【文献】
三浦弘,ブタジエン製造のための触媒技術 脱水素反応と酸化脱水素反応,ペトロテック,2013年,Vol.36 No.3,p.205-209
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は下記の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0015】
第一の実施形態に係る製造方法は、脱水素触媒を350〜530℃で還元処理する工程(以下、「還元工程」ともいう。)と、オレフィンを含む原料ガスを上記還元処理後の脱水素触媒に接触させて、共役ジエンを含む生成ガスを得る工程(以下、「脱水素工程」ともいう。)と、を備える。この製造方法において、脱水素触媒は、Alを含む担体に第14族金属元素及びPtを含む担持金属を担持させた固体触媒である。
【0016】
第二の実施形態に係る製造方法は、オレフィンを含む原料ガスを、上記還元工程により得られる脱水素触媒(350〜530℃で還元処理された脱水素触媒)に接触させて、共役ジエンを含む生成ガスを得る工程を備える。
【0017】
本実施形態に係る製造方法によれば、触媒劣化が十分に抑制され、効率良くオレフィンから共役ジエンを製造することができる。すなわち、本実施形態に係る製造方法では、触媒劣化が十分に抑制されるため、触媒の交換又は再生の頻度を低減することができる。また、本実施形態に係る製造方法では、脱水素反応におけるオレフィンの転化率が高く、共役ジエンの選択率が高いことから、収率良く共役ジエンを得ることができる。
【0018】
なお、本明細書においてオレフィンの転化率、共役ジエンの選択率及び共役ジエンの収率は、下記式(1)、式(2)及び式(3)で定義される。
r
C={1−(m
1/m
0)}×100 (1)
r
S={m
2/(m
0−m
1)}×100 (2)
r
Y=(m
2/m
0)×100 (3)
式(1)におけるr
Cはオレフィンの転化率(%)である。m
0は、原料ガスに含まれるオレフィンのモル数である。m
1は、生成ガス中に残存するオレフィンのモル数である。
式(2)におけるr
Sは共役ジエンの選択率(%)である。m
2は生成ガスに含まれる共役ジエンのモル数である。
式(3)におけるr
Yは共役ジエンの収率(%)である。
【0019】
本実施形態に係る製造方法において、脱水素触媒の劣化が抑制される原因及び当該脱水素触媒が優れた脱水素活性を示す原因は、必ずしも明らかではないが、本発明者らは、以下のように推測している。
【0020】
本実施形態に係る脱水素触媒は、第14族金属元素を含有するため、Al由来の酸点が第14族金属元素による被覆を受ける。これにより、Alの酸性質が弱められ、オレフィンのクラッキング反応、重合反応等の副反応が抑えられると考えられる。また、脱水素触媒中の第14族金属元素とPtとがバイメタリック粒子を形成することで、Pt粒子同士の凝集が抑制されると共に、第14族金属元素からPtへの電子供与が起こると考えられる。これにより、脱水素活性が向上すると考えられる。さらに、上記バイメタリック粒子中でPt原子が希釈され、オレフィン1分子にPt原子が多点で作用することによるC−C結合の開裂反応が抑制されると考えられる。また、脱水素触媒が所定の温度で還元処理されているため、低温還元処理で問題となる還元不足、及び、高温還元処理で問題となる活性金属粒子(例えば、Pt粒子)の凝集が、いずれも抑制されると考えられる。
【0021】
本実施形態に係る製造方法において、原料ガスはオレフィンを含む。オレフィンの炭素数は、目的とする共役ジエンの炭素数と同じであってよい。すなわち、オレフィンは、生成物として想定される共役ジエン中に存在する二重結合の一つを水素化した場合に得られる炭化水素化合物であってよい。オレフィンの炭素数は、例えば、4〜10であってよく、4〜6であってもよい。
【0022】
オレフィンは、例えば、鎖状であってよく、環状であってもよい。鎖状のオレフィンは、例えば、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン及びデセンからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。鎖状のオレフィンは、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。直鎖状のオレフィンは、例えば、n−ブテン、n−ペンテン、n−ヘキセン、n−ヘプテン、n−オクテン、n−ノネン及びn−デセンからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。分岐状のオレフィンは、例えば、イソペンテン、2−メチルペンテン、3−メチルペンテン、2、3−ジメチルペンテン、イソヘプテン、イソオクテン、イソノネン及びイソデセンからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。原料ガスは、上記オレフィンの一種を単独で含むものであってよく、二種以上を含むものであってもよい。
【0023】
原料ガスにおいて、オレフィンの分圧は1.0MPa以下としてよく、0.1MPa以下としてもよく、0.01MPa以下としてもよい。原料ガスのオレフィンの分圧を小さくすることで、オレフィンの転化率が一層向上し易くなる。
【0024】
また、原料ガスにおけるオレフィンの分圧は、原料流量に対する反応器サイズを小さくする観点から、0.001MPa以上とすることが好ましく、0.005MPa以上とすることがより好ましい。
【0025】
原料ガスは、窒素、アルゴン等の不活性ガスを更に含有していてもよく、スチームを更に含有していてもよい。
【0026】
原料ガスがスチームを含有するとき、スチームの含有量は、オレフィンに対して、1.0倍モル以上とすることが好ましく、1.5倍モル以上とすることがより好ましい。スチームを原料ガスに含有させることで、触媒の活性低下がより顕著に抑制される場合がある。なお、スチームの含有量は、例えば、オレフィンに対して50倍モル以下であってよく、好ましくは10倍モル以下である。
【0027】
原料ガスは、上記以外に、水素、酸素、一酸化炭素、炭酸ガス、アルカン類、ジエン類等の他の成分を更に含有していてもよい。
【0028】
本実施形態に係る製造方法において、生成ガスは、共役ジエンを含む。本実施形態に係る製造方法により得られる共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン(1,3−ブタジエン)、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、1,3−ノナジエン、1,3−デカジエン等が挙げられる。生成ガスは、共役ジエンを一種含むものであってよく、二種以上の共役ジエンを含むものであってよい。
【0029】
本実施形態に係る製造方法は、上記の中でも、オレフィンとしてブテンを含む原料ガスを用いる方法、すなわち、1,3−ブタジエンを製造する方法に、特に好適に利用することができる。1,3−ブタジエンの製造に用いるブテンは、1−ブテン又は2−ブテンであってよい。ブテンは、1−ブテン及び2−ブテンの混合物であってよい。2−ブテンは、cis−2−ブテン及びtrans−2−ブテンのうち一方又は両方であってよい。
【0030】
以下、本実施形態に係る脱水素触媒について詳述する。
【0031】
脱水素触媒は、オレフィンの脱水素反応を触媒する固体触媒である。脱水素触媒は、Alを含む担体に第14族金属元素及びPtを含む担持金属を担持させた触媒である。ここで、第14族金属元素とは、IUPAC(国際純正応用化学連合)の規定に基づく長周期型の元素の周期表における周期表第14族に属する金属元素を意味する。
【0032】
第14族金属元素は、例えば、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)及び鉛(Pb)からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。これらの中でも、第14族金属元素がSnである場合、本発明の効果が一層顕著に奏される。
【0033】
脱水素触媒において、Al、第14族金属元素及びPtは、それぞれ単一の酸化物として存在していてよく、他の金属との複合酸化物として存在していてもよく、金属塩又は0価の金属として存在していてもよい。
【0034】
脱水素触媒において、Alの酸化物換算での含有量C
1は、脱水素触媒の全質量基準で、30質量%以上であってよく、50質量%以上であってよい。また、含有量C
1は、90質量%以下であってよい。
【0035】
脱水素触媒において、第14族金属元素の酸化物換算での含有量C
2は、脱水素触媒の全質量基準で、9質量%以上であることが好ましく、11質量%以上であることがより好ましく、13質量%以上であることが更に好ましい。含有量C
2は、脱水素触媒の全質量基準で、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。含有量C
2が13質量%以上であると、触媒劣化がより顕著に抑制される傾向がある。また、含有量C
2が30質量%以下であると、Ptの活性点の露出が適度に多くなるため、より高い脱水素活性が得られる傾向がある。
【0036】
脱水素触媒において、Ptの含有量C
3(Pt原子換算の含有量)は、脱水素触媒の全質量基準で、0.05質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。含有量C
3は、脱水素触媒の全質量基準で、5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましい。含有量C
3が0.2質量%以上であると、触媒量当たりの白金量が多くなり、反応器サイズを小さくできる。また、含有量C
3が3.0質量%以下であると、触媒上で形成されるPt粒子が脱水素反応に好適なサイズとなり、単位白金重量あたりの白金表面積が大きくなるため、より効率的な反応系が実現できる。
【0037】
脱水素触媒において、含有量C
2に対する含有量C
3の比(C
3/C
2)は、0.005以上であることが好ましく、0.01以上であることがより好ましい。また、比(C
3/C
2)は、0.3以下であってよく、0.1以下であってもよい。比(C
3/C
2)がこの範囲であると、副反応が一層抑制され、共役ジエンの製造効率が一層向上する傾向がある。
【0038】
脱水素触媒において、Ptに対する第14族金属元素のモル比は、副反応がより十分に抑制される観点から、10以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、20以上であることが更に好ましい。Ptに対する第14族金属元素のモル比は、脱水素活性に一層優れる観点から、50以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましく、35以下であることが更に好ましい。これらの観点から、Ptに対する第14族金属元素のモル比は、10〜50であることが好ましく、15〜40であることがより好ましく、20〜35であることが更に好ましい。
【0039】
脱水素触媒におけるAl、第14族金属元素、Ptの含有量及びPtに対する第14族金属元素のモル比は、下記実施例に示す方法によって分析し、確認することができる。
【0040】
脱水素触媒は、Al、第14族金属元素及びPtの他に、他の金属元素を含有してもよい。他の金属元素としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Fe、In、Se、Sb、Ni、Ga等が挙げられる。
【0041】
脱水素触媒は、Alを含む担体を備える。担体は、例えば、Alを含む金属酸化物担体であってよい。当該金属酸化物担体は、Al以外に、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Fe、In、Se、Sb、Ni、Ga等を含んでいてもよい。
【0042】
金属酸化物担体は、例えば、アルミナ(Al
2O
3)を含む担体であってよい。また、金属酸化物担体は、上述した他の金属元素を含んでいてもよい。この場合、他の金属元素は酸化物として存在していてもよいし、Alとの複合酸化物として存在していてもよい。より具体的には、例えば、金属酸化物担体は、アルミナ、上記他の金属元素の酸化物、AlとMgとの複合酸化物、AlとZn、Se、Fe、In等との複合酸化物などの金属酸化物を含む担体であってよい。金属酸化物担体は、Alを含む限り、上記金属酸化物の一種を単独で含むものであってよく、二種以上を含むものであってもよい。
【0043】
担体におけるAlの酸化物換算での含有量は、担体の全質量基準で、20質量%以上であってよく、50質量%以上であってもよい。また、担体におけるAlの酸化物換算での含有量は、担体の全質量基準で、95質量%以下であってよく、95質量%以下であってもよい。
【0044】
担体の酸性度は、副反応が抑制されるという観点から中性付近であることが好ましい。ここで、担体の酸性度は、一般的に水に担体を分散させた状態におけるpHで評価される。すなわち、本明細書中、担体の酸性度は、担体1質量%を懸濁させた懸濁液のpHで表すことができる。担体の酸性度は、副反応が抑制される観点から、好ましくはpH5.0〜9.0であり、より好ましくはpH6.0〜8.0である。
【0045】
担体の比表面積は、30m
2/g以上であることが好ましく、50m
2/g以上であることがより好ましい。このような担体によれば、より高い効率で共役ジエンを製造できるという効果が奏される。また、担体の比表面積は、500m
2/g以下であってよく、200m
2/g以下であってよい。このような比表面積を有する担体は、工業的に好適に利用可能な十分な強度を有する傾向があり、より高効率で共役ジエンを製造できる傾向がある。なお、担体の比表面積は、窒素吸着法を用いたBET比表面積計で測定される。
【0046】
担体の調製方法は特に制限されず、例えば、ゾルゲル法、共沈法、水熱合成法、含浸法、固相合成法等が挙げられる。
【0047】
担体を調製する方法の一態様を以下に示す。まず、目的の金属元素の前駆体(金属前駆体)が溶媒に溶解した溶液を用意する。次に、溶液を撹拌しながら、イオン交換水を滴下する。続いて、加熱還流下で溶液を撹拌して金属前駆体を加水分解した後、減圧下で溶媒を除去して固体を得る。得られた固体を乾燥させた後、乾燥後の固体を焼成することにより目的の金属元素を含む担体が得られる。複数の金属元素を含有する担体を調製する場合、複数の金属元素それぞれについて、金属前駆体が溶媒に溶解した溶液を調製し、これらの溶液を混合して得られる混合溶液を用いてよい。また、複数の金属元素それぞれの金属前駆体を同一の溶媒に溶解して混合溶液を調製してもよい。この態様において、担体に含まれる目的の金属元素の含有量は、目的の金属元素を含む溶液における当該金属元素の濃度、当該溶液の使用量等によって調整することができる。
【0048】
金属前駆体は、例えば、金属元素を含む塩又は錯体であってよい。金属元素を含む塩は、例えば、無機塩、有機塩及びこれらの水和物からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。無機塩は、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩及び炭酸塩からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。有機塩は、例えば、酢酸塩及びしゅう酸塩からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。金属元素を含む錯体は、例えば、アルコキシド錯体及びアンミン錯体からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。
【0049】
金属前駆体を溶解する溶媒としては、例えば、塩酸、硝酸、アンモニア水、エタノール、クロロホルム及びアセトンからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。
【0050】
焼成は、例えば、空気雰囲気下又は酸素雰囲気下で行うことができる。焼成は一段階で行ってもよく、二段階以上の多段階で行ってもよい。焼成温度は、金属前駆体を分解可能な温度であればよい。焼成温度は、例えば200〜1000℃であってよく、400〜800℃であってもよい。なお、多段階の焼成を行う場合、少なくともその一段階が上記焼成温度であればよい。他の段階での焼成温度は、例えば上記と同じ範囲であってよく、100〜200℃であってもよい。
【0051】
撹拌時の条件としては、例えば撹拌温度0〜60℃、撹拌時間10分〜24時間とすることができる。また、乾燥時の条件としては、例えば乾燥温度100〜250℃、乾燥時間3時間〜24時間とすることができる。
【0052】
担持金属は、第14族金属元素及びPtを含む。担持金属は、酸化物として担体に担持されていてよく、単体の金属として担体に担持されていてもよい。担持金属は、第14族金属元素及びPt以外の他の金属元素を含んでいてもよい。他の金属元素としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Fe、In、Se、Sb、Ni、Ga等が挙げられる。
【0053】
担体に金属(担持金属)を担持する方法は特に限定されず、例えば、含浸法、沈着法、共沈法、混練法、イオン交換法、ポアフィリング法等が挙げられる。
【0054】
担体に金属(担持金属)を担持する方法の一態様を以下に示す。まず、目的の金属(担持金属)の前駆体が溶媒(例えばアルコール)に溶解した溶液に、担体を加え、溶液を撹拌する。その後、減圧下で溶媒を除去し、得られた固体を乾燥させる。乾燥後の固体を焼成することで、目的の金属を担体に担持させることができる。上記の態様では複数の担持金属それぞれについて、金属前駆体が溶媒に溶解した溶液を調製し、これらの溶液を混合して得られる混合溶液を用いてよい。この場合、複数の担持金属それぞれの金属前駆体を同一の溶媒に溶解して混合溶液を調製してもよい。また、それぞれの溶液について上記工程を順次行うことにより担体に担持金属を担持してもよい。上記態様において、脱水素触媒における担持金属の含有量は、目的の担持金属を含む溶液における当該担持金属の濃度、当該溶液の使用量等によって調整することができる。
【0055】
上記の担持方法において、担持金属の前駆体は、例えば、金属元素を含む塩又は錯体であってよい。金属元素を含む塩は、例えば、無機塩、有機塩及びこれらの水和物からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。無機塩は、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩及び炭酸塩からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。有機塩は、例えば、酢酸塩及びしゅう酸塩からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。金属元素を含む錯体は、例えば、アルコキシド錯体及びアンミン錯体からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。
【0056】
撹拌時の条件としては、例えば撹拌温度0〜60℃、撹拌時間10分〜24時間とすることができる。また、乾燥時の条件としては、例えば乾燥温度100〜250℃、乾燥時間3時間〜24時間とすることができる。
【0057】
焼成は、例えば、空気雰囲気下又は酸素雰囲気下で行うことができる。焼成は一段階で行ってもよく、二段階以上の多段階で行ってもよい。焼成温度は、担持金属の前駆体を分解可能な温度であればよい。焼成温度は、例えば200〜1000℃であってよく、400〜800℃であってもよい。なお、多段階の焼成を行う場合、少なくともその一段階が上記焼成温度であればよい。他の段階での焼成温度は、例えば上記と同じ範囲であってよく、100〜200℃であってもよい。
【0058】
担体に担持される第14族金属元素の量は、担体100質量部に対して、好ましくは5.0質量部以上であり、より好ましくは10質量部以上である。また、担体に担持される第14族金属元素の量は、担体100質量部に対して、80質量部以下であってよく、50質量部以下であってもよい。第14族金属元素の量が上記範囲であると、触媒劣化が一層抑制され、高い活性がより長期間にわたり維持される傾向がある。
【0059】
担体に担持されるPtの量(脱水素触媒におけるPtの含有量)は、担体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上であり、より好ましくは0.1質量部以上である。また、担体に担持されるPtの量は、担体100質量部に対して、5.0質量部以下であってよく、3.0質量部以下であってもよい。Ptの量がこのような範囲であると、触媒上で形成されるPt粒子が脱水素反応に好適なサイズとなり、単位白金重量あたりの白金表面積が大きくなるため、より効率的な反応系が実現できる。また、Ptの量がこのような範囲であると触媒コストを抑制しながら、高い活性をより長期間にわたり維持できる。
【0060】
脱水素触媒におけるPtの分散度は、1.0%以上であってよく、好ましくは5.0%以上であってよい。このようなPt分散度を有する脱水素触媒によれば、副反応が一層抑制され、高い活性がより長期間にわたり維持される傾向がある。なお、Ptの分散度は、吸着種としてCOを用いた、金属分散度測定法で測定される値を示す。具体的には、以下の装置及び測定条件で測定される。
・装置:株式会社大倉理研製金属分散度測定装置R−6011
・ガス流速:30mL/分(ヘリウム、水素)
・試料量:約0.1g(小数点以下4桁目まで精秤した)
・前処理:水素気流下で400℃まで1時間かけて昇温し、400℃で60分間還元処理を行う。その後、ガスを水素からヘリウムに切り替えて400℃で30分間パージした後、ヘリウム気流下で室温まで冷却する。室温で検出器が安定するまで待った後、COパルスを行う。
・測定条件:常圧ヘリウムガス流通下、室温(27℃)で一酸化炭素を0.0929cm
3ずつパルス注入し、吸着量を測定する。吸着回数は、吸着が飽和するまで行う(最低3回、最大15回)。
【0061】
好適な一態様において、脱水素触媒は、Alを含む金属酸化物担体(好ましくは、アルミナを含む金属酸化物担体)に、第14族金属元素とPtとをこの順で担持させた触媒であってよい。
【0062】
脱水素触媒は押出成形法、打錠成型法等の方法で成形されていてよい。
【0063】
脱水素触媒は、成形工程における成形性を向上させる観点から、触媒の物性及び触媒性能を損なわない範囲において、成形助剤を含有してよい。成型助剤は、例えば、増粘剤、界面活性剤、保水剤、可塑剤及びバインダー原料からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。脱水素触媒を成形する成形工程は、成形助剤の反応性を考慮して脱水素触媒の製造工程の適切な段階で行ってよい。
【0064】
成形された脱水素触媒の形状は、特に限定されるものではなく、触媒を使用する形態により適宜選択することができる。例えば、脱水素触媒の形状は、ペレット状、顆粒状、ハニカム状、スポンジ状等の形状であってよい。
【0065】
次いで、本実施形態における還元工程について詳述する。
【0066】
還元工程では、350〜530℃で脱水素触媒の還元処理を行う。還元処理の温度が350℃以上であることにより、Ptと第14族金属元素とのバイメタリック粒子の生成を有利に進行させることできるという効果が奏される。また、還元処理の温度が530℃以下であることにより、第14族金属元素によってPtが過度に被覆されることを避けることができ、触媒活性をより向上できるという効果、及び、活性金属粒子の凝集が抑制されるという効果が奏される。還元処理の温度は、360℃以上であることが好ましい。この場合、Ptと第14族金属元素とのバイメタリック粒子の生成を一層有利に進行させることができる傾向がある。同様の観点から、還元処理の温度は、380℃以上であってもよく、390℃以上であってもよい。また、還元処理の温度は、500℃以下であってもよく、490℃以下であってもよく、450℃以下であってもよい。この場合、第14族金属元素によってPtが過度に被覆されることを避けることができ、触媒活性をより向上できるという効果及び活性金属粒子の凝集が抑制されるという効果が顕著となる傾向がある。これらの観点から、還元処理の温度は、360〜530℃であることが好ましく、380〜500℃であることがより好ましく、390〜490℃であることが更に好ましい。上述の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。例えば、還元処理の温度は、350〜500℃であってもよく、380〜450℃であってもよい。なお、還元処理の温度とは、還元処理の際の脱水素触媒の周辺雰囲気の温度を意味する。
【0067】
本実施形態では、脱水素触媒が還元処理されているため、反応初期の誘導期が短いという優れた効果が奏される。反応の初期の誘導期とは、触媒が含有する活性金属のうち、還元されて活性状態にあるものが非常に少なく、触媒の活性が低い状態にある期間をいう。
【0068】
処理時間は、例えば0.05〜24時間であってよく、0.1〜12時間であってよい。
【0069】
還元処理は、例えば、還元性ガスの雰囲気下で脱水素触媒を保持することで行ってよい。具体的には、脱水素触媒を充填した反応器を用い、当該反応器に還元性ガスを流通させることにより実施してよい。この場合、還元処理の温度は、反応器を加熱することにより調整してよく、反応器内に供給する還元性ガスを予め加熱することで調整してもよい。
【0070】
反応器は、例えば、固定床断熱型反応器、ラジアルフロー型反応器、管型反応器等であってよい。還元処理は、後述する脱水素工程で用いる反応器と同一の反応器内で行ってもよいし、脱水素工程で用いる反応器とは異なる反応器内で行ってもよい。
【0071】
還元性ガスは、例えば、水素及び一酸化炭素からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。還元されたPt上への還元性ガスの吸着を回避するといった観点から、水素が好ましい。
【0072】
還元工程では、還元性ガスと還元性ガス以外のその他のガス成分との混合ガスを用いてもよい。その他のガス成分としては、例えば、窒素等の不活性ガスが挙げられる。好適な一態様において、混合ガスは、水素及び窒素を含む混合ガスであってよい。
【0073】
混合ガス中の還元性ガスの濃度は、1mol%以上であってよく、5mol%以上であってもよい。混合ガス中の還元性ガスの濃度は、95mol%以下であってよい。
【0074】
還元工程後の脱水素触媒は、還元工程後直ちに(例えば、12時間以内に)脱水素工程に用いることが好ましい。還元工程後の脱水素触媒は、不活性ガス雰囲気下で保管した後、脱水素工程に用いてもよい。
【0075】
次いで、本実施形態における脱水素工程について詳述する。
【0076】
脱水素工程は、原料ガスを還元処理後の脱水素触媒に接触させてオレフィンの脱水素反応を行い、共役ジエンを得る工程である。
【0077】
脱水素工程は、例えば、脱水素触媒を充填した反応器を用い、当該反応器に原料ガスを流通させることにより実施してよい。反応器としては、固体触媒による気相反応に用いられる種々の反応器を用いることができる。反応器としては、例えば、固定床断熱型反応器、ラジアルフロー型反応器、管型反応器等が挙げられる。
【0078】
脱水素反応の反応形式は、例えば、固定床式、移動床式又は流動床式であってよい。これらのうち、設備コストの観点から固定床式が好ましい。
【0079】
脱水素反応の反応温度、すなわち反応器内の温度は、反応効率の観点から300〜800℃であってよく、400〜700℃であってよく、500〜650℃であってよい。反応温度が300℃以上であれば、オレフィンの平衡転化率が低くなりすぎないため、共役ジエンの収率が一層向上する傾向がある。反応温度が800℃以下であれば、コーキング速度が大きくなりすぎないため、脱水素触媒の高い活性がより長期にわたって維持される傾向がある。
【0080】
反応圧力、すなわち反応器内の気圧は0.01〜1MPaであってよく、0.05〜0.8MPaであってよく、0.1〜0.5MPaであってよい。反応圧力が上記範囲にあれば脱水素反応が進行し易くなり、一層優れた反応効率が得られる傾向がある。
【0081】
脱水素工程を、原料ガスを連続的に供給する連続式の反応形式で行う場合、原料ガスの供給速度(供給量/時間)Fに対する脱水素触媒の質量Wの比(以下、「W/F」という)は、例えば0.001g・min・ml
−1以上であってよく、0.01g・min・ml
−1以上であってもよい。このようなW/Fであると、オレフィンの転化率をより高くすることができる。また、W/Fは、20g・min・ml
−1以下であってよく、2.0g・min・ml
−1以下であってもよい。このようなW/Fであると、反応器サイズをより小さくできる。なお、原料ガス及び触媒の使用量は、反応条件、触媒の活性等に応じて更に好ましい範囲を適宜選定してよく、W/Fは上記範囲に限定されるものではない。
【0082】
脱水素工程では、反応器に上記脱水素触媒(以下、「第一の脱水素触媒」ともいう。)以外の触媒を更に充填してもよい。
【0083】
例えば、本実施形態では、反応器の第一の脱水素触媒より前段に、アルカンからオレフィンへの脱水素反応を触媒する固体触媒(以下、「第二の脱水素触媒」ともいう。)を更に充填することにより、反応器内で原料ガスを得てもよい。換言すれば、脱水素工程は、第一の脱水素触媒及び第二の脱水素触媒が充填された反応器を用い、当該反応器に、アルカンを含むガスを流通させることにより実施してもよい。また、脱水素工程は、アルカンを含むガスを、第二の脱水素触媒が充填された反応器と第一の脱水素触媒が充填された反応器に順々に流通させることにより実施してもよい。
【0084】
以上説明したように、本実施形態に係る製造方法によれば、触媒劣化が少なく、オレフィンから共役ジエンを効率良く製造することができる。そのため、本実施形態に係る製造方法によれば、触媒再生の頻度を少なくすることができる。このような理由から、本実施形態に係る製造方法は、共役ジエンを工業的に製造する場合に、非常に有用である。
【0085】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0086】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0087】
[触媒合成例1]
<触媒前駆体A−1の調製>
20−60meshに分級されたアルミナ担体2.0g(ネオビードGB−13、(株)水澤化学工業製、1質量%の濃度で水に懸濁させた懸濁液のpH:7.9)に、0.83gのSnCl
2・2H
2Oを50mLのEtOHに溶解させた溶液を加えた。得られた混合液を、ロータリーエバポレーターを用いて、室温で30分間撹拌し、その後減圧下でEtOHを除去した。得られた固体を130℃のオーブン中で一晩乾燥させた。次に、乾燥後の固体を、空気流通下、130℃で30分、550℃で3時間、800℃で3時間の3段階で焼成し、アルミナ担体にSnが担持された触媒前駆体A−1を得た。
【0088】
<触媒A−1の調製>
2.0gの触媒前駆体A−1と、53.6mgのH
2PtCl
6・2H
2Oを30mLの水に溶解させた水溶液とを混合した。得られた混合液を、ロータリーエバポレーターを用いて40℃で30分間撹拌し、その後、混合液を撹拌しながら減圧下で水を除去した。得られた固体を130℃のオーブン中で一晩乾燥させた。次に、乾燥後の固体を、空気流通下、130℃で30分、550℃で3.0時間の2段階で焼成した後、還元処理を行い、触媒A−1を得た。還元処理は、焼成後の脱水素触媒を、水素及び雰囲気下、380℃で3時間保持することにより行った。
【0089】
得られた触媒A−1において、Snの酸化物換算の含有量C
2は、触媒の全質量基準で17.3質量%であり、Ptの含有量C
3は、触媒の全質量基準で1.0質量%であった。Ptに対するSnのモル比(Sn/Pt)は25であった。
【0090】
[触媒の分析方法]
本実施例において、触媒におけるSnの酸化物換算の含有量、Ptの含有量、Alの酸化物換算の含有量及びPtに対するSnのモル比は、蛍光X線分析法(XRF)により測定した。蛍光X線分析法は、測定装置PW2400(PANalytical製)を用いて行い、含有量の定量はスタンダードレス定量計算プログラム UniQuant4を用いて行った。また、XRFの測定試料の調製は、以下のように行った。メノウ乳鉢に試料(例えば触媒A−1)125mg、セルロース(バインダー)125mgを量り取り、15分混合した後、20mmΦの錠剤成形器に入れ、10分間、300kgf・cm
−2の条件で加圧成形した。
【0091】
[触媒合成例2]
<触媒前駆体A−2の調製>
20−60meshに分級されたアルミナ担体2.0g(ネオビードGB−13、(株)水澤化学工業製、1質量%の濃度で水に懸濁させた懸濁液のpH:7.9)に、1.00gのSnCl
2・2H
2Oを50mLのEtOHに溶解させた溶液を加えた。得られた混合液を、ロータリーエバポレーターを用いて、室温で30分間撹拌し、その後減圧下でEtOHを除去した。得られた固体を130℃のオーブン中で一晩乾燥させた。次に、乾燥後の固体を、空気流通下、130℃で30分、550℃で3時間、800℃で3時間の3段階で焼成し、アルミナ担体にSnが担持された触媒前駆体A−2を得た。
【0092】
<触媒A−2の調製>
2.0gの触媒前駆体A−2と、53.6mgのH
2PtCl
6・2H
2Oを30mLの水に溶解させた水溶液とを混合した。得られた混合液を、ロータリーエバポレーターを用いて40℃で30分間撹拌し、その後、混合液を撹拌しながら減圧下で水を除去した。得られた固体を130℃のオーブン中で一晩乾燥させた。次に、乾燥後の固体を、空気流通下、130℃で30分、550℃で3.0時間の2段階で焼成した後、還元処理を行い、触媒A−2を得た。還元処理は、焼成後の脱水素触媒を、水素及び雰囲気下、400℃で3時間保持することにより行った。
【0093】
得られた触媒A−2において、Snの酸化物換算の含有量C
2は、触媒の全質量基準で21.1質量%であり、Ptの含有量C
3は、触媒の全質量基準で1.0質量%であった。Ptに対するSnのモル比(Sn/Pt)は30であった。
【0094】
[触媒合成例3]
触媒の調製に際し、還元処理の温度(還元温度)を400℃としたこと以外は、触媒合成例1と同様にして触媒の調製を行い、触媒A−3を得た。得られた触媒A−3において、Snの酸化物換算の含有量C
2は、触媒の全質量基準で17.4質量%であり、Ptの含有量C
3は、触媒の全質量基準で1.0質量%であった。Ptに対するSnのモル比(Sn/Pt)は25であった。
【0095】
[触媒合成例4]
触媒の調製に際し、還元処理の温度(還元温度)を450℃としたこと以外は、触媒合成例1と同様にして触媒の調製を行い、触媒A−4を得た。得られた触媒A−4において、Snの酸化物換算の含有量C
2は、触媒の全質量基準で17.3質量%であり、Ptの含有量C
3は、触媒の全質量基準で1.0質量%であった。Ptに対するSnのモル比(Sn/Pt)は25であった。
【0096】
[触媒合成例5]
触媒の調製に際し、還元処理の温度(還元温度)を300℃としたこと以外は、触媒合成例2と同様にして触媒の調製を行い、触媒B−1を得た。得られた触媒B−1において、Snの酸化物換算の含有量C
2は、触媒の全質量基準で21.0質量%であり、Ptの含有量C
3は、触媒の全質量基準で1.0質量%であった。Ptに対するSnのモル比(Sn/Pt)は30であった。
【0097】
[触媒合成例6]
触媒の調製に際し、還元処理の温度を550℃としたこと以外は、触媒合成例2と同様にして触媒の調製を行い、触媒B−2を得た。得られた触媒B−2において、Snの酸化物換算の含有量C
2は、触媒の全質量基準で21.1質量%であり、Ptの含有量C
3は、触媒の全質量基準で1.0質量%であった。Ptに対するSnのモル比(Sn/Pt)は30であった。
【0098】
(実施例1)
0.5gの触媒A−1を管型反応器に充填し、反応器を固定床流通式反応装置に接続した。次に、水素及びHeの混合ガス(水素:He=4:6(mol比))を50mL/minで流通させながら反応器を600℃まで昇温し、当該温度で1時間保持した。続いて、1−ブテン、He及び水の混合ガス(原料ガス)を反応器に供給し、原料ガス中の1−ブテンの脱水素反応を行った。ここで、原料ガスにおける1−ブテン、He及び水のモル比は、1:4:3に調整した。反応器への原料ガスの供給速度は、99mL/minに調整した。接触時間W/Fは0.04g−cat・min・mL
−1に調整した。反応器の原料ガスの圧力は大気圧に調整した。
【0099】
反応開始時から20分が経過した時点で、脱水素反応の生成物(生成ガス)を管型反応器から採取した。また、反応開始時から360分が経過した時点で、脱水素反応の生成物(生成ガス)を管型反応器から採取した。なお、反応開始時とは、原料ガスの供給が開始された時間である。各時点において採取された生成ガスを、熱伝導度検出器を備えたガスクロマトグラフ(TCD−GC)を用いて分析した。分析の結果、生成ガスが1,3−ブタジエンを含有することが確認された。上記ガスクロマトグラフに基づき、各時点において採取された生成ガス中の1−ブテンの濃度(単位:質量%)、2−ブテンの濃度(単位:質量%)及び1,3−ブタジエンの濃度(単位:質量%)を定量した。
【0100】
生成ガス中の1−ブテン、2−ブテン及び1,3−ブタジエンの濃度から、各時点における原料転化率(ブテン転化率)、1,3−ブタジエンの選択率(ブタジエン選択率)及び1,3−ブタジエンの収率(ブタジエン収率)を算出した。なお、ブテン転化率は下記式(4)により定義され、ブタジエン選択率は下記式(5)により定義され、ブタジエン収率は下記式(6)により定義される。
Rc=(1−M
P/M
0)×100 (4)
R
S=M
b/(M
0−M
P)×100 (5)
R
Y=M
b/M
0×100 (6)
式(4)におけるRcは、ブテン転化率である。式(5)におけるR
Sは、ブタジエン選択率である。式(6)におけるR
Yはブタジエン収率である。式(4)〜(6)におけるM
0は、原料ガス中の1−ブテンのモル数である。式(4)及び(5)におけるM
Pは、生成ガス中の1−ブテン、t−2−ブテン及びc−2−ブテンのモル数の合計である。式(5)及び(6)におけるM
bは、生成ガス中の1,3−ブタジエンのモル数である。
【0101】
算出の結果、20分経過時点では、ブテン転化率が42.5%、ブタジエン選択率が82.2%、ブタジエン収率が34.9%であった。また、360分経過時点では、ブテン転化率が37.7%、ブタジエン選択率が91.5%、ブタジエン収率が34.5%であった。
【0102】
360分経過後に反応容器から触媒A−1を取り出し、以下に示す方法により触媒A−1に付着したコーク量(使用済み触媒の全質量に対するコーク量(単位:質量%))を測定した。使用済み触媒20mg程度を、熱重量分析(TGA)装置のサンプルホルダーの中に入れた。窒素流中において、サンプル温度を1分あたり50℃の加熱速度で、室温から200℃まで上昇させた後、10分間保持した。このときのサンプルの重量をG
1とする。次に、空気流中において、サンプル温度を1分あたり15℃の加熱速度で、200℃から700℃まで上昇させた後、5分間保持した。このときのサンプルの重量をG
2とする。以下に示す式(7)を用いて触媒上に堆積したコーク量C(単位:質量%)を求めた。
C=(G
1−G
2)/G
2×100 (7)
コーク量は、8.3質量%であった。
【0103】
(実施例2)
触媒A−1に代えて触媒A−2を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、1−ブテンの脱水素反応及び生成ガスの分析を行った。反応開始時から20分経過時点でのブテン転化率は40.7%、ブタジエン選択率は89.2%、ブタジエン収率は36.3%であった。また、360分経過時点でのブテン転化率は36.8%、ブタジエン選択率は92.3%、ブタジエン収率は33.9%であった。コーク量は2.2質量%であった。
【0104】
(実施例3)
触媒A−1に代えて触媒A−3を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、1−ブテンの脱水素反応及び生成ガスの分析を行った。反応開始時から20分経過時点でのブテン転化率は42.8%、ブタジエン選択率は84.6%、ブタジエン収率は36.2%であった。また、360分経過時点でのブテン転化率は40.0%、ブタジエン選択率は91.0%、ブタジエン収率は36.4%であった。コーク量は6.3質量%であった。
【0105】
(実施例4)
触媒A−1に代えて触媒A−4を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、1−ブテンの脱水素反応及び生成ガスの分析を行った。反応開始時から20分経過時点でのブテン転化率は43.1%、ブタジエン選択率は88.0%、ブタジエン収率は37.9%であった。また、360分経過時点でのブテン転化率は41.7%、ブタジエン選択率は91.3%、ブタジエン収率は38.0%であった。コーク量は1.7質量%であった。
【0106】
(比較例1)
触媒A−1に代えて触媒B−1を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、1−ブテンの脱水素反応及び生成ガスの分析を行った。反応開始時から20分経過時点でのブテン転化率は39.1%、ブタジエン選択率は90.8%、ブタジエン収率は35.5%であった。また、360分経過時点でのブテン転化率は25.5%、ブタジエン選択率は90.9%、ブタジエン収率は23.2%であった。コーク量は8.4質量%であった。
【0107】
(比較例2)
触媒A−1に代えて触媒B−2を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、1−ブテンの脱水素反応及び生成ガスの分析を行った。反応開始時から20分経過時点でのブテン転化率は32.8%、ブタジエン選択率は92.6%、ブタジエン収率は30.4%であった。また、360分経過時点でのブテン転化率は30.4%、ブタジエン選択率は92.7%、ブタジエン収率は28.1%であった。コーク量は1.8質量%であった。
【0108】
【表1】