特許第6823317号(P6823317)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6823317
(24)【登録日】2021年1月13日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 13/24 20060101AFI20210121BHJP
   B41F 9/18 20060101ALI20210121BHJP
   B41F 31/06 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   B41F13/24 138
   B41F9/18
   B41F31/06
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-43194(P2017-43194)
(22)【出願日】2017年3月7日
(65)【公開番号】特開2018-144396(P2018-144396A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大宮 利信
(72)【発明者】
【氏名】石橋 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】森川 亮
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 誠
(72)【発明者】
【氏名】鷹野 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】原野 恭兵
(72)【発明者】
【氏名】篠原 博人
【審査官】 長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−341276(JP,A)
【文献】 特開平9−201951(JP,A)
【文献】 特開平02−289348(JP,A)
【文献】 特開平10−310218(JP,A)
【文献】 特開2016−068351(JP,A)
【文献】 特開2008−246937(JP,A)
【文献】 英国特許出願公告第00953732(GB,A)
【文献】 独国特許発明第04420771(DE,C2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 5/00−13/70
B41F 31/00−31/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延びる軸心周りに回転可能な版胴と、
同形状の2つのインキパンを上記版胴の軸心と直交する水平方向に並設させた状態で、且つ、一方のインキパンが上記版胴の下方に位置する状態で支持可能な支持手段と、
該支持手段に支持された状態の2つのインキパンを連結又は切離し可能な連結切離手段とを備え、
上記支持手段には、上記連結切離手段により連結された状態の2つのインキパンを両インキパンの並設方向一側にスライドさせて一方のインキパンの位置に他方のインキパンを移動させることが可能なスライド手段が設けられていることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
上方に開口する容器を載置可能な台車を備え、
上記インキパンには、当該インキパンに貯溜するインキを取出可能なインキ取出口が形成され、
上記台車は、当該台車に載置した容器の開口が上記インキ取出口の下方に位置するように上記インキパンに着脱可能になっていることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置において、
上記インキパンは、上記版胴の軸心に沿って延びる長方形パネル状をなし、上記インキ取出口は、上記インキパンの長手方向一端側に設けられ、
上記支持手段には、上記インキパンの長手方向他端側を押し上げ可能なリフト手段が設けられていることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の印刷装置において、
上記連結切離手段は、上記一方のインキパンにおける他方のインキパン側に設けられ、引掛部分が下方に向く第1フックと、上記他方のインキパンにおける一方のインキパン側に設けられ、引掛部分が上方に向くとともに上記第1フックが係脱可能な第2フックとで構成されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷装置において、
上記支持手段は、上記版胴の下方に設けられ、上記一方のインキパンを昇降させる昇降部と、上記版胴の軸心と直交する水平方向において上記昇降部に並設され、且つ、上記他方のインキパンを載置可能な載置部とを備えていることを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続搬送されるウェブにインキを転写する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一般的な印刷装置は、並設された複数の印刷ユニットを備え、該各印刷ユニットには、外周面に付着させたインキを連続搬送されるウェブに対して回転動作により転写する版胴が水平方向に延びる姿勢で取り付けられている。上記印刷ユニットは、版胴の軸心方向両端部に係合して当該版胴を回転可能に支持する一対の支持軸を備え、該両支持軸を版胴の軸心方向に離間させて版胴との係合を解除することにより、版胴の交換を行えるようになっている。また、各印刷ユニットにおける両支持軸の下方には、当該両支持軸に軸支された版胴の外周面から滴下するインキを受け止めるインキパンが交換可能に取り付けられている。
【0003】
ところで、印刷ユニットに対する版胴やインキパンの交換作業を効率的に行うために、例えば、特許文献1の印刷装置には、一対の交換ユニットが設けられている。該両交換ユニットは、印刷ユニットにおける両支持軸の下方の位置で、且つ、印刷ユニットに取り付けられた版胴の軸心と直交する水平方向に所定の間隔をあけて離間している。各交換ユニットには、印刷ユニットに取り付けられた版胴の軸心と同方向に延びる軸心周りに回動可能な回動アームが設けられている。該回動アームの先端部分には、インキパンが印刷ユニットに取り付けられた版胴の軸心と同方向に延びる軸心周りに回転可能に軸支されている。インキパンは、回動アームが回動する際、その開口部分が常に上方に向く姿勢となるように構成され、回動アームが一方側に回動すると、印刷ユニットにおける両支持軸の下方の位置まで移動する一方、他方側に回動すると、印刷ユニットにおける両支持軸の下方の位置から退避するようになっている。また、各インキパンの内方には、版胴を載置可能な版胴載置部が設けられている。そして、印刷ユニットにおける版胴及びインキパンの交換は、まず初めに、印刷ユニットから取り外した版胴を一方の交換ユニットにおけるインキパンの版胴載置部に載置した後、一方の交換ユニットにおけるインキパンを印刷ユニットにおける両支持軸の下方の位置から退避させ、次いで、他方の交換ユニットにおけるインキパンを印刷ユニットにおける両支持軸の下方の位置まで移動させ、しかる後、他方の交換ユニットにおける版胴載置部に予め載置しておいた版胴を印刷ユニットの両支持軸で軸支するといった手順で行われる。その後、印刷ユニットを再稼働させるとともに、印刷ユニットの稼働中に作業者が一方の交換ユニットにおける版胴及びインキパンを次の交換作業のために事前に交換しておくことで版胴及びインキパンの交換作業の効率化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−341276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の印刷装置は、一方の交換ユニットの版胴及びインキパンの交換を行う際、作業者は印刷ユニットにおける一方の交換ユニット側の領域で交換作業を行う必要がある一方、他方の交換ユニットの版胴及びインキパンの交換を行う際、作業者は印刷ユニットにおける他方の交換ユニット側の領域で交換作業を行う必要がある。したがって、版胴及びインキパンの交換時における作業手順が統一できないので、作業者による作業ミスが多くなってしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、版胴等を効率的に交換することができ、しかも、版胴等の交換時の作業手順を一つに統一して作業者の作業ミスを少なくすることができる印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、同形状の2つのインキパンを並設状態で互いに連結又は切離可能な構成にするとともに、連結状態の2つのインキパンを並設方向にスライド可能な構成にしたことを特徴とする。
【0008】
すなわち、第1の発明では、水平方向に延びる軸心周りに回転可能な版胴と、同形状の2つのインキパンを上記版胴の軸心と直交する水平方向に並設させた状態で、且つ、一方のインキパンが上記版胴の下方に位置する状態で支持可能な支持手段と、該支持手段に支持された状態の2つのインキパンを連結又は切離し可能な連結切離手段とを備え、上記支持手段には、上記連結切離手段により連結された状態の2つのインキパンを両インキパンの並設方向一側にスライドさせて一方のインキパンの位置に他方のインキパンを移動させることが可能なスライド手段が設けられていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、上方に開口する容器を載置可能な台車を備え、上記インキパンには、当該インキパンに貯溜するインキを取出可能なインキ取出口が形成され、上記台車は、当該台車に載置した容器の開口が上記インキ取出口の下方に位置するように上記インキパンに着脱可能になっていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明では、第2の発明において、上記インキパンは、上記版胴の軸心に沿って延びる長方形パネル状をなし、上記インキ取出口は、上記インキパンの長手方向一端側に設けられ、上記支持手段には、上記インキパンの長手方向他端側を押し上げ可能なリフト手段が設けられていることを特徴とする。
【0011】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、上記連結切離手段は、上記一方のインキパンにおける他方のインキパン側に設けられ、引掛部分が下方に向く第1フックと、上記他方のインキパンにおける一方のインキパン側に設けられ、引掛部分が上方に向くとともに上記第1フックが係脱可能な第2フックとで構成されていることを特徴とする。
【0012】
第5の発明では、第4の発明において、上記支持手段は、上記版胴の下方に設けられ、上記一方のインキパンを昇降させる昇降部と、上記版胴の軸心と直交する水平方向において上記昇降部に並設され、且つ、上記他方のインキパンを載置可能な載置部とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明では、装置の停止後、連結切離手段で連結状態にした2つのインキパンをスライド手段によりスライドさせると、使用前のインキパンが印刷ユニットに取り付けられた版胴の下方にセットされると同時に使用後のインキパンが印刷ユニットから取出可能な位置まで移動するので、インキパンの交換を効率的に行うことができる。また、印刷ユニットにおける版胴及びインキパンを交換する際、作業者は、印刷ユニットにおける両インキパンの並設方向一側の領域だけで版胴やインキパンの交換作業を行うことができ、印刷ユニットにおける両インキパンの並設方向他側の領域において版胴やインキパンの交換作業を行う必要が無いので、版胴やインキパンを交換する際の作業手順が一つになって作業者の作業ミスを少なくすることができる。
【0014】
第2の発明では、インキ取出口を介してインキパンに貯溜するインキを台車に載置した容器に移動させることができるので、インキパンに貯溜するインキを効率良く回収して再利用することができる。また、装置の停止後、連結状態の2つのインキパンをスライド手段によりスライド移動させると、使用後のインキパンと共に台車が両インキパンの並設方向一側に移動するので、インキパンの交換作業中においてもインキパンの貯溜部に溜まるインキを容器に移動させることができ、インキを容器に効率良く回収することができる。
【0015】
第3の発明では、インキパンの長手方向他端側をリフト手段で押し上げると、インキパンはその長手方向一端側が他端側よりも下側に位置するように傾くので、インキパンに貯溜するインキがインキパンの長手方向一端側に流れるようになり、インキパンに貯溜するインキのインキ取出口を介した容器への回収時間をさらに短くすることができる。
【0016】
第4の発明では、両インキパンが係合によって互いに連結するようになるので、両インキパンを互いに連結させる作業が簡単であり、両インキパンの連結作業時に発生するミスを少なくすることができる。
【0017】
第5の発明では、装置の停止後、昇降部によりインキパンを下降させると、昇降部におけるインキパンの第1フックが載置部におけるインキパンの第2フックに上方から係合するか、或いは、接近するようになる。したがって、使用後のインキパンを印刷ユニットから片付ける際の動作を利用して両インキパンを連結させたり、或いは、両インキパンを連結させるのに容易な状態にすることができ、インキパンの交換作業にかかる時間をさらに短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る印刷装置の概略正面図である。
図2図1のII−II線における断面図である。
図3図1のIII矢視図である。
図4図3のIV矢視図である。
図5図1のV−V線における断面図である。
図6図2のVI部拡大図である。
図7】版胴等の交換作業開始直後の図1相当図である。
図8図7の後、2つのインキパンを連結させた直後の状態を示す図2相当図である。
図9図8の後、インキパンの交換を終えた状態を示す図である。
図10図9の後、インキを回収する容器を載せた台車を交換後のインキパンに取り付けた状態を示す図である。
図11図10の後、次の交換作業時に使用するインキパンをセットする直前の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0020】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る印刷装置1を示す。該印刷装置1は、連続搬送されるプラスチックフィルム等のウェブW1にインキを転写する複数の印刷ユニット10と、各印刷ユニット10を順に通過するように上記ウェブW1を案内する複数のガイドロールG1と、上記各印刷ユニット10に対して粘度を調整しながらインキを供給する粘度コントローラ9とを備え、上記ウェブW1は、各印刷ユニット10において、図2に示すように、略鉛直方向下向きに送られた後、折り返して略鉛直上向きに送られるように各ガイドロールG1に案内されている。尚、図1及び図2には、並設された複数の印刷ユニット10のうちの一つを例示する。
【0021】
上記各印刷ユニット10は、上下に延びる一対のサイドフレーム10aを備え、該両サイドフレーム10a間の下部には、当該両サイドフレーム10aの並設方向に直線状に延び、当該両サイドフレーム10aを橋絡する角筒状の橋絡フレーム10bが設けられている。
【0022】
上記両サイドフレーム10a間の上部には、軸心が水平方向に延びる版胴2が図示しない一対の支持軸によって回転可能に、且つ、着脱可能に軸支されている。
【0023】
尚、便宜上、印刷ユニット10を境として、版胴2の軸心と直交する水平方向一側の領域(図2紙面右側の領域)を領域X1と呼び、版胴2の軸心と直交する水平方向他側の領域(図2紙面左側の領域)を領域X2と呼ぶことにする。
【0024】
上記版胴2の上方には、図2に示すように、軸心が上記版胴2の軸心と同方向に延びる圧胴3が上下動可能に配設され、該圧胴3は、下動させた状態で各ガイドロールG1に案内されるウェブW1を版胴2に圧着させるようになっている。
【0025】
上記版胴2の下方には、一対の揺動プレート10cが版胴2の軸心方向に対向配置され、各揺動プレート10cは、上下方向に揺動可能となるように一端部分が各サイドフレーム10aの中途部に軸支されている。
【0026】
両揺動プレート10cは、上記領域X1側の斜め上方に延びる姿勢となっていて、両揺動プレート10cの他端部分の間には、軸心が上記版胴2の軸心と同方向に延びるファニッシャロール4が回転自在に軸支されている。
【0027】
該ファニッシャロール4は、両揺動プレート10cの揺動により、版胴2の外周面に接する状態と接しない状態とに切替可能になっていて、版胴2が回転する際、版胴2の外周面に接しながら該版胴2と逆方向に回転するようになっている。
【0028】
版胴2及びファニッシャロール4の下方には、当該版胴2及びファニッシャロール4から滴下するインキを受け止め可能なインキパン6と、該インキパン6を支持可能な支持機構7(支持手段)とが設けられ、上記版胴2の領域X2側には、ドクターブレード5が配設されている。
【0029】
尚、図2では、支持機構7が同形状の2つのインキパン6を支持している。
【0030】
上記各インキパン6は、長方形パネル状をなし、水平方向に延びる底面部6aと、該底面部6aの各長辺側端縁から互いに離間しながら上方に傾斜して延びる前面部6b及び後面部6cと、上記底面部6aの各短辺側端縁から上方に突出するとともに上記前面部6bの端部と後面部6cの端部とを連結する一対の側面部6dとを備え、底面部6a、前面部6b、後面部6c及び両側面部6dでインキを貯溜可能な貯溜部S1が形成されている。
【0031】
版胴2及びファニッシャロール4の下方に位置するインキパン6は、その貯溜部S1に貯溜するインキにファニッシャロール4が浸されていて、当該ファニッシャロール4を介して版胴2の外周面にインキを供給するようになっている。
【0032】
また、各インキパン6における後面部6cの上部外面には、図2及び図6に示すように、一対の第1フック61がインキパン6の長手方向に所定の間隔をあけて設けられている。
【0033】
該両第1フック61は、金属プレートからプレス加工により一体成形されたものであり、引掛部分が下方に向く側面視で略V字状をなしている。
【0034】
一方、各インキパン6における前面部6bの上部外面には、図1及び図5に示すように、一対の第2フック62が上記各第1フック61に対応する位置に取り付けられている。
【0035】
該両第2フック62は、金属プレートからプレス加工により一体成形されたものであり、引掛部分が上方に向く側面視で略L字状をなしている。
【0036】
また、各インキパン6の前面部6b外面における長手方向一端側には、図1及び図2に示すように、上記貯溜部S1に溜まるインキを当該貯溜部S1から取り出すためのインキ取出部材63が斜め下方に向けて突設されている。
【0037】
該インキ取出部材63は、一端が貯溜部S1に連通する案内溝63aを有しており、該案内溝63aの他端は、上記貯溜部S1に溜まるインキを取り出すインキ取出口63bとなっている。
【0038】
さらに、各インキパン6の前面部6bにおけるインキ取出部材63の両側には、図3及び図4に示すように、一対の係合ブラケット64が固定されている。
【0039】
該各係合ブラケット64は、側面視で略S字状をなす金属プレートであり、上記前面部6bに固定された固定板部64aと、該固定板部64aの上端縁から下方に真っ直ぐに延びる中間板部64bと、上記前面部6bから離れるように上記中間板部64bの下端縁から水平方向に延びる取付板部64cとを備えている。
【0040】
各係合ブラケット64の取付板部64cには、平面視で略U字状をなす切欠凹部64dが形成され、該各切欠凹部64dは、互いに反対向きに開口している。
【0041】
上記支持機構7は、図1及び図2に示すように、上記橋絡フレーム10bの上方に設けられ、版胴2の軸心方向に沿って延びる回転シャフト71を備えている。
【0042】
該回転シャフト71には、一対のピニオンギア71aが回転シャフト71の軸心方向に所定の間隔をあけて回転一体に取り付けられ、各ピニオンギア71aには、上下方向に延びる一対のラックギア71bがそれぞれ噛み合っている。
【0043】
該両ラックギア71bの上部には、版胴2の軸心に沿って水平に延びる平面視で略長方形状をなす板状フレーム72が固定されている。
【0044】
該板状フレーム72の上面には、上記インキパン6を支持する支持ユニット73が設けられている。
【0045】
該支持ユニット73は、版胴2の軸心と直交する水平方向に延びる一対の板状第1支持プレート74を備え、該両第1支持プレート74は、版胴2の軸心方向に所定の間隔をあけて対向配置されている。
【0046】
両第1支持プレート74の互いに対向する面には、一対のスライドレール75が取り付けられ、該両スライドレール75は、領域X1側に向かって伸縮するようになっている。
【0047】
また、両スライドレール75の互いに対向する側には、版胴2の軸心と直交する水平方向に延びる第2支持プレート76がそれぞれ取り付けられ、両第2支持プレート76は、版胴2の軸心に沿って延びる連結プレート77によって連結されている。
【0048】
そして、両第2支持プレート76の上端縁は、上記両第1支持プレート74の上端縁と同じ高さになっていて、両第1支持プレート74及び両第2支持プレート76は、上記インキパン6をその前面部6bが領域X1側に向く姿勢で支持可能になっている。
【0049】
そして、回転シャフト71、両ピニオンギア71a、両ラックギア71b及び板状フレーム72が本発明の昇降部70を構成しており、図示しない回転ハンドルを操作して回転シャフト71を回転させることにより、図2及び図7に示すように、両第1支持プレート74及び両第2支持プレート76に支持されたインキパン6が昇降するようになっている。尚、インキパン6は、図1及び図2に示すように、版胴2の回転動作によってウェブW1に対してインキを転写する際、昇降部70により上端位置P1まで上昇させた状態で使用する。
【0050】
また、両第1支持プレート74及び両第2支持プレート76に支持された状態のインキパン6の長手方向他端側に対応する下方の位置には、図1に示すように、シリンダ78(リフト手段)が上下に延びる姿勢で設けられている。
【0051】
シリンダ78は、円筒状のシリンダ本体78aと、該シリンダ本体78aから上方に向かって伸縮するシリンダロッド78bとを備えている。
【0052】
該シリンダロッド78bの伸びた状態における上端は、図9に示すように、下降させた状態の昇降部70における第2支持プレート76の上端縁より上方に飛び出るようになっていて、インキパン6が支持ユニット73に支持された状態においてシリンダ78のシリンダロッド78bを伸ばすと、シリンダロッド78bがインキパン6の長手方向他端側を押し上げた状態となって当該インキパン6が傾斜するようになっている。
【0053】
上記橋絡フレーム10bの上部には、図2に示すように、側面視で略L字状をなすとともに版胴2の軸心に沿って複数並設された板状フレームで構成された載置フレーム79(載置部)が固定され、該載置フレーム79は、版胴2の軸心と直交する水平方向において上記昇降部70に並んだ位置となっている。
【0054】
上記載置フレーム79は、上記インキパン6をその前面部6bが領域X1側に向く姿勢となるように載置可能となっている。
【0055】
両第1支持プレート74及び両第2支持プレート76は、上記昇降部70によって下端位置P2まで下降すると、その上端縁の位置が載置フレーム79の上端縁の位置と略同じになるようになっている。
【0056】
そして、支持ユニット73に支持されたインキパン6における載置フレーム79に載置されたインキパン6側の両第1フック61と、載置フレーム79に載置されたインキパン6における支持ユニット73に支持されたインキパン6側の両第2フック62とが本発明の連結切離手段11を構成しており、昇降部70を下降させると、支持ユニット73に支持されたインキパン6の各第1フック61が載置フレーム79に載置されたインキパン6の各第2フック62に接近するようになっている。
【0057】
支持ユニット73に支持されたインキパン6の各第1フック61と載置フレーム79に載置されたインキパン6の各第2フック62とを連結させると、2つのインキパン6が版胴2の軸心と直交する水平方向に並ぶようになっている。
【0058】
そして、両スライドレール75、両第2支持プレート76及び連結プレート77が本発明のスライド機構12(スライド手段)を構成していて、作業者が両第2支持プレート76を領域X1側に引っ張ると、図9に示すように、連結切離手段11で連結状態にした2つのインキパン6が両スライドレール75のスライド動作によって領域X1側にスライド移動し、載置フレーム79に載置されたインキパン6が支持ユニット73の両第1支持プレート74の位置に移動するようになっている。
【0059】
支持機構7の領域X1側には、図1及び図2に示すように、台車8が設けられ、該台車8には、インキを貯溜可能な上方に開口するボックス状の容器13を載置できるようになっている。
【0060】
上記台車8は、容器13を載置可能な矩形板状のベースプレート81と、該ベースプレート81下面の四隅に取り付けられた4つのキャスター82とを備え、上記ベースプレート81上面の支持機構7側には、上下に延びる一対の係合棒83が版胴2の軸心方向に所定の間隔をあけて設けられている。
【0061】
上記各係合棒83は、下端が上記ベースプレート81に固定された金属製の細筒部83aと、該細筒部83aにスライド可能に嵌挿された金属製のスライド棒83bとを備え、該スライド棒83bの上端には、図3及び図4に示すように、側面視で略碗型形状をなすとともに上記スライド棒83bの径よりも水平方向に幅広な樹脂製の把持部材83cが取り付けられている。
【0062】
上記各係合棒83は、図4に示すように、各把持部材83cを把持して互いに離間するように撓ませ、且つ、各スライド棒83bをインキパン6における各係合ブラケット64の切欠凹部64dに係合させることにより、台車8に載置した容器13の開口がインキパン6におけるインキ取出口63bの下方に位置するように台車8がインキパン6に取り付けられるようになっていて、インキパン6の貯溜部S1に溜まるインキをインキ取出口63bを介して容器13に回収できるようになっている。
【0063】
一方、各スライド棒83bが各切欠凹部64dに係合している状態において各把持部材83cを把持して互いに離間するように各係合棒83を撓ませると、各スライド棒83bが各切欠凹部64dから外れて台車8をインキパン6から取り外すことができるようになっている。
【0064】
印刷装置1の印刷作業時には、図2に示すように、支持ユニット73に支持された一方のインキパン6が昇降部70によって上端位置P1まで上昇した状態となっていて、台車8が支持ユニット73に支持されたインキパン6に取り付けられている。また、台車8に載置された容器13に貯溜するインキを粘度コントローラ9を介してファニッシャロール4が浸されたインキパン6の貯溜部S1に供給し、当該貯溜部S1に溜まるインキをインキ取出口63bを介して容器13に回収するようになっている。そして、版胴2、圧胴3及びファニッシャロール4を回転させることにより、ファニッシャロール4を介して版胴2の外周面にインキを供給するとともに、連続搬送されるウェブW1に対して版胴2の外周面に付着したインキを転写するようになっている。
【0065】
次に、各印刷ユニット10における版胴2等の交換作業について詳述する。
【0066】
まず、作業者は、図2に示すように、使用前のインキパン6を載置フレーム79に予め載置させておく。
【0067】
次に、作業者は、印刷装置1を停止させた後、粘度コントローラ9を印刷ユニット10から取り外して洗浄するとともに、図示しない制御盤を操作して圧胴3を上動させ、且つ、ファニッシャロール4を版胴2から離間させる。その後、領域X2に移動してドクターブレード5を印刷ユニット10から取り外す。
【0068】
次いで、作業者は昇降部70を操作して一方のインキパン6を下端位置P2まで下降させる。すると、昇降部70におけるインキパン6の各第1フック61が載置フレーム79に載置された使用前のインキパン6の各第2フック62に接近する。このとき、昇降部70の下降動作に連動してシリンダ78のシリンダロッド78bが伸びるようになっていて、インキパン6が下端位置P2に近づくと、図7に示すように、インキパン6の長手方向他端側がシリンダロッド78bに下降するのを遮られて当該シリンダロッド78bがインキパン6の長手方向他端側を押し上げてインキパン6がその長手方向一端側が他端側よりも下側に位置するように傾いた状態になる。したがって、インキパン6の貯溜部S1に貯溜するインキがインキパン6の長手方向一端側に流れるようになり、貯溜部S1に貯溜するインキのインキ取出口63bを介した容器13への回収時間を短くすることができる。また、昇降部70の下降動作を利用してインキパン6を自動で傾けることができるので、作業者がインキパン6を手作業で傾ける必要が無く、インキの回収作業が簡単になる。尚、昇降部70は、インキパン6が急激に傾かないように、シリンダロッド78bがインキパン6に接触する直前に下降速度を低下させるようになっている。
【0069】
インキパン6に溜まるインキを容器13に回収した後、シリンダ78のシリンダロッド78bを縮める。すると、図8に示すように、昇降部70におけるインキパン6の長手方向他端側が下降して各第1フック61が載置フレーム79に載置された使用前のインキパン6の各第2フック62にそれぞれ係合する。したがって、2つのインキパン6が係合によって互いに連結するので、両インキパン6を互いに連結させる作業が簡単であり、両インキパンの連結作業時に発生するミスを少なくすることができる。
【0070】
次に、作業者は、領域X1に移動して版胴2及びファニッシャロール4を交換し、その後、両第2支持プレート76を手前に引っ張る。すると、図9に示すように、両スライドレール75が領域X1側に伸びて連結状態の2つのインキパン6と台車8とが領域X1側にスライド移動する。そして、載置フレーム79に載置されていたインキパン6が支持ユニット73における両第1支持プレート74の位置まで移動する。
【0071】
その後、図10に示すように、両第1支持プレート74に支持された使用前のインキパン6における各係合ブラケット64の切欠凹部64dに使用前の容器13が載置された台車8の各係合棒83を係合させるとともに、粘度コントローラ9を再び印刷ユニット10に取り付けて次に使用するインキを循環させ始める。
【0072】
そして、作業者は、両第2支持プレート76に支持された使用後のインキパン6における各係合ブラケット64の切欠凹部64dから使用後の容器13が載置された台車の各係合棒83を外すとともに使用後のインキパン6を片付け、その後、両スライドレール75を縮める。
【0073】
しかる後、作業者は、図11に示すように、昇降部70で支持ユニット73に支持されたインキパン6を上端位置P1まで上昇させるとともに、領域X2に回り込んで使用前のインキパン6を載置フレーム79に載置する。そして、ドクターブレード5を印刷ユニット10に取り付けるとともに圧胴3を下動させてウェブW1を版胴2に圧着させた後、印刷を再び開始させる。
【0074】
以上より、本発明の実施形態によると、印刷装置1の停止後、連結切離手段11で連結状態にした2つのインキパン6をスライド機構12によりスライドさせると、使用前のインキパン6が印刷ユニット10に取り付けられた版胴2の下方にセットされると同時に使用後のインキパン6が印刷ユニット10から取出可能な位置まで移動するので、インキパン6の交換を効率的に行うことができる。また、印刷ユニット10における版胴2及びインキパン6を交換する際、作業者は、領域X1だけで版胴2やインキパン6の交換作業を行うことができ、領域X2において版胴2やインキパン6の交換作業を行う必要が無いので、版胴2やインキパン6を交換する際の作業手順が一つになって作業者の作業ミスを少なくすることができる。
【0075】
また、インキ取出口63bを介してインキパン6に貯溜するインキを台車8に載置した容器13に移動させることができるので、インキパン6に貯溜するインキを効率良く回収して再利用することができる。また、印刷装置1の停止後、連結状態の2つのインキパン6をスライド機構12によりスライド移動させると、使用後のインキパン6と共に台車8が領域X1側に移動するので、インキパン6の交換作業中においてもインキパン6の貯溜部S1に溜まるインキを容器13に移動させることができ、インキを容器13に効率良く回収することができる。
【0076】
さらに、印刷装置1の停止後、昇降部70によりインキパン6を下降させると、支持ユニット73に支持されたインキパン6の第1フック61が載置フレーム79に載置されたインキパン6の第2フック62に接近するようになる。したがって、使用後のインキパン6を印刷ユニット10から片付ける際の動作を利用して両インキパン6を連結させるのに容易な状態にすることができ、インキパン6の交換作業にかかる時間をさらに短くすることができる。
【0077】
尚、本発明の実施形態では、連結切離手段11が第1フック61と第2フック62とで構成されているが、これに限らず、例えば、磁石のようなもので2つのインキパン6が連結又は切り離されるような構成であってもよい。
【0078】
また、本発明の実施形態では、印刷装置1の停止後、昇降部70によりインキパン6を下降させると、支持ユニット73に支持されたインキパン6の第1フック61が載置フレーム79に載置されたインキパン6の第2フック62に接近する構成になっているが、昇降部70によりインキパン6を下降させた際、支持ユニット73に支持されたインキパン6の第1フック61が載置フレーム79に載置されたインキパン6の第2フック62に上方から係合するような構成にしてもよい。そうすると、インキパン6の交換作業にかかる時間をさらに短くすることができる。
【0079】
さらに、本発明の実施形態では、シリンダ78を用いてインキパン6を傾けるようにしているが、これに限らず、例えば、連結プレート77の上面に起立状態と倒伏状態とに切り替え可能な部材を設けて作業者がその部材を手作業で起立状態にすることにより、インキパン6を傾けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、連続搬送されるウェブにインキを転写する印刷装置に適している。
【符号の説明】
【0081】
1 印刷装置
2 版胴
6 インキパン
7 支持機構(支持手段)
8 台車
11 連結切離手段
12 スライド機構(スライド手段)
13 容器
61 第1フック
62 第2フック
63b インキ取出口
70 昇降部
78 シリンダ(リフト手段)
79 載置フレーム(載置部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11