(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
蓄熱タンクと、前記蓄熱タンク内の冷温水を冷媒の蒸発及び圧縮により加熱及び冷却する蓄熱コイルと、前記冷媒を圧縮する熱源機と、前記冷温水を前記蓄熱タンクから冷温水式放射空調パネルへ送り出す循環ポンプと、を有し、前記蓄熱タンク内の前記冷温水を冷温水式放射空調パネルに供給するヒートポンプ式冷温水発生装置において、
前記蓄熱タンクと前記冷温水式放射空調パネルとの間に設けられた入れ替え装置と、
前記蓄熱タンクを収納する空調熱交換チャンバーボックスと、を備え、
前記入れ替え装置は、暖房時には前記蓄熱タンクの上部から前記冷温水を取り出すと共に、前記冷温水式放射空調パネルからの還り水を前記蓄熱タンクの下部から供給し、冷房時には前記蓄熱タンクの下部から前記冷温水を取り出すと共に、前記冷温水式放射空調パネルからの還り水を前記蓄熱タンクの上部から供給し、
前記空調熱交換チャンバーボックスは、前記蓄熱タンクからの放熱を利用して、外部から取り入れた外気に対して夏季に冷却除湿し、冬季に加温加湿を行うことにより空調空気をつくり、前記空調空気を部室内に送り込む、ヒートポンプ式冷温水発生装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上に述べた大型熱源システムや空調用ヒートポンプ式冷温水発生装置、吸収式冷温水発生装置あるいは、ヒートポンプ式チラー等はいずれも大型で、共同住宅のベランダやバルコニーに設置する際、火災時に避難の妨げにならない大きさが必要であった。また、従来の強制対流空調方式の空気空調に必要なエネルギーが大きく、冷温水式放射空調パネル空調に適した必要最低限の冷温水発生装置がなかった。また、従来の冷温水式放射空調パネルを用いた空調では、湿度コントロールには別の機械が必要であった。上記理由が冷温水式放射空調パネル空調の普及の妨げになっていた。従って、小スペースに設置されている従来の壁掛ルームエアコンや天井カセット型空調機等の代替として冷温水式放射空調パネル空調が設置可能になるように、冷温水発生装置を小型化する必要があった。
【0005】
そこで、本発明は、小型化が可能なヒートポンプ式冷温水発生装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は、蓄熱タンクと、蓄熱タンク内の冷温水を冷媒の蒸発及び圧縮により加熱及び冷却する蓄熱コイルと、冷媒を圧縮する熱源機と、冷温水を蓄熱タンクから冷温水式放射空調パネルへ送り出す循環ポンプと、を有し、蓄熱タンク内の冷温水を冷温水式放射空調パネルに供給するヒートポンプ式冷温水発生装置において、蓄熱タンクと冷温水式放射空調パネルとの間に設けられた入れ替え装置を備え、入れ替え装置は、暖房時には蓄熱タンクの上部から冷温水を取り出すと共に、冷温水式放射空調パネルからの還り水を蓄熱タンクの下部から供給し、冷房時には蓄熱タンクの下部から冷温水を取り出すと共に、冷温水式放射空調パネルからの還り水を蓄熱タンクの上部から供給する。
【0007】
この構成によれば、蓄熱タンクは熱源機から提供される冷媒の熱を回路内の水に伝える熱交換器の機能を奏する。従って、熱源機によって冷媒の温度を制御することにより、蓄熱タンク内の水を冷水又は温水にすることが可能になる。そうすると、冷水のみを貯留する冷水貯留タンクと温水のみを貯留する温水貯留タンクをそれぞれ準備しなくてもよいので、冷温水発生装置を構成するための部品点数が低減する。すなわち、蓄熱タンクが複数の機能を有するので、熱システムを形成する部品点数が低減する。従って、ヒートポンプ式冷温水発生装置の小型化が可能になると共に軽量化も可能になる。
【0008】
いくつかの形態において、ヒートポンプ式冷温水発生装置は、蓄熱タンクを収納する空調熱交換チャンバーボックスをさらに備え、空調熱交換チャンバーボックスは、蓄熱タンクからの放熱を利用して、外部から取り入れた外気に対して夏季に冷却除湿し、冬季に加温加湿を行うことにより空調空気をつくり、空調空気を部室内に送り込んでもよい。この構成によれば、蓄熱タンクを新たな熱システムの熱源として利用できるので、部品点数の増加を抑制しながら空調空気を作り出すことができる。さらに、夏季の湿気による室内や冷温水式放射空調パネルの結露が防止されると共に、冬季の乾燥が低減される。従って、室内環境を快適にすることができる。
【0009】
いくつかの形態において、蓄熱タンクは、蓄熱タンクの外面の上部に配置した第1温度センサーと、蓄熱タンクの外面の下部に配置した第2温度センサーと、を有してもよい。この構成によれば、第1温度センサー及び第2温度センサーにより得られた情報を用いて熱源機を制御することができる。
【0010】
いくつかの形態において、第1温度センサー及び第2温度センサーは、熱源機と連動するように構成してもよい。この構成によれば、熱源機の動作が第1温度センサー及び第2温度センサーによって制御されるので、蓄熱タンク内の水の温度を冷房及び暖房のそれぞれに適した温度に制御することが可能になる。従って、省エネルギー化に寄与することができる。
【0011】
いくつかの形態において、蓄熱タンクは、外面に熱交換用フィンを有してもよい。この構成によれば、蓄熱タンクの熱を好適に放出することができる。
【0012】
いくつかの形態において、蓄熱タンクは、冷媒貫通部と点検口とを兼ねた点検口部を有し、冷媒貫通部は、鞘管構造であってよい。この構成によれば、水密性を奏しながら蓄熱タンク内に蓄熱コイルを好適に導入することができる。
【0013】
いくつかの形態において、冷温水式放射空調パネルから蓄熱タンクへの還り経路に設けられた熱交換ユニットをさらに備え、熱交換ユニットは、地下水の熱を有効に取込み省エネルギー効果を高めてもよい。この構成によれば、ヒートポンプ式冷温水発生装置のエネルギー効率をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
上述したように本発明によれば、小型化が可能なヒートポンプ式冷温水発生装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1に示されるように、ヒートポンプ式冷温水発生装置(以下、「冷温水発生装置50」と言う)は、冷温水式放射空調システム(以下「空調システム90」と言う)に用いられる。放射とは、熱の移動方法の一種で、温度の高い方から低い方へ、熱が遠赤外線で移動する現象で、放射空調は人体(温度の高い方)から天井、壁、床(温度の低い方)へ熱が移動することにより温度感を感じる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態を
図1〜
図3に基づいて説明する。なお、
図1において破線の矢印は温水が流れる方向を示す。また、
図1において実線の矢印が冷水が流れる方向を示す。空調システム90は、冷温水発生装置50と冷温水式放射空調パネル11とを備える。冷温水発生装置50は、冷温水式放射空調パネル11に供給する冷水及び温水を発生させるものである。冷温水発生装置50は、例えば、集合住宅のベランダといった室外に設置される。一方、冷温水式放射空調パネル11は、例えば、室内の天井に設置される。
【0019】
熱源機1は、例えば、空冷ヒートポンプ式壁掛ルームエアンの室外機(三菱電機MXZ−YX448S)である。室外機は強制対流空調方式による空気空調専用だが、該ルームエアコンの室内機の内部部品である銅管とアルミフィンで構成された空気式放熱コイルを蓄熱タンク2に水没させ冷温水式の蓄熱コイル3に用途を変更している。これにより熱源機1は冷温水式放射空調方式用の冷温水発生装置50のための熱源機1に用途を変えている。熱源機1は冷媒管14にて蓄熱コイル3に接続されている。
【0020】
蓄熱タンク2は熱源機1からの冷媒熱を回路内の水に伝える熱交換器の機能を備えると同時に、冷水貯留タンク及び温水貯留タンクの機能も備える。このように、蓄熱タンク2がいくつかの機能を有するので、熱システムを形成する部品点数が低減する。従って、熱システムを、小型且つ軽量化することに寄与している。
【0021】
図1において熱源機1は、例えば、空冷ヒートポンプ式壁掛ルームエアンの室外機(三菱電機MXZ−YX448S)である。その暖房能力は3.2kwであり、冷房能力は2.2kwである。これに対し強制対流方式の壁掛ルームエアコンにより16畳の室内を空調する場合に必要な最低限の能力は、一般的に暖房能力が6.3kwであり、冷房能力が5.0kwである。従って、本実施形態に係る冷温水発生装置50の消費電力は約2倍の効率があり、省エネルギー効果が大きい。
【0022】
鞘管構造を有する鞘管付点検口16(点検口部、冷媒貫通部)は、蓄熱タンク2の内部及び、蓄熱コイル3を点検する鞘管付点検口で、冷媒管14の貫通部材を兼ねている。該鞘管部分は冷媒配管(6.35φ×9.52φ)のフレア継手ごと貫通できる25A(外径:35φ)の鋼管である。該鞘管部分は長さを150mm程度とし、熱源機1に向けて例えば30度ほど鋭角に傾けている。これは冷媒配管を熱源機1の方向に無理なく配管するためと漏水を防止するためである。空調システム90の稼働中は0.2〜0.35MPa程度の圧力と、冷温水による熱膨張、熱伸縮があるので、鞘管付点検口16に冷媒管14を通した後、シリコンコーキング材等の止水材を充填し漏水を防ぐ。
【0023】
熱源機1によって作り出された熱は、蓄熱コイル3にて蓄熱タンク2内の水17の温度を変化させ冷水又は温水となる。蓄熱タンク2は、例えば、平地・二段式空調用室外機架台(パクマ工業B−HWT4)の下段に納まる最大限の大きさ(約250φ(直径)×700L(長さ)、約34L(容量))である。蓄熱タンク2はステンレス製とし、本体を1.5mm〜3.0mm厚のステンレス鋼板、鞘管付点検口16を3.0mm厚のステンレス鋼板とし、蓄熱タンク2を軽量化した。配管回路もステンレス管を溶接接合し軽量化した。なお、耐久性のある素材であれば各種材料が採用できる。熱源機1にて変温された冷温水は、循環ポンプ4(荏原製作所20LPN5.04S30L/min×2.5m
2×0.04kw)にて冷温水式放射空調パネル11に循環を繰り返し放射空調を行う。
【0024】
水は4℃の時にいちばん比重が重くなり、4℃より水温が高くても、低くても比重が軽くなってしまう。なお、従来は、冷水を4℃以下にすることで蓄熱タンク2の上部に冷水を移動して強制対流空調方式の熱源として利用していた。
【0025】
今回の冷温水式放射空調方式に必要な冷温水温度が10℃〜40℃程度と従来の強制対流空調方式に必要な冷温水温度に比べ、冷水は高い温度帯、温水は低い温度帯にて使用するので4℃以下の冷水が必要ではなく省エネルギーである。そのため、蓄熱タンク2内部の冷温水に熱ムラがあり、蓄熱タンク2の上部が暖まりやすく、蓄熱タンク2の下部は冷え易い状態になる。蓄熱タンク2内の熱ムラを有効に利用するため冷暖房運転の切替に合わせて冷温水の循環経路を入れ替える必要がある。
【0026】
冷温水の循環経路は入れ替え装置40にて行う。入れ替え装置40は電磁弁5,6と配管とで構成されている。暖房運転時は2箇所の電磁弁6を閉じ、温水を蓄熱タンク2の上部から取出し、冷温水式放射空調パネル11にて熱移動した後、蓄熱タンク2の下部に還る。冷房運転時は2箇所の電磁弁5を閉じ、冷水を蓄熱タンク2の下部から取出し、冷温水式放射空調パネル11にて熱移動した後、蓄熱タンク2の上部に還る。電磁弁5,6は、Xポート式の4方向型が小型で望ましいが2方向弁を4個用いることもできる。電磁弁5,6は、例えば既製品(日本バルブコントロールCA1A−205YYF−0020)である。
【0027】
冷温水回路の保護のために、膨張タンク7を備える。膨張タンク7は、蓄熱タンク2の上部に設けられた取り出し口に接続されている。
【0028】
運転制御は、リモコン30による熱源機1の暖房・冷房の運転切替に追随する。蓄熱タンク2の外面に設置された温度センサー8にて冷温水の温度を測定し運転制御を行う。暖房運転時は蓄熱タンク2の上部の温度センサー8A(第1温度センサー)で冷温水の温度を測定する。冷房運転時は蓄熱タンク2の下部の温度センサー8B(第2温度センサー)にて測定する。温度センサー8A,8Bは冷暖運転の切替にて選択され、暖房運転時は温度センサー8Aを選択し、冷房運転時は温度センサー8Bを選択する。温度センサー8A,8Bは必ずどちらか一方を選択する。温度センサー8A,8Bは、熱源機1と連動する。具体的には、測定した温度により、暖房運転時は温度センサー8Aが上限ピークカット温度(仮に41℃)を検知したときに熱源機1を停止する。その後、温度センサー8Aが復旧温度(仮に29℃)を検知したときに自動復旧し、熱源機1の運転を再開する。冷房運転時には温度センサー8Bが温度下限ピークカット温度(仮に9℃)を検知したときに熱源機1を停止する。その後、温度センサー8Bが復旧温度(仮に16℃)を検知した時に自動復旧し、熱源機1の運転を再開する。
【0029】
温度センサー8A,8Bの設置場所を蓄熱タンク2の外面の上部及び、下部に設置するのは、万が一配管路で漏水が発生した場合、配管内のエアーだまりが生じ冷温水温度が測定できず制御不能になるのを防止するためである。
【0030】
冷温水が出来上がるまでのスタートアップに時間(約30分)が掛かる。そのため、運転方法は、冷暖房それぞれの運転モードにての連続運転を基本とする。スタートアップに要するエネルギーは大きいが、冷温水が出来た後は少ないエネルギーで空調運転が維持できる。
【0031】
圧力センサー9にて圧力を測定し、異常圧力を検知した場合、熱源機1を停止する。圧力センサー9は、冷温水式放射空調パネル11と循環ポンプ4との間に配置されている。
【0032】
空調システム90内に水道水を充填するため及び、加湿用に補給水弁12と、水抜き弁13、加湿給水15を備える。これら補給水弁12、水抜き弁13は、蓄熱タンク2の下側に設けられた取り出し口に接続されている。加湿給水15は蓄熱タンク2への給水配管から分岐している。
【0033】
本実施形態に係る冷温水発生装置50は熱交換ユニット33を水配管を冷温水式放射空調パネル11から蓄熱タンク2への還り経路の一部に備える。具体的には、冷温水式放射空調パネル11と循環ポンプ4との間に配置されている。この構成により、地下水34の熱を有効に取込み省エネルギー効果を高めことができる。
【0034】
図2において空調熱交換チャンバーボックス(以下、単に「チャンバーボックス19」という)を表す。平地・二段式用空調室外機架台の下段の6面を鋼製パネルにて囲い、チャンバーボックス19を構成する。該パネルの内面は断熱し放熱を防ぐ。チャンバーボックス19内には、蓄熱タンク2(蓄熱コイル3内蔵)と、循環ポンプ4と、膨張タンク7と、電磁弁5,6と、温度センサー8A,8Bと、圧力センサー9と、加湿給水15と、ボール弁10(
図1参照)及び、制御装置18を配管回路にて接続したシステムを構築した。なお、
図2には、チャンバーボックス19内に蓄熱タンク2と噴霧ノズル25とのみを示し、その他の構成要素については図示を省略している。
【0035】
チャンバーボックス19の端壁には外気取入口23と給気ダクト接続口26とがある。外気取入口23はフィルター23aを備える。外気取入口23から取り入れられた外気28は蓄熱タンク2の放熱により熱交換される。蓄熱タンク2の表面には熱交換用フィン20(空気用)が取付られており熱交換効率を向上させている。
【0036】
外気28がチャンバーボックス19内で空調される過程で、夏季の冷房運転時には、冷却と同時に湿気が結露水として、蓄熱タンク2と熱交換用フィン(空調用)20に付着し除湿される。冷房除湿された空調空気29は給気ダクト接続口26に導かれ、給気ダクト27にて部室内に給気される。
【0037】
また、冬季暖房運転時には、加温と共に加湿を行う。加湿は冬季のみ行う。補給水弁12(
図1参照)を開くと、補給水管24を通じ水道水が供給され、噴霧ノズル25から極少量の霧状の水が連続的に噴霧され加湿される。空調空気29は給気ダクト接続口26に導かれ、給気ダクト27にて室内に接続する。空調空気29は室内に既設されている換気ファンに追随し、換気量に応じて第三種換気方式にて室内に供給される。
【0038】
チャンバーボックス19の下面19Aにはドレンパン21が設けてあり、結露水や余剰水分は排水弁22より排出される。
【0039】
ヒートポンプ式の冷温水発生装置50によれば、小型軽量化され、従来のルームエアコン室外機の上下二段置きタイプを設置すると同じ大きさで、共同住宅のベランダやバルコニーに設置することを目的のーつとし、火災時に避難の妨げにならない大きさを実現したそのうえ、ヒートポンプ式の冷温水発生装置50は、重量も軽量化し人力による可搬性が向上し設置し易くなった。
【0040】
また、空調システム90は、チャンバーボックス19にて空調空気29をつくり部室内に送り込むことにより、冬季は加温加湿、夏季は冷却除湿することができ、室内の乾燥、除湿、冷温水式放射空調パネル11の結露を低減できた。
【0041】
上記の構成を有する空調システム90について別の側面からさらに説明する。
図4に示されるように、空調システム90は、第1の熱システム71、第2の熱システム72及び第3の熱システム73を有する。
【0042】
第1の熱システム71は、冷温水式放射空調パネル11により室内101の温度調整を行う。第1の熱システム71は、冷温水式放射空調パネル11と蓄熱タンク2と配管系74とを含む。冷温水式放射空調パネル11は、室内101に配置され、蓄熱タンク2は室外102に配置される。冷温水式放射空調パネル11は、蓄熱タンク2から供給される冷水又は温水を流通させることにより、冷水又は温水が有する熱を室内101に放射する。蓄熱タンク2は、冷温水式放射空調パネル11へ供給される冷水又は温水の供給源であり、冷水又は温水の温度を所定の温度に制御し、配管系74を介して当該冷水又は温水を冷温水式放射空調パネル11へ供給する。配管系74は、蓄熱タンク2から冷温水式放射空調パネル11へ冷水又は温水を導く。
【0043】
冷温水式放射空調パネル11は、配管系74を介して蓄熱タンク2に接続されている。具体的には、冷温水式放射空調パネル11の給水部11aは、配管系74のパネル側排水部74aに接続されている。冷温水式放射空調パネル11の排水部11bは、配管系74のパネル側給水部74bに接続されている。蓄熱タンク2の上側給排水部2aは、配管系74の第1タンク側給排水部74cに接続されている。蓄熱タンク2の下側給排水部2bは、配管系74の第2タンク側給排水部74dに接続されている。このような接続構成によれば、蓄熱タンク2から供給された熱媒体である冷水又は温水は、配管系74を介して冷温水式放射空調パネル11に供給される。冷温水式放射空調パネル11の内部を通過した冷水又は温水は、配管系74を介して再び蓄熱タンク2に戻る。
【0044】
ここで、配管系74は、入れ替え装置40を有し、当該入れ替え装置40によって蓄熱タンク2から冷水又は温水を取り出す取り出し口を切り替える機能を奏する。取り出し口とは、上記上側給排水部2a及び下側給排水部2bである。例えば、冷温水式放射空調パネル11により暖房を行う場合には、上側給排水部2aから温水を取り出し、下側給排水部2bへ還り水を送り込む。一方、冷温水式放射空調パネル11により冷房を行う場合には、下側給排水部2bから冷水を取り出し、上側給排水部2aへ還り水を送り込む。
【0045】
図3に示されるように、蓄熱タンク2は、円筒状の中空形状を呈する。なお、蓄熱タンク2の形状は、円筒状に限定されず、直方体の中空形状であってもよい。蓄熱タンク2は、タンク本体2Bと、タンク本体2Bの外周面に設けられた熱交換用フィン20と、鞘管付点検口16とを有する。鞘管付点検口16は、タンク本体2Bに対してパッキン31及びボルトナット32を用いて取り付けられている。上側給排水部2aは、タンク本体2Bの周面において上側に設けられる。下側給排水部2bは、タンク本体2Bの周面において下側に設けられる。例えば、円筒状のタンク本体2Bを側面視したとき、円筒状のタンク本体2Bの鉛直方向に沿った上側に上側給排水部2aが設けられ、下側に下側給排水部2bが設けられる。さらに、上側給排水部2aは、端壁2Cに近い側に設けられる。一方、下側給排水部2bは、上側給排水部2aが近接する端壁2Cとは逆側の端壁2Cに近い側に設けられる。このような上側給排水部2a及び下側給排水部2bによれば、蓄熱タンク2を側面視したとき冷温水が対角方向(矢印W1(温水),W2(冷水)参照)に流れる。従って、蓄熱タンク2内蔵の蓄熱コイル3からの熱交換効率を高めることができる。また、上側給排水部2a及び下側給排水部2bを周面に設けることにより、これらを端壁2C,2Dに設ける必要がなくなる。そうすると、鞘管付点検口16が設けられた端壁2Dに設けられる配管が少なくなるので、点検作業を容易に行うことができる。
【0046】
タンク本体2Bは、水密構造を有し、その内部には冷水又は温水が満たされている。例えば、冷温水式放射空調パネル11によって冷房を行う場合には、蓄熱タンク2内の水温は10℃〜15℃程度に制御される。従って、本実施形態でいう、「冷水」とは、10℃〜15℃程度の温度を有する水をいう。また、冷温水式放射空調パネル11によって暖房を行う場合には、蓄熱タンク2内の水温は30℃〜40℃程度に制御される。従って、本実施形態でいう「温水」とは、30℃〜40℃程度の温度を有する水をいう。
【0047】
上述したように、蓄熱タンク2内の冷水又は温水には熱ムラが存在する。例えば、蓄熱タンク2に満たされた水は、その上部と下部とでおよそ5℃程度の温度差が生じる。
【0048】
冷水又は温水は、上側給排水部2a及び下側給排水部2bによりタンク本体2Bの外部へ排出されると共に受け入れられる。上側給排水部2aは、タンク本体2Bに満たされた冷水又は温水の深さ方向における上側に設けられている。例えば、上側給排水部2aは、下側給排水部2bよりも上側に設けられているともいえる。また、タンク本体2Bに満たされた冷水又は温水の温度分布を基準として説明することもできる。タンク本体2Bに満たされた冷水又は温水の温度は、上側が比較的高く、下側が比較的低い。従って、上側給排水部2aは、比較的高温となる領域に設けられており、下側給排水部2bは、比較的低温となる領域に設けられているともいえる。
【0049】
再び
図4に示されるように、第2の熱システム72は、蓄熱タンク2内の冷水又は温水を所定の温度に制御する。第2の熱システム72は、熱源機1と、蓄熱コイル3とを有する。熱源機1は、配管を介して蓄熱コイル3に接続されている。具体的には、熱源機1の熱媒体送出部1aは、蓄熱コイル3の熱媒体受入部3aに接続されている。熱源機1の熱媒体受入部1bは、蓄熱コイル3の熱媒体送出部3bに接続されている。熱源機1によって発生した熱は、熱媒体によって蓄熱コイル3に送られる。この熱媒体は、配管を通じて熱源機1と蓄熱コイル3との間の往復する。蓄熱コイル3は、蓄熱タンク2の内部に配置されている。蓄熱コイル3は、その内部に熱媒体を流動させることにより、蓄熱タンク2に満たされた水へ熱を与える。
【0050】
熱源機1の動作は、温度センサー8A,8B(
図3参照)の出力値を用いて制御する。なお、温度センサー8Aは、蓄熱タンク2の外面に取り付けられてもよいし、上側給排水部2aと接続される配管経路上に配置されてもよい。温度センサー8Bは、蓄熱タンク2の外面に取り付けられてもよいし、下側給排水部2bと接続される配管経路上に配置されてもよい。要するに、冷温水式放射空調パネル11へ送られる温水又は冷水に対応する温度を得ることができる場所に設ければよい。
【0051】
第3の熱システム73は、温度と湿度とが調整された調整空気を室内101へ提供する。第3の熱システム73は、チャンバーボックス19と給気ダクト27とを有する。例えば、集合住宅や戸建て住宅は、室内101の換気のための通気口103が外壁に設けられている。室内101に設置された換気扇を動作させると、室内101が負圧となり通気口103から外気が流入する。ここで、通気口103は単なる貫通孔であるので、夏場の熱い外気や、冬場の冷たい外気が直接に室内101に流入してしまう。そこで、第3の熱システム73により、外気取入口23から吸い込んだ外気に対してある程度の温度及び湿度の調整を行うことにより調整空気をつくりだす。そして、当該調整空気を給気ダクト接続口26及び給気ダクト27を介して室内101に送り込む。この室内101とは、冷温水式放射空調パネル11が設置された場所でもよいし、冷温水式放射空調パネル11が設置されていない別の場所であってもよい。
【0052】
チャンバーボックス19については既に説明をしたが、
図2を参照しつつ、さらに補足的に説明する。チャンバーボックス19は、中空の箱状を呈する。蓄熱タンク2は、チャンバーボックス19の高さ方向、縦方向及び幅方向のそれぞれの略中央近傍において、その中心軸が水平方向に向くように収納されている。そして、蓄熱タンク2の一方の端壁2Cと対面するチャンバーボックス19の端壁19Cにおいて、端壁2Cと向き合う領域には、外気取入口23が設けられる。また、蓄熱タンク2の他方の端壁2Dと対面するチャンバーボックス19の端壁19Dにおいて、端壁2Dと向き合う領域には、給気ダクト接続口26が設けられる。すなわち、外気取入口23と、蓄熱タンク2の端壁2C,2Dと、給気ダクト接続口26とは、同一の水平線上に配置されている。このような配置によれば、外気取入口23から取り入れられた外気は、蓄熱タンク2の軸線方向に沿って給気ダクト接続口26まで流れる。そうすると、外気は、比較的長く蓄熱タンク2の熱交換用フィン20と接することになるので、交換される熱量を増加させることができる。
【0053】
さらに、チャンバーボックス19の内部には、湿度を調整するための噴霧ノズル25が配置されている。噴霧ノズル25は、蓄熱タンク2の上方に配置され、蓄熱タンク2に向けて水を噴霧する。
【0054】
要するに、一形態に係るヒートポンプ式の冷温水発生装置50は、蓄熱タンクと、蓄熱タンク内の冷水又は温水を冷媒の蒸発及び圧縮により加熱及び冷却する蓄熱コイルと、冷媒を圧縮する熱源機と、冷水又は温水を蓄熱タンクから冷温水式放射空調パネルへ送り出す循環ポンプと、蓄熱タンクと冷温水式放射空調パネルとの間に設けられた入れ替え装置を備える。入れ替え装置は、暖房時には蓄熱タンクの上部から冷水又は温水を取り出すと共に、冷温水式放射空調パネルからの還り水を蓄熱タンクの下部から供給し、冷房時には蓄熱タンクの下部から冷温水を取り出すと共に、冷温水式放射空調パネルからの還り水を蓄熱タンクの上部から供給する。
【0055】
また、別の形態に係る冷温水式放射空調システムは、冷温水式放射空調パネルと、ヒートポンプ式冷温水発生装置とを備える。ヒートポンプ式冷温水発生装置は、蓄熱タンクと、蓄熱タンク内の冷水又は温水を冷媒の蒸発及び圧縮により加熱及び冷却する蓄熱コイルと、冷媒を圧縮する熱源機と、冷水又は温水を蓄熱タンクから冷温水式放射空調パネルへ送り出す循環ポンプと、蓄熱タンクと冷温水式放射空調パネルとの間に設けられた入れ替え装置を備える。入れ替え装置は、暖房時には蓄熱タンクの上部から冷水又は温水を取り出すと共に、冷温水式放射空調パネルからの還り水を蓄熱タンクの下部から供給し、冷房時には蓄熱タンクの下部から冷温水を取り出すと共に、冷温水式放射空調パネルからの還り水を蓄熱タンクの上部から供給する。
【0056】
上述したように、本実施形態に係る空調システム90では、第1の熱システム71と第2の熱システム72との間で熱交換がなされると共に、第2の熱システム72と第3の熱システム73との間で熱交換がなされる。そして、これら2つの熱交換は、蓄熱コイル3と蓄熱タンク2とチャンバーボックス19とにより構成される熱交換ユニット80により行われる。つまり、熱交換の態様ごとに装置を設ける必要がなく、一つの熱交換ユニット80により2つの熱交換を行うことができる。従って、空調システム90を容易に小型化できる。さらに、調整空気を作り出す際に、蓄熱タンク2から放出される熱を利用する。従って、システム全体の熱損失が低減され、熱効率を高めることができる。
【0057】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0058】
例えば、本実施形態に係るヒートポンプ式の冷温水発生装置50は、設置する部屋の種類に特に制限はなく、種々の部屋に設置できる。ヒートポンプ式の冷温水発生装置50は、運転時の静かさとドラフトや、室内の熱ムラが少なく緩やかに冷暖房する特徴から、一般住宅・マンションの居室にとどまらず、図書室、病室、研究室、透析室、オーディオルーム、シアタールーム、和室、茶室、浴室、便所、新生児室、音楽室、と言ったあらゆる小スペースに適しており、冷温水式放射空調パネル11の普及に大いに活用できるものである。
【0059】
例えば、上述した温水及び冷水の温度範囲は例示であり、この数値範囲に限定されることはない。温度範囲は、天候、室内温度、冷温水式放射空調パネル11の熱交換率によって上記と異なる範囲に設定されてもよい。