補正量U1増加した往特性F1aに補正し、復特性F2を補正量D1減少した復特性F2aに補正する。補正量U1,D1は、踏込速度Vに比例するように設定される。そして、往特性F1aの最小値と原点とを結ぶ直線を初期往特性F3a、復特性F2aの最小値と原点とを結ぶ直線を終期復特性F4a、往特性F1aの最大値と復特性F2aの最大値とを結ぶ直線をヒステリシスF5a(F5+U1+D1)に設定する。
本実施例では、アクセルペダル3の操作性を確保しつつ運転者が感じる違和感の発生を抑制するため、緩加減速操作時において踏込速度Vが同じ値のとき、補正量U1,D1を同じ値になるように設定している。
尚、各反力は、f1<f2<f3<f4<f5<f6<f7<f8の関係が成立している。
【0031】
また、特性補正部23は、アクセルペダル3の操作ストロークが大きい、換言すれば運転者による操作の主体筋が二関節筋(例えば、腓腹筋等)である急加減速操作時、基準制御マップFの往特性F1及び復特性F2を増加補正した制御マップFBを設定している。
ここで、急加減速操作とは、運転者の意思として速度増加或いは減少走行を狙いとした操作であり、車両Vの挙動としては、例えば、一定時間を要する0Km/hから30Km/h、或いは50Km/hから100Km/h等の加速又は減速を伴う長期的且つ安定的走行である。尚、緩加減速時の微調整よりも大きな操作に相当する中加減速操作については、急加減速操作に含まれるものとして扱う。
【0032】
図5に示すように、特性補正部23は、急加減速操作時において、踏込速度Vが大きいとき、往特性F1を補正量U2増加した往特性F1bに補正し、復特性F2を補正量D2増加した復特性F2bに補正する。補正量U2,D2は、踏込速度Vに比例するように設定される。そして、往特性F1bの最小値と原点とを結ぶ直線を初期往特性F3b、復特性F2bの最小値と原点とを結ぶ直線を終期復特性F4b、往特性F1bの最大値と復特性F2bの最大値とを結ぶ直線をヒステリシスF5b(F5)に設定する。
本実施例では、運転者が感じる違和感の発生を抑制するため、急加減速操作時における踏込速度Vが同じ値のとき、補正量U2,D2を同じ値になるように設定しており、操作知覚性を向上するため、踏込速度Vが同じ値のとき、U1<U2の関係が成り立ち、各反力は、f2<f9,f4<f10,f6<f11,f8<f12の関係が成立している。
【0033】
次に、反力設定部24について説明する。
反力設定部24は、F−S特性に基づく反力fに関する指令信号を出力している。
具体的には、緩加減速操作時には、制御マップFA、急加減速操作時には、制御マップFB、緩加減速操作と急加減速操作の何れにも該当しない場合、基準制御マップFを用いて、踏込量sに対応する反力fを読み出し、この読み出された反力fがアクセルペダル3の操作反力fとして出力されている。
【0034】
次に、図6のフローチャートに基づいて、制御装置1の制御処理手順について説明する。
尚、Si(i=1,2…)は、各処理のためのステップを示す。
図6のフローチャートに示すように、まず、S1にて、イグニッション(Ig)がオン操作されたか否か判定する。
S1の判定の結果、イグニッションがオン操作された場合、各種センサ4〜8から入力された情報を読み込み(S2)、S3に移行する。
S1の判定の結果、イグニッションがオフ操作された場合、既に設定されている制御マップを基準制御マップFに初期化して(S9)、リターンする。
【0035】
S3では、アクセルペダル3の操作ストロークにより運転者が緩加減速操作を行ったか否か判定する。
S3の判定の結果、運転者が緩加減速操作を行った場合、S4に移行し、踏込速度Vに比例する補正量U1と補正量U1と同じ値の補正量D1を演算する。
次に、S5では、往特性F1から補正量U1増加した往特性F1a、復特性F2から補正量D1減少した復特性F2a、初期往特性F3a、終期復特性F4a、ヒステリシスF5aからなる制御マップFAを設定し、S6に移行する。
S6では、補正後の制御マップFAに基づいて反力制御機構11を作動させて、リターンする。
【0036】
S3の判定の結果、運転者が緩加減速操作を行っていない場合、S7に移行し、運転者が急加減速操作を行ったか否か判定する。
S7の判定の結果、運転者が急加減速操作を行った場合、S8に移行し、踏込速度Vに比例する補正量U2と補正量U2と同じ値にされた補正量D2を演算する。
次に、S9では、往特性F1から補正量U2増加した往特性F1b、復特性F2から補正量D2増加した復特性F2b、初期往特性F3b、終期復特性F4b、ヒステリシスF5bからなる制御マップFBを設定し、S6に移行し、補正後の制御マップFBに基づいて反力制御機構11を作動させる。
S7の判定の結果、運転者が急加減速操作を行っていない場合、S6に移行し、基準制御マップFに基づいて反力制御機構11を作動させる。
【0037】
次に、上記車両用制御装置1の作用、効果について説明する。
本制御装置1によれば、反力設定部24は、転者によりアクセルペダル3が緩加減速操作されたとき、基準制御マップFの往特性F1と復特性F2との間のヒステリシスF5を緩加減速操作に該当しないときよりも増加するため、運転者によるアクセルペダル3の操作負荷が大きい踏込操作から踏戻操作への操作切替時、拮抗筋に作用する反力fを低減しながら主な筋活動を主働筋から拮抗筋へ円滑に切替えることができ、アクセルペダル3の操作性を確保することができる。
【0038】
反力設定部24は、踏込速度センサ5によって検出された運転者の踏込速度が大きいとき、基準制御マップFの往特性F1を増加補正すると共に復特性F2を減少補正するため、踏込操作時、運動性能に優れた主働筋に作用する反力fを高めて運転者の操作知覚性を向上し、踏戻操作時、拮抗筋に作用する反力fを低減して運転者の操作容易性を向上している。
【0039】
基準制御マップFの往特性F1の増加補正量U1と復特性F2の減少補正量D1が等しく設定されたため、踏込操作から踏戻操作への操作切替時、アクセルペダル3の操作性を確保しつつ運転者が感じる違和感の発生を抑制することができる。
【0040】
【0041】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、アクセルペダル3に対する運転者の踏込量sが小さいにも拘らず踏込速度Vが大きいときの操作性改善を狙いとして、アクセルペダル3の踏込速度Vを検出した例を説明したが、アクセルペダル3に対する足の接触面積をパラメータとして検出しても良い。
図7に示すように、アクセルペダル3Aに複数の圧電素子12が埋設されている。
これら複数の圧電素子12は、上下に亙って均等間隔に配置されているため、圧電素子12の検出個数により運転者の足の接触面積を求めることができる。
図8に示すように、アクセルペダル3Bに3つの歪ゲージ13が配設されている。
これら歪ゲージ13は、上端部と左右両端部とに配置されているため、運転者の足による歪を介して運転者の足の接触面積を求めることができる。
これにより、運転者の足の動作量を高精度に検出することができる。
【0042】
2〕前記実施形態においては、緩加減速操作時、基準制御マップFの往特性F1の補正量U1と復特性F2の補正量D1が等しく設定された例を説明したが、増加補正量U1と復特性F2の減少補正量D1とを異なる値(U1<D1又はD1<U1)に設定しても良い。
また、急加減速操作時、基準制御マップFの往特性F1の補正量U2と復特性F2の補正量D2が等しく設定された例を説明したが、増加補正量U2と復特性F2の増加補正量D2とを異なる値(U2<D2又はD2<U2)に設定しても良い。
【0043】
3〕前記実施形態においては、制御マップの往特性と復特性を踏込量に比例する1次関数で形成された例を説明したが、必ずしも線形性を備える必要はなく、上に凸状又は下に凸状の湾曲形状に形成しても良い。
【0044】
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0045】
1 制御装置
3,3A,3B アクセルペダル
5 踏込速度センサ
24 反力設定部
s 踏込量
V 踏込速度
f 反力
F,FA,FB 制御マップ
F1,F1a,F1b 往特性
F2,F2a,F2b 復特性
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9