(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記止水部材は、前記環状溝に対向して配置される短筒状の止水シートと、前記止水シートを内周面側から押圧して支持する押え部材とを含む、請求項1記載の管路更生方法。
前記ステップ(b)では、前記環状溝の両側であって、前記既設管の内周面と前記止水部材の外周面との間に、弾性シール材で形成された止水リングをさらに設ける、請求項1から4のいずれかに記載の管路更生方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、既設管が環状溝の部分で破損すると、この破損部分からライニング管の外周面側に地下水などの浸水が到達して、ライニング管に外水圧として作用する場合がある。このため、ライニング管が外水圧によって大きく変形してしまう可能性がある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、管路更生方法および更生管を提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、仮に既設管が環状溝の部分で破損した場合でも、ライニング管が外水圧によって大きく変形することを防止できる、管路更生方法および更生管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、既設管とライニング管とが充填材によって一体化された更生管を形成する管路更生方法であって、(a)既設管の内周面の所定位置に周方向に延びる環状溝を形成し、(b)ステップ(a)の後、環状溝の部分で既設管が変形したときに当該既設管の変形に追従してライニング管側への浸水を防止する短筒状の止水部材を、環状溝を覆うように既設管の内周面に設け、(c)ステップ(b)の後、既設管の内周面に沿うようにライニング管を施工し、そして(d)ステップ(c)の後、既設管の内周面とライニング管の外周面との間に充填材を充填する、管路更生方法である。
【0009】
第1の発明では、既設管とライニング管とが充填材によって一体化された更生管を形成する。先ず、ステップ(a)において、既設管の内周面の所定位置に周方向に延びる環状溝を形成する。次に、ステップ(b)において、環状溝を覆うように既設管の内周面に短筒状の止水部材を設ける。この止水部材は、環状溝の部分で既設管が変形したときに、既設管の変形に追従してライニング管側への浸水を防止するための部材である。続いて、ステップ(c)において、既設管の内周面に沿うようにライニング管を既設管内に施工する。その後、ステップ(d)において、既設管の内周面とライニング管の外周面との間に充填材を充填することで、既設管とライニング管とが充填材によって一体化された更生管を形成する。
【0010】
このように形成された更生管では、地震等があった場合に、既設管が破損する部位を環状溝の部分に誘発することができる。このため、既設管(延いては更生管)の他の部位の破損を防ぐことができ、更生管の非管理状態での破損を防ぐことができる。すなわち、更生管の耐震性を向上させることができる。また、既設管が環状溝の部分で変形して破損しても、その変形に止水部材が追従して、既設管の破損部分からライニング管側への浸水が止水部材によって止められる。
【0011】
第1の発明によれば、環状溝を覆うように止水部材を設けるので、地震時などに既設管が環状溝の部分で破損しても、その破損部分からライニング管に浸水が到達することを防止できる。したがって、ライニング管が外水圧によって大きく変形することを防止できる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明に従属し、止水部材は、環状溝に対向して配置される短筒状の止水シートと、止水シートを内周面側から押圧して支持する押え部材とを含む。
【0013】
第2の発明では、止水部材は、止水シートと押え部材とを含む。止水シートは、短筒状に形成され、環状溝に対向して配置される。また、押え部材は、止水シートを内周面側から押圧して支持する。
【0014】
第2の発明によれば、止水シートを内周面側から押圧して支持する押え部材を備えるので、止水シートを既設管の内周面などに適切に密着させることができる上、止水シートを補強することができる。したがって、止水部材は止水機能を適切に発揮でき、ライニング管に浸水が到達することをより確実に防止できる。
【0015】
第3の発明は、第2の発明に従属し、止水シートは、軸方向中央部分に伸長可能部を有する。
【0016】
第3の発明によれば、既設管の変形に止水シートが適切に追従できる。
【0017】
第4の発明は、第2または第3の発明に従属し、押え部材は、第1押えリングと第2押えリングとを含み、第1押えリングおよび第2押えリングは、互いの側縁部どうしが所定幅だけ重ね合わされた状態で止水シートの内周面側に設けられる。
【0018】
第4の発明によれば、既設管の変形に押え部材が適切に追従できる。
【0019】
第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明に従属し、ステップ(b)では、環状溝の両側であって、既設管の内周面と止水部材の外周面との間に、弾性シール材で形成された止水リングをさらに設ける。
【0020】
第5の発明によれば、止水リングによって既設管の内周面と止水部材の外周面との間の水密性を高めることができ、ライニング管に浸水が到達することをより確実に防止できる。
【0021】
第6の発明は、第1から第5のいずれかの発明に従属し、ステップ(b)では、固定具によって止水部材を既設管の内周面に固定する。
【0022】
第6の発明によれば、既設管が環状溝の部分で変形したときに、その変形に止水部材がより確実に追従できる。
【0023】
第7の発明は、第1から第6のいずれかの発明に従属し、ステップ(c)では、伸長可能部を有するライニング管を形成する。
【0024】
第7の発明によれば、既設管の変形にライニング管が適切に追従できるので、ライニング管が破損することをより確実に防止できる。
【0025】
第8の発明は、既設管とライニング管とが充填材によって一体化された更生管であって、既設管の内周面の所定位置において周方向に延びるように形成された環状溝、環状溝を覆うように既設管の内周面に設けられ、環状溝の部分で既設管が変形したときに当該既設管の変形に追従して
、当該既設管の変形部分から充填材およびライニング管側への浸水を防止する短筒状の止水部材、既設管の内周面に沿うように設けられたライニング管、および、既設管の内周面とライニング管の外周面との間に充填された充填材を備
え、止水部材は、ライニング管とは別体であって、かつ当該止水部材の両端部は、既設管の内周面に対して止水状態で密着している、更生管である。
【0026】
第8の発明では、地震等があった場合に、既設管が破損する部位を環状溝の部分に誘発することができる。このため、既設管(延いては更生管)の他の部位の破損を防ぐことができ、更生管の非管理状態での破損を防ぐことができる。すなわち、更生管の耐震性を向上させることができる。また、既設管が環状溝の部分で変形して破損しても、その変形に止水部材が追従して既設管の破損部分からライニング管側への浸水を防止する。
【0027】
第8の発明によれば、環状溝を覆うように設けた止水部材を備えるので、地震時などに既設管が環状溝の部分で破損しても、その破損部分からライニング管に浸水が到達することを防止できる。したがって、ライニング管が外水圧によって大きく変形することを防止できる。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、地震時などに既設管が環状溝の部分で破損しても、その破損部分からライニング管に浸水が到達することを防止でき、ライニング管が外水圧によって大きく変形することを防止できる。
【0029】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1および
図9を参照して、この発明の一実施例である管路更生方法は、地下に埋設された既設管12を更生するものであり、既設管12とライニング管14とが充填材16によって一体化された更生管(複合管)10を形成する。
【0032】
詳細は後述するように、この実施例では、帯板部材20を既設管12の内面に沿って螺旋状に巻き回し、その帯板部材20の隣り合う側縁部同士を接続部材22で連結することによって、ライニング管14を既設管12内で製管する。また、この実施例では、ライニング管14を施工する前に、既設管12の内周面の所定位置に環状溝60を形成し、この環状溝60を覆うように既設管12の内周面に止水部材62を設ける。
【0033】
なお、この発明に係る管路更生方法は、鉄筋コンクリート管(ヒューム管)、コンクリート管、陶管および合成樹脂管などを更生するものであり、更生する既設管12の口径、形状および用途などは、特に限定されない。この実施例では、口径が800〜3000mmである中大口径の断面円形の下水管を更生することを想定して説明する。
【0034】
先ず、ライニング管14を構成する帯板状のライニング部材(管更生部材)である帯板部材(ストリップ)20および接続部材(ジョイナ)22の一例について説明する。ただし、以下に示す帯板部材20および接続部材22の具体的構成ないし形状は、単なる一例であり、適宜変更可能である。
【0035】
図2に示すように、帯板部材20は、ライニング管14の主構成要素となる長尺の部材であって、帯板状の基体30を含む。基体30の内面30aは、ライニング管14の内面を構成する面であり、平滑面となっている。また、基体30の外面30b側には、幅方向に所定間隔で配置されて、長手方向に延びる複数のリブ32が形成される。リブ32は、略T字状の第1リブ32aと基体30の両側縁部に配置される略L字状の第2リブ32bとを含み、後述する充填材(裏込材)に埋め込まれることでアンカ機能を発揮する。
【0036】
また、基体30の両側縁部には、後述する接続部材22の第2嵌合部42と嵌め合わされる第1嵌合部34が形成される。第1嵌合部34は、基体30の内面30a側に向かって開口する略U字状に形成されており、幅方向外側に配置される縦片34aには、幅方向内側および外側に向かって突出する2つの係止爪が形成される。
【0037】
帯板部材20は、たとえば、硬質塩化ビニル等の合成樹脂の押出成形によって一体成形され、リブ32および第1嵌合部34は、基体30の長手方向の全長に亘って形成される。帯板部材20の幅は、たとえば250mmであり、その高さは、たとえば17.5mmである。
【0038】
図3に示すように、接続部材22は、帯板部材20の側縁部同士を連結するための長尺の部材であって、帯板状の基板40を備える。基板40の内面40aは、帯板部材20の内面30aと共にライニング管14の内面を構成する。また、基板40の両側縁部には、帯板部材20の第1嵌合部34と嵌め合わされる第2嵌合部42が形成される。第2嵌合部42は、基板40の外面40bから突出して長手方向に延びる2つの突条42aを含む。各突条42aの先端部には、係止爪が形成される。また、2つの突条42aの間には、止水材44が設けられる。
【0039】
また、基板40の中央部には、接続部材22の幅方向、つまりライニング管14の管軸方向に伸長可能な伸長可能部46が形成される。伸長可能部46は、外面40bから突出するU字状の溝部48と、溝部48全体を覆うように外面40b同士を連結する波形状のフレキシブル部50とを含む。このような伸長可能部46は、溝部48の変形に応じて伸縮可能であると共に、溝部48が幅方向に破断(分割)することで、フレキシブル部50の変形に応じた大きな伸長が可能である。
【0040】
接続部材22の基板40、第2嵌合部42および溝部48は、たとえば、硬質塩化ビニル等の合成樹脂の押出成形によって一体成形される。また、フレキシブル部50は、たとえば、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂などによって形成されて、基板40に固着される。第2嵌合部42、止水材44および伸長可能部46は、基板40の長手方向の全長に亘って形成される。接続部材22の幅は、たとえば55mmである。
【0041】
図4に示すように、螺旋状に巻き回した帯板部材20の隣り合う側縁部同士を接続部材22によって連結する際には、帯板部材20の第1嵌合部34と接続部材22の第2嵌合部42とを嵌め合わせる。すると、第2嵌合部42の各係止爪が第1嵌合部34の各係止爪に係止されて、帯板部材20に対して接続部材22が抜け止め固定された状態で、帯板部材20の側縁部同士が接続部材22によって連結される。また、止水材44と第1嵌合部34の縦片34aの先端部とが接触することで、この連結部分の止水性が確保される。さらに、伸長可能部46を有する接続部材22を用いてライニング管14を形成することで、螺旋状に延びる伸長可能部46を有するライニング管14が形成され、形成されたライニング管14は、管軸方向に伸長性を有するものとなる。
【0042】
図1に戻って、この実施例の管路更生方法では、既設管12の内周面の所定位置に、周方向に延びる環状溝60を形成する。環状溝60は、地震等があった場合に、既設管12が変形して破損する部位を環状溝60の部分に誘発して、既設管12(延いては更生管10)の他の部位の破損を防ぐためのものである。
【0043】
環状溝60の大きさおよび形状などは、既設管12の材質および口径などの条件に応じて適宜設定されて特に限定されないが、環状溝60の幅は、たとえば5mm〜10mmが好ましい。また、環状溝60の深さは、既設管12の残存厚さがたとえば20mm〜30mmとなる深さが好ましく、既設管12の残存部分に鉄筋が存在しないように、環状溝60の底面が鉄筋の配筋位置よりも外周面側に位置する深さが好ましい。また、環状溝60の断面形状としては、矩形状、三角形状および半円状などを適宜採用できるが、この実施例では矩形状を採用している(
図8参照)。なお、環状溝60は、既設管12の周方向の全長に亘って形成することが好ましいが、必ずしも周方向の全長に亘って連続して形成される必要はなく、既設管12の周方向の一部を残した状態で環状溝60が形成されても構わない。
【0044】
さらに、この実施例の管路更生方法では、環状溝60の開口を覆う(跨ぐ)ように、止水部材62を既設管12の内周面に設ける。止水部材62は、地震時などにおいて既設管12が環状溝60の部分で変形して破損したときに、この既設管12の変形に追従して、既設管12の破損部分からライニング管14側への地下水などの浸水を防止するための部材である。以下、止水部材62の構成について説明するが、以下に示す止水部材62の具体的構成ないし形状は、単なる一例であり、適宜変更可能である。
【0045】
図5および
図6に示すように、止水部材62は、既設管12の変形に追従可能な伸長性を有する部材であって、全体として短円筒状に形成される。止水部材62の軸方向長さは、更生する既設管12の口径に応じてたとえば100〜200mmに設定され、この実施例では150mmである。また、止水部材62の外径は、後述する止水リング84(
図8参照)の厚みを考慮して既設管12の内径よりも少し小さい大きさに設定される。
【0046】
この実施例では、止水部材62は、環状溝60に対向して配置される止水シート70と、止水シート70の内周面側に設けられる押え部材72とによって構成される。
【0047】
止水シート70は、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等の合成ゴム製または軟質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂製の止水性(遮水性)および柔軟性を有するシートを短円筒状に加工することで形成される。また、止水シート70の軸方向中央部には、軸方向に折り返された断面略Z字状の伸長可能部70aが形成される。一方、止水シート70の軸方向両端部は、既設管12の内周面に止水リング84を介して押し付けられると共に、固定具86(
図8参照)を用いて固定される固定部70bとして用いられる。止水シート70の厚みは、たとえば1.0mmである。また、折り畳まれた状態(初期状態)の伸長可能部70aの軸方向長さは、たとえば15mm〜40mmに設定され、この実施例では35mmである。
【0048】
このような止水シート70は、伸長可能部70aが拡がるように変形することで、既設管12の環状溝60の部分での変形(目開きおよび屈曲)に追従可能である。なお、伸長可能部70aの軸方向長さは、環状溝60の部分で既設管12に変形(地震時などにおける想定内の変形)が生じても、止水シート70が破損することなくその変形に追従可能な大きさに設定されている。
【0049】
押え部材72は、止水シート70を内周面側から押圧して支持する部材であって、止水シート70の内周面全体を覆うように設けられる。止水部材62が押え部材72を備えることで、止水シート70を既設管12の内周面(この実施例では止水リング84)に適切に密着させることができる上、止水シート70が補強されるので、止水部材62の止水機能が適切に発揮される。
【0050】
この実施例では、押え部材72は、第1押えリング74と第2押えリング76とによって構成される。第1押えリング74および第2押えリング76のそれぞれは、炭素工具鋼鋼材およびステンレス鋼などで形成されるばね鋼を短円筒状に加工することで形成される。第1押えリング74および第2押えリング76の厚みはそれぞれ、たとえば1.0mmである。また、第2押えリング76の外径は、第1押えリング74の内径と同じ大きさに設定される。そして、第1押えリング74および第2押えリング76は、互いの側縁部(軸方向の一方端部)どうしが摺動可能に所定幅だけ重ね合わされた状態で、止水シート70の内周面側に設けられる。この所定幅、つまり第1押えリング74と第2押えリング76とのオーバーラップ部分78の軸方向長さは、たとえば30mm〜80mmに設定され、この実施例では50mmである。一方、押え部材72の軸方向両端部、つまりオーバーラップ部分78よりも軸方向外側の部分は、止水シート70を止水リング84に押し付ける押付部として用いられると共に、既設管12の内周面に固定具86を用いて固定される固定部として用いられる。
【0051】
このような押え部材72は、第1押えリング74および第2押えリング76が互いに離れる方向にスライド移動することで、既設管12の環状溝60の部分での変形に追従可能である。なお、オーバーラップ部分78の軸方向長さは、環状溝60の部分で既設管12に変形(地震時などにおける想定内の変形)が生じても、オーバーラップ部分78が残る大きさに設定されている。
【0052】
図7に示すように、止水シート70と押え部材72とを一体化して止水部材62を形成する際には、先ず、第1押えリング74の周方向の一部を内側に撓ませて第1押えリング74を略ハート形に縮径し、この縮径した状態の第1押えリング74を止水シート70内の所定位置に配置する。そして、第1押えリング74を円筒状に戻すことで、止水シート70の内周面と第1押えリング74の外周面とを密着させる。これによって、止水シート70と第1押えリング74とが一体化する。その後、同様に、第2押えリング76を略ハート形に縮径して、第1押えリング74および第2押えリング76の側縁部どうしが互いに重ね合わされた状態となるように、第2押えリング76を止水シート70内の所定位置に配置する。そして、第2押えリング76を円筒状に戻すことで、止水シート70および第1押えリング74の内周面と第2押えリング76の外周面とを密着させる。これによって、止水シート70、第1押えリング74および第2押えリング76が一体化した止水部材62が形成される。
【0053】
なお、止水シート70と押え部材72とを一体化する作業は、地上で(つまり止水部材62の施工前に)行ってもよいし、既設管12内で(つまり止水部材62の施工途中に)行ってもよい。また、第1押えリング74のみを地上で止水シート70と一体化し、第2押えリング76は既設管12内で止水シート70と一体化することもできる。
【0054】
続いて、
図1および
図8を参照して、既設管12とライニング管14とが充填材16で一体化された更生管10を形成することによって、既設管12を更生する管路更生方法の一例について説明する。
【0055】
既設管12を更生するときには、先ず、既設管12の更生区間近傍の地上に、帯板部材20、接続部材22、スペーサ18および止水部材62等の必要な部材、並びにカッタ装置および製管機などの必要な装置を適宜用意しておく。帯板部材20および接続部材22は、それぞれ個別にロール状に巻き取ったものを用意し、更生区間の開始位置および終了位置の地上に設置する。また、既設管12の内周面は、高圧洗浄機などを用いて適宜洗浄しておく。
【0056】
次に、
図8(A)に示すように、既設管12の内周面の所定位置に、周方向に延びる環状溝60を形成する。環状溝60の形成には、コンクリートおよび鉄筋を同時に切断可能な、専用のカッタ装置を用いるとよい。既設管12の管軸方向における環状溝60の形成位置は、特に限定されないが、既設管12とマンホール80との接続部82の近傍に形成することが好ましい。たとえば、接続部82から500mm程度離れた位置に環状溝60を形成することが好ましい。
【0057】
また、図示は省略するが、この環状溝60に対して封止部材を充填しておいてもよい。封止部材としては、ポリスチレンフォーム等の発泡材およびシリコーン系コーキング材などのコーキング材を用いることができる。環状溝60内への充填材16の入り込みは、基本的には止水部材62によって防止されるが、環状溝60に封止部材を充填しておくことで、より確実に、環状溝60内への充填材16の入り込みを防止でき、充填材16が環状溝60内で既設管12と一体化することを防止できる。
【0058】
既設管12の内周面に環状溝60を形成すると、続いて、
図8(B)に示すように、この環状溝60を覆う(跨ぐ)ように既設管12の内周面に止水部材62を設置する。
【0059】
止水部材62を設置する際には、先ず、環状溝60の両側に弾性シール材で形成された止水リング84を設ける。止水リング84は、既設管12の内周面と止水部材62の外周面との間の水密性を確保するための部材である。この実施例では、水膨潤ゴムで形成された止水リング84を用い、環状溝60の両側に止水リング84を2つずつ所定間隔をあけて設ける。止水リング84を水膨潤ゴムで形成することにより、仮に環状溝60の部分から浸水が生じても、止水リング84が水を吸収して膨張することで既設管12の内周面と止水部材62の外周面とに止水リング84がより強力に密着して、浸水を確実に止めることができる。
【0060】
環状溝60の両側に止水リング84を設けると、次に、環状溝60を覆うように止水部材62を設ける。たとえば、地上において止水シート70と第1押えリング74とを一体化した構造体を形成する(
図7参照)。この構造体の周方向の一部を内側に撓ませて略ハート形に縮径し、この縮径した状態の構造体を既設管12内に搬入する。そして、既設管12内の環状溝60を覆う位置で構造体を円筒状に戻すことで、既設管12の内周面に止水シート70の外周面を密着させる。その後、第2押えリング76を略ハート形に縮径して既設管12内に搬入し、止水シート70内の所定位置に配置する。そして、第2押えリング76を円筒状に戻すことで、止水シート70、第1押えリング74および第2押えリング76が一体化した止水部材62が、環状溝60を覆うように既設管12内に設置される。
【0061】
その後、コンクリートビス等の固定具86を用いて止水部材62を既設管12の内周面に固定する。この際、固定具86は、周方向に所定間隔で並ぶように(たとえば100mm毎に)複数個所設けるとよい。また、固定具86は、環状溝60の両側にそれぞれ設けられる2つの止水リング84の間の位置において、止水シート70および押え部材72の軸方向両端部を貫くように設けるとよい。固定具86を用いて止水部材62を既設管12の内周面に固定することにより、既設管12と止水部材62との間で止水リング84をより確実に圧縮できる。また、既設管12が環状溝60の部分で変形したときに、その変形に止水部材62がより確実に追従できるようになる。
【0062】
既設管12の内周面に止水部材62を設置すると、続いて、既設管12の内周面頂部に、管軸方向に沿ってスペーサ18を設置する(
図1参照)。スペーサ18は、既設管12とライニング管14との間に充填材16の注入ホースを導入するための案内通路を形成する。また、スペーサ18は、注入した充填材16によってライニング管14が浮上してしまうことを防止すると共に、形成した更生管10の強度を向上させる。
【0063】
既設管12の内周面頂部にスペーサ18を設置すると、続いて、
図1および
図8(C)に示すように、製管機を用いて既設管12内にライニング管14を施工する。ここでは先ず、既設管12内に帯板部材20を引き込みながら、既設管12の内周面に沿って帯板部材20を螺旋状に巻き回して螺旋管を仮製管していく。この際、帯板部材20の隣り合う側縁部間には、接続部材22の嵌め込み代に相当する隙間をあけておく。また、この仮製管作業を進めつつ、仮製管した螺旋管においては、製管機を用いて開始位置から順に、帯板部材20の隣り合う側縁部同士を接続部材22によって連結していく。すなわち、帯板部材20の第1嵌合部34と接続部材22の第2嵌合部42とを順次嵌め合わせていくことで、既設管12の内周面に沿うライニング管14を製管する。
【0064】
既設管12内にライニング管14を形成すると、続いて、既設管12の内周面とライニング管14の外周面との間にセメントミルク系の充填材16を注入する。充填材16が固化することで、
図9に示すような、既設管12とライニング管14とが充填材16によって一体化された更生管10が形成される。その後、片付け作業などを適宜実施することによって、既設管12の更生作業が終了する。
【0065】
上述のように形成された更生管10は、
図9に示すように、既設管12と、既設管12の内周面に形成された環状溝60と、環状溝60を覆うように既設管12の内周面に設けられた止水部材62と、既設管12の内周面に沿うように形成されたライニング管14と、既設管12の内周面とライニング管14の外周面との間に充填された充填材16とを備えている。
【0066】
このような更生管10では、既設管12が環状溝60を有しているため、
図10に示すように、地震等によって大きな力が更生管10に作用すると、既設管12の環状溝60の部分が他の部分よりも先にひび割れて、環状溝60の部分で既設管12に伸長および曲げが発生する。つまり、既設管12の破損部位を環状溝60の部分に誘発することができるので、既設管12(延いては更生管10)の他の部位の破損を防ぐことができる。
【0067】
また、環状溝60の部分で既設管12に変形が発生すると、ライニング管14は、溝部48が幅方向に破断すると共にフレキシブル部50が大きく伸長することで、水密性を保持したまま既設管12の変形に追従する。すなわち、既設管12が環状溝60の部分で変形して破損しても、ライニング管14によって更生管10の管路としての機能は適切に保持される。
【0068】
さらに、環状溝60を既設管12とマンホール80との接続部82の近傍に形成しておくことで、既設管12が環状溝60の部分でひび割れた際には、既設管12は、マンホール80との接続部82を含む部分とその他の部分とが分離して、互いに独立して挙動するようになる。つまり、地震時には環状溝60の部分で変位が吸収されて、接続部82にかかる負担が軽減されるので、接続部82の破損が防止される。
【0069】
さらにまた、既設管12が環状溝60の部分で変形して破損しても、止水部材62は、伸長可能部70aが拡がるように止水シート70が変形すると共に、第1押えリング74および第2押えリング76が互いに離れる方向に移動するように押え部材72が変形することで、水密性を保持したまま既設管12の変形に追従する。これにより、既設管12の破損部分からの浸水は、止水部材62によって阻止され、ライニング管14への浸水の到達が防止される。
【0070】
また、既設管12の破損時に止水部材62が変形しても、第1押えリング74と第2押えリング76とのオーバーラップ部分78が残る、つまり止水シート70の内周面全体が押え部材72によって支持された状態が維持されることで、止水シート70(延いては止水部材62)が外水圧によって大きく変形することが適切に防止される。
【0071】
以上のように、この実施例によれば、環状溝60を覆うように止水部材62を設けるので、地震時などに既設管12が環状溝60の部分で変形して破損しても、その破損部分からライニング管14に浸水が到達することを防止できる。したがって、ライニング管14が外水圧によって大きく変形することを防止できる。
【0072】
なお、上述の実施例では、既設管12の内周面に止水リング84を設置してから止水部材62を設けるようにしたが、これに限定されない。地上で止水部材62の外周面に止水リング84を予め取り付けておき、その止水部材62(或いは止水部材62の一部)と止水リング84とを一体化した構造体を既設管12の内周面に設置するようにしてもよい。既設管12内での作業を減らすことで、作業者の負担を低減することができる。
【0073】
また、上述の実施例では、環状溝60の両側に止水リング84を2つずつ設けたが、止水リング84の数および配置位置は、適宜変更可能である。ただし、環状溝60の両側において、固定具86よりも環状溝60に近い位置に少なくとも1つの止水リング84を設けることが好ましい。
【0074】
さらに、止水リング84は、必ずしも設けられる必要はない。たとえば、止水リング84を設ける代わりに、止水シート70の固定部70bの外周面に、周方向に延びる1または複数の環状突起を形成しておくこともできる。
【0075】
さらにまた、上述の実施例では、止水シート70および押え部材72の双方を貫通するように固定具86を設けたが、これに限定されない。たとえば、
図11に示すように、第1押えリング74および第2押えリング76のそれぞれに、止水シート70よりも軸方向外側に突出する延出部74a,76aを設け、その延出部74a,76aを貫通するように固定具86を設けることもできる。つまり、止水シート70を貫通しないように固定具86を設けることもできる。
【0076】
また、上述の実施例では、止水シート70を軸方向に折り返すようにして伸長可能部70aを形成したが、伸長可能部70aの形状は、適宜変更可能である。たとえば、
図12に示すように、止水シート70の伸長可能部70aは、軸方向に凹凸を繰り返す波形状に形成することもできる。また、
図13に示すように、止水シート70の伸長可能部70aは、径方向外側に突出する断面略U字状に形成することもできる。この場合には、止水シート70の伸長可能部70aを環状溝60に嵌め込むようにして、既設管12の内周面に止水部材62を設けるとよい。また、止水シート70は、必ずしも伸長可能部70aを有する必要はなく、材質に起因する止水シート70自体の伸縮性(ゴム弾性)によって伸長することで、既設管12の変形に追従可能とすることもできる。
【0077】
さらに、上述の実施例では、第2押えリング76を第1押えリング74よりも小径となるように形成したが、これに限定されない。
図13に示すように、第2押えリング76の側縁部を径方向内側に窪ませた窪み部76bを第2押えリング76に形成し、この窪み部76bを第1押えリング74の側縁部と重ね合わせることでオーバーラップ部分78を形成することもできる。
【0078】
さらにまた、上述の実施例では、止水シート70と第1押えリング74および第2押えリング76とを一体化するときには、第1押えリング74および第2押えリング76を略ハート形に縮径するようにしたが、これに限定されない。たとえば、第1押えリング74および第2押えリング76のそれぞれに、周方向に分離可能な切り込みを入れておく。そして、この切り込み部分を重ねるように縮径させた状態の第1押えリング74および第2押えリング76を止水シート70内に配置した後、元の大きさに戻すことで、止水シート70と第1押えリング74および第2押えリング76とを一体化することもできる。
【0079】
また、第1押えリング74および第2押えリング76は、周方向に分割された複数の円弧状リング片を組み合わせて形成することもできる。複数の円弧状リング片を用いて第1押えリング74および第2押えリング76を形成する場合は、必ずしも第1押えリング74および第2押えリング76をばね鋼によって形成する必要はない。
【0080】
また、上述の実施例では、環状溝60の部分で既設管12に変形が生じたときに、第1押えリング74と第2押えリング76とのオーバーラップ部分78が残るようにしたが、これに限定されない。止水シート70が浸水による外水圧に耐え得る範囲ならば、第1押えリング74および第2押えリング76が互いに離れた状態(少し開いた状態)になっても構わない。
【0081】
さらに、上述の実施例では、第1押えリング74と第2押えリング76とで押え部材72を構成したが、押え部材72は、1つの押えリングで形成することもできる。この場合には、押えリング(押え部材72)の一方側縁部を固定具86で固定する片持ち固定にしておき、押えリングの他方側縁部は、オーバーラップ部分78と同程度の軸方向長さ分だけ、止水シート70よりも軸方向外側に突出するようにしておくとよい。
【0082】
さらにまた、上述の実施例では、伸長可能部46を備える接続部材22を用いるようにしたが、帯板部材20に同様の伸長可能部を形成することもできる。
【0083】
また、帯板部材20および接続部材22などのライニング部材が必ずしも単体で伸張可能部を備える必要はなく、嵌合が外れない程度に連結部分が撓む(変形する)ことで、ライニング管14が伸長するようにしても構わない。つまり、ライニング部材同士の連結部分(第1嵌合部34と第2嵌合部42)が伸長可能部として機能してもよい。
【0084】
また、伸長性を有するライニング管を形成するに対して、必ずしも伸長可能部を備えるライニング部材を用いる必要はなく、ライニング部材をポリエチレン等の伸長可能な材質によって形成することで、ライニング管に伸長性を持たせるようにしても構わない。また、ライニング管は、必ずしも伸長性を有する必要はない。
【0085】
さらに、上述の実施例では、接続部材22を用いて帯板部材20の隣り合う側縁部同士を連結するようにしたが、これに限定されず、帯板部材の両側縁部に互いに嵌り合う嵌合部を形成することによって、帯板部材の側縁部同士を直接連結するようにしてもよい。すなわち、帯板状のライニング部材を螺旋状に巻き回してライニング管を形成する際には、2種類以上の帯板状のライニング部材を組み合わせて用いてもよいし、1種類の帯板状のライニング部材を単独で用いてもよい。
【0086】
さらにまた、ライニング管は、必ずしも帯板状のライニング部材を螺旋状に巻き回すことで形成される必要はない。たとえば、ライニング部材として円弧状のものを用い、円弧状のライニング部材を周方向および管軸方向に連結することでライニング管を形成することもできる。この場合には、たとえば、ライニング部材の管軸方向における連結部分に伸長性を持たせる、つまり連結部分を伸長可能部として、ライニング管が伸長性を有するようにするとよい。
【0087】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値はいずれも単なる一例であり、製品の仕様および更生する既設管12の口径などの必要に応じて適宜変更可能である。
【解決手段】この管路更生方法では、既設管12とライニング管14とが充填材16で一体化された更生管10を形成する。先ず、既設管の内周面の所定位置に周方向に延びる環状溝60を形成し、次に、環状溝を覆うように止水部材62を設ける。止水部材は、環状溝の部分で既設管が変形したときに、その変形に追従してライニング管側への浸水を防止する部材である。その後、既設管の内周面に沿うようにライニング管を形成し、既設管の内周面とライニング管の外周面との間に充填材を充填する。